垂直にオフセットされた異方性膜を有する磁気抵抗ヘッド及びそれを用いたハードディスクドライブ
【課題】垂直にオフセットされた異方性膜を有する磁気抵抗ヘッド及びそれを用いたハードディスクドライブを提供する。
【解決手段】一実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に配置されたセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側及びセンサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に配置された上部シールド層とを含む。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に配置され、センサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【解決手段】一実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に配置されたセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側及びセンサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に配置された上部シールド層とを含む。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に配置され、センサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクドライブに関し、特に、垂直異方性膜及び面内異方性膜を備えた層状磁区制御膜を含む磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓は、一般に、回転磁気ディスク、読み書き磁気抵抗ヘッドを有するスライダー、回転ディスクの上側のサスペンションアーム、及びサスペンションアームをスイングさせることにより、回転ディスク上の選択された円形トラックの上に読み取り及び/又は書き込みヘッドを配置するアクチュエータアームを含む磁気ハードディスクドライブ(HDD)である。サスペンションアームは、ディスクが回転していない時にはディスク表面と接触するようにスライダーをバイアスするが、ディスクが回転する時には、スライダーの空気軸受面(ABS)に隣接して回転ディスクによって空気が渦を巻き、その結果、スライダーが回転ディスクの表面から僅かに離れた空気軸受上に乗る。スライダーが空気軸受上に乗ると、回転ディスクに磁気印(magnetic impressions)を書き込むため及び回転ディスクから信号磁場を読み取るために読み書きヘッドが用いられる。読み書きヘッドは、書き込み及び読み取り機能を実施するためのコンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続される。
【0003】
これらの磁気抵抗ヘッドは、通常、磁化角度が外部磁場によって変更される強磁性自由層(以下、自由層と呼ぶ)、及び反強磁性層によってある方向に磁気的に固定され、かつ外部磁場に対して安定した強磁性層(以下、固定層と呼ぶ)を備える。このような適切な磁場は、通常、自由層の両側に配置された磁区制御膜を用いて、自由層の初期磁化角度がABSと平行であり、かつ固定層に対して90°であるように印加される。
【0004】
記録された情報は、通常、自由層の磁化角度の変化と、固定層及び自由層間の相対角度の変化とによって生まれる抵抗差を利用することによって再生される。この現象は、磁区制御膜及び媒体によって生成される漏洩磁場を含む合成磁場によって引き起こされると考えられる。自由層に印加された磁区制御層の磁場が強すぎる場合には、固定層と自由層との相対角度が容易には達成されず、出力が低下する。一方、場が弱すぎる場合には、固定層によって生じる静磁場の影響、形状異方性磁場の影響などによって、非対称性の絶対値及び変動が増加し、その結果、読み取りエラーが生じる。さらに、自由層には複数の磁区が与えられる場合もあり、これは、バルクハウゼンノイズを引き起こし得る。つまり、磁気抵抗ヘッドを正しく使用するためには、適切な磁場を自由層に印加する必要がある。
【0005】
従って、従来達成されたものと比較して、自由層により安定した磁場を印加することができる磁区制御膜を設ける能力は、非常に有利なものとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に配置されたセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側及びセンサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に配置された上部シールド層とを含む。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に配置され、センサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0007】
別の実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に配置されたCPP(current perpendicular−to−plane)センサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側及びセンサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に配置された上部シールド層とを含み、パーセントで表した、面内異方性膜の厚さで割った垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約20%〜約40%の間であり、面内異方性膜の異方性が垂直異方性膜の異方性よりも低い。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に配置され、センサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、方法は、下部シールド層を形成するステップと、下部シールド層の上側にセンサー積層体を形成するステップであって、センサー積層体が自由層を含むステップと、下部シールド層の上側及び自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップであって、自由層に向かう層状硬質バイアス磁石の一部は、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性を有するステップと、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップとを含む。
【0009】
これらの実施形態はいずれも、磁気ヘッド、磁気媒体(例えば、ハードディスク)を磁気ヘッドの上に通過させるドライブ機構、及び磁気ヘッドに電気的に接続されたコントローラを含み得るディスクドライブシステムなどの磁気データ記憶システムにおいて実施され得る。
【0010】
本発明の他の局面及び利点は、図面と併せて、例として本発明の原理を示す以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0011】
本発明の本質及び利点、並びに、好ましい使用形態をより完全に理解するために、添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】磁気記録ディスクドライブシステムの簡略図である。
【図2A】長手記録形式を利用した記録媒体の断面の模式図である。
【図2B】図2Aに見られるような長手記録用の従来の磁気記録ヘッド及び記録媒体の組み合わせの模式図である。
【図2C】垂直記録形式を利用した磁気記録媒体である。
【図2D】片面への垂直記録用の記録ヘッド及び記録媒体の組み合わせの模式図である。
【図2E】媒体の両面に対して別々に記録するために適用された記録装置の模式図である。
【図3A】ヘリカルコイルを有した垂直磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図3B】ヘリカルコイルを有したピギーバック磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図4A】ループ状コイルを有した垂直磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図4B】ループ状コイルを有したピギーバック磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図5A】先行技術による磁気ヘッドの空気軸受面(ABS)の部分図を示す。
【図5B】一実施形態による磁気ヘッドのABS部分図を示す。
【図6】一実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の記載は、本発明の一般原理を説明する目的で行われるものであり、本明細書において請求される発明概念を限定するものではない。さらに、本明細書に記載される特定の特徴は、様々な可能な組み合わせ及び置換の各々において、他の記載された特徴と組み合わせて使用することが可能である。
【0014】
本明細書において他に具体的に定義されない限り、全ての用語は、明細書から示唆される意味、並びに、当業者によって理解される意味及び/又は辞書、論文などに定義される意味を含む最も広い可能な解釈が与えられるものとする。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、他に規定のない限り、複数の指示対象を含むことにも留意されたい。
【0016】
以下の記載において、ディスクベースの記憶システム及び/又は関連のシステム及び方法、並びに、それらの動作及び/又は構成部品の好ましい実施形態を幾つか開示する。
【0017】
一般的な実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に位置するセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側であって、センサー積層体のトラック幅方向の両面上に位置する層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に位置する上部シールド層とを含む。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に位置する面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0018】
別の一般的実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に位置するCPPセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側であって、センサー積層体のトラック幅方向の両面上に位置する層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に位置する上部シールド層とを含み、パーセントで表した、面内異方性膜の厚さで割った垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が約20%〜約40%の範囲であり、面内異方性膜の異方性は、垂直異方性膜の異方性よりも低い。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に位置する面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0019】
さらに別の一般的実施形態では、方法が、下部シールド層を形成するステップと、下部シールド層の上側に位置し、自由層を含むセンサー積層体を形成するステップと、下部シールド層の上側かつ自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップであって、自由層に向かう層状硬質バイアス磁石の一部が、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性を有するステップと、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップとを含む。
【0020】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態によるディスクドライブ100が示されている。図1に示すように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112がスピンドル114上に支持され、ディスクドライブモータ118によって回転される。各ディスクに対する磁気記録は、通常、ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンの形式である。
【0021】
少なくとも1つのスライダー113がディスク112付近に配置され、各スライダー113は、1つ又は複数の磁気読み取り/書き込みヘッド121を支持する。ディスクが回転すると、スライダー113がディスク面122上で半径方向に行き来し、その結果、所望のデータが記録される及び/又は書き込まれるディスクの異なるトラックにヘッド121がアクセスできる。各スライダー113は、サスペンション115によって、アクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は、ディスク面122に対してスライダー113をバイアスする僅かなスプリング力を与える。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ127に取り付けられる。図1に示すように、アクチュエータ127は、ボイスコイルモータ(VCM)でもよい。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを含み、コイルの移動方向及び速度は、コントローラ129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0022】
ディスク記憶システムの動作中は、ディスク112の回転により、スライダー113とディスク面122との間に空気軸受が生じ、これは、スライダーに対して上方への力、又は持ち上げる力を働かせる。従って、空気軸受は、サスペンション115の僅かなスプリング力を相殺し、通常動作中は実質的に一定の小さな間隔を空けてディスク面から離れた少し上側にスライダー113を支持する。なお、実施形態によっては、スライダー113はディスク面122に沿って滑動してもよい。
【0023】
ディスク記憶システムの様々なコンポーネントは、アクセス制御信号及び内部クロック信号などの制御ユニット129によって生成される制御信号による動作において制御される。通常、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶装置(例えばメモリ)、及びマイクロプロセッサを含む。制御ユニット129は、ライン123上のドライブモータ制御信号及びライン128上のシーク制御信号などの様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダー113をディスク112上の所望のデータトラックに最適に移動させて位置付けるための所望の電流プロファイルを提供する。読み書き信号は、記録チャネル125を経由して、読み取り/書き込みヘッド121へと、及び読み取り/書き込みヘッド121から通信される。
【0024】
典型的な磁気ディスク記憶システムの上記の記載及び添付の図1の図解は、説明のみを目的としたものである。ディスク記憶システムが多数のディスク及びアクチュエータを含み、各アクチュエータが多数のスライダーを支持し得ることは明白である。
【0025】
当業者には全て理解されるように、データの送受信を行うためのディスクドライブ及びホスト(一体型又は外部の)間の通信のためと、ディスクドライブの動作を制御し、かつディスクドライブのステータスをホストに通信するためとにインターフェースを設けることも可能である。
【0026】
通常のヘッドでは、誘導書き込みヘッドは、1つ又は複数の絶縁層(絶縁積層体)に埋め込まれたコイル層を含み、絶縁積層体は、第1及び第2の磁極片層間に位置する。書き込みヘッドの空気軸受面(ABS)において、ギャップ層によって第1及び第2の磁極片層間にギャップが形成される。磁極片層は、バックギャップにおいて接続されてもよい。電流はコイル層を通って伝導し、それによって、磁極片に磁場が生成される。フリンジ磁場は、回転する磁気ディスク上の円形トラックなどの移動する媒体上のトラックに磁場情報のビットを書き込む目的で、ABSにおいてギャップをまたがる。
【0027】
第2の磁極片層は、ABSからフレア点まで延在する磁極先端部と、フレア点からバックギャップまで延在するヨーク部とを有する。フレア点は、第2の磁極片がヨーク形成のために広がり始める(フレア)箇所である。フレア点の配置は、記録媒体上に情報を書き込むために生成される磁場の大きさに直接影響を与える。
【0028】
図2Aは、図1に示したものなどの磁気ディスク記録システムと共に使用されるような従来の記録媒体を模式的に示す。この媒体は、媒体自体の面内又は媒体自体の面と平行に磁気インパルスを記録するために利用される。記録媒体、この例では記録ディスクは、基本的に、ガラスなどの適切な非磁性材料の支持基板200と、適切な従来の磁気層の上部コーティング202とを備える。
【0029】
図2Bは、好ましくは薄膜ヘッドでもよい従来の記録/再生ヘッド204と、図2Aのものなどの従来の記録媒体との動作関係を示す。
【0030】
図2Cは、図1に示したものなどの磁気ディスク記録システムと共に使用された場合の記録媒体の表面に実質的に垂直な磁気インパルスの配向を模式的に示す。このような垂直記録に関しては、媒体は、通常、高透磁率を持つ材料の下地層212を含む。この下地層212には、好ましくは下地層212に対して高い保磁力を持つ磁性材料の上部コーティング214が設けられる。
【0031】
図2Dは、垂直ヘッド218と記録媒体との動作関係を示す。図2Dに図示した記録媒体は、高透磁率の下地層212及び図2Cに関して上に記載した磁性材料の上部コーティング214の両方を含む。しかしながら、これらの層212及び214は共に、適切な基板216に貼り付けられて示されている。通常、層212及び214間には、「交換ブレーク」層(“exchange−break” layer)又は「中間層」と呼ばれる追加の層(図示せず)も存在する。
【0032】
この構造では、垂直ヘッド218の磁極間に延在する磁束線が、ループ状に記録媒体の上部コーティング214に対して出入りし、記録媒体の高透磁率下地層212は、磁束線を媒体表面に概ね垂直な方向に上部コーティング214に通過させ、それによって、好ましくは下地層212に対して高い保磁力を持つ磁性材料の上部コーティング214において、媒体表面に実質的に垂直な磁化軸を有する磁気インパルスの形式で情報を記録させる。磁束は、軟質の下部コーティング212によってヘッド218のリターン層(P1)へと戻るように導かれる。
【0033】
図2Eは、基板216が、その2つの対向面のそれぞれの上に層212及び214を有した類似の構造を図示し、媒体の各面上の磁気コーティング214の外面に隣接して配置された適切な記録ヘッド218により、媒体の各面に対する記録が可能となる。
【0034】
図3Aは、垂直磁気ヘッドの断面図である。図3Aでは、ヘリカルコイル310及び312を用いることにより、ステッチ磁極308において磁束が生じ、ステッチ磁極308は、次に、この磁束を主磁極306へと送る。コイル310は、コイルがページから表側に延在することを示し、コイル312は、コイルがページの裏側へと延在することを示す。ステッチ磁極308は、ABS318から奥まった場所に配置されてもよい。絶縁体316はコイルを取り囲み、幾つかの要素の支持を提供してもよい。構造体の右側に矢印で示すように、媒体の移動方向は、最初に下部リターン磁極314を越え、次に、ステッチ磁極308、主磁極306、巻き付きシールド(wrap around shield)(図示せず)に接続され得るトレーリングシールド(trailing shield)304を越え、最後に、上部リターン磁極302を越えて媒体を移動させる。これらのコンポーネントの各々は、ABS318と接触する部分を有していてもよい。ABS318は、構造体の右側全体に示されている。
【0035】
垂直書き込みは、強制的に磁束をステッチ磁極308に通過させて主磁極306内へと入らせ、次にABS318に向けて配置されたディスク表面へと向かわせることによって達成される。
【0036】
図3Bは、図3Aのヘッドと類似の特徴を有するピギーバック磁気ヘッドを図示する。2つのシールド304、314は、ステッチ磁極308及び主磁極306の側面に位置する。センサーシールド322、324も示されている。センサー326は、通常、センサーシールド322及び324間に配置される。
【0037】
図4Aは、磁束をステッチ磁極408に提供するためにパンケーキ構造と呼ばれることもあるループ状コイル410を用いる一実施形態の模式図である。ステッチ磁極は、この磁束を主磁極406へと提供する。この配向では、下部リターン磁極は任意である。絶縁体416がコイル410を取り囲み、ステッチ磁極408及び主磁極406の支持を提供してもよい。ステッチ磁極は、ABS418から奥まった場所に配置されてもよい。構造体の右側に矢印で示すように、媒体の移動方向は、ステッチ磁極408、主磁極406、巻き付きシールド(図示せず)に接続され得るトレーリングシールド404を越え、最後に、上部リターン磁極402を越えて媒体を移動させる(これらは全て、ABS418と接触する部分を有していても、いなくてもよい)。ABS418は、構造体の右側全体に示されている。トレーリングシールド404は、実施形態によっては、主磁極406と接触していてもよい。
【0038】
図4Bは、巻き付くことによってパンケーキコイルを形成するループ状コイル410を含む、図4Aのヘッドに類似した特徴を有した別の種類のピギーバック磁気ヘッドを図示する。センサーシールド422、424も示されている。センサー426は、通常、センサーシールド422及び424間に配置される。
【0039】
図3B及び図4Bでは、磁気ヘッドのABSではない側の近くに任意のヒーターが示されている。ヒーター(Heater)は、図3A及び図4Aに示される磁気ヘッドに含まれていてもよい。このヒーターの位置は、突出部の望ましい位置、周囲の層の熱膨張係数などの設計パラメータに基づいて変化し得る。
【0040】
より安定した磁場を得るために、一実施形態によれば、磁気ヘッドの分解能は、記録密度が増加するにつれて増加し得る。一実施形態によれば、分解能を増加させる効果的な方法には、磁気ヘッドのシールド間ギャップ(Gs)を狭くすることが含まれる。
【0041】
しかしながら、Gsを狭くする一方で、同時に磁区制御層を薄くすることが好ましい。いずれかの理論に縛られることは意図しないが、これは、磁区制御層の磁化量の低下を引き起こし、その結果、狭いGsの磁気ヘッドを用いて適切な磁場をもはや印加することができないと考えられる。それと同時に、磁区制御層とシールドとを磁気的に分離するキャップ層の厚さの減少が存在する場合は常に、キャップ層が薄すぎることによるシールドへの磁場漏洩が問題となり得る。
【0042】
さらに、磁区制御層は、通常磨きをかけられたセンサー膜の端面に沿って形成され、そこでは、要素の端面は、通常、電気的短絡による出力低下を防止するためにセンサー膜に対して斜めの面である。これは、磁区制御層がシールドに向かってテーパー状となっていることを意味し、これは、形状異方性の影響により磁場が自由層に簡単には入らない状況をもたらす。
【0043】
一実施形態例では、有限要素法を用いて、センサー膜自由層及びシールドに付与された磁区制御層の磁界強度の計算を行った。この計算に使用される読み取り要素の形状に関して、35nmのトラック幅(Twr)及び30nmのシールド間ギャップ(Gs)を有する電流ヘッドの要素形状、シールド形状、及び磁区制御膜形状の推定を行った。さらに、実際の測定は、磁区制御膜の磁気パラメータに関して行われた。この実施形態で用いられた寸法は、本発明の範囲の限定を意図したものではなく、本実施形態例を説明するためのものであることに留意されたい。
【0044】
本実施形態例によれば、磁区制御膜は、センサー膜の端部から離れる方向に連続して形成された垂直異方性膜及び面内異方性膜を用いて構築され、磁場分布の計算を行った。垂直異方性膜及び面内異方性膜の厚さ比は、それぞれ1:4に設定した。
【0045】
表1は、面内異方性膜及び面内/垂直異方性膜を含む様々な磁区制御膜によって自由層に印加された磁場を示す。この例の磁場は、自由層端部及び自由層全体に印加された平均磁場として示される。シールドに印加された最大磁場も示される。
【表1】
【0046】
本実施形態例に対応した計算に関して、面内異方性膜の保磁力については1,500Oeの測定値を使用し、垂直異方性膜の保磁力は、1,500と10,500Oeとの間で変動した。垂直異方性膜の容易磁区は、通常、その形成面に対して垂直な2つの方向に限定されている。従って、ある方法では、垂直異方性は、面内異方性膜と比較して、より高い異方性を有すると説明され得る。これは、分散異方性又は面内異方性のより高い保磁力によって引き起こされ得るが、これらの理論は、その原因が何であれ、本発明に制限を与えるものでは決してない。
【0047】
「標準」とは、磁気ヘッド500の部分的なABSの図である図5Aに示すように、磁区制御膜が単一の面内異方性層を含む標準磁気ヘッドに基づいた比較例を示すことに留意されたい。磁気ヘッド500は、磁気抵抗(MR)、巨大磁気抵抗(GMR)、異方性磁気抵抗(AMR)、トンネル磁気抵抗(TMR)などの当該分野で公知の種類のセンサー積層体510を含み、センサー積層体510は、自由層506を含む。磁気ヘッド500は、シード層508、面内異方性膜512、及び非磁性分離層514、516も含む。さらに、一実施形態によれば、上部シールド層(USL)502及び下部シールド層(LSL)504は、構造体の両面上に配置される。
【0048】
次に図5Bを参照すると、一実施形態による磁気ヘッド550のABS部分図が示されている。この磁気ヘッド550は、垂直異方性膜518の上に面内異方性膜512を含む層状硬質バイアス層520を含む点を除いては、先行技術の磁気ヘッド(500、図5A)に類似したものである。自由層506に印加された磁場は、垂直異方性膜518の保磁力と共に強くなる。その結果、垂直異方性膜518の保磁力が3kOe以上である場合には、図5Aに示すような標準的な面内異方性膜512のみを用いた場合と比較して、より強い磁場を自由層506に印加することが可能であることが表1から分かる。
【0049】
さらに、この実施形態例の磁気ヘッド(550、図5B)の垂直異方性膜の異方性磁場を10,500Oeに設定した場合、標準磁気ヘッド(500、図5A)と比較して、少なくとも30%の向上が見られた。いずれかの理論に縛られることは意図しないが、磁区制御膜が面内異方性膜のみを含む標準磁気ヘッドと比較して、この実施形態例の垂直異方性膜を用いた層状構造を採用することによって、磁場をより効率的に印加し得ることが確信される。
【0050】
図5Bを参照すると、一実施形態において、磁気ヘッド550は、下部シールド層504と、下部シールド層504の上側に配置されたセンサー積層体510であって、自由層506を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた層状硬質バイアス磁石520であって、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜518(例えば、それは下部シールド層の上側に位置し、センサー積層体の斜面上に配置される)を含む硬質バイアス磁石とを含む。
【0051】
アプローチの仕方によっては、磁気ヘッドは、シード層又は本明細書を読めば当業者には理解されるであろう他の任意の層などの介在層を、下部シールド層と垂直異方性膜との間に1つ以上含んでいてもよい。垂直異方性膜は、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる(一実施形態によれば、下部シールド層の上側の平坦面及びセンサー積層体の側面上の斜面などの任意の数の形成面が可能である)。磁気ヘッドは、垂直異方性膜の上側に位置する面内異方性膜512も含み、面内異方性膜は、磁場をその形成面の方向に指向させる(一実施形態においては、下部シールド層の上側の平坦面及びセンサー積層体の側面上の斜面などの任意の数の形成面が可能である)。磁気ヘッドは、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に位置する上部シールド層502も含む。
【0052】
実施形態によっては、層状硬質バイアス磁石の厚さは、約5nm〜20nmの範囲でもよく、垂直異方性膜の異方性が面内異方性膜の異方性の約2倍よりも大きい状況などのように、面内異方性膜の異方性は、垂直異方性膜の異方性よりも小さくてもよく、センサー積層体は、CPPタイプのセンサーでもよく、面内異方性膜は、垂直異方性膜に磁気的に接続されていてもよく、センサー積層体の一方の面に対向する層状硬質バイアス磁石の表面は、センサー積層体に対して斜めでもよい(例えば、センサー積層体と層状硬質バイアス磁石との交差部分は、その形成面に対して垂直ではない)し、その他の形態でもよい。
【0053】
より多くの実施形態では、磁気ヘッドのトラック幅は、約15nm〜約40nmの範囲でもよく、下部シールド層の上面から上部シールド層の下面までの距離(シールド間ギャップGs)は、約18nm〜約30nmの範囲でもよく、面内異方性膜は、CoPtなどを含んでいてもよい。
【0054】
一実施形態によれば、磁気ヘッドはさらに、硬質バイアス磁石の下側及び下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の面の少なくとも一部と位置合わせされたシード層を含んでいてもよい。シード層は、本明細書に記載したように、高Kuを有する材料を含んでいてもよい。
【0055】
実際には、一実施形態によれば、約1.5〜2kOeで垂直膜を有するCoPt面内異方性膜を用いて、10kOe以上の保磁力が達成されている。従って、いずれかの理論に縛られることは意図しないが、層状構造を有するこの種の磁区制御膜を用いて、より効果的な磁場の印加を見込むことが可能であると考えられる。
【0056】
表1は、上部シールド層(502、図5B)に印加された最大磁場も示し、上部シールド層では、この実施形態例によれば、シールドへの漏洩磁場が大きくなるにつれて、シールドが磁気的により硬質となり、その結果、望ましくない分解能の低下が生じる。
【0057】
面内異方性を含む標準磁気ヘッド(500、図5A)の漏洩磁場は、層状構造及び垂直異方性膜を有する磁区制御膜を備えたシールドを含む構造と比較して、約10%〜20%減少し得る。従って、いずれかの理論に縛られることは意図しないが、本明細書に記載した実施形態の結果、分解能の向上が見込まれると考えられる。
【0058】
図5Bを再び参照すると、一実施形態では、磁気ヘッド550は、磁気異方性が自由層506のトラック幅方向の端部に対して垂直に導入される垂直異方性膜518と、垂直異方性膜518の上側に位置する面内異方性膜512とを含む層状硬質バイアス磁石520を含む。
【0059】
さらに、1つ又は複数の高磁気結晶異方性(Ku)材料を含むシード層508は、硬質バイアス磁石層520の下側に配置されてもよい。高Kuとは、材料が可能な限り高いKu、例えば、約6×106ergs/cm3、8×106ergs/cm3、1×107ergs/cm3、1.2×107ergs/cm3、又はそれより大きいKuを有することを意味する。
【0060】
層状硬質バイアス磁石520は、当業者には理解されるように、CoCrPt、CoPtなどを含み得る。シード層508を構成する高Ku材料は、それに限定されることはないが、ハードディスクドライブ媒体の磁場などの外部磁場上で強く安定化され、このことは、ヘッド性能の安定化につながる。
【0061】
従って、いずれかの理論に縛られることは意図しないが、面内/垂直異方性膜を組み合わせて層状硬質バイアス磁石520にすることによって、自由層506に印加される磁場を強めることができると考えられる。さらに、垂直異方性膜518の一方向の強い異方性により、印加される磁場を強くする一方で、上部シールド層502への漏洩磁場を減少させることが可能となる。この実施形態は、磁気ヘッド550のABS部分図を示す図5Bに模式的に示される。磁気ヘッド550は、自由層506、センサー積層体510の少なくとも一部分と位置合わせされて配置されたシード層508、センサー積層体510の上側に位置する上部シールド層502、及びセンサー積層体510の下側に位置する下部シールド層504を含む。
【0062】
図5Bに示される実施形態によれば、垂直異方性膜518及び面内異方性膜512を含む硬質バイアス磁石520を利用することによって、垂直異方性膜518及び面内異方性膜512の硬質磁石間の結合により、USL502における磁荷の生成を抑制することができる。この磁荷により、USL502における磁区構造が形成され、これが、USL502の透磁率を低下させる。面内異方性膜512及び垂直異方性膜518を組み合わせると、特にセンサー積層体510の端部において、面内異方性膜512の磁化を自由層506に向けて強制的に傾斜させることができる。これにより、強い磁場が自由層506に入ることを可能にする一方で、USL502への漏洩磁場の減少が可能となる。
【0063】
一方、図5AのABS部分図に示されるような標準磁気ヘッド500に関しては、面内異方性膜512は、センサー積層体510の端部における傾斜に沿って形成され、それにより、磁場の大部分がUSL502に向けて不利に配向される。
【0064】
第2の実施形態例では、磁場分布を評価するために、面内/垂直異方性膜を含む磁区制御膜の膜厚比を変更した。表2は、対応する自由層の端部及び自由層全体に印加された平均磁場及びUSLへの最大漏洩磁場を示す。表2は、垂直異方性膜及び面内異方性膜の厚さ比の関係も示す。
【表2】
【0065】
第2の実施形態例では、面内異方性膜の保磁力については1,500Oeの測定値を使用し、垂直異方性膜の保磁力については、3,000Oeを使用した。磁区制御膜の全厚さに対する垂直異方性膜の厚さの比が約20%であり、垂直異方性膜の保磁力が面内異方性膜の保磁力の2倍であった場合には、自由層に印加された磁場は、標準磁気ヘッドの場合と比較して高かった。さらに、膜厚比がさらに増加すると、印加された磁場は減少した。一方、USLへの漏洩磁場は、垂直異方性膜の膜厚比のいずれの増加にも応じて減少した。
【0066】
表3は、表2に対応した第2の実施形態例と類似の構造を持つが、垂直異方性膜の保磁力を10,500Oeに設定した第3の実施形態例の結果を示す。表3は、垂直異方性膜及び面内異方性膜の厚さ比の関係も示す。さらに、自由層に印加された平均磁場及び端部の磁場の関係が、シールドに印加された最大磁場と共に示される。
【表3】
【0067】
第3の実施形態例では、表3に明示したように、自由層に印加された磁場は、垂直異方性膜の膜厚比と共に増加し、自由層に印加された磁場は、膜厚比が40%の時にピークに達した。それと同時に、シールドへの漏洩磁場を分析すると、面内/垂直異方性膜の膜厚比が40%であった時に最小値が達成されたことは明らかである。表3は、標準磁気ヘッドの場合と比較して上部シールドへの漏洩磁場が40%前後高かったが、磁区制御膜が垂直異方性膜を含んだ場合に最も高い印加磁場が得られたことを示す。自由層及びシールドに印加される磁場の強さは、要素端部の領域においてどのような種類の磁化を磁区制御膜が保有するかによって変化した。
【0068】
さらに、面内/垂直異方性膜を含む層状硬質バイアス磁石の利点の一つは、USLへの磁場の漏洩を引き起こすことなく、高異方性により、磁場が自由層に向けて指向される事実にある。
【0069】
垂直異方性膜は、(Co/Pt)、(Co/Ni)などが原子秩序で積層される超格子として形成されてもよい。この超格子垂直異方性膜は、磁区制御膜(硬質バイアス磁石層)における垂直異方性膜として使用される場合に、磁場をより効率的に印加することができる。これは、構造体の端部(要素端部)及び端部から離れた基部において構造体の影効果により変化する超格子の周期により達成され得る。超格子垂直異方性膜の異方性エネルギー(この場合保磁力に一致する)は、膜厚の周期で変化する。異方性エネルギーが要素端部において増加するような周期で垂直膜が形成されると、この周期は、異方性エネルギーが減少するように基部において延長される。
【0070】
表4は、磁場を自由層端部に印加した場合の第4の実施形態例の結果を示す。この実施形態例では、垂直異方性膜の保磁力は、要素端部において10,500Oeであり、基部まで1,500Oeに至るまで徐々に(勾配で)変化した。シールドに印加された最大磁場も示される。
【表4】
【0071】
ここで、垂直異方性膜の膜厚比は、それぞれ20%及び40%であると仮定した。どちらの膜厚比を用いても、自由層に印加された磁場を増加でき、これは、磁区制御膜の基部における磁化がより一層自由層に向けて指向されたことを示唆している。いずれかの理論に縛られることは意図しないが、この構成においては、垂直異方性膜の基部における保磁力は小さいと考えられる。従って、垂直異方性膜及び面内異方性膜は磁気的に結合され、その結果、自由層に向けて配向されるコンポーネントの磁化が強まり、それによって、自由層に印加される磁場が増加する。一方、保磁力勾配を考慮しない場合に、USLへの漏洩磁場は大きくなるが、それでも、面内異方性膜のみを含む標準磁気ヘッドと比較して、漏洩磁場を約20%前後減少することができる。
【0072】
上記の結果から、垂直異方性膜及び面内異方性膜を積層し、それらの膜厚比を、約20%〜約40%などの約15%〜約50%の範囲に設定した場合、面内異方性膜を含む標準磁気ヘッドの場合と比較して、より強い印加磁場が自由層に与えられるが、それと同時に、上部シールドへの漏洩磁場が減少し得る。このことは、垂直異方性膜及び面内異方性膜を積層した本明細書に記載した実施形態により、自由層に与えられる印加磁場が標準磁気ヘッドのものと同等であるが、それと同時に、磁区制御膜が標準磁区制御膜よりも薄い磁区制御膜を生成することが可能となることを示唆する。
【0073】
垂直異方性膜の保磁力を3,000Oe及び10,500Oeに設定した異なる実施形態による2つのテスト磁気ヘッドで、磁区制御膜の膜厚依存性を調べた。表5及び表6は、これら2つのテスト実施形態のそれぞれの結果を示す。
【0074】
表5は、磁区制御膜の厚さが、面内及び垂直異方性膜を含む磁区制御膜において、自由層端部に印加される磁場及び平均磁場によって決まるテスト実施形態の結果を示す。垂直異方性膜の保磁力が3,000Oeに設定され、膜厚比が20%であった場合のUSLに印加された最大磁場も示す。HBの厚さは、硬質バイアス(HB)磁石層とも呼ばれる標準磁区制御膜の厚さとの関連で、磁区制御膜の厚さを表す。
【表5】
【0075】
表6は、磁区制御膜の厚さが、面内及び垂直異方性膜を含む磁区制御膜において、自由層端部に印加される磁場及び平均磁場によって決まるテスト実施形態の結果を示す。垂直異方性膜の保磁力が10,500Oeに設定され、膜厚比が20%であった場合のシールドに印加された最大磁場も示す。
【表6】
【0076】
ここでは、垂直異方性膜の厚さを磁区制御膜全体の20%に固定した。面内/垂直異方性膜を含む磁区制御膜厚さを標準膜厚の90%及び80%に低減した場合に、自由層に印加される磁場は、一度増加した後、減少した。シールドへの漏洩磁場は、磁区制御膜が薄くなるにつれて減少したので、このことは、薄さを増すにつれて、磁場をより効率的に自由層に印加することができたことを示唆している。
【0077】
さらに、特定のいずれかの理論に縛られることは意図しないが、1つの仮説によれば、膜厚が減少した時の磁場の低下は、磁区制御膜の体積が減少したことから生じた可能性がある。標準実施形態の印加磁場と同等の印加磁場を与える磁区制御膜の厚さは、どちらの場合も、保磁力を有する標準膜の厚さの60%〜70%前後まで大幅に減少され得る。それと同時に、上部シールドへの漏洩磁場もまた、標準実施形態と比較して大幅に減少させることができた。
【0078】
面内/垂直異方性膜を含むこのような層状構造を持つ磁区制御膜を用いた場合、磁区制御膜を薄くすることができ、これは、ギャップを狭くすることに役立ち、USLへの漏洩磁場も減少させ得る。その結果、シールドの低下した透磁率による分解能の低下を防止することができる。さらに、磁区制御膜が薄くなるにつれてキャップ層も薄くすることができ、これは、分解能の向上につながる。
【0079】
次に図6を参照すると、一実施形態による方法600が示されている。方法600は、数ある中で図1〜図5に示したものを含む任意の所望の環境で行われ得る。さらに、方法600は、本明細書を読めば当業者には理解されるように、図6に示されるものよりも多い又は少ない動作を伴い得る。
【0080】
ある手法では、本明細書に開示されるような磁気ヘッドの形成方法600は、4つの動作に要約され得る。ある手法では、方法600は、動作602において下部シールド層を形成するステップと、後続の動作604において下部シールド層の上側にセンサー積層体を形成するステップとを含む。
【0081】
さらに別の手法では、特に先行技術と対照的に、方法600は、動作606において、下部シールド層の上側及び自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップも含む。さらに、図6の方法例を用いて形成された磁気ヘッドは、磁場を膜形成の面に対して垂直な方向に(例えば、自由層の側面に向けて)指向させる垂直異方性を有する自由層に向けて対向する層状硬質バイアス磁石の一部を有すると特徴付けられる。
【0082】
さらに、また別の手法によれば、動作608において、方法600は、層状硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップをさらに含む。
【0083】
さらなる実施形態では、本明細書に従った層状硬質バイアス磁石を備えた磁気ヘッドの形成は、さらに追加の動作を含み得る。例えば、ある手法では、層状硬質バイアス磁石の形成は、下部シールド層の上側に、センサー積層体のトラック幅方向の両面に位置合わせして垂直異方性膜を形成する(例えば、それはセンサー積層体の一方の面上に形成される)ステップを含み、本明細書を読めば当業者には理解されるように、シード層または他の任意の層などの中間層をそれらの間に含み得る。さらに、この形成の結果、垂直異方性膜は、磁場をその形成面に垂直な方向に指向させ、センサー積層体の両面上に形成された場合は、磁場をセンサー積層体に向けて指向させる。
【0084】
さらなる実施形態では、層状硬質バイアス磁石を備えた磁気ヘッドの形成は、面内異方性膜を垂直異方性膜の上側に形成するステップを含み得る。このような構成では、面内異方性膜は、面内異方性膜が形成された面の方向に磁場を指向させる。さらに、一実施形態では、面内異方性膜は、垂直異方性膜と磁気的に結合されてもよい。
【0085】
上記の実施形態のいずれにおいても、磁気ヘッドは、約20%〜約40%の間の厚さ比(面内異方性膜の厚さで除算した垂直異方性膜の厚さとして定義される)を有するとしてさらに特徴付けられ得る。さらに、面内異方性膜の異方性は、好ましくは、垂直異方性膜の異方性よりも低くなり得る。
【0086】
様々な実施形態を上に記載したが、これらは限定ではなく例示のみを目的として提示されたものであることを理解されたい。従って、本発明の実施形態の広さ及び範囲は、上記の実施形態例のいずれによっても制限されるものではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるものである。
【符号の説明】
【0087】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
129 コントローラ
500,550 磁気ヘッド
502 上部シールド層
504 下部シールド層
506 自由層
508 シード層
510 センサー積層体
512 面内異方性膜
518 垂直異方性膜
520 層状硬質バイアス磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクドライブに関し、特に、垂直異方性膜及び面内異方性膜を備えた層状磁区制御膜を含む磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓は、一般に、回転磁気ディスク、読み書き磁気抵抗ヘッドを有するスライダー、回転ディスクの上側のサスペンションアーム、及びサスペンションアームをスイングさせることにより、回転ディスク上の選択された円形トラックの上に読み取り及び/又は書き込みヘッドを配置するアクチュエータアームを含む磁気ハードディスクドライブ(HDD)である。サスペンションアームは、ディスクが回転していない時にはディスク表面と接触するようにスライダーをバイアスするが、ディスクが回転する時には、スライダーの空気軸受面(ABS)に隣接して回転ディスクによって空気が渦を巻き、その結果、スライダーが回転ディスクの表面から僅かに離れた空気軸受上に乗る。スライダーが空気軸受上に乗ると、回転ディスクに磁気印(magnetic impressions)を書き込むため及び回転ディスクから信号磁場を読み取るために読み書きヘッドが用いられる。読み書きヘッドは、書き込み及び読み取り機能を実施するためのコンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続される。
【0003】
これらの磁気抵抗ヘッドは、通常、磁化角度が外部磁場によって変更される強磁性自由層(以下、自由層と呼ぶ)、及び反強磁性層によってある方向に磁気的に固定され、かつ外部磁場に対して安定した強磁性層(以下、固定層と呼ぶ)を備える。このような適切な磁場は、通常、自由層の両側に配置された磁区制御膜を用いて、自由層の初期磁化角度がABSと平行であり、かつ固定層に対して90°であるように印加される。
【0004】
記録された情報は、通常、自由層の磁化角度の変化と、固定層及び自由層間の相対角度の変化とによって生まれる抵抗差を利用することによって再生される。この現象は、磁区制御膜及び媒体によって生成される漏洩磁場を含む合成磁場によって引き起こされると考えられる。自由層に印加された磁区制御層の磁場が強すぎる場合には、固定層と自由層との相対角度が容易には達成されず、出力が低下する。一方、場が弱すぎる場合には、固定層によって生じる静磁場の影響、形状異方性磁場の影響などによって、非対称性の絶対値及び変動が増加し、その結果、読み取りエラーが生じる。さらに、自由層には複数の磁区が与えられる場合もあり、これは、バルクハウゼンノイズを引き起こし得る。つまり、磁気抵抗ヘッドを正しく使用するためには、適切な磁場を自由層に印加する必要がある。
【0005】
従って、従来達成されたものと比較して、自由層により安定した磁場を印加することができる磁区制御膜を設ける能力は、非常に有利なものとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に配置されたセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側及びセンサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に配置された上部シールド層とを含む。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に配置され、センサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0007】
別の実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に配置されたCPP(current perpendicular−to−plane)センサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側及びセンサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に配置された上部シールド層とを含み、パーセントで表した、面内異方性膜の厚さで割った垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約20%〜約40%の間であり、面内異方性膜の異方性が垂直異方性膜の異方性よりも低い。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に配置され、センサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、方法は、下部シールド層を形成するステップと、下部シールド層の上側にセンサー積層体を形成するステップであって、センサー積層体が自由層を含むステップと、下部シールド層の上側及び自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップであって、自由層に向かう層状硬質バイアス磁石の一部は、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性を有するステップと、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップとを含む。
【0009】
これらの実施形態はいずれも、磁気ヘッド、磁気媒体(例えば、ハードディスク)を磁気ヘッドの上に通過させるドライブ機構、及び磁気ヘッドに電気的に接続されたコントローラを含み得るディスクドライブシステムなどの磁気データ記憶システムにおいて実施され得る。
【0010】
本発明の他の局面及び利点は、図面と併せて、例として本発明の原理を示す以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0011】
本発明の本質及び利点、並びに、好ましい使用形態をより完全に理解するために、添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】磁気記録ディスクドライブシステムの簡略図である。
【図2A】長手記録形式を利用した記録媒体の断面の模式図である。
【図2B】図2Aに見られるような長手記録用の従来の磁気記録ヘッド及び記録媒体の組み合わせの模式図である。
【図2C】垂直記録形式を利用した磁気記録媒体である。
【図2D】片面への垂直記録用の記録ヘッド及び記録媒体の組み合わせの模式図である。
【図2E】媒体の両面に対して別々に記録するために適用された記録装置の模式図である。
【図3A】ヘリカルコイルを有した垂直磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図3B】ヘリカルコイルを有したピギーバック磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図4A】ループ状コイルを有した垂直磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図4B】ループ状コイルを有したピギーバック磁気ヘッドのある特定の実施形態の断面図である。
【図5A】先行技術による磁気ヘッドの空気軸受面(ABS)の部分図を示す。
【図5B】一実施形態による磁気ヘッドのABS部分図を示す。
【図6】一実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の記載は、本発明の一般原理を説明する目的で行われるものであり、本明細書において請求される発明概念を限定するものではない。さらに、本明細書に記載される特定の特徴は、様々な可能な組み合わせ及び置換の各々において、他の記載された特徴と組み合わせて使用することが可能である。
【0014】
本明細書において他に具体的に定義されない限り、全ての用語は、明細書から示唆される意味、並びに、当業者によって理解される意味及び/又は辞書、論文などに定義される意味を含む最も広い可能な解釈が与えられるものとする。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、他に規定のない限り、複数の指示対象を含むことにも留意されたい。
【0016】
以下の記載において、ディスクベースの記憶システム及び/又は関連のシステム及び方法、並びに、それらの動作及び/又は構成部品の好ましい実施形態を幾つか開示する。
【0017】
一般的な実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に位置するセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側であって、センサー積層体のトラック幅方向の両面上に位置する層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に位置する上部シールド層とを含む。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に位置する面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0018】
別の一般的実施形態では、磁気ヘッドは、下部シールド層と、下部シールド層の上側に位置するCPPセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側であって、センサー積層体のトラック幅方向の両面上に位置する層状硬質バイアス磁石と、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に位置する上部シールド層とを含み、パーセントで表した、面内異方性膜の厚さで割った垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が約20%〜約40%の範囲であり、面内異方性膜の異方性は、垂直異方性膜の異方性よりも低い。硬質バイアス磁石は、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、垂直異方性膜の上側に位置する面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜とを含む。
【0019】
さらに別の一般的実施形態では、方法が、下部シールド層を形成するステップと、下部シールド層の上側に位置し、自由層を含むセンサー積層体を形成するステップと、下部シールド層の上側かつ自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップであって、自由層に向かう層状硬質バイアス磁石の一部が、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性を有するステップと、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップとを含む。
【0020】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態によるディスクドライブ100が示されている。図1に示すように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112がスピンドル114上に支持され、ディスクドライブモータ118によって回転される。各ディスクに対する磁気記録は、通常、ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンの形式である。
【0021】
少なくとも1つのスライダー113がディスク112付近に配置され、各スライダー113は、1つ又は複数の磁気読み取り/書き込みヘッド121を支持する。ディスクが回転すると、スライダー113がディスク面122上で半径方向に行き来し、その結果、所望のデータが記録される及び/又は書き込まれるディスクの異なるトラックにヘッド121がアクセスできる。各スライダー113は、サスペンション115によって、アクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は、ディスク面122に対してスライダー113をバイアスする僅かなスプリング力を与える。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ127に取り付けられる。図1に示すように、アクチュエータ127は、ボイスコイルモータ(VCM)でもよい。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを含み、コイルの移動方向及び速度は、コントローラ129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0022】
ディスク記憶システムの動作中は、ディスク112の回転により、スライダー113とディスク面122との間に空気軸受が生じ、これは、スライダーに対して上方への力、又は持ち上げる力を働かせる。従って、空気軸受は、サスペンション115の僅かなスプリング力を相殺し、通常動作中は実質的に一定の小さな間隔を空けてディスク面から離れた少し上側にスライダー113を支持する。なお、実施形態によっては、スライダー113はディスク面122に沿って滑動してもよい。
【0023】
ディスク記憶システムの様々なコンポーネントは、アクセス制御信号及び内部クロック信号などの制御ユニット129によって生成される制御信号による動作において制御される。通常、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶装置(例えばメモリ)、及びマイクロプロセッサを含む。制御ユニット129は、ライン123上のドライブモータ制御信号及びライン128上のシーク制御信号などの様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダー113をディスク112上の所望のデータトラックに最適に移動させて位置付けるための所望の電流プロファイルを提供する。読み書き信号は、記録チャネル125を経由して、読み取り/書き込みヘッド121へと、及び読み取り/書き込みヘッド121から通信される。
【0024】
典型的な磁気ディスク記憶システムの上記の記載及び添付の図1の図解は、説明のみを目的としたものである。ディスク記憶システムが多数のディスク及びアクチュエータを含み、各アクチュエータが多数のスライダーを支持し得ることは明白である。
【0025】
当業者には全て理解されるように、データの送受信を行うためのディスクドライブ及びホスト(一体型又は外部の)間の通信のためと、ディスクドライブの動作を制御し、かつディスクドライブのステータスをホストに通信するためとにインターフェースを設けることも可能である。
【0026】
通常のヘッドでは、誘導書き込みヘッドは、1つ又は複数の絶縁層(絶縁積層体)に埋め込まれたコイル層を含み、絶縁積層体は、第1及び第2の磁極片層間に位置する。書き込みヘッドの空気軸受面(ABS)において、ギャップ層によって第1及び第2の磁極片層間にギャップが形成される。磁極片層は、バックギャップにおいて接続されてもよい。電流はコイル層を通って伝導し、それによって、磁極片に磁場が生成される。フリンジ磁場は、回転する磁気ディスク上の円形トラックなどの移動する媒体上のトラックに磁場情報のビットを書き込む目的で、ABSにおいてギャップをまたがる。
【0027】
第2の磁極片層は、ABSからフレア点まで延在する磁極先端部と、フレア点からバックギャップまで延在するヨーク部とを有する。フレア点は、第2の磁極片がヨーク形成のために広がり始める(フレア)箇所である。フレア点の配置は、記録媒体上に情報を書き込むために生成される磁場の大きさに直接影響を与える。
【0028】
図2Aは、図1に示したものなどの磁気ディスク記録システムと共に使用されるような従来の記録媒体を模式的に示す。この媒体は、媒体自体の面内又は媒体自体の面と平行に磁気インパルスを記録するために利用される。記録媒体、この例では記録ディスクは、基本的に、ガラスなどの適切な非磁性材料の支持基板200と、適切な従来の磁気層の上部コーティング202とを備える。
【0029】
図2Bは、好ましくは薄膜ヘッドでもよい従来の記録/再生ヘッド204と、図2Aのものなどの従来の記録媒体との動作関係を示す。
【0030】
図2Cは、図1に示したものなどの磁気ディスク記録システムと共に使用された場合の記録媒体の表面に実質的に垂直な磁気インパルスの配向を模式的に示す。このような垂直記録に関しては、媒体は、通常、高透磁率を持つ材料の下地層212を含む。この下地層212には、好ましくは下地層212に対して高い保磁力を持つ磁性材料の上部コーティング214が設けられる。
【0031】
図2Dは、垂直ヘッド218と記録媒体との動作関係を示す。図2Dに図示した記録媒体は、高透磁率の下地層212及び図2Cに関して上に記載した磁性材料の上部コーティング214の両方を含む。しかしながら、これらの層212及び214は共に、適切な基板216に貼り付けられて示されている。通常、層212及び214間には、「交換ブレーク」層(“exchange−break” layer)又は「中間層」と呼ばれる追加の層(図示せず)も存在する。
【0032】
この構造では、垂直ヘッド218の磁極間に延在する磁束線が、ループ状に記録媒体の上部コーティング214に対して出入りし、記録媒体の高透磁率下地層212は、磁束線を媒体表面に概ね垂直な方向に上部コーティング214に通過させ、それによって、好ましくは下地層212に対して高い保磁力を持つ磁性材料の上部コーティング214において、媒体表面に実質的に垂直な磁化軸を有する磁気インパルスの形式で情報を記録させる。磁束は、軟質の下部コーティング212によってヘッド218のリターン層(P1)へと戻るように導かれる。
【0033】
図2Eは、基板216が、その2つの対向面のそれぞれの上に層212及び214を有した類似の構造を図示し、媒体の各面上の磁気コーティング214の外面に隣接して配置された適切な記録ヘッド218により、媒体の各面に対する記録が可能となる。
【0034】
図3Aは、垂直磁気ヘッドの断面図である。図3Aでは、ヘリカルコイル310及び312を用いることにより、ステッチ磁極308において磁束が生じ、ステッチ磁極308は、次に、この磁束を主磁極306へと送る。コイル310は、コイルがページから表側に延在することを示し、コイル312は、コイルがページの裏側へと延在することを示す。ステッチ磁極308は、ABS318から奥まった場所に配置されてもよい。絶縁体316はコイルを取り囲み、幾つかの要素の支持を提供してもよい。構造体の右側に矢印で示すように、媒体の移動方向は、最初に下部リターン磁極314を越え、次に、ステッチ磁極308、主磁極306、巻き付きシールド(wrap around shield)(図示せず)に接続され得るトレーリングシールド(trailing shield)304を越え、最後に、上部リターン磁極302を越えて媒体を移動させる。これらのコンポーネントの各々は、ABS318と接触する部分を有していてもよい。ABS318は、構造体の右側全体に示されている。
【0035】
垂直書き込みは、強制的に磁束をステッチ磁極308に通過させて主磁極306内へと入らせ、次にABS318に向けて配置されたディスク表面へと向かわせることによって達成される。
【0036】
図3Bは、図3Aのヘッドと類似の特徴を有するピギーバック磁気ヘッドを図示する。2つのシールド304、314は、ステッチ磁極308及び主磁極306の側面に位置する。センサーシールド322、324も示されている。センサー326は、通常、センサーシールド322及び324間に配置される。
【0037】
図4Aは、磁束をステッチ磁極408に提供するためにパンケーキ構造と呼ばれることもあるループ状コイル410を用いる一実施形態の模式図である。ステッチ磁極は、この磁束を主磁極406へと提供する。この配向では、下部リターン磁極は任意である。絶縁体416がコイル410を取り囲み、ステッチ磁極408及び主磁極406の支持を提供してもよい。ステッチ磁極は、ABS418から奥まった場所に配置されてもよい。構造体の右側に矢印で示すように、媒体の移動方向は、ステッチ磁極408、主磁極406、巻き付きシールド(図示せず)に接続され得るトレーリングシールド404を越え、最後に、上部リターン磁極402を越えて媒体を移動させる(これらは全て、ABS418と接触する部分を有していても、いなくてもよい)。ABS418は、構造体の右側全体に示されている。トレーリングシールド404は、実施形態によっては、主磁極406と接触していてもよい。
【0038】
図4Bは、巻き付くことによってパンケーキコイルを形成するループ状コイル410を含む、図4Aのヘッドに類似した特徴を有した別の種類のピギーバック磁気ヘッドを図示する。センサーシールド422、424も示されている。センサー426は、通常、センサーシールド422及び424間に配置される。
【0039】
図3B及び図4Bでは、磁気ヘッドのABSではない側の近くに任意のヒーターが示されている。ヒーター(Heater)は、図3A及び図4Aに示される磁気ヘッドに含まれていてもよい。このヒーターの位置は、突出部の望ましい位置、周囲の層の熱膨張係数などの設計パラメータに基づいて変化し得る。
【0040】
より安定した磁場を得るために、一実施形態によれば、磁気ヘッドの分解能は、記録密度が増加するにつれて増加し得る。一実施形態によれば、分解能を増加させる効果的な方法には、磁気ヘッドのシールド間ギャップ(Gs)を狭くすることが含まれる。
【0041】
しかしながら、Gsを狭くする一方で、同時に磁区制御層を薄くすることが好ましい。いずれかの理論に縛られることは意図しないが、これは、磁区制御層の磁化量の低下を引き起こし、その結果、狭いGsの磁気ヘッドを用いて適切な磁場をもはや印加することができないと考えられる。それと同時に、磁区制御層とシールドとを磁気的に分離するキャップ層の厚さの減少が存在する場合は常に、キャップ層が薄すぎることによるシールドへの磁場漏洩が問題となり得る。
【0042】
さらに、磁区制御層は、通常磨きをかけられたセンサー膜の端面に沿って形成され、そこでは、要素の端面は、通常、電気的短絡による出力低下を防止するためにセンサー膜に対して斜めの面である。これは、磁区制御層がシールドに向かってテーパー状となっていることを意味し、これは、形状異方性の影響により磁場が自由層に簡単には入らない状況をもたらす。
【0043】
一実施形態例では、有限要素法を用いて、センサー膜自由層及びシールドに付与された磁区制御層の磁界強度の計算を行った。この計算に使用される読み取り要素の形状に関して、35nmのトラック幅(Twr)及び30nmのシールド間ギャップ(Gs)を有する電流ヘッドの要素形状、シールド形状、及び磁区制御膜形状の推定を行った。さらに、実際の測定は、磁区制御膜の磁気パラメータに関して行われた。この実施形態で用いられた寸法は、本発明の範囲の限定を意図したものではなく、本実施形態例を説明するためのものであることに留意されたい。
【0044】
本実施形態例によれば、磁区制御膜は、センサー膜の端部から離れる方向に連続して形成された垂直異方性膜及び面内異方性膜を用いて構築され、磁場分布の計算を行った。垂直異方性膜及び面内異方性膜の厚さ比は、それぞれ1:4に設定した。
【0045】
表1は、面内異方性膜及び面内/垂直異方性膜を含む様々な磁区制御膜によって自由層に印加された磁場を示す。この例の磁場は、自由層端部及び自由層全体に印加された平均磁場として示される。シールドに印加された最大磁場も示される。
【表1】
【0046】
本実施形態例に対応した計算に関して、面内異方性膜の保磁力については1,500Oeの測定値を使用し、垂直異方性膜の保磁力は、1,500と10,500Oeとの間で変動した。垂直異方性膜の容易磁区は、通常、その形成面に対して垂直な2つの方向に限定されている。従って、ある方法では、垂直異方性は、面内異方性膜と比較して、より高い異方性を有すると説明され得る。これは、分散異方性又は面内異方性のより高い保磁力によって引き起こされ得るが、これらの理論は、その原因が何であれ、本発明に制限を与えるものでは決してない。
【0047】
「標準」とは、磁気ヘッド500の部分的なABSの図である図5Aに示すように、磁区制御膜が単一の面内異方性層を含む標準磁気ヘッドに基づいた比較例を示すことに留意されたい。磁気ヘッド500は、磁気抵抗(MR)、巨大磁気抵抗(GMR)、異方性磁気抵抗(AMR)、トンネル磁気抵抗(TMR)などの当該分野で公知の種類のセンサー積層体510を含み、センサー積層体510は、自由層506を含む。磁気ヘッド500は、シード層508、面内異方性膜512、及び非磁性分離層514、516も含む。さらに、一実施形態によれば、上部シールド層(USL)502及び下部シールド層(LSL)504は、構造体の両面上に配置される。
【0048】
次に図5Bを参照すると、一実施形態による磁気ヘッド550のABS部分図が示されている。この磁気ヘッド550は、垂直異方性膜518の上に面内異方性膜512を含む層状硬質バイアス層520を含む点を除いては、先行技術の磁気ヘッド(500、図5A)に類似したものである。自由層506に印加された磁場は、垂直異方性膜518の保磁力と共に強くなる。その結果、垂直異方性膜518の保磁力が3kOe以上である場合には、図5Aに示すような標準的な面内異方性膜512のみを用いた場合と比較して、より強い磁場を自由層506に印加することが可能であることが表1から分かる。
【0049】
さらに、この実施形態例の磁気ヘッド(550、図5B)の垂直異方性膜の異方性磁場を10,500Oeに設定した場合、標準磁気ヘッド(500、図5A)と比較して、少なくとも30%の向上が見られた。いずれかの理論に縛られることは意図しないが、磁区制御膜が面内異方性膜のみを含む標準磁気ヘッドと比較して、この実施形態例の垂直異方性膜を用いた層状構造を採用することによって、磁場をより効率的に印加し得ることが確信される。
【0050】
図5Bを参照すると、一実施形態において、磁気ヘッド550は、下部シールド層504と、下部シールド層504の上側に配置されたセンサー積層体510であって、自由層506を含むセンサー積層体と、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた層状硬質バイアス磁石520であって、下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜518(例えば、それは下部シールド層の上側に位置し、センサー積層体の斜面上に配置される)を含む硬質バイアス磁石とを含む。
【0051】
アプローチの仕方によっては、磁気ヘッドは、シード層又は本明細書を読めば当業者には理解されるであろう他の任意の層などの介在層を、下部シールド層と垂直異方性膜との間に1つ以上含んでいてもよい。垂直異方性膜は、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる(一実施形態によれば、下部シールド層の上側の平坦面及びセンサー積層体の側面上の斜面などの任意の数の形成面が可能である)。磁気ヘッドは、垂直異方性膜の上側に位置する面内異方性膜512も含み、面内異方性膜は、磁場をその形成面の方向に指向させる(一実施形態においては、下部シールド層の上側の平坦面及びセンサー積層体の側面上の斜面などの任意の数の形成面が可能である)。磁気ヘッドは、硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に位置する上部シールド層502も含む。
【0052】
実施形態によっては、層状硬質バイアス磁石の厚さは、約5nm〜20nmの範囲でもよく、垂直異方性膜の異方性が面内異方性膜の異方性の約2倍よりも大きい状況などのように、面内異方性膜の異方性は、垂直異方性膜の異方性よりも小さくてもよく、センサー積層体は、CPPタイプのセンサーでもよく、面内異方性膜は、垂直異方性膜に磁気的に接続されていてもよく、センサー積層体の一方の面に対向する層状硬質バイアス磁石の表面は、センサー積層体に対して斜めでもよい(例えば、センサー積層体と層状硬質バイアス磁石との交差部分は、その形成面に対して垂直ではない)し、その他の形態でもよい。
【0053】
より多くの実施形態では、磁気ヘッドのトラック幅は、約15nm〜約40nmの範囲でもよく、下部シールド層の上面から上部シールド層の下面までの距離(シールド間ギャップGs)は、約18nm〜約30nmの範囲でもよく、面内異方性膜は、CoPtなどを含んでいてもよい。
【0054】
一実施形態によれば、磁気ヘッドはさらに、硬質バイアス磁石の下側及び下部シールド層の上側に位置し、かつセンサー積層体のトラック幅方向の面の少なくとも一部と位置合わせされたシード層を含んでいてもよい。シード層は、本明細書に記載したように、高Kuを有する材料を含んでいてもよい。
【0055】
実際には、一実施形態によれば、約1.5〜2kOeで垂直膜を有するCoPt面内異方性膜を用いて、10kOe以上の保磁力が達成されている。従って、いずれかの理論に縛られることは意図しないが、層状構造を有するこの種の磁区制御膜を用いて、より効果的な磁場の印加を見込むことが可能であると考えられる。
【0056】
表1は、上部シールド層(502、図5B)に印加された最大磁場も示し、上部シールド層では、この実施形態例によれば、シールドへの漏洩磁場が大きくなるにつれて、シールドが磁気的により硬質となり、その結果、望ましくない分解能の低下が生じる。
【0057】
面内異方性を含む標準磁気ヘッド(500、図5A)の漏洩磁場は、層状構造及び垂直異方性膜を有する磁区制御膜を備えたシールドを含む構造と比較して、約10%〜20%減少し得る。従って、いずれかの理論に縛られることは意図しないが、本明細書に記載した実施形態の結果、分解能の向上が見込まれると考えられる。
【0058】
図5Bを再び参照すると、一実施形態では、磁気ヘッド550は、磁気異方性が自由層506のトラック幅方向の端部に対して垂直に導入される垂直異方性膜518と、垂直異方性膜518の上側に位置する面内異方性膜512とを含む層状硬質バイアス磁石520を含む。
【0059】
さらに、1つ又は複数の高磁気結晶異方性(Ku)材料を含むシード層508は、硬質バイアス磁石層520の下側に配置されてもよい。高Kuとは、材料が可能な限り高いKu、例えば、約6×106ergs/cm3、8×106ergs/cm3、1×107ergs/cm3、1.2×107ergs/cm3、又はそれより大きいKuを有することを意味する。
【0060】
層状硬質バイアス磁石520は、当業者には理解されるように、CoCrPt、CoPtなどを含み得る。シード層508を構成する高Ku材料は、それに限定されることはないが、ハードディスクドライブ媒体の磁場などの外部磁場上で強く安定化され、このことは、ヘッド性能の安定化につながる。
【0061】
従って、いずれかの理論に縛られることは意図しないが、面内/垂直異方性膜を組み合わせて層状硬質バイアス磁石520にすることによって、自由層506に印加される磁場を強めることができると考えられる。さらに、垂直異方性膜518の一方向の強い異方性により、印加される磁場を強くする一方で、上部シールド層502への漏洩磁場を減少させることが可能となる。この実施形態は、磁気ヘッド550のABS部分図を示す図5Bに模式的に示される。磁気ヘッド550は、自由層506、センサー積層体510の少なくとも一部分と位置合わせされて配置されたシード層508、センサー積層体510の上側に位置する上部シールド層502、及びセンサー積層体510の下側に位置する下部シールド層504を含む。
【0062】
図5Bに示される実施形態によれば、垂直異方性膜518及び面内異方性膜512を含む硬質バイアス磁石520を利用することによって、垂直異方性膜518及び面内異方性膜512の硬質磁石間の結合により、USL502における磁荷の生成を抑制することができる。この磁荷により、USL502における磁区構造が形成され、これが、USL502の透磁率を低下させる。面内異方性膜512及び垂直異方性膜518を組み合わせると、特にセンサー積層体510の端部において、面内異方性膜512の磁化を自由層506に向けて強制的に傾斜させることができる。これにより、強い磁場が自由層506に入ることを可能にする一方で、USL502への漏洩磁場の減少が可能となる。
【0063】
一方、図5AのABS部分図に示されるような標準磁気ヘッド500に関しては、面内異方性膜512は、センサー積層体510の端部における傾斜に沿って形成され、それにより、磁場の大部分がUSL502に向けて不利に配向される。
【0064】
第2の実施形態例では、磁場分布を評価するために、面内/垂直異方性膜を含む磁区制御膜の膜厚比を変更した。表2は、対応する自由層の端部及び自由層全体に印加された平均磁場及びUSLへの最大漏洩磁場を示す。表2は、垂直異方性膜及び面内異方性膜の厚さ比の関係も示す。
【表2】
【0065】
第2の実施形態例では、面内異方性膜の保磁力については1,500Oeの測定値を使用し、垂直異方性膜の保磁力については、3,000Oeを使用した。磁区制御膜の全厚さに対する垂直異方性膜の厚さの比が約20%であり、垂直異方性膜の保磁力が面内異方性膜の保磁力の2倍であった場合には、自由層に印加された磁場は、標準磁気ヘッドの場合と比較して高かった。さらに、膜厚比がさらに増加すると、印加された磁場は減少した。一方、USLへの漏洩磁場は、垂直異方性膜の膜厚比のいずれの増加にも応じて減少した。
【0066】
表3は、表2に対応した第2の実施形態例と類似の構造を持つが、垂直異方性膜の保磁力を10,500Oeに設定した第3の実施形態例の結果を示す。表3は、垂直異方性膜及び面内異方性膜の厚さ比の関係も示す。さらに、自由層に印加された平均磁場及び端部の磁場の関係が、シールドに印加された最大磁場と共に示される。
【表3】
【0067】
第3の実施形態例では、表3に明示したように、自由層に印加された磁場は、垂直異方性膜の膜厚比と共に増加し、自由層に印加された磁場は、膜厚比が40%の時にピークに達した。それと同時に、シールドへの漏洩磁場を分析すると、面内/垂直異方性膜の膜厚比が40%であった時に最小値が達成されたことは明らかである。表3は、標準磁気ヘッドの場合と比較して上部シールドへの漏洩磁場が40%前後高かったが、磁区制御膜が垂直異方性膜を含んだ場合に最も高い印加磁場が得られたことを示す。自由層及びシールドに印加される磁場の強さは、要素端部の領域においてどのような種類の磁化を磁区制御膜が保有するかによって変化した。
【0068】
さらに、面内/垂直異方性膜を含む層状硬質バイアス磁石の利点の一つは、USLへの磁場の漏洩を引き起こすことなく、高異方性により、磁場が自由層に向けて指向される事実にある。
【0069】
垂直異方性膜は、(Co/Pt)、(Co/Ni)などが原子秩序で積層される超格子として形成されてもよい。この超格子垂直異方性膜は、磁区制御膜(硬質バイアス磁石層)における垂直異方性膜として使用される場合に、磁場をより効率的に印加することができる。これは、構造体の端部(要素端部)及び端部から離れた基部において構造体の影効果により変化する超格子の周期により達成され得る。超格子垂直異方性膜の異方性エネルギー(この場合保磁力に一致する)は、膜厚の周期で変化する。異方性エネルギーが要素端部において増加するような周期で垂直膜が形成されると、この周期は、異方性エネルギーが減少するように基部において延長される。
【0070】
表4は、磁場を自由層端部に印加した場合の第4の実施形態例の結果を示す。この実施形態例では、垂直異方性膜の保磁力は、要素端部において10,500Oeであり、基部まで1,500Oeに至るまで徐々に(勾配で)変化した。シールドに印加された最大磁場も示される。
【表4】
【0071】
ここで、垂直異方性膜の膜厚比は、それぞれ20%及び40%であると仮定した。どちらの膜厚比を用いても、自由層に印加された磁場を増加でき、これは、磁区制御膜の基部における磁化がより一層自由層に向けて指向されたことを示唆している。いずれかの理論に縛られることは意図しないが、この構成においては、垂直異方性膜の基部における保磁力は小さいと考えられる。従って、垂直異方性膜及び面内異方性膜は磁気的に結合され、その結果、自由層に向けて配向されるコンポーネントの磁化が強まり、それによって、自由層に印加される磁場が増加する。一方、保磁力勾配を考慮しない場合に、USLへの漏洩磁場は大きくなるが、それでも、面内異方性膜のみを含む標準磁気ヘッドと比較して、漏洩磁場を約20%前後減少することができる。
【0072】
上記の結果から、垂直異方性膜及び面内異方性膜を積層し、それらの膜厚比を、約20%〜約40%などの約15%〜約50%の範囲に設定した場合、面内異方性膜を含む標準磁気ヘッドの場合と比較して、より強い印加磁場が自由層に与えられるが、それと同時に、上部シールドへの漏洩磁場が減少し得る。このことは、垂直異方性膜及び面内異方性膜を積層した本明細書に記載した実施形態により、自由層に与えられる印加磁場が標準磁気ヘッドのものと同等であるが、それと同時に、磁区制御膜が標準磁区制御膜よりも薄い磁区制御膜を生成することが可能となることを示唆する。
【0073】
垂直異方性膜の保磁力を3,000Oe及び10,500Oeに設定した異なる実施形態による2つのテスト磁気ヘッドで、磁区制御膜の膜厚依存性を調べた。表5及び表6は、これら2つのテスト実施形態のそれぞれの結果を示す。
【0074】
表5は、磁区制御膜の厚さが、面内及び垂直異方性膜を含む磁区制御膜において、自由層端部に印加される磁場及び平均磁場によって決まるテスト実施形態の結果を示す。垂直異方性膜の保磁力が3,000Oeに設定され、膜厚比が20%であった場合のUSLに印加された最大磁場も示す。HBの厚さは、硬質バイアス(HB)磁石層とも呼ばれる標準磁区制御膜の厚さとの関連で、磁区制御膜の厚さを表す。
【表5】
【0075】
表6は、磁区制御膜の厚さが、面内及び垂直異方性膜を含む磁区制御膜において、自由層端部に印加される磁場及び平均磁場によって決まるテスト実施形態の結果を示す。垂直異方性膜の保磁力が10,500Oeに設定され、膜厚比が20%であった場合のシールドに印加された最大磁場も示す。
【表6】
【0076】
ここでは、垂直異方性膜の厚さを磁区制御膜全体の20%に固定した。面内/垂直異方性膜を含む磁区制御膜厚さを標準膜厚の90%及び80%に低減した場合に、自由層に印加される磁場は、一度増加した後、減少した。シールドへの漏洩磁場は、磁区制御膜が薄くなるにつれて減少したので、このことは、薄さを増すにつれて、磁場をより効率的に自由層に印加することができたことを示唆している。
【0077】
さらに、特定のいずれかの理論に縛られることは意図しないが、1つの仮説によれば、膜厚が減少した時の磁場の低下は、磁区制御膜の体積が減少したことから生じた可能性がある。標準実施形態の印加磁場と同等の印加磁場を与える磁区制御膜の厚さは、どちらの場合も、保磁力を有する標準膜の厚さの60%〜70%前後まで大幅に減少され得る。それと同時に、上部シールドへの漏洩磁場もまた、標準実施形態と比較して大幅に減少させることができた。
【0078】
面内/垂直異方性膜を含むこのような層状構造を持つ磁区制御膜を用いた場合、磁区制御膜を薄くすることができ、これは、ギャップを狭くすることに役立ち、USLへの漏洩磁場も減少させ得る。その結果、シールドの低下した透磁率による分解能の低下を防止することができる。さらに、磁区制御膜が薄くなるにつれてキャップ層も薄くすることができ、これは、分解能の向上につながる。
【0079】
次に図6を参照すると、一実施形態による方法600が示されている。方法600は、数ある中で図1〜図5に示したものを含む任意の所望の環境で行われ得る。さらに、方法600は、本明細書を読めば当業者には理解されるように、図6に示されるものよりも多い又は少ない動作を伴い得る。
【0080】
ある手法では、本明細書に開示されるような磁気ヘッドの形成方法600は、4つの動作に要約され得る。ある手法では、方法600は、動作602において下部シールド層を形成するステップと、後続の動作604において下部シールド層の上側にセンサー積層体を形成するステップとを含む。
【0081】
さらに別の手法では、特に先行技術と対照的に、方法600は、動作606において、下部シールド層の上側及び自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップも含む。さらに、図6の方法例を用いて形成された磁気ヘッドは、磁場を膜形成の面に対して垂直な方向に(例えば、自由層の側面に向けて)指向させる垂直異方性を有する自由層に向けて対向する層状硬質バイアス磁石の一部を有すると特徴付けられる。
【0082】
さらに、また別の手法によれば、動作608において、方法600は、層状硬質バイアス磁石及びセンサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップをさらに含む。
【0083】
さらなる実施形態では、本明細書に従った層状硬質バイアス磁石を備えた磁気ヘッドの形成は、さらに追加の動作を含み得る。例えば、ある手法では、層状硬質バイアス磁石の形成は、下部シールド層の上側に、センサー積層体のトラック幅方向の両面に位置合わせして垂直異方性膜を形成する(例えば、それはセンサー積層体の一方の面上に形成される)ステップを含み、本明細書を読めば当業者には理解されるように、シード層または他の任意の層などの中間層をそれらの間に含み得る。さらに、この形成の結果、垂直異方性膜は、磁場をその形成面に垂直な方向に指向させ、センサー積層体の両面上に形成された場合は、磁場をセンサー積層体に向けて指向させる。
【0084】
さらなる実施形態では、層状硬質バイアス磁石を備えた磁気ヘッドの形成は、面内異方性膜を垂直異方性膜の上側に形成するステップを含み得る。このような構成では、面内異方性膜は、面内異方性膜が形成された面の方向に磁場を指向させる。さらに、一実施形態では、面内異方性膜は、垂直異方性膜と磁気的に結合されてもよい。
【0085】
上記の実施形態のいずれにおいても、磁気ヘッドは、約20%〜約40%の間の厚さ比(面内異方性膜の厚さで除算した垂直異方性膜の厚さとして定義される)を有するとしてさらに特徴付けられ得る。さらに、面内異方性膜の異方性は、好ましくは、垂直異方性膜の異方性よりも低くなり得る。
【0086】
様々な実施形態を上に記載したが、これらは限定ではなく例示のみを目的として提示されたものであることを理解されたい。従って、本発明の実施形態の広さ及び範囲は、上記の実施形態例のいずれによっても制限されるものではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるものである。
【符号の説明】
【0087】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
129 コントローラ
500,550 磁気ヘッド
502 上部シールド層
504 下部シールド層
506 自由層
508 シード層
510 センサー積層体
512 面内異方性膜
518 垂直異方性膜
520 層状硬質バイアス磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部シールド層と、
前記下部シールド層の上側に配置されたセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、
前記下部シールド層の上側及び前記センサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石であって、
前記下部シールド層の上側に配置され、前記センサー積層体の前記トラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、
前記垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜と、
を含む層状硬質バイアス磁石と、
前記硬質バイアス磁石及び前記センサー積層体の上側に配置された上部シールド層と、
を含む磁気ヘッド。
【請求項2】
パーセントで表した、前記面内異方性膜の厚さで割った前記垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約15%〜約50%の間である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記厚さ比が約20%〜約40%の間である、請求項2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記層状硬質バイアス磁石の厚さが約5nm〜20nmの範囲にある、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記面内異方性膜の異方性が前記垂直異方性膜の異方性よりも低い、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記垂直異方性膜の前記異方性は、前記面内異方性膜の前記異方性の約2倍よりも大きい、請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記センサー積層体は、CPP(current perpendicular−to−plane)タイプのセンサーである、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記面内異方性膜は前記垂直異方性膜と磁気的に接続されている、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記センサー積層体の一方の面に対向する前記層状硬質バイアス磁石の表面は、前記センサー積層体に対して斜めである、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
前記磁気ヘッドのトラック幅は、約15nm〜約40nmの範囲にある、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
前記下部シールド層の上面から前記上部シールド層の下面までの距離(シールド間ギャップ)は、約18nm〜約30nmの範囲にある、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項12】
前記面内異方性膜がCoPtを含む、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項13】
前記硬質バイアス磁石の下側及び前記下部シールド層の上側に配置され、前記センサー積層体のトラック幅方向の面の少なくとも一部と位置合わせされたシード層をさらに含み、前記シード層は高Kuの材料を含む、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項14】
少なくとも1つの請求項1に記載の磁気ヘッドと、
磁気媒体と、
前記磁気媒体を前記少なくとも1つの磁気ヘッド上に通過させるドライブ機構と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するための前記少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に接続されたコントローラと、
を含む、磁気データ記憶システム。
【請求項15】
下部シールド層と、
前記下部シールド層の上側に配置されたCPP(current perpendicular−to−plane)センサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、
前記下部シールド層の上側及び前記センサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石であって、
前記下部シールド層の上側に配置され、前記センサー積層体の前記トラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、
前記垂直異方性膜の上側に配置される面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜と、
を含む層状硬質バイアス磁石と、
前記硬質バイアス磁石及び前記センサー積層体の上側に配置された上部シールド層と、
を含み、
パーセントで表した、前記面内異方性膜の厚さで割った前記垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約20%〜約40%の間であり、
前記面内異方性膜の異方性が前記垂直異方性膜の異方性よりも低い、磁気ヘッド。
【請求項16】
前記面内異方性膜は前記垂直異方性膜と磁気的に接続されている、請求項15に記載の磁気ヘッド。
【請求項17】
前記センサー積層体の一方の面に対向する前記層状硬質バイアス磁石の表面は、前記センサー積層体に対して斜めである、請求項15に記載の磁気ヘッド。
【請求項18】
前記面内異方性膜がCoPtを含む、請求項15に記載の磁気ヘッド。
【請求項19】
下部シールド層を形成するステップと、
前記下部シールド層の上側にセンサー積層体を形成するステップであって、前記センサー積層体は自由層を含む、ステップと、
前記下部シールド層の上側及び前記自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップであって、前記自由層に向かう前記層状硬質バイアス磁石の一部は、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性を有する、ステップと、
前記硬質バイアス磁石及び前記センサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記層状硬質バイアス磁石を形成するステップが、
前記下部シールド層の上側に、前記センサー積層体の前記トラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜を形成するステップであって、前記垂直異方性膜が磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる、ステップと、
前記垂直異方性膜の上側に面内異方性膜を形成するステップであって、前記面内異方性膜が磁場をその形成面の方向に指向させ、かつ前記面内異方性膜が前記垂直異方性膜と磁気的に接続される、ステップと、
を含み、
パーセントで表した、前記面内異方性膜の厚さで割った前記垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約20%〜約40%の間であり、かつ
前記面内異方性膜の異方性が前記垂直異方性膜の異方性よりも低い、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
下部シールド層と、
前記下部シールド層の上側に配置されたセンサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、
前記下部シールド層の上側及び前記センサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石であって、
前記下部シールド層の上側に配置され、前記センサー積層体の前記トラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、
前記垂直異方性膜の上側に配置された面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜と、
を含む層状硬質バイアス磁石と、
前記硬質バイアス磁石及び前記センサー積層体の上側に配置された上部シールド層と、
を含む磁気ヘッド。
【請求項2】
パーセントで表した、前記面内異方性膜の厚さで割った前記垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約15%〜約50%の間である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記厚さ比が約20%〜約40%の間である、請求項2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記層状硬質バイアス磁石の厚さが約5nm〜20nmの範囲にある、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記面内異方性膜の異方性が前記垂直異方性膜の異方性よりも低い、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記垂直異方性膜の前記異方性は、前記面内異方性膜の前記異方性の約2倍よりも大きい、請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記センサー積層体は、CPP(current perpendicular−to−plane)タイプのセンサーである、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記面内異方性膜は前記垂直異方性膜と磁気的に接続されている、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記センサー積層体の一方の面に対向する前記層状硬質バイアス磁石の表面は、前記センサー積層体に対して斜めである、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
前記磁気ヘッドのトラック幅は、約15nm〜約40nmの範囲にある、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
前記下部シールド層の上面から前記上部シールド層の下面までの距離(シールド間ギャップ)は、約18nm〜約30nmの範囲にある、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項12】
前記面内異方性膜がCoPtを含む、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項13】
前記硬質バイアス磁石の下側及び前記下部シールド層の上側に配置され、前記センサー積層体のトラック幅方向の面の少なくとも一部と位置合わせされたシード層をさらに含み、前記シード層は高Kuの材料を含む、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項14】
少なくとも1つの請求項1に記載の磁気ヘッドと、
磁気媒体と、
前記磁気媒体を前記少なくとも1つの磁気ヘッド上に通過させるドライブ機構と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するための前記少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に接続されたコントローラと、
を含む、磁気データ記憶システム。
【請求項15】
下部シールド層と、
前記下部シールド層の上側に配置されたCPP(current perpendicular−to−plane)センサー積層体であって、自由層を含むセンサー積層体と、
前記下部シールド層の上側及び前記センサー積層体のトラック幅方向の両面上に配置された層状硬質バイアス磁石であって、
前記下部シールド層の上側に配置され、前記センサー積層体の前記トラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜であって、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性膜と、
前記垂直異方性膜の上側に配置される面内異方性膜であって、磁場をその形成面の方向に指向させる面内異方性膜と、
を含む層状硬質バイアス磁石と、
前記硬質バイアス磁石及び前記センサー積層体の上側に配置された上部シールド層と、
を含み、
パーセントで表した、前記面内異方性膜の厚さで割った前記垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約20%〜約40%の間であり、
前記面内異方性膜の異方性が前記垂直異方性膜の異方性よりも低い、磁気ヘッド。
【請求項16】
前記面内異方性膜は前記垂直異方性膜と磁気的に接続されている、請求項15に記載の磁気ヘッド。
【請求項17】
前記センサー積層体の一方の面に対向する前記層状硬質バイアス磁石の表面は、前記センサー積層体に対して斜めである、請求項15に記載の磁気ヘッド。
【請求項18】
前記面内異方性膜がCoPtを含む、請求項15に記載の磁気ヘッド。
【請求項19】
下部シールド層を形成するステップと、
前記下部シールド層の上側にセンサー積層体を形成するステップであって、前記センサー積層体は自由層を含む、ステップと、
前記下部シールド層の上側及び前記自由層のトラック幅方向の両面上に層状硬質バイアス磁石を形成するステップであって、前記自由層に向かう前記層状硬質バイアス磁石の一部は、磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる垂直異方性を有する、ステップと、
前記硬質バイアス磁石及び前記センサー積層体の上側に上部シールド層を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記層状硬質バイアス磁石を形成するステップが、
前記下部シールド層の上側に、前記センサー積層体の前記トラック幅方向の両面と位置合わせされた垂直異方性膜を形成するステップであって、前記垂直異方性膜が磁場をその形成面に対して垂直な方向に指向させる、ステップと、
前記垂直異方性膜の上側に面内異方性膜を形成するステップであって、前記面内異方性膜が磁場をその形成面の方向に指向させ、かつ前記面内異方性膜が前記垂直異方性膜と磁気的に接続される、ステップと、
を含み、
パーセントで表した、前記面内異方性膜の厚さで割った前記垂直異方性膜の厚さとして定義される厚さ比が、約20%〜約40%の間であり、かつ
前記面内異方性膜の異方性が前記垂直異方性膜の異方性よりも低い、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【公開番号】特開2013−109822(P2013−109822A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253959(P2012−253959)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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