型枠加熱装置
【課題】加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する。
【解決手段】硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠6を、上面の開口部から内部に収容して加熱する箱形の加熱器本体1と、上記加熱器本体1の底面に設けられ該加熱器本体1を直立状態に保持する転倒防止部材2と、上記加熱器本体1の上面の開口部に着脱可能に装着され上記開口部を閉じる上蓋3と、上記加熱器本体1の側面の一部に接続され内部に蒸気を注入する蒸気注入管4と、上記加熱器本体1の側面の他の一部に接続され内部の蒸気を排出する蒸気排出管5とを備え、上記型枠6を加熱器本体1内に収容して蒸気を注入し該型枠6を硫黄の融点程度の温度まで加熱するものである。
【解決手段】硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠6を、上面の開口部から内部に収容して加熱する箱形の加熱器本体1と、上記加熱器本体1の底面に設けられ該加熱器本体1を直立状態に保持する転倒防止部材2と、上記加熱器本体1の上面の開口部に着脱可能に装着され上記開口部を閉じる上蓋3と、上記加熱器本体1の側面の一部に接続され内部に蒸気を注入する蒸気注入管4と、上記加熱器本体1の側面の他の一部に接続され内部の蒸気を排出する蒸気排出管5とを備え、上記型枠6を加熱器本体1内に収容して蒸気を注入し該型枠6を硫黄の融点程度の温度まで加熱するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する型枠加熱装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木用、建設用の資材として、骨材をセメントで結合させたコンクリートが用いられている。そして、従来のモルタル・コンクリートで製造された平板状のパネルでは、材料としての耐久性が不足することから、過酷
な環境下においては強度が不足することがあった。また、その強度を強化するために鉄筋、その他の補強材を入れることから、製品としての厚みが大きくなると共に重量も大きくなるものであった。このような状況において、土木用、建設用の資材として、強度の高い平板状のパネルが望まれている。
【0003】
これに対して、近年、常温では固体でありおよそ119℃〜159℃に加熱されると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄含有資材は、セメントを使用する通常のコンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られている。そして、硫黄含有資材は、通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、固化したものは硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設固化して施工することが困難である。このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合してその硫黄を変性し、改質硫黄を製造することが試みられている。また、この改質硫黄と微粉末とを混合して溶融状態の改質硫黄中間資材を製造すること、及び、この改質硫黄中間資材と骨材とを混合しこれを固化させて改質硫黄固化体を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そして、上述のような溶融状態の硫黄含有資材(又は改質硫黄中間資材)を冷却固化させて硫黄固化体(又は改質硫黄固化体)を成型するには、所定の形状をした型枠内に上記硫黄含有資材を流し込んで冷却固化させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005−82475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述のような溶融状態の硫黄含有資材は、硫黄の固化温度(約119℃)を下回った時点で固化し始めて、通常のコンクリート以上の高強度まで固化する。この場合、常温状態の型枠に溶融状態の硫黄含有資材をそのまま流し込むと、該型枠内に充填された硫黄含有資材が急激に冷却されて固化する過程において、型枠内で硫黄含有資材が収縮して硫黄固化体(具体的には硫黄固化体パネル)の上部又は内部に空洞ができたり、上面が陥没したり、表面に気泡ができ易いものであった。したがって、硫黄固化体(硫黄固化体パネル)の仕上がりがきれいではなく製品価値が劣るものであった。また、空洞が大きい場合は、補修不可能な場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、成型された硫黄固化体(具体的には硫黄固化体パネル)の上部又は内部に空洞ができたり、上面が陥没したり、表面に気泡ができたりしないようにするため、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する型枠加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による型枠加熱装置は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上面の開口部から内部に収容して加熱する箱形の加熱器本体と、上記加熱器本体の底面に設けられ該加熱器本体を直立状態に保持する転倒防止部材と、上記加熱器本体の上面の開口部に着脱可能に装着され上記開口部を閉じる上蓋と、上記加熱器本体の側面の一部に接続され内部に蒸気を注入する蒸気注入管と、上記加熱器本体の側面の他の一部に接続され内部の蒸気を排出する蒸気排出管とを備え、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱するものである。
【0010】
このような構成により、箱形の加熱器本体の底面に設けられた転倒防止部材で該加熱器本体を直立状態に保持した状態で、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上記加熱器本体の上面の開口部から内部に収容し、上記開口部に上蓋を装着して該開口部を閉じ、上記加熱器本体の側面の一部に接続された蒸気注入管で内部に蒸気を注入すると共に、該加熱器本体の側面の他の一部に接続された蒸気排出管で内部の蒸気を排出して、上記型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する。
【0011】
また、上記加熱器本体の上面の開口部の近傍には、上記上蓋を待機状態に置く上蓋受け部材を備えたものである。これにより、加熱器本体の上面の開口部の近傍に備えられた上蓋受け部材によって、上蓋を待機状態に置くことができる。
【0012】
さらに、上記加熱器本体の内部には、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させる水切り用スノコを備えたものである。これにより、加熱器本体の内部に備えられた水切り用スノコによって、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させる。
【0013】
さらにまた、上記型枠は、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成されたものである。これにより、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成された型枠を、硫黄の融点程度の温度まで加熱する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、箱形の加熱器本体の底面に設けられた転倒防止部材で該加熱器本体を直立状態に保持した状態で、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上記加熱器本体の上面の開口部から内部に収容し、上記開口部に上蓋を装着して該開口部を閉じ、上記加熱器本体の側面の一部に接続された蒸気注入管で内部に蒸気を注入すると共に、該加熱器本体の側面の他の一部に接続された蒸気排出管で内部の蒸気を排出して、上記型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱することができる。したがって、上記型枠に硫黄の融点以上に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填した際に、該型枠内に充填された硫黄含有資材が急激に冷却されて固化することがなく、成型された硫黄固化体パネルの上部又は内部に空洞ができたり、上面が陥没したり、表面に気泡ができたりしないようにして、製品の仕上がりを良くすることができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、加熱器本体の上面の開口部の近傍に備えられた上蓋受け部材によって、上蓋を待機状態に置くことができる。したがって、上記加熱器本体内に型枠を収容した状態で、上記開口部に容易に上蓋を被せて閉じることができる。
【0016】
さらに、請求項3に係る発明によれば、加熱器本体の内部に備えられた水切り用スノコによって、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させることができる。したがって、上記加熱器本体から取り出した型枠に付着した水分を減少させることができる。
【0017】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成された型枠を、硫黄の融点程度の温度まで加熱することができる。したがって、上記型枠を用いて、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を成型し固化させて薄板状の硫黄固化体パネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による型枠加熱装置の実施形態を示す平面図であり、加熱器本体の上面の開口部に上蓋を装着した状態を示す。
【図2】上記型枠加熱装置を示す正面図であり、加熱器本体の上面の開口部に上蓋を装着した状態を示す。
【図3】上記型枠加熱装置を示す右側面図であり、加熱器本体の上面の開口部の近傍に備えられた上蓋受け部材に上蓋を待機状態に置いた状態を示す。
【図4】上記型枠加熱装置で加熱する対象物である型枠を示す平面図である。
【図5】上記型枠を示す底面図である。
【図6】上記型枠を示す正面図である。
【図7】上記型枠を示す側面図である。
【図8】図4におけるA部を示す拡大図であり、(a)は口金取付け部の拡大平面図であり、(b)は口金取付け部の拡大側断面図である。
【図9】上記型枠加熱装置の使用状態を示す斜視図であり、型枠を挿入する状態を示す。
【図10】上記型枠加熱装置の使用状態を示す斜視図であり、型枠を挿入した後の状態を示す。
【図11】上記型枠加熱装置の使用状態を示す斜視図であり、型枠を挿入した後に上蓋を被せて型枠を加熱する状態を示す。
【図12】上記加熱後の型枠の上面開口部内に溶融状態の硫黄含有資材を充填する状態を示す斜視図である。
【図13】本発明による型枠加熱装置で加熱された型枠に硫黄含有資材を打設し、脱型して製造された硫黄固化体パネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による型枠加熱装置の実施形態を示す平面図、図2は図1の正面図、図3は図1の右側面図である。この型枠加熱装置は、加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱するもので、加熱器本体1と、転倒防止部材2と、上蓋3と、蒸気注入管4と、蒸気排出管5とを備えて成る。
【0020】
まず、本発明による型枠加熱装置で加熱する対象物である型枠について説明する。図4〜図7において、型枠6は、鉄等の金属でできており、偏平状箱形に形成されている。図4は、型枠6の平面図であり、底板7が例えば横長の長方形に形成され、上記底板7の周囲に所定高さの枠部材8が設けられている。そして、この底板7と四周の枠部材8とで、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成されている。この偏平状箱形の寸法は、例えば400mm(縦)×800mm(横)×12mm(高さ)とされている。なお、高さは、上記枠部材8の厚みにより40〜50mm程度まで大きくしてもよい。
【0021】
なお、図4において、符号9は製品としての硫黄固化体パネルの平面部に開ける孔を形成するための開孔用ピンであり、符号10は型枠6を運搬する際に手で持つ取っ手である。また、図5は、型枠6の底面図であり、底板7の裏面周囲に所定高さの断面L形の底部枠部材11が設けられ、上記底板7の裏面中央部の4箇所には後述の作業台に載置する際のズレ止め材12が設けられている。図6は型枠6の正面図であり、図7は上記型枠6の側面図である。
【0022】
図4,5において、一辺の枠部材8の2箇所には圧力エアを注入する口金13が取り付けられている。この口金13は、型枠6内で成型されたパネル状物を該型枠6から取り出す際に、パネル状物と型枠6との境界部分に圧力エアを注入するもので、図8(b)に示すように、底板7の表面にて枠部材8と底板7との境界部分にエア注入孔14が形成されている。このエア注入孔14から圧力エアを注入することで、型枠6内で成型されたパネル状物を剥離させて該型枠6から取り出すことができる。なお、図8(b)に示すように、底板7の表面に接する枠部材8の内周縁部は内向きの傾斜面とされている。これにより、上記型枠6内で成型されるパネル状物は、平板状の一方の面の周縁部が面取り状に形成される。
【0023】
上述のように構成された型枠6を加熱する型枠加熱装置は、図1〜図3に示すように構成されている。まず、加熱器本体1は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠6を、上面の開口部16(図3参照)から内部に収容して加熱するもので、鉄等の金属でできており、上記型枠6を収容し得る縦置き型の箱形に形成されている。具体的には、上記型枠6の偏平状箱形の寸法が、例えば400mm(縦)×800mm(横)×12mm(高さ)とされているので、この大きさの型枠6の板面を略垂直にして内部に挿入可能な空間を有する箱形に形成されている。そして、上面の開口部16以外の周囲の4側面及び底面は板材で閉じられており、上記開口部16に後述の上蓋3を被せることで、型枠6を挿入する内部空間が密閉されるようになっている。なお、この加熱器本体1の寸法は、上記のものに限られず、加熱すべき型枠6の大きさに応じて適宜選択すればよい。
【0024】
上記加熱器本体1の底面には、転倒防止部材2が設けられている。この転倒防止部材2は、上記加熱器本体1を直立状態に保持するもので、図2に示すように例えば断面コ字形の鉄製等のチャンネル材から成り、図1に示すように上記加熱器本体1の奥行き寸法の約3倍程度の長さを有し、その加熱器本体1の横幅寸法の両端部及びその中間を等分に分ける位置に複数本(図1及び図2の例では4本)設けられている。なお、この転倒防止部材2の本数は、4本に限られず、加熱器本体1の横幅寸法の両端部の2本を含み、3本又は5本以上でもよい。また、これらの転倒防止部材2の位置に合わせて、加熱器本体1の前側面及び後側面にて該加熱器本体1を直立状態に支持すると共に加熱器本体1にかかる水蒸気の圧力に対する補強の働きをする補助部材17が立てて設けられている。この補助部材17も、例えば断面コ字形の鉄製等のチャンネル材から成る。
【0025】
上記加熱器本体1の上面の開口部16には、上蓋3が着脱可能に装着される。この上蓋3は、上記開口部16を閉じるもので、鉄等の金属でできており、図1に示すように、上記加熱器本体1の開口部16(図3参照)の全体を覆う大きさの平板状に形成され、上記開口部16の周縁部に出っ張って設けられたフランジ18(図9、図10参照)にボルト19を締め付けて固定されるようになっている。
【0026】
そして、上記加熱器本体1の上面の開口部16の近傍には、上蓋受け部材20が設けられている。この上蓋受け部材20は、上記開口部16を閉じる前の上蓋3を待機状態に置くもので、図3に示すように、加熱器本体1の上部にて一方の側面側に向けて水平方向に延びて設けられ、例えば断面コ字形の鉄製等のチャンネル材から成る。なお、図1〜図3において、符号21は上蓋3を移動する際に手で持つ把持部を示している。
【0027】
上記加熱器本体1の側面の一部には、図2に示すように、蒸気注入管4が接続されている。この蒸気注入管4は、上記加熱器本体1の内部に蒸気を注入するもので、図示外のボイラー室から蒸気を供給する配管に接続される。また、上記加熱器本体1の側面の他の一部には、蒸気排出管5が接続されている。この蒸気排出管5は、上記加熱器本体1の内部の蒸気を排出するもので、図示外のボイラー室に蒸気を戻す配管に接続される。なお、符号22は蒸気注入管4に挿入された、注入蒸気の圧力を計測する圧力メータを示し、符号23は蒸気注入管4に設けられた蒸気の開閉バルブを示し、符号24は蒸気排出管5に設けられた蒸気の開閉バルブを示している。
【0028】
さらに、上記加熱器本体1の内部には、図2及び図3に示すように、水切り用スノコ25が備えられている。この水切り用スノコ25は、上記加熱器本体1の内部に収容された型枠6の下部を支持して該型枠6に付着した水分を滴下させるもので、鉄等の金属でできており、加熱器本体1の内部にて底面に近い位置に、図2に示すように、加熱器本体1の横幅寸法の全長にわたってスノコ状の棚に形成されている。
【0029】
なお、図3において、符号26は、前記加熱器本体1の底面にて該加熱器本体1を直立状態に保持する転倒防止部材2の一端部と、上記加熱器本体1の前側面にて該加熱器本体1を直立状態に支持すると共に加熱器本体1にかかる水蒸気の圧力に対する補強の働きをする補助部材17の上端部との間に斜めに張り渡された補強用のチャンネル材を示している。このチャンネル材26は、型枠6の仮置き用としても使用できる。
【0030】
次に、このように構成された型枠加熱装置の使用について、図9〜図11を参照して説明する。まず、図4〜図7のように構成された型枠6を、図9に示すように、縦置き型の箱形に形成された加熱器本体1の上面の開口部16から内部に挿入する。次に、図10に示す上蓋3の把持部21を持って、上面の開口部16に、図11に示すように上蓋3を被せて、周囲のボルト19を締め付けて上蓋3を固定する。この状態で、蒸気注入管4の開閉バルブ23を開いて加熱器本体1の内部に蒸気を注入すると共に、蒸気排出管5の開閉バルブ24を開いて加熱器本体1の内部の蒸気を排出して、上記型枠6を硫黄の融点(119℃)程度の温度まで加熱する。この場合、例えば1.5〜2気圧に加圧した水蒸気を4〜5分間注入して、型枠6を120〜130℃程度まで加熱する。
【0031】
これにより、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠6を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠6を加熱器本体1内に収容して硫黄の融点程度の温度まで加熱することができる。そして、上記型枠6を加熱した後は、図11において、ボルト19を緩めて上蓋3を外し、内部に挿入された型枠6を取っ手10を持って取り出して、後工程に送ればよい。
【0032】
図12は、後工程において型枠6の上面開口部内に溶融状態の硫黄含有資材を打設する状態を示す斜視図である。この打設工程では、図11において、加熱器本体1から加熱後の型枠6を取り出し、図12に示す作業台27の上面に載置して該型枠6内に溶融状態の硫黄含有資材を充填する。すなわち、型枠6の取っ手10を持って作業台27の上方へ運搬し、裏面側の底部枠部材11及びズレ止め材12(図5参照)を作業台27の上面に置いて上面開口部を上にして型枠6を水平に載置し、容器28内に収容された溶融状態の硫黄含有資材29を型枠6の上面開口部内にて全面に拡がるように充填して、硫黄含有資材29を型枠6に打設する。このとき、上記作業台27に振動を加えて型枠6を振動させながら溶融状態の硫黄含有資材29を充填してもよい。これは、充填された硫黄含有資材29の内部に空洞ができ難いようにするためである。
【0033】
なお、上記型枠6内に硫黄含有資材29を充填する前に、該型枠6の上面開口部内に剥離材を塗布しておくとよい。これは、型枠6内に充填されて成型されたパネル状物を該型枠6から取り出す際に脱型し易いようにするためである。また、図8(a),(b)に示す圧力エアを注入する口金13のエア注入孔14をグリスアップして拭き取り、エアの通りを良くしておくとよい。
【0034】
ここで、上記硫黄含有資材29について説明する。この硫黄含有資材は、常温では固体でありおよそ119〜159℃で溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上の設定温度範囲内に加熱して溶融させた硫黄に石炭灰や砂、砂利等を混合して、およそ119〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。又は、同様に加熱して溶融させた硫黄と、この溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に石炭灰や砂、砂利等を混合して、上記と同様に加熱しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した改質硫黄固化体と呼ばれるものである。すなわち、硫黄含有資材の中には、上記硫黄固化体と改質硫黄固化体とを含むものであり、以下において、単に硫黄固化体と表記した場合は、改質硫黄固化体を含んだ意味であるとする。
【0035】
上記改質硫黄固化体について更に詳細に説明する。改質硫黄固化体は、硫黄と、硫黄改質剤と、微細粉と、骨材とを原料として製造される。まず、溶融した硫黄と硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造する。硫黄は、通常の単体硫黄であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。硫黄改質剤は、溶融硫黄を変性、例えば硫黄を重合することによって改質する。この硫黄改質剤としては、硫黄を重合し得る化合物であればよく、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン(DCPD)及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラハイドロインデン(THI)、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。上記硫黄と硫黄改質剤との混合は、硫黄が溶融した状態、すなわち119〜159℃、好ましくは130〜150℃の温度で行われる。
【0036】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することで得ることができるが、このときの硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に1.0〜20質量%の割合が好ましい。得られた改質硫黄は、所定の温度(例えば140℃)に加温された微細粉と混合されて改質硫黄中間資材とされる。微細粉としては、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、ガラス粉末、燃料焼却灰、電気集塵灰及び貝殻粉砕物のうち1種又は2種以上を選択すればよい。
【0037】
上記得られた改質硫黄中間資材は、溶融状態を保つことのできる温度(例えば130〜140℃)に保持された状態で、例えば130〜140℃程度に加温された骨材と混合される。この骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されず、一般にコンクリートで用いられる骨材を使用できる。このような骨材としては、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記の改質硫黄中間資材と骨材とを、例えば混練装置を用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、これを冷却して固化させることで改質硫黄固化体が製造される。このような改質硫黄固化体は、例えば特許第4007997号公報に記載された改質硫黄固化体製造システムを使用して製造することができる。
【0038】
上述のような硫黄含有資材29を、図12に示すように型枠6の上面開口部内に打設した後、その型枠6を空気中で自然冷却にて徐冷し、この自然冷却後の型枠6内で成型されたパネル状物を該型枠6から取り出して脱型し、この取り出されたパネル状物を空気中で冷却して養生する工程を順次行う。
【0039】
以上の工程を実行することにより、硫黄含有資材29を型枠6(図4〜図6参照)を用いて成型し固化させて、図13に示すように、硫黄固化体パネル30を製造することができる。具体的には、例えば、400mm(縦)×800mm(横)×12mm(厚さ)で重量約8.5kgの硫黄固化体パネル30が製造される。なお、硫黄固化体パネル30の厚さは、型枠6の枠部材8の厚みを大きくすることにより40〜50mm程度まで大きくすることもできる。また、符号31は、図4に示す型枠6の開孔用ピン9で硫黄固化体パネル30の平面部に開けられた孔を示している。
【0040】
なお、このようにして製造された硫黄固化体パネル30は、土木用、建設用の資材として広く利用することができる。例えば、下水道施設向けの耐腐食性資材として利用される。
【符号の説明】
【0041】
1…加熱器本体
2…転倒防止部材
3…上蓋
4…蒸気注入管
5…蒸気排出管
6…型枠
16…開口部
17…補助部材
18…フランジ
19…ボルト
20…上蓋受け部材
21…上蓋の把持部
25…水切り用スノコ
29…硫黄含有資材
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する型枠加熱装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木用、建設用の資材として、骨材をセメントで結合させたコンクリートが用いられている。そして、従来のモルタル・コンクリートで製造された平板状のパネルでは、材料としての耐久性が不足することから、過酷
な環境下においては強度が不足することがあった。また、その強度を強化するために鉄筋、その他の補強材を入れることから、製品としての厚みが大きくなると共に重量も大きくなるものであった。このような状況において、土木用、建設用の資材として、強度の高い平板状のパネルが望まれている。
【0003】
これに対して、近年、常温では固体でありおよそ119℃〜159℃に加熱されると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄含有資材は、セメントを使用する通常のコンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られている。そして、硫黄含有資材は、通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、固化したものは硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設固化して施工することが困難である。このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合してその硫黄を変性し、改質硫黄を製造することが試みられている。また、この改質硫黄と微粉末とを混合して溶融状態の改質硫黄中間資材を製造すること、及び、この改質硫黄中間資材と骨材とを混合しこれを固化させて改質硫黄固化体を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そして、上述のような溶融状態の硫黄含有資材(又は改質硫黄中間資材)を冷却固化させて硫黄固化体(又は改質硫黄固化体)を成型するには、所定の形状をした型枠内に上記硫黄含有資材を流し込んで冷却固化させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005−82475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述のような溶融状態の硫黄含有資材は、硫黄の固化温度(約119℃)を下回った時点で固化し始めて、通常のコンクリート以上の高強度まで固化する。この場合、常温状態の型枠に溶融状態の硫黄含有資材をそのまま流し込むと、該型枠内に充填された硫黄含有資材が急激に冷却されて固化する過程において、型枠内で硫黄含有資材が収縮して硫黄固化体(具体的には硫黄固化体パネル)の上部又は内部に空洞ができたり、上面が陥没したり、表面に気泡ができ易いものであった。したがって、硫黄固化体(硫黄固化体パネル)の仕上がりがきれいではなく製品価値が劣るものであった。また、空洞が大きい場合は、補修不可能な場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、成型された硫黄固化体(具体的には硫黄固化体パネル)の上部又は内部に空洞ができたり、上面が陥没したり、表面に気泡ができたりしないようにするため、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する型枠加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による型枠加熱装置は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上面の開口部から内部に収容して加熱する箱形の加熱器本体と、上記加熱器本体の底面に設けられ該加熱器本体を直立状態に保持する転倒防止部材と、上記加熱器本体の上面の開口部に着脱可能に装着され上記開口部を閉じる上蓋と、上記加熱器本体の側面の一部に接続され内部に蒸気を注入する蒸気注入管と、上記加熱器本体の側面の他の一部に接続され内部の蒸気を排出する蒸気排出管とを備え、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱するものである。
【0010】
このような構成により、箱形の加熱器本体の底面に設けられた転倒防止部材で該加熱器本体を直立状態に保持した状態で、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上記加熱器本体の上面の開口部から内部に収容し、上記開口部に上蓋を装着して該開口部を閉じ、上記加熱器本体の側面の一部に接続された蒸気注入管で内部に蒸気を注入すると共に、該加熱器本体の側面の他の一部に接続された蒸気排出管で内部の蒸気を排出して、上記型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱する。
【0011】
また、上記加熱器本体の上面の開口部の近傍には、上記上蓋を待機状態に置く上蓋受け部材を備えたものである。これにより、加熱器本体の上面の開口部の近傍に備えられた上蓋受け部材によって、上蓋を待機状態に置くことができる。
【0012】
さらに、上記加熱器本体の内部には、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させる水切り用スノコを備えたものである。これにより、加熱器本体の内部に備えられた水切り用スノコによって、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させる。
【0013】
さらにまた、上記型枠は、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成されたものである。これにより、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成された型枠を、硫黄の融点程度の温度まで加熱する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、箱形の加熱器本体の底面に設けられた転倒防止部材で該加熱器本体を直立状態に保持した状態で、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上記加熱器本体の上面の開口部から内部に収容し、上記開口部に上蓋を装着して該開口部を閉じ、上記加熱器本体の側面の一部に接続された蒸気注入管で内部に蒸気を注入すると共に、該加熱器本体の側面の他の一部に接続された蒸気排出管で内部の蒸気を排出して、上記型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱することができる。したがって、上記型枠に硫黄の融点以上に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填した際に、該型枠内に充填された硫黄含有資材が急激に冷却されて固化することがなく、成型された硫黄固化体パネルの上部又は内部に空洞ができたり、上面が陥没したり、表面に気泡ができたりしないようにして、製品の仕上がりを良くすることができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、加熱器本体の上面の開口部の近傍に備えられた上蓋受け部材によって、上蓋を待機状態に置くことができる。したがって、上記加熱器本体内に型枠を収容した状態で、上記開口部に容易に上蓋を被せて閉じることができる。
【0016】
さらに、請求項3に係る発明によれば、加熱器本体の内部に備えられた水切り用スノコによって、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させることができる。したがって、上記加熱器本体から取り出した型枠に付着した水分を減少させることができる。
【0017】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成された型枠を、硫黄の融点程度の温度まで加熱することができる。したがって、上記型枠を用いて、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を成型し固化させて薄板状の硫黄固化体パネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による型枠加熱装置の実施形態を示す平面図であり、加熱器本体の上面の開口部に上蓋を装着した状態を示す。
【図2】上記型枠加熱装置を示す正面図であり、加熱器本体の上面の開口部に上蓋を装着した状態を示す。
【図3】上記型枠加熱装置を示す右側面図であり、加熱器本体の上面の開口部の近傍に備えられた上蓋受け部材に上蓋を待機状態に置いた状態を示す。
【図4】上記型枠加熱装置で加熱する対象物である型枠を示す平面図である。
【図5】上記型枠を示す底面図である。
【図6】上記型枠を示す正面図である。
【図7】上記型枠を示す側面図である。
【図8】図4におけるA部を示す拡大図であり、(a)は口金取付け部の拡大平面図であり、(b)は口金取付け部の拡大側断面図である。
【図9】上記型枠加熱装置の使用状態を示す斜視図であり、型枠を挿入する状態を示す。
【図10】上記型枠加熱装置の使用状態を示す斜視図であり、型枠を挿入した後の状態を示す。
【図11】上記型枠加熱装置の使用状態を示す斜視図であり、型枠を挿入した後に上蓋を被せて型枠を加熱する状態を示す。
【図12】上記加熱後の型枠の上面開口部内に溶融状態の硫黄含有資材を充填する状態を示す斜視図である。
【図13】本発明による型枠加熱装置で加熱された型枠に硫黄含有資材を打設し、脱型して製造された硫黄固化体パネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による型枠加熱装置の実施形態を示す平面図、図2は図1の正面図、図3は図1の右側面図である。この型枠加熱装置は、加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱するもので、加熱器本体1と、転倒防止部材2と、上蓋3と、蒸気注入管4と、蒸気排出管5とを備えて成る。
【0020】
まず、本発明による型枠加熱装置で加熱する対象物である型枠について説明する。図4〜図7において、型枠6は、鉄等の金属でできており、偏平状箱形に形成されている。図4は、型枠6の平面図であり、底板7が例えば横長の長方形に形成され、上記底板7の周囲に所定高さの枠部材8が設けられている。そして、この底板7と四周の枠部材8とで、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成されている。この偏平状箱形の寸法は、例えば400mm(縦)×800mm(横)×12mm(高さ)とされている。なお、高さは、上記枠部材8の厚みにより40〜50mm程度まで大きくしてもよい。
【0021】
なお、図4において、符号9は製品としての硫黄固化体パネルの平面部に開ける孔を形成するための開孔用ピンであり、符号10は型枠6を運搬する際に手で持つ取っ手である。また、図5は、型枠6の底面図であり、底板7の裏面周囲に所定高さの断面L形の底部枠部材11が設けられ、上記底板7の裏面中央部の4箇所には後述の作業台に載置する際のズレ止め材12が設けられている。図6は型枠6の正面図であり、図7は上記型枠6の側面図である。
【0022】
図4,5において、一辺の枠部材8の2箇所には圧力エアを注入する口金13が取り付けられている。この口金13は、型枠6内で成型されたパネル状物を該型枠6から取り出す際に、パネル状物と型枠6との境界部分に圧力エアを注入するもので、図8(b)に示すように、底板7の表面にて枠部材8と底板7との境界部分にエア注入孔14が形成されている。このエア注入孔14から圧力エアを注入することで、型枠6内で成型されたパネル状物を剥離させて該型枠6から取り出すことができる。なお、図8(b)に示すように、底板7の表面に接する枠部材8の内周縁部は内向きの傾斜面とされている。これにより、上記型枠6内で成型されるパネル状物は、平板状の一方の面の周縁部が面取り状に形成される。
【0023】
上述のように構成された型枠6を加熱する型枠加熱装置は、図1〜図3に示すように構成されている。まず、加熱器本体1は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠6を、上面の開口部16(図3参照)から内部に収容して加熱するもので、鉄等の金属でできており、上記型枠6を収容し得る縦置き型の箱形に形成されている。具体的には、上記型枠6の偏平状箱形の寸法が、例えば400mm(縦)×800mm(横)×12mm(高さ)とされているので、この大きさの型枠6の板面を略垂直にして内部に挿入可能な空間を有する箱形に形成されている。そして、上面の開口部16以外の周囲の4側面及び底面は板材で閉じられており、上記開口部16に後述の上蓋3を被せることで、型枠6を挿入する内部空間が密閉されるようになっている。なお、この加熱器本体1の寸法は、上記のものに限られず、加熱すべき型枠6の大きさに応じて適宜選択すればよい。
【0024】
上記加熱器本体1の底面には、転倒防止部材2が設けられている。この転倒防止部材2は、上記加熱器本体1を直立状態に保持するもので、図2に示すように例えば断面コ字形の鉄製等のチャンネル材から成り、図1に示すように上記加熱器本体1の奥行き寸法の約3倍程度の長さを有し、その加熱器本体1の横幅寸法の両端部及びその中間を等分に分ける位置に複数本(図1及び図2の例では4本)設けられている。なお、この転倒防止部材2の本数は、4本に限られず、加熱器本体1の横幅寸法の両端部の2本を含み、3本又は5本以上でもよい。また、これらの転倒防止部材2の位置に合わせて、加熱器本体1の前側面及び後側面にて該加熱器本体1を直立状態に支持すると共に加熱器本体1にかかる水蒸気の圧力に対する補強の働きをする補助部材17が立てて設けられている。この補助部材17も、例えば断面コ字形の鉄製等のチャンネル材から成る。
【0025】
上記加熱器本体1の上面の開口部16には、上蓋3が着脱可能に装着される。この上蓋3は、上記開口部16を閉じるもので、鉄等の金属でできており、図1に示すように、上記加熱器本体1の開口部16(図3参照)の全体を覆う大きさの平板状に形成され、上記開口部16の周縁部に出っ張って設けられたフランジ18(図9、図10参照)にボルト19を締め付けて固定されるようになっている。
【0026】
そして、上記加熱器本体1の上面の開口部16の近傍には、上蓋受け部材20が設けられている。この上蓋受け部材20は、上記開口部16を閉じる前の上蓋3を待機状態に置くもので、図3に示すように、加熱器本体1の上部にて一方の側面側に向けて水平方向に延びて設けられ、例えば断面コ字形の鉄製等のチャンネル材から成る。なお、図1〜図3において、符号21は上蓋3を移動する際に手で持つ把持部を示している。
【0027】
上記加熱器本体1の側面の一部には、図2に示すように、蒸気注入管4が接続されている。この蒸気注入管4は、上記加熱器本体1の内部に蒸気を注入するもので、図示外のボイラー室から蒸気を供給する配管に接続される。また、上記加熱器本体1の側面の他の一部には、蒸気排出管5が接続されている。この蒸気排出管5は、上記加熱器本体1の内部の蒸気を排出するもので、図示外のボイラー室に蒸気を戻す配管に接続される。なお、符号22は蒸気注入管4に挿入された、注入蒸気の圧力を計測する圧力メータを示し、符号23は蒸気注入管4に設けられた蒸気の開閉バルブを示し、符号24は蒸気排出管5に設けられた蒸気の開閉バルブを示している。
【0028】
さらに、上記加熱器本体1の内部には、図2及び図3に示すように、水切り用スノコ25が備えられている。この水切り用スノコ25は、上記加熱器本体1の内部に収容された型枠6の下部を支持して該型枠6に付着した水分を滴下させるもので、鉄等の金属でできており、加熱器本体1の内部にて底面に近い位置に、図2に示すように、加熱器本体1の横幅寸法の全長にわたってスノコ状の棚に形成されている。
【0029】
なお、図3において、符号26は、前記加熱器本体1の底面にて該加熱器本体1を直立状態に保持する転倒防止部材2の一端部と、上記加熱器本体1の前側面にて該加熱器本体1を直立状態に支持すると共に加熱器本体1にかかる水蒸気の圧力に対する補強の働きをする補助部材17の上端部との間に斜めに張り渡された補強用のチャンネル材を示している。このチャンネル材26は、型枠6の仮置き用としても使用できる。
【0030】
次に、このように構成された型枠加熱装置の使用について、図9〜図11を参照して説明する。まず、図4〜図7のように構成された型枠6を、図9に示すように、縦置き型の箱形に形成された加熱器本体1の上面の開口部16から内部に挿入する。次に、図10に示す上蓋3の把持部21を持って、上面の開口部16に、図11に示すように上蓋3を被せて、周囲のボルト19を締め付けて上蓋3を固定する。この状態で、蒸気注入管4の開閉バルブ23を開いて加熱器本体1の内部に蒸気を注入すると共に、蒸気排出管5の開閉バルブ24を開いて加熱器本体1の内部の蒸気を排出して、上記型枠6を硫黄の融点(119℃)程度の温度まで加熱する。この場合、例えば1.5〜2気圧に加圧した水蒸気を4〜5分間注入して、型枠6を120〜130℃程度まで加熱する。
【0031】
これにより、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を型枠6を用いて成型し固化させて硫黄固化体パネルを製造する際に、上記型枠6を加熱器本体1内に収容して硫黄の融点程度の温度まで加熱することができる。そして、上記型枠6を加熱した後は、図11において、ボルト19を緩めて上蓋3を外し、内部に挿入された型枠6を取っ手10を持って取り出して、後工程に送ればよい。
【0032】
図12は、後工程において型枠6の上面開口部内に溶融状態の硫黄含有資材を打設する状態を示す斜視図である。この打設工程では、図11において、加熱器本体1から加熱後の型枠6を取り出し、図12に示す作業台27の上面に載置して該型枠6内に溶融状態の硫黄含有資材を充填する。すなわち、型枠6の取っ手10を持って作業台27の上方へ運搬し、裏面側の底部枠部材11及びズレ止め材12(図5参照)を作業台27の上面に置いて上面開口部を上にして型枠6を水平に載置し、容器28内に収容された溶融状態の硫黄含有資材29を型枠6の上面開口部内にて全面に拡がるように充填して、硫黄含有資材29を型枠6に打設する。このとき、上記作業台27に振動を加えて型枠6を振動させながら溶融状態の硫黄含有資材29を充填してもよい。これは、充填された硫黄含有資材29の内部に空洞ができ難いようにするためである。
【0033】
なお、上記型枠6内に硫黄含有資材29を充填する前に、該型枠6の上面開口部内に剥離材を塗布しておくとよい。これは、型枠6内に充填されて成型されたパネル状物を該型枠6から取り出す際に脱型し易いようにするためである。また、図8(a),(b)に示す圧力エアを注入する口金13のエア注入孔14をグリスアップして拭き取り、エアの通りを良くしておくとよい。
【0034】
ここで、上記硫黄含有資材29について説明する。この硫黄含有資材は、常温では固体でありおよそ119〜159℃で溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上の設定温度範囲内に加熱して溶融させた硫黄に石炭灰や砂、砂利等を混合して、およそ119〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。又は、同様に加熱して溶融させた硫黄と、この溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に石炭灰や砂、砂利等を混合して、上記と同様に加熱しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した改質硫黄固化体と呼ばれるものである。すなわち、硫黄含有資材の中には、上記硫黄固化体と改質硫黄固化体とを含むものであり、以下において、単に硫黄固化体と表記した場合は、改質硫黄固化体を含んだ意味であるとする。
【0035】
上記改質硫黄固化体について更に詳細に説明する。改質硫黄固化体は、硫黄と、硫黄改質剤と、微細粉と、骨材とを原料として製造される。まず、溶融した硫黄と硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造する。硫黄は、通常の単体硫黄であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。硫黄改質剤は、溶融硫黄を変性、例えば硫黄を重合することによって改質する。この硫黄改質剤としては、硫黄を重合し得る化合物であればよく、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン(DCPD)及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラハイドロインデン(THI)、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。上記硫黄と硫黄改質剤との混合は、硫黄が溶融した状態、すなわち119〜159℃、好ましくは130〜150℃の温度で行われる。
【0036】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することで得ることができるが、このときの硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に1.0〜20質量%の割合が好ましい。得られた改質硫黄は、所定の温度(例えば140℃)に加温された微細粉と混合されて改質硫黄中間資材とされる。微細粉としては、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、ガラス粉末、燃料焼却灰、電気集塵灰及び貝殻粉砕物のうち1種又は2種以上を選択すればよい。
【0037】
上記得られた改質硫黄中間資材は、溶融状態を保つことのできる温度(例えば130〜140℃)に保持された状態で、例えば130〜140℃程度に加温された骨材と混合される。この骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されず、一般にコンクリートで用いられる骨材を使用できる。このような骨材としては、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記の改質硫黄中間資材と骨材とを、例えば混練装置を用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、これを冷却して固化させることで改質硫黄固化体が製造される。このような改質硫黄固化体は、例えば特許第4007997号公報に記載された改質硫黄固化体製造システムを使用して製造することができる。
【0038】
上述のような硫黄含有資材29を、図12に示すように型枠6の上面開口部内に打設した後、その型枠6を空気中で自然冷却にて徐冷し、この自然冷却後の型枠6内で成型されたパネル状物を該型枠6から取り出して脱型し、この取り出されたパネル状物を空気中で冷却して養生する工程を順次行う。
【0039】
以上の工程を実行することにより、硫黄含有資材29を型枠6(図4〜図6参照)を用いて成型し固化させて、図13に示すように、硫黄固化体パネル30を製造することができる。具体的には、例えば、400mm(縦)×800mm(横)×12mm(厚さ)で重量約8.5kgの硫黄固化体パネル30が製造される。なお、硫黄固化体パネル30の厚さは、型枠6の枠部材8の厚みを大きくすることにより40〜50mm程度まで大きくすることもできる。また、符号31は、図4に示す型枠6の開孔用ピン9で硫黄固化体パネル30の平面部に開けられた孔を示している。
【0040】
なお、このようにして製造された硫黄固化体パネル30は、土木用、建設用の資材として広く利用することができる。例えば、下水道施設向けの耐腐食性資材として利用される。
【符号の説明】
【0041】
1…加熱器本体
2…転倒防止部材
3…上蓋
4…蒸気注入管
5…蒸気排出管
6…型枠
16…開口部
17…補助部材
18…フランジ
19…ボルト
20…上蓋受け部材
21…上蓋の把持部
25…水切り用スノコ
29…硫黄含有資材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上面の開口部から内部に収容して加熱する箱形の加熱器本体と、
上記加熱器本体の底面に設けられ該加熱器本体を直立状態に保持する転倒防止部材と、
上記加熱器本体の上面の開口部に着脱可能に装着され上記開口部を閉じる上蓋と、
上記加熱器本体の側面の一部に接続され内部に蒸気を注入する蒸気注入管と、
上記加熱器本体の側面の他の一部に接続され内部の蒸気を排出する蒸気排出管と、を備え、
上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱することを特徴とする型枠加熱装置。
【請求項2】
上記加熱器本体の上面の開口部の近傍には、上記上蓋を待機状態に置く上蓋受け部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の型枠加熱装置。
【請求項3】
上記加熱器本体の内部には、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させる水切り用スノコを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の型枠加熱装置。
【請求項4】
上記型枠は、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型枠加熱装置。
【請求項1】
硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を充填するための型枠を、上面の開口部から内部に収容して加熱する箱形の加熱器本体と、
上記加熱器本体の底面に設けられ該加熱器本体を直立状態に保持する転倒防止部材と、
上記加熱器本体の上面の開口部に着脱可能に装着され上記開口部を閉じる上蓋と、
上記加熱器本体の側面の一部に接続され内部に蒸気を注入する蒸気注入管と、
上記加熱器本体の側面の他の一部に接続され内部の蒸気を排出する蒸気排出管と、を備え、
上記型枠を加熱器本体内に収容して蒸気を注入し該型枠を硫黄の融点程度の温度まで加熱することを特徴とする型枠加熱装置。
【請求項2】
上記加熱器本体の上面の開口部の近傍には、上記上蓋を待機状態に置く上蓋受け部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の型枠加熱装置。
【請求項3】
上記加熱器本体の内部には、内部に収容された型枠の下部を支持して該型枠に付着した水分を滴下させる水切り用スノコを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の型枠加熱装置。
【請求項4】
上記型枠は、上面開口形で底面積に対して高さ寸法が小さい偏平状箱形に形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型枠加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−202487(P2010−202487A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52958(P2009−52958)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(390015336)株式会社上田商会 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(390015336)株式会社上田商会 (8)
【Fターム(参考)】
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