説明

型焼きベーカリー食品の製造方法

【課題】食感や風味を変えることなく、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地、シュー生地等の水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を示し、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる、型焼きベーカリー食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】焼型の底面に、餅様生地を敷き、その上にベーカリー生地を入れ、焼成することを特徴とする型焼きベーカリー食品の製造方法。上記餅様生地は、穀類、水分及び糖類からなる求肥生地であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼型を使用してベーカリー生地を焼成する、型焼きベーカリー食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食パンやデニッシュ、マドレーヌやフィナンシェなどのベーカリー生地を、パン型、パウンド型、あるいは、カップ状の型展板などの焼型に入れて焼成することで得られる、型焼きベーカリー食品を製造する場合、一般に離型油を塗布して焼成する。
これは、離型油を使用しないと、焼成時にベーカリー生地中の穀粉類が糊化し、これが焼型にはりついて焦げつき、型剥れ(離型性)が困難になってしまうからである。
【0003】
ここで、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地、シュー生地等の水分が多く常温で流動性を有するベーカリー生地を使用した場合、特に油分含量が低いものであると、たとえ離型油を塗布してから焼成した場合であっても離型性は極めて悪い。これは生地中に含まれる水分が多いため、澱粉の糊化の際に生地中に含まれる油分や離型油の油分が澱粉ゲル中にとり込まれた形となるため、焼型と生地の界面に油分は流れ出さず、そのために焼成中に焼型と生地の間隙に流れ出すことがなく、離型性が得られないものと思われる。
このため、これらのベーカリー生地を焼成する場合、金属製の焼型よりは紙製の焼型の方が焦げつきにくいことから、カップケーキ型、マフィンケーキ型等の紙製の焼型を使用して焼成し、喫食時に紙を剥すという方法をとるか、金属製の焼型を使用する場合であっては敷紙を敷いて焼成し、放冷後に紙を剥すという方法をとるが、紙はベーカリー生地が染み込みやすく、そのため、焼成品から紙を剥す際に、シューのように中空形状であったり、パネトーネのようにヒキが強いベーカリー食品の場合は、紙を剥す際に簡単に損壊してしまい、商品価値を著しく損なうことになってしまう。
【0004】
そのため、水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を示し、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる、型焼きベーカリー食品の製造方法が各種検討されてきた。
まず、小麦粉を離型油と混合して使用する方法が行なわれたが、この方法では得られるベーカリー食品の表面が粉っぽい食感になってしまう問題があった。
【0005】
次いで、スポンジケーキクラムや、通常のクッキークラムを敷いて焼成する方法が行なわれたが、これらのクラムの油分含量は最高でも25質量%程度であるため、離型性が十分ではないことに加え、得られるベーカリー食品の表面がべたついてしまう問題があった。
【0006】
さらに改良された方法として、クレープ皮等の可食性シートを生地と焼型の間に介在させる方法(例えば特許文献1参照)、蛋白水分散物を生地と焼型の間に介在させて、ベーカリー食品表面に蛋白皮膜を生じさせる方法(例えば特許文献2参照)や、プルラン等の可食性膜状材料で表面を被覆した紙型を使用する方法、(例えば特許文献3参照)や、特定の塩類を添加した生地を使用する方法(例えば特許文献4、5参照)や、パイ生地などのショートペースト生地で包餡して焼成する方法(例えば特許文献6参照)、パイクラムを敷いて焼成する方法(例えば特許文献7参照)、加工澱粉を含有する液状生地を塗布してからケーキ生地を充填して焼成する方法(例えば特許文献8参照)などが行なわれてきた。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法は、具体的にはクレープ皮、シュー皮、蛋白シート等の加熱凝固済みのシートや生のパイ生地が挙げられているだけであるが、前者の場合、2度焼きになることから焦げを生じやすくその場合離型性は悪化してしまう。また後者の場合は水分の多い生地を充填することから、火どおりが悪く、パイ生地が焼成される時間まで焼成するとケーキ生地が焦げてしまう、というように、双方の生地を焦げがないようにバランスよく焼成することはたいへん困難であった。また、特許文献2や特許文献3に記載の方法は、ベーカリー食品表面に硬い食感の層を生じてしまうため、食感が異なるものになってしまうという問題があった。また、特許文献4、5に記載の方法は食味が異なるものになってしまう問題があった。また、特許文献6に記載の方法は、包餡操作を必要とし、大変煩雑であることに加え、やはりベーカリー食品表面に硬い食感の層を生じてしまい、さらに外見もまったく異なるものになってしまう問題があった。さらに特許文献7に記載の方法は、焼型の高さ(あるいは深さ)が大きい場合は側面部分に該パイクラムを付着させるのはできないため側面の離型性が悪いという問題があった。また、特許文献8に記載の方法も、離型性の改良効果が低いことに加え、液状生地を使用するため、焼型の高さ(あるいは深さ)が大きい場合は側面部分に液状生地を付着させるのはできないため側面の離型性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平03−019644号公報
【特許文献2】特開昭63―091034号公報
【特許文献3】特開平01―265844号公報
【特許文献4】特開平04―141040号公報
【特許文献5】特開平04―179432号公報
【特許文献6】特開2000−157150号公報
【特許文献7】特開2007−274975号公報
【特許文献8】特開2002−051703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、食感や風味を変えることなく、水分の多いベーカリー生地であっても高い離型性を示し、紙製の焼型を使用した場合でも損壊することなく紙を剥すことができる、型焼きベーカリー食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、ケーキ生地と焼型の間に、ベーカリー生地ではなく、また焼成されたベーカリー製品でもなく、餅様生地のシート、とくに求肥生地を介在させてから焼成することで、上記問題を解決することが可能であることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、焼型の底面に、餅様生地を敷き、その上にベーカリー生地を入れ、焼成することを特徴とする型焼きベーカリー食品の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の型焼きベーカリー食品の製造方法によって得られた、離型性が良好である型焼きベーカリー食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食感や風味を変えることなく、水分の多いベーカリー生地を使用しても高い離型性を得ることができ、また、紙製の焼型を使用した場合でも、損壊することなく紙を剥すことができる。
また本発明の本発明の型焼きベーカリー食品は、離型性が良好であり、且つ、焼型に接した部分には焦げが生じることなく半透明に焼きあがるため、餅様生地部分を通して内部のケーキ生地部分の色調を見ることができる新規なベーカリー食品である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の型焼きベーカリー食品の製造方法について詳述する。
先ず、本発明で使用する餅様生地について述べる。
本発明でいう餅様生地とは、餅や求肥に代表される、穀類と水分を必須成分として用いて得られた粘弾性に富む生地を広く指す。
上記穀類としては、米、小麦、とうもろこし、大麦、粟、タピオカ、じゃがいも、甘藷、サゴ、大豆等が挙げられ、これらの穀類そのものをはじめ、該穀類から得られる穀粉や、該穀類から得られる澱粉や化工澱粉を使用することができる。これらの穀類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0013】
本発明では、上記穀類としてアミロペクチン含量の高いものを穀類中の50質量%以上、特に70〜100質量%となるように使用することが、離型性に優れることに加え、表面が均質且つ平滑で艶があり、透明感が優れた外観とすることができる点で好ましい。このような穀類としては、餅米、ワキシーコーン、餅大麦、タピオカ等が挙げられ、これらの穀類そのものをはじめ、該穀類から得られる穀粉や、該穀類から得られる澱粉や化工澱粉を使用することができる。これらの穀類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0014】
また、本発明では、上記穀類として、米、米粉、米澱粉のうちの1種又は2種以上を穀類の50質量%以上、特に70〜100質量%となるように使用することが、とりわけ滑らかな表面を呈する型焼きベーカリー食品が得られる点で好ましい。米粉にはその原料とする米の種類や製粉方法により様々な名称のものがあるが、餅米粉としてはもち粉や白玉粉等、うるち米粉としては上新粉や上用粉等が、粒度が細かく餅様生地の製造が容易である点で好ましく使用される。
【0015】
上記餅様生地に使用される上記水分としては、水を使用することができるほか、後述のその他の原材料として挙げるもののうち、例えば、牛乳、クリーム、果汁等の水分を多く含有する原材料を使用することもできる。これらの水分は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。上記水分の使用量は、最終的に粘弾性に富む餅様生地を得ることができる量であれば特に制限されるものではないが、上記穀類100質量部に対して70〜300質量部が好ましい。
【0016】
上記餅様生地は糖類を含有すること、すなわち求肥生地であることが、ソフトで柔軟性があり扱いやすいこと、及び、焼型の内面に密着させることが可能なこと、さらには、より高い離型性が得られることに加え、型焼きベーカリー食品の表面に滑らかで均質な厚さの層が形成されること、ソフトでしっとりした食感が得られることから好ましい。
【0017】
上記糖類としては、例えば上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、水あめ、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記糖類の添加量は、穀類100質量部に対し、固形分として好ましくは30〜500質量部、より好ましくは70〜300質量部、さらに好ましくは100〜300質量部である。
【0018】
このように、本発明では上記餅様生地として、穀類としてアミロペクチン含量の高い穀類であって米由来の穀類を多く使用し、且つ、糖類を添加した餅様生地、すなわち求肥生地を使用することが好ましい。中でも、糖類を添加してから更に加熱して練り上げ、水分をとばした求肥生地を使用することがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明では上記餅様生地として、市販の餅生地や求肥生地を使用することもできる。このような市販の餅様生地としては、例えば、ぎゅうひクレープ(株式会社タヌマ製)や、生八ツ橋(株式会社おたべ製)等を挙げることができる。
【0020】
上記餅様生地には、上記穀類、水分、糖類以外にも、通常餅や求肥に使用することができるその他の原材料を使用することができる。該その他の原材料としては、例えば、グアーガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・アラビアガム・アルギン酸類・ペクチン・キサンタンガム・プルラン・タマリンドシードガム・サイリウムシードガム・結晶セルロース・CMC・メチルセルロース・寒天・グルコマンナン・ゼラチン等の増粘安定剤、生乳・牛乳・特別牛乳・生山羊乳・殺菌山羊乳・生めん羊乳・部分脱脂乳・脱脂乳・加工乳・クリーム・チーズ・濃縮ホエイ・濃縮乳・脱脂濃縮乳・無糖練乳・無糖脱脂練乳・加糖練乳・加糖脱脂練乳・全粉乳・脱脂粉乳・クリームパウダー・ホエイパウダー・蛋白質濃縮ホエイパウダー・バターミルクパウダー・加糖粉乳・調製粉乳・発酵乳・乳酸菌飲料・乳飲料等の乳や乳製品、カゼインカルシウム・カゼインナトリウム・ホエープロテインコンセートレート等の乳蛋白、卵及び各種卵加工品、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ・ヘミセルラーゼ・プロテアーゼ・アミログルコシダーゼ・プルラナーゼ・ペントサナーゼ・セルラーゼ・リパーゼ・ホスフォリパーゼ・カタラーゼ・リポキシゲナーゼ・アスコルビン酸オキシダーゼ・スルフィドリルオキシダーゼ・ヘキソースオキシダーゼ・グルコースオキシダーゼ等の酵素、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、β―カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料類、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、シナモン等の香辛料、カカオマス、ココアパウダー、野菜類・肉類・魚介類等の食品素材、着香料等が挙げられる。上記その他の原材料を使用する場合、その使用量は合計で、上記穀類100質量部に対し100質量部以下とすることが好ましい。
【0021】
上記餅様生地の製造方法について以下に述べる。
上記餅様生地の製造方法は、通常の餅や求肥の製造方法と同一でよく、例えば、穀類に水分を添加してなる混合物を加熱して糊化させた後、練り合わせることによって得ることができる。ここでいう加熱としては、炊く、蒸す、茹でる等の餅や求肥の製造方法で一般的に用いられる加熱方法と同一の方法を採ることができる。なお、穀類として糊化済みの穀粉や澱粉を使用した場合は特に加熱する必要はない。
【0022】
上記餅様生地が糖類を含有する場合、すなわち求肥生地である場合は、糊化させた後に糖類を添加する方法であっても、糊化前の混合物に糖類を添加する方法であってもよい。
また、糖類を添加してから更に加熱して練り上げ、水分をとばした求肥生地を製造する場合は、混合物に糖類を添加して加熱しながら練り上げる方法であっても、糊化させた後に糖類を添加して更に加熱して練り上げる方法であってもよい。すなわち、水練り法、茹で練り法、蒸し練り法のいずれの方法であってもよい。
なお、本発明では、上記餅様生地製造のために、上述の原材料を適宜配合済みのミックス粉を使用することももちろん可能である。
【0023】
次に、本発明で使用するベーカリー生地について述べる。
本発明の製造方法で使用されるベーカリー生地は、穀粉類に、水や、必要に応じて、卵、油脂、粉乳、食塩、糖類、呈味剤、イースト菌、膨張剤等を加えて練り上げたものであり、通常のベーカリー食品を得るために使用されるベーカリー生地であれば、いずれの生地も使用可能である。
【0024】
上記ベーカリー生地としては、具体的には、パン生地、ケーキドーナツ生地、イーストドーナツ生地、クッキー生地、練パイ生地、折りパイ生地、ショートブレッド生地、シュー生地、練パイ方式のデニッシュ生地、折パイ方式のデニッシュ生地、クロワッサン生地、タルト生地等が挙げられる。
本発明の製造方法では、上記ベーカリー生地の中でも、油分含量5〜35質量%、好ましくは5〜25質量%、且つ、水分含量20〜70質量%、好ましくは20〜40質量%の生地であると、上記餅様生地との結着性が良好である点で好ましい。
なお、上記油分含量5〜35質量%、且つ、水分含量20〜70質量%の生地の具体例としては、例えば、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、マフィン生地、パネトーネ生地、ポップオーバー生地、シュー生地、マカロン生地などが挙げられるが、本発明では、特にスポンジケーキ生地、バターケーキ生地、マフィン生地がより好ましい。
【0025】
本発明は、上記餅様生地を、焼型の底面に敷き、その上に、上記ベーカリー生地を入れ、焼成するものである。
ここで、焼型の底面に上記餅様生地を敷く方法としては、焼型中に敷き詰める方法や、ベーカリー生地の少なくとも底面にあらかじめ付着させてから焼型に入れる方法、あるいは、その両方を併用する方法などを適宜選択することができる。なお、一番離型性が悪いのは焼型の底面であることから、底面に少なくとも餅様生地があれば、側面については離型油を塗布するだけでも離型が可能な場合もあるが、もちろん、焼型の側面についても該餅様生地で覆われていることが好ましい。
【0026】
なお、焼型の底面に敷く、餅様生地の厚さは、好ましくは1mm〜7mm、より好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1〜3mmである。1mm未満であると、焼成後に焼型に固着してしまったり、あるいは紙を剥す際に損壊してしまうなど、離型性が悪化するおそれがある。また、7mmを超えると得られる型焼きベーカリー食品のクラスト部分の粘性が高くなり、逆に離型性が悪化したりするおそれがあることに加え、食感がねちゃつきのある不良な食感になってしまうおそれもある。
【0027】
なお、ここで使用する焼型としては、金属製のものであっても、紙製のものであっても、また、プラスティック製やゴム製、シリコン製、陶器製、木製など、焼菓子に使用される焼型であれば問題なく使用可能であり、金属製のものの例としては、六取り展板や八取り展板にわん型、カステラカップ型、ホール型、フォーマル型、小判型、マフィン型、フラワー型、カップケーキ型、玉子型などの複数の窪みを設けたいわゆる型展板や、単体のカップケーキ型、プリン型、パウンド型、デコ型、あるいはアルミカップなどが挙げられ、紙製のものとしては、マフィン型やカップケーキ型などが挙げられる。
なお、本発明では、上記焼型のなかでも、焦げが生じにくく、また、焼型側面へのベーカリー生地の結着を特に考慮する必要がない点で紙製のものであることが好ましい。
また、好ましい焼型の容積は、使用するベーカリー生地の種類によって膨張率を勘案して適宜選択する。
【0028】
焼成温度は、通常のべーカリー食品同様、好ましくは160℃〜250℃、より好ましくは170℃〜220℃である。160℃未満であると火どおりが悪く、焼成時間が延びてしまうことに加え、側面の焼痩せが発生するおそれがある。また250℃を超えると焦げを生じ、食味が悪く、またボリュームも劣ったものとなってしまうおそれがある。
【0029】
焼成後、型展板や金属性焼型など繰り返し使用する焼型を使用した場合は、焼成後ただちに反転させる等の方法で焼成品を型抜きし、放冷後、必要に応じ、包装する。
なお、焼型に敷紙を敷いて焼成した場合は、型抜き後、適当な時間おいて紙を剥してもよいし、喫食時にはがしてもよい。
また、マフィン・パネトーネ等、紙製の焼型を使用した場合は、焼成後ただちに型抜きしてもよいが、一般的にはそのまま放冷後、必要に応じ、包装する。
【0030】
以上のようにして得られた型焼きベーカリー食品は、すくなくとも底面に餅様生地が結着した外観を呈するものであり、離型性が極めて良好であるという特徴を有する。さらに、餅様生地は充填したベーカリー生地から焼成中に供給される水分により、焼型に接した部分に焦げが生じることがないため、半透明状を呈しているという特徴を有する。そのため、該餅様生地部分を通して、内部のベーカリー生地の色調を見ることができる。そのため、たとえば、チョコレートケーキ生地であれば、濃厚なカカオ色、ストロベリーケーキ生地であれば、薄桃色を見ることができる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例等を挙げるが、本発明は以下の実施例等によって限定されるものではない。
【0032】
<餅様生地の製造>
〔製造例1〕
白玉粉120質量部に上白糖100質量部及び水100質量部を添加し、蒸練機を用いて90℃にて混練した。更に、上白糖40質量部及び水40質量部を加えて、粘弾性を呈するまで混練し、30℃に冷却して、求肥生地を得た。この求肥生地を、厚さ2mmとなるように圧延し、直径60mmの円形にうちぬき成形を行ない、求肥生地である餅様生地Aを得た。
【0033】
〔製造例2〕
「冷凍ぎゅうひクレープ(白)12cm角」(株式会社タヌマ製)(35g/1枚・厚さ実測値=1.5mm)を60mm角に4等分し、常温(20℃)で2時間解凍し、餅様生地Bとした。
【0034】
〔製造例3〕
「冷凍ぎゅうひクレープ(白)12cm角」(株式会社タヌマ製)(35g/1枚・厚さ実測値=1.5mm)を、常温(20℃)で2時間解凍し、餅様生地Cとした。
【0035】
<ベーカリー生地の製造>
〔製造例4〕マフィン生地の製造
薄力粉100質量部、上白糖90質量部、液糖10質量部、全卵(正味)90質量部、食塩0.2質量部、キサンタンガム1質量部、バニラ香料0.3質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてビーターを用いて低速1分、高速4分ホイップした後、溶かしバター90質量部を投入して、低速1分混合し、マフィン生地を得た。このマフィン生地の油分含量は22質量%、水分含量は27質量%であった。
【0036】
〔製造例5〕スポンジケーキ生地の製造
全卵(正味)150質量部、上白糖100質量部、食塩0.2質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにてワイヤーを用いて低速3分、中速7分ホイップした後、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー0.5質量部を混合し、低速1分、中速1分混合し、さらに溶かしバター20質量部を投入して低速1分混合し、ケーキ生地の一種であるスポンジケーキ生地を得た。このスポンジケーキ生地の油分含量は9質量%、水分含量は35質量%であった。
【0037】
<型焼きベーカリー食品の製造>
〔実施例1〕
上記餅様生地Aを、底面直径50mm、開口部直径55mm、深さ17mmの金属製カステラカップ型展板に伸ばしながら押し込み、焼型に密着させ、その上にベーカリー生地として上記マフィン生地を40g入れ、固定窯で25分焼成し、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、ただちに型展板を反転して型焼きベーカリー食品を取り出した。離型性はきわめて良好であり、また、得られた型焼きベーカリー食品は、餅様生地部分が半透明状を呈しており、該餅様生地部分を通して、内部のマフィン生地の濃厚な卵色の色調を見ることができる特徴的な外観であった。
【0038】
〔実施例2〕
上記餅様生地Bを、底面直径50mm、開口部直径55mm、深さ17mmの金属製カステラカップ型展板に伸ばしながら押し込み、焼型に密着させ、はみだした部分を切除し、その上にベーカリー生地として上記マフィン生地を40g入れ、固定窯で25分焼成し、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、ただちに型展板を反転して型焼きベーカリー食品を取り出した。離型性はきわめて良好であり、また、得られた型焼きベーカリー食品は、餅様生地部分が半透明状を呈しており、該餅様生地部分を通して、内部のマフィン生地の濃厚な卵色の色調を見ることができる特徴的な外観であった。
【0039】
〔実施例3〕
上記餅様生地Aを、底面直径50mm、開口部直径55mm、深さ17mmの金属製カステラカップ型展板に伸ばしながら押し込み、焼型に密着させ、その上にベーカリー生地として上記スポンジケーキ生地を40g入れ、固定窯で25分焼成し、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、ただちに型展板を反転して型焼きベーカリー食品を取り出した。離型性はきわめて良好であり、また、得られた型焼きベーカリー食品は、餅様生地部分が半透明状を呈しており、該餅様生地部分を通して、内部のスポンジケーキ生地の濃厚な卵色の色調を見ることができる特徴的な外観であった。
【0040】
〔実施例4〕
上記餅様生地Cを、直径70mm、開口部直径33mmの金属製わん高型展板に押し込み、焼型に密着させ、はみだした部分を切除し、その上にベーカリー生地として上記スポンジケーキ生地を40g入れ、固定窯で25分焼成し、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、ただちに型展板を反転して型焼きベーカリー食品を取り出した。離型性はきわめて良好であり、また、得られた型焼きベーカリー食品は、餅様生地部分が半透明状を呈しており、該餅様生地部分を通して、内部のスポンジケーキ生地の濃厚な卵色の色調を見ることができる特徴的な外観であった。
【0041】
〔実施例5〕
上記餅様生地Cを直径50mm、深さ80mmの紙製のマフィンカップ型に押し込み、焼型に密着させ、はみだした部分を切除し、その上にベーカリー生地として上記マフィン生地を40g入れ、固定窯で25分焼成し、型焼きベーカリー食品を得た。室温1時間放冷後、紙を剥したところ、底面も側面もきれいに剥離し、損壊することはなく、離型性は極めて良好であった。また、得られた型焼きベーカリー食品は、餅様生地部分が半透明状を呈しており、該餅様生地部分を通して、内部のマフィン生地の濃厚な卵色の色調を見ることができる特徴的な外観であった。
【0042】
〔比較例1〕
餅様生地を使用せず、焼型の底面と側面に、ラード100質量%、レシチン10質量%からなる離型油を20g塗布した以外は、実施例1と同様にして、型焼きベーカリー食品を得た。窯だし後、ただちに型展板を反転して型焼きベーカリー食品を取り出した。しかし、底面部分の結着が激しく、離型性は極めて悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼型の底面に、餅様生地を敷き、その上にベーカリー生地を入れ、焼成することを特徴とする型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項2】
上記焼型が紙製であることを特徴とする請求項1に記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項3】
上記餅様生地が求肥生地である請求項1又は2に記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項4】
上記ベーカリー生地が、油分含量10〜30質量%、且つ、水分含量20〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項5】
上記ベーカリー生地が、ケーキ生地であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の型焼きベーカリー食品の製造方法。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の型焼きベーカリー食品の製造方法によって得られた離型性が良好である型焼きベーカリー食品。

【公開番号】特開2012−100587(P2012−100587A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251709(P2010−251709)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】