説明

型鋼タンク

【課題】本発明は、型鋼部材を連結した方形筒部と、前記方形筒部に底板および天板を設けた型鋼タンクに関するもので、作製が容易であり、タンクの組み立てが迅速にできる安価な型鋼タンクに関するものである。
【解決手段】本発明の型鋼タンクは、型鋼部材を連結した方形筒部と、前記方形筒部の底板および天板とから少なくとも構成されている。前記型鋼部材は、タンクの側部を形成する側板部と、前記側板部の両側を折り曲げて一体に連設された断面コ字状部と、前記側板部の上端および下端の一部を内側(断面コ字状部側)に折り曲げて一体に成形されている側部部材とが1単位となっている。前記型鋼部材は、断面コ字状部の側面を互いに複数個連設して方形筒部材を構成している。前記底板および天板は、四辺を折り曲げた箱状部材からなり、前記折り曲げられたフランジ部を互いに連結している。また、前記底板および天板は、前記方形筒部材の上部および下部に取り付けられて方形タンクを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型鋼部材を連結した方形筒部と、前記方形筒部に底板および天板を設けた型鋼タンクに関するものである。また、本発明は、パネル板と補強部材を一つの型鋼により一体にした型鋼タンクに関するものである。さらに、本発明は、前記型鋼部材の作製が容易であり、タンクの組み立てが迅速にできる安価な型鋼タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパネル板と補強部材とから構成されるパネルタンクは、予め決められた寸法のパネル単板を複数個接続してタンクを組み立てた後、側部の耐水圧性および/または耐震性を保持するために、たとえば、型鋼部材等の外部補強部材を設ける必要があった。そのため、前記パネルタンクは、パネルを組んだ後、外部補強部材を取り付ける工程が必要であった。
【0003】
図5(イ)は従来の型鋼タンクの側部を説明するための図、(ロ)は型鋼材を補強する断面コ字状の型鋼を説明するための図である。図5(イ)において、型鋼材51は、平板の両側を折り曲げ、全体の断面がコ字状になるように成形されている。前記型鋼材51は、側部どうしをボルト・ナット53により接続する。前記型鋼材51は、側部どうしを連続して接続することにより、タンク筒部(図示されていない)ができ、底板および天板、あるいはマンホール、配管等を設けることにより完成する。
【0004】
しかし、前記型鋼タンクは、大きさが大きくなると、耐水圧性あるいは耐震性に対する問題が発生する。前記型鋼タンクは、前記耐水圧性あるいは耐震性に対する問題を解決するために、図5(ロ)に示す、両側部を断面コ字状に折り曲げて一体に成形された型鋼54、55の側部どうしを背中合わせにするとともに、アングル部材52、52′を介して接続される。また、前記二つの型鋼材51、51′は、アングル部材52、52′を介して接続されるとともに、両側の断面がコ字状の型鋼54、55が前記アングル部材52、52′を介して、ボルト・ナット56、57により固定される。また、特開2001−171787号公報に記載されているパネルタンクは、周囲のパネルと強度を持たせる型鋼から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−171787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパネル板と補強部材とから構成される型鋼タンクは、予め決められた寸法のパネル単板を複数個接続してタンクを組み立てた後、側部の水圧および/または耐震強度を保持するために、外部補強部材を設ける必要があった。そのため、前記型鋼タンクは、パネルを組んだ後、外部補強部材を取り付ける工程が必要であった。特に、図5(イ)および(ロ)に示すタンクは、部品数が多く、作製に時間がかかるとともに、高価なものとなった。
【0007】
以上のような課題を解決するために、本発明は、断面コ字状に折り曲げられた型鋼を連設して方形筒部を構成するとともに、前記型鋼に取り付けられる箱状部材からなる底板および天板を組み立てるだけで、迅速、かつ、作製が容易であると同時に、補強工事が不要になる型鋼タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1発明)
第1発明の型鋼タンクは、 側板部、前記側板部の両側を折り曲げて一体に連設された断面コ字状部、前記側板部の上端および下端を折り曲げて一体に成形されている側部部材、を1単位とする型鋼部材と、前記型鋼部材の断面コ字状部の側面どうしを互いに接触するように接続して構成されている方形筒部材と、四辺を折り曲げて一体に成形されたフランジ部を備えて1単位とする箱状部材と、前記箱状部材のフランジ部を互いに連結するとともに、前記方形筒部材の上部および下部に連結して設けられた底板および天板とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0009】
(第2発明)
第2発明の型鋼タンクにおいて、前記方形筒部材は、前記側部部材を介して縦方向に積み重ねていることを特徴とする。
【0010】
(第3発明)
第3発明の型鋼タンクにおいて、前記方形筒部材および/または底板と天板は、アングル部材によって補強されていることを特徴とする。
【0011】
(第4発明)
第4発明の型鋼タンクにおいて、前記方形筒部材は、四隅がアングル部材によって補強されていることを特徴とする。
【0012】
(第5発明)
第5発明の型鋼タンクにおいて、前記型鋼部材の上端および下端、断面コ字状部の側部、側部部材、前記底板および天板のフランジ部は、複数個の孔が設けられていることを特徴とする。
【0013】
(第6発明)
第6発明の型鋼タンクにおいて、前記型鋼部材、底板、天板、およびアングル部材は、互いに接続される部分にパッキングが介在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、折り曲げられた型鋼を連設して、方形筒部とするだけで、型鋼タンクの作製が容易、迅速であると同時に、補強工事が不要になる。また、本発明の型鋼タンクは、大きさを任意に変えることができる構成になっているとともに、タンク内部および角部の補強材をアングル部材とすることができるため、安価な型鋼タンクとすることができる。
【0015】
本発明によれば、型鋼部材を使用した型鋼タンクは、特別な補強部材を側部に取り付けることがなく、耐水圧性および耐震性を向上させることができる。
【0016】
本発明によれば、型鋼部材を一単位としてタンクの大きさを自由に設計できるため、安価な型鋼タンクができる。また、前記型鋼は、たとえば、鉄系鋼板、ステンレス系鋼板、その他の鋼板等を公知のベンダーにより任意に曲げて容易に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(イ)は本発明の型鋼タンクの側面を説明するための正面図、(ロ)は二つの型鋼の接続を説明する全体斜視図である。(実施例1)
【図2】(イ)は本発明の天板または底板を説明する平面図、(ロ)は拡大正面図、(ハ)拡大側面図である。
【図3】本発明の一実施例である型鋼タンクを一部切欠いた全体説明図である。
【図4】本発明の第2実施例である型鋼タンクの側面補強および角部を説明するための図である。(実施例2)
【図5】(イ)は従来の型鋼タンクの側部を説明するための図、(ロ)は型鋼材を補強する断面コ字状の型鋼を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1発明)
第1発明の型鋼タンクは、型鋼部材を連結した方形筒部と、前記方形筒部の底板および天板とから少なくとも構成されている。前記型鋼タンクは、前記天板にマンホールが設けられているとともに、その他の必要な配管等が設けられている。前記型鋼部材は、タンクの側部を形成する側板部と、前記側板部の両側を折り曲げて一体に連設された断面コ字状部と、前記側板部の上端および下端の一部を内側(断面コ字状部側)に折り曲げて一体に成形されている側部部材とが1単位となっている。前記型鋼部材は、断面コ字状部の側面を互いに複数個連設して方形筒部材を構成している。
【0019】
前記底板および天板は、四辺を折り曲げた箱状部材からなり、前記折り曲げられたフランジ部を互いに連結している。また、前記底板および天板は、前記方形筒部材の上部および下部に取り付けられて方形タンクを構成する。本発明の型鋼タンクは、折り曲げられた型鋼を連設するだけで、所望の大きさのタンクが容易、かつ、迅速に組み立てられると同時に、補強工事が不要になる。また、型鋼部材は、両側に設けられた断面コ字部材を非対照に設けのことにより、タンクの角部に設けるアングル部材の取り付けを容易にする。
【0020】
なお、「タンクの側部を形成する側板部」、「前記側板部の上端および下端の一部を内側に折り曲げて一体に成形されている側部部材」、「断面コ字状部の側面」、「タンクの側部」は、それぞれ区別して定義付けられている。前記「タンクの側部を形成する側板部」、「前記側板部の上端および下端の一部を内側に折り曲げて一体に成形されている側部部材」、「断面コ字状部の側面」、「タンクの側部」は、予め、接続部の必要な部分に孔が設けられている。また、「前記側板部の上端および下端の一部を内側に折り曲げて一体に成形されている側部部材」は、折り曲げ幅を短くし、型鋼の上下方向の接続を容易にしている。
【0021】
(第2発明)
第2発明の型鋼タンクは、前記方形筒部材の側部部材を介して縦方向に積み重ねられている。前記型鋼部材は、側部方向および縦方向に連設することにより、任意の大きさの型鋼タンクを構成することができる。
【0022】
(第3発明)
第3発明の型鋼タンクは、前記方形筒部材および/または底板と天板が、必要に応じて、アングル部材によって補強されている。前記型鋼タンクは、大型に作製する必要がある場合、天板の支持、あるいはタンクの左右、前後方向の補強が必要になる。前記アングル部材は、平板を一回折り曲げるだけであるため、安価な補強材となる。
【0023】
(第4発明)
第4発明の型鋼タンクは、方形における角部の強度および水漏れに難点があった。そこで、型鋼タンクを構成する方形筒部材は、必要に応じて、四隅にアングル部材を当てることによって、角部の強度を向上させるとともに、水漏れを防止することができる。
【0024】
(第5発明)
第5発明の型鋼タンクは、ボルトおよびナットによる接続が容易なように、前記型鋼部材の上端および下端、断面コ字状部の側面、側部部材、前記底板および天板のフランジ部に複数個の孔が設けられている。前記型鋼タンクは、ボルトおよびナットのみによる接続であるため、組み立てが容易で、かつ、迅速に作製される。
【0025】
(第6発明)
第6発明の型鋼タンクは、前記型鋼部材、側部部材、底板、天板、およびアングル部材を接続する部分にパッキングが介在されているため、水密製が良好である。前記型鋼タンクは、内部に水のようなものを入れない場合、水密製が不要であるため、前記パッキングが不要である。前記型鋼部材は、パッキングを予めコーティングまたは接着させておくこともできる。
【実施例1】
【0026】
図1(イ)は本発明の型鋼タンクの側面を説明するための正面図、(ロ)は二つの型鋼の接続を説明する全体斜視図である。図1(イ)および(ロ)において、型鋼タンクを構成する型鋼部材11を説明する。前記型鋼部材11は、側板部111と、前記側板部111の両端をコ字状に折り曲げた断面コ字状部112、112′と、前記側板部111の上部および下部に一部が折り曲げられた側部部材113、113′と、前記側板部111の上下、前記断面コ字状部112、112′の側部、前記側部部材113、113′に連結のための開孔群114、115、116が設けられている。前記型鋼部材11は、1個が一単位となり、複数個を筒状に連設される。
【0027】
図2(イ)は本発明の天板または底板を説明する平面図、(ロ)は拡大正面図、(ハ)拡大側面図である。図2(イ)から(ハ)において、天板31および底板35は、同じ形状のものである。前記天板31は、一枚の鋼材の四辺を直角に折り曲げて箱状に成形される。前記折り曲げられた側部折り曲げ部311および端部折り曲げ部313は、タンクの側部を構成する図1に示された型鋼部材11と接続されて、底板35および天板31により型鋼タンクができる。前記側部折り曲げ部311および端部折り曲げ部313は、互いに端部どうしを接続するための開孔群312、314が設けられている。
【0028】
図3は本発明の一実施例である型鋼タンクを一部切欠いた全体説明図である。図3において、型鋼タンクは、まず、複数個からなる型鋼部材11を連結して方形筒部を構成する。また、前記型鋼タンクは、方形筒部を組み立てた後、図2(イ)から(ハ)に示す天板31および底板35、マンホール34、その他配管等必要な部品を取り付けることにより構成されている。
【0029】
図3における型鋼タンクは、前記側板部111の上端および下端の一部を内側に折り曲げて一体に成形されている側部部材113、113′の部分により、上部方向に重ねることができ、大型のタンクとすることができる。また、前記型鋼タンクは、大型になった場合、図3に示すように、内部構造の強化が必要になる。前記内部構造の補強は、たとえば、アングル部材からなる梁36、37を用いることができる。前記アングル部材は、接続金具38およびT字状金具39を用いて接続される。また、型鋼部材11の四隅は、必要に応じて、アングル部材40、40′を設けることができる。前記アングル部材40、40′は、型鋼部材11と同様に、開孔群が設けられており、前記開孔群を互いに、ボルト・ナット等により接続される。
【0030】
前記型鋼タンクは、前記方形筒部材の側部部材113、113′を介して縦方向に積み重ねらることができる。前記型鋼タンクは、型鋼11と側部部材113、113′により、方形の任意の大きさにすることができる。また、型鋼と型鋼の間、型鋼とアングル部材の間は、必要に応じて、パッキング部材を入れて水密性を向上させることができる。
【実施例2】
【0031】
図4は本発明の第2実施例である型鋼タンクの側面補強および角部を説明するための図である。図4において、型鋼41は、角部専用であり、符号11で示す型鋼と一方の端部の形状が異なっている。すなわち、型鋼41、41′は、一方が断面コ字状になっておらず、単なる突起部411、411′となっている。前記型鋼41、41′の突起部411、411′は、アングル部材42を介して、ボルト・ナット43、44によって接続される。前記突起部411あるいはタンクの左右、前後方向の補強が必要になる。前記型鋼41、41′は、型鋼11と比較して、安価であるだけでなく、コ字状断面の部分が無い分、ボルト・ナットによる取り付けの際の作業が容易になる。
【実施例3】
【0032】
図1における型鋼部材11の側板部111は、長方形になっているが、正方形または幅の広い長方形にすることだできる。また、前記型鋼部材11の開孔群が設けてある面は、合成樹脂製部材を設けておき、型鋼タンクを組み立てる際に、パッキング部材を挟む手間を省略できるようにすることができる。
【0033】
実施例1から実施例3に示された型鋼タンクは、たとえば、1000mm×3000mm、または500mm×3000mmのものを作製し、これらを組み立てることにより、任意の大きさのものとすることができた。
【0034】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記本実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本実施例における型鋼は、鋼材、ステンレス鋼等、公知または周知の材料を使用できる。また、前記型鋼は、公知または周知のベンダーにより、所望の形状に折り曲げることができる。
【符号の説明】
【0035】
11・・・型鋼部材
111・・・側板部
112、112′・・・断面コ字状部
113、113′・・・側部部材
114、115、116・・・開孔群
31・・・天板
311・・・側部折り曲げ部
312・・・開孔群
313・・・端部折り曲げ部
314・・・開孔群
34・・・マンホール
35・・・底板
35′・・・開孔群
36、37・・・梁
38・・・接続金具
39・・・T字金具
40、40′・・・アングル部材
41、41′・・・型鋼
411、411′・・・突起部
42・・・アングル部材
43、44・・・ボルト・ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板部、前記側板部の両側を折り曲げて一体に連設された断面コ字状部、前記側板部の上端および下端を折り曲げて一体に成形されている側部部材、を1単位とする型鋼部材と、
前記型鋼部材の断面コ字状部の側面どうしを互いに接触するように接続して構成されている方形筒部材と、
四辺を折り曲げて一体に成形されたフランジ部を備えて1単位とする箱状部材と、
前記箱状部材のフランジ部を互いに連結するとともに、前記方形筒部材の上部および下部に連結して設けられた底板および天板と、
から少なくとも構成されていることを特徴とする型鋼タンク。
【請求項2】
前記方形筒部材は、前記側部部材を介して縦方向に積み重ねていることを特徴とする請求項1に記載された型鋼タンク。
【請求項3】
前記方形筒部材および/または底板と天板は、アングル部材によって補強されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された型鋼タンク。
【請求項4】
前記方形筒部材は、四隅がアングル部材によって補強されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された型鋼タンク。
【請求項5】
前記型鋼部材の上端および下端、断面コ字状部の側部、側部部材、前記底板および天板のフランジ部は、複数個の孔が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された型鋼タンク。
【請求項6】
前記型鋼部材、底板、天板、およびアングル部材は、互いに接続される部分にパッキングが介在されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された型鋼タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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