説明

埋め戻し土の締め固め管理方法

【課題】埋め戻し後の地盤の液状化を確実に防止することのできる埋め戻し土の締め固め管理方法を提供する。
【解決手段】埋め戻し土の細粒分含有率と埋め戻し後の地盤が想定規模の地震により液状化を生じる限界の乾燥密度との関係を予め求めておいて、その乾燥密度の限界値を締め固めのための管理値として設定し、締め固め後の乾燥密度がその管理値以上となるまで埋め戻し土を締め固める。細粒分含有率と乾燥密度との関係を深度をパラメータとするチャートとして予め作成しておき、そのチャートに基づいて各深度における管理値を設定し、各深度における乾燥密度がそれぞれの深度における管理値以上となるまで各深度における締め固めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は掘削した地盤を埋め戻すための工法に関わり、特に埋め戻し後の地盤の液状化を防止するための埋め戻し土の締め固め管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、土木関連工事において掘削地盤を埋め戻す際には、砂もしくはそれ以上の粒径の埋め戻し土を撒きだして転圧し締め固めることが一般的であり、その際の締め固め管理指標としては締め固め度が用いられる。
締め固め度は、現場で締め固めた後の埋め戻し土の乾燥密度を、予め突き固めによる土の締め固め試験で求めた最大乾燥密度で除した値であり、通常の埋め戻しの場合にはたとえば特許文献1に示されるように管理目標を締め固め度90%以上として締め固めを行うことが一般的である。
【特許文献1】特許第2742862号公報(段落0011参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、締め固め度を管理指標とする場合には、その管理精度が突き固めによる土の締め固め試験での最大乾燥密度の測定精度に大きく依存するので必ずしも高精度の管理を行い得ない場合がある。
また、従来においては埋め戻し後の地盤の液状化強度については特に考慮されておらず、したがって充分な締め固めを行ったとしても必ずしも埋め戻し後の地盤の液状化を防止できるとは限らない。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は埋め戻しに際しての締め固めを締め固め度に代わる管理指標を用いて行うことにより、埋め戻し後の地盤の液状化を確実に防止することのできる締め固め管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の埋め戻し土の締め固め管理方法は、掘削した地盤に埋め戻し土を撒きだして転圧し締め固めることにより埋め戻しを行うに際し、埋め戻し土の細粒分含有率と埋め戻し後の地盤が想定規模の地震により液状化を生じる限界の乾燥密度との関係を予め求めておいて、その乾燥密度の限界値を締め固めのための管理値として設定し、締め固め後の乾燥密度がその管理値以上となるまで埋め戻し土を締め固めることを特徴とする。
【0006】
本発明においては、埋め戻し土の細粒分含有率と埋め戻し後の地盤が液状化を生じる限界の乾燥密度との関係を、深度をパラメータとするチャートとして予め作成しておき、該チャートに基づいて各深度における管理値を設定すると良い。
【0007】
また、各深度における乾燥密度が前記チャートにより設定した各深度の管理値以上となるまで各深度における締め固めを行うと良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液状化判定を考慮した乾燥密度を管理指標として締め固めを行うことにより、埋め戻し後の地盤の液状化を防止することができる。
特に、埋め戻し土の細粒分含有率と埋め戻し後の地盤が液状化を生じる限界の乾燥密度との関係を深度をパラメータとするチャートとして予め作成しておき、そのチャートに基づいて各深度における管理値を設定するとともに、各深度に対する乾燥密度がそれぞれの管理値値以上となるまで締め固めを行うことにより、各深度に対する管理値を容易に設定できるし、地盤全体の液状化を防止するための締め固めを確実かつ精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図1〜図2を参照して説明する。本実施形態では掘削地盤を埋め戻すに際して埋め戻し土を締め固めるための管理値として、従来一般の締め固め度に代えて液状化判定に基づく乾燥密度ρdを用いることを主眼とするものであり、図1に示すように撒きだした埋め戻し土を転圧して締め固めたらその乾燥密度ρdを確認し、乾燥密度ρdが予め設定した管理値となるまで締め固めを行うことにより埋め戻し地盤の液状化を防止するようにしたものである。
【0010】
本実施形態において締め固めのための管理値として用いる乾燥密度ρdは、想定規模の地震時において埋め戻し後の地盤が液状化しないために必要である最小値(これ以下であれば液状化が生じるとされる限界値)であって、それは埋め戻し土の細粒分含有率Fc(全質量に対する粘土とシルト成分の質量割合)および土被り圧(地表からの深度)との関係において決定されるものであり、たとえば図2(a)〜(c)に示すような液状化判定のためのチャート(日本建築学会 基礎構造設計指針の液状化安全率FL=1.0に相当)により求めることができるものである。
【0011】
図2(a)〜(c)に示すチャートは一例として提示したものであるが、これは想定地震規模がマグニチュード7.5、設計用水平加速度150,250,350cm/s2、地下水位GL-0.0m、砂地盤の湿潤単位体積重量18kN/m3、砂の土粒子密度2.7g/cm3、埋め戻し土の細粒分含有率Fc=0〜35%、埋め戻し深度1〜5mの場合のもので、上記の想定規模の地震により液状化することが想定される乾燥密度ρdと、埋め戻し土の細粒分含有率Fcとの関係を、深度をパラメータとしてグラフ化したものである。
このようなチャートを用いることにより、たとえば細粒分含有率Fcが15%の埋め戻し土により埋め戻された地盤が設計用水平加速度250cm/s2の地震においても液状化を生じないためには、図2(b)から地盤の乾燥密度ρdが深度GL-1mにおいては約1.36以上、深度GL-5mにおいては約1.41以上であれば良いことになる。
【0012】
上記の液状化判定のためのチャートは図3に示す手順で作成することができる。
(1)想定規模の地震のマグニチュード、加速度、および各深度の土被り圧から、繰り返しせん断応力比τd/σ'zを次式により求める。
τd/σ'z=r・(αmax/g)・(σz/σ')・rd
ここで、τd :繰り返しせん断応力
σz :検討深さに対する全土被り圧
σ'z:検討深さに対する有効土被り圧
r:等価の繰り返し回数に関する補正係数
rd :地盤が剛性でないことによる低減係数
αmax:地表面における設計用水平加速度
g :重力加速度
【0013】
(2)飽和土層の等価な繰り返しせん断応力比τd/σ'zと補正N値Naとの関係を表す図4を用いて、(1)で求めたτd/σ'zとせん断歪み振幅τ=5%に対応した補正N値Naを求める。
(3)細粒分含有率Fcと補正N値増分ΔNfの関係を表す図5を用いて、埋め戻し土の細粒分含有率Fcに基づく補正N値増分ΔNfを求める。
(4)必要N1値N1を次式により算定する。
N1=Na−ΔNf
(5)有効土被り圧を考慮した必要N値Nを次式により算定する。
N=N1/CN
CN=(98/σ'z)0.5
【0014】
(6)必要N値Nに基づく有効土被り圧を考慮した相対密度Drを次の2式により算定し、いずれか大きい方を相対密度Drとして決定する。
Dr=25・(N/(σ'/98+0.7))0.43 (Gibbs & Holtzの式)
Dr=21・(N/(σ'/98+0.7))0.5 (Meyerhofの式)
(7)砂の最大間隙比emax、および最小間隙比eminを平間の式から算定する。
max=0.02・Fc+1.0
min=0.008・Fc+0.6
(8)相対密度Drに対応した乾燥密度ρdを算定する。
(9)乾燥密度ρdを縦軸、細粒分含有率Fcを横軸とし、深度をパラメータとしてグラフ化して、図2に示すようなチャートを作成する。
【0015】
本実施形態では、予め作成した上記のチャートにより各深度における乾燥密度ρdの管理値を設定して、各深度における締め固めをその深度に対して設定した管理値となるまで締め固めを行うことにより、埋め戻し後の地盤は少なくとも上記の想定規模以下の地震時では液状化が生じないものとなる。
すなわち、締め固め度を管理指標として締め固めを行う従来一般の工法では埋め戻し後の地盤の液状化を必ずしも防止し得なかったのに対し、液状化判定を考慮した乾燥密度ρdを管理指標として締め固めを行う本発明によれば、埋め戻し後の地盤の液状化を確実に防止できるものとなる。
【0016】
なお、上記実施形態で例示したチャートは各現場で共通に使用できる汎用性を有するものであるから、各現場ではそのつどチャートを作成する必要はなく、実際に使用する埋め戻し土の細粒分含有率を決定することで直ちに管理値を設定することができるが、必要であれば各現場での条件を考慮して各現場ごとに厳密な液状化判定を行って、たとえば図3に示した手順により液状化を防止するために必要な埋め戻し土の乾燥密度を算定し、それをその現場での管理値として設定することでも勿論良い。
【0017】
また、上記実施形態のように深度をパラメータとするチャートを用いて深度ごとに管理値を設定し、各深度ごとにそれぞれ管理値となるまで締め固めを行うことでも良いが、図2から明らかなように液状化を防止するために必要となる乾燥密度は深度が小さく(浅く)なるほど小さくなるから、最深部での管理値を地盤全体に対する管理値として設定し、地盤全体をその管理値となるまで均等に締め固めを行うことでも良い。その場合には浅部ではやや過剰な締め固めを行うことにはなるが、全体として安全側であるし施工を充分に簡略化することができ、通常はそれで充分であって現実的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である締め固め管理方法の手順を示すフロー図である。
【図2】同、液状化判定に基づく細粒分含有率と乾燥密度との関係を表すチャートの一例である。
【図3】同、チャートの作成手順を示すフロー図である。
【図4】同、チャート作成のための補正N値を求めるためのグラフである。
【図5】同、チャート作成のための補正N値増分を求めるためのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削した地盤に埋め戻し土を撒きだして転圧し締め固めることにより埋め戻しを行うに際し、埋め戻し土の細粒分含有率と埋め戻し後の地盤が想定規模の地震により液状化を生じる限界の乾燥密度との関係を予め求めておいて、その乾燥密度の限界値を締め固めのための管理値として設定し、締め固め後の乾燥密度がその管理値以上となるまで埋め戻し土を締め固めることを特徴とする埋め戻し土の締め固め管理方法。
【請求項2】
請求項1記載の埋め戻し土の締め固め管理方法であって、
埋め戻し土の細粒分含有率と埋め戻し後の地盤が液状化を生じる限界の乾燥密度との関係を、深度をパラメータとするチャートとして予め作成しておき、該チャートに基づいて各深度における管理値を設定することを特徴とする埋め戻し土の締め固め管理方法。
【請求項3】
請求項2記載の埋め戻し土の締め固め管理方法であって、
各深度における乾燥密度が前記チャートにより設定した各深度の管理値以上となるまで各深度における締め固めを行うことを特徴とする埋め戻し土の締め固め管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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