説明

埋設物の移設工法

【課題】埋設物の防護・養生しながら作業することなく、工期の短縮が可能なアンダーバス道路交差点部の埋設物の移設工法を提供する。
【解決手段】道路が交差し、複数の道路のうち一部の道路に沿って設けられた通信ケーブル、電線、上水道管を含む既設の地中埋設物が通過する交差点部において、一部の道路に沿って両側の前記交差点部を跨ぐように埋設物を挿通可能な埋設物用ボックス20を設置し、埋設物用ボックス20内に埋設物を移設する。その後、一部の道路を開削し、この一部の道路以外の道路を交差点部の下側を通過するアンダーパス道路10とする。アンダーパス道路10にすべき道路の両側に沿って山留め壁12、13を設け、山留め壁12、13内を掘削して一部の道路の下部にアンダーパス道路20を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路の交差点において一部の道路をアンダーパス道路にするような場合に好適な技術に関するものであり、通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管等の既存の地中埋設物が設けられた道路の下部に、新たに構造物を構築する場合の前記埋設物の移設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、幹線道路等である道路50には、図14に示すように、その長手方向に沿って延びる通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管などの地中の埋設物51が設けられている。
【0003】
そして、例えば、埋設物51が設けられた道路50と交差する道路60をアンダーパス道路とするように施工する場合に、その交差点部の埋設物51の移設は、従来、次のように行っていた。
【0004】
まず、アンダーバス道路の工事を行う前工程として、アンダーパス道路との交差部に設けられた地中の埋設物51を、工事に支障とならないように、側道部若しくは歩道部となる位置に移設する。この移設は、通信、電気、ガス、上水道などの事業者が道路管理者等と協議しながら行うが、通常は事業者毎に個別に実施するため、長期間を要することが多い。なお、アンダーバス道路の工事前に移設ができない地中の埋設物もあり、その場合には、覆工板の下で前記埋設物を吊り防護して、アンダーバス道路構築後に前記埋設物を埋め戻して当初の状態に戻す。
【0005】
次に、従来のアンダーパス道路の工事と地中の埋設物移設工事を説明する。
【0006】
従来のアンダーパス道路の工事は、ボックスカルバート58(図16〜図18参照)を用いて行う。すなわち、アンダーパス道路の工事は、アンダーパス道路とすべき道路60(図14参照)の両側に、図15に示すように、鋼矢板52などを並べて打設して他方の道路50を横切るように山留め壁53、53を設ける。
【0007】
次に、交差点部における山留め壁53、53の上に、他方の道路50の交通確保のための覆工板54を設置する。次に、これらの山留め壁53、53間の土55を工事前に移設ができずに残った埋設物51より少し深いところまで掘削し、覆工板54の下側に設けられた吊り下げ部材56で埋設物51を吊り下げて所定位置に保持する。
【0008】
次に、図16に示すように、山留め壁53、53間の土55を更に掘削して、山留め壁53、53間の空間57に底版、側壁、頂版の順にボックスカルバート58を構築する。このボックスカルバート58は、埋設物の設置エリアの確保のため、その頂版が少なくとも2.5mの深さになるように構築することを要し、その内部が、上記の道路60から連続するアンダーパス道路59となる。そして、上記の埋設物51は、ボックスカルバート58の頂版の上部に配置される。
【0009】
従って、ボックスカルバート58構築の際には、予め試掘を実施するなど埋設位置を十分に確認をしておく必要がある。また、山留め壁53、53施工時には、これら地中の埋設物51を避けて施工し、その後の切り梁の設置や内部掘削時には、切り梁を利用してこれら地中の埋設物51を吊り、防護する。
【0010】
次に、図17に示すように、山留め壁53、53、覆工板54及び吊り下げ部材56を撤去し、ボックスカルバート58の周囲に土55を埋め戻す。これにより、埋設物51がボックスカルバート58の上側に埋設された状態で保持される。このように、工事中に防護・養生していた地中の埋設物51を設置・埋設するためのエリアを確保した上で、最終的に移設していた。
【0011】
なお、アンダーパス道路の構築は、渋滞道路の交差点部であれば、工事による2次渋滞が生じるため、昼間の施工をできるだけ避ける必要があり、通常夜間工事により行う。
【特許文献1】特開2006−2399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のアンダーパス道路の施工方法では、山留め壁53、53施工時に、通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管を含む地中の埋設物51を避けて施工する必要があり、また、これら埋設物51の設置エリアを確保する必要性から、アンダーパス道路の構築のための地盤の掘削範囲が大きくなる問題があった。
【0013】
また、従来のアンダーパス道路等の施工方法では、工事期間を通じて埋設物51の防護・養生あるいは点検・管理が必要であるが、土留め壁53、53間の土55を掘削するときに、埋設物51が覆工板54に吊り下げられて空間57内に露出された状態となるので、突発的な原因、例えば埋設物51に掘削機などが衝突するなどして破損するおそれがある。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、通信ケーブル、電線等を収納した管、上水道管等の既存の地中埋設物が存在する道路の下部に新たな構造物を構築する場合に、埋設物の防護・養生をしながらの煩雑な作業を回避し、かつ、掘削範囲の縮小化が実現することで全体の工期の短縮化が可能な埋設物の移設工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、地中に通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管を含む既設の地中埋設物が存在する道路の一部を開削して、この道路の下部に所定の構造物を構築する場合に、
前記道路に沿って前記両側の山留め壁を跨ぐように前記埋設物を挿通可能な貫通部を有する埋設物用ボックスを設置する工程と、
前記埋設物用ボックスの前記貫通部内に前記埋設物を移設する工程と、
所定の構造物を構築すべき部分の地盤の両側に沿って前記道路と交差する山留め壁を形成する工程と、
山留め壁内を掘削して所定の構造物を構築する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
この場合、前記構造物がアンダーパス道路であれば、複数の道路が交差し、前記複数の道路のうち一部の道路に沿って設けられた通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管を含む既設の地中埋設物が通過する交差点部において、前記一部の道路を開削し、この一部の道路以外の道路を交差点部の下側を通過するアンダーパス道路とする場合に、
前記一部の道路に沿って前記両側の山留め壁を跨ぐように前記埋設物を挿通可能な貫通部を有する埋設物用ボックスを設置する工程と、
前記埋設物用ボックスの前記貫通部内に前記埋設物を移設する工程と、
前記アンダーパス道路にすべき道路の両側に沿って山留め壁を設ける工程と、
山留め壁内を掘削して前記一部の道路の下部にアンダーパス道路を構築する工程と、
を含むものとすることができる。
【0017】
なお、前記構造物は、様々なものが想定でき、道路の他、鉄道の軌道、地下街等の地下構造物等が例示できる。
【0018】
前記埋設物用ボックスは、前記両側の山留め壁を跨ぐように複数設置することができる。埋設物用ボックスを複数設置することで通信ケーブルや水道管等を分散して敷設できれば、前記埋設物用ボックスの各々は小型になり、アンダーパス道路等を構築する際の掘削深度を浅くすることができる。すなわち、従来工法に比較して掘削が少なくてよいので、アンダーパス道路等の区間長を短くでき、大幅な施工の省略化が可能になる。
【0019】
特に、道路の両サイドに埋設物用ボックスを設けるときは、道路表面から埋設物用ボックスまでの深さを浅くでき、これを浅い位置に設置できる。また、その埋設物用ボックスの一部が地表に近い部分にある場合には、その埋設物用ボックス内部の点検が容易に行える利点がある。
【0020】
本発明の埋設物の移設工法では、前記埋設物用ボックスには、通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管等の様々な埋設物を、それらの目的・用途に応じて分類載置する受台が前記埋設物用ボックスの長手方向に沿って設けられることが好ましい。この場合、前記受台に前記埋設物を載置して分類収納する構成も含まれる。なお、前記埋設物用ボックスは軽量で剛性に優れた鋼管、特に角形鋼管を用いると良い。
【0021】
また、前記埋設物用ボックスを支持する基礎を予め打設しておくことが好適である。
【0022】
前記埋設物用ボックスを支持する基礎としては、前記山留め壁を利用することができる。
【0023】
更に、工期中における道路の交通を確保するため、前記山留め壁の上に覆工を施すことが必要となる場合がある。そのような覆工を施す際に、前記基礎に支持された埋設物用ボックスを基礎として用い、前記埋設物用ボックス上に覆工用材を載置することが可能である。
【0024】
このようにすれば、工事の省力化及び工期短縮が実現できる。
【0025】
本発明の埋設物の移設工法において、埋設物用ボックスには点検用のハッチを設けておくことができる。従来は地中に埋設してしまえば、点検のためには掘り起こさなければならなかったが、この埋設物用ボックスに収納すれば、点検用のハッチがあるため容易に点検が可能である。
【0026】
本発明の埋設物の移設工法によれば、前記埋設物用ボックスを予め設置しておき、山留め壁間の土(内部土)掘削前に工事の障害となる地中の埋設物を移設しておくため、山留め壁間の土(内部土)掘削後に地中の埋設物を移設する作業が不要となり、アンダーパス道路の構築に必要な期間が従来工法に比較して短くなる。
【0027】
また、予め設置された埋設物用ボックスに、交差点部に埋設されている埋設物や、アンダーパス道路を横断する埋設物の移設を済ませておくことで、工事中も防護・養生の必要がなく、最終的な移設場所へ移設しておくため、破損などの恐れも少ない。
【0028】
更に、本発明では、山留め壁間の土を掘削する前に、アンダーパス道路とすべき道路以外の道路に設けられた埋設物のうち、交差点部を通過する部分を、山留め壁の上に載置された埋設物用ボックスの貫通孔内に移設するので、山留め壁間の土(内部土)を掘削する
際には、埋設物が埋設物用ボックスによって保護される。従って、埋設物の養生が不要になる。
【0029】
更に、本発明では、山留め壁間の土(内部土)を掘削する際に、埋設物が保護部材によって保護されるので、埋設物の養生が不要になる。
【0030】
更に、本発明では、貫通孔を有する埋設物用ボックスを使用するだけで、埋設物を保護できるので、構成を簡略化できる。
【0031】
なお、以上述べた各構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、土留め壁間の土を掘削する際に埋設物を養生をする必要がないので、養生部材及び養生作業の削減が可能である。
【0033】
また、既存の埋設物を埋設物用ボックスに収納するので、従来必要であった埋設物の設置エリアを大幅に縮小することができる結果、構造物の構築のための掘削範囲の縮小化が実現され、全体工期の短縮化及び工事費の削減が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態に係るアンダーバス道路交差点部の埋設物の移設工法を添付した図1〜図12に基づいて詳細に説明する。
【0035】
[アンダーパス道路]
まず、本実施の形態のアンダーパス道路10を説明する。本実施の形態のアンダーパス道路10、10は、図1に示すように、上り側車線と下り側車線の2車線である。そして、この2車線のアンダーパス道路10、10は、それぞれコンクリート底版11、11が敷設されている。
【0036】
この2車線のアンダーパス道路10、10の両側には、自立性の山留め壁12、12が設けられている。また、本実施の形態では、この2車線のアンダーパス道路10、10の間にも、山留め壁13が設けられている。
【0037】
なお、この山留め壁13は、アンダーパス道路10、10の施工に際して山留めとして用いられるものであるが、アンダーパス道路10、10が完成した後もこの山留め壁13は、そのまま残されて上り側車線及び下り側車線の隔壁として用いられる。
【0038】
上記の山留め壁12、13は、例えば直径800mmの鋼管が略隙間なく並べて打設され、鋼管矢板としての機能を果たすように構成されている(図3参照)。また、両側の山留め壁12、12の内側面、及び中央の山留め壁13の両側面には、内装板15がそれぞれ貼り付けられている(図1参照)。
【0039】
アンダーパス道路10、10の交差点部における両側の山留め壁12、12及び中央の山留め壁13の上には、アンダーパス道路10、10と交差する道路49をアンダーパス道路10、10の上側で通過させるため、覆工17が設けられている。一方、前記交差点部以外の部分は、覆工17がなく上部側が解放されている(図3参照)。
【0040】
上記の覆工17は、長さがアンダーパス道路(上り車線側あるいは下り車線側)10の道幅より少し長い角形鋼管床版18を2本長手方向につなぎ合わせた状態で、アンダーパ
ス道路10と略直交する向きで隙間なく並べ、かつ角形鋼管床版18、18の上を舗装して構成される。
【0041】
[埋設物用ボックス]
そして、通信、電気、ガス、上水道を含む地中の埋設物51を収納する埋設物用ボックス20が、図3に示すように、アンダーパス道路10、10の交差点部から所定距離(例えば3m)外れた部分にアンダーパス道路を横断するように(跨ぐように)複数(図3では2本)設けられている。この埋設物用ボックス20、20は、比較的入手が容易で軽量で剛性に優れた800mm×800mm程度の角形鋼管製(コンクリート製でもよい)であり、地中の埋設物51を一括して若しくはそれらの内のいくつかを分類して収納する。
【0042】
すなわち、埋設物用ボックス20に収める埋設物51(51a〜51g)は、図2(a)に示すように、目的・用途に応じて分類収納されており、埋設物用ボックス20内部の側方や下方にそれぞれの受台20a〜20gを介して懸架されている。すなわち、埋設物用ボックス20内部の長手方向に沿って、方形鋼板よりなる受台20a〜20eが埋設物用ボックス20内部の左側方に固定され、それぞれの受台20a〜20eに目的・用途に応じて、例えば比較的小径の電気、通信等の埋設物51a〜51eが分類収納されている。また、埋設物用ボックス20内部の長手方向に沿って、方形鋼板よりなる受台20f、20gが埋設物用ボックス20内部の右側方に固定され、それぞれの受台20f、20gに比較的大径の水道管、ガス管等の埋設物51f、51gが分類収納されている。
【0043】
[埋設物用ボックスの基礎]
この埋設物用ボックス20、20の設置位置を交差点部から外れた位置とする場合、アンダーパス道路完成時は道路上方を横断することとなる。
【0044】
また、この埋設物用ボックス20、20は、アンダーパス道路10、10の山留め壁間の土(内部土)掘削工事前に予め埋設される。そして、埋設物用ボックス20は、アンダーパス道路10、10を構築する際に、山留め壁12、13、12に用いた鋼管を基礎として支持されている。
【0045】
更に、この埋設物用ボックス20を山留め壁12、13、12で支持する際は、図1及び図2(a)に示すように、ボックス受け梁21を介して埋設物用ボックス20を載置する。
【0046】
次に、このアンダーパス道路10の施工方法について説明し、その中で埋設物の移設工法も説明する。なお、ここでは、一方のアンダーパス道路(上り線側)10を構築する場合について説明するが、もう一方のアンダーパス道路(下り線側)10を構築する場合も同様である。
【0047】
この実施の形態のアンダーパス道路10の施工方法は、図4の施工流れ図に示すように、部分的に交通を規制する工程、埋設物用ボックスの設置及び埋設物の移設工程、簡易山留め工程、鋼管矢板打設工程、台座設置工程、床版設置部の掘削工程、角形鋼管床版の設置工程、内部掘削工程、床版設置部周囲の埋め戻し工程、全面的に交通規制を解除し開放する工程、の順に施工する。
【0048】
すなわち、部分的に交通を規制する工程の後、埋設物用ボックスの設置及び埋設物の移設工程を実施する。
【0049】
(埋設物用ボックスの設置及び埋設物の移設工程)
この移設工程では、埋設物51を収納する埋設物用ボックス20を、図3に示すように
、アンダーパス道路10、10の交差点部から所定距離(例えば3m)外れた位置にアンダーパス道路を横断するように2本設置する。
【0050】
そして、この埋設物用ボックス20を設置する際は、図1及び図2(a)に示すように、埋設物用ボックス20をボックス受け梁21を介して予めアンダーパス道路10、10を横断するように打設する。
【0051】
次に、地中の埋設物51を埋設物用ボックス20内に一括して若しくはそれらの内のいくつかを分類して収納する。
【0052】
すなわち、埋設物用ボックス20に収める埋設物51(51a〜51g)は、図2(a)に示すように、目的・用途に応じて分類収納されており、埋設物用ボックス20内部の側方や下方にそれぞれの受台20a〜20gを介して懸架する。
【0053】
(部分的に交通を規制する工程・簡易山留め工程)
次に、アンダーパス道路10にすべき道路を部分的に交通規制した後、山留め壁を設置する位置に沿って簡易山留め40(図5参照)を施工する。この簡易山留め工程では、アンダーパス道路10にすべき道路に対し、山留め壁12、13、12(図1参照)を設置する位置に沿って、例えば、幅3m、深さ1mの溝を掘削し、掘削した壁面に矢板を隙間無く設置する。
(鋼管矢板打設工程)
次に、図5に示すように、簡易山留め40の位置に、複数の鋼管14を打設して自立性の山留め壁12、13を設ける。この鋼管14は、略隙間なく並べて打設されて鋼管矢板を形成し、鋼管14の打設には、全周旋回杭打機34などを使用する。
(台座設置工程)
次に、図6に示すように、鋼管矢板の頭部に台座61を設置する。また、台座61は、頂部に、角形鋼管床版18を載置する溝が形成されている。
(床版設置部の掘削工程)
次に、図7に示すように、山留め壁12側の簡易山留めと山留め壁13側の簡易山留めの間である床版設置部を所定の深さ掘削する。
(角形鋼管床版の設置工程)
図8に示すように、台座61,61との間に、隙間無く角形鋼管床版18を設置する。なお、角形鋼管床版18は、台座61の頂部に載置される。
【0054】
図9に示すように、隙間無く設置された角形鋼管床版18の上面に舗装するなど覆工を行い、上り線側アンダーパス道路10の床版部分の設置を完了させる。
【0055】
次に、下り線側アンダーパス道路10の床版部分を構築する。この構築は、上り線側アンダーパス道路10の床版部分の構築で説明した施工方法と同様に、部分的に交通を規制する工程、簡易山留め工程、鋼管矢板打設工程、台座設置工程、床版設置部の掘削工程、角形鋼管床版の設置工程、の順に施工する。
【0056】
図10は、下り線側アンダーパス道路10の床版部分の設置が完了した状態を示す。
(内部掘削工程)
図11に示すように、鋼管矢板(山留め壁12)と鋼管矢板(山留め壁13)との間にある土を掘削し、上り線側アンダーパス道路10部分を開通させる。その際、交差点から離れるに従って徐々に浅くなるように適宜な勾配を付けて掘削する。次に、鋼管矢板(山留め壁13)と鋼管矢板(山留め壁12)との間にある土を掘削し、下り線側アンダーパス道路10部分を開通させる。この場合も、上り線側と同様に、交差点から離れるに従って徐々に浅くなるように適宜な勾配を付けて掘削する。
(床版設置部周囲の埋め戻し工程・全面的に交通規制を解除し開放する工程)
図1に示すように、上り及び下りの2列に設けられているアンダーパス道路10、10にそれぞれコンクリート底版11、11を敷設する。そして、両側の山留め壁12、12の内側面、及び中央の山留め壁13の両側面に内装板15をそれぞれ貼り付ける。更に、床版設置部周囲の掘削後を埋め戻し、全面的に交通規制を解除し開放する。
(埋設物用ボックス20の設置効果)
従来のアンダーパス道路工事では、工事の際に地中の埋設物を移設する場合、山留めの施工、内部掘削を行いながら、または一時中断して実施しなければならず、アンダーパス道路の構築に多大な期間(工期)が必要であった。
【0057】
本実施の形態の埋設物の移設工法では、埋設物用ボックス20を予めアンダーパス道路交差点部の交差点内もしくは交差点部から外れた部分に設置し、山留め壁間の土(内部土)掘削前に工事の障害となる地中埋設物をこの埋設用ボックス20内に移設しておくため、山留め壁間の土(内部土)掘削後に地中の埋設物を移設する必要がない。従って、アンダーパス道路の構築に必要な期間が従来工法に比較して短くなる。
【0058】
この事前に設置しておく埋設物用ボックス20に、交差点部に埋設されている地中埋設物や、アンダーパス道路を横断する地中の埋設物を、山留め壁間の土(内部土)掘削前に移設を済ませておくことで、工事中も防護・養生の必要がなく、工事の初期段階で、これらを最終的な移設場所へ予め移設しておくため、破損などの恐れも少ない。
【0059】
また、図12に示すように、埋設物用ボックス20を用いた場合、従来に比して省スペース化が図れるので埋設物用空間が圧縮でき、アンダーパス道路の道路盤が浅い位置で施工できる。すなわち、埋設物ボックス20を設置する場合は、ボックスカルバート上部にある地中埋設物の設置のための2.5m以上の深さ(土かぶり)は必要なくなり、その結果、道路の路盤深さを浅くでき、アンダーパス道路の延長を短くすることができる。よって、埋設物用ボックス20を設置した場合は、前述の実施の形態のアンダーパス区間長L2(図12(b)参照)が、図12(a)に示す従来の工法の区間長L1に比して短くできる。特に、埋設物用ボックス20を、交差点部から外れた位置に複数設ける場合には、各々の埋設物用ボックス20をさらに小型化できるので、埋設物の設置スペースはより縮小される。
【0060】
前述の実施の形態では埋設物用ボックス20の設置位置を交差点部から所定距離離れた位置とする場合(図3参照)で説明したが、埋設物用ボックス20の設置位置は交差点部の内側の位置に設けても良い。次に、埋設物用ボックス20の設置位置を交差点部の内側の位置に設けた別の実施の形態を図13及び図2(b)に基づき説明する。なお、図13及び図2(b)に使用する符号で前述の実施の形態で用いた符号と同一のものは同一機能を有するものであり、その説明の詳細を省略する。
(別の実施の形態)
別の実施の形態では、通信、電気、ガス、上水道を含む地中の埋設物51を収納する埋設物用ボックス20が、図13に示すように、アンダーパス道路10、10の交差点部の内側の位置にアンダーパス道路を横断するように1本設けられている。この埋設物用ボックス20は、前述の実施の形態と同様に、角形鋼管製であり、地中の埋設物51を一括して若しくはそれらの内のいくつかを分類して収納する。
【0061】
すなわち、埋設物用ボックス20に収める埋設物51(51a〜51g)は、図2(b)に示すように、目的・用途に応じて分類収納されており、埋設物用ボックス20内部の側方や下方にそれぞれの受台20a〜20gを介して懸架されている。すなわち、埋設物用ボックス20内部の長手方向に沿って、方形鋼板よりなる受台20a〜20eが埋設物用ボックス20内部の左側方に固定され、それぞれの受台20a〜20eに目的・用途に
応じて、例えば比較的小径の電気、通信等の埋設物51a〜51eが分類収納されている。また、埋設物用ボックス20内部の長手方向に沿って、方形鋼板よりなる受台20f、20gが埋設物用ボックス20内部の右側方に固定され、それぞれの受台20f、20gに比較的大径の水道、ガス等の埋設物51f、51gが分類収納されている。
【0062】
[埋設物用ボックスの基礎]
この埋設物用ボックス20の設置位置を交差点部の内側の位置とする場合、アンダーパス道路完成時は道路上方を横断することとなる。そこで、この埋設物用ボックス20は、アンダーパス道路10、10の山留め壁間の土(内部土)掘削工事前に予め埋設される。そして、この埋設物用ボックス20を埋設する際、図2(b)に示すように、埋設物用ボックス20は、山留め壁12、13、12に用いた鋼管を基礎として支持されている。また、埋設物用ボックス20を予めアンダーパス道路10、10を横断するように打設しておく。なお、埋設物用ボックス20は、ボックス受け梁21介して山留め壁12,13に載置される。
【0063】
更に、覆工用の鋼材を載置する際に、前記基礎(山留め壁12、13、12)に支持された埋設物用ボックス20及びボックス受け梁21を基礎として兼用させ、埋設物用ボックス20の上に覆工用の鋼材を載置する(図2(b)参照)。
【0064】
なお、本発明のアンダーバス道路交差点部の埋設物の移設工法において、埋設物用ボックスには点検用のハッチ(図示せず)を設けておくことができる。従来は地中に埋設してしまえば、点検のためには通信ケーブル等の埋設物を掘り起こさなければならなかったが、この埋設物用ボックスに収納すれば、点検用のハッチがあるため容易に点検が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の正面図である。
【図2】埋設物用ボックスを基礎により支持している状態を示す図であり、図2(a)は第1実施形態の埋設物用ボックスの基礎を示し、図2(b)は別の実施形態の埋設物用ボックスの基礎を示す。
【図3】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す工程図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、鋼管矢板の打設工程を示す図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、台座の設置工程を示す図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、床版設置部の掘削工程図である。
【図8】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、角形鋼管床版の設置工程図である。
【図9】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、上り車線側の床版設置完了図である。
【図10】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、下り車線側の床版の施工工程図である。
【図11】本発明に係る第1実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、内部の掘削工程図である。
【図12】従来工法と第1実施形態の工法におけるアンダーパス区間長の比較図である。
【図13】本発明に係る別の実施形態の交差点におけるアンダーパス道路の構造を示す斜視図である。
【図14】一般的な道路に埋設された埋設物を示す図である。
【図15】従来例に係る交差点におけるアンダーパス道路の施工方法を示す図であり、埋設物の養生方法を示す断面図である。
【図16】従来例に係る交差点におけるアンダーパス道路の構造を示す図であり、ボックスカルバートの設置方法を示す断面図である。
【図17】従来例に係るアンダーパス道路を構成するボックスカルバートと埋設物との位置関係を示す断面図である。
【図18】従来例に係るアンダーパス道路を構成するボックスカルバートである。
【符号の説明】
【0066】
10 アンダーパス道路
11 コンクリート底版
12、13 山留め壁
14 鋼管
15 内装板
17 覆工
18 角形鋼管床版
20 埋設物用ボックス
21 ボックス受け梁
30 アンダーパス道路にすべき道路
31 土
49 アンダーパス道路と交差する道路
50 道路
51(51a〜51g) 埋設物
52 鋼矢板
53 山留め壁
54 覆工
55 土
56 吊り下げ部材
57 空間
58 ボックスカルバート
59 アンダーパス道路
60 アンダーパス道路と交差する道路
61 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管を含む既設の地中埋設物が存在する道路の一部を開削して、この道路の下部に所定の構造物を構築する場合に、
前記道路に沿って前記両側の山留め壁を跨ぐように前記埋設物を挿通可能な貫通部を有する埋設物用ボックスを設置する工程と、
前記埋設物用ボックスの前記貫通部内に前記埋設物を移設する工程と、
所定の構造物を構築すべき部分の地盤の両側に沿って前記道路と交差する山留め壁を形成する工程と、
山留め壁内を掘削して所定の構造物を構築する工程と、
を含むことを特徴とする埋設物の移設工法。
【請求項2】
前記構造物がアンダーパス道路であって、複数の道路が交差し、前記複数の道路のうち一部の道路に沿って設けられた通信ケーブル、電線、ガス管、上水道管を含む既設の地中埋設物が通過する交差点部において、前記一部の道路を開削し、この一部の道路以外の道路を交差点部の下側を通過するアンダーパス道路とする場合に、
前記一部の道路に沿って前記両側の山留め壁を跨ぐように前記埋設物を挿通可能な貫通部を有する埋設物用ボックスを設置する工程と、
前記埋設物用ボックスの前記貫通部内に前記埋設物を移設する工程と、
前記アンダーパス道路にすべき道路の両側に沿って山留め壁を設ける工程と、
山留め壁内を掘削して前記一部の道路の下部にアンダーパス道路を構築する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1の埋設物の移設工法。
【請求項3】
前記埋設物用ボックスは、前記両側の山留め壁を跨ぐように複数設置し、前記埋設物を分割して移設することを特徴とする請求項1または2に記載の埋設物の移設工法。
【請求項4】
前記埋設物用ボックスには、通信、電気、ガス、上水道を含む前記埋設物を目的・用途に応じて分類載置する受台が前記埋設物用ボックスの長手方向に沿って設けられ、この受台に前記埋設物を載置して分類収納することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の埋設物の移設工法。
【請求項5】
前記埋設物用ボックスは鋼管であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の埋設物の移設工法。
【請求項6】
前記埋設物用ボックスを支持する基礎を予め打設しておくことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の埋設物の移設工法。
【請求項7】
前記埋設物用ボックスを支持する基礎として、前記山留め壁を利用することを特徴とする請求項6に記載の埋設物の移設工法。
【請求項8】
工期中における道路の交通を確保するため、前記山留め壁の上に覆工を施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の埋設物の移設工法。
【請求項9】
工期中における道路の交通を確保するため覆工を施す際に、前記基礎に支持された埋設物用ボックスを基礎として用い、前記埋設物用ボックス上に覆工用材を載置することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の埋設物の移設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−270512(P2007−270512A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97321(P2006−97321)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】