説明

埋設用機器

【課題】 被取付板材の前側での簡単な操作で挟持片を埋設用機器内に収納させ、挟持片が被取付板材の裏側に引っ掛かることなく埋設状態にある埋設用機器を被取付板材からスムーズに取り外すことのできる埋設用機器を提供する。
【解決手段】 緩め方向に回転させた取付操作ねじ4に挟持片5を緩め方向に共廻りさせるための緩め側共廻り手段9を有する。緩め側共廻り手段9にて共廻りさせた挟持片5を埋設用機器1に設けた挟持片収納部11に収容した状態で廻り止めさせるための緩め側廻止部10を有する。緩め側共廻り手段9と緩め側廻止部10とで挟持片収納部11内に収容した挟持片5を埋設用機器1に対して保持させると共に、上記挟持片5の保持が取付操作ねじ4の締付け方向の回転によって解除されるような収納維持手段12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付板材に埋設される埋設用機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、埋設スピーカーや埋設配電機器など、被取付板材2に穿設した取付用開口3に埋設される埋設用機器1を、その一部が被取付板材2の表面側に露出されるかたちで被取付板材2の内部に埋設する場合には、被取付板材2に穿設した取付用開口3に埋設用機器1を挿入し、埋設用機器1に備えた挟持手段によって被取付板材2の取付用開口縁を前後に挟持することが行われている。
【0003】
挟持手段としては、たとえば図8のように、埋設用機器1に前後に取付操作ねじ4を遊挿し、この取付操作ねじ4に扁平板状の挟持片5をその偏芯位置で螺合させ、取付操作ねじ4に共廻りさせた挟持片5を、埋設用機器1に設けた締付側廻止部7によって回転規制させることで埋設用機器1から側方に突出する状態にし、この状態の挟持片5を被取付板材2の裏側に位置させて、埋設用機器1のフランジ片8と挟持片5とで被取付板材2の取付用開口縁を前後に挟持することが行われている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この挟持手段によると、埋設用機器1を取付用開口3に挿入した後に、取付操作ねじ4を締付け方向に回転させて締付側共廻り手段6によって挟持片5を締付け方向に共廻りさせ、締付側廻止部7によって回転規制させることで埋設用機器1から側方に突出する状態にして、埋設用機器1のフランジ片8と挟持片5とで被取付板材2の取付用開口縁を前後に挟持するといった作業で、被取付板材2に埋設用機器1を埋設できるから、被取付板材2への埋設用機器1の埋設施工は比較的良好に行うことができる。
【0005】
しかしながら、上記挟持片5は、埋設用機器1から側方に突出する状態にするように取付操作ねじ4と共に締付け方向に共廻りをさせることは可能にされているが、この埋設用機器1から側方に突出する状態から埋設用機器1から側方に突出しない状態(埋設用機器1内に収納される状態)にするために取付操作ねじ4と共に緩め方向に共廻りされるようには為されていない。したがって、埋設されている埋設用機器1を、そのメンテナンスや交換の際に、被取付板材2から取り外すのは困難である、といった問題があった。
【0006】
つまり、被取付板材2の挟持を解除するように取付操作ねじ4を緩めたとしても、依然として、挟持片5は埋設用機器1から側方に突出する状態になっているのであり、この埋設用機器1から側方に突出する挟持片5が被取付板材2の裏側に引っ掛かってしまい、スムーズに埋設用機器1を被取付板材2から取り外すことはできないのである。しかして、埋設用機器1を被取付板材2から取り外す際には、埋設用機器1と取付用開口縁との隙間から細い工具などを突っ込んで被取付板材2の裏側で挟持片5を埋設用機器1内に収納する状態にしなければならないといった困難な作業を要することとなるのであり、しかも、一旦、埋設用機器1内に収納された挟持片5であっても、埋設用機器1を傾けたりすると挟持片5がその自重で再び埋設用機器1から側方に突出する状態になり、再び被取付板材2の裏側で挟持片5を埋設用機器1内に収納する状態にする困難な作業を強いられる場合もしばしばあった。
【特許文献1】特開平10−117417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて為したものであって、被取付板材の前側での簡単な操作で挟持片を埋設用機器内に収納させることができ、しかも、挟持片が被取付板材の裏側に引っ掛かることなく埋設状態にある埋設用機器を被取付板材からスムーズに取り外すことのできる埋設用機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る埋設用機器1は、被取付板材2に穿設した取付用開口3に埋め込むように取り付けられる埋設用機器1であって、この埋設用機器1にその前後方向を軸方向とする取付操作ねじ4を軸方向に移動せずに回転自在にして備えると共に、この取付操作ねじ4に扁平板状の挟持片5をその偏芯位置で螺合させ、締付け方向に回転させた取付操作ねじ4に対して挟持片5を締付け方向に共廻りさせるための締付側共廻り手段6を有すると共に、締付側共廻り手段6にて共廻りさせた挟持片5を埋設用機器1から側方に突出する状態で廻り止めさせるための締付側廻止部7を有し、これら締付側廻止部7と締付側共廻り手段6とで被取付板材2の裏側に位置させた挟持片5を締付け方向に回転する取付操作ねじ4に沿って前方に螺進させつつ埋設用機器1から側方に突出する状態にして、この状態の挟持片5と埋設用機器1の前部に側方に突設させたフランジ片8とで被取付板材2の取付用開口縁を前後に挟持可能にし、緩め方向に回転させた取付操作ねじ4に挟持片5を緩め方向に共廻りさせるための緩め側共廻り手段9を有すると共に、緩め側共廻り手段9にて共廻りさせた挟持片5を埋設用機器1に設けた挟持片収納部11に収容した状態で廻り止めさせるための緩め側廻止部10を有し、緩め側共廻り手段9と緩め側廻止部10とで挟持片収納部11内に収容した挟持片5を埋設用機器1に対して保持させると共に、上記挟持片5の保持が取付操作ねじ4の締付け方向の回転によって解除されるような収納維持手段12を有して成ることを特徴とする。
【0009】
これによると、緩め側共廻り手段9と緩め側廻止部10によって挟持片5を挟持片収納部11内に収容した状態にできるのであり、つまり、従来のように工具などを取付用開口3から挿入して被取付板材2の裏側で挟持片5を埋設用機器1内に収容させるような煩雑な作業が必要ではなく、取付操作ねじ4を緩め方向に回転させるといった被取付板材2の前側での簡単な操作で、挟持片5を挟持片収納部11内に収容した状態にできる。そして、収納維持手段12によって挟持片5を挟持片収納部11に収容させた状態で保持させることができるから、埋設用機器1を傾けたりしても挟持片5が自重によって埋設用機器1の側方に突出してしまうことも無く、従来のように挟持片5が被取付板材2の裏側に引っ掛かる恐れも無くて、スムーズに取付用開口3から埋設用機器1を取り外すことができるのである。
【0010】
また、収納維持手段12を、緩め方向に回転する取付操作ねじ4に沿って後方に螺進させた挟持片5の後面5bと埋設用機器1に設けた当り面13とが圧接されるようにして構成することも好ましく、更に、緩め側共廻り手段9を、緩め方向に回転する取付操作ねじ4に沿って後方に螺進させた挟持片5の後面5bと埋設用機器1に設けた当り面13とが当接した時点で、取付操作ねじ4に対して挟持片5が共廻りをして挟持片収納部11内に収容されるようにして構成することも好ましい。これによると、埋設用機器1に設けた当り面13が収納維持手段12及び緩め側共廻り手段9を兼用することができるから、簡単な構造で収納維持手段12及び緩め側共廻り手段9を埋設用機器1に備えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被取付板材の前側での簡単な操作によって挟持片を埋設用機器内に収納させることができる利点を有し、更に、挟持片が埋設用機器内に収納された状態が維持されて挟持片が被取付板材の裏側に引っ掛かることなく埋設状態にある埋設用機器を被取付板材からスムーズに取り外すことができる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0013】
本例の埋設用機器1は図2のように便器20に埋設される埋設スピーカー1aである。埋設スピーカー1aは図3のようにスピーカー14を内装したボディ15と後面カバー16とで成る本体ブロック17の前面に蓋板ブロック18をその四隅で取付ねじ19によって一体に取り付けることで構成されている。蓋板ブロック18は前後に貫通する左右に長いスリットが上下に並べて形成されており、この蓋板ブロック18の周縁部は本体ブロック17よりも外方に突出していてフランジ片8を構成している。また、便器20は上方に開口せるボウル部21の周囲を設置面から立設した円弧板状のスカート板材22で覆設して形成されており、上記埋設スピーカー1aは、スカート板材22とボウル部21との間の中空空間であるデッドスペースにスカート板材22に穿設した取付用開口3から本体ブロック17を挿入し、被取付板材2となるスカート板材22における取付用開口縁を埋設スピーカー1aのフランジ片8と後述する挟持片5とで前後に挟持するようにして取り付けて埋設される。なお、取付用開口3は、正面視で本体ブロック17よりも大きく且つ蓋板ブロック18よりも小さい開口面積に形成されている。
【0014】
埋設スピーカー1aにはその前後方向を軸方向とする取付操作ねじ4が軸方向に移動せずに回転自在にされた状態で左右に一対備えられており、取付操作ねじ4にはそれぞれ扁平板状の挟持片5がその偏芯位置で螺合されている。詳しくは、図1(b)や図6のように、取付操作ねじ4は、その軸部4aが蓋板ブロック18に穿設した貫通孔23を貫通し、本体ブロック17の左右縁部に凹設した凹所状の挟持片収納部11内を前後に通って、軸部4aの先端が本体ブロック17の挟持片収納部11の後面11dに設けた軸受孔24に回転自在に支持されるようにして配置されており、取付操作ねじ4の軸部4aにおける挟持片収納部11内に位置する箇所に挟持片5が螺合されている。取付操作ねじ4は、その頭部4bが貫通孔23の前側に位置し、貫通孔23の裏側に位置する取付操作ねじ4の軸部4aにEリングである抜け止め片25を取り付けることで、埋設スピーカー1aからの抜け止めが図られている。上記取り付けられた抜け止め片25と挟持片5との間の取付操作ねじ4の軸部4aにはコイルバネ26が巻装されている。挟持片収納部11は挟持片5を収納するための空所であって、上面11a、下面11b、側面11c及び後面11dにより囲まれて外方に開口するように形成されている。挟持片5は、金属製の長板材であり、取付操作ねじ4の螺合位置と反対側の端部で前方に突出する押圧突部5aが形成されている。なお、取付操作ねじ4の頭部4bは蓋板ブロック18の前面に露出するが、蓋板ブロック18の前面に着脱自在に取付けたカバー体27によって隠匿されて埋設スピーカー1aに良好な外観が確保される。
【0015】
この埋設スピーカー1aは具体的に以下のようにして便器20に埋設される。まず、埋設スピーカー1aの本体ブロック17をスカート板材22の取付用開口3からスカート板材22の内部に挿入する。このとき、挟持片5は後述するように収納維持手段12によって挟持片収納部11内に収納保持できるのであり、作業者が持つ埋設スピーカー1aを傾けても挟持片5が埋設スピーカー1aから側方に飛び出させずに埋設スピーカー1aの本体ブロック17の取付用開口3への挿入を挟持片5に邪魔させずに確実に行なわせることができる。次いで、取付操作ねじ4を締付け方向に回転させる。取付操作ねじ4を締付け方向に回転させると、挟持片5が取付操作ねじ4に沿って前方に移動される(矢印a)。この前方に移動した挟持片5が、図5のように、コイルバネ26に弾接されると、コイルバネ26により後方への付勢を受け、取付操作ねじ4と挟持片5との螺合がきつくなってその摩擦力により取付操作ねじ4と挟持片5とが共廻りをするようになる(矢印b)。つまり、コイルバネ26は、締付け方向に回転させた取付操作ねじ4に対して挟持片5を締付け方向に共廻りさせるための締付側共廻り手段6を構成している。
【0016】
この締付側共廻り手段6によって締付け方向に共廻りした挟持片5は、その側縁が挟持片収納部11の上面11a又は下面11bに当接し、それ以上共廻りしないように廻り止めされる。このときには挟持片5は埋設スピーカー1aから側方に突出する状態となっている。詳しくは、図4のように、正面視右側の取付操作ねじ4(4A)は挟持片収納部11の下部に位置して設けられており、締付け方向に共廻りした挟持片5はその側縁が挟持片収納部11の下面11bに当接して廻り止めが為される。一方、正面視左側の取付操作ねじ4(4B)は挟持片収納部11の上部に位置して設けられており、締付け方向に共廻りした挟持片5はその側縁が挟持片収納部11の上面11aに当接して廻り止めが為される。つまり、締め付け方向に共廻りをした挟持片5が当接する挟持片収納部11の下面11b又は上面11aは、締付側共廻り手段6にて共廻りさせた挟持片5を埋設用機器1から側方に突出する状態で廻り止めさせるための締付側廻止部7を構成している。
【0017】
上述のように締付側廻止部7と締付側共廻り手段6によって挟持片5は埋設スピーカー1aから側方に突出する状態になるのであるが、取付操作ねじ4を更に締付け方向に回転させ続ければ、挟持片5は埋設スピーカー1aから側方に突出した状態のままコイルバネ26の後方付勢に逆らって取付操作ねじ4に沿って前方に移動させることができる。ここで、埋設スピーカー1aから側方に突出した状態の挟持片5は、埋設スピーカー1aの前部で側方に突出するフランジ片8と前後で対向する状態になっているから、この対向する挟持片5とフランジ片8との間でスカート板材22の取付用開口縁を挟持でき、埋設スピーカー1aが便器20に取付けられて埋設できるのである。なお、本例では挟持片5の押圧突部5aでフランジ片8との協働でスカート板材22を挟持するから、強固な挟持圧でスカート板材22の挟持が可能にされている。また、図6にように、円弧板状のスカート板材22は取付用開口縁での曲率が左右で異なる場合があって、つまり一対の挟持片5とフランジ片8とで挟持する挟持厚が異なる場合が多々あるが、一対の取付操作ねじ4の各々において挟持片5の前後位置を自由に設定できるから、上記異なる挟持厚に応じて適宜スカート板材22の取付用開口縁が挟持可能にされている。
【0018】
また、本例の埋設スピーカー1aは埋設されている便器20から支障なく取り外すことができる利点を有する。取付操作ねじ4を緩め方向に回転させると、挟持片5が取付操作ねじ4に沿って後方に移動される(矢印c)。つまり、挟持片5とフランジ片8とでスカート板材22の取付用開口縁を挟持した状態で、取付操作ねじ4を緩め方向に回転させると、スカート板材22の取付用開口縁の挟持が解除される。
【0019】
そのまま取付操作ねじ4を緩め方向に回転させ続け、挟持片5を取付操作ねじ4に沿って後方に螺進させていくと、図7のように、挟持片5はその後面5bと挟持片収納部11の後面11dである当り面13とが当接し、上記当接によって挟持片5は前方に付勢されて取付操作ねじ4と挟持片5との螺合がきつくなってその摩擦力によって取付操作ねじ4と挟持片5とが共廻りをするようになり、挟持片5が挟持片収納部11内に収容されるようになる(矢印d)。つまり、挟持片5の後面5bが当接される挟持片収納部11の当り面13が、緩め方向に回転させた取付操作ねじ4に挟持片5を緩め方向に共廻りさせるための緩め側共廻り手段9を構成している。
【0020】
更に取付操作ねじ4を緩め方向に回転させ続けると、共廻りした挟持片5は挟持片収納部11に収容された状態となると共に、その側縁が挟持片収納部11の側面11cに当接されて廻り止めが為される。つまり、挟持片収納部11の側面11cは、共廻りさせた挟持片5を埋設用機器1に設けた挟持片収納部11に収容した状態で廻り止めさせるための緩め側廻止部10を構成している。そして、この挟持片収納部11に収容されるべく共廻りする挟持片5は、当り面13に当接された状態から更に後方へ押圧されるようにして為されるのであり、つまり挟持片5は当り面13に対して締め付けられた状態になって埋設スピーカー1aに対して保持された状態となる。すなわち、共廻りした挟持片5の後面5bが押圧される挟持片収納部11の当り面13は、緩め側共廻り手段9と緩め側廻止部10とで挟持片収納部11内に収容した挟持片5を埋設スピーカー1aに対して保持させる収納維持手段12を構成している。なお、挟持片5は取付操作ねじ4を締付け方向に回転させれば前方に移動するから、埋設スピーカー1aに対して保持された挟持片5は取付操作ねじ4を締付け方向に回転させればその保持が解除されるようになる。つまり、上記収納維持手段12は、埋設スピーカー1aによる挟持片5の保持が取付操作ねじ4の締付け方向の回転によって解除されるようになっている。
【0021】
上述のように挟持片5は、図1に示すように、緩め側共廻り手段9と緩め側廻止部10によって挟持片収納部11内に収容した状態にできる。つまり、従来のように工具などを取付用開口3から挿入して被取付板材2の裏側で挟持片5を埋設用機器1内に収容させるような煩雑な作業が必要ではなく、取付操作ねじ4を緩め方向に回転させるといった被取付板材2の前側での簡単な操作で、挟持片5を挟持片収納部11内に収容した状態にできる。そして、上記のように収納維持手段12によって挟持片5を挟持片収納部11に収容された状態で保持させることができるから、埋設スピーカー1aを傾けたりしても挟持片5が自重によって埋設スピーカー1aの側方に突出してしまうことも無く、従来のように挟持片5が被取付板材2の裏側に引っ掛かる恐れも無くて、確実に取付用開口3から本体ブロック17を抜いて、便器20から埋設スピーカー1aをスムーズに取り外すことができるのである。
【0022】
詳しくは本例のコイルバネ26は、コイルバネ26の取付操作ねじ4への巻装後に行う取付操作ねじ4への抜け止め片25の組み付け作業を容易にするために、抜け止め片25と取付操作ねじ4の軸部4a先端との長さ寸法よりも充分に短い長さ寸法を有するものが用いられているから、取付操作ねじ4を緩み方向に回転させて取付開口縁の挟持状態を解除した挟持片5は一旦はコイルバネ26の後方への付勢によって取付操作ねじ4と共廻りをする状態になるが、後方に移動していく挟持片5はある時点でコイルバネ26の弾性が無くなってその自重により再び埋設スピーカー1aの側方に突出することもあり得る。しかしながら、叙述のように挟持片収納部11の当り面13で構成された緩め側共廻り手段9によって、再び取付操作ねじ4に共廻り可能な状態となって、緩め側廻止部10との協働で挟持片5を挟持片収納部11内に収容できるようになっている。なお、たとえばコイルバネ26に、抜け止め片25と取付操作ねじ4の軸部4a先端との長さ寸法と略同長さ寸法に形成されたものを用いた場合には、後方に移動する挟持片5が当り面13に圧接される状態にまでコイルバネ26を挟持片5に弾接させることができるから、締付側共廻り手段6に加えて緩め側共廻り手段9をも兼用することができる。
【0023】
本例の埋設スピーカー1aにあっては、その工場出荷時には、収納維持手段12によって挟持片5を挟持片収納部11に収容された状態で保持させておくことが好ましく、これによると、現場搬送時に挟持片5が挟持片収納部11から飛び出てしまうことを防止できると共に、取付け現場で挟持片5がスカート板材22の前面に引っ掛かったりせずに取付用開口3に本体ブロック17をスムーズに挿入して、最大限に広げた状態のフランジ片8と挟持片5と隙間にスカート板材22の取付用開口縁をスムーズに位置させて、上述した取り付け施工をスムーズに行わせることができる。また、便器20に埋設した埋設スピーカー1aを修理などで取り外す際には上述のように収納維持手段12によって挟持片5を挟持片収納部11に収容された状態で保持させた状態で行われるのであるから、修理後に再び便器20に埋設させる場合にも上記と同様に、取付け現場で挟持片5がスカート板材22の前面に引っ掛かったりせずに取付用開口3に本体ブロック17をスムーズに挿入して、最大限に広げた状態のフランジ片8と挟持片5と隙間にスカート板材22の取付用開口縁をスムーズに位置させ、上述した取り付け施工をスムーズに行わせることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の例であり、(a)は挟持片収納部に収容される際の挟持片の動作を説明する埋設スピーカーの斜視図であり、(b)は挟持片収納部に収容された状態の埋設スピーカーの概略水平断面図である。
【図2】同上の埋設スピーカーを埋設した便器の斜視図である。
【図3】同上の埋設スピーカーであり、(a)は前面側から見た斜視図であり、(b)は裏面側から見た斜視図であり、(c)は裏面側から見た分解斜視図である。
【図4】同上の本体ブロックを省略した状態(蓋板ブロックのみ)の埋設スピーカーであり、(a)は裏面側から見た斜視図であり、(b)は(a)の裏面図である。
【図5】同上の挟持片の動作を説明する要部の斜視図である。
【図6】同上の被取付板材を埋設スピーカーのフランジ片と挟持片とで挟持した状態の概略水平断面図である。
【図7】同上の挟持片の動作を説明する要部の斜視図である。
【図8】従来技術の例の埋設用機器を被取付板材に取り付けた状態の側断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 埋設用機器
1a 埋設スピーカー
2 被取付板材
3 取付用開口
4 取付操作ねじ
5 挟持片
6 締付側共廻り手段
7 締付側廻止部
8 フランジ片
9 緩め側共廻り手段
10 緩め側廻止部
11 挟持片収納部
12 収納維持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付板材に穿設した取付用開口に埋め込むように取り付けられる埋設用機器であって、この埋設用機器にその前後方向を軸方向とする取付操作ねじを軸方向に移動せずに回転自在にして備えると共に、この取付操作ねじに扁平板状の挟持片をその偏芯位置で螺合させ、締付け方向に回転させた取付操作ねじに対して挟持片を締付け方向に共廻りさせるための締付側共廻り手段を有すると共に、締付側共廻り手段にて共廻りさせた挟持片を埋設用機器から側方に突出する状態で廻り止めさせるための締付側廻止部を有し、これら締付側廻止部と締付側共廻り手段とで被取付板材の裏側に位置させた挟持片を締付け方向に回転する取付操作ねじに沿って前方に螺進させつつ埋設用機器から側方に突出する状態にして、この状態の挟持片と埋設用機器の前部に側方に突設させたフランジ片とで被取付板材の取付用開口縁を前後に挟持可能にし、緩め方向に回転させた取付操作ねじに挟持片を緩め方向に共廻りさせるための緩め側共廻り手段を有すると共に、緩め側共廻り手段にて共廻りさせた挟持片を埋設用機器に設けた挟持片収納部に収容した状態で廻り止めさせるための緩め側廻止部を有し、緩め側共廻り手段と緩め側廻止部とで挟持片収納部内に収容した挟持片を埋設用機器に対して保持させると共に、上記挟持片の保持が取付操作ねじの締付け方向の回転によって解除されるような収納維持手段を有して成ることを特徴とする埋設用機器。
【請求項2】
収納維持手段を、緩め方向に回転する取付操作ねじに沿って後方に螺進させた挟持片の後面と埋設用機器に設けた当り面とが圧接されるようにして構成したことを特徴とする請求項1に記載の埋設用機器。
【請求項3】
緩め側共廻り手段を、緩め方向に回転する取付操作ねじに沿って後方に螺進させた挟持片の後面と埋設用機器に設けた当り面とが当接した時点で、取付操作ねじに対して挟持片が共廻りをして挟持片収納部内に収容されるようにして構成したことを特徴とする請求項2記載の埋設用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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