説明

埋設管遮蔽構造及び埋設管遮蔽方法

【課題】埋設管遮蔽構造は、埋設作業が煩雑になり、作業スペースを必要とするという問題がある。
【解決手段】この課題を解決するために、本発明に係る埋設管遮蔽構造は、導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽構造であって、線状導電体を、埋設管と地表との間に当該埋設管に沿って配置した。また、本発明に係る埋設管遮蔽方法は、導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽方法であって、溝内に配置された埋設管の上に予め定めた厚さの土砂を敷き、土砂の上に線状導電体を、埋設管上方からこれに沿って配置し、線状導電体の上に土砂を敷くことで溝を埋める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽構造及び埋設管遮蔽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局地的な集中豪雨や雷の発生が増加する傾向がある。都市ガスを始めとする埋設管の外面防食材としてポリエチレンが広く採用されている。図1は、導電性の管12に絶縁被覆11を施した埋設管10の断面図である。落雷や地絡事故等による地面の電位が上昇することによって、絶縁被覆(ポリエチレン)の絶縁破壊が懸念される。図2は、ポリエチレン絶縁被覆の絶縁破壊と電圧の関係を示す図である。例えば、ポリエチレンの絶縁被覆厚を2.5×10-3mとした場合、約200kVの電圧がかかると絶縁破壊を生じる。落雷時における絶縁破壊のためにガス漏れ事故等が起こりうる。
【0003】
雷対策として、これまでガス会社では鞘管や防護鉄板等による遮蔽が行われている。図3は、鞘管20を用いた埋設管遮蔽構造を示す断面図である。図4は、防護鉄板30を用いた埋設管遮蔽構造を示す断面図である。これらの埋設管遮蔽構造の効果を示すシミュレーション結果を後述する。
【0004】
また、埋設地線を用いて、通信ケーブルを雷の直撃から防護する従来技術として非特許文献1が知られている。図5は、直理通信ケーブル(直接大地に埋設する通信ケーブル)40の上方に裸の鋼より線からなる埋設地線41を埋設した場合の断面図(通信ケーブル接続点)である。通信ケーブル接続点において、直理通信ケーブル40の金属シースと埋設地線41を銅線等で接続する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】木島均著、「接地と雷防護」、社団法人電子情報通信学会、平成9年4月10日、pp94〜100、pp164〜166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鞘管20による埋設管遮蔽構造は、溝内に鞘管20を設置した後に、鞘管開口部から埋設管10を挿入する必要がある。そのため、埋設作業が煩雑になるという問題がある。
また、防護鉄板30等による埋設管遮蔽構造は、溝側方に防護鉄板30Aを設置した上で、土砂等を敷き、埋設管10を設置し、再度土砂を敷き、その上にさらに、防護鉄板30Bを設置し、さらに土砂を敷く必要があり、埋設作業が煩雑となるという問題がある。
【0007】
また、非特許文献1は、直理通信ケーブル40の金属シースと埋設地線41を銅線42で接続するため、作業が煩雑となる。なお、非特許文献1は、直理通信ケーブル40を埋設地線41を用いて雷の直撃から防護し、直理通信ケーブル40の金属シースに電流が流入する割合を約1/2に軽減することを目的とする。これは、絶縁被覆(ポリエチレン)の絶縁破壊を防ぐためではなく、作業員等が直理通信ケーブルに対し何らかの作業を行っているときに、感電する危険を軽減するためのものである。よって、そもそも、絶縁被覆を施した埋設管の絶縁破壊を防ぐ本発明とは技術的思想が異なる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る埋設管遮蔽構造は、導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽構造であって、線状導電体を、埋設管と地表との間に当該埋設管に沿って配置した。
【0009】
また、本発明に係る埋設管遮蔽方法は、導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽方法であって、溝内に配置された埋設管の上に予め定めた厚さの土砂を敷き、土砂の上に線状導電体を、埋設管上方からこれに沿って配置し、線状導電体の上に土砂を敷くことで溝を埋める。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、絶縁破壊を防ぐために十分な雷防護効果を持ち、かつ、埋設作業が容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】埋設管の埋設例を示す図。
【図2】絶縁破壊する電圧を示す図。
【図3】鞘管を用いた埋設管遮蔽構造を示す図。
【図4】防護鉄板を用いた埋設管遮蔽構造を示す図。
【図5】非特許文献1の埋設例を示す図。
【図6】遮蔽なしの場合の電界分布図である。
【図7】線状導電体51によって遮蔽した場合の電界分布図。
【図8】(A)は線状導電体51と埋設管10からなる埋設管遮蔽構造100の構成例を示す斜視図、(B)は埋設管10の長手方向に対し垂直方向の断面図。
【図9】(A)は間隔確保ステップを、(B)は線状導電体配置ステップを、(C)は埋め戻しステップを説明するための図。
【図10】(A)は線状導電体61(半割れ管)と埋設管10からなる埋設管遮蔽構造200の構成例を示す斜視図、(B)は埋設管10の長手方向に対し垂直方向の断面図。
【図11】複数の線状導電体71と埋設管10からなる埋設管遮蔽構造300の構成例を示す斜視図。
【図12】雷サージのモデルを示す図。
【図13】遮蔽を行わない場合の電流の流れを示す図。
【図14】実施例1の電流の流れを示す図。
【図15】(A)は断面が三角形の場合の断面図、(B)は断面が四角形の場合の断面図、(C)は線状導電体がより線の場合の断面図、(D)は線状導電体が板状の場合の断面図、(E)は線状導電体が四角柱の半割れ管の場合の断面図、(F)は線状導電体が六角柱の半割れ管の場合の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[考察]
図6は、遮蔽なしの場合の電界分布図である。図7は、線状導電体51によって遮蔽した場合の電界分布図である。図6からわかるように、落雷点の直下の埋設管10上部の電位が上昇する。一方、埋設管10は導電性の管に絶縁被覆を施しており、導電性の管は遠方で接地されている。従って、導電性の管の電位は0V(アースと同じ)である。よって、絶縁被覆の部分に強い電界が生じる。これにより、絶縁破壊が起こる。一方、線状導電体51によって遮蔽した場合には、線状導電体51が埋設管10と地表との間に、埋設管10と平行に配置されているため、線状導電体51は等電位となり、埋設管10の絶縁被覆には、分散された電界が生じることになる(図7参照)。よって、図6の場合とは異なり、一点に電界が集中しないため、絶縁破壊には至らないと考えられる。本発明は、上記原理に基づき埋設管10を絶縁破壊から防護する。なお、上記、原理を裏付けるシミュレーション結果については後述する。以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
<埋設管遮蔽構造100>
図8を用いて実施例1に係る埋設管遮蔽構造100を説明する。図8(A)は線状導電体51と埋設管10からなる埋設管遮蔽構造100の構成例を示す斜視図、(B)は埋設管10の長手方向に対し垂直方向の断面図である。埋設管遮蔽構造100は、線状導電体51と埋設管10を有し、埋設管10を雷害から保護することができる。
【0014】
<埋設管10>
埋設管10は、図1に示すように導電性の管12に絶縁被覆11を施されている。例えば、ガス管等である。例えば、埋設管10の上部と地表との距離(例えば1.5m)は、埋設管10の外径(例えば411.4×10-3m)の3〜4倍(例えば約3.6倍)である。
【0015】
<線状導電体51>
線状導電体51を埋設管10と地表との間のみに、埋設管10に沿って配置する。例えば、線状導電体51と埋設管10をほぼ平行に配置してもよいし、埋設管10の中心軸と線状導電体51の中心軸が鉛直方向にほぼ重なるように配置していもよい。また例えば、線状導電体51は、断面が円形の埋設地線である。
【0016】
例えば、その断面の直径(例えば20×10-3m)は、埋設管10の外径(例えば411.4×10-3m)の0.025〜0.1倍(例えば約0.049倍)である。このとき、埋設管10の上部と線状導電体51の中心との距離(例えば290×10-3m)は、埋設管10の外径(例えば411.4×10-3m)の0.5〜1.5倍(例えば約0.70倍)である。
このような構成により、絶縁破壊を防ぐために十分な雷防護効果を持ち、かつ、埋設作業が容易である埋設管遮蔽構造100を構成することができる。
【0017】
<埋設方法>
図9(A)は間隔確保ステップを、(B)は線状導電体配置ステップを、(C)は埋め戻しステップを説明するための図である。溝内に配置された埋設管10の上に予め定めた厚さの土砂を敷く。これにより、埋設管10と線状導電体51との間隔を確保する(間隔確保ステップ)。土砂の上のみに線状導電体51を、埋設管上方からこれに沿って配置する(線状導電体配置ステップ)。さらに、線状導電体51の上に土砂を敷くことで溝を埋める(埋め戻しステップ)。
【0018】
なお、従来技術において、埋設管10を保護するためには、全体を鞘管20で囲んだり、防護鉄板30等で埋設管10と地表の間以外の部分についても、覆う必要があると考えられていた。しかし、本発明は、シミュレーションにより、線状導電体51を埋設管10と地表との間のみに、線状導電体51を配置すればよいことを明らかにした。これにより絶縁破壊を防ぐために十分な雷防護効果を持ち、かつ、埋設作業が容易である埋設管遮蔽構造及びその方法を発明した。
【0019】
[変形例1]
実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例1とは線状導電体の形状が異なる。図10(A)は線状導電体61(半割れ管)と埋設管10からなる埋設管遮蔽構造200の構成例を示す斜視図、(B)は埋設管10の長手方向に対し垂直方向の断面図である。
<線状導電体61>
線状導電体61は、広がった部分が下になった半割れ管である。例えば、線状導電体61と埋設管10をほぼ平行に配置してもよいし、埋設管10の中心軸と半割れ管の中心軸が鉛直方向にほぼ重なるように配置していもよい。また例えば、線状導電体61は、断面がアーチ状である。
【0020】
例えば、半割れ管の内径(例えば、589.0×10-3m)は、埋設管10の外径(例えば、411.4×10-3m)以上であり、埋設管10の上部と地表との距離(例えば、1.5m)は、埋設管10の外径(例えば、411.4×10-3m)の3〜4倍(例えば約3.6倍)であり、埋設管10の上部と半割れ管との距離(例えば300×10-3m)は、埋設管の外径(例えば、411.4×10-3m)の0.5〜1.5倍(例えば約0.73倍)である。
このような構成とすることによって、鞘管20とは違い、埋設管10を上方から覆うように線状導電体61を配置することができ、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0021】
[変形例2]
実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例1とは線状導電体の形状が異なる。図11は、複数の線状導電体71と埋設管10からなる埋設管遮蔽構造300の構成例を示す斜視図である。
<線状導電体71>
線状導電体71は、複数であり、複数の導電体71が、埋設管10と地表との間に、埋設管10に沿って縦列に配置される。さらに、線状導電体71同士は接続されていない。例えば、線状導電体71と埋設管10をほぼ平行に配置してもよいし、埋設管10の中心軸と線状導電体71の中心軸が鉛直方向にほぼ重なるように配置していもよい。また例えば、線状導電体71は、断面が円形である。複数の導電体71は、実施例1と同じように埋設管10と地表との間のみに配置してもよい。
【0022】
例えば、線状導電体71同士の間隔(例えば、100×10-3m)が、埋設管10の外径(例えば、411.4×10-3m)の0.25倍以下(例えば、0.24倍)である。また、例えば、各線状導電体71の長さ(例えば、1.0m)は、埋設管10の外径(例えば、411.4×10-3m)の2倍(例えば、2.4倍)以上である。
【0023】
<埋設方法>
図9を用いて変形例2の埋設方法を説明する。溝内に配置された埋設管10の上に予め定めた厚さの土砂を敷く。これにより、埋設管10と線状導電体71との間隔を確保する(間隔確保ステップ)。土砂の上に複数の線状導電体71を、互いに接続されていない状態で埋設管に沿って縦列に配置する(線状導電体配置ステップ)。さらに、線状導電体71の上に土砂を敷くことで溝を埋める(埋め戻しステップ)。
【0024】
なお、「接続されていない」とは、溶接やビス止め等により電気的に接続されていないことを意味する。従来技術において、鞘管や防護鉄板は電気的に接続等されている必要があると考えられていた。しかし、本発明は、シミュレーションにより、線状導電体が電気的に接続されていなくとも所定の間隔以下で一列に配置されていればよいことを明らかにした。これにより絶縁破壊を防ぐために十分な雷防護効果を持ち、かつ、埋設作業が容易である埋設管遮蔽構造及びその方法を発明した。このような構成とすることによって、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、各線状導電体を、扱いやすい長さにすることができ、配置が容易になる。各線状導電体は、溶接等により電気的に接続されている必要はない。配置に際し、各線状導電体同士が接触していても、していなくても、実施例1と同様の効果を得ることができる。作業員は、配置に際し、線状導電体71同士の間隔を気にせずに設置可能であり、迅速、かつ、容易に作業を行うことができる。
なお、変形例1の半割れ管形状の導電体を複数の導電体として用いても同様の効果を得ることができる。
【0025】
[シミュレーション結果]
有限要素法を用い、日本総合研究所製磁界解析ソフトウェアであるJMAGを使用して、雷害対策シミュレーションを行う。なお、有限要素法については、中田高義、高橋則雄著「電気工学の有限要素法」、森北出版、1982年7月15日に詳しく記載されている。
【0026】
<シミューレーション条件>
図1のように埋設管10の埋設深さを一般的な地下1.5mとする。導電性の管12は、材質を鋼とし、内径387.4×10-3m、外径406.4×10-3m、鋼管厚9.5×10-3m、管長20.0m、体積固有抵抗1.5×10-7Ω・m、比透磁率280である。絶縁被覆12は、材質をポリエチレンとし、絶縁被覆厚2.5×10-3m、絶縁被覆長20.0m、体積固有抵抗1.0×1014Ω・m、比誘電率2.3とする。絶縁被覆12を含めた埋設管10の外径は411.4×10-3mである。
図2より絶縁被覆厚2.5×10-3mのとき、ポリエチレンの絶縁破壊する電圧は200kV(=2.0E+5V)であることがわかる。この値とシミュレーションにより算出した値とを比較し、どれだけの遮蔽効果があるかを検討する。
【0027】
雷サージが地面に直雷すると想定する。電流が平行に流れるようなモデルを製作する。雷サージのモデルは、地球という無限遠点に電流を流す必要があるが、解析が複雑なため、図12に示すモデルで、渦電流等の影響がない100kA、1Hzで解析を行う。なお、土壌抵抗の違いによる遮蔽効果を検討するために、土壌抵抗率ρsを30、100、1000Ω・mにした。なお、土壌低効率ρs=30Ω・mは田畑に、ρs=100Ω・mは関東ローム層に、ρs=1000Ω・mは山岳地帯に相当する。
【0028】
<遮蔽なし>
図13は、遮蔽を行わない場合の電流の流れを示す。図13より電流が平行に流れているのが見受けられる。また、埋設管10に非常に大きな電流が流れることがわかった。表1は、遮蔽を行わない場合の埋設管10の位置での電界強度を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
今後、比較のために遮蔽なしの場合の電界強度を100%とする。次に、絶縁被覆の絶縁破壊(土壌抵抗ρs=100Ω・m)について考慮する。電圧は1.5mまでの電界強度を積分したものであるので、
2.64E+7V≫2.0E+5V
となった。この結果から、ポリエチレンの絶縁破壊電圧値を上回る電圧が加わり、何も対策を行わないと絶縁被覆は絶縁破壊を起こし、穴があいてしまうことがわかった。
【0031】
<鞘管20>
表2は、図3のように鞘管20を用いて遮蔽した場合の埋設管10の位置での電界強度を示す。なお、鞘管20の埋設深さを地下1.4mとし、鞘管20は、材質を鋼とし、内径589.0×10-3m、鞘管外径609.6×10-3m、鞘管厚10.3×10-3m、鞘管長20.0m、体積固有抵抗1.5×10-7Ω・m、比透磁率280とする。
【0032】
【表2】

【0033】
鞘管20を用いた場合は遮蔽なしの場合に比べ大幅に電界強度が下がっており、遮蔽できていることが明確である。電流は、遮蔽なしの場合とくらべて、より均等に流れる。鞘管20で埋設管10の全面を囲っていることで、全方向からの電流を遮蔽することができたと推測される。絶縁被覆の絶縁破壊(土壌抵抗ρs=100Ω・m)について考慮すると、電圧では
1.90E+3V≪2.0E+5V
となった。この結果からポリエチレンの絶縁破壊電圧値を下回ることがわかった。このことにより、鞘管20を用いた場合には非常に効果的な防護策になりうると考えられる。しかし、前述の通り、埋設作業が煩雑になり、鞘管の倍以上の作業スペースを必要とするという問題がある。
【0034】
<防護鉄板30>
表3は、図4のように防護鉄板30A及び30Bを用いて遮蔽した場合の埋設管10の位置での電界強度を示す。なお、防護鉄板30Bの埋設深さを地下1.2mとし、防護鉄板は防護鉄板幅1.0m、防護鉄板厚6.0×10-3m、防護鉄板長20.0m、体積固有抵抗1.5×10-7Ω・m、比透磁率280とし、防護鉄板30Aと埋設管10の距離は0.3mとする。
【0035】
【表3】

【0036】
表3から、遮蔽なしと比較して電界強度が下がっているのが見て取れる。上方と左側の防護鉄板によって、電流を遮断しているが、鞘管20のように埋設管10の全面を囲っているわけではないので、防護壁がない右側面、下方面からの電流を遮蔽できなかったと推測される。絶縁被覆の絶縁破壊(土壌抵抗ρs=100Ω・m)について考慮すると、電圧では
4.01E+4V≪2.0E+5V
となった。この結果からポリエチレンの絶縁破壊電圧値を下回ることがわかった。防護鉄板を用いた場合でも、効果的な防護策になりえると言える。但し、前述の通り、埋設作業が煩雑となるという問題がある。
【0037】
<線状導電体51(一本)>
図14は、実施例1の電流の流れを示す。なお、線状導電体51の埋設深さを地下1.2mとし、線状導電体51の半径1.0×10-2m、線状導電体長20.0m、体積固有抵抗1.5×10-7Ω・m、比透磁率280とする。表4は、図8のように線状導電体51を用いた場合の埋設管10の位置での電界強度を示す。
【0038】
【表4】

【0039】
表4から、遮蔽なしと比較して極端に電界強度が下がっているのが見て取れる。また、図14から電流の流れ方が遮蔽なしの場合よりも平行であり、また線状導電体51に集中しているのがわかる。埋設管10上方に導電率の大きい線状導電体51を埋設したことにより、電流のほとんどが線状導電体51に集まり埋設管10を防護したと推測される。絶縁被覆の絶縁破壊(土壌抵抗ρs=100Ω・m)について考慮すると、電圧では
3.31E+3V≪2.0E+5V
となった。この結果からポリエチレンの絶縁破壊電圧値を大きく下回ることがわかった。遮蔽対策として優れた遮蔽効果が期待できる。
【0040】
<線状導電体61(半割れ管)>
表5は、変形例1の図10のように判割れ管形状の線状導電体61を用いて遮蔽した場合の埋設管10の位置での電界強度を示す。なお、線状導電体61の埋設深さを地下1.2mとし、内径、外径、厚さ、長さ、体積固有抵抗、比透磁率は鞘管20と同じとする。
【0041】
【表5】

【0042】
線状導電体61を用いた場合でも遮蔽なしの場合に比べ大幅に電圧が下がっており、遮蔽できていることがわかる。電流が遮蔽なしの場合くらべて、より均等に流れる。線状導電体61で埋設管10の上半分を囲っていることで、電流を遮蔽することができたと推測される。絶縁被覆の絶縁破壊(土壌抵抗ρs=100Ω・m)について考慮すると、電圧では
5.84E+3V≪2.0E+5V
となった。この結果からポリエチレンの絶縁破壊電圧値を下回ることがわかった。このことにより、線状導電体61を用いた場合には非常に効果的な防護策になる。
【0043】
<線状導電体71(複数)>
表6は、変形例2の図11のように複数の線状導電体71を用いて遮蔽した場合の埋設管10の位置での電界強度を示す。なお、線状導電体71の埋設深さ、半径、体積固有抵抗、比透磁率は線状導電体51と同様とする。なお、各線状導電体71の長さは、1.0m、線状導電体同士の間隔は、0.1mとする。
【0044】
【表6】

【0045】
線状導電体51と同様に電流の流れ方が平行で、線状導電体71に集中する。また、1mの線状導電体71を10cmの間隔で設置しても、線状導電体51を1本埋設したものとほぼ同じく遮蔽できると考えられる。絶縁被覆の絶縁破壊(土壌抵抗ρs=100Ω・m)について考慮すると、電圧では
3.56E+3V≪2.0E+5V
となった。この結果からポリエチレンの絶縁破壊電圧値を大きく下回ることがわかった。遮蔽対策として優れた遮蔽効果が期待できる。
【0046】
<まとめ>
電界強度について考慮すると、遮蔽物なし(土壌抵抗ρs=100Ω・m)の状態と比べて鞘管20による遮蔽で0.000019%、防護鉄板による遮蔽で0.0062%、線状導電体51(1本)による遮蔽で0.000055%、半割れ管形状の線状導電体61による遮蔽で0.000021%、線状導電体71(複数)による遮蔽で0.099%というデータを得られた。
表7は、各種対策の電圧評価を示す。
【0047】
【表7】

【0048】
表7から遮蔽効果が得られる防護法の順は、線状導電体51(1本)による遮蔽、線状導電体71(複数)による遮蔽、鞘管20による遮蔽、半割れ管形状の線状導電体61による遮蔽、防護鉄板30による遮蔽ということが明らかになった。
また、施工費用、施工時間等を考慮すると、線状導電体71(複数)による遮蔽が最も効果的な埋設管遮蔽構造であると考えられる。
上記シミュレーション結果から本発明は、従来技術と同等以上の雷防護効果を有し、かつ、埋設作業が容易であることがわかる。
【0049】
なお、実施例1、変形例1及び変形例2は発明の内容を限定するものではない。例えば、線状導電体は、より線でもよく、また断面が円形以外の三角形、四角形等の多角形でもよい。また、円柱の半割れ管ではなく、角柱の半割れ管であってもよい。図15(A)は断面が三角形の場合の断面図、(B)は断面が四角形の場合の断面図、(C)は線状導電体がより線の場合の断面図、(D)は線状導電体が板状の場合の断面図、(E)は線状導電体が四角柱の半割れ管の場合の断面図、(F)は線状導電体が六角柱の半割れ管の場合の断面図である。このような線状導電体を用いた場合にも実施例1等と同様の効果を得ることができる。また、埋設管及び線状導電体の材質、厚さ、半径、内径、外形等、その距離や、地表との距離等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 埋設管
51、61、71 線状導電体
100、200、300 埋設管遮蔽構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽構造であって、
線状導電体を、前記埋設管と地表との間のみに当該埋設管に沿って配置した
ことを特徴とする埋設管遮蔽構造。
【請求項2】
導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽構造であって、
複数の線状導電体を、前記埋設管と地表との間に当該埋設管に沿って縦列に配置し、かつ、前記線状導電体同士は接続されていない
ことを特徴とする埋設管遮蔽構造。
【請求項3】
請求項2記載の埋設管遮蔽構造であって、
前記線状導電体同士の間隔が、前記埋設管の外径の0.25倍以下である
ことを特徴とする埋設管遮蔽構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の埋設管遮蔽構造であって、
前記線状導電体は、断面が円形の埋設地線であり、
前記埋設地線の断面の直径は、前記埋設管の外径の0.025〜0.1倍であり、
前記埋設管の上部と地表との距離は、当該埋設管の外径の3〜4倍であり、
前記埋設管の上部と前記線状導電体の中心との距離は、当該埋設管の外径の0.5〜1.5倍である
ことを特徴とする埋設管遮蔽構造。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の埋設管遮蔽構造であって、
前記線状導電体は、広がった部分が下になった半割れ管であり、
前記半割れ管の内径は、前記埋設管の外径以上であり、
前記埋設管の上部と地表との距離は、当該埋設管の外径の3〜4倍であり、
前記埋設管の上部と前記半割れ管の上部との距離は、当該埋設管の外径の0.5〜1.5倍である
ことを特徴とする埋設管遮蔽構造。
【請求項6】
導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽方法であって、
溝内に配置された前記埋設管の上に予め定めた厚さの土砂を敷く間隔確保ステップと、
前記土砂の上のみに線状導電体を、前記埋設管上方からこれに沿って配置する線状導電体配置ステップと、
前記線状導電体の上に土砂を敷くことで前記溝を埋める埋め戻しステップと、
を有することを特徴とする埋設管遮蔽方法。
【請求項7】
導電性の管に絶縁被覆を施した埋設管を雷害から保護する埋設管遮蔽方法であって、
溝内に配置された前記埋設管の上に予め定めた厚さの土砂を敷く間隔確保ステップと、
前記土砂の上に複数の線状導電体を、互いに接続されていない状態で前記埋設管に沿って縦列に配置する線状導電体配置ステップと、
前記線状導電体の上に土砂を敷くことで前記溝を埋める埋め戻しステップと、
を有することを特徴とする埋設管遮蔽方法。
【請求項8】
請求項7記載の埋設管遮蔽方法であって、
前記線状導電体同士の間隔が、前記埋設管の外径の0.25倍以下である
ことを特徴とする埋設管遮蔽方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の埋設管遮蔽方法であって、
前記線状導電体は、断面が円形の埋設地線であり、
前記埋設地線の断面の直径は、前記埋設管の外径の0.025〜0.1倍であり、
前記埋設管の上部と地表との距離は、当該埋設管の外径の3〜4倍であり、
前記埋設管の上部と前記線状導電体の中心との距離は、当該埋設管の外径の0.5〜1.5倍である
ことを特徴とする埋設管遮蔽方法。
【請求項10】
請求項6から8のいずれかに記載の埋設管遮蔽方法であって、
前記線状導電体は、広がった部分が下になった半割れ管であり、
前記半割れ管の内径は、前記埋設管の外径以上であり、
前記埋設管の上部と地表との距離は、当該埋設管の外径の3〜4倍であり、
前記埋設管の上部と前記半割れ管の上部との距離は、当該埋設管の外径の0.5〜1.5倍である
ことを特徴とする埋設管遮蔽方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−261506(P2010−261506A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112639(P2009−112639)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(505457503)
【Fターム(参考)】