説明

培土器

【課題】効率よく傾動調整ができる培土器を提供する。
【解決手段】前部培土板12に固定軸17aを固設し、その固定軸17aの外周に円筒状の回動部17bを回動自在に取り付ける。回動部17bの外周には支柱ブラケット(支柱取付部)16を固設する。そして、支柱ブラケット16の後端16dには直線状に往復移動するコマ(移動部)19を取り付け、そのコマ19をガイドするガイド部20を前部培土板12に固設する。さらに、コマ19を操作するハンドル(操作部)23を備える。ハンドル23は前部培土板12および後部培土板13a,13bの上方に延出して設ける。そして、支柱ブラケット16の先端16bに取付支柱50を取り付けた状態で、ハンドル23を操作してコマ19をトラクタの進行方向に沿って直線状に往復移動させると回動部17bを支点として上下に傾動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式作業機の後部取付部に着脱自在に取り付けて土寄せ作業を行う培土器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の培土器は、例えば、図6に示すように、後部培土板1、上部培土板3をそれぞれボルト・ナットなどにより連結したものを2つ作成し、くの字型に折り曲げて形成された前部培土板2の両端に連結するとともに、後部培土板1どうしを適当な間隔で離間させるようにして構成する。
そして、くの字型に形成された前部培土板2の2つの面を水平に結ぶように回動部5を取り付け、その回動部5に支柱ブラケット4を溶接にて固設する。この支柱ブラケット4の上部は円筒状に形成されその内部には、不図示のトラクタなどの自走式作業機の後部に設けられた支柱Pを挿入して固定して取り付けるようになっている。
一方、支柱ブラケット4の下部には、張出部材6を備え、その中央付近には一対の長孔状の取付開口部6aを形成する。この取付開口部6aには、不図示の円柱状の移動コマの中心軸上の両端に形成された受け軸7をそれぞれ往復移動自在に取り付ける。
なお、移動コマは、円柱の側面にねじ孔を中心軸と直交する方向に貫通させ、そのねじ孔に噛合するねじ軸8を取り付ける。ねじ軸8の一端には操作部としてのハンドル9を固設する。
【0003】
このように構成された培土器10を使用するには、トラクタの支柱Pに支柱ブラケット4の上部に挿入し、不図示の押しボルトで固定する。そして、トラクタに備える昇降手段によって培土器10を耕作面に合わせて昇降する。
ここで、培土器10がトラクタの進行方向に対して上下に傾いている場合には、作業者がハンドル9を手で回して調整する。詳しくは、ハンドル9を回転させると、ハンドル9に固設されたねじ軸8が回転し、そのねじ軸8に噛合した移動コマが移動する。このとき、移動コマの両端に形成された受け軸7は長孔状の取付開口部6aに沿って移動し、その作用によって、支柱ブラケット4が回動部5を支点として回動する。すなわち、培土器10が回動部5を支点として図中時計回りまたは半時計回りに回動するので、培土器10を耕作面に適切に合わせることができるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし培土器10の傾動を調整するには、作業者が狭い培土器10の下部に設けられた、ハンドル9に手を伸ばして回さなければならず、作業がやりにくく効率が悪いという問題があった。
そこでこの発明の目的は、効率よく傾動調整ができる培土器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、自走式作業機の後部に備える支柱に着脱自在に取り付けて土寄せ作業を行う培土器であって、
土寄せ作業を行う培土板と、
該培土板に固定軸を固設し該固定軸の外周に回動自在に取り付けられた円筒状の回動部と、
該回動部の外周に固設する支柱取付部と、
該支柱取付部の後端に取り付けられ、直線状に往復移動する移動部と、
該移動部をガイドするとともに、前記培土板に固設されたガイド部と、
前記移動部を操作する操作部とを備え、
前記支柱取付部の先端に前記支柱を取り付けた状態で、前記操作部を操作して前記移動部を前記自走式作業機の進行方向に沿って直線状に往復移動させることにより前記回動部を支点として上下に傾動される培土器において、
前記操作部を前記培土板の上方に延出して設けることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の培土器において、前記操作部が前記移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、該持ち手部が前記シャフトに固設された軸部と該軸部の外周に回転自在に設ける筒部とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の培土器において、前記操作部が前記移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、該持ち手部がジョイントを備え、該ジョイントにて折りたたみ可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の培土器において、前記操作部が前記移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、前記シャフトが長手方向に伸縮する伸縮機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、操作部を土寄せ作業を行う培土板の上方に延出して設けるので、作業者が狭い培土器に手を伸ばして操作部を操作して培土器を傾動調整する必要がなく、効率よく傾動調整ができる培土器を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、操作部が移動部に連続して設けられた棒状のシャフトとそのシャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、その持ち手部がシャフトに固設された軸部とその軸部の外周に回転自在に設ける筒部とを備えるので、作業者が筒部を握った状態で操作部を回転させ続けることができ、傾動操作のしやすい培土器を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、操作部が移動部に連続して設けられた棒状のシャフトとそのシャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、その持ち手部がジョイントを備え、そのジョイントにて折りたたみ可能であるので、持ち手部が操作部の上方に延出して設けられている場合に、作業者がその持ち手部に手や体を引掛けて、誤って操作部を操作して培土器を傾動させてしまうことがなく、操作部の操作を保護することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、操作部が移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、シャフトが長手方向に伸縮する伸縮機構を備えるので、操作部を操作しないときはシャフトを縮めて操作部が培土板の上方に延出しないようにするので、作業者が操作部にぶつかったり、誤って操作部を操作して培土器を傾動させてしまうことがなく、操作部の操作を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1はこの発明の培土器の平面図であり、図2は図1のA矢視断面図である。
培土器40は、後部培土板11a、上部培土板13aをボルト・ナットなどにより連結する一方、後部培土板11b、上部培土板13bをボルト・ナットなどにより連結する。そして、くの字型に折り曲げて形成された前部培土板12の端部12a,12bにそれぞれ後部培土板11a,11bをボルト・ナットなどにより取り付ける。前部培土板12の上部にはフード14をボルト・ナットにて取り付けるとともに、下部には補強板15をボルト・ナットにて取り付ける。
また、後部培土板11aと後部培土板11bとを調節部材31および32にて連結する。なお、調節部材31および32にはそれぞれ調節部31A,32Aが設けられている。
さらに、後部培土板11aと上部培土板13aとは調節部33Aを有する調節部材33によって連結され、後部培土板11bと上部培土板13bとは調節部34Aを有する調節部材34によって連結されている。
【0014】
そして、固定軸17aと回動部17bとからなる回動機構17を備える。固定軸17aの両端は前部培土板12の内面12A,12Bに溶接にて取り付ける。回動部17bは円筒状でその内側に棒状の固定軸17aを備え、固定軸17aに対して回動部17bを回動自在に取り付ける。回動部17bの外周には支柱ブラケット(支柱取付部)16の中間16cを溶接にて固設する。支柱ブラケット16の先端16bは円筒状に形成され、内側には後述する、トラクタ(自走式作業機)に設けられた取付支柱(支柱)50を挿入して取り付けるようになっている。また、支柱ブラケット16の中間16cの適当な箇所には取付支柱50に形成された嵌合孔に嵌合して取付支柱50を支柱ブラケット16に固定するための押しボルト16aを設ける。さらに、支柱ブラケット16の後端16dには後述するように一対の張出部材18を支柱ブラケット16の外周に設ける。なお、張出部材18は、支柱ブラケット16の外周に支柱ブラケット16の中心軸線に対して対称に2箇所設け、張出部材18の中央部分には支柱ブラケット16の長手方向に沿って長孔状の取付開口部18aを設ける。
【0015】
一方、支持板25を前部培土板12の内面12A,12Bの裏面側にそれぞれ溶接にて固設するとともに、その支持板25にねじ軸(ガイド部)20をトラクタの進行方向Bに沿って回転自在に取り付ける。ねじ軸20の後端には継手部22を介してハンドル(操作部)23を取り付ける。ハンドル23は鉄製の棒状のシャフト23aと同様の材料を略L字型に加工して形成した持ち手部23bとからなる。シャフト23aの一端には継手部22を取り付けるとともに、他端には持ち手部23bを溶接などによって取り付ける。なお、継手部22には、シャフト23aの回転を異なる方向に変更するフック継ぎ手などの既知の技術を用いて構成する。シャフト23aの長さは、前部培土板12より上方に達するようにすることが望ましい。このようにすると、作業者がハンドル23を操作する際に培土器40の内部を覗き込むようにして手を伸ばして操作することがなく、容易にハンドル23を操作することができる。
また、支持板25の継手部22側のねじ軸20の外周にはコイルバネ21を取り付ける。
そして、ねじ軸20にはコマ(移動部)19を噛合させる。コマ19は円柱の側面にねじ孔を貫通させてそのねじ孔にねじ軸20を噛合させる。また、円柱状のコマ19の中心軸方向の両端には、それぞれ受け軸19aを形成し、その受け軸19aをそれぞれ張出部材18の取付開口部18aに往復移動自在に取り付ける。
【0016】
このように構成された培土器40を用いて土寄せ作業を行う手順について図3,4を用いて説明する。
まず、トラクタの後部に設けられている取付支柱50を培土器40の支柱ブラケット16に挿入する。そして、取付支柱50の外周に形成された嵌合孔を押しボルト16aに合わせて押しボルト16aを嵌合して掛け止めて培土器40を取付支柱50に取り付ける。
次に、トラクタに備える昇降手段によって培土器40を耕作面に合わせて昇降する。さらに、培土器40の底辺部41を耕作面の形状に合わせるように調整する。詳しくは、作業者が培土器40の上部に配設された持ち手部23bを掴んでハンドル23を回転させることによって調整する。
【0017】
すなわち、図3(a)に示すように、ハンドル23を時計回りに回転させると、継手部22を介してねじ軸20が時計回りに回転し、コマ19を矢印方向に進める。すると、図4(a)に示すように、受け軸19aが取付開口部18aを上方に移動し、支柱ブラケット16が回動機構17を支点として時計回りに回動する。実際には、取付支柱50が支柱ブラケット16に取り付けられて支柱ブラケット16は固定されているので、この動作が受け軸19からねじ軸20を固設した取付板25へと伝達する。取付板25は培土板12と溶接されているので、培土器40全体を回動機構17を支点として反時計回りに回動させる。
【0018】
一方、図3(b)に示すように、ハンドル23を反時計回りに回転させると、継手部22を介してねじ軸20が反時計回りに回転し、コマ19を矢印方向に進める。すると、図4(b)に示すように、受け軸19aが取付開口部18aを下方に移動し、支柱ブラケット16が回動機構17を支点として反時計回りに回動する。実際には上述の場合と同様に、支柱ブラケット16は取付支柱50に固定されているので、この動作が受け軸19から取付板25へと伝達し、培土器40全体を回動機構17を支点として時計回りに回動させる。
【0019】
このように、この発明の培土器40は、トラクタ(自走式作業機)の後部に備える取付支柱50に着脱自在に取り付けて土寄せ作業を行うものであり、後部培土板11a,11b、上部培土板13a,13b、前部培土板12を備え、前部培土板12に固定軸17aを固設し、その固定軸17aの外周に円筒状の回動部17bを回動自在に取り付ける。その回動部17bの外周には溶接などによって支柱ブラケット(支柱取付部)16を固設する。そして、その支柱ブラケット16の後端16dには直線状に往復移動するコマ(移動部)19を取り付ける。そのコマ19をガイドするガイド部20を前部培土板12に固設する。さらに、コマ19を操作するハンドル(操作部)23を備える。ハンドル23は前部培土板12および後部培土板13a,13bの上方に延出して設ける。そして、支柱ブラケット16の先端16bに取付支柱50を取り付けた状態で、ハンドル23を操作してコマ19をトラクタの進行方向に沿って直線状に往復移動させると回動部17bを支点として上下に傾動される。
【0020】
なお、ハンドル23は、図5に示すように構成してもよい。すなわち、ハンドル23の持ち手部23bがシャフト23aに固設された軸部23b1とその軸部23b1の外周に回転自在に設ける筒部23Cとを備える。この技術は、円筒の内側に棒を備え、円筒がベアリングなどを介してその棒に回転自在に取り付けられる公知の技術を用いるものとする。
【0021】
また、ハンドル23の持ち手部23bには凹凸状のジョイント23Bを備え、不図示の回動ピンを中心としてそのジョイント23Bにて折りたたみ可能にする。この折りたたみ技術は、円筒を2つに折りたたむ公知の技術を用いるものとする。ハンドル23を使用しないときは、ジョイント23Bにて持ち手23bを折りたたみ、操作部23の突出を減らす。
さらに、継手部22を介してねじ軸(ガイド部)20に連続して設けられた棒状のシャフト23aと持ち手部23bとからなり、シャフト23aの一端23Bを継手部22を介してねじ軸20に連続して設けるとともに、シャフト23aの他端23Tに持ち手部23bを設け、シャフト23aが長手方向に伸縮する伸縮機構(公知の技術)を備えるようにしてもよい。
すなわち、シャフト23aが外径の異なる円筒形のシャフト部材23a1,23a2,23a3(シャフト部材23a1,23a2,23a3の外径をそれぞれΦ1、Φ2、Φ3とすると、Φ1>Φ2>Φ3)と不図示の伸縮機構とから構成され、シャフト23aの周囲の設けられた不図示のロックボタンを操作しながらシャフト23aを縮める方向(矢印X)にハンドル23を押すと、シャフト部材23a1の内側にシャフト部材23a2が挿入され、シャフト部材23a2の内側にシャフト部材23a3が挿入されて、シャフト23aを縮めることができる。このようにすると、適当な長さでハンドル23を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の培土器の平面図である。
【図2】図1のA矢視断面図である。
【図3】(a),(b)は、ハンドルとコマの動きを説明するための図である。
【図4】図3(a),(b)に示すようにハンドルを回転して培土器をトラクタの進行方向に対して上下に傾動させた様子を示す図であり、(a)は図3(a)の状態に、(b)は図3(b)の状態に対応した図である。
【図5】図1に示すハンドルの別の例である。
【図6】従来の培土器の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
11a,11b 後部培土板
12 前部培土板
12A,12B 内面
12a,12b 端部
13a,13b 上部培土板
14 フード
15 補強板
16 支柱ブラケット(支柱取付部)
16a 押しボルト
16b 先端
16c 中間
16d 後端
17 回動機構
17a 固定軸
17b 回動部
18 張出部材
18a 取付開口部
19 コマ(移動部)
19a 受け軸
20 ねじ軸(ガイド部)
21 コイルバネ
22 継手部
23 ハンドル(操作部)
23B 一端
23C 筒部
23J ジョイント
23T 他端
23a シャフト
23a1,23a2,23a3 シャフト部材
23b 持ち手部
23b1 軸部
25 取付板
31,32,33,34 調節部材
31A,32A,33A,34A 調節部
40 培土器
41 底辺部
50 取付支柱(支柱)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式作業機の後部に備える支柱に着脱自在に取り付けて土寄せ作業を行う培土器であって、
土寄せ作業を行う培土板と、
該培土板に固定軸を固設し該固定軸の外周に回動自在に取り付けられた円筒状の回動部と、
該回動部の外周に固設する支柱取付部と、
該支柱取付部の後端に取り付けられ、直線状に往復移動する移動部と、
該移動部をガイドするとともに、前記培土板に固設されたガイド部と、
前記移動部を操作する操作部とを備え、
前記支柱取付部の先端に前記支柱を取り付けた状態で、前記操作部を操作して前記移動部を前記自走式作業機の進行方向に沿って直線状に往復移動させることにより前記回動部を支点として上下に傾動される培土器において、
前記操作部を前記培土板の上方に延出して設けることを特徴とする、培土器。
【請求項2】
前記操作部が前記移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、該持ち手部が前記シャフトに固設された軸部と該軸部の外周に回転自在に設ける筒部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の培土器。
【請求項3】
前記操作部が前記移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、該持ち手部がジョイントを備え、該ジョイントにて折りたたみ可能であることを特徴とする、請求項1に記載の培土器。
【請求項4】
前記操作部が前記移動部に連続して設けられた棒状のシャフトと該シャフトに連続して設けられた持ち手部とからなり、前記シャフトが長手方向に伸縮する伸縮機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の培土器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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