培地用容器およびその製造方法ならびに簡易試験具の製造方法
【課題】 製造効率を改善することにより、安価に培地用紙製容器を製造できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 紙製台紙の材料となるロール状の原反10,11が準備される。原反10,11に巻かれているラミネート紙14,15には熱可塑性樹脂がラミネートされている。トムソン型13により、2枚の台紙の少なくとも一方の材料となるラミネート紙14に開口部が形成される。ロール状の原反12から不織布16が供給され、ラミネート紙に挟み込まれる。2枚のラミネート紙14,15に不織布16を挟んだまま、加熱加圧ローラー17によって熱と圧力を加えることにより熱可塑性樹脂をフローさせ、不織布16の間隙に熱可塑性樹脂を充填する。そして、同時に、熱可塑性樹脂により2枚のラミネート紙14,15を張り合わせる。
【解決手段】 紙製台紙の材料となるロール状の原反10,11が準備される。原反10,11に巻かれているラミネート紙14,15には熱可塑性樹脂がラミネートされている。トムソン型13により、2枚の台紙の少なくとも一方の材料となるラミネート紙14に開口部が形成される。ロール状の原反12から不織布16が供給され、ラミネート紙に挟み込まれる。2枚のラミネート紙14,15に不織布16を挟んだまま、加熱加圧ローラー17によって熱と圧力を加えることにより熱可塑性樹脂をフローさせ、不織布16の間隙に熱可塑性樹脂を充填する。そして、同時に、熱可塑性樹脂により2枚のラミネート紙14,15を張り合わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地用容器およびその製造方法並びに簡易試験具の製造方法に関し、特に不織布などを用いるシート状の培地に適した培地用容器およびその製造方法並びに簡易試験具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物を培養するための培地を収納する一般的な培地用容器としては、シャーレ(ペトリ皿)がよく用いられる。シャーレの材質としては、ガラスやプラスチックが用いられるのが一般的である。
繰り返し使用する場合は、ガラス製シャーレを洗浄して用いることが多い。ガラス製シャーレを用いた場合に再使用のため、ガラス製シャーレの洗浄や滅菌等を行わなければならなくなることから多くの手間を要する。
食品検査などの場合には、多数の微生物培養検査を行う必要があり、ガラス製シャーレをこのような多数の微生物培養検査に用いると非常に手間が掛かる。そのため、多数の培養を行う場合には、廃棄できる滅菌済みのプラスチック製シャーレが利用される(特許文献1参照)。あるいはプラスチックフィルムを用いたフィルム状培地が用いられる(特許文献2参照)。
大量のプラスチック製シャーレやプラスチックフィルムを用いたフィルム状培地を廃棄すると、環境に対する負荷が大きくなる。
【0003】
一方、厚手紙を粘着剤で2枚張り合わせ、一方の厚手紙にディスク状濾紙片を嵌め込む孔を打ち抜いておく構成(特許文献3参照)であれば、大量に廃棄しても、構成材料のほとんどがセルロースであることから石油由来のプラスチックを使わないため環境負荷を小さくすることはできる。
【0004】
【特許文献1】特許第3073982号公報
【特許文献2】特許第3442865号公報
【特許文献3】実公平4−717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように従来の培地用容器の製造方法、特に紙製の培地用容器の製造方法においては、予め所望の形状、例えば円形(ディスク状)に打ち抜いた濾紙や不織布を、厚手紙の円形の孔に嵌め込むという製造工程が不可欠であるため、濾紙や不織布の位置決めや固定が難しく、生産効率が悪くなるという問題点がある。
また、従来の紙製培地用容器の場合、円形の孔の周縁から厚手紙に薬剤が浸透し、また、培地が厚手紙と接触して、雑菌による培地の汚染が起き易いという問題がある。しかも、従来の紙製培地用容器の場合、上部の厚手紙の孔に嵌め込まれた濾紙または不織布に形成された培地を容器の底面側から観察することができないという問題があった。一方、プラスチック製シャーレやプラスチックフィルムを用いたフィルム状培地の場合、上記のような問題は生じないものの、前述した通り、廃棄に伴って環境に及ぼす負荷が大きいという問題がある。
本発明は上記の問題点を解消するためになされたものであり、培地用容器の生産効率、特に培地用紙製容器の生産効率を改善することを目的とする。
また、本発明の目的は、生産効率の改善された製造方法を用いて培地用紙製容器あるいは簡易試験具を提供することである。
さらに、本発明の目的は、廃棄によって環境に及ぼす負荷が小さく、台紙への液剤の浸透が生じ難く、培地を下から観察することが可能な培地用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、少なくとも一つの面に熱可塑性樹脂がラミネートされた1枚の台紙を含む2枚の台紙を準備する工程と、2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、開口部とその周囲の領域に配置されるよう、集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材を2枚の台紙に挟み込む工程と、2枚の台紙にシート部材を挟んだまま、熱と圧力を加えることにより熱可塑性樹脂をフローさせ、シート部材の孔または間隙に熱可塑性樹脂を充填するとともに、熱可塑性樹脂により2枚の台紙を張り合わせるものである。
第2の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、2枚の台紙を準備する工程と、2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、2枚の台紙の張り合わされる面の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、台紙の間に開口部とその周囲の領域に配置されるよう、孔を有する多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材を2枚の台紙に挟み込む工程と、2枚の台紙にシート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより接着剤をフローさせ、シート部材の孔または間隙に接着剤を充填するとともに、接着剤により2枚の台紙を張り合わせるものである。
第3の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、2枚の台紙を準備する工程と、2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材に接着剤または熱可塑性樹脂を塗布する工程と、台紙の間において開口部とその周囲の領域に配置されるよう、シート部材を2枚の台紙に挟み込む工程と、2枚の台紙にシート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより接着剤をフローさせ、または熱と圧力を加えることにより熱可塑性樹脂をフローさせ、シート部材の孔または間隙に前記接着剤または熱可塑性樹脂を充填するとともに、接着剤または熱可塑性樹脂により2枚の台紙を張り合わせるものである。
第4の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第3の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、2枚の台紙及びシート部材がロール状の原反から連続的に供給されるものである。
第5の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第4の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート部材を挟んで2枚の台紙を張り合わせた後に、開口部およびその外周領域に絞り加工により凹部を形成する工程をさらに備えるものである。
第6の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第4の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート部材を挟んで2枚の台紙を張り合わせた後に、開口部の周囲に絞り加工によりリブを形成する工程をさらに備えるものである。
第7の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第6の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、2枚の台紙の縁部を下方に折り曲げて脚部を形成する工程をさらに備えるものである。
第8の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第7の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、2枚の台紙のうち少なくとも一方の台紙としてバイオマスプラスチックフィルムを使用するものである。
第9の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第8の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用するものである。
第10の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第9の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート材における開口部に配置される部分に、開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目を形成する工程をさらに備えるものである。
第11の課題解決手段による簡易試験具の製造方法は、少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の台紙を準備する工程と、集合物間に間隙を持つ集合体または多孔体からなるシート部材を一対の台紙の間に挟み込む工程と、開口部以外の領域においてシート部材の孔または間隙を埋めるとともに、一対の台紙を張り合わせることにより、充填部材によって開口部を皿状の窪みとして形成する工程とを備え、充填部材を充填しない領域を設けることによって、台紙と充填部材に囲まれるとともにシート部材が配置された領域を皿状の窪みに結合して形成するものである。
第12の課題解決手段による培地用紙製容器は、少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の紙製の台紙と、一対の台紙の間に挟まれた多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるセルロース製シート部材と、開口部を培養物収納用の皿状の窪みとするため、開口部以外の領域においてセルロース製シート部材の孔または間隙を埋めるとともに、前記一対の台紙を張り合わせる充填部材とを備えるものである。
第13の課題解決手段による培地用紙製容器は、第12の課題解決手段の構成に加えて、開口部の周囲の紙製の台紙が圧縮されているものである。
第14の課題解決手段による培地用紙製容器は、第12または第13の課題解決手段の構成に加えて、開口部の側壁に皮膜が形成されているものである。
第15の課題解決手段による培地用紙製容器は、開口部を有する紙製上部台紙と、透明プラスチックフィルム製下部台紙とが、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材を2枚の台紙間のうち少なくとも開口部とその周囲の領域に配置されるように挟み込んだ状態で、接着剤または熱可塑性樹脂により貼り合わせられてなり、開口部以外の領域においてシート部材の孔または間隙が接着剤または熱可塑性樹脂で埋められているものである。
第16の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15の課題解決手段の構成に加えて、下部台紙が、開口部に臨む部分に皿状成形部を有しているものである。
第17の課題解決手段による培地用紙製容器は、第12から第16の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート材における開口部に配置される部分に、開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目が形成されているものである。
第18の課題解決手段による培地用紙製容器は、皿状成形部を有する透明プラスチックフィルム製上部台紙と、皿状成形部に対応する開口部を有しかつ接着剤または熱可塑性樹脂により上部台紙に貼り合わせられた紙製下部台紙と、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなりかつ皿状成形部に載置されるシート部材とを備えたものである。
第19の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15から第18の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、透明プラスチックフィルムが透明バイオマスプラスチックフィルムであるものである。
第20の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15から第19の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、熱可塑性樹脂がバイオマスプラスチックであるものである。
第21の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15から第20の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、2枚の台紙の縁部に、該縁部を下方に折り曲げることにより形成された脚部を有しているものである。
【発明の効果】
【0007】
第1の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、フローした熱可塑性樹脂によって開口部の周囲のシート部材の孔または間隙を埋めることにより、開口部内に皿状の窪みが形成されると同時にシート部材も固定されるので、シート部材を開口部内に位置決めして固定する工程が省かれ、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第2の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、接着剤によって開口部の周囲のシート部材の孔または間隙を埋めることにより、開口部内に皿状の窪みが形成されると同時にシート部材も固定されるので、シート部材を固定する工程が省かれ、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第3の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、接着剤または熱可塑性樹脂によって開口部の周囲のシート部材の孔または間隙を埋めることにより、開口部内に皿状の窪みが形成されると同時にシート部材も固定されるので、シート部材を固定する工程が省かれ、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第4の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、材料がロール状の原反で供給されるため連続的に生産ができ、さらに製造効率を向上させることができるという効果がある。
第5の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、絞り加工により凹部が形成される際に、開口部外周領域の台紙が圧縮され、台紙に薬剤が浸透し難くなるという効果がある。
第6の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、リブにより培地用容器の曲げ強度を向上させることができるという効果がある。
第7の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、脚部により、培地用容器の曲げ強度を向上させることができるとともに、培地が形成される皿状の窪みの底を容器が載置される面と接触しないようにすることができるという効果がある。
第8の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、少なくとも一方の台紙としてバイオマスプラスチックフィルムを使用することにより、廃棄された容器を焼却処理しても有害成分の発生を抑えることができ、また廃棄された容器を埋め立て処理すれば地中で分解されるため、環境に対する負荷を小さくすることができるという効果がある。
第9の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、台紙どうしの貼り合わせおよびシート部材の間隙または孔を埋めるための熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用するため、容器の廃棄に伴い焼却処理、埋め立て処理のいずれを採用した場合でも、環境に対する負荷が小さくなるという効果がある。
第10の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、シート部材に切れ目を形成することによって、台紙への液剤の浸透を抑制することができるという効果がある。
第11の課題解決手段の簡易試験具の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、充填部材を充填しない領域を設けることによって、台紙と充填部材に囲まれるとともにシート部材が配置された領域を皿状の窪みに結合して形成するので、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第12の課題解決手段の培地用紙製容器によれば、紙製の台紙もシート部材もセルロース製であり、木材などの天然資源から材料を得て製造でき、かつ焼却できるなど廃棄が容易であることから、環境負荷の小さな培地用容器を安価に提供できるという効果がある。
第13の課題解決手段の培地用紙製容器によれば、開口部外周領域の台紙が圧縮され、台紙に薬剤が浸透し難くなるという効果がある。
第14の課題解決手段の培地用紙製容器によれば、皮膜によって開口部側壁と培地とが隔てられ、開口部側壁に培地が触れ難いため、雑菌による培地の汚染が起き難くなるという効果がある。
第15の課題解決手段の培地用容器によれば、容器の重量の半分以上が紙であるため、廃棄時における環境に対する負荷が比較的小さく、コストを抑えることができるという効果がある。また、下部台紙が透明であるため、シート部材に形成された培地を容器の底面側から観察することができるという効果がある。
第16の課題解決手段の培地用容器によれば、下部台紙における開口部に臨む部分に皿状成形部が設けられているため、開口部において皿状成形部の深さ分だけシート部材のレベルが下がり、液剤が紙製上部台紙に浸透し難いという効果がある。
第17の課題解決手段の培地用容器によれば、シート材に開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目が形成されているため、シート材を伝って液剤が紙製上部台紙に浸透し難いという効果がある。
第18の課題解決手段の培地用容器によれば、容器の重量の半分以上が紙であるため、廃棄時における環境に対する負荷が比較的小さく、コストを抑えることができるという効果がある。また、皿状成形部を有する上部台紙が透明であって、皿状成形部に対応する開口部が下部台紙に形成されているため、シート部材に形成された培地を容器の底面側から観察することができるという効果がある。さらに、シート部材と紙製下部台紙とが全く接していないため、下部台紙に液剤が浸透しないという効果がある。
第19の課題解決手段の培地用容器によれば、一方の台紙が透明バイオマスプラスチックフィルムよりなり、他方の台紙が紙よりなるので、廃棄された容器を焼却処理しても有害成分の発生を抑えることができ、また廃棄された容器を埋め立て処理すれば地中で分解されるため、環境に対する負荷を小さくすることができるという効果がある。
第20の課題解決手段の培地用容器によれば、2枚の台紙を貼り合わせるための熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用するため、容器の廃棄に伴い焼却処理、埋め立て処理のいずれを採用した場合でも、環境に対する負荷が小さくなるという効果がある。
第21の課題解決手段の培地用容器によれば、両台紙の縁部を折り曲げて形成した脚部により、培地用容器の曲げ強度を向上させることができるとともに、培地が形成される皿状成形部の底を容器が載置される面と接触しないようにすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、この発明の第1実施形態による培地用紙製容器およびその製造方法について図1乃至図7を用いて説明する。
図1は第1実施形態による培地用紙製容器の構成を示す平面図であり、図2は図1の培地用紙製容器の組立図である。
図1に示す培地用紙製容器1は、上下に重なった平面矩形状の台紙2a,2bと、2枚の台紙2a,2bの間に挟まれた不織布4とを備える。台紙2aは、略中央部に円形の開口部3を有する。2枚の台紙2a,2bのそれぞれの両面には熱可塑性樹脂がラミネートされている。ラミネートされる熱可塑性樹脂のフィルム厚さは、例えば数μm程度である。そして、台紙2a,2bを貼り付ける際の圧力によって収縮した後の不織布4の厚さは、ラミネート用の熱可塑性樹脂フィルム2枚分の厚さより薄いことが好ましい。
図3は、図1のX−X線断面図である。図4および図5は、図3に示す領域Aおよび領域Bの部分拡大図である。図6は、図1のY−Y線断面図である。
図3に示すように、台紙2a,2b間に不織布4と充填材である熱可塑性樹脂6とからなる複合層5が形成されている。複合層5においては、熱可塑性樹脂6により、不織布4の間隙が埋められる。この複合層5の熱可塑性樹脂5により2枚の紙製の台紙2a,2bが張り合わされている。そして、複合層5が形成されることにより、図6の皿状の窪み7が形成される。この皿状の窪み7から2枚の台紙2a,2bの間まで不織布4が続いているが、複合層5では不織布4の間隙が熱可塑性樹脂6によって埋められているため培地を例えばアルコールで溶かして不織布4に滴下しても2枚の台紙2a,2bで挟まれている不織布4には浸透しない。これにより、皿状の窪み7に限定して培地を形成することができる。そして、不織布4を挟んで2枚の台紙2a,2bが張り合わされるときに、複合層5が同時に形成されることから、製造工程の簡素化が図られて生産効率が向上する。生産の効率化により、安価に培地用紙製容器を提供することができるようになる。
また、図3や図6からも分かるように、開口部3の形成されている領域がその周囲の領域より一段低くなっている。開口部3とその周囲を含む領域8の凹部は、例えば2枚の紙製の台紙2a,2bを張り合わせた後に、領域8に対して絞り加工を施すことにより形成される。この絞り加工により、開口部3の周囲の台紙2aが圧縮される。圧縮された台紙2aにおいては紙の繊維の隙間が小さくなるため、培地を形成する際の液剤や培地に菌を植え付けるための液剤が台紙2aに浸透するのを抑制することができる。
さらに、図3に示す開口部3の側壁2a1にシリコーン樹脂やポリエチレンなどの樹脂からなる皮膜を形成することもできる。それにより、開口部3の側壁への液剤の浸透をさらに抑制することができる。
【0009】
次に、図1に示す培地用紙製容器の製造方法について図7を用いて説明する。
まず、図2に示す台紙2a,2bの材料である原紙を巻いたロール状の原反10,11が準備される。ロール状の原反10,11の両面には例えばポリエチレンがラミネートされている。
また、不織布もロール状の原反12で供給される。これらロール状の原反10〜12は予めスリットされて所望の幅に切り揃えられている。従って、ロール状の原反10〜12からは、所望の幅を持つ帯状のラミネート紙14,15と不織布16が供給される。
ロール10から供給されるラミネートされた原紙は、トムソン型13によって円形に打ち抜かれて図2に示す開口部3が形成される。開口部が形成されたラミネート紙14と不織布16とラミネート紙15が重ね合わされて、加熱加圧ロール17によって加熱しながら圧力をかけてラミネートされる。このラミネートによってラミネート紙14,15の間に不織布16が挟まった状態でラミネート紙14,15が張り合わされる。このとき、不織布16のうち、ラミネート紙14,15に挟まっているものにはポリエチレンが充填されて不織布16の繊維間の隙間が埋まる。
ラミネートされた後、金型18によって開口部とその周辺に絞り加工が施され、開口部の周りに凹部が形成される。
絞り加工が施された後に切断されて、図1に示すような培地用紙製容器1が形成される。
図7に示す培地用紙製容器の製造方法によれば、ロール状の原反10〜12で台紙2a,2bや不織布4の材料を供給するため連続生産ができ、製造コストを削減できる。
【0010】
上記第1実施形態では、紙製の台紙2a,2bに熱可塑性樹脂をラミネートする場合について示したが、ラミネート紙製の台紙2a,2bの代わりに例えばプラスチックフィルムを用いることもできる。セロハンなどのセルロースやでんぷんなどの天然原料からなるフィルムに耐水性の加工を施し、プラスチックフィルムをラミネートしたものを用いることもできる。あるいは、無機質からなるフィルムにプラスチックフィルムをラミネートしたものを用いることができる。また、台紙として、ポリ乳酸系(PLLA)樹脂やポリブチレンサクシネート系(PBS)樹脂といったバイオマスプラスチックのフィルムを使用することもでき、その場合、廃棄された容器を焼却処理する他、埋め立て処理することも可能となる。
また、不織布は、繊維という集合物が間隙を持って一体となした集合体の一例として挙げており、セルロース繊維を漉いて形成した濾紙やコットン繊維からなる不織布などセルロース製のものが好ましいが、例えばポリエステルやレーヨンやポリプロピレン製の不織布を用いることもできる。ただし、その場合には、不織布の材質にあわせて、ラミネートするフィルムの溶融温度やメルトフローレートなどの値を適当に選択する必要がある。また、ガラスクロスのようなものを用いることもできる。
また、第1実施形態の説明では、不織布に代えて、セルロースやプラスチック製のスポンジのような多孔体を用いることもできる。
また、台紙2a,2bの材質としては、第1実施形態で説明したごとく、紙製であることが好ましいが、例えばプラスチックフィルムやセラミックペーパーのようなものであってもよい。
また、熱可塑性樹脂としては耐薬品性の高いポリエチレンやポリプロピレンやポリエステルのようなものが好ましいが、これらのプラスチックに限定されるものではなく、例えばポリ乳酸系(PLLA)樹脂やポリブチレンサクシネート系(PBS)樹脂のような環境負荷の小さいバイオマスプラスチックを使用することも可能である。
【0011】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、不織布4の間隙を埋めると同時に2枚の台紙2a,2bを張り合わせる充填材として熱可塑性樹脂を用いたが、例えば溶剤系やエマルジョン系の接着剤を用いることができる。
この場合には、まず、台紙2a,2bの材料となる原紙に、培地や菌を添加する際の液剤に対して耐性を付与する処理を行う。例えば、液剤に対して耐性を持つ樹脂をラミネートしたり含浸させたりすることで、このような耐性を台紙2a,2bに付与することができる。
次に、台紙2a,2bの材料となる原紙に接着剤を塗布する。例えば図7のようにロールから材料を供給する場合であれば、接着剤を加熱加圧ローラー17の手前で塗布する。この場合には、ラミネート紙14,15に代わる、上述の処理がなされた原紙の接着する側に接着剤が塗布される。もし、接着剤を硬化させるために加熱が必要でないのであれば、加熱加圧ローラー17に代えて加熱機能のないローラーを用いることができる。また、ローラー以外の平板を用いたプレスのようなものであってもよいことはいうまでもない。
接着剤を不織布の間隙に浸透させるとともに、台紙2a,2bを接着させることにより、第1実施形態と同様に生産の効率化を図ることができる。
接着剤としては、例えばアクリルエマルジョン系接着剤を用いることができる。
【0012】
(第3実施形態)
上記第1および第2実施形態においては、台紙2a,2bに熱可塑性樹脂または接着剤をラミネートあるいは塗布する場合について説明したが、これらは、例えば図7に示す不織布16にラミネートあるいは塗布することも可能である。この場合、不織布としての機能を失わないようにするため、円形状の開口部が形成される台紙2aに面する側とは反対の側にラミネート等をする必要がある。もし、台紙2aの側にラミネート等する場合には、開口部が配置される部分にはラミネート等された熱可塑性樹脂や接着剤が配置されないようにする必要があり、不織布16とラミネート紙14との位置合わせが必要になる。
製造を効率化するためにはできるだけ位置合わせをしないようにすることが好ましい。しかし、片面からのフォローによって不織布16の間隙への接着剤の浸透や張り合わせに時間が掛かるのであれば、位置合わせを行う必要があっても不織布14の両面に接着剤を塗布することが好ましい。
【0013】
(第4実施形態)
上記第1乃至第3実施形態においては、図6に示すように培地用紙製容器1の窪み7(開口部3)に対して大き目の凹部8を形成することによって、培地形成用の液剤や菌検査のために滴下する液剤がこぼれないように工夫されている。凹部8の形成の際に行われる絞り加工によって開口部の周囲の台紙2aが圧縮されている。
図8および図9は第4実施形態による培地用紙製容器の構成を示す断面図および部分拡大断面図である。第4実施形態では製造工程において、絞り加工によって開口部の周囲の台紙2aの圧縮を行いながら、リブ19を形成することができる。リブ19が形成されることによって、張り合わされた台紙2a,2bを折り曲げる力に対する培地用紙製容器の曲げ強度が向上する。例えば、リブ19は、金型で開口部の外周近傍をリング状に強く挟みかつ、台紙2bの側から台紙2aの方へ強く押出して絞ることにより成形される。
【0014】
(第5実施形態)
上記第1乃至第4実施形態においては、複数枚の培地用紙製容器1,1Aを重ねておいた場合に通気性がないという欠点がある。この実施形態の培地用紙製容器1Bでは、図10および図11に示すように、リブ20を形成して、重ねておいたときに空気の通り道となる隙間21が形成されるように対策が施されている。通気性を持たせることによって培地の形成や菌の検査時に液剤の乾燥を早めたり、必要な気体の供給が容易になる。
なお、リブ19の形状が直線であるものを示したが、凸部を曲線状にしてもよく、リブに代えて円錐状の突起などであっても良い。
【0015】
(第6実施形態)
第6実施形態は、簡易試験具に関するものである。簡易試験具は培地用紙製容器を含む概念であって、菌体のような生物の培養以外に薬品や血液や排泄物の検査等にも用いられるものを含むものである。
図12、図13および図14に示す簡易試験具30は、培地用紙製容器1,1A,1Bと同様に開口部31,32を備えている。そして、開口部内に不織布4が配置される点は、培地用紙製容器と同様であり、第1実施形態で説明したように台紙2a,2bと不織布4のラミネートの際にフローされる熱可塑性樹脂や接着剤により皿状の窪みが形成される。
簡易試験具30の特徴は、開口部31,32内に配置された不織布4が、充填剤が充填されていない領域33で接続されている点である。図14に示すように、領域33の両側には不織布4と熱可塑性樹脂又は接着剤の複合層5が形成され、上下は台紙2a,2bに挟まれている。そして、領域33の内部には不織布のような多孔体や集合体が配置されている。そのため、毛細管現象によって、開口部31から滴下した液体が開口部32内の不織布に添加されている検査薬に達する。それにより、複数の検査を一度の液剤滴下で行うことができる。また、検査薬が埃などを嫌う場合には、開口部32を透明のフィルムで覆うことによって汚染を抑制できる。
【0016】
第6実施形態による簡易試験具30の製造方法も第1実施形態で説明した方法で行うことができるが、領域33を形成するために領域33に対応する部分のラミネートされる熱可塑性樹脂や接着剤を少なくしたりなくしたりする必要がある。ラミネートフィルムを予め加工したり、接着剤を塗布する際に例えば印刷技術を用いれば容易に接着剤の塗布場所を制限できる。
【0017】
(第7実施形態)
図15は第7実施形態による培地用容器の構成を示す斜視図であり、図16は図15のV−V線断面図であり、図17は図15の培地用容器の組立図である。
図15〜図17に示すように、第7実施形態の培地用容器1Cは、上下に貼り合わせられた平面より見て長方形の2枚の台紙21a,21bと、2枚の台紙21a,21b間に挟まれた不織布4とを備えている。
上部台紙21aは、両面に熱可塑性樹脂がラミネートされた紙よりなり、中央からやや一方の短辺に寄った部分に円形の開口部31を有している。ラミネートされる熱可塑性樹脂は、耐薬品性に優れたポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂を使用する他、ポリ乳酸系樹脂やポリブチレンサクシネート系樹脂のようなバイオマスプラスチックを使用してもよく、通常数μm程度の厚さとなされる。
下部台紙21bは、透明バイオマスプラスチックフィルムよりなる。上記フィルムとしては、厚さ50〜1000μm程度の透明なポリ乳酸系樹脂フィルムまたはポリブチレンサクシネート系樹脂フィルムが用いられる。
不織布4は、台紙21a,21bよりもやや小さい長方形の平面形状を有し、開口部31とその周囲の領域に配置されるように、2枚の台紙21a,21b間に挟み込まれている。
2枚の台紙21a,21bは、これらを重ね合わせて加熱加圧することにより、上部台紙21a下面にラミネートされた熱可塑性樹脂によって貼り合わせられている。また、それと同時に、不織布4を構成する繊維どうしの間隙が、開口部31以外の領域に配置された部分において、熱可塑性樹脂で埋められている。
下部台紙21bは、上部台紙21aの開口部31に臨む部分に、皿状成形部211を有している。従って、不織布4のレベルは開口部31に臨む部分において皿状成形部211の深さ分だけ下がることになり、不織布4から紙製上部台紙21aに液剤が浸透し難い。皿状成形部211は、平面より見て開口部31と同じかそれよりもやや小さい円形状のものであって、その深さは0.5〜10mmとなされる。皿状成形部211は、例えば、2枚の台紙21a,21bを貼り合わせた後、上部台紙21aの開口部31を通じて、下部台紙21bに絞り加工を施すことによって形成することができる。
貼り合わせられた2枚の台紙21a,21bの4辺部には、各辺部が下向きに折り曲げられることによって4つの脚部212a,212bが形成されている。これらの脚部212a,212bにより、容器1Cの曲げ強度が向上している。また、脚部212a,212bの高さを、下部台紙21b下面からの皿状成形部211の突出高さよりも大きく設定することによって、皿状成形部211の下面が容器1Cを載置する面に接触するのが回避される。辺部の折り曲げを容易にするため、台紙21a,21bの四隅が斜めにカットされているとともに、カットされた部分から中心に向かって短い切り込み213a,213bが入れられている。なお、台紙1Cが矩形の場合には、4辺のうち少なくとも対向する2辺を折り曲げて脚部を形成すればよい。
開口部31に臨んだ部分の不織布4には、開口部31の円形の周縁に沿って非連続状の切れ目41が形成されている。これらの切れ目41によって、不織布4から紙製上部台紙21aへの液剤の浸透がさらに抑制される。なお、切れ目41は、不織布4を2枚の台紙21a,21b間に挟み込む前に予め形成しておく方が、加工のし易さの点では有利である。
この実施形態の培地用容器1Cは、例えば、第1実施形態とほぼ同様に、2枚の台紙21a,21bおよび不織布4をロール状の原反で供給しながら、開口部31の打ち抜き成形工程、積層工程、および絞り加工による皿状成形部211の成形工程を経て所定寸法に切断した後、台紙21a,21bの4つの辺部を折り曲げて脚部212a,212bを形成することによって連続的に製造することが可能であり、それによって製造コストを削減することができる。なお、皿状成形部211の形成は、積層工程と同時に行うことも可能であり、また、脚部212a,212bの形成と同時に行うことも可能である。
また、培地用容器1Cにあっては、紙製の台紙21aと、バイオマスプラスチックフィルム製の台紙21bと、不織布4とで構成されているため、廃棄に際しては焼却処理および埋め立て処理のいずれによる場合であっても環境に対する負荷を小さくすることができる。
【0018】
(第8実施形態)
図18は第8実施形態による培地用容器の構成を示す斜視図であり、図19は図18のW−W線断面図であり、図20は図18の培地用容器の組立図である。
図18〜図20に示すように、第8実施形態の培地用容器1Dは、皿状成形部211を有する透明バイオマスプラスチックフィルム製上部台紙21bと、皿状成形部211に対応する開口部31を有しかつ上部台紙21bに貼り合わせられた紙製下部台紙21aと、皿状成形部211に載置される不織布4Aとを備えている。即ち、この実施形態では、第7実施形態の2枚の台紙21a,21bを上下逆に配置して積層し、不織布4Aを台紙21a,21b間に挟み込むのに代えて上部台紙21bの皿状成形部211に載置する構成としたものである。
不織布4Aは、上部台紙21bの皿状成形部211とほぼ等しいかまたはそれよりも小さい円形状のものである。この実施形態では、不織布4Aは、透明バイオマスプラスチックフィルムフィルム製の上部台紙21bに形成された皿状成形部211に載置されるため、紙製の下部台紙21aとは全く接触しない。したがって、この培地用容器1Dの場合、紙製台紙21aへの液剤の浸透および紙製台紙21aとの接触による培地の汚染を確実に防止することができる。
2枚の台紙21b,21aは、これらを重ね合わせて加熱加圧することにより、下部台紙21aの上面にラミネートされた熱可塑性樹脂によって貼り合わせられている。
貼り合わせられた2枚の台紙21b,21aの4辺部に、各辺部が下向きに折り曲げられることによって4つの脚部212b,212aが形成されている点、および台紙21b,21aの四隅が斜めにカットされ、カットされた部分から中心に向かって短い切り込み213b,213aが入れられている点も、第7実施形態と同じである。
この実施形態の培地用容器1Dは、例えば、2枚の台紙21b,21aをロール状の原反で供給しながら、開口部31の打ち抜き成形工程、積層工程、および絞り加工による皿状成形部211の成形工程を経て所定寸法に切断した後、台紙21b,21aの4つの辺部を折り曲げて脚部212b,212aを形成し、所定形状にカットした不織布4Aを皿状成形部211に載置することによって連続的に製造することが可能であり、それによって製造コストを削減することができる。皿状成形部211の形成は、積層工程と同時に行うことも可能であり、また、脚部212b,212aの成形と同時に行うことも可能である。また、不織布4Aは、使用時に皿状成形部211に載置するようにしても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態による培地用紙製容器の一構成例を示す平面図である。
【図2】図1の培地用紙製容器の組立図である。
【図3】図1のX−X線断面図である。
【図4】図3に示す領域Aの一部拡大断面図である。
【図5】図3に示す領域Bの一部拡大断面図である。
【図6】図1のY−Y線断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による培地用紙製容器の製造方法を説明するための図である。
【図8】本発明の第4実施形態による培地用紙製容器の一構成例を示す断面図である。
【図9】図8に示す培地用紙製容器の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態による培地用紙製容器の一構成例を示す平面図である。
【図11】図10の培地用紙製容器を複数重ねた状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第6実施形態による簡易試験具の一構成例を示す平面図である。
【図13】図12の簡易試験具の組立図である。
【図14】図12のZ−Z線断面図である。
【図15】本発明の第7実施形態による培地用容器の一構成例を示す斜視図である。
【図16】図15のV−V線断面図である。
【図17】図15の培地用容器の組立図である。
【図18】本発明の第8実施形態による培地用容器の一構成例を示す斜視図である。
【図19】図18のW−W線断面図である。
【図20】図18の培地用容器の組立図である。
【符号の説明】
【0020】
1、1A,1B,1C,1D 培地用容器
2a,2b,21a,21b 台紙
3,31 開口部
4,16,4A 不織布(シート部材)
41 切れ目
14,15 ラミネート紙。
211 皿状成形部
212a,212b 脚部
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地用容器およびその製造方法並びに簡易試験具の製造方法に関し、特に不織布などを用いるシート状の培地に適した培地用容器およびその製造方法並びに簡易試験具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物を培養するための培地を収納する一般的な培地用容器としては、シャーレ(ペトリ皿)がよく用いられる。シャーレの材質としては、ガラスやプラスチックが用いられるのが一般的である。
繰り返し使用する場合は、ガラス製シャーレを洗浄して用いることが多い。ガラス製シャーレを用いた場合に再使用のため、ガラス製シャーレの洗浄や滅菌等を行わなければならなくなることから多くの手間を要する。
食品検査などの場合には、多数の微生物培養検査を行う必要があり、ガラス製シャーレをこのような多数の微生物培養検査に用いると非常に手間が掛かる。そのため、多数の培養を行う場合には、廃棄できる滅菌済みのプラスチック製シャーレが利用される(特許文献1参照)。あるいはプラスチックフィルムを用いたフィルム状培地が用いられる(特許文献2参照)。
大量のプラスチック製シャーレやプラスチックフィルムを用いたフィルム状培地を廃棄すると、環境に対する負荷が大きくなる。
【0003】
一方、厚手紙を粘着剤で2枚張り合わせ、一方の厚手紙にディスク状濾紙片を嵌め込む孔を打ち抜いておく構成(特許文献3参照)であれば、大量に廃棄しても、構成材料のほとんどがセルロースであることから石油由来のプラスチックを使わないため環境負荷を小さくすることはできる。
【0004】
【特許文献1】特許第3073982号公報
【特許文献2】特許第3442865号公報
【特許文献3】実公平4−717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように従来の培地用容器の製造方法、特に紙製の培地用容器の製造方法においては、予め所望の形状、例えば円形(ディスク状)に打ち抜いた濾紙や不織布を、厚手紙の円形の孔に嵌め込むという製造工程が不可欠であるため、濾紙や不織布の位置決めや固定が難しく、生産効率が悪くなるという問題点がある。
また、従来の紙製培地用容器の場合、円形の孔の周縁から厚手紙に薬剤が浸透し、また、培地が厚手紙と接触して、雑菌による培地の汚染が起き易いという問題がある。しかも、従来の紙製培地用容器の場合、上部の厚手紙の孔に嵌め込まれた濾紙または不織布に形成された培地を容器の底面側から観察することができないという問題があった。一方、プラスチック製シャーレやプラスチックフィルムを用いたフィルム状培地の場合、上記のような問題は生じないものの、前述した通り、廃棄に伴って環境に及ぼす負荷が大きいという問題がある。
本発明は上記の問題点を解消するためになされたものであり、培地用容器の生産効率、特に培地用紙製容器の生産効率を改善することを目的とする。
また、本発明の目的は、生産効率の改善された製造方法を用いて培地用紙製容器あるいは簡易試験具を提供することである。
さらに、本発明の目的は、廃棄によって環境に及ぼす負荷が小さく、台紙への液剤の浸透が生じ難く、培地を下から観察することが可能な培地用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、少なくとも一つの面に熱可塑性樹脂がラミネートされた1枚の台紙を含む2枚の台紙を準備する工程と、2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、開口部とその周囲の領域に配置されるよう、集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材を2枚の台紙に挟み込む工程と、2枚の台紙にシート部材を挟んだまま、熱と圧力を加えることにより熱可塑性樹脂をフローさせ、シート部材の孔または間隙に熱可塑性樹脂を充填するとともに、熱可塑性樹脂により2枚の台紙を張り合わせるものである。
第2の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、2枚の台紙を準備する工程と、2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、2枚の台紙の張り合わされる面の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、台紙の間に開口部とその周囲の領域に配置されるよう、孔を有する多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材を2枚の台紙に挟み込む工程と、2枚の台紙にシート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより接着剤をフローさせ、シート部材の孔または間隙に接着剤を充填するとともに、接着剤により2枚の台紙を張り合わせるものである。
第3の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、2枚の台紙を準備する工程と、2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材に接着剤または熱可塑性樹脂を塗布する工程と、台紙の間において開口部とその周囲の領域に配置されるよう、シート部材を2枚の台紙に挟み込む工程と、2枚の台紙にシート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより接着剤をフローさせ、または熱と圧力を加えることにより熱可塑性樹脂をフローさせ、シート部材の孔または間隙に前記接着剤または熱可塑性樹脂を充填するとともに、接着剤または熱可塑性樹脂により2枚の台紙を張り合わせるものである。
第4の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第3の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、2枚の台紙及びシート部材がロール状の原反から連続的に供給されるものである。
第5の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第4の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート部材を挟んで2枚の台紙を張り合わせた後に、開口部およびその外周領域に絞り加工により凹部を形成する工程をさらに備えるものである。
第6の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第4の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート部材を挟んで2枚の台紙を張り合わせた後に、開口部の周囲に絞り加工によりリブを形成する工程をさらに備えるものである。
第7の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第6の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、2枚の台紙の縁部を下方に折り曲げて脚部を形成する工程をさらに備えるものである。
第8の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第7の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、2枚の台紙のうち少なくとも一方の台紙としてバイオマスプラスチックフィルムを使用するものである。
第9の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第8の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用するものである。
第10の課題解決手段による培地用容器の製造方法は、第1から第9の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート材における開口部に配置される部分に、開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目を形成する工程をさらに備えるものである。
第11の課題解決手段による簡易試験具の製造方法は、少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の台紙を準備する工程と、集合物間に間隙を持つ集合体または多孔体からなるシート部材を一対の台紙の間に挟み込む工程と、開口部以外の領域においてシート部材の孔または間隙を埋めるとともに、一対の台紙を張り合わせることにより、充填部材によって開口部を皿状の窪みとして形成する工程とを備え、充填部材を充填しない領域を設けることによって、台紙と充填部材に囲まれるとともにシート部材が配置された領域を皿状の窪みに結合して形成するものである。
第12の課題解決手段による培地用紙製容器は、少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の紙製の台紙と、一対の台紙の間に挟まれた多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるセルロース製シート部材と、開口部を培養物収納用の皿状の窪みとするため、開口部以外の領域においてセルロース製シート部材の孔または間隙を埋めるとともに、前記一対の台紙を張り合わせる充填部材とを備えるものである。
第13の課題解決手段による培地用紙製容器は、第12の課題解決手段の構成に加えて、開口部の周囲の紙製の台紙が圧縮されているものである。
第14の課題解決手段による培地用紙製容器は、第12または第13の課題解決手段の構成に加えて、開口部の側壁に皮膜が形成されているものである。
第15の課題解決手段による培地用紙製容器は、開口部を有する紙製上部台紙と、透明プラスチックフィルム製下部台紙とが、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材を2枚の台紙間のうち少なくとも開口部とその周囲の領域に配置されるように挟み込んだ状態で、接着剤または熱可塑性樹脂により貼り合わせられてなり、開口部以外の領域においてシート部材の孔または間隙が接着剤または熱可塑性樹脂で埋められているものである。
第16の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15の課題解決手段の構成に加えて、下部台紙が、開口部に臨む部分に皿状成形部を有しているものである。
第17の課題解決手段による培地用紙製容器は、第12から第16の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、シート材における開口部に配置される部分に、開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目が形成されているものである。
第18の課題解決手段による培地用紙製容器は、皿状成形部を有する透明プラスチックフィルム製上部台紙と、皿状成形部に対応する開口部を有しかつ接着剤または熱可塑性樹脂により上部台紙に貼り合わせられた紙製下部台紙と、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなりかつ皿状成形部に載置されるシート部材とを備えたものである。
第19の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15から第18の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、透明プラスチックフィルムが透明バイオマスプラスチックフィルムであるものである。
第20の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15から第19の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、熱可塑性樹脂がバイオマスプラスチックであるものである。
第21の課題解決手段による培地用紙製容器は、第15から第20の課題解決手段のいずれかの構成に加えて、2枚の台紙の縁部に、該縁部を下方に折り曲げることにより形成された脚部を有しているものである。
【発明の効果】
【0007】
第1の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、フローした熱可塑性樹脂によって開口部の周囲のシート部材の孔または間隙を埋めることにより、開口部内に皿状の窪みが形成されると同時にシート部材も固定されるので、シート部材を開口部内に位置決めして固定する工程が省かれ、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第2の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、接着剤によって開口部の周囲のシート部材の孔または間隙を埋めることにより、開口部内に皿状の窪みが形成されると同時にシート部材も固定されるので、シート部材を固定する工程が省かれ、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第3の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、接着剤または熱可塑性樹脂によって開口部の周囲のシート部材の孔または間隙を埋めることにより、開口部内に皿状の窪みが形成されると同時にシート部材も固定されるので、シート部材を固定する工程が省かれ、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第4の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、材料がロール状の原反で供給されるため連続的に生産ができ、さらに製造効率を向上させることができるという効果がある。
第5の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、絞り加工により凹部が形成される際に、開口部外周領域の台紙が圧縮され、台紙に薬剤が浸透し難くなるという効果がある。
第6の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、リブにより培地用容器の曲げ強度を向上させることができるという効果がある。
第7の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、脚部により、培地用容器の曲げ強度を向上させることができるとともに、培地が形成される皿状の窪みの底を容器が載置される面と接触しないようにすることができるという効果がある。
第8の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、少なくとも一方の台紙としてバイオマスプラスチックフィルムを使用することにより、廃棄された容器を焼却処理しても有害成分の発生を抑えることができ、また廃棄された容器を埋め立て処理すれば地中で分解されるため、環境に対する負荷を小さくすることができるという効果がある。
第9の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、台紙どうしの貼り合わせおよびシート部材の間隙または孔を埋めるための熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用するため、容器の廃棄に伴い焼却処理、埋め立て処理のいずれを採用した場合でも、環境に対する負荷が小さくなるという効果がある。
第10の課題解決手段の培地用容器の製造方法によれば、シート部材に切れ目を形成することによって、台紙への液剤の浸透を抑制することができるという効果がある。
第11の課題解決手段の簡易試験具の製造方法によれば、2枚の台紙が張り合わされる際に、充填部材を充填しない領域を設けることによって、台紙と充填部材に囲まれるとともにシート部材が配置された領域を皿状の窪みに結合して形成するので、製造効率を向上させることができるという効果がある。
第12の課題解決手段の培地用紙製容器によれば、紙製の台紙もシート部材もセルロース製であり、木材などの天然資源から材料を得て製造でき、かつ焼却できるなど廃棄が容易であることから、環境負荷の小さな培地用容器を安価に提供できるという効果がある。
第13の課題解決手段の培地用紙製容器によれば、開口部外周領域の台紙が圧縮され、台紙に薬剤が浸透し難くなるという効果がある。
第14の課題解決手段の培地用紙製容器によれば、皮膜によって開口部側壁と培地とが隔てられ、開口部側壁に培地が触れ難いため、雑菌による培地の汚染が起き難くなるという効果がある。
第15の課題解決手段の培地用容器によれば、容器の重量の半分以上が紙であるため、廃棄時における環境に対する負荷が比較的小さく、コストを抑えることができるという効果がある。また、下部台紙が透明であるため、シート部材に形成された培地を容器の底面側から観察することができるという効果がある。
第16の課題解決手段の培地用容器によれば、下部台紙における開口部に臨む部分に皿状成形部が設けられているため、開口部において皿状成形部の深さ分だけシート部材のレベルが下がり、液剤が紙製上部台紙に浸透し難いという効果がある。
第17の課題解決手段の培地用容器によれば、シート材に開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目が形成されているため、シート材を伝って液剤が紙製上部台紙に浸透し難いという効果がある。
第18の課題解決手段の培地用容器によれば、容器の重量の半分以上が紙であるため、廃棄時における環境に対する負荷が比較的小さく、コストを抑えることができるという効果がある。また、皿状成形部を有する上部台紙が透明であって、皿状成形部に対応する開口部が下部台紙に形成されているため、シート部材に形成された培地を容器の底面側から観察することができるという効果がある。さらに、シート部材と紙製下部台紙とが全く接していないため、下部台紙に液剤が浸透しないという効果がある。
第19の課題解決手段の培地用容器によれば、一方の台紙が透明バイオマスプラスチックフィルムよりなり、他方の台紙が紙よりなるので、廃棄された容器を焼却処理しても有害成分の発生を抑えることができ、また廃棄された容器を埋め立て処理すれば地中で分解されるため、環境に対する負荷を小さくすることができるという効果がある。
第20の課題解決手段の培地用容器によれば、2枚の台紙を貼り合わせるための熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用するため、容器の廃棄に伴い焼却処理、埋め立て処理のいずれを採用した場合でも、環境に対する負荷が小さくなるという効果がある。
第21の課題解決手段の培地用容器によれば、両台紙の縁部を折り曲げて形成した脚部により、培地用容器の曲げ強度を向上させることができるとともに、培地が形成される皿状成形部の底を容器が載置される面と接触しないようにすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、この発明の第1実施形態による培地用紙製容器およびその製造方法について図1乃至図7を用いて説明する。
図1は第1実施形態による培地用紙製容器の構成を示す平面図であり、図2は図1の培地用紙製容器の組立図である。
図1に示す培地用紙製容器1は、上下に重なった平面矩形状の台紙2a,2bと、2枚の台紙2a,2bの間に挟まれた不織布4とを備える。台紙2aは、略中央部に円形の開口部3を有する。2枚の台紙2a,2bのそれぞれの両面には熱可塑性樹脂がラミネートされている。ラミネートされる熱可塑性樹脂のフィルム厚さは、例えば数μm程度である。そして、台紙2a,2bを貼り付ける際の圧力によって収縮した後の不織布4の厚さは、ラミネート用の熱可塑性樹脂フィルム2枚分の厚さより薄いことが好ましい。
図3は、図1のX−X線断面図である。図4および図5は、図3に示す領域Aおよび領域Bの部分拡大図である。図6は、図1のY−Y線断面図である。
図3に示すように、台紙2a,2b間に不織布4と充填材である熱可塑性樹脂6とからなる複合層5が形成されている。複合層5においては、熱可塑性樹脂6により、不織布4の間隙が埋められる。この複合層5の熱可塑性樹脂5により2枚の紙製の台紙2a,2bが張り合わされている。そして、複合層5が形成されることにより、図6の皿状の窪み7が形成される。この皿状の窪み7から2枚の台紙2a,2bの間まで不織布4が続いているが、複合層5では不織布4の間隙が熱可塑性樹脂6によって埋められているため培地を例えばアルコールで溶かして不織布4に滴下しても2枚の台紙2a,2bで挟まれている不織布4には浸透しない。これにより、皿状の窪み7に限定して培地を形成することができる。そして、不織布4を挟んで2枚の台紙2a,2bが張り合わされるときに、複合層5が同時に形成されることから、製造工程の簡素化が図られて生産効率が向上する。生産の効率化により、安価に培地用紙製容器を提供することができるようになる。
また、図3や図6からも分かるように、開口部3の形成されている領域がその周囲の領域より一段低くなっている。開口部3とその周囲を含む領域8の凹部は、例えば2枚の紙製の台紙2a,2bを張り合わせた後に、領域8に対して絞り加工を施すことにより形成される。この絞り加工により、開口部3の周囲の台紙2aが圧縮される。圧縮された台紙2aにおいては紙の繊維の隙間が小さくなるため、培地を形成する際の液剤や培地に菌を植え付けるための液剤が台紙2aに浸透するのを抑制することができる。
さらに、図3に示す開口部3の側壁2a1にシリコーン樹脂やポリエチレンなどの樹脂からなる皮膜を形成することもできる。それにより、開口部3の側壁への液剤の浸透をさらに抑制することができる。
【0009】
次に、図1に示す培地用紙製容器の製造方法について図7を用いて説明する。
まず、図2に示す台紙2a,2bの材料である原紙を巻いたロール状の原反10,11が準備される。ロール状の原反10,11の両面には例えばポリエチレンがラミネートされている。
また、不織布もロール状の原反12で供給される。これらロール状の原反10〜12は予めスリットされて所望の幅に切り揃えられている。従って、ロール状の原反10〜12からは、所望の幅を持つ帯状のラミネート紙14,15と不織布16が供給される。
ロール10から供給されるラミネートされた原紙は、トムソン型13によって円形に打ち抜かれて図2に示す開口部3が形成される。開口部が形成されたラミネート紙14と不織布16とラミネート紙15が重ね合わされて、加熱加圧ロール17によって加熱しながら圧力をかけてラミネートされる。このラミネートによってラミネート紙14,15の間に不織布16が挟まった状態でラミネート紙14,15が張り合わされる。このとき、不織布16のうち、ラミネート紙14,15に挟まっているものにはポリエチレンが充填されて不織布16の繊維間の隙間が埋まる。
ラミネートされた後、金型18によって開口部とその周辺に絞り加工が施され、開口部の周りに凹部が形成される。
絞り加工が施された後に切断されて、図1に示すような培地用紙製容器1が形成される。
図7に示す培地用紙製容器の製造方法によれば、ロール状の原反10〜12で台紙2a,2bや不織布4の材料を供給するため連続生産ができ、製造コストを削減できる。
【0010】
上記第1実施形態では、紙製の台紙2a,2bに熱可塑性樹脂をラミネートする場合について示したが、ラミネート紙製の台紙2a,2bの代わりに例えばプラスチックフィルムを用いることもできる。セロハンなどのセルロースやでんぷんなどの天然原料からなるフィルムに耐水性の加工を施し、プラスチックフィルムをラミネートしたものを用いることもできる。あるいは、無機質からなるフィルムにプラスチックフィルムをラミネートしたものを用いることができる。また、台紙として、ポリ乳酸系(PLLA)樹脂やポリブチレンサクシネート系(PBS)樹脂といったバイオマスプラスチックのフィルムを使用することもでき、その場合、廃棄された容器を焼却処理する他、埋め立て処理することも可能となる。
また、不織布は、繊維という集合物が間隙を持って一体となした集合体の一例として挙げており、セルロース繊維を漉いて形成した濾紙やコットン繊維からなる不織布などセルロース製のものが好ましいが、例えばポリエステルやレーヨンやポリプロピレン製の不織布を用いることもできる。ただし、その場合には、不織布の材質にあわせて、ラミネートするフィルムの溶融温度やメルトフローレートなどの値を適当に選択する必要がある。また、ガラスクロスのようなものを用いることもできる。
また、第1実施形態の説明では、不織布に代えて、セルロースやプラスチック製のスポンジのような多孔体を用いることもできる。
また、台紙2a,2bの材質としては、第1実施形態で説明したごとく、紙製であることが好ましいが、例えばプラスチックフィルムやセラミックペーパーのようなものであってもよい。
また、熱可塑性樹脂としては耐薬品性の高いポリエチレンやポリプロピレンやポリエステルのようなものが好ましいが、これらのプラスチックに限定されるものではなく、例えばポリ乳酸系(PLLA)樹脂やポリブチレンサクシネート系(PBS)樹脂のような環境負荷の小さいバイオマスプラスチックを使用することも可能である。
【0011】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、不織布4の間隙を埋めると同時に2枚の台紙2a,2bを張り合わせる充填材として熱可塑性樹脂を用いたが、例えば溶剤系やエマルジョン系の接着剤を用いることができる。
この場合には、まず、台紙2a,2bの材料となる原紙に、培地や菌を添加する際の液剤に対して耐性を付与する処理を行う。例えば、液剤に対して耐性を持つ樹脂をラミネートしたり含浸させたりすることで、このような耐性を台紙2a,2bに付与することができる。
次に、台紙2a,2bの材料となる原紙に接着剤を塗布する。例えば図7のようにロールから材料を供給する場合であれば、接着剤を加熱加圧ローラー17の手前で塗布する。この場合には、ラミネート紙14,15に代わる、上述の処理がなされた原紙の接着する側に接着剤が塗布される。もし、接着剤を硬化させるために加熱が必要でないのであれば、加熱加圧ローラー17に代えて加熱機能のないローラーを用いることができる。また、ローラー以外の平板を用いたプレスのようなものであってもよいことはいうまでもない。
接着剤を不織布の間隙に浸透させるとともに、台紙2a,2bを接着させることにより、第1実施形態と同様に生産の効率化を図ることができる。
接着剤としては、例えばアクリルエマルジョン系接着剤を用いることができる。
【0012】
(第3実施形態)
上記第1および第2実施形態においては、台紙2a,2bに熱可塑性樹脂または接着剤をラミネートあるいは塗布する場合について説明したが、これらは、例えば図7に示す不織布16にラミネートあるいは塗布することも可能である。この場合、不織布としての機能を失わないようにするため、円形状の開口部が形成される台紙2aに面する側とは反対の側にラミネート等をする必要がある。もし、台紙2aの側にラミネート等する場合には、開口部が配置される部分にはラミネート等された熱可塑性樹脂や接着剤が配置されないようにする必要があり、不織布16とラミネート紙14との位置合わせが必要になる。
製造を効率化するためにはできるだけ位置合わせをしないようにすることが好ましい。しかし、片面からのフォローによって不織布16の間隙への接着剤の浸透や張り合わせに時間が掛かるのであれば、位置合わせを行う必要があっても不織布14の両面に接着剤を塗布することが好ましい。
【0013】
(第4実施形態)
上記第1乃至第3実施形態においては、図6に示すように培地用紙製容器1の窪み7(開口部3)に対して大き目の凹部8を形成することによって、培地形成用の液剤や菌検査のために滴下する液剤がこぼれないように工夫されている。凹部8の形成の際に行われる絞り加工によって開口部の周囲の台紙2aが圧縮されている。
図8および図9は第4実施形態による培地用紙製容器の構成を示す断面図および部分拡大断面図である。第4実施形態では製造工程において、絞り加工によって開口部の周囲の台紙2aの圧縮を行いながら、リブ19を形成することができる。リブ19が形成されることによって、張り合わされた台紙2a,2bを折り曲げる力に対する培地用紙製容器の曲げ強度が向上する。例えば、リブ19は、金型で開口部の外周近傍をリング状に強く挟みかつ、台紙2bの側から台紙2aの方へ強く押出して絞ることにより成形される。
【0014】
(第5実施形態)
上記第1乃至第4実施形態においては、複数枚の培地用紙製容器1,1Aを重ねておいた場合に通気性がないという欠点がある。この実施形態の培地用紙製容器1Bでは、図10および図11に示すように、リブ20を形成して、重ねておいたときに空気の通り道となる隙間21が形成されるように対策が施されている。通気性を持たせることによって培地の形成や菌の検査時に液剤の乾燥を早めたり、必要な気体の供給が容易になる。
なお、リブ19の形状が直線であるものを示したが、凸部を曲線状にしてもよく、リブに代えて円錐状の突起などであっても良い。
【0015】
(第6実施形態)
第6実施形態は、簡易試験具に関するものである。簡易試験具は培地用紙製容器を含む概念であって、菌体のような生物の培養以外に薬品や血液や排泄物の検査等にも用いられるものを含むものである。
図12、図13および図14に示す簡易試験具30は、培地用紙製容器1,1A,1Bと同様に開口部31,32を備えている。そして、開口部内に不織布4が配置される点は、培地用紙製容器と同様であり、第1実施形態で説明したように台紙2a,2bと不織布4のラミネートの際にフローされる熱可塑性樹脂や接着剤により皿状の窪みが形成される。
簡易試験具30の特徴は、開口部31,32内に配置された不織布4が、充填剤が充填されていない領域33で接続されている点である。図14に示すように、領域33の両側には不織布4と熱可塑性樹脂又は接着剤の複合層5が形成され、上下は台紙2a,2bに挟まれている。そして、領域33の内部には不織布のような多孔体や集合体が配置されている。そのため、毛細管現象によって、開口部31から滴下した液体が開口部32内の不織布に添加されている検査薬に達する。それにより、複数の検査を一度の液剤滴下で行うことができる。また、検査薬が埃などを嫌う場合には、開口部32を透明のフィルムで覆うことによって汚染を抑制できる。
【0016】
第6実施形態による簡易試験具30の製造方法も第1実施形態で説明した方法で行うことができるが、領域33を形成するために領域33に対応する部分のラミネートされる熱可塑性樹脂や接着剤を少なくしたりなくしたりする必要がある。ラミネートフィルムを予め加工したり、接着剤を塗布する際に例えば印刷技術を用いれば容易に接着剤の塗布場所を制限できる。
【0017】
(第7実施形態)
図15は第7実施形態による培地用容器の構成を示す斜視図であり、図16は図15のV−V線断面図であり、図17は図15の培地用容器の組立図である。
図15〜図17に示すように、第7実施形態の培地用容器1Cは、上下に貼り合わせられた平面より見て長方形の2枚の台紙21a,21bと、2枚の台紙21a,21b間に挟まれた不織布4とを備えている。
上部台紙21aは、両面に熱可塑性樹脂がラミネートされた紙よりなり、中央からやや一方の短辺に寄った部分に円形の開口部31を有している。ラミネートされる熱可塑性樹脂は、耐薬品性に優れたポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂を使用する他、ポリ乳酸系樹脂やポリブチレンサクシネート系樹脂のようなバイオマスプラスチックを使用してもよく、通常数μm程度の厚さとなされる。
下部台紙21bは、透明バイオマスプラスチックフィルムよりなる。上記フィルムとしては、厚さ50〜1000μm程度の透明なポリ乳酸系樹脂フィルムまたはポリブチレンサクシネート系樹脂フィルムが用いられる。
不織布4は、台紙21a,21bよりもやや小さい長方形の平面形状を有し、開口部31とその周囲の領域に配置されるように、2枚の台紙21a,21b間に挟み込まれている。
2枚の台紙21a,21bは、これらを重ね合わせて加熱加圧することにより、上部台紙21a下面にラミネートされた熱可塑性樹脂によって貼り合わせられている。また、それと同時に、不織布4を構成する繊維どうしの間隙が、開口部31以外の領域に配置された部分において、熱可塑性樹脂で埋められている。
下部台紙21bは、上部台紙21aの開口部31に臨む部分に、皿状成形部211を有している。従って、不織布4のレベルは開口部31に臨む部分において皿状成形部211の深さ分だけ下がることになり、不織布4から紙製上部台紙21aに液剤が浸透し難い。皿状成形部211は、平面より見て開口部31と同じかそれよりもやや小さい円形状のものであって、その深さは0.5〜10mmとなされる。皿状成形部211は、例えば、2枚の台紙21a,21bを貼り合わせた後、上部台紙21aの開口部31を通じて、下部台紙21bに絞り加工を施すことによって形成することができる。
貼り合わせられた2枚の台紙21a,21bの4辺部には、各辺部が下向きに折り曲げられることによって4つの脚部212a,212bが形成されている。これらの脚部212a,212bにより、容器1Cの曲げ強度が向上している。また、脚部212a,212bの高さを、下部台紙21b下面からの皿状成形部211の突出高さよりも大きく設定することによって、皿状成形部211の下面が容器1Cを載置する面に接触するのが回避される。辺部の折り曲げを容易にするため、台紙21a,21bの四隅が斜めにカットされているとともに、カットされた部分から中心に向かって短い切り込み213a,213bが入れられている。なお、台紙1Cが矩形の場合には、4辺のうち少なくとも対向する2辺を折り曲げて脚部を形成すればよい。
開口部31に臨んだ部分の不織布4には、開口部31の円形の周縁に沿って非連続状の切れ目41が形成されている。これらの切れ目41によって、不織布4から紙製上部台紙21aへの液剤の浸透がさらに抑制される。なお、切れ目41は、不織布4を2枚の台紙21a,21b間に挟み込む前に予め形成しておく方が、加工のし易さの点では有利である。
この実施形態の培地用容器1Cは、例えば、第1実施形態とほぼ同様に、2枚の台紙21a,21bおよび不織布4をロール状の原反で供給しながら、開口部31の打ち抜き成形工程、積層工程、および絞り加工による皿状成形部211の成形工程を経て所定寸法に切断した後、台紙21a,21bの4つの辺部を折り曲げて脚部212a,212bを形成することによって連続的に製造することが可能であり、それによって製造コストを削減することができる。なお、皿状成形部211の形成は、積層工程と同時に行うことも可能であり、また、脚部212a,212bの形成と同時に行うことも可能である。
また、培地用容器1Cにあっては、紙製の台紙21aと、バイオマスプラスチックフィルム製の台紙21bと、不織布4とで構成されているため、廃棄に際しては焼却処理および埋め立て処理のいずれによる場合であっても環境に対する負荷を小さくすることができる。
【0018】
(第8実施形態)
図18は第8実施形態による培地用容器の構成を示す斜視図であり、図19は図18のW−W線断面図であり、図20は図18の培地用容器の組立図である。
図18〜図20に示すように、第8実施形態の培地用容器1Dは、皿状成形部211を有する透明バイオマスプラスチックフィルム製上部台紙21bと、皿状成形部211に対応する開口部31を有しかつ上部台紙21bに貼り合わせられた紙製下部台紙21aと、皿状成形部211に載置される不織布4Aとを備えている。即ち、この実施形態では、第7実施形態の2枚の台紙21a,21bを上下逆に配置して積層し、不織布4Aを台紙21a,21b間に挟み込むのに代えて上部台紙21bの皿状成形部211に載置する構成としたものである。
不織布4Aは、上部台紙21bの皿状成形部211とほぼ等しいかまたはそれよりも小さい円形状のものである。この実施形態では、不織布4Aは、透明バイオマスプラスチックフィルムフィルム製の上部台紙21bに形成された皿状成形部211に載置されるため、紙製の下部台紙21aとは全く接触しない。したがって、この培地用容器1Dの場合、紙製台紙21aへの液剤の浸透および紙製台紙21aとの接触による培地の汚染を確実に防止することができる。
2枚の台紙21b,21aは、これらを重ね合わせて加熱加圧することにより、下部台紙21aの上面にラミネートされた熱可塑性樹脂によって貼り合わせられている。
貼り合わせられた2枚の台紙21b,21aの4辺部に、各辺部が下向きに折り曲げられることによって4つの脚部212b,212aが形成されている点、および台紙21b,21aの四隅が斜めにカットされ、カットされた部分から中心に向かって短い切り込み213b,213aが入れられている点も、第7実施形態と同じである。
この実施形態の培地用容器1Dは、例えば、2枚の台紙21b,21aをロール状の原反で供給しながら、開口部31の打ち抜き成形工程、積層工程、および絞り加工による皿状成形部211の成形工程を経て所定寸法に切断した後、台紙21b,21aの4つの辺部を折り曲げて脚部212b,212aを形成し、所定形状にカットした不織布4Aを皿状成形部211に載置することによって連続的に製造することが可能であり、それによって製造コストを削減することができる。皿状成形部211の形成は、積層工程と同時に行うことも可能であり、また、脚部212b,212aの成形と同時に行うことも可能である。また、不織布4Aは、使用時に皿状成形部211に載置するようにしても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態による培地用紙製容器の一構成例を示す平面図である。
【図2】図1の培地用紙製容器の組立図である。
【図3】図1のX−X線断面図である。
【図4】図3に示す領域Aの一部拡大断面図である。
【図5】図3に示す領域Bの一部拡大断面図である。
【図6】図1のY−Y線断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による培地用紙製容器の製造方法を説明するための図である。
【図8】本発明の第4実施形態による培地用紙製容器の一構成例を示す断面図である。
【図9】図8に示す培地用紙製容器の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態による培地用紙製容器の一構成例を示す平面図である。
【図11】図10の培地用紙製容器を複数重ねた状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第6実施形態による簡易試験具の一構成例を示す平面図である。
【図13】図12の簡易試験具の組立図である。
【図14】図12のZ−Z線断面図である。
【図15】本発明の第7実施形態による培地用容器の一構成例を示す斜視図である。
【図16】図15のV−V線断面図である。
【図17】図15の培地用容器の組立図である。
【図18】本発明の第8実施形態による培地用容器の一構成例を示す斜視図である。
【図19】図18のW−W線断面図である。
【図20】図18の培地用容器の組立図である。
【符号の説明】
【0020】
1、1A,1B,1C,1D 培地用容器
2a,2b,21a,21b 台紙
3,31 開口部
4,16,4A 不織布(シート部材)
41 切れ目
14,15 ラミネート紙。
211 皿状成形部
212a,212b 脚部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの面に熱可塑性樹脂がラミネートされた1枚の台紙を含む2枚の台紙を準備する工程と、
前記2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、
集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材を、前記開口部とその周囲の領域に配置されるよう、前記2枚の台紙に挟み込む工程と、
前記2枚の台紙に前記シート部材を挟んだまま、熱と圧力を加えることにより前記熱可塑性樹脂をフローさせ、前記シート部材の孔または間隙に前記熱可塑性樹脂を充填するとともに、前記熱可塑性樹脂により前記2枚の台紙を張り合わせることを特徴とする培地用容器の製造方法。
【請求項2】
2枚の台紙を準備する工程と、
前記2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、
前記2枚の台紙の張り合わされる面の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、
集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材を、前記開口部とその周囲の領域に配置されるよう、前記2枚の台紙に挟み込む工程と、
前記2枚の台紙に前記シート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより前記接着剤をフローさせ、前記シート部材の孔または間隙に前記接着剤を充填するとともに、前記接着剤により前記2枚の台紙を張り合わせることを特徴とする培地用容器の製造方法。
【請求項3】
2枚の台紙を準備する工程と、
前記2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、
孔を有する多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材に、接着剤または熱可塑性樹脂を塗布する工程と、
前記シート部材を、前記開口部とその周囲の領域に配置されるよう、前記2枚の台紙に挟み込む工程と、
前記2枚の台紙に前記シート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより前記接着剤をフローさせ、または熱と圧力を加えることにより前記熱可塑性樹脂をフローさせ、前記シート部材の孔または間隙に前記接着剤または前記熱可塑性樹脂を充填するとともに、前記接着剤または前記熱可塑性樹脂により前記2枚の台紙を張り合わせることを特徴とする培地用容器の製造方法。
【請求項4】
前記2枚の台紙及び前記シート部材がロール状の原反から連続的に供給されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項5】
前記シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、前記開口部およびその外周領域に絞り加工により凹部を形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項6】
前記シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、前記開口部の周囲に絞り加工によりリブを形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項7】
前記シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、前記2枚の台紙の縁部を下方に折り曲げて脚部を形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項8】
前記2枚の台紙のうち少なくとも一方の台紙としてバイオマスプラスチックフィルムを使用する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項10】
前記シート材における前記開口部に配置される部分に、前記開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目を形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項11】
少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の台紙を準備する工程と、
集合物間に間隙を持つ集合体または多孔体からなるシート部材を前記一対の台紙の間に挟み込む工程と、
前記開口部以外の領域において前記シート部材の孔または間隙を充填部材によって埋めるとともに、前記一対の台紙を張り合わせることにより、一方の台紙の前記開口部と他の台紙から皿状の窪みを形成する工程とを備え、
前記充填部材を充填しない領域を設けることによって、前記台紙と前記充填部材に囲まれるとともに前記シート部材が配置された領域を前記皿状の窪みに結合して形成することを特徴とする簡易試験具の製造方法。
【請求項12】
少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の紙製の台紙と、
前記一対の台紙の間に挟まれた多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるセルロース製シート部材と、
一方の台紙の前記開口部と他方の台紙から培養物収納用の皿状の窪みを形成するため、前記開口部以外の領域において前記シート部材の孔または間隙を埋めるとともに、前記一対の台紙を張り合わせる充填部材とを備えることを特徴とする培地用紙製容器。
【請求項13】
前記開口部の周囲の台紙が圧縮されていることを特徴とする、請求項12記載の培地用紙製容器。
【請求項14】
前記開口部の側壁に皮膜が形成されていることを特徴とする、請求項12または請求項13記載の培地用紙製容器。
【請求項15】
開口部を有する紙製上部台紙と、透明プラスチックフィルム製下部台紙とが、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材を前記2枚の台紙間のうち少なくとも前記開口部とその周囲の領域に配置されるように挟み込んだ状態で、接着剤または熱可塑性樹脂により貼り合わせられてなり、前記開口部以外の領域において前記シート部材の孔または間隙が前記接着剤または熱可塑性樹脂で埋められていることを特徴とする、培地用容器。
【請求項16】
前記下部台紙が、前記開口部に臨む部分に皿状成形部を有している、請求項15記載の培地用容器。
【請求項17】
前記シート材における前記開口部に配置される部分に、前記開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目が形成されている、請求項12から請求項16記載のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項18】
皿状成形部を有する透明プラスチックフィルム製上部台紙と、前記皿状成形部に対応する開口部を有しかつ接着剤または熱可塑性樹脂により前記上部台紙に貼り合わせられた紙製下部台紙と、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなりかつ前記皿状成形部に載置されるシート部材とを備えたことを特徴とする、培地用容器。
【請求項19】
前記透明プラスチックフィルムが透明バイオマスプラスチックフィルムである、請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂がバイオマスプラスチックである、請求項15から請求項19のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項21】
前記2枚の台紙の縁部に、該縁部を下方に折り曲げることにより形成された脚部を有している、請求項15から請求項20のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項1】
少なくとも一つの面に熱可塑性樹脂がラミネートされた1枚の台紙を含む2枚の台紙を準備する工程と、
前記2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、
集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材を、前記開口部とその周囲の領域に配置されるよう、前記2枚の台紙に挟み込む工程と、
前記2枚の台紙に前記シート部材を挟んだまま、熱と圧力を加えることにより前記熱可塑性樹脂をフローさせ、前記シート部材の孔または間隙に前記熱可塑性樹脂を充填するとともに、前記熱可塑性樹脂により前記2枚の台紙を張り合わせることを特徴とする培地用容器の製造方法。
【請求項2】
2枚の台紙を準備する工程と、
前記2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、
前記2枚の台紙の張り合わされる面の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、
集合物間に間隙を持つ集合体または孔を有する多孔体からなるシート部材を、前記開口部とその周囲の領域に配置されるよう、前記2枚の台紙に挟み込む工程と、
前記2枚の台紙に前記シート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより前記接着剤をフローさせ、前記シート部材の孔または間隙に前記接着剤を充填するとともに、前記接着剤により前記2枚の台紙を張り合わせることを特徴とする培地用容器の製造方法。
【請求項3】
2枚の台紙を準備する工程と、
前記2枚の台紙の少なくとも一方に開口部を形成する工程と、
孔を有する多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材に、接着剤または熱可塑性樹脂を塗布する工程と、
前記シート部材を、前記開口部とその周囲の領域に配置されるよう、前記2枚の台紙に挟み込む工程と、
前記2枚の台紙に前記シート部材を挟んだまま、圧力を加えることにより前記接着剤をフローさせ、または熱と圧力を加えることにより前記熱可塑性樹脂をフローさせ、前記シート部材の孔または間隙に前記接着剤または前記熱可塑性樹脂を充填するとともに、前記接着剤または前記熱可塑性樹脂により前記2枚の台紙を張り合わせることを特徴とする培地用容器の製造方法。
【請求項4】
前記2枚の台紙及び前記シート部材がロール状の原反から連続的に供給されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項5】
前記シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、前記開口部およびその外周領域に絞り加工により凹部を形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項6】
前記シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、前記開口部の周囲に絞り加工によりリブを形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項7】
前記シート部材を挟んで前記2枚の台紙を張り合わせた後に、前記2枚の台紙の縁部を下方に折り曲げて脚部を形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項8】
前記2枚の台紙のうち少なくとも一方の台紙としてバイオマスプラスチックフィルムを使用する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂としてバイオマスプラスチックを使用する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項10】
前記シート材における前記開口部に配置される部分に、前記開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目を形成する工程をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の培地用容器の製造方法。
【請求項11】
少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の台紙を準備する工程と、
集合物間に間隙を持つ集合体または多孔体からなるシート部材を前記一対の台紙の間に挟み込む工程と、
前記開口部以外の領域において前記シート部材の孔または間隙を充填部材によって埋めるとともに、前記一対の台紙を張り合わせることにより、一方の台紙の前記開口部と他の台紙から皿状の窪みを形成する工程とを備え、
前記充填部材を充填しない領域を設けることによって、前記台紙と前記充填部材に囲まれるとともに前記シート部材が配置された領域を前記皿状の窪みに結合して形成することを特徴とする簡易試験具の製造方法。
【請求項12】
少なくとも2枚のうちの一方に開口部を有する一対の紙製の台紙と、
前記一対の台紙の間に挟まれた多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるセルロース製シート部材と、
一方の台紙の前記開口部と他方の台紙から培養物収納用の皿状の窪みを形成するため、前記開口部以外の領域において前記シート部材の孔または間隙を埋めるとともに、前記一対の台紙を張り合わせる充填部材とを備えることを特徴とする培地用紙製容器。
【請求項13】
前記開口部の周囲の台紙が圧縮されていることを特徴とする、請求項12記載の培地用紙製容器。
【請求項14】
前記開口部の側壁に皮膜が形成されていることを特徴とする、請求項12または請求項13記載の培地用紙製容器。
【請求項15】
開口部を有する紙製上部台紙と、透明プラスチックフィルム製下部台紙とが、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなるシート部材を前記2枚の台紙間のうち少なくとも前記開口部とその周囲の領域に配置されるように挟み込んだ状態で、接着剤または熱可塑性樹脂により貼り合わせられてなり、前記開口部以外の領域において前記シート部材の孔または間隙が前記接着剤または熱可塑性樹脂で埋められていることを特徴とする、培地用容器。
【請求項16】
前記下部台紙が、前記開口部に臨む部分に皿状成形部を有している、請求項15記載の培地用容器。
【請求項17】
前記シート材における前記開口部に配置される部分に、前記開口部の周縁に沿って非連続状の切れ目が形成されている、請求項12から請求項16記載のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項18】
皿状成形部を有する透明プラスチックフィルム製上部台紙と、前記皿状成形部に対応する開口部を有しかつ接着剤または熱可塑性樹脂により前記上部台紙に貼り合わせられた紙製下部台紙と、多孔体または集合物間に間隙を持つ集合体からなりかつ前記皿状成形部に載置されるシート部材とを備えたことを特徴とする、培地用容器。
【請求項19】
前記透明プラスチックフィルムが透明バイオマスプラスチックフィルムである、請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂がバイオマスプラスチックである、請求項15から請求項19のいずれか一項に記載の培地用容器。
【請求項21】
前記2枚の台紙の縁部に、該縁部を下方に折り曲げることにより形成された脚部を有している、請求項15から請求項20のいずれか一項に記載の培地用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
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【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−101869(P2006−101869A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188592(P2005−188592)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000145987)株式会社昭和丸筒 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000145987)株式会社昭和丸筒 (28)
【Fターム(参考)】
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