説明

培養槽の運転制御装置

【課題】比較的少数個の内部状態変数を定め、これらの内部状態変数で細胞の内部を記述する数学的モデルを組み立てることにより、観測可能な外部変数とあわせて、培養槽内の状態をより精密に制御することが可能な培養槽の運転制御装置を提供する。
【解決手段】動物細胞又は微生物を培養する培地が封入された培養槽1と、培地中の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を測定する計測装置と、培地中に栄養成と酸素を補給する供給装置と、計測装置の計測値を入力し供給装置を制御する演算処理装置7とを備え、演算処理装置7は、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を入力データとして、記憶装置8に記憶された細胞内反応速度の回路網から導かれる方程式を解いて細胞内反応速度を計算し、計算結果により供給装置を制御して培地中の成分濃度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物細胞あるいは微生物などを培養して有用生産物を収穫する培養槽の運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動物細胞あるいは微生物などの培養は、工業的には、培地中に糖やアミノ酸などの栄養成分および酸素などを供給しつつ培養液の攪拌を行って細胞を増殖し、細胞が生産する有用物質を収穫している。
【0003】
例えば、(特許文献1)には、動物細胞の培養を行うに際し、第一段階として、培養中の細胞密度、及び細胞活性度の測定値から培養層に供給する全ガス量をファジイ推論により決定し、第二段階として、培養液の溶存酸素密度、及びpHの測定値からガス組成をファジイ推論により決定し、第一段階と第二段階で求めた値から各成分のガス量を決定して培養槽に供給する動物細胞の培養制御方法が記載されている。
【0004】
(特許文献2)には、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度,基質濃度及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする微分方程式の数値解を求め、基質物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と基質物質に対する微生物の分解能力の測定値を比較し、測定値に最も近い数値解を水槽内における微生物個数濃度,基質濃度及び溶存酸素濃度の挙動として測定する浄化反応の予知方法が記載されている。
【0005】
(特許文献3)には、酵母の製造において、菌体性能の定量的数値の目標値について予め決定し、それに基づいて酵母の成長速度を律する栄養源の培養への供給及び温度調整等の各種操作を数学的モデルを使用して制御する酵母の培養方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−103663号公報
【特許文献2】特開2002−95496号公報
【特許文献3】特開平9−65873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培養には細胞の増殖と生産物生成に好適な槽内条件を整える必要があり、(特許文献1),(特許文献2),(特許文献3)に開示の技術は、培地中の栄養成分濃度,酸素濃度,攪拌回転数,細胞密度,微生物個数濃度,溶存酸素濃度等の計測できるものを計測して、制御している。しかし、本来の物質生産プロセスは細胞内の代謝反応によっており、細胞内部の内部状態は直接に計測制御できないブラックボックスとなっている。
【0008】
このため、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度などの細胞外部の計測情報だけでは、しばしば、好適な制御を行うことができない状況が生じる。このように、従来の技術では、経験に頼った運転、あるいはこれまでの経験をルールとして計算機に覚えこませ、観測データに応じて事象推定と制御ルールの適用を行うルールベース制御などが用いられているものであった。
【0009】
本発明の第1の目的は、比較的少数個の内部状態変数を定め、これらの内部状態変数で細胞の内部を記述する数学的モデルを組み立てることにより、観測可能な外部変数とあわせて、培養槽内の状態をより精密に制御することが可能な培養槽の運転制御装置を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度などの外部観測変数とこれらの内部状態変数の組からなる数値ベクトルを培養槽内の状態変数として用いて、好適な培養槽の運転条件を見出す計算アルゴリズムを備える培養槽の運転制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の培養槽の運転制御装置は、動物細胞又は微生物を培養する培地が封入された培養槽と、培地中の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を測定する計測装置と、培地中に栄養成分と酸素を補給する供給装置と、計測装置の計測値を入力し前記供給装置を制御する演算処理装置とを備え、演算処理装置は、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を入力データとして、記憶装置に記憶された細胞内反応速度の回路網から導かれる方程式を解いて細胞内反応速度を計算し、該計算結果により前記供給装置を制御して前記培地中の成分濃度を制御するものである。
【0012】
又、動物細胞又は微生物を培養する培地が封入された培養槽と、培地中の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を測定する計測装置と、培地中に栄養成分と酸素を補給する供給装置と、計測装置の計測値を入力し前記供給装置を制御する演算処理装置とを備え、演算処理装置は、生成反応速度などの目標条件を定め、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を入力データとして、記憶装置に記憶された細胞内反応速度の回路網から導かれる方程式を解いて前記目標条件を満足する細胞内反応速度の組を計算し、該計算結果により前記供給装置を制御して前記培地中の成分濃度を制御するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度などの培地中観測変数と細胞内反応速度を培養槽の状態変数として用いて、好適な培養槽の運転制御ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施例を図1から図4により説明する。図1は、本実施例である培養槽の運転制御装置の構成図である。
【0015】
培養槽1内には、上下に翼を有する攪拌翼3が設置され、攪拌翼3は培養槽1の上部に設けられた駆動装置10により回転駆動される。攪拌槽1の上部にはバルブ11aを有する通気管2aが、下部にはバルブ11bを有する通気管2bが設けられている。通気管
2aからは液面に向けて酸素ガスが通気され、通気管2bからは液中に酸素ガスが通気されるようになっている。培養槽1の上部には、排気管13が設けられ、酸素ガスや二酸化炭素ガスが排気される。培養槽1内には、細胞を培養するための培地と動物細胞あるいは微生物が封入されており、培養槽1には、培地に糖やアミノ酸などの栄養分を供給するための栄養成分供給装置5が設けられている。
【0016】
排気管13にはガスクロマトグラフ14が接続されており、排気管13から排気される酸素ガス,二酸化炭素ガス等の分析を行うようになっている。培養槽1には培地の状態を検出するためのサンプラー15が接続され、培地の一部を採取し、サンプラー15に接続された測定装置4により、培地の状態等を検出するようになっている。測定装置4により、グルコース濃度,グルタミン濃度など糖類あるいはアミノ酸類の栄養成分濃度,乳酸濃度,アンモニア濃度,たんぱく質濃度などの生産物濃度、および酸素濃度,細胞数密度などが計測される。
【0017】
ガスクロマトグラフ14及び測定装置4は、演算処理装置7に接続され、演算処理装置7は記憶装置8,出力表示装置9に接続されている。制御装置6には測定装置4が接続され、測定値がフィードバックされるようになっている。演算処理装置7で演算された制御目標値は、制御装置6に入力され、フィードバックされた測定値に基づいてPID制御信号を駆動装置10、バルブ11a,11b、栄養成分供給装置5等に出力する。出力表示装置9では、後述するように、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率と、細胞内反応速度の組からなる数値ベクトルを、例えば図2に示すように画面20で表示し、また、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の予測値と実測値を、例えば図3に示すように画面20で表示する。
【0018】
記憶装置8には、演算処理装置7で演算処理を行うためのプログラムが記憶されており、演算処理装置7では、プログラムに従って、次のような処理を行う。
【0019】
測定装置4によって、グルコース濃度,グルタミン濃度など糖類あるいはアミノ酸類の栄養成分濃度,乳酸濃度,アンモニア濃度,たんぱく質濃度などの生産物濃度、および酸素濃度,細胞数密度などが計測される。第1段階では、2つの時刻間の測定濃度をその時間間隔Δtと細胞数密度Xa で割って、単位時間当たり単位細胞数当りの消費速度、あるいは生成速度を計算する。
【0020】
例えば、グルタミン濃度Glnについては、数(1)で計算される。ここで、添え字
obsは観測値を表す。又、Glnはグルタミン濃度で単位が(mg/L)であり、Xa は細胞数密度で単位は(cells/mL)である。
【0021】
【数1】

【0022】
又、細胞数密度については、数(2)で計算され、μは比増殖速度と呼ばれ、単位は
(1/s)である。
【0023】
【数2】

【0024】
細胞の内部状態を完全に同定することは困難であるが、細胞内部で起こっていることを化学反応のレベルで捉えると、基質成分を取り込み、多数の中間代謝物を経て生産物を外部へ分泌する、物質変換を伴う複数の化学反応の集まりである。細胞内で起こるすべての反応を拾い上げることは困難であるが、比較的少数の主要な反応を集めて細胞内化学反応系の数学モデルを作ることは可能である。細胞内の反応速度を細胞の内部状態を記述する内部状態変数とし、細胞内反応系を記述する数学的モデルを組み立て、これを解くことにより細胞内反応速度を求める。
【0025】
記憶装置8には、細胞内反応速度の回路網が記憶されており、図2に示される回路網の各々の物質名とF1からF30の矢印の繋がりが記憶されている。図2において、
Gultamine,Lactateなどは、細胞外の培地中の栄養成分,生産物濃度であり、Pyruvate,Oxaloacetateなどは細胞内の中間代謝物質濃度である。矢印F1からF30は、それぞれ1つの化学反応を表わしている。例えば、F1はGlucoseからPyruvate に変換される化学反応であることを示し、その反応速度がF1で与えられることを示す。
【0026】
次に、細胞内反応速度の回路網から導かれる方程式について説明する。細胞を記述する内部状態変数としてこれらの反応の反応速度を一列に並べたベクトルを考えることができる。とくに培養環境が劇的に変化しない条件のもとでは、細胞内の代謝反応は概ね定常状態にあるので、おのおのの中間代謝物の濃度は一定であり、おのおのの中間代謝物の生成と消費に係わる反応速度の総和は0となる。この条件と基質の流入速度、および生産物の流出速度を用いると細胞内化学反応系の数学モデルに含まれるすべての反応速度を求めることができる。
【0027】
例えば、図2に示す中間代謝物質Pryuvate濃度は、定常状態の仮定のもとでは一定であるから、Pyruvateに入り、あるいはPryuvateから出ていく反応速度の総和は0であり、図2から分かるように数(3)が成り立つ。
【0028】
【数3】

【0029】
このようにして、図2に示す回路網に含まれる中間代謝物質の個数分M個の方程式が導かれる。又、例えば、図2においてGlutamineからGlutamateへ変換される反応F6の反応速度は、Glutamine濃度の計測値を用いて数(1)で計算されるから、数(4)が成り立つ。
【0030】
【数4】

【0031】
このように、培地中の成分濃度の時間変化率は方程式系の入力データとして扱われ、この関係式は、測定されている培地中の成分濃度の個数分N個与えられる。以上のようにして導かれた方程式は、総数がM+N個の連立1次方程式である。
【0032】
連立1次方程式の総数M+Nが、モデルで考慮している反応の数、例えば図2に示す例では30個と等しければ、連立1次方程式は解くことができ、すべての反応速度が求まるので、図2の対応する矢印上に値を表示する。又、求められた反応速度を図3に示すように時間軸上に表示する。このように、すべての反応速度が求まるので、どのように制御するとどのような結果が得られるかを計算することができ、目標を選定して細胞内反応速度も考慮した制御が行える。
【0033】
連立1次方程式の総数M+Nが、モデルで考慮している反応速度の数を超えていれば、測定された培地中の成分濃度の時間変化率のいくつかは入力データとして用いる必要がなく、検証データとして用いることができる。
【0034】
又、連立1次方程式の総数M+Nが、モデルで考慮している反応速度の数よりも少ないときは、一意に解を求めることができないが、この場合はモデルをさらに簡略化して考慮する反応速度の数を減らすか、あるいは、例えばアンモニアの生成反応速度F30を最小化するといった目的関数を定めて、線形計画問題に変更することにより、目標条件を満足する反応速度の組を求めることができる。
【0035】
次に、上述したようにして求められる細胞内反応速度を培地中の栄養成分濃度,生産物濃度の関数として表現する。例えば、GlucoseからPyruvateへの変換を与える反応速度
F1を培地中のグルコース濃度(Glc),グルタミン濃度(gln),乳酸濃度(Lac),アンモニア濃度(Amm)の関数として、F1=F1(Glc,Gln,Lac,Amm)と表す。この関数が陽に求まれば、制御的に望ましい細胞内反応速度をGlc,Gln,Lac,Ammなどの培地中の成分濃度を調節することにより制御することができる。
【0036】
上述したように、細胞内反応速度は、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を入力データとして回路網の方程式により求めることができるから、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率が、栄養成分濃度,生産物濃度の関数として与えられれば関数F1が陽に求まることになる。そこで、これらの関数を測定装置から得られる実測値を用いて推定する。
【0037】
すなわち、数(5)から数(15)に示すような、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率のモデル推定式を定める。
【0038】
【数5】

【0039】
【数6】

【0040】
【数7】

【0041】
【数8】

【0042】
【数9】

【0043】
【数10】

【0044】
【数11】

【0045】
【数12】

【0046】
【数13】

【0047】
【数14】

【0048】
【数15】

【0049】
ここで、Kd は、死滅速度で単位は(1/s)、Ammは、アンモニア濃度で単位は
(mg/L)、Lacは、乳酸濃度で単位は(mg/L)、Glcは、グルコース濃度で単位は(mg/L)である。又、μmax,κd0,α,Ki,Kji,Yi,mi,qEij,κj(i,j=Glc,Gln,Lac,Amm)はモデル推定式中のモデルパラメータである。栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の実測値と上述したアルゴリズムで計算される時間変化率を用いて、モデルパラメータを最小2乗法を用いてフィッティングして最良推定式を定める。
【0050】
この最良推定式を入力データとして回路網方程式を解くことにより、任意の細胞内反応速度FiをFi=Fi(Glc,Gln,Lac,Amm)のように栄養成分濃度,生産物濃度の関数として求めることができる。
【0051】
求めたモデル推定式により培地中成分濃度の予測ができる。この結果、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率のモデル推定式を図4に示すようなアルゴリズムにより数値積分することにより、時間的未来の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を計算でき、図3に示すように表示することができる。
【0052】
数値積分では、図4に示すように、ステップ31で、積分する関数の初期値を設定し、ステップ32でタイムステップを1増加して更新し、ステップ33で関数の差分を計算する。ステップ34で、タイムステップ更新した回数nがnmaxになったか否かを判断し、nmaxになっていなければ、ステップ32に戻り、ステップ33,34を繰り返す。タイムステップ更新回数がnmaxとなれば、ステップ35で出力する。
【0053】
このような計算結果を用いて、培養槽の予測制御を行う。例えば、ある生産物濃度を最大にするように制御を行う場合には、その生産物濃度を最大化するという目的関数を定めて、目標条件を満足する反応速度の組を求めることができる。ここで、細胞数密度を目的関数とすることもできる。上述した最良推定式を入力データとして回路網方程式を解くことにより制御すべき栄養成分濃度,生産物濃度等の動的な制御目標値を求めることができるので、サンプラー15により計測された培地の状態、測定装置4で測定された生産物濃度,酸素濃度,細胞数密度などの測定値に基づいて、制御装置6により栄養成分供給装置5,バルブ11,駆動装置10を制御して、糖やアミノ酸などの栄養分の供給制御、酸素ガスや二酸化炭素濃度,攪拌制御が行われる。これらの制御結果は、図2に示す画面、図3に示す画面で表示され、視覚的に制御が正常に行われているかを通知する。
【0054】
本実施例によれば、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度などの培地中観測変数と細胞内反応速度を培養槽の状態変数として用いて、好適な培養槽の運転制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例である培養槽の運転制御装置の構成図である。
【図2】本実施例の出力表示装置の表示画面の一例を示す平面図である。
【図3】本実施例の出力表示装置の表示画面の一例を示す平面図である。
【図4】モデル推定式の時間積分アルゴリズムを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1…培養槽、2…通気装置、3…攪拌翼、4…測定装置、5…栄養成分供給装置、6…制御装置、7…演算処理装置、8…記憶装置、9…出力表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物細胞又は微生物を培養する培地が封入された培養槽と、前記培地中の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を測定する計測装置と、前記培地中に栄養成分と酸素を補給する供給装置と、前記計測装置の計測値を入力し前記供給装置を制御する演算処理装置とを備え、該演算処理装置は、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を入力データとして、記憶装置に記憶された細胞内反応速度の回路網から導かれる方程式を解いて細胞内反応速度を計算し、該計算結果により前記供給装置を制御して前記培地中の成分濃度を制御する培養槽の運転制御装置。
【請求項2】
動物細胞又は微生物を培養する培地が封入された培養槽と、前記培地中の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を測定する計測装置と、前記培地中に栄養成分と酸素を補給する供給装置と、前記計測装置の計測値を入力し前記供給装置を制御する演算処理装置とを備え、該演算処理装置は、生成反応速度などの目標条件を定め、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を入力データとして、記憶装置に記憶された細胞内反応速度の回路網から導かれる方程式を解いて前記目標条件を満足する細胞内反応速度の組を計算し、該計算結果により前記供給装置を制御して前記培地中の成分濃度を制御する培養槽の運転制御装置。
【請求項3】
前記細胞内反応速度の回路網は、細胞内の反応速度を細胞の内部状態変数として細胞内反応速度を記述する数学的モデルを組み立てたものである請求項1又は2に記載の培養槽の運転制御装置。
【請求項4】
前記記憶装置には、回路網の各々の物質名と化学反応を表す矢印の繋がりが記憶されている請求項3に記載の培養槽の運転制御装置。
【請求項5】
出力表示装置を具備し、前記栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率と、細胞内反応速度の組からなる数値ベクトルを画面に表示する請求項1又は2に記載の培養槽の運転制御装置。
【請求項6】
前記演算処理装置は、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の関数として記述するモデル推定式を記憶するものであって、栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を、前記モデル推定式中のモデルパラメータを計測値からフィッティングして推定する請求項1又は2に記載の培養槽の運転制御装置。
【請求項7】
栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度の時間変化率を与えるモデル推定式を時間積分して、時間的未来の栄養成分濃度,生産物濃度,細胞数密度を予測し、該予測値と実測値を出力表示装置の画面に表示する請求項6に記載の培養槽の運転制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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