説明

基本ナノシリカコート剤及びコーティング方法

【課題】従来のナノシリカ粉末を使用したコーティング材は有機物質を混在させないと接着性が低かった。有機物質は耐候性が低く経年変化によって使用に耐えられないことがあった。
【解決手段】本発明によって有機物質を混在しなくても接着性の良いナノシリカコート剤を提供することができる。その結果耐候性があり経年変化の少ないナノシリカコート剤を提供することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超耐候性・超耐熱性のコーティング材を提供するものである。このコーティング材はインクや塗料に使用することも可能であり、電子部品から木材の超耐候性・超耐熱性を向上することができる。
【0002】
また、インクジェット等の各種印刷機や各種塗布機にも使用することができるコーティング材を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
塗布により形成でき、焼結せずに低温や室温で色々なメディアにガラス並耐熱性と耐候性や絶縁性を有しかつ柔軟性まで兼ね備えた物質が形成できればその用途は極めて広いことは良く知られていた。
しかし、この性質は酸化物系の無機材料でしか出せない性質であり、柔軟性や常温でこれらの性質を満たす被膜を形成することは困難であった。
【0004】
一般に木材の含浸に使用されている、液体のオルガノポリシロキサンを、触媒を使って加水分解と脱水反応を促進させ、最終的に酸化ケイ素(SiO2)を得る方法が知られている。これは、従来から知られているシリコンレジンの硬化反応を応用したものである。
【0005】
厚膜をシルク印刷で形成したい電子部品や各種の表面保護膜にはシルクスクリーン印刷やインクジェットプリンタを使用するが、これらのインクとして使用することは後述するように粘度調整等の不具合があってできなかった。電子部品に使用できる高耐熱、高耐候、柔軟性のある無機顔料インクの登場が望まれていた。
【0006】
図3のように複数の太陽電池セルをバスバーで直列もしくは並列に半田付けして作成する際、バスバーの接触全面の半田を加熱してセルと接続する。このように半田付けするとバスバーが冷却する際に収縮して、セルが反り上がると同時に、バスバーとセルの境界面に収縮応力が働き、セルが割れてしまうことがあった。
このようなセル割れを防止する為に特許文献1に示す特願2010-20882が提案されている。特許文献1は、本発明に係る同一発明者が提案したものである。
【0007】
特許文献1にかかる発明は太陽電池セル20の表面に微粒子シリカと酸化チタンの混合物21を塗布することによって太陽電池セル20を強化し半田付け時の割れや反りを防止する。その結果重ねる等多少乱暴に取り扱ってもセル割れによる太陽電池セル20の不良率を低下することが出来る。
更に太陽電池モジュールを制作する際の、ラミネート加工時のセル割れを防止することができる。そして生産方式を変更し歩留まりを向上させることが可能であることを提案している。


【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2010-20882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来より、耐熱性や耐候正に優れた有機樹脂をバインダとして使用し、耐熱性や耐候性に優れたインクやコート剤を得る提案は数多くあった。しかし、有機樹脂を使用するものは耐熱性も200〜450℃程度に制限され、かつ耐候性も長くても5〜10年程度に制限される問題があった。
【0010】
また、シロキサン等に有機酸塩を硬化剤として加え硬化させる方法が従来から知られている。この方法は、塗料やインクに必要な粘度の調整が難しいことに加え、シロキサンが金属と接すると反応が開始するために、金属や金属を含む顔料を使用するインクや塗料には使用できないことや、カートリッジで保管してプリンタのインク供給系に長期間滞留するインクジェットインクには使用できないとの問題があった。
【0011】
この発明は、後述するナノシリカ粉末10の分散液(基本ナノシリカコート剤8)を用い、インクジェットプリンタやスクリーン印刷やバーコーター、スプレーコートなどの各種コーティング手段や印刷手段により塗布し、乾燥後に超耐熱性と超耐候性およびガスバリア性等のガラス膜に相当する性能を有するガラス化したフィルム状の形成物を得ることができる。
更にコーティング材として屋外で使用するためには、耐候性を強くする為に紫外線などで劣化しないことが望ましい。そのためには有機物質を用いず、無機物質のみの安定したコーティング材が望ましい。

【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで平均粒径が50nm以下であるナノシリカ粉末と溶媒を混練して作成したペースト状の混合物を適時希釈して使用する基本ナノシリカコート剤であって、前記基本ナノシリカコート剤中における前記ナノシリカ粉末が前記溶媒に対する重量比は50パーセントから83パーセントの範囲内であることを特徴とする基本ナノシリカコート剤を提供するものである。
そして平均粒径が50nm以下であるナノシリカ粉末と溶媒を混練して作成したペースト状の基本ナノシリカコート剤を適時希釈して塗布した後150℃以上の温度で30分以上乾燥するようにしたことを特徴とする基本ナノシリカコート剤コーティング方法を提供するものである。

【発明の効果】
【0013】
この基本ナノコート剤により作られたガラス状被膜はナノおよびサブナノサイズのナノシリカ粉末10が緻密に積層され、多孔質の粒子の集合体ではなくなり、貫通する空孔が無くなり、緻密な膜やバルクとしての性質を示すようになることによって、次のような特性を持つことが分かった。
(1) 空気や酸素や各種ガスに対して、ガスバリア効果を持つので、塗布した部分に強い耐候性を持たせることができる。
(2) 基本ナノコート剤は高い絶縁抵抗値をもっている。
(3)超耐熱温度(1000℃以上)を持っており燃え難い。
(4)超耐光性(UV劣化無し)があり屋外に長期間放置しても劣化しない。
(5)熱伝導率が高く、輻射放熱性が優れており冷却効果が高い。
(6)柔軟性があり、割れ難いので母材の折損を防止することができる。
(7)各種プラスチックや金属、ガラスへの強い接着性があり、容易に塗布することができる。
(8)強い耐溶剤性がある。
(9)強い耐水性がある。
(10) 強い耐酸性、耐アルカリ性がある。
(11)フィルム中の残留硬化剤が殆んどなく、無機物質の純度が高く劣化しない安定したコーティング材である。
(12)分散の安定性が長期にわたって優れている。
対象物の表面に塗布することにより、上記のような特性を付与することが可能となる。
【0014】
また、基本ナノシリカコート剤8を他の粒子と混ぜて乾燥させると、他の粒子のバインダとして働かせることができる。
また、基本ナノシリカコート剤8を多孔質物体や構造物の隙間に充填し乾燥するとシリカ粒子が接着剤・充填剤として働かせることができる。
更にシルスクリーン印刷やインクジェットプリンタでコーティングすることができる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基本ナノシリカコート剤の第一の実施例のコーティング方法を図示したものである。
【図2】基本ナノシリカコート剤の第二の実施例のコーティング方法を図示したものである。
【図3】特許文献1に記載された従来例を図示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は水に溶かしたペースト状の土を家屋の壁に塗りつけることによって土壁にするのと同様であるが、はるかに強い接着力(剥がれ落ちにくさ)を発揮すると共に、耐熱性と耐候性が強いので様々なものに塗布して利用することができる。
この発明では、バインダには耐熱性と耐候性の妨げになる有機樹脂を使用せず、バインダにはナノシリカ粉末10を中心とするナノシリカ無機粒子を使用する。
ナノシリカ無機粒子をバインダ樹脂無しに水等の溶媒に分散させ、塗布後に乾燥させただけでは緻密な皮膜を得ることはできないと従来は考えられていたが、本発明によれば、緻密で剥がれ落ちにくく耐熱性と耐候性が強い皮膜を提供することができる。
【0017】
この発明では、一定条件の粒度分布を有するナノシリカ粉末10と水等の溶媒11のみで緻密で強固なガラス状皮膜が得られる現象を見出した。また必要に応じて有機酸等の硬化開始剤を混入して硬化時間の短縮や溶着強度の向上を可能にすることができる。
この現象を示す液基本ナノシリカコート剤8を使って、液自体あるいは各種蛍光体や顔料や強誘電体等の粒子のバインダとして用い、塗布や印刷やプリントすることにより各種の機能性膜の製造を可能にするための、超耐熱性と超耐候性を有するコート剤やインク等の応用ナノコート剤を得るものである。

【実施例】
【0018】
基本ナノシリカコート剤8を製造・使用する例として、重量比75%のナノシリカ粉末10(平均粒径25nm以下)に、重量比25%の水等の溶媒11を加えて混練し、ペースト状の基本ナノシリカコート剤8を制作するのが最適である。
条件が悪くても混合するナノシリカ粉末10は少なくとも25%以上が50nm以下の粒径であることが望ましい。
また、使用するナノシリカ平均粒径は小さい程良く、10、および1nm以下の平均粒径のものを使用した時に一層緻密で柔軟なシリカコート層が得られた。
【0019】
従来は大量の溶液中に微量のナノシリカ粉末10を混入して溶け込ました後、溶媒11を蒸発させることによってペースト状態にしていた。しかし図1の(1)図示されるように容積比で比較すると同じ重量であればナノシリカ粉末10に対して溶媒11(水の場合)が1の体積である。図1の(2)のような重量比で混練されたとしても容易にペースト状にはならない。例えれば食品の蕎麦などのように大量の蕎麦粉と少量の水で麺を作る工程と同様の作業で基本ナノシリカコート剤8が製造される。
ここでナノシリカ粉末10の平均粒径を指定粒径以下に整粒する工程を製粉工程という。
【0020】
本発明にかかる基本ナノシリカコート剤8は分散機、撹拌機、脱泡撹拌機やミキサーで撹拌しながら時間をかけて混練しペースト状に仕上げるものである。
ここでナノシリカ粉末10と溶媒11を攪拌する工程を混練工程という。そして混練工程を経てペースト状の基本ナノシリカコート剤8を生成する工程を生成工程という。
溶媒11は水もしくは水と相溶性のあるもの又はエチルグリコール系溶剤もしくは230℃以下で乾燥する有機溶剤を用いることができる。
【0021】
次に、基本ナノシリカコート剤8は使用時に適切な粘度に希釈して使用する。希釈した基本ナノシリカコート剤8を塗布する前に脱泡作業しておいても良いし、塗布した後に40℃で10分程度乾燥させて塗布部を脱泡して平坦化しても良い。
ここでペースト状の基本ナノシリカコート剤を希釈する工程を希釈工程という。更に希釈した基本ナノシリカコート剤を脱泡する工程を脱泡工程という。そして希釈した基本ナノシリカコート剤を塗布する工程を塗布工程という。また、塗布工程後の基本ナノシリカコート剤を40℃の温度で乾燥する工程を予備乾燥工程という。
脱泡を完了した塗布部は150℃で30分程度本乾燥して基本ナノシリカコート剤8の塗布を完了する。
ここで塗布した基本ナノシリカコート剤を100℃以上の温度で乾燥する工程を本乾燥工程という。
このようにしてナノシリカ粉末10を皮膜化することができることを見出したものである。また、高粘度に希釈することによりスクリーン印刷等に使用することができる。
【0022】
また、基本ナノシリカコート剤8に硬化剤を含有して硬化を促進させることができる。しかし従来は溶液中にナノシリカ粉末10を溶かし、その中に樹脂を混入させることにより塗布後に皮膜化するように構成していたが、耐候性の低い樹脂が吸湿や紫外線によって劣化し使用不能になっていた。
本発明に係る基本ナノシリカコート剤8を希釈して製造した皮膜には従来のナノシリカ粉末10を溶かした溶液にはない有用性があることが見出せた。
なお、基本ナノシリカコート剤8の混練時又は希釈時又は塗布時に硬化剤を付加することによって速乾性を向上することができる。
【0023】
本発明の実施例の最適な組み合わせの実施例は、平均粒径25nm以下のナノシリカ粉末10を重量比75%の割合で溶媒11と混練し、ペースト状にした後、希釈して脱泡作業する。
脱泡作業は対象物に塗布した後40℃で10分乾燥して脱泡するか、希釈した後に真空状態内に放置して脱泡しても良い。
その後、150℃の温度で30分本乾燥して完成する。
あるいは、室温から50℃以下の温度で脱泡とゆっくりと予備乾燥し、その後、100℃以上の温度で本硬化して完成する。
このような方法で最良の基本ナノシリカコート剤8が提供される。
【0024】
比較例1として上記最適な組み合わせの実施例と比べると、平均粒径が50nm以上のナノシリカ粉末10を重量比75パーセントの割合で溶媒11と混練しペースト状態にした後希釈して脱泡作業し塗布しても、シリカ材が析出して白い粒が塗布面に発生し塗布表面が平坦化されないと共に最適な組み合わせの実施例のときよりも剥がれやすいという実験結果が出た。
【0025】
更に比較例2として上記最適な組み合わせの実施例と比べると、平均粒径が50nm以下のナノシリカ粉末10を重量比83%以上の割合で溶媒11と混練しペースト状態にした後希釈して脱泡作業し塗布しても、前記比較例1の場合と同様に、シリカ材が析出して白い粒が塗布面に発生し塗布表面が平坦化されないと共に最適な組み合わせの実施例のときよりも剥がれやすいという実験結果が出た。

【0026】
基本ナノシリカコート剤8は以下の基本物質からなる。
(1)平均粒径10nm以下のナノシリカ粉末10を重量比20%以上含むナノシリカ粒子を使用する。
(2)水または揮発性のエチレングリコール系エーテルやプロピレングリコール系エーテルなどの有機溶媒または水と相溶性のある230℃以下で揮発乾燥が可能な有機溶剤の単体または混合液を使用する。
(3)最初または使用時に添加する酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸からなる硬化剤を使用する。
【0027】
上記(1) (2) (3)の成分からなる基本ナノコート剤を希釈して液状で塗布後、室温または150℃程度以下の比較的低温で乾燥させると、加水分解を加速し、かつ自己組織化の作用により細密充填に近い状態になり緻密なガラス状被膜が得られる。
上記作用は、シリカの平均粒径が100nmより大きいと発生せず、平均粒径が50nm以下好ましくは10nm以下であることが条件となっていることが実験により判明した。
【0028】
この基本ナノコート剤により作られたガラス状被膜はナノおよびサブナノサイズのナノシリカ粉末10が緻密に積層され、多孔質の粒子の集合体ではなくなり、貫通する空孔が無くなり、緻密な膜やバルクとしての性質を示すようになることによって、次のような特性を持つことが分かった。
(1) 空気や酸素や各種ガスに対して、ガスバリア効果を持つので、塗布した部分に強い耐候性を持たせることができる。
(2) 基本ナノコート剤は高い絶縁抵抗値をもっている。
(3)超耐熱温度(1000℃以上)を持っており燃え難い。
(4)超耐光性(UV劣化無し)があり屋外に長期間放置しても劣化しない。
(5)熱伝導率が高く、輻射放熱性が優れており冷却効果が高い。
(6)柔軟性があり、割れ難いので母材の折損を防止することができる。
(7)各種プラスチックや金属、ガラスへの強い接着性があり、容易に塗布することができる。
(8)強い耐溶剤性がある。
(9)強い耐水性がある。
(10) 強い耐酸性、耐アルカリ性がある。
(11)フィルム中の残留硬化剤が殆んどなく、無機物質の純度が高く劣化しない安定したコーティング材である。
(12)分散の安定性が長期にわたって優れている。
対象物の表面に塗布することにより上記のような特性を付加し、活用することができる。
【0029】
また、基本ナノシリカコート剤8を他の粒子と混ぜて乾燥させると、他の粒子のバインダとして機能させる事ができる。
また、基本ナノシリカコート剤8を多孔質物体や構造物の隙間に充填し乾燥するとシリカ粒子が接着剤・充填剤として働かせる事ができる。
【0030】
次に、この基本ナノシリカコート剤8を使い以下のような物質の組合せで、種々の高耐候性。高耐熱性の塗料や応用シリカナノコート剤を作製することができる。
(1)蛍光体、無機あるいは有機顔料、強誘電体、金属、金属酸化物、磁性体、各種のフィラー、カーボンナノチューブ、石、繊維等の粉体や繊維(以下、総称して応用粉体)または液体の応用粉体の分散液体としての応用シリカナノコート剤
(2)コートするメディアにより必要なら、少量の界面活性剤やプライマーや酢酸、ギ酸プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸からなる硬化剤や表面活性剤としての応用シリカナノコート剤。
上記の成分からなる応用シリカナノコート剤を各種プラスチック材料、金属、半導体、木材、ガラス、プリント基板、陶器等に塗布後、室温または40℃程度以下の比較的低温でゆっくり予備乾燥させると、ナノ粒子の溶液状態での自己組織化作用等により、均一で緻密な各種の応用粉体を含有する強いガラス状フィルムが得られる。その後、100℃以上好ましくは150℃以上の温度で30分間程度本乾燥して完成する。
あるいは、室温から40℃以下の温度で脱泡とゆっくりと予備乾燥し、その後、100℃以上の温度で本硬化して完成する。

【0031】
このようにして基本ナノシリカコート剤8を添加して作製された応用シリカナノコート剤は、応用粉体を含む強いガラス状皮膜になり、耐熱性塗料あるいは高耐候性塗料、印刷インク、表面保護層、ガスバリア層、放熱塗料、絶縁材料、高誘電率材料、電線被覆材など、極めて広範囲な応用展開が期待される。
また、多孔質物体や構造物の隙間に浸透あるいは充填し乾燥すると従来の有機樹脂を使用するものに比べて、耐熱性に優れた接着剤・充填剤として使用できる。
【0032】
有効に機能する基本ナノシリカコート剤8は以下のように形成される。
(1)平均粒径10nm以下のナノシリカ粉末10が重量比50〜83%の範囲内になるように溶媒11と混練する。必要とする粘度が高い時はナノシリカ粉末10を多く、低い時はナノシリカ粉末10の添加量を少なくする。
(2)水または揮発性のエチレングリコール系エーテルやプロピレングリコール系エーテルなどの有機溶剤を重量比13〜90%の範囲内になるようにナノシリカ粉末10と混練する。
(3)最初または使用時に添加する有機酸、例えば酢酸が上記ナノシリカ粉末10と溶媒11に対する重量比1%〜15%以下になるように混練する。
以上の(1)と(2)あるいは(1)と(2)と(3)の材料を分散機、撹拌機、脱泡撹拌機やミキサーで撹拌しながら混練し、基本ナノシリカコート剤8を作製する。
【0033】
この発明の基本ナノコート剤は重量費50%以上のナノシリカ粉末10を溶媒11中に安定して分散でき、シルクスクリーン印刷に使用することができる。つまり高粘度のコート剤を増粘剤等の耐熱性や耐候性劣化の原因となる有機樹脂を添加することなく容易に得ることができる。
【0034】
この基本ナノシリカコート剤8を使い、応用ナノシリカコート剤を得るには次の方法による。例えば、白色LEDに使用する波長変換発光蛍光体であるイットリウム・アルミニューム・ガーネット系蛍光体(以下、波長変換蛍光体)を分剤する場合について説明する。
(1)平均粒径0.5μm〜20μmの波長変換蛍光体を重量比5〜60%の範囲内で上記の基本ナノシリカコート剤8の重量比80〜40%の範囲内に加え、分散機、撹拌機、脱泡撹拌機やミキサーで撹拌しながら混練し、波長変換蛍光体用応用ナノコート剤を作製する。
(2)使用目的により、粘度調節のために、基本ナノシリカコート剤8の溶媒と同じか相溶性のある溶剤を添加し、撹拌する。
【0035】
以上のようにして作製された応用ナノシリカコート剤を次のように、LEDの発光面に形成する。
(1)スクリーン印刷やインクジェットプリンタで、波長変換蛍光体用応用ナノシリカコート剤をLEDの発光面に塗布する。
(2)室温〜150℃で乾燥させて完成する。
このようにして形成された、波長変換蛍光体用層は発光変換層として働くだけでなく、伝熱と輻射の向上により放熱性を改善しかつ素子と酸素や腐食性ガスとの接触を妨げることにより、LED素子の長寿命化を可能にする。また、有機のバインダを含まないために、長期に使用しても耐候性が強く、接着力の低下や黒ずみによる発光効率の低下などの問題が無くなる。また、紫外線領域の発光周波数を持つLEDにおいても、バインダーとして紫外線による分解、白化現象等が発生することはない。
【0036】
本発明の基本ナノシリカコート剤8に用いるシリカは、平均粒径が50nm以下好ましくは10nm以下であるとしたが、例えば2つまたは複数平均粒径を持つナノシリカ群を混合したものでも良い。最も小さな平均粒径の群が均粒径が50nm以下好ましくは10nm以下であり、その割合がナノシリカ全体の20wt%以上好ましくは50wt%以上であれば、基本ナノシリカコート剤8としての性質を発現する。
【0037】
この発明の基本ナノシリカコート剤8によれば、石英ガラスに近い性能のガラスフィルムが室温〜150℃以下の低温で形成できるので、各種プラスチックや布地等の耐熱性のない材料にも使用することが可能である。また、その使用における効果も
(1) ガスバリア効果、
(2)高絶縁抵抗値、
(3)超耐熱温度、
(4)超耐光性、
(5)熱伝導率、輻射放熱性、
(6)柔軟性、
(7)強い接着性、
(8)耐溶剤性、
(9)耐水性、
(10)耐酸性、耐アルカリ性、
(11)高純度、
(12)分散液が長寿命、
以上のように多岐に亘っており、その特長を活用することのできる応用分野は極めて広い。
【0038】
また、シルスクリーン印刷でなくディスペンサーやインクジェットプリンタで吐出させて塗布することにより、波長変換蛍光体用の塗布ムラを軽減したり、材料の塗布時のロスを低減できる効果がある。
また、色々な粉体や繊維体等の応用粉体との混合により、さらに多くの光学的、物理的、電気的、機械的な特長を追加でき、一層、応用分野が拡大できる。
【0039】
また、基本ナノシリカコート剤8を塗布することによって耐水性の布や紙の製造に使用することができる。更にはガラス、金属セラミック板の穴埋めやコンクリートや木材に塗布した耐水性と耐熱性を向上させることができる。
【0040】
基本ナノシリカコート剤8を金属に塗布して酸化防止膜として使用することができる。
基本ナノシリカコート剤8接着力が強いのでビーズや宝石などを混入させて塗布することによってアクセサリーや携帯電話などのデコレーションとして使用することができる。


【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明はコーティングだけでなく、充填材や耐熱性の接着剤などにも応用することができる。
【符号の説明】
【0042】
7 混練
8
基本ナノシリカコート剤
10 ナノシリカ粉末
11
溶媒
20
太陽電池セル
21
微粒子シリカと酸化チタンの混合物




【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が50nm以下であるナノシリカ粉末と溶媒を混練して作成したペースト状の混合物を適時希釈して使用する基本ナノシリカコート剤。

【請求項2】
前記基本ナノシリカコート剤中における前記ナノシリカ粉末が前記溶媒に対する重量比は50パーセントから83パーセントの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の基本ナノシリカコート剤。

【請求項3】
平均粒径が50nm以下であるナノシリカ粉末と溶媒を混練して作成したペースト状の基本ナノシリカコート剤を適時希釈して塗布した後、100℃以上の温度で本乾燥するようにしたことを特徴とする基本ナノシリカコート剤コーティング方法。

【請求項4】
平均粒径が50nm以下であるナノシリカ粉末と溶媒を混練して作成したペースト状の基本ナノシリカコート剤を適時希釈して塗布した後、室温乾燥あるいは40℃の温度で予備乾燥後に100℃以上の温度で本乾燥するようにしたことを特徴とする基本ナノシリカコート剤コーティング方法。

【請求項5】
平均粒径が10nm以下であるナノシリカ粉末を40%以上含むナノシリカ混合粒子を、溶媒に混練して作成したペースト状の基本ナノシリカコート剤とする請求項2ないし請求項4のナノシリカコート剤コーティング方法。

【請求項6】
上記の基本ナノシリカコート剤およびに基本ナノシリカコート剤コーティング方法において、1種以上の固体粒子を混練して基本ナノシリカコート剤をバインダ―として含む応用ナノシリカコーティング剤を
形成し、塗布によりナノシリカ応用層を設けた成果物を得る基本ナノシリカコート剤の応用の方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41492(P2012−41492A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185882(P2010−185882)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(506030055)株式会社コスモ・アソシエ (8)
【Fターム(参考)】