説明

基材に塗布されたコーティング組成物に模様を磁気的に転写するための装置及び方法

記載されているのは、基材(S)表面の少なくとも一部に塗布された、インク又はニスといったコーティング組成物(P)に模様を磁気的に転写するための装置(10)及び方法であり、該コーティング組成物(P)は少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる。装置(10)は、適切な電磁的手段によって生成された磁場を受けるボディ(20)を備え、該ボディ(20)はボディ(20)の表面上に彫刻(21a,21b,21c;211,212)の形態で所定の模様を担持し、該彫刻(21a,21b,21c;211,212)は磁場の力線の配向に影響する。ボディ(20)は彫刻(21a,21b,21c;211,212)が形成される少なくとも一つの高透磁率の材料の層(21)を備える。高透磁率材料の層(21)の彫刻されていない領域で、磁場の力線は、前記高透磁率材料の層(21)の内側ではボディ(20)表面に対して実質的に水平に延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、基材表面の少なくとも一部に塗布されたインク又はニスといったコーティング組成物に模様を磁気的に転写するための装置及び方法に関し、該コーティング組成物は磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる。本発明はまた、紙幣又は同様の有価な及びセキュリティ文書といった、印刷された文書を作るための、このような装置の使用及びこのような方法の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
湿潤コーティング組成物に模様を磁気的に転写するための方法及び装置は、例えば国際出願番号WO2004/007095、WO2004/007096、WO2005/000585、WO2005/002866及び欧州特許出願番号EP1650042による技術において周知である。
【0003】
これらの方法によると、最初にインク又はニスといったコーティング組成物の層が基材表面の少なくとも一部に塗布され、該コーティング組成物は少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる。コーティング組成物の層がまだ湿っている間に、磁場生成装置の表面で生成された所定の磁場に層を曝し、それにより磁性又は磁化可能な粒子を磁場の力線に沿って配向する。次いでコーティング組成物の層を乾燥又は硬化させ、磁性又は磁化可能な粒子の配向を固定する。
【0004】
欧州特許出願番号EP1787728(該出願は本出願の優先日より後に公開されている)は、光学的効果のある印刷のための磁性プレートを開示し、該プレートは、プレートを横断する一又は複数の第一の領域が所定の方向性を有する第一の磁場をもたらすように選択的に磁化される磁化可能な複合材料を含んでなる。これら第一の領域が、物体のロゴ、模様又は像を形成する。第一の領域を囲む一又は複数の他の第二の領域は、磁化されないか又は、磁場にコントラストが与えられるように一又は複数の第一の領域と異なって磁化される。
【0005】
磁性又は磁化可能な粒子(「磁性フレーク」とも呼ばれる)は、適切に加えられた磁場によって配向又は配列できるという特性を有し、特に米国特許番号US4838648、欧州特許出願番号EP0686675、及び国際出願WO02/073250、WO03/000801、WO2004/007095、WO2004/007096及びWO2005/002866に記載されている。
【0006】
かかる粒子又はフレークは、特に紙幣のためのハイレベルなセキュリティパターンを生成するためにいわゆる光学的可変インク、又はOVI(登録商標)’s(OVI(登録商標)はSICPA Holding SA、スイスの登録商標である)中の光学的可変顔料として特に使用される。
【0007】
上記磁性フレークを塗布するための最適な方法は、上述した国際出願WO 2005/000585に記載のシルクスクリーン印刷による。これは主に、フレークが比較的重要なサイズを有し、そのことによって、かかるフレークを含有しているインク又はニスの塗布に利用できる印刷工程の選択肢が制限されるという事実による。特に、印刷工程中に確実にフレークが破壊又は損傷されないようにしなければならず、シルクスクリーン印刷はこの目的を達成するのに最適な印刷工程なのである。さらに、シルクスクリーン印刷は、かかる工程で用いられるインク又はニスが、磁性フレークの適切な配向を助ける比較的低い粘度を示すという利点を有する。
【0008】
それでもなお、フレキソ印刷又はグラビア印刷といった他の印刷工程が、磁性フレークを含有しているコーティング組成物を塗布するために想定されうる。欧州特許出願EP1650042では、凹版印刷工程でかかる磁性フレークを塗布することさえ提案されており、それによると、磁性顔料を含有しているペースト状の凹版インクがインクの粘度を低下させるために加熱され、よってフレークをより容易に磁場又は電場で配向できる。これは従来の凹版印刷機で行うことができ、それは、かかる印刷機のプレートシリンダは通例、印刷作業中、約60から80℃の作業温度に熱せられるためである。
【0009】
湿潤コーティング組成物に含有されている磁性フレークの配向は、塗布されたばかりのコーティング組成物の層に適切な磁場を加えることによってなされる。磁場の力線を適切に形成することで、不可能ではないにしても偽造が非常に困難な対応する光学的可変効果をもたらす任意の所望のパターンに磁性フレークを配列することができる。国際出願WO2005/000585に記載のように、磁性フレークの配向のための適切な解決策は、湿潤コーティング組成物の層を担持するシートを、複数の磁場生成装置を担持する回転シリンダと接触した状態にすることからなる。
【0010】
参照により本明細書に組み込む国際出願WO2005/002866は、永久磁性材料でできた、平坦なプレート又は円筒状に湾曲したプレートなどのボディを備えた特定の種類の磁場生成装置を開示しており、前記磁性材料はボディの表面に対して実質的に垂直方向に永久磁化されている。前記ボディの表面はさらに、その磁場の摂動を引き起こす彫刻の形態で模様を担持している。
【0011】
図1は、上述した国際出願から援用した磁場シミュレーションの概略断面図であり、長方形の彫刻2を備えた、参照番号1で示される垂直方向に磁化された永久磁性プレートの例を図示する。この例で、彫刻プレート1は、プレート1の表面に対して垂直方向に磁化されたPlastoferrite(例えばMaurer Magnetic AG, CH-8627 Gruningen, http://www.maurermagnetic.chから販売されているPlastoferriteモデルM100.8)でできている。
【0012】
図1に示されたように、永久磁性ボディ1は垂直方向に磁化されているため、磁場の力線は、彫刻2の垂直な壁部の領域を除き、ボディ表面の大部分の領域で垂直である。このことは、湿潤組成物に含有されている磁性顔料のほとんどが基材表面に対して垂直に配列されていることを意味する。すなわち、顔料は実質的に水平に配列されているときは主に反射する事実を考えると、図1の装置によってコーティング組成物に誘導されたパターンは、基材表面に対して垂直に見られ及び光が当てられたとき、ほとんど反射しない。
【0013】
図2aから2cは、図1に示した国際出願WO2005/002866の原理にしたがった装置によって作成された、楕円形の中に値「50」を表す磁気的に誘導されたパターンを、3つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真である。より厳密には、該パターンは、彫刻された楕円形の中に値「50」を表す彫刻を有するボディを用いて作成された。
【0014】
WO02/73250に開示の7層の顔料構造に対応する金から緑の光学的可変磁性顔料を含んでなるOVI(登録商標)シルクスクリーンインクを用いて、シルクスクリーン印刷工程でコーティング組成物の層を黒のオフセット背景上に塗布する。黒(又は暗い)オフセット背景とする理由は、誘導されたパターンの反射部分(つまり、顔料が基材表面に対して実質的に水平に配向されている部分)が、パターンの反射の少ない部分(つまり、顔料が基材表面に対して実質的に垂直に配向されており、下の背景が現れる部分)よりも目立つようにすることによって、パターンのコントラストを高上するためである。
【0015】
既に上述したように、国際出願WO2005/002866に開示された周知の方法にしたがって作成して誘導されたパターンの大部分は比較的暗く、つまり顔料のほとんどが垂直に配列されているためコーティング組成物の層を通して暗いオフセット背景が見える。図2aから2cの写真からわかるように、磁気的に誘導されたパターンのほとんどの反射部分は彫刻の壁部の位置に相当する。パターンを見ると、図2aから2cに示されているように、一般的には、楕円形と値「50」が背景の上に浮き彫りになっているような印象を受ける。
【0016】
上述の国際出願WO2005/002866に開示された周知の方法にしたがって作成できるパターンは、以前作成できたパターンに比べると既に相当の改良である。それでもなお、同様の手段を用いて、異なるパターン、特に比較的明るく、より反射性の高い光学的効果を示すパターンを作成できる改良されたアプローチの必要性が生じている。
【0017】
注目すべきアプローチが、担体基材に色彩効果のある像を作出するための方法を開示している国際出願番号WO2006/114289で提案されている。当該方法によると、磁性ピクセルと非磁性ピクセルを含んでなる磁気潜像が磁化可能な印刷版上に作出される。非球形の、好ましくは針状又は層状の色彩効果のある磁性顔料を含む装飾層を備えた担体基材が、担体基材に対する装飾層の色彩効果のある顔料の配向が、磁化可能な印刷版の磁性ピクセルによって作出された力線の像によって変化するように、磁化可能な印刷版を通り越して誘導される。色彩顔料は最終的に、磁化可能な印刷版によって修正された配向で修飾層に固定される。
【0018】
WO2006/114289によると、磁化可能な印刷版は軟磁性バンドを備え、そして軟磁性バンドの磁気保磁力を局所的に変化させ所望の磁性ピクセルを形成するために電磁印刷ヘッドが用いられる。「軟磁性」材料は一般的に、長時間磁化されたままでいる「硬」又は「永久」磁性材料と反対に、前の磁化の記憶をなくす能力を持った磁性材料を指すものとして理解される。WO2006/114289によると、したがって各磁性ピクセルは、磁場の力線の配向に局所的に影響する要素磁石として機能する。
【0019】
このアプローチは、別個の電磁的手段で生成された磁場の力線の配向に影響を及ぼすために彫刻されたボディを用いることには基づかない点で、WO2005/002866のアプローチとは根本的に異なっている。さらに、WO2006/114289によると軟磁性材料が用いられるため、磁化可能なボディの磁性配位が外部磁場によって失われる又は影響を受けるリスクが高い。したがって、WO2005/002866とWO2006/114289の解決策は組み合わせられない。WO2006/114289の解決策はさらに、WO2005/002866のものより確実ではないので、印刷工場などの従来の製造環境での使用、及び/又は印刷機での実施に適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO2004/007095
【特許文献2】WO2004/007096
【特許文献3】WO2005/000585
【特許文献4】WO2005/002866
【特許文献5】EP1650042
【特許文献6】EP1787728
【特許文献7】US4838648
【特許文献8】EP0686675
【特許文献9】WO02/073250
【特許文献10】WO03/000801
【特許文献11】WO2006/114289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるコーティング組成物に模様を磁気的に転写するための従来の装置及び方法を改良することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、製造が比較的容易で且つ安価な、磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるコーティング組成物に模様を磁気的に転写するための装置を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、磁気的に誘導された結果生じたパターンのセキュリティレベルを高上し、そして該パターンの偽造をさらに困難にする解決策を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、印刷工場などの従来の製造環境での使用、及び/又は印刷機での実施に適した、且つ確実な解決策を提供することである。
【0025】
これらの目的は、請求項に定義された解決策により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明によると、基材表面の少なくとも一部に塗布されたインク又はニスといったコーティング組成物の層に模様を磁気的に転写するための装置が提案され、該コーティング組成物は少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる。該装置は磁場を受けるボディを備え、該ボディはその表面上に彫刻の形態で所定の模様を担持し、該彫刻は磁場の力線の配向に影響する。該ボディはさらに、彫刻が形成される少なくとも一つの高透磁率の材料の層を備える。高透磁率の材料とは、真空の透磁率μ(μ=4π 10−1 μN/A)よりも実質的に高い透磁率を有し、磁場の力線を集結する能力を有する材料であると理解される。高透磁率材料の層の彫刻されていない領域で、磁場の力線は、高透磁率材料の層の内側ではボディ表面に対して実質的に水平に延びる。ボディ上の彫刻の存在によって、磁場の力線は、高透磁率材料の層の外側では異なる経路及び方向に沿わされ、彫刻の真上の領域において、磁場の力線は、基材に塗布されたコーティング組成物の層が配置されることとなるボディ表面上で実質的に水平に延びる。
【0027】
この解決策によって、比較的反射性の高いパターンを作成でき、該パターンはさらに、先行技術のものとは根本的に異なる光学的効果を示す。
【0028】
好適な実施例によると、ボディはさらに、高透磁率材料の層を支持する低透磁率材料のベースプレートを備える。低透磁率の材料とは、真空の透磁率μと実質的に等しい透磁率を有し、且つ磁場の力線に実質的に影響を及ぼさず、実質的に自由空間又は真空のように振る舞う材料であると理解される。このような関係で、高透磁率材料の層はガルバニゼーション(電着)によりベースプレート上に有利に付着できる。また、当該実施例において、ベースプレートの透磁率は好適には、1.25から1.26μN/Aの範囲である。ベースプレートに好ましい材料は、銅、アルニミウム又はその合金といった非強磁性体である。
【0029】
高透磁率材料の層の彫刻が層の厚さ全体にわたるとき、その影響を最大とすることができる。
【0030】
有利な実施例によると、高透磁率材料の層の透磁率は、100μN/A(@0.002T)よりも高く選択され、好適には100から1000μN/A(@0.002T)の間から選択される。このような関係で、適切な材料は、鉄、ニッケル、コバルト又はその合金といった強磁性体である。
【0031】
高透磁率材料の層の厚さは、好適には50ミクロン以上となるように、さらに好適には50から500ミクロンまでとなるように選択される。
【0032】
高透磁率材料の層の彫刻は、好ましくは、1ミリメートル以上の線幅及び/又は行間隔を有する、彫刻された直線又は曲線パターンを含んでなる。
【0033】
磁場は有利には、少なくとも一つの、好ましくは二つの永久磁石又は電磁石によって生成できる。
【0034】
磁場の力線は、ボディ20の表面に対して垂直に見たとき、実質的に一つの主方向に沿って延びうる。このような関係で、コーティング組成物の層の照射中に磁場の力線の主方向を変化させることが有利である。この変化は、好適には、磁場の主方向を360度回転することによって実行される。
【0035】
本発明の装置は、有利には、印刷機の回転可能なシリンダボディ上への取り付けに適した湾曲プレートとして、又は印刷機の円筒状ボディの外周に配された支持部材上への取り付けに適した個別の湾曲プレート要素として、形成できる。
【0036】
また特許請求されるのは、以下の工程:
(a)基材表面の少なくとも一部に、少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるインク又はニスといったコーティング組成物の層を塗布する工程;
(b)コーティング組成物の層がまだ湿っている間に、本発明による装置の表面で生成された所定の磁場にコーティング組成物の層を曝し、それにより磁性又は磁化可能な粒子を磁場の力線に沿って配向する工程;及び
(c)コーティング組成物の層を乾燥又は硬化させ、前記磁性又は磁化可能な粒子の配向を固定する工程
を含んでなる、基材に模様を磁気的に転写するための方法である。
【0037】
当該方法において、コーティング組成物は、好適には印刷によって、さらに好適にはシルクスクリーン印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷によって塗布される。
【0038】
さらに特許請求されるのは、基材表面の少なくとも一部に塗布されたコーティング組成物を有する基材と、上述の方法によってコーティング組成物に磁気的に誘導された模様とを備えた印刷された文書、特に紙幣である。
【0039】
また別の特許請求される対象は、基材表面の少なくとも一部に塗布されたインク又はニスといった湿潤コーティング組成物に模様を磁気的に転写するための上記装置の使用であり、該コーティング組成物は少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、単に非制限的な例によって示され、そして添付の図面によって図示される本発明の実施例の以下の詳細な記載を読むことによってさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】国際出願WO2005/002866から援用した磁場シミュレーションの概略断面図であり、長方形の彫刻を備えた、垂直方向に磁化された永久磁性プレートの例を図示する。
【図2】図2aから2cは、国際出願WO2005/002866に開示された周知の原理にしたがって作成された磁気的に誘導されたパターンの例を、3つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真である。
【図3】本発明の好適な実施例による磁場生成装置の概略断面図である。
【図4】図3の磁場生成装置の磁場シミュレーションである。
【図5】図5aから5dは、本発明によって作成された磁気的に誘導されたパターンの例を、4つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真である。図5eは、図5aから5dに図示された磁気的に誘導されたパターンを備えた紙幣の概略図である。
【図6】図6aから6dは、本発明の変形によって作成された、図5aから5dに示されたものと類似の磁気的に誘導されたパターンの例を、4つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真である。
【図7】図7aから7dは、本発明によって作成された磁気的に誘導されたパターンの別の例を、4つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真である。図7eは、図7aから7dの磁気的に誘導されたパターンを作成するために用いられた彫刻パターンの概略上面図である。
【図8】本発明の実施に適したシルクスクリーン印刷機の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
「模様を磁気的に転写する」なる表現(該表現は国際出願WO2005/002866でも用いられている)は、後に説明する磁場の力線の所定の配向によって、模様の入ったボディから磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる湿潤コーティング組成物に模様が実質的に「転写される」ことから本出願において用いられる。このような関係で、用語「転写」は、用語「形成」又は「誘導」と同等であると理解されるべきである(したがって該用語は模様作成プロセスを示すためにも用いられうる)。
【0043】
図3は、全体を通して参照番号10で示される、本発明の好適な実施例による磁場生成装置の概略断面図である。当該実施例によると、装置10は、磁場の力線の配向に影響することを目的としたボディ20を含み、これは以下で説明する。好適な実施例によると、ボディ20は、彫刻21a、21b、21cが形成される高透磁率材料でできた層21、及び層21を支持する低透磁率材料でできたベースプレート22を備える。
【0044】
また図3には、ボディ20の表面上に、層21の上部表面と接触して配されたシートSが図示されており、該シートSは、層21の表面とは反対側の面に、その表面上に塗布されたコーティング組成物Pの層を備える。コーティング組成物Pは、磁場生成装置10によって配向しようとする、上述したように少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる。
【0045】
本発明の状況において、基材Sの上に模様を磁気的に転写するための方法は、以下の工程:
(a)基材Sの表面の少なくとも一部に、インク又はニスといったコーティング組成物Pの層を塗布する工程(該コーティング組成物PはWO02/73250に記載のような少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなる);
(b)コーティング組成物Pの層がまだ湿っている間に、本発明による装置10の表面で生成された所定の磁場にコーティング組成物Pの層を曝し、それにより磁性又は磁化可能な粒子を磁場の力線に沿って配向する工程;及び
(c)コーティング組成物Pの層を乾燥又は硬化させ、前記磁性又は磁化可能な粒子の配向を固定する工程
を含んでなることが理解されるであろう。
【0046】
本発明の範囲内で、「高透磁率」の材料とは、磁場の力線を集結する能力を有する(つまり「磁気的に引き付けることができる」)材料であり、「低透磁率」の材料とは、磁場の力線に実質的に影響を及ぼさず、実質的に自由空間又は真空のように振る舞う材料であると理解される。言い換えると、「低透磁率」の材料とは、μと実質的に等しい透磁率を有する材料として理解され、ここでμは通例、真空の透磁率であると理解され、以下の一定値(1):
μ=4π 10−1 μN/A (1)
と等しい。
【0047】
好ましくは、低透磁率材料は、1.25から1.26μN/Aの範囲の透磁率を有する材料となるように選択される。
【0048】
反対に、「高透磁率」の材料は、μよりも実質的に高い透磁率を有する材料である。より正確には、本発明によると、高透磁率材料とは、100μN/A(@0.002T)よりも高い透磁率を示す材料、より好適には100から1000μN/A(@0.002T)の間の透磁率を示す材料として理解される。材料の透磁率は、磁束密度によって異なると理解されるべきである。したがって、上述の値は、磁束密度を0.002Tと考えたときのものである(よって言及された値の後に「@0.002T」なる表示がある)。
【0049】
層21の形成に適した高透磁率材料のうち、特に知られているのは、鉄、ニッケル、コバルト又はその合金(例えばスチール、パーマロイ等)といった、いわゆる強磁性材料である。本発明の範囲内で、いかなる高透磁率材料も適切である。しかしながら、試験により、100から1000μN/A(@0.002T)の間の透磁率を示す材料で十分であり、1000μN/A(@0.002T)を越える透磁率を示す材料は、同じく適切ではあるが必要ではないことがわかっている。
【0050】
層21に特に適した材料はニッケルで、該材料は約125μN/A(@0.002T)の透磁率を有する。該材料は、特にガルバニゼーションによって凹版印刷プレートを製造するために紙幣産業で一般的に用いられるため便利で、よって紙幣印刷機で容易に利用できる。該材料はさらに、非常に簡単に(例えば回転のみによって又は研磨剤の気体又は液体ジェットによって機械的に、化学エッチングによって、またさらにはCO、Nd−YAG又はエキシマレーザを用いたレーザアブレーションによって)彫刻できる。
【0051】
ベースプレート22の形成に適した低透磁率材料のうち、特に知られているのは、銅、アルミニウム又はその合金といった、いわゆる非強磁性材料である。本発明の範囲内で、いかなる低透磁率材料も適切である。例えばガラス又はプラスチックが、ベースプレート22の材料として用いられうる。
【0052】
本発明の別の実施例によると、例えば層21を自己支持性とすることによって、ベースプレート22なしで済ませることもできる。したがって、低透磁率材料のベースプレート22が必須ではないが好ましい。
【0053】
ベースプレート22に特に適した材料は銅で、該材料は約1.2566290μN/Aの透磁率を有する。該材料もまた、紙幣産業で一般的に用いられるため便利で、よって紙幣印刷機で容易に利用できる。最適な代替物は、約1.2566650μN/Aの透磁率を示すアルミニウムである。
【0054】
本出願人は、銅のベースプレート22と、ガルバニゼーションにより銅のベースプレート22上に被着されたニッケル層21とを用いた試験を成功させている。銅のベースプレート22は約0.5mmの厚さで、ニッケル層21が50から500ミクロンの範囲の層厚でガルバニゼーションによって被着された。
【0055】
図3に図示された実施例に戻って、当該実施例では、装置10の2つの端部I,IIに配された一対の永久磁石31,32(Maurer Magnetic AGから販売されているサマリウム-コバルト−SmCo−磁石など)によって磁場が生成される。図示されたように、永久磁石31はそのN極が上方を向くように配され、永久磁石32はそのN極が下方を向くように配される。その結果生じた磁場は、磁場の力線が、端部Iの永久磁石31のN極からベースプレート22を通って層21内へと延び、次いで端部Iから端部IIへと、実質的に水平に層21の内側、上下を通り、ベースプレート22を通って戻り、永久磁石32のS極へと延びる。残りの磁気回路は、永久磁石32のN極と永久磁石31のS極を介した、装置の下方部分における磁力線のつながりによって閉じている。当然のことながら、同様の磁場構成が永久磁石31,32の代わりに電磁石を用いても生成されうる。
【0056】
結果として生じた磁場分布のシミュレーションを図4に概略的に示した。当該シミュレーションは、公的に入手可能なモデリングソフトウェアVisimag(http://www.vizimag.com/)を用い、ニッケル層を層21として、及び銅ベースプレートをベースプレート22として作成した。
【0057】
層21に彫刻がない場合、磁力線はほとんどが層21自体に集中し、該層21は磁気短絡として作用する。実質的に低透磁率の領域(つまり自由空間)をなす層21の彫刻21a,21b,21cは、磁力線を異なる経路及び方向に沿わせる。つまり、彫刻21a,21b,21cは、彫刻21a,21b,21c近傍の磁場の力線の配向に影響を及ぼす。
【0058】
図4に概略的に図示されたように、そして国際出願WO2005/002866に開示された先行技術による解決策と対照的に(また図4及び図1を比較)、高透磁率材料の層21の非彫刻領域で、磁力線はほとんどが層21の内側に集中し、ボディ20の表面に実質的に平行に延びる。一方、彫刻21a,21b,21cが存在するところでは、磁力線は層21の外側に引っ張られ、彫刻21a,21b,21cの真上のシートS及びコーティング組成物Pの領域で、図1のシミュレーションに示されたように垂直ではなく、実質的に水平に延びる。反対に、彫刻21a,21b,21cの真上ではない(つまり層21の非彫刻領域の上の)シートS及びコーティング組成物Pの領域では、磁場の力線はほとんど垂直に配向される傾向にある。その結果、模様を形成する彫刻21a,21b,21cの上のコーティング組成物P中の大部分の粒子はほぼ水平に配列され、概して反射性の高いパターンを生じる。
【0059】
この相違は、図2aから2cに図示された先行技術によるパターンと同様であるが、本発明の上述した好適な実施例による装置によって作成された、楕円形の中に値「50」を表す磁気的に誘導されたパターンを、4つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真である図5aから5dに明示されている。
【0060】
より正確には、彫刻に関しては、磁場生成装置のボディは、図2aから2cの先行技術によるパターンの作成に使用されたものと全く同一の、楕円形の中に値「50」を表す彫刻パターンで彫刻された。WO2005/002866で提案された垂直方向に磁化されたPlastoferriteプレートではなく、上述した銅ニッケル(Cu−Ni)ボディ20を使用した。この例の状況において、高透磁率材料の層の彫刻は基本的に、楕円形の彫刻の内側に値「50」を表す非彫刻パターンを残して形成されていることが特に理解されるであろう。
【0061】
図5aから5dに図示されているように、結果として生じたパターンは実質的に反射性が高く、図2aから2cに図示されたものとは根本的に異なる光学的効果を示す。実際、本発明によって作出された視覚的効果は、図2aから2cに図示された視覚的効果と比較して大体反転している。より正確には、図5aから5dに図示されているように、楕円形は、立体物のように背景上に浮き彫りになって見え、値「50」は立体の楕円形の中に彫刻されたように見える。
【0062】
図5eは、特に肖像画像51及び本発明によって作成された磁気的に誘導されたパターン55、例えば図5aから5dのパターンを含んでなる、考えられる紙幣50の概略図である。
【0063】
上述の磁場生成装置10を用いた試験を実行する間に、ボディ20上に彫刻されたパターンの配向が、その結果もたらされる効果に何らかの重要性を持つことが明らかとなった。実際に、図3及び4に図示された磁場生成装置10の実施例で、磁力線は、ボディ20の表面に対して垂直に見たとき、概して一つの主方向に沿って配向されている、つまり図3及び4の方向I−IIに沿っている。ここで「主方向」とは、磁場の力線の総体的な方向、つまり図3及び4の左から右への方向(この「主方向」は図5aから5cのグレースケールの写真では下から上へ、図5dのグレースケールの写真では左から右へと延びる)を指すものと理解される。したがって、この主方向I−IIに対して実質的に平行に配向されている高透磁率材料の層の彫刻の境界部分は、それ自体は磁力線の配向にさほど影響せず、そしてコーティング組成物Pに磁気的に誘導されたパターンの、それに対応する部分は、結果的に消える傾向があるか又は薄弱する。例えば図5aから5dの写真を見ると、楕円形の左側と右側の側方部分が実質的に薄くなっていることが特にわかる。
【0064】
この効果を克服するために、彫刻されたパターンに磁力線の主方向に沿って延びる境界部分ができないように彫刻パターンを設計すること、及び/又は、そのような領域の幅を広くして磁力線の局所的配向への影響がより強くなるように彫刻パターンを作ることができる。
【0065】
或いは、コーティング組成物Pの層の曝露中に磁力線の主方向を変更する解決策がある。これは好適には、曝露されるコーティング組成物Pの層に対して磁場を、好ましくは回転させる、有利には360度回転させることによって変化させることで実行される。磁場の回転軸は、コーティング組成物Pが塗布される平面に対して実質的に垂直、つまりボディ20及びシートSの表面に対して実質的に垂直であると考えられることは当然理解されるであろう。図6aから6dは、楕円形の中に値「50」を表す磁気的に誘導されたパターンを、図5aから5dと同じ4つの異なる視角から撮影したグレースケールの写真であり、これは図5aから5dのものと同様であるが、但しコーティング組成物Pの層の曝露中に磁力線の主方向を360度回転させた。
【0066】
コーティング組成物Pの曝露中に磁場を回転させた結果、上述した薄弱効果は低減されるか又は完全に回避される。結果として生じる磁気的に誘導されたパターンをホログラムの形で全ての視角から実質的に同様に見えるようにすることによって、この回転による該パターンのエンボス/リリーフ効果がさらに高まるようである。同じ視角から、つまりコーティング組成物Pの左側から撮影された図5dと6dの写真を比較すると、相違が特に明確である。
【0067】
図7aから7dは、磁気的に誘導されたパターンの別の例を、図5aから5d及び6aから6dと同じ4つの異なる視角から撮影した4つの写真である。この例でも、コーティング組成物Pの曝露中に磁場の主方向を360度回転させた。
【0068】
図7eは、図7aから7dに示した例の状況で用いた彫刻されたボディ20の概略上面図である。図示されたように、ボディ20の層21には、一方に図案化された模様のペガサス211と、もう一方に単語「KBA GIORI」212を表す彫刻パターン211,212が彫刻されている。この例で、直線又は曲線のパターン211,212は約1ミリメートルの線幅で彫刻されている。試験では、本発明の状況では1ミリメートル以上の線幅が好ましいことが示された。同様に、好ましくは彫刻パターンが密集しすぎないようにすべきであり、つまり隣合う彫刻間に1ミリメートル以上の行間隔があることが好ましい。
【0069】
好適には、層21の厚さは50ミクロン以上となるように、さらに好適には50から500ミクロンまでの範囲となるように選択される。一方、ベースプレート22の厚さは重要ではない。
【0070】
試験では、永久磁石31,32とボディ20との間の距離が、結果として生じた磁気的に誘導されたパターンに何らかの影響を及ぼすことが示された。本発明の範囲内で、永久磁石(又は電磁石)は、作成しようとする効果に応じて、ボディ20から離して(例えば数センチメートルのオーダーで)又はボディ20と密接させて配されうる。この点で、磁石の磁力もまた影響を及ぼす。
【0071】
既に述べたように、必要な磁場の生成のために、永久磁石の代わりに電磁石を用いてよい。電磁石は、曝露の終わりに磁場を完全に抑制することができ、よって特にボディ20の表面から基材を取り外す間の、磁性又は磁化可能な粒子の配向のさらなる変更が回避されるという点で特に有利である。加えて、上述したような磁場の主方向の回転は、円形に配置された電磁石を用いて、及び電気モータを駆動する状況で行われるのと同様の方法で磁場の配向を電子的に切り替えることによって、容易に実行されうる。永久磁石を用いた磁場の回転は、曝露中に永久磁石自体(又はコーティング組成物Pの層を担持する基材S)を物理的に回転させることによって行われなければならない。
【0072】
上述の発明は、本出願人による国際出願WO2005/000585で概して教示されたように、上述した磁場生成装置10を印刷機の円筒状ボディの外周に配されるように設計することによって実施可能である。
【0073】
図8は、参照により本明細書に組み込む国際出願WO2005/000585に開示された枚葉給紙(シートフィード)印刷機の一つの可能な実施例を概略的に図示したものである。当該印刷機は、シルクスクリーン印刷工程によってシートを印刷するようにできており、シルクスクリーンパターンがシート上に塗布されるシルクスクリーン印刷群200にシートを連続的に給紙するための給紙台100を備える。この例で、印刷群200は、シートの印刷経路に沿って続けて配置された2つのスクリーンシリンダ200b,200cと協働する圧胴(インプレッションシリンダ)200aを備える。一旦印刷群200で処理されると、印刷されたばかりのシートは、コンベヤシステム300によって、複数の、当該例では3つの送出物集積ユニットを備えた送出台400へと移送される。コンベヤシステム300は典型的には、シート移送方向に対して直角に延びる複数の間隔を介したグリッパ棒(図8には図示せず)を備えたエンドレスチェーンコンベヤシステムであり、各グリッパ棒はシートの前縁をつかむためのクランプ手段を備える。
【0074】
図8に図示した例で、複数の磁場生成装置を担持するシリンダボディ600が、チェーンコンベヤシステム300によって運ばれるシートの経路に沿って配置されている。該シリンダボディ600は、上述したように印刷群200でシートに塗布されたばかりのコーティング組成物のパターンに含まれている磁性フレークを配向する目的でシートの選択された位置に磁場を加えるように設計されている。乾燥又は硬化ユニット500は、磁性フレークが配向された後で且つ送出台400に送られる前にシート上に塗布されたコーティング組成物を乾燥又は硬化するために、シリンダボディ600の下流に設けられており、こういったユニット500は典型的には、使用されるコーティング組成物の種類(例えば水性又はUV硬化インク/ニス)に応じて赤外線乾燥ユニット又はUV硬化ユニットである。
【0075】
シルクスクリーン印刷機に関するさらなる詳細は、関連する図8に図示したシルクスクリーン印刷機の詳細も含めて、欧州特許出願EP0723864、EP0769376、及び国際出願WO97/29912、WO97/34767、WO03/093013、WO2004/096545、WO2005/095109及びWO2005/102699に見出される。
【0076】
国際出願番号WO2005/000585に記載のように、シリンダボディ600は或いは、圧胴200aとコンベヤシステム300との間のシート送り位置300aに配置されてもよい。国際出願番号WO2005/000585で想定されたまた別の実施例によると、圧胴200a自体が磁場生成装置を担持するシリンダとして設計されてもよい。
【0077】
図8に図示した実施例で、磁性フレークの配向に用いられるシリンダボディ600は有利には、シートの印刷されたばかりではない面と協働し、よって印刷汚れ問題を防ぎ、シートの裏面からコーティング組成物の印刷されたばかりのパターンへと磁場が加えられる。磁性フレークの配向中、つまりコンベヤシステム300によって運ばれるシートがシリンダボディ600の外周の上方部分と接触するとき、シリンダボディ600はシートの移送速度に対応する円周速度で回転するため、移送されたシートとシリンダの外周との間には相対的なずれが出ない。図示されたように、シリンダボディ600は、シートがシリンダボディの外周に接する曲線状の経路を辿り、よって処理されたシートの表面部分がシリンダボディ600外周と接触することができるように、チェーンコンベヤシステム300の経路に配される。
【0078】
紙幣を製造する状況において特に、各印刷されたシート(又は輪転印刷の場合は連続ウェブの各連続するポーション)には、行と列のマトリクス状に並んで印刷像が印刷されており、該像は最終的に、シート又はウェブポーションの最終裁断後に別個のセキュリティ(証券)をなす。磁性フレークの配向に用いられるシリンダボディ600には、したがって典型的にはシート又はウェブポーション上の印刷像と同じ数だけ磁場生成装置が備わっている。
【0079】
シリンダボディ600は好ましくは、「CYLINDER BODY FOR ORIENTING MAGNETIC FLAKES CONTAINED IN AN INK OR VARNISH VEHICLE PRINTED ON A SHEET-LIKE OR WEB-LIKE SUBSTRATE」と題された本出願人の名で2007年2月20日に出願された欧州特許出願番号07102749.4でさらに教示されたようなシリンダボディである。当該特許出願によると、シリンダボディは有利には、共通の軸部材に沿って軸方向に配された複数の個別の輪状支持リングを備え、各輪状支持リングは、該リングの外周上にぐるりと配された一連の磁場生成装置を担持している。このシリンダボディの構成のおかげで、各磁場生成装置の位置を、それに対応する、処理されたシート又はウェブ上のコーティング組成物印刷像の位置に合わせることができる。
【0080】
本発明による磁場生成装置に話を戻して、ボディ20は印刷機の回転可能なシリンダボディ上への取り付けに適した湾曲したプレートとして(この場合、全ての磁場生成装置のために、一枚の共通した彫刻プレートが用いられうる)、又はその代わりに印刷機の円筒状ボディの外周上に配された支持部材上への取り付けに適した個別の湾曲したプレート要素として(この場合、個別のプレートが用いられることになる)、形成することができる。
【0081】
添付の請求項に定義された発明の範囲から逸脱しない限り、上述の実施例には様々な変形及び/又は改良がなされうる。
【0082】
例えば、シルクスクリーン印刷が、配向すべき磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるコーティング組成物を塗布するための好適な印刷工程であるが、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はさらには欧州特許出願EP1650042で述べられたような凹版印刷といった他の印刷工程も想定されうる。
【0083】
加えて、コーティング組成物Pの層は、暗い背景上で印刷されることが好ましいが、例えば国際出願WO2006/061301で述べられたような構造的背景といった他のいかなる背景も可能である。しかしながら、結果として生じる磁気的に誘導されたパターンのコントラストをより良くするためには、主に暗い背景が好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(S)表面の少なくとも一部に塗布された、少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるインク又はニスといったコーティング組成物(P)に模様を磁気的に転写するための装置(10)であって、
前記装置(10)は、電磁的手段によって生成された磁場を受けるボディ(20)を備え、該ボディ(20)はボディ(20)の表面上に彫刻(21a,21b,21c;211,212)の形態で所定の模様を担持し、該彫刻(21a,21b,21c;211,212)は磁場の力線の配向に影響し、
ここで前記ボディ(20)は前記彫刻(21a,21b,21c;211,212)が形成される少なくとも一つの高透磁率の材料の層(21)を備え、及びここで前記高透磁率材料の層(21)の彫刻されていない領域で、磁場の力線は、前記高透磁率材料の層(21)の内側では前記ボディ(20)表面に対して実質的に水平に延びる、装置。
【請求項2】
前記ボディ(20)がさらに、前記高透磁率材料の層(21)を支持する低透磁率材料のベースプレート(22)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記高透磁率材料の層(21)が、ガルバニゼーションにより前記ベースプレート(22)上に付着される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ベースプレート(22)の透磁率が、1.25から1.26μN/Aの範囲である、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記ベースプレート(22)が、銅、アルニミウム又はその合金といった非強磁性体でできている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記高透磁率材料の層(21)の彫刻(21a,21b,21c;211,212)が、前記層(21)の厚さ全体にわたっている、請求項1ないし5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記高透磁率材料の層(21)の透磁率が、100μN/A(@0.002T)よりも高く、好適には100から1000μN/A(@0.002T)の間である、請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記高透磁率材料の層(21)が、鉄、ニッケル、コバルト又はその合金といった強磁性体でできている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記高透磁率材料の層(21)が、50ミクロン以上、好適には50から500ミクロンまでの間の厚さを呈する、請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記彫刻(21a,21b,21c;211,212)が、好適には1ミリメートル以上の線幅及び/又は行間隔を有する、彫刻された直線又は曲線パターンを含んでなる、請求項1ないし9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記磁場を生成するための少なくとも一つの永久磁石(31,32)を備えた、請求項1ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記磁場を生成するための少なくとも一つの電磁石を備えた、請求項1ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記磁場の力線が、ボディ(20)の表面に対して垂直に見たとき、実質的に一つの主方向(I−II)に沿って延びる、請求項1ないし12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記ボディ(20)が、印刷機の回転可能なシリンダボディ(600)上への取り付けに適した湾曲プレートとして形成されている、請求項1ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記ボディ(20)が、印刷機の円筒状ボディ(600)の外周に配された支持部材上への取り付けに適した個別の湾曲プレート要素として形成されている、請求項1ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
基材(S)に模様を磁気的に転写するための方法であって、以下の工程:
(a)基材(S)表面の少なくとも一部に、少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるインク又はニスといったコーティング組成物(P)の層を塗布する工程;
(b)コーティング組成物(P)の層がまだ湿っている間に、請求項1ないし15のいずれかに記載の装置の表面で生成された所定の磁場にコーティング組成物(P)の層を曝し、それにより磁性又は磁化可能な粒子を前記磁場の力線に沿って配向する工程;及び
(c)コーティング組成物(P)の層を乾燥又は硬化させ、前記磁性又は磁化可能な粒子の配向を固定する工程
を含んでなる、方法。
【請求項17】
前記磁場の力線が、ボディ(20)の表面に対して垂直に見たとき、実質的に一つの主方向(I−II)に沿って延び、及び、磁場の力線の前記主方向が、工程(b)のコーティング組成物(P)の層の曝露中に変更、好適には360度回転される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティング組成物が、印刷によって、好適にはシルクスクリーン印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷によって塗布される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
基材(S)表面の少なくとも一部に塗布されたコーティング組成物(P,55)を有する基材(S)と、請求項16ないし18のいずれかに記載の方法によってコーティング組成物(P,55)に磁気的に誘導された模様とを備えた、印刷された文書(50)、特に紙幣。
【請求項20】
基材(S)表面の少なくとも一部に塗布された、少なくとも一種類の磁性又は磁化可能な粒子を含んでなるインク又はニスといった湿潤コーティング組成物(P)に模様を磁気的に転写するための、請求項1ないし15のいずれかに記載の装置の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−526683(P2010−526683A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507043(P2010−507043)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051784
【国際公開番号】WO2008/139373
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(591031371)カーベーアー−ジオリ ソシエテ アノニム (54)
【Fターム(参考)】