説明

基材のレーザーマーキング

可溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の白色または無色の溶液で基材を被覆することと、マーキングされる基材の複数領域を、これらの領域が変色するように照射することと、を含み、基材が多糖類系材料を有する、基材のマーキング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に紙、カードまたはボード等の基材のレーザーイメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
製紙分野における近年の進歩により、記録保管特性と、紙、カード及びボードの白さとが改善されている。こうした進歩は様々な改良の結果によるものであり、こうした改良には、黄色のロジン由来のサイズ剤からアルキルケテンダイマやアルケニルコハク酸アンヒドライド等の無色で中性またはアルカリ性のサイズ剤への交換、酸性製紙液から中性水または弱アルカリ性水への交換、及び、黄色クレイ充填剤から無色炭酸カルシウム充填剤への交換が含まれる。
【0003】
レーザー光による照射に応じて効果的なマーキングを示すが、マーキングされていない領域では最新用紙(modern papers)の保存に安定した略白色を維持し、また、マーキング前においてもそうである、紙、カードおよびボード等の基材(substrates)のイメージング方法が依然として必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、基材のマーキング方法は、基材を可溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の白色または無色の溶液で被膜するステップと、マーキングされる基材の領域が変色するように領域を照射するステップと、を備える。基材は、多糖類材料を有しており、セルロース等のセルロース系材料を有することが好ましい。
【0005】
本発明は、さらに、本発明の方法により獲得可能なマーキングされた紙、カードおよびボードに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の方法は、可溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の白色または無色の溶液により、マーキングされる基材を被覆することで開始される。本発明において、「弱酸」という用語は、酸解離定数pkaが3乃至12、例えば、3乃至7の酸であることを特徴とする。白色または無色の溶液は、水溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の水溶液であることが好ましい。以下、塩と称す本発明で使用する水溶性アルカリまたはアルカリ土類金属塩の例は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、三塩基性クエン酸ナトリウム(tribasic sodium citrate)、メタホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、または、モリブデン酸カリウムである。好ましい陰イオン塩は、炭酸塩、重炭酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、および、モリブデン酸塩である。過ホウ酸塩は使用可能であるが、低い水溶性を示す場合がある。また、硫酸塩は良好な黒色画像を提供するが、硫黄臭を発する場合がある。最も好ましい陰イオン塩は、重炭酸塩、炭酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、ケイ酸塩、および、モリブデン酸塩である。例えば酢酸カルシウムの形態でカルシウム等のアルカリ土類陽イオンを使用しても良いが、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンが好ましく、上記陰イオンの何れとも交換可能に使用することができる。塩の混合物を使用してもよく、上記で明示したように、適切な塩は二成分金属塩(binary metal salts)または一成分金属塩(monometal salts)である。二成分金属塩を使用する場合、陽イオンとしては例えばナトリウム等のアルカリ金属が好ましい。
【0007】
特に好ましい種類のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は水溶性である。容易に水に溶けないが、水溶液系で分散する同様の化合物も使用可能である。実際には、非水溶液系で溶ける/分散する同様の化合物も使用可能である。
【0008】
上記塩のすべては、白色または無色であってもよく、基材の視認可能な外観を実質的に変化させることのない被覆等の周知の手段により、水溶液を利用して基材に容易に塗布してもよい。また、基材の一部表面上の塩溶液のパッチ(patches)は、例えばフレキソ印刷、シルクスクリーン印刷および/またはインクジェット印刷等の印刷で形成してもよい。典型的には、本発明に係る水溶液でマーキングされる基材の被覆は、本質的に当該溶液を使用した基材の表面含浸という結果になる。
【0009】
本発明で使用に適した基材は多糖を有している。好ましい多糖はセルロースである。適した基材には、木材パルプまたはポリマー薄膜からなる紙、カードまたはボードが含まれる。基材は、白色または薄色、さらには透明であることが好ましい。適した紙は、処理済の木材繊維、充填材およびサイズ剤を有する。例えばCaCO3の反応を回避するために、典型的にはアルカリ性条件でサイジングを実行する。実際には、本発明では酸性物質/酸化剤(acidic/oxdizing materials)の使用を避けることが好ましい。ライスペーパー等、他の紙や、食用でんぷんを含む紙も使用可能である。セルロース膜等のポリマー膜で構成された基材もマーキング可能である。また、基材はセルロース系繊維を含む織布、不織布またはニット織物であってもよい。セルロース系繊維は、綿、ビスコースまたはリヨセルであってもよく、また、羊毛または絹等の天然繊維や、ポリエステル、アクリルまたはナイロン等の人工繊維や、天然繊維と人工繊維の混合等、他の繊維と混合してもよい。また、基材は、木材(wood)、材木(timber)またはコルク、および、そうした基材で作られた製品を含んでもよい。
【0010】
マーキングされる基材が適した塩で一旦被覆されると、被覆を自然乾燥させることも可能であるし、過熱により強制的に乾燥させることも可能である。場合によっては、被覆を「セット」するために、自然乾燥に必要となる熱より十分高い熱を加えることが有用なこともある。しかし、そうした過剰な熱による基材の黄ばみ及び変色を一貫して回避すべきである。
【0011】
被マーキング領域にレーザー光を照射する。典型的には、この光の波長は、800乃至10,600nmである。Nd−YAGレーザーまたはCO2レーザーを使用してもよい。典型的には、800乃至1500nmの範囲の波長の光を発するダイオードレーザー等、低エネルギーレーザーを使用することが望ましい場合もある。状況によっては、このエネルギー入力は効果的なマーキングの実行に不十分な場合もあり、この場合、水溶液が適した赤外線吸収剤(IR-absorbent material)を有することが好ましい。
【0012】
赤外線吸収剤は周知のものである。一般論として、本発明の目的のためには、任意の適した材料を組み込んでもよく、当業者により選択可能である。本発明で使用する好ましい赤外線吸収剤は導電性高分子であり、重合状態において、共役し、結合した単量体(典型的には環状)を有する物質を意味し、これにより、正または負電荷の非局在化―伝導を可能にする。この共役は、照射の波長に適用するように制御可能な吸収シフトを可能にするが、この吸収シフトは重合体の濃度に依存してもよい。
【0013】
また、赤外線吸収剤は、還元無機混合金属酸化物化合物、好ましくは、還元インジウムスズ酸化物または還元アンチモンスズ酸化物等の還元無機混合金属酸化物であってもよい。典型的には、そうした化合物は不定比性である。また、赤外線吸収金属は、近赤外線(NIR)有機染料/顔料化合物、または有機重合体であってもよい。実際には、レーザーの波長の放射線を十分に吸収する任意の基材が使用可能となる。赤外線吸収剤の好ましい種類は、可視光を最小限に吸収するものであるので、無色または略無色に見える。
【0014】
代替赤外線吸収剤は金属塩であり、WO2005/068207に記載するように、特に、リン酸水酸化銅(II)(copper (II) hydroxyl phosphate)、ピロリン酸銅(II)、モリブデン酸銅(II)、タングステン酸銅(II)、モリブデン酸鉄(III)、およびタングステン酸鉄(III)である。
【0015】
理論による制限を受けたくないので、レーザー光による照射は、塩の加熱とマーキングされる基材から付随して水の放出を引き起こすものと考えられており、これにより、塩の加水分解により形成される水酸化物イオンを提供する。塩の加水分解は、水溶液におけるアルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の周知の特性であり、pH測定により発生を示すことが可能である。そして、水酸化物は、セルロース系材料としてのセルロースの場合に(ナトリウム塩用の)「ソーダセルロース」を生じるようにマーキングされる基材において、セルロース系材料と反応するものと考えられている。この反応中に、さらに水が生成されるものと考えられている。セルロースと比較した場合、ソーダセルロースの方がさらに化学反応し易いので、レーザー照射への露光時に暗色化または黒色化するものと考えられている。
【0016】
塩とマーキングされる基材のセルロース系材料との想定される相互作用により、レーザー光への露光時に塩自体が暗色の生成物に分解する必要はない。したがって、塩の陰イオンが炭素を含まないことが好ましい。
【0017】
これを実施するのが容易であるのは、水溶液は容易且つ迅速に生成することができ、また、マーキングされる基材に適用して被覆し、その後被覆は単純に乾燥され、レーザーイメージング可能な生成物を提供することができるからである。この水溶液は粘土が低く、容易に汲み上げ可能である。分散は除外して、有利なことに溶液の組成は沈殿またはクリーミングによって変化しない。そうした特性により、溶液は例えばウェブコーティング(web coating)またはウェブプリンティング(web printing)等の半連続作業に十分適している。
【0018】
また、使用する塩が高価ではなく、均一な純度で容易に利用可能であるので、本発明の使用は安価である。既述の通り、本発明で使用する溶液は、非感光性の親オブジェクトと比較した場合、実質的に外観の変わらないレーザー感光性の基材を提供する。
【0019】
画像の耐摩擦性および耐水性を改善するためにさらなる層を塗布することによって、本発明に係る方法で生成される画像を保護することが可能である。典型的には、そうした層が塩溶液層の上に被覆される。一例としては、例えば、画像にさらなる耐水性および耐摩擦性を与えるために、架橋可能な重合体の溶液を塗布することが可能である。代替案としては、耐水性および耐摩擦性を改善するために、重合体を塩溶液に溶解させてもよい。また、重合体の水分散体を保護膜(top coats)の成分として採用してもよいし、塩溶液に混合しても良い。適切な分散体はアクリル、スチレン−アクリル、ポリ酢酸ビニルおよびビニルアクリルを含むが、これらに限定されない。スコットベイダー社(Scott-Bader Ltd.)提供のTexicryl(R)シリーズが例として含まれる。また、積層膜によって画像保護を行うために、被覆された基材上に膜を積層させることも可能であるが、好ましくは如何なる接着剤であっても、レーザー照射に対して実質的に透過的であるべきである。
【0020】
何れの形態の追加層を選択しても、当該追加層をレーザー誘起された画像の形成前と形成後の何れかで塗布することが可能である。
【0021】
代替案としては、第1に水溶液に含まれる塩としてケイ酸ナトリウムを選択し、第2に、例えば、メタホウ酸ナトリウム等の他の水溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の追加成分を水溶液に加えることにより、耐水性および耐摩擦性を提供することができる。本実施形態において、ケイ酸ナトリウムおよび追加成分を含む白色または無色の水溶液を単一の溶液として基材に塗布し、一旦乾燥し、任意にセットすると、被覆されている対象物に光沢が与えられ、さらに、画像の耐水性および耐摩擦性を改善するバリア特性が与えられる。塗布された水溶液の層は、乾燥ケイ酸ナトリウム層のみと比較した場合、乾燥して不水溶性層または低い割合で水に溶ける層を生じるように見える。画像の耐水性および耐摩擦性を改善する方法が「ワンポット」法であり、これにより、単一の被覆作業のみを必要とする点で利点がある。
【0022】
例えば、酸化亜鉛など、水溶性というよりは水に分散する成分をさらに使用することも可能であり、この場合、周知の手段で水に分散する追加成分をケイ酸ナトリウム溶液に分散させ、結果的に得られる分散体を基材に塗布し、乾燥させ、任意にセットする。この方法もやはり「ワンポット」法に相当する。
【0023】
上記の「ワンポット」法とは対照的に、ケイ酸ナトリウム溶液および追加成分(例えば、メタホウ酸ナトリウムまたは酸化亜鉛)の溶液/分散体は、別々に塗布可能である。例えば、最初にケイ酸ナトリウム溶液を塗布してから乾燥させ、続いて追加成分の溶液/分散体を塗布してから乾燥させてもよい。代替案としては、最初に追加成分の溶液/分散体を塗布してから乾燥させ、続いてケイ酸ナトリウム溶液を塗布し、その後乾燥させ、任意にセットしてもよい。
【0024】
また、充填剤、顔料、エネルギー移動剤(energy transfer agent)、染料、重合体、張力活性剤(tensioactive materials)、および蛍光増白剤(optical brightening agents)などの添加剤を本発明の水溶液に加えることが可能である。例えば、水溶液のレオロジーを制御し、これにより被覆および/または印刷プロセスを促進するために、または、被覆される対象物への浸透および拡散を制御するために、適した重合体を加えることが可能である。例えば、包装フィルム、コート紙、および、高度にサイジング処理された紙など、低表面エネルギー担体(low surface energy supports)の湿潤を補助するために、張力活性剤を使用することが可能である。
【0025】
ここで、上記の発明を少なくとも以下の例1、2、6および7により説明する。
【0026】
例1
RK2.5巻線被覆棒(RK2.5 wire wound coating bar)を使用して、様々な水溶性塩溶液を別々のコピー用紙上に単独で被覆し、この被覆を温風で乾燥させた。外見上、結果的に得られた用紙のすべてが被覆していない紙の基材に類似していた。
【0027】
10600nmの赤外線照射を行うビデオジェット社製(Videojet)CO2ダイオード10Wスクライビングレーザーを使用して像様を露光した場合、用紙には60乃至40%のレーザー出力で暗色テキスト画像が生じた。30%のレーザー出力では、茶色がかった色のテキスト画像が得られた。材料および結果を表1に示す。
【表1】

【0028】
対照試験では、コピー用紙自体がレーザー露光時に僅かにイメージング特性を有することを示し、60%乃至30%の出力で茶色がかった色の画像を生じた。これらの画像は、上記の表で例示された画像色よりも薄色であった。第2の対照試験においては、R2.5巻線被覆棒を使用してコピー用紙を脱イオン水で被覆し、続いて乾燥させた。レーザー露光時の外見および画像の鮮明さ(boldness)は、被覆されていない用紙で得られたものと同様であった。酢酸水溶液への浸水時にガスが発生することで確認されるように、使用したコピー用紙は炭酸カルシウムで満たされていた。
【0029】
表1の結果は、塩化ナトリウム(強酸のナトリウム塩)が微かなセピア色の画像を生じ、一方で弱酸のアルカリ金属塩が暗色画像を生じたことを示している。メタホウ酸ナトリウムは黒色画像を生じた。
【0030】
例2
様々な塩の水溶液が脱イオン水中に準備された。そして、RK2.5巻線被覆棒を使用して、これらの溶液を別々のコピー用紙上に単独で被覆し、この被覆を温風で乾燥させた。外見上、結果として得られた用紙のすべてが被覆されていない紙の基材に類似していた。
【0031】
10600nmの赤外線照射を行うビデオジェット社製CO2ダイオード10Wスクライビングレーザーを使用して像様を露光した場合、一部の用紙には60乃至40%のレーザー出力で暗色テキスト画像が生じた。30%のレーザー出力では、茶色がかった色のテキスト画像が得られた。材料および結果を表2に示す。
【表2】

【0032】
上記結果は、硫酸ナトリウムが所望の画像強度を提供していないことを示している。これは、硫酸ナトリウムが強酸のナトリウム塩であるからである。所望の強度を示していない他の化合物は、三リン酸五ナトリウムおよび(僅かに酸性の溶液を形成する)トリメタリン酸ナトリウムであった。三リン酸五ナトリウムがアルカリ溶液を形成するが所望の強度を示していないことに対する合理的解釈は、三リン酸五ナトリウムがレーザー露光時に加水分解してリン酸イオンを放出し得るということである。
【0033】
例3
メタケイ酸ナトリウムは強アルカリであるので、本発明の一部を構成しない。30%w/wのメタケイ酸ナトリウム溶液(オルドリッチ社:Aldrich)を水中に準備した。RK2.5巻線被覆棒を使用して、この溶液を白色コピー用紙上に被覆した。温風で乾燥させ、斑な黄色被覆が得られた。
【0034】
ビデオジェット社製CO210Wスクライビングレーザーを使用して像様を露光した場合、用紙は50%乃至20%のレーザー出力で黒色がかった色のテキスト画像を生じた。濃度30%w/wのメタケイ酸ナトリウムを使用して適した画像強度を得ることができるが、外見上、コート紙は被覆されていない紙の基材に類似していない。
【0035】
例4
メタケイ酸ナトリウムは強アルカリであるので、本発明の一部を構成しない。10%w/w、5%w/wおよび1%w/wのメタケイ酸ナトリウム溶液を生じるために、30%w/wのメタケイ酸ナトリウム水溶液を脱イオン水で希釈した。そして、RK2.5巻線被覆棒を使用して、これらの溶液を別々のコピー用紙上に単独で被覆し、これらの被覆を温風で乾燥させた。外見上、結果的に得られた用紙は被覆されていない紙の基材に類似していた。
【0036】
10,600nmの赤外線照射を行うビデオジェット社製CO210Wスクライビングレーザーを使用して像様を露光した場合、10%w/wおよび5%w/wのメタケイ酸ナトリウム溶液を使用して形成された用紙は、50%乃至30%の出力で黒色がかった色のテキスト画像を生じたが、20%の出力では画像が茶色であった。1%w/w溶液を使用して形成された用紙は、50%の出力で茶色の画像を生じた。したがって、10%w/w、5%w/wおよび1%w/wのメタケイ酸ナトリウムで生成した画像は、低いレーザー出力で所望の強度レベルを示していない。
【0037】
例5
水酸化ナトリウムは強アルカリであるので、本発明の一部を構成しない。20%w/wの水酸化ナトリウム水溶液を脱イオン水中に準備した。RK2.5巻線被覆棒を使用して、これを白色コピー用紙上に被覆した。鮮黄色の用紙表面を生じるために温風乾燥させ、結果的に黄色の被覆が得られた。
【0038】
10,600nmの赤外線照射を行うビデオジェット社製CO210Wスクライビングレーザーを使用して像様を露光した場合、用紙は60%乃至40%のレーザー出力で黒色がかった色のテキスト画像を生じた。30%のレーザー出力では、茶色がかった色のテキスト画像が得られた。したがって、水酸化ナトリウムは、被覆されていない用紙に外見上類似するコート紙を提供することも、低レーザー出力で所望の強度レベルを提供することもない。
【0039】
例6 「ワンポット」ケイ酸ナトリウムおよびメタホウ酸ナトリウムシステム
変数の効果、即ち、(被覆棒による)被覆重量および画像の耐摩擦性および耐湿性に対するメタホウ酸ナトリウム対ケイ酸ナトリウム溶液の質量比が分析された。使用したケイ酸ナトリウム溶液はオルドリッチ社から得たものである。その化学式は、27%のSiO2を含有するNa2Si37であった。
【0040】
1:1w/wのオルドリッチ社製ケイ酸ナトリウム溶液の10g分量において:脱イオン水は、独立して溶解させたメタホウ酸ナトリウム(オルドリッチ)0g(対照群)、0.25g、0.35g、0.4g、0.5gおよび1.0gであった。RK被覆棒No.1.2および2.5を使用して、結果的に得られた溶液をコピー用紙にそれぞれ被覆し、これらの用紙を温風で乾燥させた。
【0041】
No.1被覆棒による被覆では、画像の耐湿性が一様に乏しいことが判明したが、メタホウ酸ナトリウムの付加レベルの増加に伴い、画像の耐摩擦性を改善させた。No.2.5被覆棒による被覆では、全てにおいて、耐湿性がメタホウ酸の高い付加レベル(具体的には0.35g、0.40g、0.5gおよび1.0g)で改善され、一方で良好な画像の耐摩擦性が得られた。特に、メタホウ酸ナトリウムの高い付加レベルで良好な耐摩擦性および相当のCO2レーザー画像の耐湿性が得られたという点で、No.2被覆棒による被覆は2.5被覆棒のシリーズと比較しても遜色が無かった。
【0042】
このように、より大きな被覆重量が画像の物理的耐性を改善し、一方で、メタホウ酸の付加レベルの増加が、2および2.5被覆棒によるコート紙の画像の耐水性を改善した。
【0043】
黒色画像の形成により測定されるように、用紙のレーザー感光性もまた、2.5被覆棒による被覆層に対して随分良い結果が得られ、メタホウ酸の付加レベルの増加に伴い、画像の黒さが増した。
【0044】
ケイ酸ナトリウム/メタホウ酸ナトリウムの溶液が顕微鏡用スライドに塗布され、これを50%w/wのケイ酸ナトリウム対照群のスライドと並べて90℃で2時間乾燥させた。そして、静止試験において、乾燥させたこれらのスライドをそれぞれ20分間、脱イオン水に部分的に浸した。その後、スライドを取り除き、排水し、55℃で2時間乾燥させた。
【0045】
目視検査では、ケイ酸ナトリウム層の対照群は一部が溶解し、表面崩壊を示した。一方、実験サンプルは、メタホウ酸レベルの増加に伴い、溶解および表面崩壊の著しい低下を示した。1gのメタホウ酸ナトリウムを含むサンプルは、乾燥時にひび割れて、脆性ガラス(brittle glass)の形成を示すが、これは、メタホウ酸の架橋または連鎖がケイ酸塩を拡大する場合に予想されることである。結果として、メタホウ酸の付加レベルの増加に伴い、乾燥させた層の耐水性が徐々に増加することが示されている。
【0046】
例7 上塗りされたケイ酸ナトリウムおよびメタホウ酸ナトリウムシステム
2.5RK被覆棒を使用して、10%w/wのメタホウ酸ナトリウム溶液をコピー用紙に塗布し、温風で乾燥させた。No.1RK被覆棒を使用して、この上にケイ酸ナトリウム溶液(オルドリッチ社)を上塗りした。
【0047】
非上塗りの対照群と比較した場合、結果として得られた強化用紙は、60乃至40Wで大きく改善された耐摩擦性および耐湿性を備えた黒色画像を生じる10WCO2(10,600nm)赤外線スクライビングレーザーに対して感光性を示した。
【0048】
例8
脱イオン水(50ml)中の20%w/wのメタホウ酸ナトリウム溶液を水溶性アクリル分散剤製品UH−5000(50ml(例えば、スコットベイダー社))と混合した。RK2.5巻線被覆棒を使用して、インク配合物(ink formulation)を通常のトップライナー(natural top liner)に垂らした。この被覆を温風で乾燥させた。
【0049】
ビデオジェット社製CO210Wスクライビングレーザーを使用して像様を露光した場合、基材は60%乃至30%のレーザー出力で黒色がかった色のテキスト画像を有した。
【0050】
例9
メタホウ酸ナトリウム(10g)を脱イオン水(70g)に溶解させた。この溶液にリン酸水酸化銅(20g)を加えた。そして、この混合物をイーガートーランス社(Eiger-Torrance)のビードミルで15分間、4000rpmで粉砕した。RK2.5巻線被覆棒を使用して、結果的に得られたインクを複数のコピー用紙上に垂らし、温風で乾燥させた。
【0051】
そして、963nmダイオードレーザーと1066nm繊維レーザーを使用して、用紙をイメージング処理した。なお、両レーザーを3.65Wの出力で操作した。
【0052】
両レーザーにより、紙面に読み取り可能な黒色テキスト画像を生じることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の白色または無色の溶液で基材を被覆することと、
マーキングされる前記基材の複数領域を、前記複数領域が変色するように照射することと、を含み、前記基材は多糖類系材料を有する、基材をマーキングするための方法。
【請求項2】
前記白色または無色の溶液は、水溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩の水溶液である、請求項1に係る方法。
【請求項3】
前記多糖類系材料はセルロース系材料である、請求項1または2に係る方法。
【請求項4】
前記水溶性塩は、アルカリ金属の二成分金属塩である、請求項1から3のいずれかに係る方法。
【請求項5】
前記水溶性塩は、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸カリウムである、請求項4に係る方法。
【請求項6】
前記水溶性塩は、一成分金属塩である、請求項2または3のいずれかに係る方法。
【請求項7】
前記水溶性塩は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、または、二酢酸カルシウムである、請求項6に係る方法。
【請求項8】
前記水溶性塩はケイ酸ナトリウムである、請求項7に係る方法。
【請求項9】
前記水溶液または懸濁液は、メタホウ酸ナトリウムまたは酸化亜鉛をさらに含む、請求項8に係る方法。
【請求項10】
前記被覆は、照射前において、自然乾燥または強制的に乾燥させることが可能である、請求項1から9のいずれかに係る方法。
【請求項11】
前記水溶性塩はメタホウ酸ナトリウムである、請求項6に係る方法。
【請求項12】
前記被覆は、自然乾燥または強制的に乾燥させることが可能であり、その後、さらにケイ酸ナトリウムの第2水溶液で被覆され、これらが照射前に行われる、請求項11に係る方法。
【請求項13】
前記多糖類系材料はセルロースである、請求項1から12のいずれかに係る方法。
【請求項14】
前記水溶液は、800乃至10,600nmの波長のレーザー光を吸収する赤外線吸収剤を含む、請求項1から13に係る方法。
【請求項15】
前記赤外線吸収剤は、約1200nmの波長のレーザー光を吸収する、請求項14に係る方法。
【請求項16】
前記赤外線吸収剤は、リン酸水酸化銅または還元混合金属酸化物、または、有機染料または重合体である、請求項14または15に係る方法。
【請求項17】
前記基材は、紙、カード、ボード、ポリマー膜、またはセルロース織物である、請求項1から16のいずれかに係る方法。
【請求項18】
前記基材はアルカリ性サイズ剤を有する、請求項17に係る方法。
【請求項19】
請求項17または18に係る方法によって獲得可能なマーキングされた基材。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかで定義された多糖を有する基材のマーキングにおける使用に適した、請求項1から19のいずれかで定義された水溶性アルカリまたは弱酸のアルカリ土類金属塩を備えた、インク配合物または被覆。

【公表番号】特表2009−512574(P2009−512574A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536131(P2008−536131)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003945
【国際公開番号】WO2007/045912
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507055925)データレース リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
【Fターム(参考)】