説明

基板に貼付されたシート部材のトリミング装置

【課題】基板の周縁からはみ出た余剰部と面取り部への付着部の切除を安価に実施できるうえ、装置の設置面積を狭くでき、しかも作業時間を短縮できるようにする。
【解決手段】基板に被着されたシート部材の周縁に生じる余剰部を切除するトリミング装置である。作業台上面に沿って一方向へ移動できる支持用移動台と、支持用移動台に設けた、一方向と直交する他方向へ移動できるトリミングユニット(10)とを備える。トリミングユニット(10)は、作業台上面と直交する回動軸心(18)周りに回動できる支持部本体(15)を備える。支持部本体(15)は旋回部(16)を介して切除具(17)を支持する。切除具(17)は、支持用移動台とトリミングユニット(10)の移動および支持部本体(15)の回動により基板の周縁に沿って移動する。旋回部(16)は、切除具(17)の移動方向に沿った旋回中心(25)周りに、切除具(17)とともに旋回できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明ガラス等の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置に関し、さらに詳しくは、基板の周縁からはみ出た余剰部とその周縁に沿った面取り部への付着部とを1台のトリミング装置で切除することで、安価に実施できるうえ装置全体の設置面積を狭くでき、しかも作業時間を短縮することができる、基板に貼付されたシート部材のトリミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換モジュールはガラス基板の片面に接着層を介してバックシートが貼付されているが、このバックシートはそのガラス基板の周囲からはみ出た状態に貼付されたのち、そのはみ出た余剰部が接着剤層とともにカッター等の切除具で切除される。この余剰部を切除するトリミング装置には、従来、作業台の上面に沿って一方向へ移動可能に設けられた支持用移動台と、この支持用移動台に前記一方向と直交する他方向へ移動可能に設けられたトリミングユニットとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記の従来のトリミング装置では、上記のトリミングユニットが上記の作業台上面と直交する回動軸心周りに回動可能な支持部本体を備えており、この支持部本体に、上記の余剰部を切除する切除具が支持してある。そして、作業台上に基板が載置されたのち、その基板の周縁部が所定の位置検出手段で検出され、その検出結果に基づき、上記の支持用移動台とトリミングユニットの移動および上記の支持部本体の回動により、上記の切除具が上記の検出された基板の周縁に沿って移動され、この切除具により上記の余剰部が切除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−320069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の基板は、上記のトリミング処理を施したのち周縁に枠体を嵌める場合がある。このため、この枠体を嵌め易いように、上記のバックシートを貼付した片面の周縁には、側面との間に傾斜面などからなる面取り部を形成してある場合が多い。この場合、上記の従来のトリミング装置で基板の周縁からはみ出た余剰部を切除すると、切除後のバックシートの周縁部は、上記の面取り部に付着した状態となる。このため、この基板の周縁に枠体を装着する際、この面取り部に付着しているバックシートの周縁部に枠体が引っ掛かって嵌めにくいばかりか、バックシートの周縁部が捲れて不良品となる虞もある。
【0006】
これを解消するため、上記の面取り部に付着したバックシートの周縁部も、上記のトリミング装置で切除することが考えられる。しかしながらこのトリミング装置の切除具は、基板の側面に沿った所定の姿勢、例えば垂直姿勢に保持されて上記の支持部本体に固定されているので、上記の傾斜した面取り部に付着するバックシートの周縁部を切除することができない。そこで従来では、上記のトリミング装置とは別の、第2のトリミング装置を用いて、この第2トリミング装置の切除具を上記の面取り部の傾斜面に適合するように、例えば45度などに傾斜させ、上記のトリミング装置で基板の側面からはみ出た余剰部を切除したのち、その基板を上記の第2トリミング装置へ移載し、次いで面取り部に付着している周縁部をその第2トリミング装置の切除具で除去している。
【0007】
しかしながら、このように2台のトリミング装置を用いる場合は設備コストが高価につくうえ、設備全体の設置面積を広く確保する必要があり、また、上記の基板を第2トリミング装置の作業台上へ移載しなければならないうえ、その移載した基板の周縁部を再度検出しなければならず、作業時間の短縮が容易でない問題もあった。
【0008】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、基板の周縁からはみ出た余剰部とその周縁に沿った面取り部への付着部とを1台のトリミング装置で切除することで、安価に実施できるうえ装置全体の設置面積を狭くでき、しかも作業時間を短縮することができる、基板に貼付されたシート部材のトリミング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図7に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は基板に貼付されたシート部材のトリミング装置に関し、所定形状の基板(4)の一面側に被着されたシート部材(5)の周縁に生じる、上記の基板(4)からはみ出た余剰部(6)を切除するトリミング装置であって、作業台(2)の上面(2a)に沿って一方向へ移動可能に設けられた支持用移動台(9)と、この支持用移動台(9)に前記一方向と直交する他方向へ移動可能に設けられたトリミングユニット(10)とを備え、上記のトリミングユニット(10)は、上記の作業台上面(2a)と直交する回動軸心(18)周りに回動可能な支持部本体(15)を備え、上記の支持部本体(15)は、上記の余剰部(6)を切除する切除具(17)を、旋回部(16)を介して支持しており、上記の切除具(17)は、上記の支持用移動台(9)とトリミングユニット(10)の移動および上記の支持部本体(15)の回動により前記の基板(4)の周縁に沿って移動可能であり、上記の旋回部(16)は、上記の切除具(17)の移動方向に沿った旋回中心(25)周りに、その切除具(17)とともに旋回可能であることを特徴とする。
【0010】
上記の作業台の上面の所定位置に基板が載置されると、上記の支持用移動台とトリミングユニットが移動され、上記の支持部本体が所定位置で回動されて、上記の切除具が基板の周縁に沿って移動される。このとき上記の切除具は、基板の側面に沿った姿勢に、例えば垂直方向の姿勢になっており、この切除具により上記のシート部材の余剰部が切除される。次いで、上記の旋回部が上記の旋回中心周りに面取り部の傾斜角度だけ、例えば45度旋回され、これにより切除具の姿勢が面取り部に沿った傾斜姿勢となる。その後、上記の支持用移動台とトリミングユニットが移動され、上記の支持部本体が所定位置で回動されて、上記の切除具が上記の基板の周縁に沿って再び移動し、これによりシート部材の周縁のうち、基板の面取り部への付着部が切除される。
【0011】
ここで、上記の基板の周縁は、例えば作業台やトリミングユニット等に検出手段を付設しておき、上記のトリミングユニット等の移動に先立って、この検出手段により基板の周縁位置を検出し、その検出結果に基づき、上記の支持用移動台とトリミングユニットの移動および上記の支持部本体の回動を制御すると好ましい。
【0012】
上記の基板は、一面側にシート部材を被着したものであればよく、特定の材質や形状、用途のものに限定されない。例えば、光電変換モジュールに用いられる、片面にバックシートが貼付された四角形状のガラス基板等であってもよいが、熱反射膜等の薄膜を貼付したガラス基板等であってもよい。この基板は透明ガラスに限らず、金属やその他の材質で形成されたものであってもよく、この基板に光電変換要素や電極等を付設したものであってもよい。またこの基板の形状は、周縁に沿って面取り部が形成してあればよく、通常は矩形に形成されるが、四隅が円弧状など滑らかな曲線に形成されたものであってもよく、さらには周縁が曲線からなる、例えば長円形などの形状であってもよい。
【0013】
また上記のシート部材は、上記の余剰部等を上記の切除具で切除できる部材であればよく、特定の材質のものに限定されない。例えば接着性を有するシート部材のみからなる1層構造のものであってもよく、或いは、接着性を有する第1シート部材と、この第1シート部材の表面に被着された耐候性向上のための第2シート部材とからなる2層構造のものであってもよい。これらのシート部材の材質としては、具体的には、例えばシリコン、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブチラール等の透明な合成樹脂が挙げられる。また上記の第2封止部としては、一枚構造のものと積層構造のものがあるが、一枚構造の第2封止部としては、商品名テドラー等のフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等からなるシートが使用され、積層構造の第2封止部としては、前記フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等からなるシートの一面にアルミニューム等の金属フィルムやSiO等の薄膜をラミネートした積層シートであってもよく、アルミニューム合金の薄膜の両面にEVAを積層してなる積層シートや、PETにEVAを積層してなる積層シート等であってもよい。
【0014】
上記の作業台は、上記の基板を搬入・搬出でき、上面の所定位置に基板を保持できるものであればよく、特定の形状や大きさ、構造のものに限定されず、長方形や正方形など、任意の形状にすることができる。但しこの作業台は、上面に沿って上記の基板を容易に移動できるように、移送手段を備えていると好ましく、また、基板を所定位置に固定できる吸着手段等の固定手段を備えると好ましい。上記の移送手段としては、例えば基板を浮上できるように作業台の上面からエアを噴出する構成や、作業台の上面に沿ってコンベアベルトを配置する構成などを挙げることができるが、これらの構成に限定されない。
【0015】
上記の旋回部は、上記の切除具を所定の旋回中心周りに旋回できればよく、特定の構造のものに限定されない。例えば、上記の旋回中心を中心に湾曲した円弧状ガイドと、この円弧状ガイドにそって配置された、例えばタイミングベルトなどのラック部材とを上記の支持部本体に設け、上記の円弧状ガイドで案内されるガイド部と、上記のラック部材に噛み合って回転移動する旋回用ギヤと、この旋回用ギヤを回動する旋回駆動手段とを上記の旋回部に設けてもよい。この場合は、上記の旋回駆動手段で上記の旋回用ギヤを回動すると、上記のガイド部が上記の円弧状ガイドに案内され、上記の旋回部が所定の旋回中心の周りを旋回する。これにより、上記の切除具がこの旋回部と同行して所定の旋回中心の周りを確実に旋回でき、好ましい。なお、上記の円弧状ガイドは、例えばスライドレール等が好ましく用いられ、上記のガイド部は、例えばスライドユニット等が好ましく用いられるが、本発明に用いる円弧状ガイドやガイド部は、これらに限定されない。
【0016】
また上記の支持部本体と旋回部との間には、この旋回部を上記の旋回方向へ移動可能に支持してこの旋回部の姿勢を保持する姿勢保持手段を備えると、この旋回部が旋回してもその姿勢を安定的に保持することができ、この旋回部を介して支持部本体に支持されている上記の切除具の姿勢を、ぐらつくことなく確りと保持できて好ましい。なおこの姿勢保持手段は、支持部本体側に設けて旋回部を支持させてもよく、旋回部側に設けて支持部本体を支持させてもよい。
【0017】
上記の切除具は、上記のシート部材の余剰部を切除できればよく、特定のものに限定されない。例えば、SK材、好ましくは長寿命を期待できるハイス鋼で作られた金属製カッターや、超音波カッター、ホットカッター等を用いることができる。金属製カッターを用いた場合は、アンプ等を用いないので安価に実施できるとともに、切断に伴う発熱を抑制できるので好ましい。また、上記のホットカッターを用いる場合は、そのカッター板の温度は封止部材の材質等によって、例えば100〜700℃の範囲内で任意に設定される。この場合、シート部材の余剰部が切除直後に基板の側面等へ再付着することを防止するためや、シート部材等への熱的影響を防止するために、シート部材と切除具との接触時間を短くするとよく、この観点から切除具の移動速度は100mm/秒以上とすることが望ましい。
【0018】
上記の切除具が金属製カッターである場合など、線状の刃先を備える場合、その刃先を上記の回動軸心と交差させて配置し、上記の旋回中心をこの刃先と上記の回動軸心との交点を通過する位置に設定すると、この回動中心と旋回中心と刃先とが交差する位置に切断ポイントを、即ちこの刃先でシート部材が切断される位置を形成することで、上記の切除具の旋回姿勢や支持部本体の回動に関わらず、常にトリミングユニットに対する所定の位置に上記の切断ポイントを維持できる。この結果、上記の支持用移動台とトリミングユニットの移動と支持部本体の回動により、上記の切除具を確実に基板の周縁に沿って移動させることができて、好ましい。なお、上記の刃先の配置位置や旋回中心の設定位置には、上記の切除具の撓み代程度の誤差があってもよい。
【0019】
また上記の旋回部は、1個の切除具のみを備えたものであってもよいが、上記の回動軸心を挟んで互いに進行方向の反対側にそれぞれ切除具を備え、各切除具は、それぞれの刃先を突出させた切除姿勢と、刃先を後退させた後退姿勢とに切換え可能であると、基板の周縁に沿って余剰部等を切除する際、一方の切除具で周縁の中間部から一方の端部までに亘って切除したのち、その一方の切除具を後退姿勢に切換えるとともに、他方の切除具を切除姿勢に切換え、トリミングユニットの移動方向を反転させることで、その周縁の中間部から他方の端部までに亘って切除させることができる。即ち、支持部本体を回動軸心周りに180度回動させて切除具の向きを変更する必要がなく、特に切除具が面取り部への付着部を切除する場合は、その傾斜姿勢を反対側に傾斜させる必要がないので、基板の周縁の余剰部や面取り部への付着部を容易に切除できて好ましい。
【0020】
なお上記の切除具は、基板の側面に沿って配置してもよいが、例えばこの側面に対し30度以下のあおり角を形成して配置してもよく、この場合は、切除された余剰部を基板から離隔させるスクレーパとして利用できる利点がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置は、上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0022】
(1)上記の切除具は、旋回中心周りに旋回することで、基板の側面に沿った姿勢と面取り部に沿った傾斜姿勢とに切換えることができ、これにより基板の周縁からはみ出た余剰部とその周縁に沿った面取り部への付着部とを1台のトリミング装置で切除でき、安価に実施できるうえ装置全体の設置面積を狭くすることができる。
【0023】
(2)基板の周縁からはみ出た余剰部とその周縁に沿った面取り部への付着部とを1台のトリミング装置で切除できるので、前記の従来技術と異なって、2台のトリミング装置間で基板を移載させる必要がないうえ、移載後の基板の周縁を再度検出する必要がなく、トリミング作業全体の作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態を示す、トリミング装置の平面図である。
【図2】本発明の実施形態の、トリミングユニットの断面図である。
【図3】本発明の実施形態の、支持部本体の正面図である。
【図4】本発明の実施形態の、支持部本体の縦断側面図である。
【図5】本発明の実施形態の、旋回部の正面図である。
【図6】本発明の実施形態の切除具の作動を示し、図6(a)は切除具で余剰部を切除する際の基板の要部の断面図であり、図6(b)は切除具で面取り部への付着部を切除する際の基板の要部の断面図である。
【図7】本発明の実施形態の、余剰部を切除している切除具の先端部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、このトリミング装置(1)は、平面視で略矩形状に形成された作業台(2)を備えており、この作業台(2)の長手方向に沿ってガイドレール(3)が設けてある。この作業台(2)には、上面(2a)の所定位置に光電変換モジュール等の基板(4)が載置される。この基板(4)は、例えば透明ガラスから構成され、周縁に沿って側面(4a)との間に面取り部(4b)が形成してあり、表面にシート部材(5)が貼付してある。そのシート部材(5)の周縁部には、上記の側面(4a)よりも外側にはみ出た余剰部(6)が形成してある。
【0026】
上記の作業台(2)の上面(2a)には、多数のエア噴出口(7)が開口してあり、このエア噴出口(7)から噴出されるエアにより、上記の基板(4)が浮上され、容易に移動できるようにしてある。また上記の上面(2a)には真空吸着部(8)が所定間隔をおいて設けてあり、上記の基板(4)はこの真空吸着部(8)による吸着で所定位置へ移動不能に保持されている。この真空吸着部(8)は、基板(4)を移動させる際は吸着を解除するとともに、上記の上面(2a)より下方に後退して、基板(4)の移動を阻害しないようにしてある。
【0027】
上記の作業台(2)の上方には、上面(2a)に沿って移動可能な支持用移動台(9)が設けてあり、この支持用移動台(9)は上記のガイドレール(3)により一方向(X方向)へ移動可能に構成してある。この支持用移動台(9)にはトリミングユニット(10)が設けてあり、このトリミングユニット(10)は、前記のX方向とは直交する他方向(Y方向)へ、支持用移動台(9)に沿って移動可能に構成してある。
【0028】
図2に示すように、上記のトリミングユニット(10)は下面を開放したカバー(11)と、このカバー(11)の上方に配置されたモータ(12)と、このモータ(12)にギヤ部(13)を介して連動連結され上記のカバー(11)の上壁を貫通する回動軸(14)と、この回動軸(14)の下端に固定された支持部本体(15)と、この支持部本体(15)に支持された旋回部(16)とを備える。この旋回部(16)には、上記の余剰部(6)を切除する一対の切除具(17)が付設してあり、従ってこれらの切除具(17)は、この旋回部(16)を介して上記の支持部本体(15)に支持されている。上記の回動軸(14)の回動軸心(18)は、上記の作業台上面(2a)と直交しており、この回動軸(14)の回動により、上記の支持部本体(15)は上記の回動軸心(18)周りに回動する。
【0029】
図3と図4に示すように、上記の支持部本体(15)は、上記の回動軸(14)に固定した支持板部(19)と、これに固定した円弧状のガイド支持部(20)とを備えている。このガイド支持部(20)には、円弧状ガイド(21)と、ラック部材であるタイミングベルト(22)とが設けてあり、このタイミングベルト(22)は、上記の円弧状ガイド(21)に沿って配置された受け部材(23)で支持され、両端が張設具(24)に固定してある。上記の円弧状ガイド(21)は、例えばスライドレールが用いられ、上記の切除具(17)の移動方向に沿った旋回中心(25)を中心に湾曲しており、この旋回中心(25)は上記の回動軸心(18)と直交させてある。
【0030】
一方、上記の旋回部(16)には、上記の円弧状ガイド(21)で案内されるスライドガイド等のガイド部(26)と、上記のタイミングベルト(22)と噛み合って回転し移動する旋回用ギヤ(27)と、この旋回用ギヤ(27)の両側に配置された一対のテンションプーリ(28)と、上記の旋回用ギヤ(27)を回転させる旋回駆動手段(29)とが設けてある。上記のタイミングベルト(22)は上記の旋回用ギヤ(27)とテンションプーリ(28)との間を通過させてある。このため上記の旋回駆動手段(29)で旋回用ギヤ(27)を回転させると、旋回用ギヤ(27)がタイミングベルト(22)の張設方向へ移動し、旋回部(16)に固定されている上記のガイド部(26)が上記の円弧状ガイド(21)で案内される。これにより旋回部(16)全体が、上記の旋回中心(25)周りに、例えば30度や45度、或いは60度等の所定角度だけ旋回されて、上記の切除具(17)が、図6(a)に示す垂直姿勢(V)と、図6(b)に示す所定角度(α)傾斜した傾斜姿勢(W)とに切り換えられる。
【0031】
また図4に示すように、上記の旋回部(16)の下端には一対のロールからなる姿勢保持手段(30)が設けてあり、この姿勢保持手段(30)により上記のガイド支持部(20)の下端を挟持してある。なおこのガイド支持部(20)には近接センサ(31)が固定してあり、上記の姿勢保持手段(30)に付設した指示部材(32)を検出することで、旋回部(16)が所定位置まで旋回移動したことが検出される。
【0032】
上記の各切除具(17)は金属製カッターからなり、図2と図5に示すように、上記の回動軸心(18)を挟んで互いに進行方向の反対側に配置してある。また各切除具(17)は、保持部(33)に設けたシリンダ部(34)の駆動により、それぞれの刃先(35)を上記の回動軸心(18)よりも反対側へ突出した切除姿勢(C)と、その回動軸心(18)よりも手前側へ後退した後退姿勢(B)とに切換えることができる。
【0033】
上記の切除具(17)は、上記の刃先(35)が線状となっており、上記の切除姿勢(C)ではこの刃先(35)が上記の回動軸心(18)と交差する状態となっている。さらに上記の旋回部(16)の旋回中心(25)は、この刃先(35)と上記の回動軸心(18)との交点を通過する位置に設定してある。この交差位置が、この刃先(35)で上記のシート部材(5)から余剰部(6)を切除する切断ポイント(P)に設定されている。この切断ポイント(P)は回動軸心(18)上にあるので、上記の支持用移動台(9)とトリミングユニット(10)が移動し、上記の支持部本体(15)が回動しても、上記のトリミングユニット(10)に対し同じ相対的位置に維持される。従って、このトリミングユニット(10)を前記の基板(4)の周縁に沿って移動させることで、上記の切除具(17)の刃先(35)に形成された切断ポイント(P)も、その基板(4)の周縁に沿って移動する。
【0034】
次に、基板に貼付されたシート部材の余剰部等を上記のトリミング装置により切除する手順について説明する。
作業台(2)の上面(2a)に基板(4)が載置されると、最初にその基板(4)の周縁を図示しない検出手段で検出し、次いでその検出された周縁にそって、図示しない制御装置で上記の支持用移動台(9)とトリミングユニット(10)及び上記の支持部本体(15)を制御し、上記の切除具(17)を基板(4)の周囲に沿って一周させる。なお、上記の検出手段は、例えば上記の基板(4)の四隅の近傍で、それぞれ作業台(2)に固定したものであってもよく、この場合は基板(4)の載置位置を素早く検出できて好ましい。しかしこの検出手段は、例えば上記のトリミングユニット(10)やその近傍に付設して、このトリミングユニット(10)とともに基板(4)の概略周囲に沿って一周させることで、その基板(4)の周縁を検出してもよい。この場合は、検出手段を基板の周縁に沿って移動させるので、正確に検出できて好ましい。
【0035】
例えば図1においてトリミングユニット(10)を時計回りに移動させる場合、支持用移動台(9)の移動によりそのトリミングユニット(10)を、基板(4)の一方の長辺に沿ってX方向へ移動させ、この基板(4)の長辺からはみ出ている余剰部(6)を上記の切除具(17)で切除する。このとき、回動軸心(18)よりも移動方向下手側の、一方の切除具(17)が切除姿勢(C)に切換えてあり、移動方向上手側の、他方の切除具(17)が後退姿勢(B)に切換えてある。そしてこの切除姿勢(C)の切除具(17)は、図6(a)に示すように基板(4)の側面に沿った垂直姿勢(V)に保持させてある。この切除具(17)は、上記の余剰部(6)を確実に切除するため、基板(4)の側面(4a)に押し当てた状態にされ、やや撓む場合がある。このためこの切除具(17)による切除は、切除開始位置で基板(4)に追突しないように、基板(4)の各辺の中間部から開始され、この中間部から下手側端部までが切除される。
【0036】
なおこの実施形態では、例えば図6(a)に示すように、上記の基板(4)にはシート部材(5)との間に光電変換要素(36)が付設してあり、また上記のシート部材(5)は、接着性を有する第1シート部材(5a)とこの第1シート部材(5a)に被着された第2シート部材(5b)とからなる2層構造になっている。しかし本発明ではこの実施形態のものに限定されず、基板の片面にシート部材が直接貼付されたものであってもよく、上記のシート部材は1層のみや3層以上で構成されたものであってもよい。
【0037】
上記の長辺に沿った移動が終了すると、上記の支持部本体(15)を回動軸心(18)周りに90度回動し、上記の切除具(17)の刃先(35)を基板(4)の短辺に沿った方向に向ける。次いで、トリミングユニット(10)を支持用移動台(9)に沿ってY方向へ移動させ、上記の長辺の場合と同様、その中間部から下手側端部までに亘って余剰部(6)を切除する。この短辺に沿った移動が終了すると、上記と同様の手順で残りの他の長辺と短辺とについても同様に、支持部本体(15)を回動させたのちトリミングユニット(10)を移動させ、切除具(17)で残りの各辺の下手側部分の余剰部(6)を切除する。
【0038】
上記の操作により、基板(4)の各辺の、時計回りの下手側部分の余剰部(6)が全て切除され、上記のトリミングユニット(10)は最初のコーナー部に戻る。この位置で上記の一方の切除具(17)を後退姿勢(B)に切換え、他方の切除具(17)を切除姿勢(C)に切換える。そして、移動方向は上記とは逆の反時計回りではあるが、上記の手順と同様、上記の支持用移動台(9)とトリミングユニット(10)及び上記の支持部本体(15)を制御し、上記の切除具(17)を基板(4)の周囲に沿って移動させ、この切除具(17)で各辺に残っている余剰部(6)をそれぞれ切除する。この余剰部(6)の切除が終了すると、上記のトリミングユニット(10)は再び最初のコーナー部に戻る。
【0039】
次に、上記の一方の切除具(17)を切除姿勢(C)に切換え、他方の切除具(17)を後退姿勢(B)に切換え、上記の旋回部(16)を上記の旋回中心(25)周りに所定角度(α)、例えば45度旋回させる。これにより上記の切除具(17)は、例えば図6(b)に示すように基板(4)の面取り部(4b)に沿った傾斜姿勢(W)となる。そして、上記の余剰部(6)を切除する場合と同様に、上記の支持用移動台(9)とトリミングユニット(10)及び上記の支持部本体(15)を制御して、上記の切除具(17)を基板(4)の周縁に沿って時計回りに一周させ、次いで、一方の切除具(17)を後退姿勢(B)に切換え、他方の切除具(17)を切除姿勢(C)に切換えて、反時計回りに一周させる。
【0040】
上記の操作により、シート部材(5)のうちの、基板(4)の各辺の面取り部(4b)へ付着した付着部(37)が切除具(17)で切除される。このとき、図7に示すように、上記の回動軸心(18)と切除具(17)の刃先(35)と旋回中心(25)とが、切断ポイント(P)で一致させてあるので、上記の支持部本体(15)を回動させた場合や旋回部(16)を所定角度(α)旋回させた場合も、この切断ポイント(P)は移動することがない。このため、この切断ポイント(P)上に切除具(17)の刃先(35)が常に位置しており、上記のトリミングユニット(10)を移動させるだけで、この切断ポイント(P)を基板(4)の周縁に沿って移動でき、上記の切除具(17)で上記の余剰部(6)や面取り部(4b)への付着部(37)が確実に切除される。なお上記の旋回中心(25)は、図7に示すように、基板(4)の側面(4a)と面取り部(4b)との間の稜線に略一致させてあると好ましい。
【0041】
上記の実施形態で説明したトリミング装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や寸法、構造、材質などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0042】
例えば、上記の実施形態では、略矩形の作業台を用いたが、この作業台は正方形や他の形状であってもよく、またベルトコンベア等を備えたものであってもよい。また上記の実施形態では、支持用移動台をガイドレールに沿って移動させたが、このガイドレールは作業台のいずれの部位に形成したものであってもよく、或いは他の手段で支持用移動台を移動させてもよい。
【0043】
また上記の実施形態では、上記の旋回部を旋回させる構成として、タイミングベルトとこれに噛み合う旋回用ギヤ、及び円弧状スライドレールとスライドガイドとを用いたので、簡単な構造で旋回部を確実に旋回できる利点がある。しかし本発明では、この旋回部を旋回中心の周りに旋回できればよく、例えば上記のタイミングベルトに代えて円弧状のラックギヤを用いるなど、上記の構成に限定されない。
【0044】
さらに上記の実施形態では金属製カッターからなる一対の切除具を用いたが、本発明では1個の切除具のみを用いてもよい。また上記の切除具は超音波カッターなど、金属製カッター以外のものであってもよい。
上記の基板は矩形に限定されず、光電変換モジュール以外の、例えば熱線反射膜等を貼付した板ガラスなど、他の基板であってもよく、上記のシート部材は一層からなるものであってもよく、それらの材質は特定のものに限定されないことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の、基板に貼付されたシート部材のトリミング装置は、基板の周縁からはみ出た余剰部とその周縁に沿った面取り部への付着部とを1台のトリミング装置で切除することで、安価に実施できるうえ装置全体の設置面積を狭くでき、しかも作業時間を短縮することができるので、光電変換モジュール等の基板について貼付されたシート部材のトリミング装置として特に好適であるが、他の用途の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置としても好適である。
【符号の説明】
【0046】
1…トリミング装置
2…作業台
2a…作業台(2)の上面
4…基板
5…シート部材
6…余剰部
9…支持用移動台
10…トリミングユニット
15…支持部本体
16…旋回部
17…切除具
18…回動軸心
21…円弧状ガイド
22…ラック部材(タイミングベルト)
25…旋回中心
26…ガイド部
27…旋回用ギヤ
29…旋回駆動手段
30…姿勢保持手段
35…刃先
B…後退姿勢
C…切除姿勢
X…一方向
Y…一方向と直交する他方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の基板(4)の一面側に被着されたシート部材(5)の周縁に生じる、上記の基板(4)からはみ出た余剰部(6)を切除するトリミング装置であって、
作業台(2)の上面(2a)に沿って一方向へ移動可能に設けられた支持用移動台(9)と、この支持用移動台(9)に前記一方向と直交する他方向へ移動可能に設けられたトリミングユニット(10)とを備え、
上記のトリミングユニット(10)は、上記の作業台上面(2a)と直交する回動軸心(18)周りに回動可能な支持部本体(15)を備え、
上記の支持部本体(15)は、上記の余剰部(6)を切除する切除具(17)を、旋回部(16)を介して支持しており、
上記の切除具(17)は、上記の支持用移動台(9)とトリミングユニット(10)の移動および上記の支持部本体(15)の回動により前記の基板(4)の周縁に沿って移動可能であり、
上記の旋回部(16)は、上記の切除具(17)の移動方向に沿った旋回中心(25)周りに、その切除具(17)とともに旋回可能であることを特徴とする、基板に貼付されたシート部材のトリミング装置。
【請求項2】
上記の支持部本体(15)は上記の旋回中心(25)を中心に湾曲した円弧状ガイド(21)と、この円弧状ガイド(21)にそって配置されたラック部材(22)とを備え、
上記の旋回部(16)は上記の円弧状ガイド(21)で案内されるガイド部(26)と、上記のラック部材(22)と噛み合って回転移動する旋回用ギヤ(27)と、この旋回用ギヤ(27)を回動する旋回駆動手段(29)とを備える、請求項1に記載の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置。
【請求項3】
上記の支持部本体(15)と旋回部(16)との間に、この旋回部(16)を上記の旋回方向へ移動可能に支持してこの旋回部の姿勢を保持する姿勢保持手段(30)を備える、請求項1または請求項2に記載の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置。
【請求項4】
上記の切除具(17)は線状の刃先(35)を備え、その刃先(35)は上記の回動軸心(18)と交差させて配置してあり、上記の旋回中心(25)はこの刃先(35)と上記の回動軸心(18)との交点を通過する位置に設定してある、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置。
【請求項5】
上記の旋回部(16)は、上記の回動軸心(18)を挟んで互いに進行方向の反対側にそれぞれ切除具(17)を備え、各切除具(17)は、それぞれの刃先(35)を突出させた切除姿勢(C)と、その刃先(35)を後退させた後退姿勢(B)とに切換え可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の基板に貼付されたシート部材のトリミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143476(P2011−143476A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3576(P2010−3576)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(392030162)株式会社尼崎工作所 (10)
【Fターム(参考)】