説明

基板の製造方法

【課題】放熱性に優れかつ簡単な構造で両面基板として使用できる基板を製造する。
【解決手段】アルミニウム板(55)の少なくとも一方の面の絶縁部となる部分(53)に陽極酸化処理を施し、その陽極酸化処理部分(53)において陽極酸化皮膜(54)を板厚方向に成長させ、陽極酸化皮膜(54)をアルミニウム板(55)に貫通させる陽極酸化処理工程を含み、アルミニウムからなる複数の導電部(51a)(51b)が陽極酸化皮膜からなる絶縁部(51a)(51b)によって電気的に絶縁され、前記導電部(51a)(51b)および絶縁部(51a)(51b)がアルミニウム板(55)の板厚方向に貫いていて、アルミニウム板(55)のいずれか一方の面がチップ搭載面である半導体チップを搭載する基板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた放熱性を有し、かつ半導体チップを表面実装できる基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLEDパッケージは、素子をリードフレーム、セラミック基板、ガラスエポキシ製プリント基板、BT製プリント基板等の配線基板上に載せ、電極をワイヤボンド、はんだ、高放熱性接着剤等で固定したものが一般的であった。
【0003】
また、近年の照明や液晶光源の高出力化によりLEDチップ、あるいは各種半導体チップを搭載したパッケージの発熱量が増大する傾向がある。このため、基板あるいは半導体部品においては、良好な放熱性と、熱応力に対する破断強度が求められている。
【0004】
LEDパッケージの放熱性を高める手段として、セラミック基板の使用やリードフレームの厚さを厚くすることは一般に行われている。
【0005】
特許文献1は、セラミック製絶縁基体上に半導体素子搭載部を有し、絶縁基体の下面に外部電気回路基板が接続パッドを介してろう付される配線基板において、接続パッドの外周縁近傍に所定形状の間隙を設けることにより、ろう付部の破断を防止するようにしたものである。
【0006】
特許文献2に記載された配線基板は、絶縁材中に金属放熱体が基板の上下を貫く態様で埋め込んだものであり、金属板の上下両面に順次ハーフエッチング加工を施して両面から凹部を形成し、これらの凹部内に絶縁性樹脂を充填することにより、金属板を上下方向に貫く絶縁層を形成することによって製造される。
【0007】
特許文献3に記載されたLED部品は、セラミック基板に貫通孔を設け、その孔の内部にLEDチップを実装した放熱板をろう付したものである。
【0008】
特許文献4に記載された発光素子搭載用基板は、セラミック粉末とバインダを混合したスラリーで薄板上に形成したグリーンシート上に絶縁層を印刷するとともに配線パターンを印刷し、焼結したものである。
【0009】
また、セラミック基板にLEDチップを搭載したLEDランプには特許文献5、6に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−237529号公報
【特許文献2】特開2008−251671号公報
【特許文献3】特開2007−227728号公報
【特許文献4】特開2008−34513号公報
【特許文献5】特開2007−214471号公報
【特許文献6】特許第4408931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜6の技術には、それぞれに基板の材料や形態に起因して以下のような問題点がある。
【0012】
セラミック基板は樹脂基板よりも高い放熱性能を有しているが、金属よりも放熱性能が劣っている。基板材料として使用されるセラミックのうち、窒化アルミニウムは放熱性に優れているが、白色度が低く光反射率が低いために、LED用基板に使用すると前方に取り出せる光量が低下する。一方、酸化アルミニウムは窒化アルミニウムよりも白色度が高く光反射率も高いが、放熱性が低い。このため、酸化アルミニウム基板が放熱経路になると放熱性能が悪く、発熱量の多いLED用基板としては不利である。
【0013】
LED用セラミック基板の配線用に多く使用される銀ペーストは、バインダーが光と熱によって分解して配線強度が低下するおそれがある。
【0014】
さらに、セラミック基板の切断加工や孔明け加工は、破断しないように加工するには格別の加工技術が必要であるため、加工コストが高くなる。
【0015】
また、リードフレームでは複雑な加工が必要になる等、手間とコストがかかるという問題がある。しかも絶縁層が樹脂で構成されているため、LEDチップとの熱膨張差が大きく、繰り返し使用による熱履歴によって断線を起こすことがある。
【0016】
また、金属基板を、特許文献3のような両面基板に加工するには複雑な加工が必要である。しかも絶縁層が樹脂であるために放熱性が不十分である、また、安価な片面基板では発光面の裏面に電極を設けることができないために、チップを表面実装することができず、チップの実装が複雑になる。また、これらの問題点はLEDチップを搭載したパッケージに限定されるものではなく、種々の半導体チップを搭載したパッケージに共通するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記技術背景に鑑み、放熱性に優れかつ両面基板として使用できる基板を効率良く製造する方法およびその関連技術を提供するものである。
【0018】
即ち、本発明は下記[1]〜[10]に記載の構成を有する。
【0019】
[1]アルミニウム板の少なくとも一方の面の絶縁部となる部分に陽極酸化処理を施し、その陽極酸化処理部分において陽極酸化皮膜を板厚方向に成長させ、陽極酸化皮膜をアルミニウム板に貫通させる陽極酸化処理工程を含み、
アルミニウムからなる複数の導電部が陽極酸化皮膜からなる絶縁部によって電気的に絶縁され、前記導電部および絶縁部がアルミニウム板の板厚方向に貫いていて、アルミニウム板のいずれか一方の面がチップ搭載面である半導体チップを搭載する基板の製造方法。
【0020】
[2]前記陽極酸化処理工程と、
前記陽極酸化処理工程により製作した素材を板厚方向に切断する切断工程とを行い、
複数個の前記基板を製造する前項1に記載の基板の製造方法。
【0021】
[3]前記陽極酸化処理に供するアルミニウム材の表面において、陽極酸化処理部分を除く領域をマスキングし、陽極酸化処理工程後にマスキングを除去する前項1または2に記載の基板の製造方法。
【0022】
[4]前記陽極酸化処理工程において、アルミニウム板の両面に陽極酸化処理を施し、両面から陽極酸化皮膜を成長させ、これらの陽極酸化皮膜を合体させることによって板厚方向に貫通する陽極酸化皮膜を形成する前項1〜3のいずれかに記載の基板の製造方法。
【0023】
[5]前記陽極酸化処理工程において、アルミニウム板の陽極酸化処理部分に凹部を設けて板厚を減肉する前項1〜4のいずれかに記載の基板の製造方法。
【0024】
[6]前記凹部の形成により、アルミニウム板の板厚を、陽極酸化処理を施す1つの面につき200μm以下となるように減肉する前項5に記載の基板の製造方法。
【0025】
[7]前記導電部上に、該導電部とは異なる金属層を形成する前項1〜6のいずれかに記載の基板の製造方法。
【0026】
[8]前記金属層を電解めっきによって形成する前項7に記載の基板の製造方法。
【0027】
[9]前項1〜8のいずれかに記載の方法により製造され、半導体チップを搭載する基板であって、
アルミニウムからなる複数の導電部と、陽極酸化皮膜からなり、これらの導電部を電気的に絶縁する絶縁部とが、チップ搭載面とその対向面との間を貫いていることを特徴とする基板。
【0028】
[10]前項9に記載の基板の導電部に半導体チップが接合されていることを特徴とする半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0029】
上記[1]の記載の基板の製造方法は、陽極酸化処理工程において、アルミニウム板の絶縁部となる部分に板厚方向に陽極酸化皮膜を成長させ、陽極酸化皮膜をアルミニウム板に貫通させることにより絶縁部を形成し、アルミニウムを陽極酸化皮膜からなる絶縁部で分断し、アルミニウムからなる導電部を電気的に絶縁するものである。この方法で製作した基板は、アルミニウム板の板厚が基板の厚みとなり、導電部および絶縁部がチップ搭載面とその対向面との間を貫いている。かかる基板構造により、基板のチップ搭載面において導電部上に半導体チップを接合すると、対向面においてその導電部に電極を接続することができる。従って、基板にスルーホール等の加工を施すことなく両面基板として使用でき、半導体チップの表面実装が可能である。
【0030】
また、前記導電部はアルミニウムであり、基板の厚さを有していることでヒートシンクとして機能し、半導体チップから発生する熱は直接導電部に放熱され、あるいは絶縁部を介して他の導電部にも放熱されるので、優れた放熱性能が得られる。
【0031】
さらに、前記絶縁部を構成する陽極酸化皮膜は酸化アルミニウムであり、熱膨張係数率が小さいので、大発熱量や発熱と冷却の反復に対しても破線や断線が発生しにくい。また、絶縁部の線膨張係数は半導体チップの線膨張係数に近似しているために、半導体チップの底面にはんだ付けをする場合でも断線しにくい。
【0032】
従って、本発明の方法によれば、優れた放熱性能を有する両面基板を陽極酸化処理によって製造することができる。
【0033】
上記[2]に記載の基板の製造方法は、複数個の基板が一体物となった素材を陽極酸化処理工程によって製作し、切断工程によって前記素材を切断して複数個の基板を製造するものである。従って、複数個の基板の絶縁部形成を1回の陽極酸化処理という共通工程で同時に行うことができるので、複数個の基板を効率良く製造することができる。
【0034】
上記[3]に記載の基板の製造方法は、陽極酸化処理部分を除く領域をマスキングして陽極酸化処理を行い、非マスキング部分に絶縁部を形成するものである。マスキング部分および非マスキング部分はアルミニウム板の表面の任意の箇所に形成することができるので、任意形状の絶縁部を形成することができる。例えば、導電部と絶縁部とが曲線で区切られた基板の製造、導電部と絶縁部とが複雑に配置された基板の製造、1枚のアルミニウム板から形態の異なる複数の基板の製造、1枚のアルミニウム板から複数個の素材製作等が可能である。
【0035】
上記[4]に記載の基板の製造方法は、アルミニウム板の両面から陽極酸化皮膜を成長させ、これらの陽極酸化皮膜を合体させてアルミニウム板を貫通させるものであるから、陽極酸化皮膜の成長限度を超えた厚みの基板を製造できる。また、一方の面のみの陽極酸化処理よりも処理時間を短縮できる。
【0036】
上記[5]に記載の基板の製造方法は、陽極酸化処理部分に凹部を設けてアルミニウム板を減肉するものであるから、陽極酸化皮膜の成長限度を超えた厚みの基板を製造できる。また、凹部を形成しない陽極酸化処理よりも処理時間を短縮できる。
【0037】
上記[6]に記載の基板の製造方法は、前記凹部の形成により、アルミニウム板の板厚を、陽極酸化処理を施す1つの面につき200μm以下となるように減肉するものである。即ち、片面のみを陽極酸化処理する場合は板厚が200μm以下となるように減肉し、両面を陽極酸化処理する場合は板厚が400μm以下となるように減肉するものであるから、陽極酸化皮膜をアルミニウム板に確実に貫通させることができる。
【0038】
上記[7]に記載の基板の製造方法は、基板の導電部上に金属層が設けるものであるから、金属層によって導電部表面の酸化膜形成が抑制されるとともに、半導体チップやボンディングワイヤとの接合性が向上し、優れた導電性および放熱性が得られる。
【0039】
上記[8]に記載の基板の製造方法は、基板の導電部上の金属層を電解めっきによって形成するものであるから、金属層の形成が容易であり、めっき時に絶縁部へのマスキングが不要である。従って、電解めっきによれば低コストで金属層を形成することができる。
【0040】
上記[9]に記載の基板は上記の[1]〜[8]のいずれかに記載の方法によって製造されたものであるから、アルミニウムからなる導電部および陽極酸化皮膜からなる絶縁部がチップ搭載面とその対向面との間を貫いている。かかる基板構造により、基板のチップ搭載面において導電部上に半導体チップを接合すると、対向面においてその導電部に電極を接続することができる。従って、基板にスルーホール等の加工を施すことなく両面基板として使用でき、半導体チップの表面実装が可能である。
【0041】
また、前記導電部はアルミニウムであり基板の厚さを有していることでヒートシンクとして機能し、半導体チップから発生する熱は直接導電部に放熱され、あるいは絶縁部を介して他の導電部にも放熱されるので、優れた放熱性能が得られる。
【0042】
さらに、前記絶縁部を構成する陽極酸化皮膜は酸化アルミニウムであり熱膨張係数率が小さいので、大発熱量や発熱と冷却の反復に対しても破線や断線が発生しにくい。また、絶縁部の線膨張係数は半導体チップの線膨張係数に近似しているために、半導体チップの底面にはんだ付けをする場合でも断線しにくい。
【0043】
上記[10]に記載の半導体パッケージは上記[9]に記載の基板の導電部に半導体チップを接合したものであり、前記導電部はチップ搭載面とその対向面との間を貫いているので、基板のチップ搭載面において導電部上に半導体チップを接合すると、対向面においてその導電部に電極を接続することができる。従って、基板にスルーホール等の加工を施すことなく両面基板として使用でき、半導体チップの表面実装が可能である。
【0044】
また、前記導電部はアルミニウムであり基板の厚さを有していることでヒートシンクとして機能し、導電部に接合された半導体チップが発生する熱は直接導電部に放熱され、あるいは絶縁部を介して他の導電部にも放熱されるので、優れた放熱性能が得られる。
【0045】
さらに、前記絶縁部を構成する陽極酸化皮膜(酸化アルミニウム)は熱膨張係数率が小さいので、大発熱量や発熱と冷却の反復に対しても破線や断線が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の方法によって製造される基板の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の方法によって製造される基板の他の実施形態の斜視図である。
【図3A】本発明の方法によって製造される基板の他の実施形態の平面図である。
【図3B】本発明の方法によって製造される基板の他の実施形態の平面図である。
【図4】本発明において、素材の切断工程により図1の基板の製作する工程を示す斜視図である。
【図5】図4の素材の製作工程であり、本発明の陽極酸化処理工程を示す模式的断面図である。
【図6】図4の素材を製作する陽極酸化処理工程において、電極の装着位置を示す模式的平面図である。
【図7】図2の基板を製作する陽極酸化処理工程において、電極の装着位置を示す模式的平面図である。
【図8】本発明における陽極酸化処理工程の他の態様を示す模式的断面図である。
【図9】陽極酸化処理工程によって製作される他の素材を示す平面図である。
【図10】陽極酸化処理工程によって製作される他の素材を示す平面図である。
【図11A】図1の基板を用いた半導体パッケージの一例を示す断面図である。
【図11B】図1の基板を用いた半導体パッケージの他の例を示す断面図である。
【図12】図2の基板を用いた半導体パッケージの一例を示す断面図である。
【図13】図1の基板を用いたLEDパッケージおよびLEDランプの断面図である。
【図14】実施例1の基板の製作工程を示す斜視図である。
【図15】比較例1の基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[基板]
図1および図2は本発明の方法によって製造される基板(1)(2)の実施形態を示す斜視図である。これらの図において、基板(1)(2)の上面がチップ搭載面(M1)、下面がチップ搭載面(M1)の対向面(M2)であり、チップ搭載面(M1)と対向面(M2)との間の距離が基板(1)(2)の厚さ(t)を示している。
【0048】
図1の基板(1)において、導電部(11a)(11b)および絶縁部(12)は、それぞれがチップ搭載面(M1)と対向面(M2)との間を貫き、チップ搭載面(M1)において導電部(11a)、絶縁部(12)、導電部(11b)の順に並び、これらが一体化されている。従って、導電部(11a)(11b)および絶縁部(12)はチップ搭載面(M1)から垂直方向に積層され、導電部(11a)(11b)および絶縁部(12)の全てがチップ搭載面(M1)および対向面(M2)の両方の面に露出し、(t)なる基板(1)の厚さを有している。また、前記チップ搭載面(M1)の三者の積層方向の寸法は(w)で表され、積層方向における導電部(11a)の寸法が(w1a)、絶縁部(12)の寸法が(w2)、導電部(11b)の寸法が(w1b)で表されている。また、チップ搭載面(M1)の他の一辺の寸法は(d)で表されている。
【0049】
また、図2の基板(2)は、3つの導電部(11c)(11d)(11e)と2つの絶縁部(12)のそれぞれがチップ搭載面(M1)と対向面(M2)との間を貫き、チップ搭載面(M1)において導電部(11c)(11d)(11e)と絶縁部(12)が交互に並び、これらがチップ搭載面(M1)から垂直方向に積層されて一体化されたものである。前記導電部(11c)(11d)(11e)および絶縁部(12)は、いずれもチップ搭載面(M1)および対向面(M2)の両方の面に露出し、(t)なる基板(1)の厚さを有している。
【0050】
本発明の方法によって製造される基板は、複数の導電部とこれらの導電部を電気的に絶縁する絶縁部とを有し、前記導電部および絶縁部のそれぞれがチップ搭載面とその対向面との間を貫いているものである。従って、2つの導電部(11a)(11b)と1つの絶縁部(12)とを有する2極タイプの基板が最小単位となる(図1参照)。また、導電部の数は任意に設定することができ、導電部および絶縁部の形状も限定されない。例えば、図3Aおよび図3Bは基板(30)(31)のチップ搭載面を示す平面図であり、図3Aの基板(30)は6個の導電部(32)が複十字形の1つの絶縁部(33)によって絶縁されたものであり、図3Bの基板(31)は環形の絶縁部(34)によって環外の導電部(35)と環内の導電部(36)と絶縁したものである。
【0051】
[基板の製造方法]
前記基板(1)(2)(30)(31)はアルミニウム板の陽極酸化処理を利用して絶縁部を形成して作製される。
【0052】
以下、図1の基板(1)を例示してその製造方法について詳述する。
【0053】
図4に示す板状の素材(50)はアルミニウム板の陽極酸化処理品であり、アルミニウム板の幅方向の中間に長手方向に沿った絶縁部(54)が形成され、この絶縁部(54)によってアルミニウムが2つの導電部(51a)(51b)に分断されたものである。2つの導電部(51a)(51b)および絶縁部(54)は、それぞれ、素材(50)の板厚方向の一方の面と他方の面との間を貫く方向に積層している。この素材(50)を所要寸法(DB)に切断したものがそれぞれ基板(1)となる。前記素材(10)の導電部(51a)(51b)および絶縁部(54)が基板(1)の導電部(11a)(11b)および絶縁部(12)に対応する。
【0054】
図5はアルミニウム板(55)から前記素材(50)を製作する工程(S1〜S4)を模式的に示したものである。以下に、図5を参照しつつ素材(50)の製作方法について説明する。この素材の製作工程は本発明における陽極酸化処理工程に対応し、文中の「アルミニウム露出部分」は発明における「絶縁部となる部分」および「陽極酸化処理部分」に対応する。
【0055】
(S1) アルミニウム板(55)は、その板厚(TB)が基板(1)の厚さとなるので、アルミニウム板(55)は所期する基板(1)の厚さ(t)のものを使用する。このアルミニウム板(55)において、導電部(51a)(51b)となる部分の両面にレジスト(52)を塗布してマスキングする。レジスト(52)を塗布しない非マスキング部分はアルミニウムが露出し、アルミニウム露出部分(53)は絶縁部(12)が形成される部分である。図示例では、アルミニウム板(55)の上下両面に各1箇所のアルミニウム露出部分(53)がある。
【0056】
(S2) レジスト(52)塗布によりマスキングしたアルミニウム板(55)の導電部(51a)(51b)に電極(57)を装着し、処理液に漬けて陽極酸化処理を施す。上下のアルミニウム露出部分(53)に陽極酸化皮膜(54)が生成し、皮膜(54)はアルミニウム板(55)の板厚方向に成長していく。
【0057】
(S3) アルミニウム板(55)の両面から成長した陽極酸化皮膜(54)は板厚方向の中間で合体し、陽極酸化皮膜(54)がアルミニウム板(55)を板厚方向に貫いてアルミニウム板(55)を幅方向に分断した状態となり、2つの導電部(51a)(51b)と1つの絶縁部(54)が形成される。
【0058】
(S4) レジスト(52)およびアルミニウム板(55)の外側に成長した陽極酸化皮膜(54a)を表面研磨等によって除去すると、図4に示した素材(50)となる。前記素材において、前記導電部(51a)(51b)および絶縁部(54)がアルミニウム板(55)の板厚方向に貫いており、アルミニウム板(55)のいずれか一方の面が基板(1)のチップ搭載面となる。
【0059】
以上の工程(S1)〜(S4)により素材(50)が製造される。
【0060】
そして、図4に示すように、前記素材(50)を所要寸法(DB)で板厚方向に切断すると、導電部(11a)(11b)および絶縁部(12)がチップ搭載面(M1)とその対向面(M2)との間を貫き、導電部(11a)(11b)および絶縁部(12)がチップ搭載面(M1)から垂直方向に積層する基板(1)となる。
【0061】
前記素材(50)の切断面は基板(1)の側面である。チップ搭載面(M1)において三者の積層方向における絶縁部(12)の寸法(w2)は、アルミニウム露出部分(53)の寸法に対応する。また、導電部(11a)(11b)の寸法(w1a)(w1b)は、使用するアルミニウム板(55)の寸法とアルミニウム露出部分(53)の寸法とによって設定され、あるいは陽極酸化処理後に素材(50)の導電部(51a)(51b)を切断することによって前記寸法(w1a)(w1b)を調節することができる。
【0062】
このように複数個の基板が一体物となった素材を1回の陽極酸化処理によって製作し、素材を切断することによって複数個の基板を効率良く製造することができる。即ち、複数個の基板の絶縁部形成を1回の陽極酸化処理という共通工程で同時に行うことができるので、複数個の基板を効率良く製造することができる。なお、本発明において切断工程は必須の工程ではない。陽極酸化処理工程のみを実施して1つの素材から1つの基板を製作する場合も本発明に含まれる。
【0063】
前記アルミニウム板(55)は陽極酸化処理後に基板(1)の導電部(11a)(11b)となる。アルミニウムは導電性および放熱性の両方が良好であるから、配線部でありかつヒートシンクとしても機能する導電部(11a)(11b)の材料として好適である。アルミニウムは、純アルミニウム、アルミニウム合金のいずれでも良く、導電率が良く、基板としての強度、硬度を有する組成のものを適宜使用する。
【0064】
陽極酸化処理によって形成された皮膜(54)は基板(1)の絶縁部(12)となる。陽極酸化皮膜(54)は酸化アルミニウムであり、電気絶縁性が良く、かつ樹脂よりも熱伝導性が高く優れた放熱性を有する。陽極酸化処理に用いる電解液の組成は限定されず、硫酸等の周知の液を適宜使用する。また、陽極酸化処理の電解条件や処理時間も限定されず、陽極酸化皮膜がアルミニウム板を貫通するように適宜設定する。
【0065】
また、絶縁部(12)は使用電圧下で十分な電気絶縁性が得られる限りその寸法に制限はない。例えば、LEDチップを搭載する場合の電圧は一般に5V以下であるので、図1の基板(1)を参照すると、絶縁部(12)の寸法(w2)は数μmでも導電部(11a)(11b)を絶縁することができる。ただし、LED器具としての安全性を考慮した場合に、1kV以上で電圧下でも絶縁できることが好ましく、絶縁部(12)の寸法(w2)を30μm以上に設定することが好ましい。従って、陽極酸化処理工程において、所期する絶縁部寸法を確保できるようにアルミニウム露出部分(53)の寸法を設定する。
【0066】
また、前記絶縁部(54)はアルミニウム板(55)の任意の箇所に形成することができるので、1枚のアルミニウム板(55)の複数箇所に絶縁部(54)を形成すれば、1回の陽極酸化処理で図示例の素材(50)を複数個製造することもできる。
【0067】
陽極酸化処理においては、アルミニウム板(55)がアルミニウム露出部分(53)によって区切られたブロックごとに電極を装着しなければならない。図4の素材(50)の製作を例に挙げると、図6に示すように、アルミニウム露出部分(53)がアルミニウム板(55)の一辺からその対辺に達するように設定され、導電部(51a)(51b)となる2つのブロックに区切られているので、2つの電極(57)が必要である。また、図2の3極タイプの基板(2)用の素材製作においては、図7に示すように、アルミニウム板(55)が2つのアルミニウム露出部分(53)によって導電部となる3つのブロック(58)に区切られるので3つの電極(57)が必要になる。同様に、図3Aの基板(30)製作においては6個の電極(57)が必要となる。これらの素材または基板は全てのブロックがアルミニウム板の側面を含んでいるので、電極はアルミニウム板の上下面および側面のいずれにでも装着することができる。一方、図3Bの基板(31)製作においては、環外の導電部(35)はアルミニウム板の上下面および側面のいずれにでも電極(57)を装着できるが、環内の導電部となる部分(36)はアルミニウム板の側面を有していないので、アルミニウム板の上面または下面に電極(57)を装着する。
【0068】
なお、図5はアルミニウム板(55)の側面については、レジスト塗布の有無について説明を省略しているが、側面にレジストを塗布しなければ陽極酸化皮膜が形成され、レジストを塗布すれば陽極酸化皮膜は形成されない。側面に陽極酸化皮膜を形成するかどうかは、基板の用途に応じて任意に設定することができる。例えば、図13に示したLEDパッケージ(3)においては基板(1)の外周部に樹脂製外枠(21)を取り付けるが、導電部(11a)(11b)と外枠(21)との接合性を高めるために陽極酸化皮膜を形成することがある。
【0069】
陽極酸化処理による基板および複数個の基板が一体物となった素材の製造方法は上記工程に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0070】
図14に示すように、アルミニウム露出部分(53)は、アルミニウム板(55)の一方の面にのみ設け、陽極酸化皮膜(54)を他方の面に達するように成長させて絶縁部を形成することもできる。しかし、図5で示した工程のように両面から皮膜を成長させる方が処理時間を短縮できる。また、陽極酸化皮膜(54)は膜厚が200μm程度まで成長するとそれ以上は殆ど成長しないので、アルミニウム板(55)の板厚(TB)が皮膜の成長限度を超える場合は、両面にアルミニウム露出部分(53)を設けて両面から陽極酸化皮膜(54)を形成することが必要となる。なお、陽極酸化皮膜の成長限度は陽極酸化処理条件やアルミニウム板の化学組成等によって異なり、上記の200μmは成長限度の一例にすぎない。
【0071】
さらに、図8に示すように、アルミニウム板(55)のアルミニウム露出部分(53)に凹部(56)を形成して陽極酸化皮膜(54)の形成を促進することも好ましい。アルミニウム板(55)の板厚(TB)が陽極酸化皮膜(54)の成長限度の2倍を超えると、両面から陽極酸化皮膜(54)を成長させたとしても非マスキング部分を設けただけではアルミニウム板(55)を貫通させることができないので、凹部(56)を設けてアルミニウム板の板厚を部分的に減肉することによって使用可能なアルミニウム板(55)の板厚(TB)の範囲を拡大することができる。凹部(56)の形成により減肉された板厚が、陽極酸化処理を施す1つの面につき陽極酸化皮膜(54)の成長限度以下となるように凹部(56)の深さを設定すれば陽極酸化皮膜を貫通させることができる。即ち、一方の面だけを陽極酸化処理する場合は減肉後の板厚が成長限度の1倍以下となるように、両面を陽極酸化処理する場合は減肉後の板厚が成長限度の2倍以下となるように、それぞれ凹部(56)の深さを設定すれば、陽極酸化皮膜(54)を板厚方向に貫通させることができる。具体的には、陽極酸化皮膜(54)の成長限度が200μmであれば、片面のみを陽極酸化処理する場合は減肉後の板厚が200μm以下であれば陽極酸化皮膜(54)を貫通させることができ、両面を陽極酸化処理する場合は減肉後の板厚が400μm以下であれば陽極酸化皮膜(54)を貫通させることができる。
【0072】
なお、アルミニウムの両面から陽極酸化皮膜を成長させる場合に、両面の凹部の深さに差を付ける、あるいは片面のみに前記凹部を形成するという選択もできる。
【0073】
前記アルミニウム板(55)の板厚(TB)は基板(1)の厚さ(t)に対応しているので、素材(50)の製作時に凹部(56)を設けることによって製造可能な基板(1)の厚さ(t)の範囲を拡大することができる。また、板厚(TB)が陽極酸化皮膜(54)の成長限度以下のアルミニウム板においても、凹部(56)を設けることによって処理時間の短縮、処理条件を緩和できる、といった効果が得られる。
【0074】
前記凹部(56)の形状は特に限定されず、断面V字形(図8参照)、断面U字形等を例示できる。また凹部(56)の形成方法も限定されず、切削、プレス等の方法で適宜行う。
【0075】
上述した陽極酸化処理による素材(50)の製造は、マスキングしないアルミニウム露出部分(53)を設けてここにアルミニウム板(55)を貫く陽極酸化皮膜を形成させ、これを絶縁部(54)としたものである。マスキング部分と非マスキング部分はレジスト(52)の塗布等によってアルミニウム板(55)上の所望の部分に設けることができるので、アルミニウム板(55)の所望の部分に所望形状の絶縁部(54)を形成することができる。従って、複数の導電部とこれらを絶縁する絶縁部とが曲線で区切られた基板や、導電部と絶縁部とが複雑に配置された基板であっても、1つの陽極酸化処理工程によって製造することができる。例えば、図3Bに参照されるように、非マスキング部分を環形にすれば環形の絶縁部(34)が形成され、環形の絶縁部(34)の内部と外部に導電部(36)(35)を形成することができる。また、1枚のアルミニウム板から複数の前記素材(50)を製造すること、1枚のアルミニウム板から形態の異なる複数の基板を製造することもできる。また、基板(1)の厚さ(t)は素材(50)の製造時に使用するアルミニウム板(55)の板厚(TB)で決まるが、導電部(11a)(11b)の寸法(w1a、w1b)は素材製造後に素材(50)の切断位置でも設定することができる。
【0076】
本発明において、陽極酸化処理部分を除く領域をマスキングする方法はレジスト塗布に限定されるものではない。絶縁部となる部分にアルミニウムを露出させ、その他の部分が陽極酸化処理されないマスキングできればその方法は問わない。その他の方法としてマスキングフィルムの貼付を例示できる。
【0077】
また、上記の方法ではレジストを絶縁部形成部に塗布しないことで陽極酸化処理部分(アルミニウム露出部分)を形成しているが、レジスト塗布やマスキングフィルムの貼付等によって全面をマスキングした後に、絶縁部形成部のマスキングを除去することによって陽極酸化処理部分(アルミニウム露出部分)を形成することもできる。特に、図8のように、凹部(56)を形成する場合は、凹部(56)形成のための加工によって同時にレジストを除去できるので、全面マスキングした後に凹部形成加工を実施すればレジストの塗り分けやマスキングフィルムの貼り分けをする必要がなく工程を簡略化できる。
【0078】
[他の形状の素材]
図4の素材(50)は複数の基板(1)が側面の全面で繋がったものであるが、陽極酸化処理工程によって製作する素材の形状はこのようなものに限定されない。
【0079】
図9の平面図で示される素材(60)は、それぞれが1つの基板となる基板形成部(61)が側面の一部で繋がったものである。図9において、(62)は切除による空虚部分、(63)は基板形成部分(61)の2つの導電部形成部(67a)(67b)を隣接する基板形成部分(61)に繋ぐ連結部、(65)は両端の連結部(63)に繋がる外枠である。
【0080】
前記素材(60)の製作は、先ず、アルミニウム板の所要部分を切除して空虚部(62)を形成し、複数個の基板形成部(61)、連結部(63)、外枠(65)を形成する。次に、アルミニウム板の基板形成部(61)の絶縁部形成部(陽極酸化処理部分であり、アルミニウム露出部分)(66)を除く部分をマスキングする。即ち、基板形成部分(31)の絶縁部形成部(66)でアルミニウムを露出させ、基板形成部(61)の導電部形成部(67a)(67b)、連結部(63)および外枠(65)をマスキングし、陽極酸化処理を施す。全ての導電部形成部(67a)(67b)は連結部(63)によって繋がり、両端の連結部(63)は外枠(65)に繋がっており、マスキング部分は途切れることなく連続している。従って、前記素材(60)は形状が複雑であるが、アルミニウム露出部分によって複数ブロックに区切られることなく繋がっているので、陽極酸化処理用の電極を1箇所に装着すればアルミニウム露出部分である全ての絶縁部形成部(66)に陽極酸化皮膜を形成することができる。なお、電極は複数箇所に装着しても良い。
【0081】
上記の陽極酸化処理工程により作成した素材(60)は、マスキングを除去し、連結部(63)を切除すれば多数個の基板(1)が得られる。
【0082】
また、同様の方法で図2の3極の基板(2)を製造するには、図10に示す形状の素材(70)を製作すれば良い。前記基板(2)は2つの絶縁部(12)を有するものであるから、前記素材(70)は1つの基板形成部分(71)につき3つの導電部形成部(77a)(77b)(77c)および2つの絶縁部形成部(76)(76)を有し、3つ導電部形成部(77a)(77b)(77c)はそれぞれ連結部(73)を介して他の基板形成部(71)に連結され、両端の連結部(73)は外枠(65)に繋がっている。
【0083】
図9および図10の素材(60)(70)のように、1つ素材から複数の基板を製作するに際し、アルミニウム板に空虚部(62)を設けて複数の基板形成部(61)(71)が側面の一部のみで繋がった形状を採用することは、絶縁体である陽極酸化皮膜が硬いため切断時に刃が痛んだり陽極酸化皮膜が割れたりすることを防ぐこと、および、切断時のストレスにより基板がゆがむことがあるので切断するときには基板にストレスがないように切断面積は可能な限り小さいことが望ましいためである。さらに側面に空間があることにより基板側面への陽極酸化処理が可能になる。これは基板を樹脂でパッケージングする時に密着性の向上が期待される基板側面への陽極酸化処理を行うために有用な方法である。
【0084】
[導電部上の金属層]
図11A〜図12に示すように、基板(1)(2)の導電部(11a)…(11e)上には半導体チップ(20)やボンディングワイヤ(15)との導電性および接合性を高めるために、導電部(11a)…(11e)とは異なる金属層(13)を設けることも好ましい。アルミニウムはもとよりはんだ適応性の良くない金属であるから、アルミニウムの導電部(11a)…(11e)上に金属層(13)を形成するによってはんだ接合特性を高めることができる。前記金属層(13)の金属は、導電部(11a)…(11e)のはんだ接合特性の向上という観点より、金、銀、ニッケルが好ましい。これらの金属は熱伝導性が良好であるから、導電部(11a)…(11e)の放熱性を低下させるものではない。
【0085】
前記金属層(13)の形成方法は限定されず、導電部(11a)…(11e)にめっきを施してめっき皮膜を金属層とする方法、蒸着による方法、導電部(11a)…(11e)の材料としてクラッド材を使用し、クラッド材の心材を導電部とし、皮材を金属層とする方法等を例示できる。これらの形成方法の中で電解めっきを推奨できる。電解めっきは金属層(13)の形成が容易であり、また陽極酸化皮膜である絶縁部(12)には金属層(12)が形成されないのでマスキングが不要である。これらの点で、電解めっきによれば低コストで金属層(13)を形成することができる。
【0086】
前記金属層(13)は絶縁部(12)上に形成しないことは当然であるが、絶縁部(12)の寸法(w2)は小さいものであるから、金属層(13)のショートを確実に防止するために、絶縁部(12)上に金属層(13)の厚さと同等またはそれ以上の厚さの絶縁絶層(16)を形成することが好ましい(図11A参照)。この絶縁層(16)は、金属層(13)の形成後に絶縁塗料を塗布する等の簡単な方法で簡単に形成することができる。絶縁塗料の種類は限定されないが、半導体チップ(20)としてLEDチップを搭載する場合は、光による劣化が少なくかつ光反射率の高い絶縁塗料を使用することが好ましい。
【0087】
また、導電部(11a)(11b)をめっき皮膜による金属層(13)で被覆する場合は、前記素材(50)にめっき処理を施してその後所要の寸法に切断しても良いし、切断後にめっき処理を施しても良い。陽極酸化処理に供するアルミニウム板としてアルミニウム心材に金属層(皮材)をクラッドしたクラッド材を使用しても良く、工程を追加することなく金属層を形成することができる。
【0088】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、上述した基板の導電部に半導体チップが接合されていることを特徴とする。
【0089】
半導体パッケージにおいて、半導体チップが少なくとも1つの導電部を主たる放熱経路となるように接合されている限り、半導体チップを導電部に接続する方法は限定されない。
【0090】
図11Aの半導体パッケージ(3A)は、一方の導電部(11b)上に接合層(14)を介して半導体チップ(20)を接合し、他方導電部(11a)にボンディングワイヤ(15)で接続した例である。また、図11Bの半導体パッケージ(3B)は、半導体チップ(20)を2つの導電部(11a)(11b)にまたがるようにボール形のはんだ(17)で接続した例である。また、図12の半導体パッケージ(4)は、一つの導電部(11d)上にダイボンドまたははんだ(14)半導体チップ(20)を接合し、他の2つの導電部(11c)(11e)にボンディングワイヤ(15)で接続した例である。
【0091】
本発明において「半導体チップを導電部に接合する」とはその導電部が主な放熱経路となるように半導体チップが接続されている状態であり、具体的には半導体チップと導電部との間にはんだや導電性接着剤等の接合に必要な材料のみが介在している状態である。ボンディングワイヤによる電気的接続は、本発明における半導体チップを導電部に接合した状態には含まれない。
【0092】
図11Aの半導体パッケージ(3A)は、接合層(14)を介して半導体チップ(20)を接合した一方の導電部(11b)が主たる放熱経路となる。また、図11Bの半導体パッケージ(3B)は、半導体チップ(20)を2つの導電部(11a)(11b)にまたがるようにボール形のはんだ(17)で接合しているので、2つの導電部(11a)(11b)が放熱経路となる。また、図12の半導体パッケージ(4)は、半導体チップ(20)を接合した中央の導電部(11d)が主たる放熱経路となる。
【0093】
[半導体パッケージを用いたLEDランプ]
図12に、本発明の基板(1)を用いて作製したLEDパッケージ(3)、さらにこのLEDパッケージ(3)を用いたLEDランプ(5)を示す。
【0094】
前記LEDパッケージ(3)において、基板(1)およびLEDチップ(20)の接続は図11Aに示した半導体パッケージ(3A)と同一であり、大きい導電部(11b)上に接合層(14)を介してLEDチップ(20)が接合され、LEDチップ(20)はボンディングワイヤ(15)で小さい導電部(11a)に接続されている。
【0095】
前記LEDパッケージ(3)は、LEDチップ(20)を搭載した基板(1)の外周部に樹脂製外枠(21)を取り付け、基板(1)のチップ搭載面(M1)と外枠(21)の内周面によって形成される凹部に樹脂封止材(22)を充填し、さらに樹脂製レンズ(23)を一体に形成したものである。前記封止材(22)は、LEDチップ(20)への衝撃を緩和するとともに水分の侵入を防止してLEDチップ(20)を保護し、かつハンドリング性を高めている。また、封止材用の樹脂にはランプの色調を調整するために色素を混合することもできる。また、光学性能の向上を目的として、前記外枠(21)の内面にリフレクターを取り付けること、あるいはリフレクター一体型の外枠を使用すること、封止材(22)の上面にレンズ(23)を取り付けることも好ましい。また、このようにLEDチップ(20)を樹脂で覆ったことで、LEDパッケージ(3)のハンドリング性を高めることができる。
【0096】
前記LEDパッケージ(3)は、LEDチップ(20)を樹脂製の外枠(21)および封止材(22)で覆うことで上記の効果を得ているが、本発明の半導体パッケージは半導体チップを搭載した基板を各種被覆材で覆うことは必須要件ではない。本発明の基板に半導体チップが搭載されているものは被覆材の有無に拘わらず本発明に含まれる。また、半導体チップを搭載した基板を被覆材で覆うと放熱性が低下するので、被覆材を基板の一部が露出するような形状に形成することも好ましい。
【0097】
LEDランプ(5)は、熱伝導性絶縁基板(24)上に形成された銅配線部(25)に基板(1)の導電部(11a)(11b)をはんだ付けしたものである。図中、(26)ははんだを示している。なお、図示例の基板(1)は導電部(11a)(11b)が金属層(13)に被覆されているので、導電部(11a)(11b)は金属層(13)を介して銅配線部(25)にはんだ付けされている。
【0098】
前記LEDランプ(5)において、LEDチップ(20)から発生する熱は、主としてLEDチップ(20)が接合されている導電部(11b)に直接伝わり、はんだ(26)を介して熱伝導性絶縁基板(24)に放熱される。また、導電部(11a)から絶縁部(12)を介して他方の導電部(11b)にも伝わって熱伝導性絶縁基板(24)に放熱される。LEDチップ(20)から発生する熱は導電部(11a)(11b)が放熱経路となって排熱され、基板(1)の厚さ(t)を有する導電部(11a)(11b)自身がヒートシンクとして作用するので放熱効率が良い。前記導電部(11a)(11b)上の金属層(13)は熱伝導性の良い金属であるから、放熱経路上の金属層(13)もヒートシンクの一部として機能し、放熱効率を高めることになる。
【0099】
上述したように、半導体チップが発する熱を基板の導電部から効率良く排熱するには、ボンディングワイヤを介した電気的接続ではなく、半導体チップと導電部との間にはんだや導電性接着剤等の接合に必要な材料のみが介在するように半導体チップを接合し、導電部が主たる放熱経路となるようにする。
【0100】
また、前記導電部(11a)(11b)は基板(1)の両面に露出しているので、チップ搭載面(M1)の対向面(M2)に電極を形成できる。このため、スルーホールを設けるといった電極形成のための加工をすることなく、そのまま両面基板として用いることができ、表面実装型の半導体パッケージを製作することができる。なお、前記導電部(11a)(11b)は基板(1)の側面にも露出しているので側面に電極を形成することもできる。
【0101】
また、前記絶縁部(12)を構成する陽極酸化皮膜、即ち酸化アルミニウムは熱膨張係数率が小さいので、大発熱量や発熱と冷却の反復に対しても破線や断線が発生しにくい。また、絶縁部(12)の線膨張係数は半導体チップ(20)の線膨張係数に近似しているために、BGA(Ball Grid Array)基板のようにチップの底面にはんだ付けをする場合でも断線しにくい。
【0102】
前記LEDランプ(5)は、照明器具や液晶表示装置の光源として好適に利用できる。
【実施例】
【0103】
アルミニウム板の陽極酸化処理により絶縁部を形成した基板と、他の方法で製造した基板との性能を比較した。
【0104】
(実施例1)
図14に示すように、JIS A1100からなり50mm×50mm×厚さ(TB)0.1mmのアルミニウム板(55)の一方の面において、対向辺間に幅(P):0.5mmの陽極酸化処理部分(アルミニウム露出部分)(53)を形成するようにレジスト(52)を塗布してマスキングした。他方の面は全面にレジスト(52)を塗布してマスキングした。
【0105】
このアルミニウム板(55)を25℃の15%硫酸に浸漬し、DC25V、3Aで100分間の陽極酸化処理を施し、一方の面から陽極酸化皮膜を板厚方向に成長させてアルミニウム板(55)を貫通させた。
【0106】
上記陽極酸化処理品からレジスト(52)を除去し、十分に水洗し、これを基板とした。
【0107】
(実施例2)
図8に参照されるように、JIS A1100からなり50mm×50mm×厚さ(TB):0.5mmのアルミニウム板(55)の両面にレジスト(52)を塗布した。このアルミニウム板(55)の両面において、対向辺間にルーターで断面V字形の凹部(56)を形成し、陽極酸化処理部分(アルミニウム露出部分)(53)を形成した。前記凹部(56)の幅(P)は0.5mm、最深部の深さ(P)は0.15mmであり、凹部(56)形成による減肉後の板厚(P)が0.2mmとなった。
【0108】
このアルミニウム板(55)を25℃の15%硫酸に浸漬し、DC25V、3Aで100分間の陽極酸化処理を施し、両面から陽極酸化皮膜を板厚方向に成長させてアルミニウム板(55)を貫通させた。
【0109】
上記陽極酸化処理品からレジスト(52)を除去し、十分に水洗し、これを基板とした。
【0110】
(比較例1)
図14に示すアルミニウム基板(100)である。前記アルミニウム基板(100)は、基板の厚み方向に、厚さ1.6mmのアルミニウム板(101)、特殊エポキシ樹脂からなり厚さが100μmの絶縁層(102)、厚さ18μmの銅箔(103)を積層したものである。前記絶縁層(102)を構成する樹脂の熱伝導率は2.0W/(m・K)である。このアルミニウム基板(100)は半導体チップを搭載するために使用される市販の基板である。
【0111】
(比較例2)
JIS A1100からなり50mm×50mm×厚さ1.6mmのアルミニウム板の片面をマスクフィルムで覆い、5℃の30%硫酸に浸漬し、DC25V、3Aで60分間の陽極酸化処理を施し、他方の面に厚さ50μmの陽極酸化皮膜を形成した。次に、陽極酸化皮膜上にエッチングした後、無電解銅めっきを施して基板を作製した。これにより、基板の厚み方向において、厚さ1.6mmのアルミニウム板、厚さ50μmの絶縁層(陽極酸化皮膜)、厚さ0.5μmの銅めっき皮膜からなる導電層が積層された基板を製作した。
【0112】
上記の方法で作製した実施例1、2の基板は、導電部(アルミニウム)および絶縁部(陽極酸化皮膜)がチップ搭載面とその対向面との間を貫いて、導電部および絶縁部がチップ搭載面から垂直方向に積層したものである。一方、比較例1,2の基板は導電部(銅箔、銅めっき皮膜)、絶縁層(特殊エポキシ樹脂、陽極酸化皮膜)およびアルミニウム板が基板の厚み方向に積層したものであり、実施例1、2とは積層方向が異なる。
【0113】
各基板における絶縁層の耐電圧を、実施例1、2は陽極酸化皮膜の両側のアルミニウム間で、比較例1はアルミニウム板(101)と銅箔(103)との間で、比較例2はアルミニウム板と銅めっき皮膜との間でそれぞれ測定した。
【0114】
また、各基板の厚み方向の熱抵抗を熱線法により測定した。ただし、実施例1、2は基板が薄いために熱線法による測定値が得られなかったため、厚さ10mmのA1100板の測定値からそれぞれの厚さに対応する熱抵抗値を換算して求めた。
【0115】
各基板の概要と測定結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
表1より、導電部と陽極酸化皮膜からなる絶縁部がチップ搭載面とその対向面との間を貫く実施例1,2の基板は、絶縁部がチップ搭載面に平行な方向に積層された比較例1、2と同等の耐電圧を有していることを確認した。また、実施例1、2の基板は導電部が主たる放熱経路となるので、絶縁部を介してアルミニウム板に放熱される比較例1、2の基板と比較して、熱抵抗が小さく放熱性に優れていることも確認した。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の方法によって製造される基板は、放熱性に優れ、半導体チップの表面実装が可能であり、発熱量の大きいLEDパッケージやパワーモジュール用の基板として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0119】
1、2、30、31…基板
3…LEDパッケージ(半導体パッケージ)
3A、3B、4…半導体パッケージ
5…LEDランプ
11a、11b、11c、11d、11e、32、35、36…導電部
12、33、34…絶縁部
13…金属層
14…接着層
15…ボンディングワイヤ
16…絶縁層
17…ボール形のはんだ
20…LEDチップ(半導体チップ)
21…外枠
22…封止材
23…レンズ
50、60、70…素材
55…アルミニウム板
51a、51b…アルミニウム(導電部)
52…レジスト(マスキング)
53…アルミニウム露出部分
54…陽極酸化皮膜(絶縁部)
56…凹部
57…電極
61、71…基板形成部
62…空虚部
63…連結部
67a、67b、77a、77b、77c…導電部形成部
66、76…絶縁部形成部
65…外枠
M1…チップ搭載面
M2…対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板の少なくとも一方の面の絶縁部となる部分に陽極酸化処理を施し、その陽極酸化処理部分において陽極酸化皮膜を板厚方向に成長させ、陽極酸化皮膜をアルミニウム板に貫通させる陽極酸化処理工程を含み、
アルミニウムからなる複数の導電部が陽極酸化皮膜からなる絶縁部によって電気的に絶縁され、前記導電部および絶縁部がアルミニウム板の板厚方向に貫いていて、アルミニウム板のいずれか一方の面がチップ搭載面である半導体チップを搭載する基板の製造方法。
【請求項2】
前記陽極酸化処理工程と、
前記陽極酸化処理工程により製作した素材を板厚方向に切断する切断工程とを行い、
複数個の前記基板を製造する請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記陽極酸化処理に供するアルミニウム材の表面において、陽極酸化処理部分を除く領域をマスキングし、陽極酸化処理工程後にマスキングを除去する請求項1または2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記陽極酸化処理工程において、アルミニウム板の両面に陽極酸化処理を施し、両面から陽極酸化皮膜を成長させ、これらの陽極酸化皮膜を合体させることによって板厚方向に貫通する陽極酸化皮膜を形成する請求項1〜3のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記陽極酸化処理工程において、アルミニウム板の陽極酸化処理部分に凹部を設けて板厚を減肉する請求項1〜4のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記凹部の形成により、アルミニウム板の板厚を、陽極酸化処理を施す1つの面につき200μm以下となるように減肉する請求項5に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記導電部上に、該導電部とは異なる金属層を形成する請求項1〜6のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記金属層を電解めっきによって形成する請求項7に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造され、半導体チップを搭載する基板であって、
アルミニウムからなる複数の導電部と、陽極酸化皮膜からなり、これらの導電部を電気的に絶縁する絶縁部とが、チップ搭載面とその対向面との間を貫いていることを特徴とする基板。
【請求項10】
請求項9に記載の基板の導電部に半導体チップが接合されていることを特徴とする半導体パッケージ。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−109332(P2012−109332A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255555(P2010−255555)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)