説明

基板の試料接着領域または非接着領域の作成方法

【課題】基板において試料、たとえば細胞などのような生物学的試料の接着領域および非接着領域の質や量などを制御することが可能な、簡便で、しかも精度も高い、汎用性のある優れた基板処理法を提供する。
【解決手段】基板の試料接着領域および非接着領域を選択的に作成する方法であって、試料接着領域または非接着領域と基板との間の結合を、オゾンによる選択的な曝露によって解離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料、たとえば細胞などの生物学的試料のアレイ化用基板の表面に、細胞などの接着を阻害する機能を付与することによって、より一層詳しくは選択的にオゾン処理を行い部分的に接着を抑制することによって、細胞等のアレイ用基板を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAチップ、プロテインチップに代表されるように、生体分子をチップ上に固定化し、ハイスループットに解析する技術が求められている。さらに、近年では、細胞チップも登場し、細胞レベルで遺伝子、タンパク質のハイスループット機能解析が医療診断へ応用されようとしている。また、患者自身の細胞を評価することで、テーラーメイド診断につながると期待されている。 細胞の機能評価をハイスループットに解析するためには、他のバイオチップと同様に小型チップデバイス表面へ細胞を接着させる必要がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−65087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞をチップデバイス表面へ固定化することに目を向けると、細胞は特定の化学状態表面へ接着し、増殖することから、細胞が接着する表面処理が非常に重要である。細胞の接着具合は、細胞の機能に大きな影響を与えるので、細胞機能を真に評価するためには、細胞が接着する基板表面の化学的処理が必要となる。
【0005】
特許文献1には、シートの表面をオゾン処理等して、細胞の接着性と増殖性を向上させることが記載されている。しかし、これらは乳酸等のシート材質自体の表面を親水化することによって接着性を一様に高めるものであり、基板において細胞の接着および非接着領域を制御するものではない。
【0006】
解決しようとする問題点は、基板において試料、たとえば細胞などのような生物学的試料の接着領域および非接着領域の質や量などを制御することが可能な、簡便で、しかも精度も高い、汎用性のある優れた基板処理法がない点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板において細胞等のような生物学的試料の接着領域および非接着領域を制御するため、オゾンとマスクとを用い基板を処理することを最も主要な特徴とする。
【0008】
好適には、接着領域および非接着領域を作成するため、細胞等の非接着領域として基板に修飾した有機分子層が、オゾン曝露によって化学的に基板との結合を解離する。
【0009】
生体内では、細胞は、細胞外マトリックスを構成するタンパク質に結合し、正常な生命活動を維持している。そこで、本発明者らは、基板上に細胞非接着性の有機分子層を形成し、マスク等を用いることで局所的にオゾン曝露を行い、この有機分子層を基板から解離させる。このようなオゾン曝露により、基板表面は、細胞接着領域を制御することが可能である。
【0010】
また、基板上に細胞接着タンパク質層を形成し、マスク等を用い局所的にオゾン曝露を行うことで、基板から細胞接着タンパク質を除く。このようなオゾン法を用いることで、基板表面は、細胞接着領域をも制御することが可能である。
【0011】
オゾン曝露により有機分子層を取り除いた領域には、細胞非接着タンパク質や細胞接着タンパク質を接着させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法は、オゾン曝露により、細胞の接着領域および非接着領域を作成し、必要に応じてこれらを繰り返し、それらの質および量を制御することが可能となる。この方法は、簡便で精度も高く、優れた基板処理法である。
【0013】
この方法を応用すると、プロテインアレイ、細胞アレイ、単一細胞アレイデバイスも可能であり、高効率なチップ解析への応用が可能である。細胞アレイに関しては、センサと組み合わせることで、細胞の応答も測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の細胞接着領域制御基板作成方法を説明した模式図である。(実施例1)
【図2】本発明においてHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を基板に播種、培養したものを顕微鏡で観察した図である。
【図3】本発明において基板に播種したHUVECをCalcein(カルセイン)−AM で染色したものを顕微鏡で観察した図である。
【図4】本発明の細胞非接着領域制御基板作成方法を説明した模式図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、基板において生物学的試料、たとえば細胞等の接着領域および非接着領域を制御するという目的を、簡便で、しかも精度も高い、優れた基板処理法によって、試料、基板、接着領域、非接着領域の種類等に左右されないで実現した。
【0016】
先の特許文献1では、請求項の9、10に「シートの表面をオゾン処理して、細胞の接着性と増殖性を向上させること」が明記されている。しかし、これらは本発明者らの検討内容とは、用途、プロセス、学術的あるいは技術的な意味および内容、すべてにおいてまったく違うものである。
【0017】
1)この特許文献1は「細胞をぎっちり高密度で培養する立体構造体」についての発明であり「その単体表面をオゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理のいずれかで処理して細胞接着性を向上させている」旨が請求項には記されている。ところで、特許文献1の明細書に記載の実施例ではそのオゾンなどを用いたプロセスを行っておらず、それらの「処理」が実際に必要な工程なのか、化学的に何をしているのか(何が起こっているのか)はまったくわからない。
【0018】
2)特許文献1が提示している担体の表面は乳酸等の重合体であり、それらの高分子材料は、疎水性表面を形成することが知られる素材でもある。したがって、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理と言っているものは、単に表面の親水化を行うこと、すなわち(実施例には一切の記載がないが)、プラズマ処理によって材料表面の水素引き抜きや水酸基の導入などを進め、それによって材料の濡れ性を付与せしめていると考えられるに過ぎない。
【0019】
一方で、本発明者らの発明は、材料表面にある化学層の減成をオゾンあるいはオゾン+UV(紫外線)によって行うものであり、本発明によるオゾン処理は、特許文献1とは化学的にまったく違う(言わばま逆の)ことを行う。
【実施例】
【0020】
試料、特に生物学的試料には、細胞のほか、DNA、RNA、タンパク質、糖質、脂質、糖タンパク質、糖脂質、これらの複合体などの各種生体分子が含まれ、細胞には、植物、動物、微生物などのものが含まれる。好ましい生物学的試料は、細胞、タンパク質、糖タンパク質である。好ましい理由は、タンパク質、糖タンパク質の接着が、基板の材質、状態に大きく依存するためである。本発明法は、オゾン曝露によって基板に修飾した有機分子層を化学的に除去することができる。オゾンとマスクを用いることで、タンパク質、糖タンパク質の接着および非接着領域は、容易に制御することが可能である。また細胞は、細胞接着性タンパク質を介して接着している。先にも述べたように、タンパク質の接着および非接着領域は、本発明法を用いた場合、容易に制御できることから、細胞の接着も同じく容易に制御できる。
【0021】
基板には、ガラス、金属薄膜、石英、シリコンウェハ、シリカ、樹脂、などの材質のものを用いることができる。
生物学的試料との関係、接着領域または、非接着領域の形成との関係、オゾン処理との関係で、好ましい基板の種類は、ガラス、金属薄膜、シリコンウェハである。それらが好ましい理由は、ガラスは、基板として一般的で、入手しやすく、加工性も良好であり、それ自体が細胞非接着有機分子や細胞接着タンパク質などと結合する表面を持ち、その被覆した細胞非接着有機分子をオゾン曝露によって部分的に剥離させ、その剥離部分に細胞接着タンパク質を被覆すれば、細胞非接着領域および細胞接着領域を所望のパターンで得ることができる。金属薄膜は、一般的にセンサデバイス基板として用いられ、それ自体がチオール有機分子などと結合する表面を持つためである。またオゾン曝露により、有機分子層を部分的に剥離できることから、試料の接着および非接着領域の制御が容易にできる。シリコンウェハは、二酸化珪素から形成されており、タンパク質接着阻害有機分子、細胞接着性タンパク質と結合する領域を形成することが容易であるためである。
【0022】
生物学的試料の接着領域または非接着領域の形成は、特に制限されず、たとえば、基板上への非接着層の形成、接着層の形成、これらの層のオゾン処理による基板からの解離によって行うことができる。これらはまた、公知の種々の方法、手段によって改良することができる。
【0023】
細胞等の非接着領域には、細胞非接着タンパク質などの有機分子の層など、接着領域には、細胞接着タンパク質などの有機分子の層を有した構造が含まれる。
ここで使用する細胞接着タンパク質などの有機分子には、フィブロネクチン、それ以外にコラーゲン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリリンや、その他の細胞接着分子などが利用できる。
細胞非接着タンパク質などの有機分子には、たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)などのような細胞非接着タンパク質、ポリエチレングリコール(PEG)などのような細胞非接着性有機分子、これら以外に細胞やタンパク質の接着および/または吸着を阻害したり、抑制したりする分子などを基板表面に高密度に修飾固定化できる方法を広く用いることができる。
【0024】
細胞接着領域または非細胞接着領域などの解離、制御、保持には、オゾン曝露、オゾンの遮断、オゾン曝露の質や量を選択的に行う手段を用いることができる。それにはたとえば、マスクを用いることができる。このマスクの材質、形状には、ステンレス、ガラス、ポリマーフィルム、セルロースフィルムなどを用いることができる。好ましいマスクの使用方法は、基板にマスクが密着することである。基板の材質特性によっては、基板上に溶液あるいはゲル液を垂らしその上からマスクを置くことによって、よりよい密着性を得ることができる。
【0025】
オゾン曝露による接着領域および非接着領域の解離、制御の原理は、オゾンおよびオゾンによる自己分解で発生する酸素原子ラジカルが接着領域または非接着領域としてはたらく構造の接着層または非接着領域としてはたらく構造の非接着層と基板との間の結合を解離することによると考えられる。この接着層などと基板の間の結合には、水素結合、イオン結合、共有結合、配位結合などの化学結合等が含まれる。好ましい結合の種類は、水素結合、イオン結合、配位結合、疎水性相互作用による結合である。これらの結合が好ましい理由は、オゾンおよび酸素原子ラジカルにより分解可能な結合であるためである。
【0026】
オゾン曝露は、処理すべき基板や処理すべき部位、領域をオゾン存在下に置くことによって行うことができる。オゾンは、オゾン発生装置に酸素を充満させ、UVを照射することによって発生させることができる。オゾンの濃度、処理温度、処理時間などは任意に設定することができる。好ましい処理条件は、処理する基板の種類、化学層の種類、大きさ、厚さ、などにより異なる。
【0027】
オゾン曝露は、オゾン単独においても使用できるが、オゾンとUVを併用することで発生する活性種の反応によりオゾン曝露時間を短縮できる。
使用するUV波長域は広く用い得るが、波長200nm程度以下のより高エネルギーのUV波長が好適である。
【0028】
非接着領域または接着領域は、オゾン曝露により所定のパターンで基板から解離させることによって接着領域化または非接着領域化することができる。このように形成した基板の接着領域の表面は、細胞非接着タンパク質などを被覆することによって非接着領域化することもできる。この非接着領域化は先の接着領域化などとは異なるパターンで行うこともできる。
非接着または接着の基準は相対的であることができる。すなわち、非接着または接着というときには、それ自体またはその領域が接着または非接着領域よりも、それぞれ低いか、または高い接着性を持つものであってよい。
【0029】
基板と接着層または非接着層などとの間には中間層が存在してもよい。この場合、オゾン曝露によって解離される結合は、接着層などと中間層との間の結合でよい。
【0030】
基板、生物学的試料、非接着領域、接着領域、マスク、パターンなどの種類、選択、設計、作成、アレイの形成などにおいては、従来の単一細胞アレイ化基板作成方法などのものを用いることができる。たとえば、以下のようなものである。
【0031】
(1)マイクロコンタクトプリンティング法
ポリジメチルシロキサン(PDMS)とフォトリソグラフィー法を用いて細胞アレイ化パターンスタンプを作成する。細胞アレイ化基板はパターンスタンプにアルカンチオール溶液をつけて、金薄膜を有する基板へスタンプすることで形成する。
参考文献1:Langmuir(ラングミュア), 18, 3645-3649 (2002)
参考文献2:Experimental Cell Research(エクスペリメンタル・セル・リサーチ), 235, 305-313 (1997)
【0032】
(2)レーザー法
温度に応答して構造を変化させる温度応答性高分子ポリイソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)をグラフトし、温度を制御することにより、PIPAAmの親水性および疎水性を制御することで細胞接着および脱着を制御する。温度応答性高分子層をグラフトしたポリマー層を、UVエキシマレーザーを用いて細胞捕捉ドメインをアレイ状に整列させる。
参考文献3:Polymer Science Series(ポリマー・サイエンス・シリーズ)A, 46(4), 405-410 (2004)
【0033】
(3)フォトマスク法
金薄膜表面全てに末端メチル基のアルカンチオールの自己組織膜を形成させる。次にこれにフォトマスクを載せ、紫外光を5時間照射することで、アルカンチオールの自己組織膜の一部を光酸化分解する。酸化物を洗い流して、金表面をパターン状に露出させる。その後、希望する末端官能基を有するアルカンチオール溶液に浸漬してパターン部分に新たなアルカンチオールを埋め込む。
参考文献4:Biomolecular Engineering(バイオモレキュラー・エンジニアリング), 19, 161-170 (2002)
【0034】
(4)微小電極法
ブロッキング機能を有するタンパク質、アルブミンやヘパリンなどは、次亜臭素酸(HOBr)の酸化剤によりその機能が消失する。基板の表面近傍にマイクロ電極を配置してHOBrを生成させる。その酸化作用で、ブロッキング層が脱着する。
参照文献5:Langmuir, 22, 10784-10787 (2006)
【0035】
実施例1
オゾン曝露による細胞接着アレイ基板の作成方法(図1)
【0036】
1. 細胞非接着ガラス基板の作成
(1) 細胞は、細胞接着性タンパク質を介して基板に接着する。よって細胞非接着基板は、細胞接着性タンパク質の接着を阻害するポリエチレングリコール(PEG)を基板上に固定化した基板である。細胞非接着基板は、ガラス基板を8M水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸した後、超純水で超音波洗浄することで親水処理を行った。
(2) PEGの固定化は、二通り行った。下記にそれぞれの方法を示す。
(2-1)
親水化したガラス基板を2%の2-メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルトリクロロシラン/クロロホルム溶液50mlに2時間浸し、行った。細胞非接着ガラス基板は、その後、クロロホルムで超音波洗浄を行い、窒素ガスで乾燥させた。
(2-2)
親水化したガラス基板2枚に2-Methoxy (polyethyleneoxy) propyl trichlorosilane/トルエン溶液を挟んだ。ガラス基板は、80℃雰囲気下に2時間静置した。細胞非接着ガラス基板は、その後、トルエン、エタノール、超純水で超音波洗浄を行い、窒素ガスで乾燥させた。
【0037】
2. オゾン曝露の方法
(1) オゾン曝露は、オゾン発生装置内に酸素を充満させ、UVを照射することで行った。細胞接着領域の制御は、細胞非接着基板にマスクを覆うことで行った。
(2) 1.で作成した細胞非接着基板上に水を垂らし、その上にマスクを置いた。本研究の作成方法は、マスクを変えることで、自由にアレイの形、場所、細胞数を簡単に制御することができる事が特徴である。
(3) オゾンは、酸素ガス流入を10分間、UV照射を5分間行うことで発生させた。
(4) 2.(2)の基板は、2.(3)の条件で発生させたオゾン雰囲気下に静置した。細胞非接着基板表面のマスクで覆われていない部位は、オゾンラジカルがPEGと基板の結合を解離すると考えられる。
(5) 2.(4)で作成された細胞アレイ基板は、10mMフィブロネクチン溶液に1時間浸した。オゾンにより解離した部位は、細胞接着タンパク質であるフィブロネクチンが吸着する。
(6) 2.(5)で作成した細胞アレイ基板は、5×104個の細胞を播種し、37℃、5%CO2インキュベーター内で培養した。一時間後、PBSで洗浄し、24時間培養した。
(7)細胞非接着ガラス基板は、オゾン曝露し、細胞接着タンパク質を被覆することにより、細胞接着領域制御することに成功した。またマスクを用いることで、細胞接着領域は、マスクパターニングどおりに作成することができる。
(8)この細胞アレイ基板は、ガラス基板を用いているため透過性に優れ、顕微鏡による蛍光プローブ評価も可能となる。
【0038】
図2、3に示すように、細胞は、マスクのサイズに依存した数で接着している。また単一細胞においては、細胞活性を維持した状態を保持し、接着していることがわかる。このことからオゾンによる細胞接着領域は、マスクを用いることで単一細胞サイズまでをも容易に制御できることがわかった。
【0039】
実施例2
オゾン曝露による細胞非接着アレイ基板の作成方法(図4)
【0040】
1. 細胞接着基板の作成
細胞接着基板は、細胞接着性タンパク質の接着を基板上に固定化した基板である。細胞接着基板は、ガラス基板を8M水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸し、親水処理を行った。親水性ガラス基板は、100mg/mlポリ-L-リジン/PBS溶液に浸し、37℃、5%CO2 雰囲気下で一晩インキュベートした。その後、ガラス基板は、1mg/mlフィブロネクチン/PBS溶液に浸し、1時間インキュベートすることで細胞接着ガラス基板を得る。
【0041】
2. オゾン曝露の方法
(1) オゾン処理は、オゾン発生装置内に酸素を充満させ、UVを照射することで行った。細胞非接着領域の制御は、細胞接着基板にマスクを覆うことで行った。
(2) 1.で作成した細胞接着基板上に水を垂らし、その上にマスクを置いた。本研究の作成方法は、マスクを変えることで、自由にアレイの形、場所、細胞数を簡単に制御することができる事が特徴である。
(3) オゾンは、酸素ガス流入を10分間、UV照射を5分間行うことで発生させた。
(4) 2.(2)の基板を2.(3)の条件で発生させたオゾン雰囲気下に静置した。細胞接着基板表面のマスクで覆われていない部位は、フィブロネクチンが基板から解離すると考えられる。
(5) 2.(4)で作成された細胞アレイ基板は、細胞非接着タンパク質である5mg/mlのBSA溶液に1時間浸した。2.(4)でO3処理された部位は、細胞非接着タンパク質であるBSAが吸着する。
(6) 2.(5)で作成した細胞アレイ基板は、5×104個の細胞を播種し、37℃、5%CO2インキュベーター内で培養した。一時間後、PBSで洗浄し、24時間培養した。
(7)細胞接着ガラス基板は、オゾン曝露し、細胞非接着タンパク質を被覆することにより、細胞非接着領域を制御することに成功した。またマスクを用いることで、細胞非接着領域は、マスクパターニングどおりに作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の方法を応用すると、プロテインアレイ、細胞アレイ、単一細胞アレイデバイスも可能であり、高効率なチップ解析への応用が可能である。細胞アレイに関しては、センサと組み合わせることで、細胞の応答も測定可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の試料接着領域および非接着領域を選択的に作成する方法であって、試料接着領域または非接着領域と基板との間の結合を、オゾンによる選択的な曝露によって解離させる、方法。
【請求項2】
試料は生物学的試料または細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞非接着領域として基板に修飾した有機分子層が、オゾン曝露によって化学的に基板との結合を解離される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
解離される結合は、水素結合、イオン結合、共有結合、および配位結合からなる群より選ばれる化学結合である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オゾンの選択的な曝露はマスクを介して行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−50303(P2011−50303A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201765(P2009−201765)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000120401)荏原実業株式会社 (31)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】