説明

基板の配線構造

【目的】 フレキシブル配線基板の構造および共通配線と接続用配線との交差する部分の構造を単純化する。
【構成】 フレキシブル配線基板6の下面に設けた3本の共通配線32a〜32cと透明基板12の上面に設けた3本1組で合計2組の接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cの相対応する各交点においてそれぞれ異方性導電性接着剤層33、34中の導電性粒子を介して電気的に接続することにより、フレキシブル配線基板6をスルホール構造とすることなく、その下面のみに共通配線32a〜32cを設ければよく、フレキシブル配線基板6の構造が単純となり、また前記各交点以外を異方性導電性接着剤層33、34中の絶縁性接着剤層によって絶縁状態を維持して接着することにより、共通配線32a〜32cと接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cとの交差する部分の構造が単純となる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は液晶表示装置等の電子機器における基板の配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば液晶表示装置では、液晶表示パネル、この液晶表示パネルを駆動するための駆動回路用半導体チップ、この半導体チップを制御するための制御回路用回路基板等が備えられ、半導体チップを液晶表示パネルに搭載している場合には、半導体チップと回路基板とをフレキシブル配線基板で電気的に接続するようにしている。
【0003】
図5は従来のこのような液晶表示装置の一例を示したものである。
この液晶表示装置では、液晶表示パネル1、3つの半導体チップ2〜4、回路基板5、2つのフレキシブル配線基板6、7等が備えられている。このうち液晶表示パネル1は、ガラス等からなる上下の透明基板11、12の間に液晶が封入され、下側の透明基板12の一端部が上側の透明基板11の外側に突出され、この突出された下側の透明基板12の一端部の上面に複数本の透明電極13が2組に分けられて設けられているとともに、各組の透明電極13に対応して各3本の接続用配線14、15からなる2組の接続用配線群が並列的に設けられ、かつ上側の透明基板11の一端部が下側の透明基板12の外側に突出され、この突出された上側の透明基板11の一端部の下面に複数本の透明電極16が設けられているとともに、この複数本の透明電極16に対応して複数本の接続用配線17からなる1組の接続用配線群が設けられた構造となっている。所定の2つの半導体チップ2、3は下側の透明基板12の一端部の上面に並列的に搭載され、図示しない複数の出力側バンプ電極および3つの入力側バンプ電極が各組の透明電極13および各3本の接続用配線14、15とそれぞれ電気的に接続されている。各3本の接続用配線14、15は、所定の1つのフレキシブル配線基板6を介して、回路基板5の上面に設けられた配線(図示せず)と電気的に接続されている。この場合、フレキシブル配線基板6は、各3本の接続用配線14、15からなる2組の接続用配線群に対して3本の共通配線18を備えている関係から、図5において実線で示すように一部の共通配線18aがフレキシブル配線基板6の上面に設けられ、スルホール接続19によりフレキシブル配線基板6の下面側の共通配線18bと接続された構造となっている。残りの1つの半導体チップ4は上側の透明基板11の一端部の下面に搭載され、図示しない複数の出力側バンプ電極および複数の入力側バンプ電極が透明電極16および接続用配線17とそれぞれ電気的に接続されている。複数本の接続用配線17は、残りの1つのフレキシブル配線基板7を介して、回路基板5の下面に設けられた配線(図示せず)と電気的に接続されている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のこのような液晶表示装置の場合、所定の1つのフレキシブル配線基板6の共通配線18がスルホール接続19構造であるので、フレキシブル配線基板6の構造が複雑でコスト高になるという問題があった。このようなことは、半導体チップの数が多くなればなるほど、顕著である。
ところで、従来の他の液晶表示装置には、例えば図6に示すように、所定の1つのフレキシブル配線基板6として、下面のみに3本の共通配線18を備えた単純な構造のものを用いたものもある。なお、図6において、図5と同一名称部分には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
この図6に示す液晶表示装置では、下側の透明基板12の一端部の上面に3本の共通配線20を設け、この3本の共通配線20の各一端部を左側の3本の接続用配線14に一体的に接続するとともに、各他端部を単純な構造のフレキシブル配線基板6を介して回路基板5の上面側の配線(図示せず)と電気的に接続し、さらに3本の共通配線20と右側の3本の接続用配線15とが交差する部分を、例えば図7に示すように、共通配線20上に絶縁層21を設け、この絶縁層21上に接続用配線15を設けた構造としている。
しかしながら、図6および図7に示す液晶表示装置の場合、フレキシブル配線基板6の構造を単純化することができるが、下側の透明基板12の一端部の上面に設けた3本の共通配線20と右側の3本の接続用配線15との交差する部分の構造が複雑となり、このため液晶表示パネル1の製造工程数が増大し、コスト高になるという問題があった。また、共通配線20をITO等からなる透明電極13と同一の材料によって形成しているので、電源系の導通抵抗が高くなり、このため共通配線20に金メッキ等を施して電源系の導通抵抗を下げる必要が生じることがあり、ひいては液晶表示パネル1の製造工程数がさらに増大し、より一層コスト高になるという問題もあった。
この考案の目的は、フレキシブル配線基板の構造を単純化することができる上、共通配線と接続用配線との交差する部分の構造も単純化することのできる基板の配線構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この考案は、一の面に互いに交差しない複数本の接続用配線からなる1組の接続用配線群が複数組並列的に設けられた基板と、この基板の一の面と対向する面に互いに交差しない複数本の共通配線が前記複数組の接続用配線群の各接続用配線と交差する方向に延びて設けられたフレキシブル配線基板とを備え、前記基板の一の面に前記フレキシブル配線基板をその間に絶縁性接着剤層中に該絶縁性接着剤層の厚さよりも小さい粒径の導電性粒子を含有してなる異方性導電性接着剤層を介在させて重ね合わせ、前記フレキシブル配線基板の各共通配線と前記複数組の接続用配線群の相対応する各接続用配線とをその各交点においてそれぞれ前記異方性導電性接着剤層中の導電性粒子を介して電気的に接続したものである。
【0006】
【作用】
この考案によれば、フレキシブル配線基板の各共通配線と複数組の接続用配線群の相対応する各接続用配線とをその各交点においてそれぞれ異方性導電性接着剤層中の導電性粒子を介して電気的に接続しているので、フレキシブル配線基板の各共通配線と複数組の接続用配線群の相対応する各接続用配線との各交点以外を異方性導電性接着剤層中の絶縁性接着剤層を介してただ単にすなわち絶縁状態を維持して接着することにより、フレキシブル配線基板の基板の一の面と対向する面のみに共通配線を設ければよく、フレキシブル配線基板の構造を単純化することができ、また基板とフレキシブル配線基板との間に異方性導電性接着剤層を介在させるだけでよく、共通配線と接続用配線との交差する部分の構造も単純化することができる。
【0007】
【実施例】
図1〜図3はこの考案の一実施例を適用した液晶表示装置の要部を示したものである。これらの図において、図5と同一名称部分には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
この液晶表示装置において、図5に示す従来の液晶表示装置と基本的に異なる点は、所定の1つのフレキシブル配線基板6の構造とこのフレキシブル配線基板6を下側の透明基板12に接合する接合構造の2点である。すなわち、フレキシブル配線基板6は、長尺部31aと短尺部31bとからなるほぼL字状のフィルム基板31の下面に3本の共通配線32a〜32cがフィルム基板31の形状に沿ってほぼL字状にかつ互いに平行に設けられた構造となっている。下側の透明基板12の一端部の上面に設けられた各3本の接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cは、互いに平行で下側の透明基板12の一端部の端縁まで延びている。そして、フレキシブル配線基板6の長尺部31aの下面は、下側の透明基板12の一端部の上面に、その間の所定の2個所に方形状の異方性導電性接着剤層33、34が介在された状態で、重ね合わされている。異方性導電性接着剤層33、34は、絶縁性接着剤層35中に該絶縁性接着剤層35の厚さよりも小さい粒径の導電性粒子36が含有された構造となっている。
【0008】
フレキシブル配線基板6の長尺部31aの下面を下側の透明基板12の一端部の上面にその間の所定の2個所に異方性導電性接着剤層33、34を介在させてただ単に重ね合わせた状態では、図2に示すように、長尺部31aの下面に設けられた3本の共通配線32a〜32cの各先端部が下側の透明基板12上の左側の3本の接続用配線14a〜14cと直角に交差し、また長尺部31aの下面に設けられた3本の共通配線32a〜32cの各所定の個所が下側の透明基板12上の右側の3本の接続用配線15a〜15cと直角に交差している。
【0009】
そして、図2に示すように、左側の3本の接続用配線14a〜14cと3本の共通配線32a〜32cの各先端部との各交点を結ぶ直線Aおよび右側の3本の接続用配線15a〜15cと3本の共通配線32a〜32cの各所定の個所との各交点を結ぶ直線B上における異方性導電性接着剤層33、34が加圧されながら加熱されることにより、例えば図3に示すように、左側の3本の接続用配線14a〜14cと3本の共通配線32a〜32cの各先端部との各交点および右側の3本の接続用配線15a〜15cと3本の共通配線32a〜32cの各所定の個所との各交点のみが異方性導電性接着剤層33、34中の導電性粒子36を介して電気的に接続されているとともに、フレキシブル配線基板6の長尺部31aの下面が下側の透明基板12の一端部の上面に異方性導電性接着剤層33、34中の絶縁性接着剤層35を介して接着されている。なお、フレキシブル配線基板6の短尺部31bの下面は回路基板5の上面に図示しない異方性導電性接着剤層中の絶縁性接着剤層を介して接着され、短尺部31bの下面に設けられた3本の共通配線32a〜32cが回路基板5上の図示しない配線に異方性導電性接着剤層中の導電性粒子を介して電気的に接続されている。
【0010】
このように、この液晶表示装置では、フレキシブル配線基板6の各共通配線32a〜32cと2組の接続用配線群の相対応する各接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cとをその各交点においてそれぞれ異方性導電性接着剤層33、34中の導電性粒子36を介して電気的に接続し、フレキシブル配線基板6の各共通配線32a〜32cと2組の接続用配線群の相対応する各接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cとの各交点以外を異方性導電性接着剤層33、34中の絶縁性接着剤層35を介してただ単にすなわち絶縁状態を維持して接着しているので、フレキシブル配線基板6の下面のみに共通配線32a〜32cを設ければよく、フレキシブル配線基板6の構造を単純化することができ、また下側の透明基板12とフレキシブル配線基板6との間に異方性導電性接着剤層33、34を介在させるだけでよく、共通配線32a〜32cと2組の接続用配線群の各接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cとの交差する部分の構造も単純化することができ、ひいては液晶表示パネル1の製造工程数が増大しないようにすることができる。また、フレキシブル配線基板6のみに共通配線32a〜32cを設けているので、この共通配線32a〜32cを銅箔等で形成すると、電源系の導通抵抗を下げることができ、したがって電源系の導通抵抗を下げる必要があっても、液晶表示パネル1の製造工程数が増大しないようにすることができる。
【0011】
なお、上記実施例では、3本の共通配線32a〜32cと各3本の接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cの各交点が2組の接続用配線群の各組ごとに同一直線A、B上にある場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、3本の共通配線32a〜32cと各3本の接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cの各交点が2組の接続用配線群の全組において同一直線C上にあるようにしてもよい。このようにすると、一度の加圧加熱により、電気的接続および接着を行うことが可能となる。ところで、この発明は、基本的には、フレキシブル配線基板6の構造を単純化することができる上、共通配線32a〜32cと接続用配線14a〜14cおよび15a〜15cとの交差する部分の構造も単純化することができればよいので、共通配線32a〜32c、各3本の接続用配線14a〜14c、15a〜15cは互いに平行である必要はなく、要は互いに交差しない構造であればよい。
【0012】
また、上記実施例では、下側の透明基板12の一端部の上面に2つの半導体チップ2、3を搭載し、この2つの半導体チップ2、3の入力側接続用配線を共有化し、1つのフレキシブル配線基板6を介して回路基板5と電気的に接続した場合について説明したが、これに限定されず、例えば下側の透明基板12の一端部の上面に3つの半導体チップを搭載し、この3つの半導体チップの入力側接続用配線を共有化し、1つのフレキシブル配線基板6を介して回路基板5と電気的に接続するとともに、上側の透明基板11の一端部の下面に2つの半導体チップを搭載し、この2つの半導体チップの入力側接続用配線を共有化し、1つのフレキシブル配線基板7を介して回路基板5と電気的に接続するようにしてもよい。また、液晶表示装置に限定されず、同様な配線構造の基板を備えた他の電子機器にも適用しうることはもちろんである。
【0013】
【考案の効果】
以上説明したように、この考案によれば、フレキシブル配線基板の各共通配線と複数組の接続用配線群の相対応する各接続用配線とをその各交点においてそれぞれ異方性導電性接着剤層中の導電性粒子を介して電気的に接続しているので、フレキシブル配線基板の各共通配線と複数組の接続用配線群の相対応する各接続用配線との各交点以外を異方性導電性接着剤層中の絶縁性接着剤層を介してただ単にすなわち絶縁状態を維持して接着することにより、フレキシブル配線基板の基板の一の面と対向する面のみに共通配線を設ければよく、フレキシブル配線基板の構造を単純化することができ、また基板とフレキシブル配線基板との間に異方性導電性接着剤層を介在させるだけでよく、共通配線と接続用配線との交差する部分の構造も単純化することができ、ひいては基板の製造工程数が増大しないようにすることができる。また、フレキシブル配線基板のみに共通配線を設けているので、この共通配線を銅箔等で形成すると、電源系の導通抵抗を下げることができ、したがって電源系の導通抵抗を下げる必要があっても、基板の製造工程数が増大しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の一実施例を適用した液晶表示装置の要部の平面図。
【図2】この液晶表示装置の一部の詳細図。
【図3】図2のX−X線に沿う断面図。
【図4】この考案の他の実施例を適用した液晶表示装置の一部の図2同様の詳細図。
【図5】従来の液晶表示装置の一例の平面図。
【図6】従来の液晶表示装置の他の例の平面図。
【図7】図6のY−Y線に沿う断面図。
【符号の説明】
1 液晶表示パネル
2〜4 半導体チップ
5 回路基板
6 フレキシブル配線基板
11 上側の透明基板
12 下側の透明基板
14a〜14c、15a〜15c 接続用配線
32a〜32c 共通配線
33、34 異方性導電性接着剤層
35 絶縁性接着剤層
36 導電性粒子

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 一の面に互いに交差しない複数本の接続用配線からなる1組の接続用配線群が複数組並列的に設けられた基板と、この基板の一の面と対向する面に互いに交差しない複数本の共通配線が前記複数組の接続用配線群の各接続用配線と交差する方向に延びて設けられたフレキシブル配線基板とを備え、前記基板の一の面に前記フレキシブル配線基板をその間に絶縁性接着剤層中に該絶縁性接着剤層の厚さよりも小さい粒径の導電性粒子を含有してなる異方性導電性接着剤層を介在させて重ね合わせ、前記フレキシブル配線基板の各共通配線と前記複数組の接続用配線群の相対応する各接続用配線とをその各交点においてそれぞれ前記異方性導電性接着剤層中の導電性粒子を介して電気的に接続した、ことを特徴とする基板の配線構造。
【請求項2】 前記フレキシブル配線基板の複数本の共通配線は互いに平行し、かつ前記複数組の接続用配線群の各複数本の接続用配線も互いに平行することを特徴とする請求項1記載の基板の配線構造。
【請求項3】 前記各交点は前記複数組の接続用配線群の各組ごとに同一直線上にあることを特徴とする請求項2記載の基板の配線構造。
【請求項4】 前記各交点は前記複数組の接続用配線群の全組において同一直線上にあることを特徴とする請求項2記載の基板の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】実開平5−1265
【公開日】平成5年(1993)1月8日
【考案の名称】基板の配線構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−54911
【出願日】平成3年(1991)6月20日
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)