基板アンロード装置および基板アンロード方法
【課題】 基板の取り外し作業を簡素化するとともに、基板の厚みが薄い場合でも取り外し、積載を容易に行う。
【解決手段】 基板取り外し手段50は、搬送用ハンガー15が降下した状態で、基板Wを狭持するクランプ48の解除を行う。基板引き込み手段62は、搬送用ハンガー15が挟持する基板Wの下端を把持する把持部64を有し、挟持が解除された当該基板Wの下端を把持した状態で基板受け52内を降下する。
【解決手段】 基板取り外し手段50は、搬送用ハンガー15が降下した状態で、基板Wを狭持するクランプ48の解除を行う。基板引き込み手段62は、搬送用ハンガー15が挟持する基板Wの下端を把持する把持部64を有し、挟持が解除された当該基板Wの下端を把持した状態で基板受け52内を降下する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気めっき装置などの表面処理装置で用いられる搬送用ハンガーから、基板を取り外す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、基板アンロード装置(アンローダー5’)を備えた表面処理装置の一般的な構造について、図14、図15を用いて以下に説明する。図14は、表面処理装置100を上方からみた平面図である。図15は、図14に示す表面処理装置100をα方向から見た側面図である。
【0003】
図14および図15に示すように、表面処理装置100は、いわゆるプッシャー式のめっき装置であり、プリント基板などの基板を保持する搬送用ハンガー15と、当該搬送用ハンガー15を摺動可能状態で昇降する昇降ガイドレール10、12と、当該搬送用ハンガー15を前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送するための固定ガイドレール11、13とを備えている。
【0004】
図14に示すように、これらのガイドレール10〜13に沿って、めっき前処理工程を行うための各種前処理槽1、電気めっきを行うためのめっき槽2、めっき後処理工程を行うための回収槽3と水洗槽4、基板の取り外しを行うための基板アンロード装置が設けられたアンロード部5、搬送用ハンガー15に付着しためっき皮膜等を剥離(ハンガー戻し工程)するための剥離槽6、剥離処理後に搬送用ハンガー15の水洗を行う水洗槽7、基板の取り付けを行うロード部8が設けられている。
【0005】
図14に示す昇降ガイドレール10、12は、搬送用ハンガー15に基板W(プリント基板など)の取り付けや取り外しを行ったり、基板Wを各種処理槽(めっき槽2、剥離槽6、水洗槽、湯洗槽等)内に浸漬する際に昇降するガイドレールである。固定ガイドレール11、13は、それぞれめっき槽2、剥離槽6等に降下した搬送用ハンガー15を搬送するために固定されたガイドレールである。図15に示す昇降ガイドレール10、12が降下した状態において、固定ガイドレール11、13と一体となって、ガイドレール10〜13が1つの環状ガイドレールを構成する。
【0006】
図14に示す表面処理装置100によって搬送される従来の搬送用ハンガー15の構造を、図16および図17を用いて以下に説明する。図16は、図15に示す搬送用ハンガー15の構造を示す詳細図である。図17は、搬送用ハンガー15の一部中央断面図である。
【0007】
図16に示すように搬送用ハンガー15は、被処理物Wを保持するクランプ48を複数備えた被処理物保持部材90と、固定ガイドレール11などのガイドレールに対して摺動接触する摺動部材35と、これらを連結する連結部材44を有している。
【0008】
図16に示すように、被処理物保持部材90は、連結部材44に連設されかつ搬送方向に略水平に伸びる水平杆部46と、この水平杆部46の所定箇所に垂下した状態で連設される複数の垂杆部49と、この垂杆部49の下端に基板を狭持するクランプ48を配置して構成される。
【0009】
クランプ48は、図17に示すように、垂杆部49に取付けられる固定部材48a、可動部材48bとによって構成されており、可動部材48bは固定部材48aに設けられた軸に回動可能に取付けられている。クランプ48は、ばねによって固定部材48aと可動部材48bが先端部において通常閉じる状態となっている。ばねの力に逆らって可動部材48bの上端部を押し込むとクランプ48の先端部において固定部材48aと可動部材48bとに隙間ができ、この隙間に基板Wを差込むことができる。
【0010】
図14に示すアンロード部5に設けられた基板アンロード装置5’は、図18に示すように、クランプ開放手段50とハンガーサポート手段51、基板受け52、基板落脱手段58、および基板サポート手段60を有している。
【0011】
クランプ開放手段50は、押圧シリンダの先端にクランプ押圧部材を取付けて構成されており、図14に示すアンロード部5の上方に達した搬送用ハンガー15が、図18に示すように昇降ガイドレール12と共に降下した際、クランプ開放手段50の押圧シリンダが伸長作動してクランプ48(図17)の可動部材48b上端部を押圧して基板Wの挟持を解除する。ハンガーサポート手段51は、支持シリンダの先端に支持板を取付けて構成されており、クランプ開放手段50が作動する前に、ハンガーサポート手段51の支持シリンダが伸長作動して、上記降下してきた搬送用ハンガー15の被処理物保持部材90をクランプ開放手段50の裏側から支持板によって当接支持する。
【0012】
基板受け52は、昇降ガイドレール12と共に降下してきた搬送用ハンガー15の下方に配設されており、クランプ48による挟持が解除され、落下してくる基板Wを基板サポート手段60で受け止めて収納する。
【0013】
図19に、基板サポート手段60および基板受け52の構造を示す。基板サポート手段60は、図19に示すように、基板受け52内に落下してきた基板Wを所定の停止位置で受け止める基板停止部材60aと、モーターや電動アクチュエータなどの駆動により基板停止部材60aを所定の高さ位置に移動させる停止位置調節リフト60bとにより構成されている。具体的には、基板サポート手段60の基板停止部材60aは、停止位置調節リフト60bに取り付けられた支持面に対して垂直方向に延びた複数の棒材で構成されており、これらの棒材が基板受け52内を貫けるように、図19に示す基板受け52の側壁52eには、切り欠き52bが、側壁52fには切り欠き52cが設けられ、基板受け52の底部52gにも切り欠き52hが設けられている。
【0014】
上記のような構成により、基板アンロード装置5’においては、昇降ガイドレール12と共に降下してきた搬送用ハンガー15が挟持する基板Wが、クランプ開放手段50及びハンガーサポート手段51の動作によって、クランプ48による挟持が解除される。狭持解除により基板受け52に落下してくる基板Wは、基板受け52内において当該基板サポート手段60で所定の高さで受け止められる。その後は、旋回手段54によって基板受け52が水平状態に旋回され、基板受け52の切り欠きを通して基板Wを支持する搬送ローラ56によって基板Wが搬出されることになる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−131942号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記のような従来の基板アンロード装置5’には、以下のような問題点があった。
【0017】
基板Wが落下しても、基板サポート手段60に達するまでに、基板Wが途中で基板受け52の内面に貼りついてしまう場合があった。特に、厚さが0.5mm以下であるような薄い基板Wの場合、基板Wの質量が少ないため、基板受け52の内面に貼りつきやすい。そのような状態で基板受け52が旋回すると、基板受け52からはみ出した基板Wが装置と接触するおそれがある。このため、表面処理装置100(図14)の操業を一旦停止して、基板受け52から基板Wを取り除いたり、基板Wを基板サポート手段60まで押し下げる作業が別途必要になり、めっき作業の効率が著しく低下するという問題があった。
【0018】
この発明は、上記各問題を解決すべく、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)この発明の基板アンロード装置は、
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する基板取り外し手段と、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記基板取り外し手段により挟持が解除された当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
これにより、搬送用ハンガーから取り外した基板が基板受けの内面に貼り付いくのを防止することが可能となり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することができる。
【0021】
(2)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板引き込み手段が、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除する前に、把持部により基板の下端を把持し、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除した後に、基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下すること、
を特徴とする。
【0022】
これにより、基板を搬送用ハンガーから取り外す前に基板の下端を把持し、基板を搬送用ハンガーから取り外した後、基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下させて、基板が基板受けの内面に貼り付くのを防止することが可能となり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することができる。
【0023】
(3)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板受けの少なくとも1の側壁には切り欠きが鉛直方向に沿って設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする。
【0024】
これにより、基板受けの切り欠きから挿入した把持部によって基板を把持し、切り欠きに沿って鉛直方向に降下させることが可能であり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することができる。
【0025】
(4)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板受けの少なくとも底部に、切り欠きが設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする。
【0026】
これにより、基板受けの底部に設けた切り欠きから挿入した把持部によって基板を把持して、鉛直方向に降下させることが可能であり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える省スペースの基板アンロード装置を提供することができる。
【0027】
(5)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板引き込み手段が、前記基板受けの底部から所定の高さで前記把持部による基板の把持を解除すること、
を特徴とする。
【0028】
これにより、基板を基板受けの底部付近まで確実に案内することができる。
【0029】
(6)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板取り外し手段が搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する際に、基板の両側から交互に前後移動して接触することにより、基板を落脱させるための基板落脱手段を備えたこと、
を特徴とする。
【0030】
これにより、搬送用ハンガーから基板を確実に取り外すことができる。
【0031】
(7)この発明の基板アンロード装置は、
前記搬送用ハンガーから基板が取り外されたか否かを検知する基板取り外し検知手段を備えたこと、
を特徴とする。
【0032】
これにより、搬送用ハンガーから確実に基板が取り外されていない場合に、これを検知して、例えば、装置を一時停止したり、基板落脱手段による基板への接触を繰り返すことができる。
【0033】
(8)この発明の基板アンロード装置は、
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
基板を挟持した状態で降下する搬送用ハンガーと、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記搬送用ハンガーと共に、当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0034】
これにより、搬送用ハンガーによって基板を挟持すると共に、基板引き込み手段によって基板を把持した状態で、基板を安全、かつ、確実に基板受け内に降下させることができる。
【0035】
(9)この発明の基板アンロード方法は、
前記搬送用ハンガーが降下する速度を、前記基板引き込み手段が降下する速度より速い速度または同じ速度に設定したこと、
を特徴とする。
【0036】
これにより、搬送用ハンガーによって基板を挟持すると共に、基板引き込み手段によって基板を把持した状態で、基板を基板受け内に降下させる間、基板が外れる等して損傷するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の基板アンロード装置(アンローダー5a)の構造を示す図である。
【図2】基板落脱手段57、58の構造を示す図である。
【図3】図3Aは、図1に示す基枠74に固定された基板引き込み手段62の正面図(図1のβ−矢視図)であり、図3Bは図1に示す引き込み手段62を拡大した側面図である。
【図4】図1に示す把持部64の詳細を示す拡大図である。
【図5】図1に示す基板受け52の構造を示す斜視図である。
【図6】基板受け52と把持部64の位置関係を示す図5のγ−断面矢視図である。
【図7】図7Aは、基板受け52を旋回した状態を示す側面図であり、図7Bは、旋回した基板受け52の底面図である。
【図8】基板アンロード装置の制御フローチャートである。
【図9a】基板Wの下端が把持部64によって把持された状態を示す図である。
【図9b】把持部64による基板Wの下端の把持が解除された状態を示す図である。
【図10】昇降ガイドレール10、12の上部に設けられる間欠搬送手段17、22の構造を示す平面図である。
【図11a】他の実施形態におけるアンローダーの構造を示す図である。
【図11b】他の実施形態におけるアンローダーの制御フローチャートである。
【図12】他の実施形態におけるアンローダーの構造を示す図である。
【図13】他の実施形態におけるアンローダーの構造を示す図である。
【図14】従来技術の電気めっき装置100を上方からみた平面図である。
【図15】従来技術の電気めっき装置100を図14のα方向から見た側面図である。
【図16】従来技術の搬送用ハンガー15の構造を示す詳細図である
【図17】従来技術の搬送用ハンガー15の一部中央断面図である。
【図18】従来技術のアンローダーの構造を示す図である。
【図19】従来技術の基板受け52および基板サポート手段60の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1.基板アンロード装置の構造
図1は、この発明の基板アンロード装置であるアンローダー5aの構造を示す図である。なお、図1に示すアンローダー5aは、図14に示す表面処理装置100のアンロード部5に設けられている。
【0039】
図1に示すアンローダー5aは、基板Wを挟持した搬送用ハンガー15から基板Wを取り外すための装置であり、搬送用ハンガー15から基板Wを取り外して積載(集積)する基板Wのアンロード作業に用いられる。
【0040】
アンローダー5aの基枠70には、図1に示すようにハンガーサポート手段51および第1の基板落脱手段57が設けられている。また、搬送用ハンガー15を挟んで基枠70と反対側に位置し、アンローダー5aを構成する基枠72には、基板取り外し手段であるクランプ開放手段50、取り外し検知手段53、第2の基板落脱手段58、基板受け52、旋回手段54および基板搬送手段56が設けられている。基枠70の下方に位置し、アンローダー5aを構成する基枠74には、基板引き込み手段62が設けられている。なお、基枠70、基枠72および基枠74は、鋼材で構成されている。
【0041】
まず、搬送用ハンガー15から基板を取り外すときに用いられる各手段、すなわち、図1に示すハンガーサポート手段51、基板取り外し手段であるクランプ開放手段50、取り外し検知手段53、第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58の構成について説明する。
【0042】
ハンガーサポート手段51は、図1に示す支持板51aおよび支持シリンダ51bによって構成されている。ハンガーサポート手段51は、搬送用ハンガー15が昇降ガイドレール12と共に降下した状態(図1に示す位置)で、基枠70側(図面左側)から被処理物保持部材90に対して当接して搬送用ハンガー15を支持する。
【0043】
具体的には、クランプ開放手段50がクランプ48の解除を行う前に、支持シリンダ51bが作動して支持板51aが搬送用ハンガー15の被処理物保持部材90に当接して搬送用ハンガー15の裏側から支持する。これにより、搬送用ハンガー15の被処理物保持部材90がクランプ48の解除の際に反り返るのを防止することができる。
【0044】
基板取り外し手段であるクランプ開放手段50は、図1に示すクランプ押圧部材50aおよび押圧シリンダ50bによって構成されている。クランプ開放手段50は、搬送用ハンガー15が昇降ガイドレール12と共に図1に示すような位置に降下した状態で、基板Wを挟持するクランプ48の解除を行う。
【0045】
具体的には、図1に示す上述したハンガーサポート手段51の支持シリンダ51bが作動して、支持板51aが搬送用ハンガー15に当接された状態となった後、押圧シリンダ50bが作動することでクランプ押圧部材50aがクランプ48の可動部材48b(図17参照)の上端部を押圧し、基板Wの挟持を解除する。
【0046】
第1の基板落脱手段57は、図1に示す基板押出部材57aと押出シリンダ57bで構成される。同様に、第2の基板落脱手段58は、図1に示す基板押出部材58aと押出シリンダ58bで構成される。第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58は、クランプ開放手段50がクランプ48を解除した後に、基板受け52の開口部52a付近において基板Wの両側から交互に水平方向に前後動して接触することにより、基板Wを基板受け52内に確実に落脱させるために用いられる。
【0047】
例えば、基板Wに付着した処理液の表面貼力やめっきのこびりつきによって、クランプ48の挟持が解除されても基板Wがクランプ48から落脱しなかったり、基板受け52の側壁52eの内面に貼り付くことがある。このような場合であっても、基板押し出し部材58aが基板Wに接触する(例えば、数ミリ程度押し込む)ことによって衝撃を与え、基板Wを揺らして落下させることができる。
【0048】
図2Aは、第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58を上方から見た平面図である。なお、図2Aに示すように、第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58は、押出方向が正反対である以外は同じ構造である。
【0049】
基板落脱手段57(58)の基板押出部材57a(58a)は、図2Aに示すように、押出シリンダ57b(58b)に取り付けられた平板部材571(581)に、基板Wを接触して押出する突起材572(582)を、例えば、6個取り付けて構成されている。突起材572(582)は、樹脂(PP)で形成されており、先端が丸く加工されている。これは、基板Wを押出した際に突起材572(582)が基板Wを傷つけないようにするためである。
【0050】
図2Bは、搬送用ハンガー15と、基板Wに対する上記基板落脱手段57、58の突起材572、582との位置関係を示す図である。図2Bに示すように、基板落脱手段57、58の突起材572、582は、搬送用ハンガー15のクランプ48よりも下側(例えば、数ミリ下)に位置し、両端のクランプ48よりも内側の接触位置573、583で基板Wを押し出すよう設計されている。
【0051】
これは、特に厚さが0.5mm以下である薄い基板でも、確実に押出動作が基板Wに伝わるようにし、基板Wとクランプ48や基板受け52内側壁との間に起きる処理液の表面貼力やめっきのこびりつきを解消するためである。なお、基板Wを確実に落下させるためには、図2Bに示す突起材572、582の接触位置573、583をできるだけクランプ48の近傍とすることが好ましいが、さらに基板受け52に基板Wが貼り付くのを防止したいような場合には、基板Wを大きく揺らせるためにクランプ48から離れた位置(隣り合うクランプ48の中間位置)を接触位置573、583としてもよい。
【0052】
図1に示す取り外し検知手段53は、基板Wが確実に搬送用ハンガー15から取り外されたか否かを検知するためのセンサー(光学センサー)であり、クランプ48と同じ高さで、かつ、クランプ48と横方向にずれた位置(例えば、図2Bに示す突起材582の接触位置583よりも上の位置)に焦点を合わせて設置される。すなわち、センサーにより基板Wが検知されているときは、基板Wが搬送用ハンガー15からまだ取り外されていないと判断され、センサーにより基板Wが検知されないときは、基板Wが搬送用ハンガー15から取り外されたと判断される。
【0053】
つぎに、図1に示す基枠74に設けられた基板引き込み手段62の構造について、図3などを用いて説明する。
【0054】
基板引き込み手段62は、図1に示すように、搬送用ハンガー15が挟持する基板Wの下端を把持するための把持部64(把持機構)と、当該把持部64を上下移動させるための昇降リフト66(昇降機構)とを有している。かかる構成により、クランプ開放手段50による挟持が解除された基板Wの下端を把持部64で把持した状態で、基板Wを昇降リフト66によって降下させて基板受け52内に安全、かつ、確実に収容することができる。
【0055】
図3Aは、図1に示す基枠74に固定された基板引き込み手段62の正面図(図1のβ−矢視図)であり、図3Bは図1に示す引き込み手段62を拡大した側面図である。
【0056】
図1に示す把持爪80、82を備えた昇降本体84は、図3Aに示すように、上下移動をガイドする固定ロッド88に対して摺動接触するベアリング86を有しており、昇降リフト66から昇降板92(図3Bに示すように、昇降本体84に取り付けられている)が受けた動力により、上下移動する構造になっている。
【0057】
図3Bに示すように、把持爪80は、把持シリンダ81に取り付けられており、把持爪82は把持シリンダ83に取り付けられており、何れの把持爪80、82も以下に示すように、前後移動が可能である。
【0058】
図4は、図1に示す把持部64の詳細を示す拡大図である。なお、図4に示す把持爪80、82は、鋼材で構成される。
【0059】
図4に点線で示す基板Wを把持面80aと把持面82aの間で把持するために、把持爪80は前方(図4のG方向)に移動し、把持爪82は後方(図4のH方向)に移動する。基板Wの把持を解除するためには、これとは逆の反対に、把持爪80は後方(図4のH方向)に移動し、把持爪82は前方(図4のG方向)に移動する。なお、基板Wを把持する前(初期状態)の把持爪80、82は、図3Bに示すように開放時に基板受け52の外側に位置する構成を採用している。これは、基板受け52のどの位置に基板Wが降下したときでも、基板Wを確実に把持するためである。
【0060】
なお、把持爪80の把持面80aおよび下面80bには、腐食防止のためにポリテトラフルオロエチレン(テフロン:商標名)がコーティングされている(図4において斜線で示す。)。把持爪82の把持面82aおよび上面82b(図4において斜線で示す。)にも、腐食防止のためにポリテトラフルオロエチレンがコーティングされている。このように、接触面である把持爪80の下面80bと把持爪82の上面82bにポリテトラフルオロエチレンがコーティングされているため、把持爪80と把持爪82の間の摩擦を低減し、これらを円滑に前後移動させることができ、基板Wから落ちる水滴によるサビ等の腐食を防止することができる。
【0061】
図4に示す把持爪80、82を有する把持部64は、昇降リフト66の駆動により、クランプ開放手段50がクランプ48を開放する前に、搬送用ハンガー15が挟持する基板Wの下端の位置(図3Bに示す高さh1)まで上昇する。その後、把持部64が基板Wの下端を把持し、昇降リフト66の駆動により、基板Wの下端を把持した状態で降下する。これにより、最終的に基板受け52の底部において基板Wが支承される。
【0062】
さらに、取り外した基板Wを搬出するときに用いられる各手段、すなわち、図1に示す基板受け52、旋回手段54、基板搬送手段56の構成について、図5、図6などを用いて以下に説明する。なお、図5は、基板受け52の構造を示す図であり、この実施形態では、基板受け52はPVC(塩化ビニル)で成型されている。図6は、図1に示す基板受け52と把持部64の位置関係を示す図5のγ−断面矢視図である。
【0063】
図5に示すように、基板受け52には、側壁52eの切り欠き52bと、側壁52fの切り欠き52cと、底部52gの切り欠き52hが設けられている。また、基板受け52には、図1に示すように、回転軸54cを中心としてE方向に旋回可能となるように、旋回手段54が連結されている。
【0064】
図6を用いて、上記基板引き込み手段62の把持部64と基板受けに設けた切り欠き52b、52cとの位置関係を示す。図6に示すように、基板引き込み手段62の把持部64は、切り欠き52b、52c、52hに対応した位置に設けられており、把持部64が基板受け52と接触せずに昇降することが可能な構造となっている。
【0065】
また、図1に示す基板搬送手段である搬送ローラ56は、基板受け52が旋回して水平状態となったとき(図1の点線で示す)に、上記切り欠き52b(図2を参照)を通して内部に案内される。これにより、図7A、Bに示すように、基板搬送手段である搬送ローラ56は、基板受け52が旋回手段54によって水平状態となった位置において、上記切り欠き52bを通して基板Wを支持する。なお、図7Aは、基板受け52を旋回した状態を示す側面図であり、図7Bは、旋回した基板受け52の底部図である。
【0066】
このように基板受け52の側壁(搬出側)に、図2に示すような切り欠き52bを設けたことで、図7Bに示すように基板受け52の切り欠き52bを通して基板Wを搬送ローラ56によって支持して、図7AのF方向に基板Wを円滑に搬送することができる。例えば、基板受け52の側壁52eから搬送ローラ5が10ミリ程度突出することにより基板Wが支持される。
【0067】
また、基板受け52は、図1に示すように、搬送用ハンガー15が鉛直方向(図1のD方向)に降下した際に、基板を受け入れる開口部52aを有しており、開口部52aは基板Wを基板受け52の内部に確実に案内することができるように上方に向かって幅を広げた形に成形されている。なお、基板受け52の上方に向かって幅を広げた部分を分離し、基枠に固定するように構成してもよい。
【0068】
また、基板受け52は、図1に示すように、搬送用ハンガー15のクランプ48の位置(P)が基板受け52の中央(M)よりも側壁52eの内面付近(例えば、側壁52eの内面から10〜50ミリ)に位置するように配設され、基板Wを基板受け52の側壁52eの内面付近に沿って案内する構造としている。これにより、基板受け52が図1のE方向に旋回するときに、基板受け52内に収容された基板Wが基板受け52内を移動した衝撃で傷つくのを防止できる。
【0069】
旋回手段54は、図1に示すように、基板受け52を旋回させる動力となる旋回シリンダ54aと、一端が上記基板受け52の下端部に固定され、他端が旋回シリンダ54aに連結された、旋回シリンダ54aの動力を基板受けに伝えるL型の一体部材である旋回腕54bとで構成される。
【0070】
図1に示す旋回シリンダ54aが伸長作動して旋回腕54bが基枠72に固着された軸54cを中心として旋回することで、基板受け52は、基板Wが収容された状態で図1のE方向に旋回される。なお、旋回シリンダ54aの一端は、軸54eを介して、基枠72に対して回転可能に接続されており、他の一端は基板受け52に固着された旋回腕54bに固定した軸54dに対して回転可能に接続されている。
【0071】
基板搬送手段は、駆動モータで駆動する搬送ローラ56で構成されており、図1の点線位置に旋回された基板受け52が収容する基板Wを、開口部52aから水平方向(図1のF方向)に搬出する。なお、搬送ローラ56の直径は、例えば40ミリである。これは、あまり大きい直径のローラを用いた場合、薄い基板では、基板の端部が搬送ローラ56間に入り込み、搬送不良を起こすおそれがあるためである。また、搬送ローラ56の回転軸は旋回した状態の基板受け52よりも下方に位置している。
【0072】
2.アンローダ5aの制御フローチャート
アンローダ5aにおける制御フローチャートを図8を用いて説明する。なお、アンローダ5aの動作は、電気めっき装置100(図14)の各手段に接続された制御部(図示せず、CPU、PLCなどによって構成)により制御される。
【0073】
基板Wを有する搬送用ハンガー15が、図14に示す電気めっき装置100の水洗槽4からアンロード部5に搬送されてきたことが検出されると、図8に示すように、制御部からの指令により、まず、昇降ガイドレール12が図1のD方向に降下して停止する(ステップS01)。
【0074】
降下した昇降ガイドレール12が停止すると、基板引き込み手段62の把持部64は、昇降リフト66の動力を受けて、図3BのX1方向に移動し、所定位置まで上昇する(ステップS02)。ここで、所定位置とは、昇降ガイドレール12が降下した時に、基板Wの下端が到達する高さ(図3Bに示す高さh1)またはこれより少し高い位置であり、基板Wの縦方向の長さに対応して設定される。
【0075】
さらに、把持部64の把持爪80が前方向(図4のG方向)に作動し、把持爪82が後方向(図4のH方向)に作動する(ステップS03)。これにより、図9aに示すように、基板Wの下端が把持部64によって把持された状態になる。
【0076】
さらに、制御部からの指令により図1に示す支持シリンダ51bが作動し、支持板51aが被処理物保持部材90に当接することで搬送用ハンガー15が支持される(ステップS04)。その後、さらに所定時間が経過すると、制御部からの指令により押圧シリンダ50bが作動し、クランプ押圧部材50aがクランプ48の上端部を押圧することにより、基板Wの挟持を解除する(ステップS06)。
【0077】
所定時間が経過すると、第1の基板落脱手段57の押出シリンダ57bが作動し、その基板押出部材57aが基板Wに接触する(ステップS08)。所定時間が経過すると、第1の基板落脱手段57の押出シリンダ57bが作動し、その基板押出部材57aが元の位置に退避する(ステップS09)。
【0078】
さらに所定時間が経過すると、第2の基板落脱手段58の押出シリンダ58bが作動し、基板押出部材58aが基板Wに接触する(ステップS10)。所定時間が経過すると、第2の基板落脱手段58の押出シリンダ58bが作動し、基板押出部材58aが元の位置に退避する(ステップS11)。
【0079】
つぎに、基板取り外し検知手段であるセンサー53が、基板を検知しないとき、つまり、基板Wが確実に取り外されたと判断したとき(ステップS12のYes)、基板引き込み手段62の把持部64は、昇降リフト66の動力を受けて図9aのX2方向に移動し、基板Wを把持した状態で基板受け52内を降下する(ステップS14)。一方、基板取り外し検知手段53であるセンサーが、基板を検知しないときは、基板Wが確実に取り外されていないと判断し、ステップS08に戻って基板Wを落脱する動作を繰り返す(ステップS12のNo)。
【0080】
把持部64が、図9aに示す位置から降下して所定位置(図9bに示す高さh2)に到達すると、制御部からの指令により、把持部64の把持爪80が後方向に引き込むよう作動し、把持爪82が前方向に押し出すよう作動する(ステップS16)。これにより、基板Wの下端が把持部64による把持から開放された状態になる。なお、把持部64による把持を解放する所定位置(図9bに示す高さh2)に到達したことは、例えば、ステップS14において、図3Bに示す高さh1から基板引き込み手段62の把持部64が降下を開始してから所定時間経過したことにより検知できる他、昇降リフト66から高さ位置の出力を受けて検知することもできる。
【0081】
さらに、把持を解放した把持部64は、基板受け52より下の初期位置(図3Bに示す位置)で停止する(ステップS18)。
【0082】
以上のように、基板Wが基板受け52に収容されると、旋回シリンダ54aが作動し、基板受け52が図1に示す回転軸54cを中心として、E方向に旋回し、基板Wが搬送ローラ56によって水平状態で保持される(ステップS20)。搬送ローラ56は、基板受け52が水平状態になると回転を開始し、基板Wを図1のF方向に搬出する(ステップS22)。
【0083】
基板Wが搬出されると、昇降ガイドレール12が上昇すると共に、各シリンダ(支持シリンダ51b、押圧シリンダ50b、旋回シリンダ54aなど)がそれぞれ退避して元の状態に戻る(ステップS24)。
【0084】
その後、基板Wを取り外した搬送用ハンガー15は図14に示す剥離槽6へと送られる。一方、アンロード部5には水洗槽4から新たに基板Wを有する搬送用ハンガー15が搬送され、上記アンローダ5aによる一連の動作(図8のステップS01〜S24)が行われることになる。
【0085】
以上のように、この発明のアンローダー5aは、クランプ開放手段50、ハンガーサポート手段51、基板落脱手段57,58、基板引き込み手段62を備えたことで、基板Wの表面に付着している処理液の表面貼力によって基板受け52内に基板Wが貼り付いて落下しないことが防止される。これにより、装置停止の危険性や、薄い基板Wが基板受け52内に円滑に収容されないことによる折れ曲がり等の不良を回避することができる。
【0086】
3.表面処理装置100および搬送用ハンガー15の構造
この発明のアンローダー5aを用いる表面処理装置の構造は、前述の図14、図15に示すものと同じである。
【0087】
すなわち、図14および図15に示すように、表面処理装置100は、いわゆるプッシャー式のめっき装置であり、プリント基板などの基板Wを保持する搬送用ハンガー15、当該搬送用ハンガー15を摺動可能状態で昇降する昇降ガイドレール10、12、当該搬送用ハンガー15を前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送する固定ガイドレール11、13を備えており、これらのガイドレール10〜13に沿って、めっき前処理工程を行うための前処理槽1、電気めっき工程を行うためのめっき槽2、めっき後処理工程を行うための回収槽3と水洗槽4、基板Wの取り外しを行うためのアンロード部5、搬送用ハンガー15に付着しためっき皮膜等を剥離するための剥離槽6、剥離処理後に搬送用ハンガー15の水洗を行う水洗槽7、基板Wの取り付けを行うロード部8が設けられている。図14または図15に示すように、昇降ガイドレール10、12は、搬送用ハンガー15を間欠的に搬送し、当該搬送用ハンガー15に基板W(プリント基板など)の取り付け(ロード)、取り外し(アンロード)を行ったり、基板Wを各種処理槽(めっき槽2、剥離槽6、水洗槽、湯洗槽等)内に浸漬等する際に昇降するガイドレールである。
【0088】
図16、図17などを用いて、この発明の搬送用ハンガー15の構造について説明する。
【0089】
図16に示すように、搬送用ハンガー15は、基板Wを保持するクランプ48を複数備えた被処理物保持部材90と、固定ガイドレール11に対して摺動接触する摺動部材35と、これらを連結する連結部材44を有している。摺動部材35および連結部材44の材質としては、銅、真ちゅうが用いられる。
【0090】
また、図17に示すように、摺動部材35の上部にはチェーンベルト39(図14に示す固定ガイドレール搬送手段19を構成)に噛み合うワンウェイクラッチ方式のギヤ40を有する軸受け36が固着されている。このため、固定ガイドレール11,13上でチェーンベルト39に噛み合うギヤ40は、前送り時において図16に示すB方向へのみ回転することができる。
【0091】
また、図16に示すプッシャー当接面37に、間欠搬送手段17、22のプッシャー16,21(図15)が当接されることにより、搬送用ハンガー15の搬送が行われる。例えば、図10に示す間欠搬送手段22のプッシャー21cが図14の(j)の位置にある搬送用ハンガー15のプッシャー当接面37に当接することにより、搬送用ハンガー15がアンローダ5aの位置(図14の(k)位置)に搬送される。図10は、昇降ガイドレール10、12の上部に設けられる間欠搬送手段17、22の構造を示す平面図である。
【0092】
なお、図17の爪当接部32は、搬送用ハンガー15の搬送手段である位置決め搬送手段18の搬送爪30(図14)が当接して引っかかる部分である。
【0093】
4.その他の実施形態
なお、上記実施形態では、クランプ解放手段50が基板Wの狭持を解除した後に、基板引き込み手段62の把持部64によって、基板Wを基板受け52内に収容することとしたが、図11aに示すように、基板Wを挟持した状態の搬送用ハンガー15と共に、基板引き込み手段62の把持部64が基板Wの下端を把持した状態で基板受け内52を降下するように構成してもよい。
【0094】
この場合、制御フローチャートは、例えば、図11bに示すようなものとなる。なお、この実施形態では、図1に示す基板落脱手段58および取り外し検知手段53は省略しており、図8のステップS06〜ステップS12に対応する制御は存在しない。
【0095】
すなわち、基板Wを有する搬送用ハンガー15が、図14に示す電気めっき装置100の水洗槽4からアンロード部5に搬送されてきたことがセンサー(図示せず)によって検出されると、図8に示すように、制御部からの指令により、まず、昇降ガイドレール12が図1のD方向に降下して停止する(ステップS01)。
【0096】
降下した昇降ガイドレール12が停止すると、基板引き込み手段62の把持部64は、昇降リフト66の動力を受けて、図3BのX1方向に移動し、所定位置まで上昇する(ステップS02)。さらに、把持部64の把持爪80が前方向(図4のG方向)に作動し、把持爪82が後方向(図4のH方向)に作動する(ステップS03)。ここまでは、図8に示す制御フローチャートと同じである。
【0097】
その後、図11aに示すように、基板Wの上端を狭持した搬送用ハンガー15は所定速度VAで、基板Wの下端を把持した把持部64は所定速度VBでそれぞれ降下する(ステップS13)。さらに、所定位置に達すると、搬送用ハンガー15のクランプ48による把持を解除するように、クランプ解放手段50およびサポート手段51が制御される(ステップS15)。これにより、基板Wの上端におけるクランプ48の狭持が解放される。なお、より低い位置でクランプ48が解放されるので、クランプ解放手段50は、図1に示す位置よりも低い位置に設ける必要がある(図示せず)。
【0098】
以降の処理は、図8に示す制御フローチャートと同じである。すなわち、把持部64が、さらに降下して所定位置(例えば、図9bに示す高さh2)に到達すると、制御部からの指令により、把持部64の把持爪80が後方向に引き込むよう作動し、把持爪82が前方向に押し出すよう作動する(ステップS16)。これにより、基板Wの下端が把持部64による把持から開放された状態になる。さらに、把持部64は、基板受け52より下の初期位置(図3Bに示す位置)で停止する(ステップS18)。基板Wが基板受け52に収容されると、旋回シリンダ54aが作動し、基板受け52が図1に示す回転軸54cを中心として、E方向に旋回し、基板Wが搬送ローラ56によって水平状態で保持される(ステップS20)。搬送ローラ56は、基板受け52が水平状態になると回転を開始し、基板Wを図1のF方向に搬出する(ステップS22)。基板Wが搬出されると、昇降ガイドレール12が上昇すると共に、各シリンダ(支持シリンダ51b、押圧シリンダ50b、旋回シリンダ54aなど)がそれぞれ退避して元の状態に戻る(ステップS24)。
【0099】
なお、上記ステップS13において、搬送用ハンガー15が降下する速度VAが基板引き込み手段62の把持部64が降下する速度VBより遅いと、基板Wの上端におけるクランプ48の狭持位置や、基板Wの下端における把持爪80、82の把持位置がずれてしまい、基板Wの上端および下端が傷つくおそれがある。
【0100】
そこで、基板Wが傷つかないようにするために、図11aに示す搬送用ハンガー15が降下する速度VAを、把持部64が降下する速度VBより速い速度またはこれらを同じ速度に設定するのがよい。例えば、搬送用ハンガー15が降下する速度VAを3cm/sとした場合、把持部64が降下する速度VBは3cm/s以下に設定する。
【0101】
また、基板引き込み手段62の把持部64が、上記ステップS03の後、ステップS13の前に、基板Wを把持した後に搬送用ハンガー15との間隔を狭めるように所定間隔(例えば、数ミリ)だけ上昇して基板Wをたわませた状態とし、その後、搬送用ハンガー15と基板引き込み手段62の把持部64が同じ速度で降下するよう構成することでも基板Wの上端および下端が傷付くのを防止することができる。
【0102】
なお、上記実施形態では、図3Bに示すように、把持爪80および把持爪82が、基板Wを把持する前の開放時(初期状態)において基板受け52の外側に位置する構成を採用したが、基板Wの下端を確実に把持することができるのであれば、これら把持爪80、82の何れかまたは何れもが基板受け52の内側に位置するような構成を採用してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、把持部64を水平方向に延伸して取り付けた昇降リフト66によって基板引き込み手段62を構成したが、かかる構成に限定されるものではない。
【0104】
例えば、図12に示すように把持部100を有する市販のロボットハンド102(例えば、高野ベアリング株式会社の小型グリッパーMPGシリーズ)を昇降シリンダ104に鉛直方向に移動可能に取り付けて、基板引き込み手段62を構成してもよい。
【0105】
この場合、ロボットハンド102は基板受け52の底部に設けた切り欠きから挿入するため、切り欠きは少なくとも底部(ロボットハンド102を挿入する部分)にのみ設ければよい。かかる構成により、省スペースのアンロード装置5aを提供することができる。なお、図12に示す昇降シリンダ104は、腐食防止のために防水カバー106で覆われている。
【0106】
なお、上記実施形態では、把持爪80、82を有する把持部64により基板引き込み手段を構成したが、基板Wを磁石に引き付けるなど、その他の構成を採用してもよい。
【0107】
例えば、図13に示すように、裁置板108およびエア吸入口110を、昇降板92に連結した昇降本体84(図3B)に対して前後移動が可能なシリンダ112の先端に設けて基板引き込み手段を構成し、裁置板108で係止した基板Wをエア吸入口110から空気を吸入することにより基板Wを吸着して基板受け52内に引き込むような構造としてもよい。
【0108】
なお、図4に示す実施態様では、基板Wを受け止める把持部64を昇降リフト66で移動させたが、把持部64を昇降移動させるのはリフト機構に限られるものではない。
【0109】
なお、上記実施形態では、図5に示す基板受け52の両側の側壁52e、52fおよび底部52gに切り欠き52b、52c、52hを設けたが、把持部64を挿入し、かつ、引き込み動作することが可能であれば、基板受け52の側壁52e、52fの片側だけや、基板受け52の底部52hだけ(図12)に切り欠きを設けてもよい。
【0110】
なお、上記実施形態では、把持部64が2カ所で基板Wの下端を把持するように把持爪80、82を2組設ける構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、把持部64を1組または3組以上設ける構成としても良い。
【0111】
なお、上記実施形態では、アンロード装置5aに旋回手段54を設けたが、アンロード装置5aに旋回手段56を設けず、基板引き込み手段62により基板受け52内に収容された基板Wを作業者が積載してもよい。
【0112】
なお、上記実施形態においては、図1に示すように基板Wが基板受け52の側壁52eの内面付近で鉛直方向に受け入れられるようにしたが、側壁52e内面から離れた位置(例えば、図1に示す開口部52aの中央辺り)で基板Wが受け入れられるようにしてもよい。
【0113】
なお、上記実施形態においては、図1に示すように基板受け52を鉛直方向に設けるようにしたが、図6に示すように基板受け52を予め傾斜させて設け、その状態で基板Wを鉛直方向に受け入れるようにしても良い。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気めっき装置などの表面処理装置で用いられる搬送用ハンガーから、基板を取り外す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、基板アンロード装置(アンローダー5’)を備えた表面処理装置の一般的な構造について、図14、図15を用いて以下に説明する。図14は、表面処理装置100を上方からみた平面図である。図15は、図14に示す表面処理装置100をα方向から見た側面図である。
【0003】
図14および図15に示すように、表面処理装置100は、いわゆるプッシャー式のめっき装置であり、プリント基板などの基板を保持する搬送用ハンガー15と、当該搬送用ハンガー15を摺動可能状態で昇降する昇降ガイドレール10、12と、当該搬送用ハンガー15を前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送するための固定ガイドレール11、13とを備えている。
【0004】
図14に示すように、これらのガイドレール10〜13に沿って、めっき前処理工程を行うための各種前処理槽1、電気めっきを行うためのめっき槽2、めっき後処理工程を行うための回収槽3と水洗槽4、基板の取り外しを行うための基板アンロード装置が設けられたアンロード部5、搬送用ハンガー15に付着しためっき皮膜等を剥離(ハンガー戻し工程)するための剥離槽6、剥離処理後に搬送用ハンガー15の水洗を行う水洗槽7、基板の取り付けを行うロード部8が設けられている。
【0005】
図14に示す昇降ガイドレール10、12は、搬送用ハンガー15に基板W(プリント基板など)の取り付けや取り外しを行ったり、基板Wを各種処理槽(めっき槽2、剥離槽6、水洗槽、湯洗槽等)内に浸漬する際に昇降するガイドレールである。固定ガイドレール11、13は、それぞれめっき槽2、剥離槽6等に降下した搬送用ハンガー15を搬送するために固定されたガイドレールである。図15に示す昇降ガイドレール10、12が降下した状態において、固定ガイドレール11、13と一体となって、ガイドレール10〜13が1つの環状ガイドレールを構成する。
【0006】
図14に示す表面処理装置100によって搬送される従来の搬送用ハンガー15の構造を、図16および図17を用いて以下に説明する。図16は、図15に示す搬送用ハンガー15の構造を示す詳細図である。図17は、搬送用ハンガー15の一部中央断面図である。
【0007】
図16に示すように搬送用ハンガー15は、被処理物Wを保持するクランプ48を複数備えた被処理物保持部材90と、固定ガイドレール11などのガイドレールに対して摺動接触する摺動部材35と、これらを連結する連結部材44を有している。
【0008】
図16に示すように、被処理物保持部材90は、連結部材44に連設されかつ搬送方向に略水平に伸びる水平杆部46と、この水平杆部46の所定箇所に垂下した状態で連設される複数の垂杆部49と、この垂杆部49の下端に基板を狭持するクランプ48を配置して構成される。
【0009】
クランプ48は、図17に示すように、垂杆部49に取付けられる固定部材48a、可動部材48bとによって構成されており、可動部材48bは固定部材48aに設けられた軸に回動可能に取付けられている。クランプ48は、ばねによって固定部材48aと可動部材48bが先端部において通常閉じる状態となっている。ばねの力に逆らって可動部材48bの上端部を押し込むとクランプ48の先端部において固定部材48aと可動部材48bとに隙間ができ、この隙間に基板Wを差込むことができる。
【0010】
図14に示すアンロード部5に設けられた基板アンロード装置5’は、図18に示すように、クランプ開放手段50とハンガーサポート手段51、基板受け52、基板落脱手段58、および基板サポート手段60を有している。
【0011】
クランプ開放手段50は、押圧シリンダの先端にクランプ押圧部材を取付けて構成されており、図14に示すアンロード部5の上方に達した搬送用ハンガー15が、図18に示すように昇降ガイドレール12と共に降下した際、クランプ開放手段50の押圧シリンダが伸長作動してクランプ48(図17)の可動部材48b上端部を押圧して基板Wの挟持を解除する。ハンガーサポート手段51は、支持シリンダの先端に支持板を取付けて構成されており、クランプ開放手段50が作動する前に、ハンガーサポート手段51の支持シリンダが伸長作動して、上記降下してきた搬送用ハンガー15の被処理物保持部材90をクランプ開放手段50の裏側から支持板によって当接支持する。
【0012】
基板受け52は、昇降ガイドレール12と共に降下してきた搬送用ハンガー15の下方に配設されており、クランプ48による挟持が解除され、落下してくる基板Wを基板サポート手段60で受け止めて収納する。
【0013】
図19に、基板サポート手段60および基板受け52の構造を示す。基板サポート手段60は、図19に示すように、基板受け52内に落下してきた基板Wを所定の停止位置で受け止める基板停止部材60aと、モーターや電動アクチュエータなどの駆動により基板停止部材60aを所定の高さ位置に移動させる停止位置調節リフト60bとにより構成されている。具体的には、基板サポート手段60の基板停止部材60aは、停止位置調節リフト60bに取り付けられた支持面に対して垂直方向に延びた複数の棒材で構成されており、これらの棒材が基板受け52内を貫けるように、図19に示す基板受け52の側壁52eには、切り欠き52bが、側壁52fには切り欠き52cが設けられ、基板受け52の底部52gにも切り欠き52hが設けられている。
【0014】
上記のような構成により、基板アンロード装置5’においては、昇降ガイドレール12と共に降下してきた搬送用ハンガー15が挟持する基板Wが、クランプ開放手段50及びハンガーサポート手段51の動作によって、クランプ48による挟持が解除される。狭持解除により基板受け52に落下してくる基板Wは、基板受け52内において当該基板サポート手段60で所定の高さで受け止められる。その後は、旋回手段54によって基板受け52が水平状態に旋回され、基板受け52の切り欠きを通して基板Wを支持する搬送ローラ56によって基板Wが搬出されることになる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−131942号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記のような従来の基板アンロード装置5’には、以下のような問題点があった。
【0017】
基板Wが落下しても、基板サポート手段60に達するまでに、基板Wが途中で基板受け52の内面に貼りついてしまう場合があった。特に、厚さが0.5mm以下であるような薄い基板Wの場合、基板Wの質量が少ないため、基板受け52の内面に貼りつきやすい。そのような状態で基板受け52が旋回すると、基板受け52からはみ出した基板Wが装置と接触するおそれがある。このため、表面処理装置100(図14)の操業を一旦停止して、基板受け52から基板Wを取り除いたり、基板Wを基板サポート手段60まで押し下げる作業が別途必要になり、めっき作業の効率が著しく低下するという問題があった。
【0018】
この発明は、上記各問題を解決すべく、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)この発明の基板アンロード装置は、
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する基板取り外し手段と、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記基板取り外し手段により挟持が解除された当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
これにより、搬送用ハンガーから取り外した基板が基板受けの内面に貼り付いくのを防止することが可能となり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することができる。
【0021】
(2)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板引き込み手段が、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除する前に、把持部により基板の下端を把持し、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除した後に、基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下すること、
を特徴とする。
【0022】
これにより、基板を搬送用ハンガーから取り外す前に基板の下端を把持し、基板を搬送用ハンガーから取り外した後、基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下させて、基板が基板受けの内面に貼り付くのを防止することが可能となり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することができる。
【0023】
(3)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板受けの少なくとも1の側壁には切り欠きが鉛直方向に沿って設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする。
【0024】
これにより、基板受けの切り欠きから挿入した把持部によって基板を把持し、切り欠きに沿って鉛直方向に降下させることが可能であり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える基板アンロード装置を提供することができる。
【0025】
(4)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板受けの少なくとも底部に、切り欠きが設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする。
【0026】
これにより、基板受けの底部に設けた切り欠きから挿入した把持部によって基板を把持して、鉛直方向に降下させることが可能であり、基板の取り外し作業を安全、かつ、確実に行える省スペースの基板アンロード装置を提供することができる。
【0027】
(5)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板引き込み手段が、前記基板受けの底部から所定の高さで前記把持部による基板の把持を解除すること、
を特徴とする。
【0028】
これにより、基板を基板受けの底部付近まで確実に案内することができる。
【0029】
(6)この発明の基板アンロード装置は、
前記基板取り外し手段が搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する際に、基板の両側から交互に前後移動して接触することにより、基板を落脱させるための基板落脱手段を備えたこと、
を特徴とする。
【0030】
これにより、搬送用ハンガーから基板を確実に取り外すことができる。
【0031】
(7)この発明の基板アンロード装置は、
前記搬送用ハンガーから基板が取り外されたか否かを検知する基板取り外し検知手段を備えたこと、
を特徴とする。
【0032】
これにより、搬送用ハンガーから確実に基板が取り外されていない場合に、これを検知して、例えば、装置を一時停止したり、基板落脱手段による基板への接触を繰り返すことができる。
【0033】
(8)この発明の基板アンロード装置は、
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
基板を挟持した状態で降下する搬送用ハンガーと、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記搬送用ハンガーと共に、当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0034】
これにより、搬送用ハンガーによって基板を挟持すると共に、基板引き込み手段によって基板を把持した状態で、基板を安全、かつ、確実に基板受け内に降下させることができる。
【0035】
(9)この発明の基板アンロード方法は、
前記搬送用ハンガーが降下する速度を、前記基板引き込み手段が降下する速度より速い速度または同じ速度に設定したこと、
を特徴とする。
【0036】
これにより、搬送用ハンガーによって基板を挟持すると共に、基板引き込み手段によって基板を把持した状態で、基板を基板受け内に降下させる間、基板が外れる等して損傷するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の基板アンロード装置(アンローダー5a)の構造を示す図である。
【図2】基板落脱手段57、58の構造を示す図である。
【図3】図3Aは、図1に示す基枠74に固定された基板引き込み手段62の正面図(図1のβ−矢視図)であり、図3Bは図1に示す引き込み手段62を拡大した側面図である。
【図4】図1に示す把持部64の詳細を示す拡大図である。
【図5】図1に示す基板受け52の構造を示す斜視図である。
【図6】基板受け52と把持部64の位置関係を示す図5のγ−断面矢視図である。
【図7】図7Aは、基板受け52を旋回した状態を示す側面図であり、図7Bは、旋回した基板受け52の底面図である。
【図8】基板アンロード装置の制御フローチャートである。
【図9a】基板Wの下端が把持部64によって把持された状態を示す図である。
【図9b】把持部64による基板Wの下端の把持が解除された状態を示す図である。
【図10】昇降ガイドレール10、12の上部に設けられる間欠搬送手段17、22の構造を示す平面図である。
【図11a】他の実施形態におけるアンローダーの構造を示す図である。
【図11b】他の実施形態におけるアンローダーの制御フローチャートである。
【図12】他の実施形態におけるアンローダーの構造を示す図である。
【図13】他の実施形態におけるアンローダーの構造を示す図である。
【図14】従来技術の電気めっき装置100を上方からみた平面図である。
【図15】従来技術の電気めっき装置100を図14のα方向から見た側面図である。
【図16】従来技術の搬送用ハンガー15の構造を示す詳細図である
【図17】従来技術の搬送用ハンガー15の一部中央断面図である。
【図18】従来技術のアンローダーの構造を示す図である。
【図19】従来技術の基板受け52および基板サポート手段60の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1.基板アンロード装置の構造
図1は、この発明の基板アンロード装置であるアンローダー5aの構造を示す図である。なお、図1に示すアンローダー5aは、図14に示す表面処理装置100のアンロード部5に設けられている。
【0039】
図1に示すアンローダー5aは、基板Wを挟持した搬送用ハンガー15から基板Wを取り外すための装置であり、搬送用ハンガー15から基板Wを取り外して積載(集積)する基板Wのアンロード作業に用いられる。
【0040】
アンローダー5aの基枠70には、図1に示すようにハンガーサポート手段51および第1の基板落脱手段57が設けられている。また、搬送用ハンガー15を挟んで基枠70と反対側に位置し、アンローダー5aを構成する基枠72には、基板取り外し手段であるクランプ開放手段50、取り外し検知手段53、第2の基板落脱手段58、基板受け52、旋回手段54および基板搬送手段56が設けられている。基枠70の下方に位置し、アンローダー5aを構成する基枠74には、基板引き込み手段62が設けられている。なお、基枠70、基枠72および基枠74は、鋼材で構成されている。
【0041】
まず、搬送用ハンガー15から基板を取り外すときに用いられる各手段、すなわち、図1に示すハンガーサポート手段51、基板取り外し手段であるクランプ開放手段50、取り外し検知手段53、第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58の構成について説明する。
【0042】
ハンガーサポート手段51は、図1に示す支持板51aおよび支持シリンダ51bによって構成されている。ハンガーサポート手段51は、搬送用ハンガー15が昇降ガイドレール12と共に降下した状態(図1に示す位置)で、基枠70側(図面左側)から被処理物保持部材90に対して当接して搬送用ハンガー15を支持する。
【0043】
具体的には、クランプ開放手段50がクランプ48の解除を行う前に、支持シリンダ51bが作動して支持板51aが搬送用ハンガー15の被処理物保持部材90に当接して搬送用ハンガー15の裏側から支持する。これにより、搬送用ハンガー15の被処理物保持部材90がクランプ48の解除の際に反り返るのを防止することができる。
【0044】
基板取り外し手段であるクランプ開放手段50は、図1に示すクランプ押圧部材50aおよび押圧シリンダ50bによって構成されている。クランプ開放手段50は、搬送用ハンガー15が昇降ガイドレール12と共に図1に示すような位置に降下した状態で、基板Wを挟持するクランプ48の解除を行う。
【0045】
具体的には、図1に示す上述したハンガーサポート手段51の支持シリンダ51bが作動して、支持板51aが搬送用ハンガー15に当接された状態となった後、押圧シリンダ50bが作動することでクランプ押圧部材50aがクランプ48の可動部材48b(図17参照)の上端部を押圧し、基板Wの挟持を解除する。
【0046】
第1の基板落脱手段57は、図1に示す基板押出部材57aと押出シリンダ57bで構成される。同様に、第2の基板落脱手段58は、図1に示す基板押出部材58aと押出シリンダ58bで構成される。第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58は、クランプ開放手段50がクランプ48を解除した後に、基板受け52の開口部52a付近において基板Wの両側から交互に水平方向に前後動して接触することにより、基板Wを基板受け52内に確実に落脱させるために用いられる。
【0047】
例えば、基板Wに付着した処理液の表面貼力やめっきのこびりつきによって、クランプ48の挟持が解除されても基板Wがクランプ48から落脱しなかったり、基板受け52の側壁52eの内面に貼り付くことがある。このような場合であっても、基板押し出し部材58aが基板Wに接触する(例えば、数ミリ程度押し込む)ことによって衝撃を与え、基板Wを揺らして落下させることができる。
【0048】
図2Aは、第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58を上方から見た平面図である。なお、図2Aに示すように、第1の基板落脱手段57および第2の基板落脱手段58は、押出方向が正反対である以外は同じ構造である。
【0049】
基板落脱手段57(58)の基板押出部材57a(58a)は、図2Aに示すように、押出シリンダ57b(58b)に取り付けられた平板部材571(581)に、基板Wを接触して押出する突起材572(582)を、例えば、6個取り付けて構成されている。突起材572(582)は、樹脂(PP)で形成されており、先端が丸く加工されている。これは、基板Wを押出した際に突起材572(582)が基板Wを傷つけないようにするためである。
【0050】
図2Bは、搬送用ハンガー15と、基板Wに対する上記基板落脱手段57、58の突起材572、582との位置関係を示す図である。図2Bに示すように、基板落脱手段57、58の突起材572、582は、搬送用ハンガー15のクランプ48よりも下側(例えば、数ミリ下)に位置し、両端のクランプ48よりも内側の接触位置573、583で基板Wを押し出すよう設計されている。
【0051】
これは、特に厚さが0.5mm以下である薄い基板でも、確実に押出動作が基板Wに伝わるようにし、基板Wとクランプ48や基板受け52内側壁との間に起きる処理液の表面貼力やめっきのこびりつきを解消するためである。なお、基板Wを確実に落下させるためには、図2Bに示す突起材572、582の接触位置573、583をできるだけクランプ48の近傍とすることが好ましいが、さらに基板受け52に基板Wが貼り付くのを防止したいような場合には、基板Wを大きく揺らせるためにクランプ48から離れた位置(隣り合うクランプ48の中間位置)を接触位置573、583としてもよい。
【0052】
図1に示す取り外し検知手段53は、基板Wが確実に搬送用ハンガー15から取り外されたか否かを検知するためのセンサー(光学センサー)であり、クランプ48と同じ高さで、かつ、クランプ48と横方向にずれた位置(例えば、図2Bに示す突起材582の接触位置583よりも上の位置)に焦点を合わせて設置される。すなわち、センサーにより基板Wが検知されているときは、基板Wが搬送用ハンガー15からまだ取り外されていないと判断され、センサーにより基板Wが検知されないときは、基板Wが搬送用ハンガー15から取り外されたと判断される。
【0053】
つぎに、図1に示す基枠74に設けられた基板引き込み手段62の構造について、図3などを用いて説明する。
【0054】
基板引き込み手段62は、図1に示すように、搬送用ハンガー15が挟持する基板Wの下端を把持するための把持部64(把持機構)と、当該把持部64を上下移動させるための昇降リフト66(昇降機構)とを有している。かかる構成により、クランプ開放手段50による挟持が解除された基板Wの下端を把持部64で把持した状態で、基板Wを昇降リフト66によって降下させて基板受け52内に安全、かつ、確実に収容することができる。
【0055】
図3Aは、図1に示す基枠74に固定された基板引き込み手段62の正面図(図1のβ−矢視図)であり、図3Bは図1に示す引き込み手段62を拡大した側面図である。
【0056】
図1に示す把持爪80、82を備えた昇降本体84は、図3Aに示すように、上下移動をガイドする固定ロッド88に対して摺動接触するベアリング86を有しており、昇降リフト66から昇降板92(図3Bに示すように、昇降本体84に取り付けられている)が受けた動力により、上下移動する構造になっている。
【0057】
図3Bに示すように、把持爪80は、把持シリンダ81に取り付けられており、把持爪82は把持シリンダ83に取り付けられており、何れの把持爪80、82も以下に示すように、前後移動が可能である。
【0058】
図4は、図1に示す把持部64の詳細を示す拡大図である。なお、図4に示す把持爪80、82は、鋼材で構成される。
【0059】
図4に点線で示す基板Wを把持面80aと把持面82aの間で把持するために、把持爪80は前方(図4のG方向)に移動し、把持爪82は後方(図4のH方向)に移動する。基板Wの把持を解除するためには、これとは逆の反対に、把持爪80は後方(図4のH方向)に移動し、把持爪82は前方(図4のG方向)に移動する。なお、基板Wを把持する前(初期状態)の把持爪80、82は、図3Bに示すように開放時に基板受け52の外側に位置する構成を採用している。これは、基板受け52のどの位置に基板Wが降下したときでも、基板Wを確実に把持するためである。
【0060】
なお、把持爪80の把持面80aおよび下面80bには、腐食防止のためにポリテトラフルオロエチレン(テフロン:商標名)がコーティングされている(図4において斜線で示す。)。把持爪82の把持面82aおよび上面82b(図4において斜線で示す。)にも、腐食防止のためにポリテトラフルオロエチレンがコーティングされている。このように、接触面である把持爪80の下面80bと把持爪82の上面82bにポリテトラフルオロエチレンがコーティングされているため、把持爪80と把持爪82の間の摩擦を低減し、これらを円滑に前後移動させることができ、基板Wから落ちる水滴によるサビ等の腐食を防止することができる。
【0061】
図4に示す把持爪80、82を有する把持部64は、昇降リフト66の駆動により、クランプ開放手段50がクランプ48を開放する前に、搬送用ハンガー15が挟持する基板Wの下端の位置(図3Bに示す高さh1)まで上昇する。その後、把持部64が基板Wの下端を把持し、昇降リフト66の駆動により、基板Wの下端を把持した状態で降下する。これにより、最終的に基板受け52の底部において基板Wが支承される。
【0062】
さらに、取り外した基板Wを搬出するときに用いられる各手段、すなわち、図1に示す基板受け52、旋回手段54、基板搬送手段56の構成について、図5、図6などを用いて以下に説明する。なお、図5は、基板受け52の構造を示す図であり、この実施形態では、基板受け52はPVC(塩化ビニル)で成型されている。図6は、図1に示す基板受け52と把持部64の位置関係を示す図5のγ−断面矢視図である。
【0063】
図5に示すように、基板受け52には、側壁52eの切り欠き52bと、側壁52fの切り欠き52cと、底部52gの切り欠き52hが設けられている。また、基板受け52には、図1に示すように、回転軸54cを中心としてE方向に旋回可能となるように、旋回手段54が連結されている。
【0064】
図6を用いて、上記基板引き込み手段62の把持部64と基板受けに設けた切り欠き52b、52cとの位置関係を示す。図6に示すように、基板引き込み手段62の把持部64は、切り欠き52b、52c、52hに対応した位置に設けられており、把持部64が基板受け52と接触せずに昇降することが可能な構造となっている。
【0065】
また、図1に示す基板搬送手段である搬送ローラ56は、基板受け52が旋回して水平状態となったとき(図1の点線で示す)に、上記切り欠き52b(図2を参照)を通して内部に案内される。これにより、図7A、Bに示すように、基板搬送手段である搬送ローラ56は、基板受け52が旋回手段54によって水平状態となった位置において、上記切り欠き52bを通して基板Wを支持する。なお、図7Aは、基板受け52を旋回した状態を示す側面図であり、図7Bは、旋回した基板受け52の底部図である。
【0066】
このように基板受け52の側壁(搬出側)に、図2に示すような切り欠き52bを設けたことで、図7Bに示すように基板受け52の切り欠き52bを通して基板Wを搬送ローラ56によって支持して、図7AのF方向に基板Wを円滑に搬送することができる。例えば、基板受け52の側壁52eから搬送ローラ5が10ミリ程度突出することにより基板Wが支持される。
【0067】
また、基板受け52は、図1に示すように、搬送用ハンガー15が鉛直方向(図1のD方向)に降下した際に、基板を受け入れる開口部52aを有しており、開口部52aは基板Wを基板受け52の内部に確実に案内することができるように上方に向かって幅を広げた形に成形されている。なお、基板受け52の上方に向かって幅を広げた部分を分離し、基枠に固定するように構成してもよい。
【0068】
また、基板受け52は、図1に示すように、搬送用ハンガー15のクランプ48の位置(P)が基板受け52の中央(M)よりも側壁52eの内面付近(例えば、側壁52eの内面から10〜50ミリ)に位置するように配設され、基板Wを基板受け52の側壁52eの内面付近に沿って案内する構造としている。これにより、基板受け52が図1のE方向に旋回するときに、基板受け52内に収容された基板Wが基板受け52内を移動した衝撃で傷つくのを防止できる。
【0069】
旋回手段54は、図1に示すように、基板受け52を旋回させる動力となる旋回シリンダ54aと、一端が上記基板受け52の下端部に固定され、他端が旋回シリンダ54aに連結された、旋回シリンダ54aの動力を基板受けに伝えるL型の一体部材である旋回腕54bとで構成される。
【0070】
図1に示す旋回シリンダ54aが伸長作動して旋回腕54bが基枠72に固着された軸54cを中心として旋回することで、基板受け52は、基板Wが収容された状態で図1のE方向に旋回される。なお、旋回シリンダ54aの一端は、軸54eを介して、基枠72に対して回転可能に接続されており、他の一端は基板受け52に固着された旋回腕54bに固定した軸54dに対して回転可能に接続されている。
【0071】
基板搬送手段は、駆動モータで駆動する搬送ローラ56で構成されており、図1の点線位置に旋回された基板受け52が収容する基板Wを、開口部52aから水平方向(図1のF方向)に搬出する。なお、搬送ローラ56の直径は、例えば40ミリである。これは、あまり大きい直径のローラを用いた場合、薄い基板では、基板の端部が搬送ローラ56間に入り込み、搬送不良を起こすおそれがあるためである。また、搬送ローラ56の回転軸は旋回した状態の基板受け52よりも下方に位置している。
【0072】
2.アンローダ5aの制御フローチャート
アンローダ5aにおける制御フローチャートを図8を用いて説明する。なお、アンローダ5aの動作は、電気めっき装置100(図14)の各手段に接続された制御部(図示せず、CPU、PLCなどによって構成)により制御される。
【0073】
基板Wを有する搬送用ハンガー15が、図14に示す電気めっき装置100の水洗槽4からアンロード部5に搬送されてきたことが検出されると、図8に示すように、制御部からの指令により、まず、昇降ガイドレール12が図1のD方向に降下して停止する(ステップS01)。
【0074】
降下した昇降ガイドレール12が停止すると、基板引き込み手段62の把持部64は、昇降リフト66の動力を受けて、図3BのX1方向に移動し、所定位置まで上昇する(ステップS02)。ここで、所定位置とは、昇降ガイドレール12が降下した時に、基板Wの下端が到達する高さ(図3Bに示す高さh1)またはこれより少し高い位置であり、基板Wの縦方向の長さに対応して設定される。
【0075】
さらに、把持部64の把持爪80が前方向(図4のG方向)に作動し、把持爪82が後方向(図4のH方向)に作動する(ステップS03)。これにより、図9aに示すように、基板Wの下端が把持部64によって把持された状態になる。
【0076】
さらに、制御部からの指令により図1に示す支持シリンダ51bが作動し、支持板51aが被処理物保持部材90に当接することで搬送用ハンガー15が支持される(ステップS04)。その後、さらに所定時間が経過すると、制御部からの指令により押圧シリンダ50bが作動し、クランプ押圧部材50aがクランプ48の上端部を押圧することにより、基板Wの挟持を解除する(ステップS06)。
【0077】
所定時間が経過すると、第1の基板落脱手段57の押出シリンダ57bが作動し、その基板押出部材57aが基板Wに接触する(ステップS08)。所定時間が経過すると、第1の基板落脱手段57の押出シリンダ57bが作動し、その基板押出部材57aが元の位置に退避する(ステップS09)。
【0078】
さらに所定時間が経過すると、第2の基板落脱手段58の押出シリンダ58bが作動し、基板押出部材58aが基板Wに接触する(ステップS10)。所定時間が経過すると、第2の基板落脱手段58の押出シリンダ58bが作動し、基板押出部材58aが元の位置に退避する(ステップS11)。
【0079】
つぎに、基板取り外し検知手段であるセンサー53が、基板を検知しないとき、つまり、基板Wが確実に取り外されたと判断したとき(ステップS12のYes)、基板引き込み手段62の把持部64は、昇降リフト66の動力を受けて図9aのX2方向に移動し、基板Wを把持した状態で基板受け52内を降下する(ステップS14)。一方、基板取り外し検知手段53であるセンサーが、基板を検知しないときは、基板Wが確実に取り外されていないと判断し、ステップS08に戻って基板Wを落脱する動作を繰り返す(ステップS12のNo)。
【0080】
把持部64が、図9aに示す位置から降下して所定位置(図9bに示す高さh2)に到達すると、制御部からの指令により、把持部64の把持爪80が後方向に引き込むよう作動し、把持爪82が前方向に押し出すよう作動する(ステップS16)。これにより、基板Wの下端が把持部64による把持から開放された状態になる。なお、把持部64による把持を解放する所定位置(図9bに示す高さh2)に到達したことは、例えば、ステップS14において、図3Bに示す高さh1から基板引き込み手段62の把持部64が降下を開始してから所定時間経過したことにより検知できる他、昇降リフト66から高さ位置の出力を受けて検知することもできる。
【0081】
さらに、把持を解放した把持部64は、基板受け52より下の初期位置(図3Bに示す位置)で停止する(ステップS18)。
【0082】
以上のように、基板Wが基板受け52に収容されると、旋回シリンダ54aが作動し、基板受け52が図1に示す回転軸54cを中心として、E方向に旋回し、基板Wが搬送ローラ56によって水平状態で保持される(ステップS20)。搬送ローラ56は、基板受け52が水平状態になると回転を開始し、基板Wを図1のF方向に搬出する(ステップS22)。
【0083】
基板Wが搬出されると、昇降ガイドレール12が上昇すると共に、各シリンダ(支持シリンダ51b、押圧シリンダ50b、旋回シリンダ54aなど)がそれぞれ退避して元の状態に戻る(ステップS24)。
【0084】
その後、基板Wを取り外した搬送用ハンガー15は図14に示す剥離槽6へと送られる。一方、アンロード部5には水洗槽4から新たに基板Wを有する搬送用ハンガー15が搬送され、上記アンローダ5aによる一連の動作(図8のステップS01〜S24)が行われることになる。
【0085】
以上のように、この発明のアンローダー5aは、クランプ開放手段50、ハンガーサポート手段51、基板落脱手段57,58、基板引き込み手段62を備えたことで、基板Wの表面に付着している処理液の表面貼力によって基板受け52内に基板Wが貼り付いて落下しないことが防止される。これにより、装置停止の危険性や、薄い基板Wが基板受け52内に円滑に収容されないことによる折れ曲がり等の不良を回避することができる。
【0086】
3.表面処理装置100および搬送用ハンガー15の構造
この発明のアンローダー5aを用いる表面処理装置の構造は、前述の図14、図15に示すものと同じである。
【0087】
すなわち、図14および図15に示すように、表面処理装置100は、いわゆるプッシャー式のめっき装置であり、プリント基板などの基板Wを保持する搬送用ハンガー15、当該搬送用ハンガー15を摺動可能状態で昇降する昇降ガイドレール10、12、当該搬送用ハンガー15を前後に所定間隔を維持しつつ順次搬送する固定ガイドレール11、13を備えており、これらのガイドレール10〜13に沿って、めっき前処理工程を行うための前処理槽1、電気めっき工程を行うためのめっき槽2、めっき後処理工程を行うための回収槽3と水洗槽4、基板Wの取り外しを行うためのアンロード部5、搬送用ハンガー15に付着しためっき皮膜等を剥離するための剥離槽6、剥離処理後に搬送用ハンガー15の水洗を行う水洗槽7、基板Wの取り付けを行うロード部8が設けられている。図14または図15に示すように、昇降ガイドレール10、12は、搬送用ハンガー15を間欠的に搬送し、当該搬送用ハンガー15に基板W(プリント基板など)の取り付け(ロード)、取り外し(アンロード)を行ったり、基板Wを各種処理槽(めっき槽2、剥離槽6、水洗槽、湯洗槽等)内に浸漬等する際に昇降するガイドレールである。
【0088】
図16、図17などを用いて、この発明の搬送用ハンガー15の構造について説明する。
【0089】
図16に示すように、搬送用ハンガー15は、基板Wを保持するクランプ48を複数備えた被処理物保持部材90と、固定ガイドレール11に対して摺動接触する摺動部材35と、これらを連結する連結部材44を有している。摺動部材35および連結部材44の材質としては、銅、真ちゅうが用いられる。
【0090】
また、図17に示すように、摺動部材35の上部にはチェーンベルト39(図14に示す固定ガイドレール搬送手段19を構成)に噛み合うワンウェイクラッチ方式のギヤ40を有する軸受け36が固着されている。このため、固定ガイドレール11,13上でチェーンベルト39に噛み合うギヤ40は、前送り時において図16に示すB方向へのみ回転することができる。
【0091】
また、図16に示すプッシャー当接面37に、間欠搬送手段17、22のプッシャー16,21(図15)が当接されることにより、搬送用ハンガー15の搬送が行われる。例えば、図10に示す間欠搬送手段22のプッシャー21cが図14の(j)の位置にある搬送用ハンガー15のプッシャー当接面37に当接することにより、搬送用ハンガー15がアンローダ5aの位置(図14の(k)位置)に搬送される。図10は、昇降ガイドレール10、12の上部に設けられる間欠搬送手段17、22の構造を示す平面図である。
【0092】
なお、図17の爪当接部32は、搬送用ハンガー15の搬送手段である位置決め搬送手段18の搬送爪30(図14)が当接して引っかかる部分である。
【0093】
4.その他の実施形態
なお、上記実施形態では、クランプ解放手段50が基板Wの狭持を解除した後に、基板引き込み手段62の把持部64によって、基板Wを基板受け52内に収容することとしたが、図11aに示すように、基板Wを挟持した状態の搬送用ハンガー15と共に、基板引き込み手段62の把持部64が基板Wの下端を把持した状態で基板受け内52を降下するように構成してもよい。
【0094】
この場合、制御フローチャートは、例えば、図11bに示すようなものとなる。なお、この実施形態では、図1に示す基板落脱手段58および取り外し検知手段53は省略しており、図8のステップS06〜ステップS12に対応する制御は存在しない。
【0095】
すなわち、基板Wを有する搬送用ハンガー15が、図14に示す電気めっき装置100の水洗槽4からアンロード部5に搬送されてきたことがセンサー(図示せず)によって検出されると、図8に示すように、制御部からの指令により、まず、昇降ガイドレール12が図1のD方向に降下して停止する(ステップS01)。
【0096】
降下した昇降ガイドレール12が停止すると、基板引き込み手段62の把持部64は、昇降リフト66の動力を受けて、図3BのX1方向に移動し、所定位置まで上昇する(ステップS02)。さらに、把持部64の把持爪80が前方向(図4のG方向)に作動し、把持爪82が後方向(図4のH方向)に作動する(ステップS03)。ここまでは、図8に示す制御フローチャートと同じである。
【0097】
その後、図11aに示すように、基板Wの上端を狭持した搬送用ハンガー15は所定速度VAで、基板Wの下端を把持した把持部64は所定速度VBでそれぞれ降下する(ステップS13)。さらに、所定位置に達すると、搬送用ハンガー15のクランプ48による把持を解除するように、クランプ解放手段50およびサポート手段51が制御される(ステップS15)。これにより、基板Wの上端におけるクランプ48の狭持が解放される。なお、より低い位置でクランプ48が解放されるので、クランプ解放手段50は、図1に示す位置よりも低い位置に設ける必要がある(図示せず)。
【0098】
以降の処理は、図8に示す制御フローチャートと同じである。すなわち、把持部64が、さらに降下して所定位置(例えば、図9bに示す高さh2)に到達すると、制御部からの指令により、把持部64の把持爪80が後方向に引き込むよう作動し、把持爪82が前方向に押し出すよう作動する(ステップS16)。これにより、基板Wの下端が把持部64による把持から開放された状態になる。さらに、把持部64は、基板受け52より下の初期位置(図3Bに示す位置)で停止する(ステップS18)。基板Wが基板受け52に収容されると、旋回シリンダ54aが作動し、基板受け52が図1に示す回転軸54cを中心として、E方向に旋回し、基板Wが搬送ローラ56によって水平状態で保持される(ステップS20)。搬送ローラ56は、基板受け52が水平状態になると回転を開始し、基板Wを図1のF方向に搬出する(ステップS22)。基板Wが搬出されると、昇降ガイドレール12が上昇すると共に、各シリンダ(支持シリンダ51b、押圧シリンダ50b、旋回シリンダ54aなど)がそれぞれ退避して元の状態に戻る(ステップS24)。
【0099】
なお、上記ステップS13において、搬送用ハンガー15が降下する速度VAが基板引き込み手段62の把持部64が降下する速度VBより遅いと、基板Wの上端におけるクランプ48の狭持位置や、基板Wの下端における把持爪80、82の把持位置がずれてしまい、基板Wの上端および下端が傷つくおそれがある。
【0100】
そこで、基板Wが傷つかないようにするために、図11aに示す搬送用ハンガー15が降下する速度VAを、把持部64が降下する速度VBより速い速度またはこれらを同じ速度に設定するのがよい。例えば、搬送用ハンガー15が降下する速度VAを3cm/sとした場合、把持部64が降下する速度VBは3cm/s以下に設定する。
【0101】
また、基板引き込み手段62の把持部64が、上記ステップS03の後、ステップS13の前に、基板Wを把持した後に搬送用ハンガー15との間隔を狭めるように所定間隔(例えば、数ミリ)だけ上昇して基板Wをたわませた状態とし、その後、搬送用ハンガー15と基板引き込み手段62の把持部64が同じ速度で降下するよう構成することでも基板Wの上端および下端が傷付くのを防止することができる。
【0102】
なお、上記実施形態では、図3Bに示すように、把持爪80および把持爪82が、基板Wを把持する前の開放時(初期状態)において基板受け52の外側に位置する構成を採用したが、基板Wの下端を確実に把持することができるのであれば、これら把持爪80、82の何れかまたは何れもが基板受け52の内側に位置するような構成を採用してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、把持部64を水平方向に延伸して取り付けた昇降リフト66によって基板引き込み手段62を構成したが、かかる構成に限定されるものではない。
【0104】
例えば、図12に示すように把持部100を有する市販のロボットハンド102(例えば、高野ベアリング株式会社の小型グリッパーMPGシリーズ)を昇降シリンダ104に鉛直方向に移動可能に取り付けて、基板引き込み手段62を構成してもよい。
【0105】
この場合、ロボットハンド102は基板受け52の底部に設けた切り欠きから挿入するため、切り欠きは少なくとも底部(ロボットハンド102を挿入する部分)にのみ設ければよい。かかる構成により、省スペースのアンロード装置5aを提供することができる。なお、図12に示す昇降シリンダ104は、腐食防止のために防水カバー106で覆われている。
【0106】
なお、上記実施形態では、把持爪80、82を有する把持部64により基板引き込み手段を構成したが、基板Wを磁石に引き付けるなど、その他の構成を採用してもよい。
【0107】
例えば、図13に示すように、裁置板108およびエア吸入口110を、昇降板92に連結した昇降本体84(図3B)に対して前後移動が可能なシリンダ112の先端に設けて基板引き込み手段を構成し、裁置板108で係止した基板Wをエア吸入口110から空気を吸入することにより基板Wを吸着して基板受け52内に引き込むような構造としてもよい。
【0108】
なお、図4に示す実施態様では、基板Wを受け止める把持部64を昇降リフト66で移動させたが、把持部64を昇降移動させるのはリフト機構に限られるものではない。
【0109】
なお、上記実施形態では、図5に示す基板受け52の両側の側壁52e、52fおよび底部52gに切り欠き52b、52c、52hを設けたが、把持部64を挿入し、かつ、引き込み動作することが可能であれば、基板受け52の側壁52e、52fの片側だけや、基板受け52の底部52hだけ(図12)に切り欠きを設けてもよい。
【0110】
なお、上記実施形態では、把持部64が2カ所で基板Wの下端を把持するように把持爪80、82を2組設ける構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、把持部64を1組または3組以上設ける構成としても良い。
【0111】
なお、上記実施形態では、アンロード装置5aに旋回手段54を設けたが、アンロード装置5aに旋回手段56を設けず、基板引き込み手段62により基板受け52内に収容された基板Wを作業者が積載してもよい。
【0112】
なお、上記実施形態においては、図1に示すように基板Wが基板受け52の側壁52eの内面付近で鉛直方向に受け入れられるようにしたが、側壁52e内面から離れた位置(例えば、図1に示す開口部52aの中央辺り)で基板Wが受け入れられるようにしてもよい。
【0113】
なお、上記実施形態においては、図1に示すように基板受け52を鉛直方向に設けるようにしたが、図6に示すように基板受け52を予め傾斜させて設け、その状態で基板Wを鉛直方向に受け入れるようにしても良い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する基板取り外し手段と、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記基板取り外し手段により挟持が解除された当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする基板アンロード装置。
【請求項2】
請求項1の基板アンロード装置において、
前記基板引き込み手段は、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除する前に、把持部により基板の下端を把持し、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除した後に、基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下すること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の基板アンロード装置において、
前記基板受けの少なくとも1の側壁には切り欠きが鉛直方向に沿って設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2の基板アンロード装置において、
前記基板受けの少なくとも底部には、切り欠きが設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの基板アンロード装置において、
前記基板引き込み手段が、前記基板受けの底部から所定の高さで前記把持部による基板の把持を解除すること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの基板アンロード装置において、さらに、
前記基板取り外し手段が搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する際に、基板の両側から交互に前後移動して接触することにより、基板を落脱させるための基板落脱手段を備えたこと、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの基板アンロード装置において、さらに、
前記搬送用ハンガーから基板が取り外されたか否かを検知する基板取り外し検知手段を備えたこと、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項8】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
基板を挟持した状態で降下する搬送用ハンガーと、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記搬送用ハンガーと共に、当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする基板アンロード装置。
【請求項9】
請求項8の基板アンロード装置において、
前記搬送用ハンガーが降下する速度を、前記基板引き込み手段が降下する速度より速い速度または同じ速度に設定したこと、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかの基板アンロード装置において、
前記基板の厚さが、0.5mm以下であること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項11】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード方法であって、
基板引き込み手段が、把持部により前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持し、基板取り外し手段により挟持が解除された当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する、
ことを特徴とする基板アンロード方法。
【請求項12】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード方法であって、
搬送用ハンガーが、基板を挟持した状態で降下し、
基板引き込み手段が、前記搬送用ハンガーと共に、当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する、
を備えたことを特徴とする基板アンロード方法。
【請求項1】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する基板取り外し手段と、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記基板取り外し手段により挟持が解除された当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする基板アンロード装置。
【請求項2】
請求項1の基板アンロード装置において、
前記基板引き込み手段は、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除する前に、把持部により基板の下端を把持し、
前記基板取り外し手段が前記搬送用ハンガーによる基板の狭持を解除した後に、基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下すること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の基板アンロード装置において、
前記基板受けの少なくとも1の側壁には切り欠きが鉛直方向に沿って設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2の基板アンロード装置において、
前記基板受けの少なくとも底部には、切り欠きが設けられており、
前記基板引き込み手段の前記把持部が前記切り欠きから基板受け内に挿入されること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの基板アンロード装置において、
前記基板引き込み手段が、前記基板受けの底部から所定の高さで前記把持部による基板の把持を解除すること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの基板アンロード装置において、さらに、
前記基板取り外し手段が搬送用ハンガーによる基板の挟持を解除する際に、基板の両側から交互に前後移動して接触することにより、基板を落脱させるための基板落脱手段を備えたこと、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの基板アンロード装置において、さらに、
前記搬送用ハンガーから基板が取り外されたか否かを検知する基板取り外し検知手段を備えたこと、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項8】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード装置であって、
基板を挟持した状態で降下する搬送用ハンガーと、
前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持する把持部を有し、前記搬送用ハンガーと共に、当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する基板引き込み手段と、
を備えたことを特徴とする基板アンロード装置。
【請求項9】
請求項8の基板アンロード装置において、
前記搬送用ハンガーが降下する速度を、前記基板引き込み手段が降下する速度より速い速度または同じ速度に設定したこと、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかの基板アンロード装置において、
前記基板の厚さが、0.5mm以下であること、
を特徴とする基板アンロード装置。
【請求項11】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード方法であって、
基板引き込み手段が、把持部により前記搬送用ハンガーが挟持する基板の下端を把持し、基板取り外し手段により挟持が解除された当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する、
ことを特徴とする基板アンロード方法。
【請求項12】
搬送用ハンガーから取り外した基板を基板受けに収容する基板アンロード方法であって、
搬送用ハンガーが、基板を挟持した状態で降下し、
基板引き込み手段が、前記搬送用ハンガーと共に、当該基板の下端を把持した状態で基板受け内を降下する、
を備えたことを特徴とする基板アンロード方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−140681(P2011−140681A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−625(P2010−625)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
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