説明

基板処理工程排気の清浄化方法

【課題】 LCD製造等の基板処理工程の清浄作業空間から排出される分子状汚染物質を含有する排気を、製造設備ラインの操業を停止させることなく、まず調温・調湿を行った後、吸着材を用いて清浄化し、当該清浄作業空間に長期間に亘って連続安定に清浄化調温調湿空気を循環供給する方法を提供する
【解決手段】 LCD製造の基板処理工程排気を清浄化調温・調湿して循環供給する基板処理工程排気の清浄化であって、排気を処理空気として加湿冷却加温装置に取入れ、加湿冷却加温した空気を得、これを、屋内又は屋外から取入れた空気を再生空気として用いる回分式温度スイング吸着装置に通じて調温・調湿と分子状汚染物質及び粒子状汚染物質の除去を実施する排気の清浄化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)製造やカラー液晶ディスプレイのカラーフィルタ製造におけるガラスの基板処理工程、あるいは、半導体製造におけるシリコンの基板処理工程から排出されるアンモニア、シランカップリング剤、シラノール類、シリル化剤、シロキサン類、レジストインク溶媒等を含有する排気を取入れて処理空気として、その処理空気中の分子状汚染物質及び粒子状汚染物質を除去する清浄化と調温・調湿とを行って、当該基板処理工程中に設置されている清浄作業空間に、当該清浄作業空間内の作業を中断させることなく連続して安定に循環供給を可能とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD製造や半導体製造における基板処理工程はレジストインクを塗布、露光、現像或いはベーキングする工程である。その処理工程で、通常、ガラス基板やシリコン基板にレジストインクを塗布するに先立って、シランカップリング剤が下塗りされる。特に近年のLCD製造等においてはガラス基板の大型化に伴い回路形成過程での歩留まりを一層向上させる必要があるため、ガラス基板とレジスト膜との密着力を一段と強化させる性能を発揮するヘキサメチルジシラザン(以下、HMDSという)が多用されている。
【0003】
HMDSをガラス基板上に塗布した後、レジストインクを塗布してベーキングすると、下記式(1)に示す化学式に従って、HMDS、HMDSの分解物であるアンモニア及びトリメチルシラノール(以下、TMSという)並びにレジストインク溶媒等が分子状汚染物質となって、ガラス基板周辺の清浄作業空間に飛散する。この際、式(1)で示すように、飛散するTMSの分子数は飛散するアンモニアのそれの2倍である。
【0004】

(基板の酸化膜)−OH +(1/2)(CH3)3SiNHSi(CH3)3 +(レジスト)−OH→(基板の酸化膜)−O−(レジスト)+(1/2)NH3+(CH33SiOH
・・・・(1)
【0005】
HMDS以外のシランカップリング剤を使用した場合も、そのシランカップリング剤、その分解物であるシラノール類やシロキサン類やシリル化剤並びにレジストインク溶媒等が分子状汚染物質となってガラス基板やシリコン基板周辺の清浄作業空間に飛散する。
【0006】
LCD製造の基板処理工程の清浄作業空間においては、清浄度クラス10000以下、温度は23±0.5℃、湿度は40±1.5%の条件に精密に調温・調湿して、更にアンモニアは0.2ppb以下、有機物は2ppb以下の清浄状態に維持することが必要不可欠であるから、前述した分子状汚染物質が飛散した空気を早急に排気して、前記条件に調温・調湿して清浄化した空気と置換できるように設備されている。
【0007】
清浄作業空間に飛散した分子状汚染物質が、分子運動によって基板上に衝突して沈着すると、その基板が汚染され不良品となる。それゆえ、空気中に含まれるその物質の分子数が多いほど基板上に沈着する確率が高いと想定される。
【0008】
最も分子量が小さく、沸点の低いアンモニアを基準にして0.2ppbまで除去するとした場合、HMDSは2ppb、TMSは1.0ppb、レジストインク溶媒はシンナ類とすると1.2ppbまで除去する必要がある。
【0009】
又、従来は1パス使い捨て方式が採用されているが、当該方式においては、屋内又は屋外の空気を取入れて粒子状及び分子状汚染物質を除去する清浄化と、これに調温・調湿を行った調温調湿清浄化空気を、当該清浄作業空間に供給して、その後、当該清浄作業空間からの排気は、廃ガス処理してから大気に放出する方式であったから、エネルギーを大量に消費していた。しかしながら、近時はガラス基板の大型化に伴い当該清浄作業空間も大容量となるため、当該清浄作業空間内からの排気を回収して、その回収処理空気中の粒子状及び分子状汚染物質の除去と補充分の屋内又は屋外の空気中の粒子状及び分子状汚染物質の除去を行って、さらに温度と湿度をそれぞれ調整した清浄化調温調湿空気にして当該清浄作業空間に循環供給するエネルギー消費量を大幅に節減した方式に転換されつつある。
【0010】
(ケミカルフィルタ)
従来技術においては、前述の分子状汚染物質は、当該清浄作業空間への吹出し口付近及び循環空気ダクトに設置したケミカルフィルタに通じて除去することが一般的であった(例えば、非特許文献1を参照)。特に吹出し口付近の天井に設置するケミカルフィルタはファンと粒子状汚染物質を除去する高性能フィルタを一体化したファン・フィルタユニット(FFU)の中に組込まれている。
しかしながら、前記したガラス基板の大型化は、清浄作業空間のフットプリント(床面積)を増大させ、又、循環供給する清浄化調温調湿空気の絶対量も増大させるため、循環空気ダクトや該清浄作業空間への吹出し口に設置するケミカルフィルタも大型となるか或いは清浄化調温調湿空気を分割して供給する必要があるためケミカルフィルタの設置数を増加させている。
【0011】
【非特許文献1】半導体産業新聞主催講演会資料「半導体クリーン化技術はルネサンス時代を迎えた」(2007年2月21日開催)
【0012】
このようなケミカルフィルタを使用する汚染物質除去方法においては、前述の分子状汚染物質は、塩基性と有機性であるから、塩基性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(B)と有機性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(C)の2種類を使用している。
このうち、ケミカルフィルタ(B)は布状フィルタ材に酸性薬剤を含浸させたもの、繊維状フィルタ材に陽イオン交換基を付加したもの又は布状フィルタ材にプリーツを付けて袋状に縫製してその袋の中に陽イオン交換樹脂を充填したものが用いられる。
【0013】
したがって、捕集・除去の原理は、フィルタ材上で酸と塩基の中和反応を生起させて不揮発性の中和物に転化させることである。それゆえ、フィルタ材に含浸させた酸性物質量と反応する塩基性物質の化学当量以上の塩基性汚染物質は捕集・除去が不可能となるゆえ、必然的に寿命が存在するという問題がある。そのため、寿命となったケミカルフィルタ(B)は新品と取替えるという大懸りな作業が不可避となる。
【0014】
取替え作業によって寿命となったケミカルフィルタ(B)は、産業廃棄物となり、又、取替え作業時には、それを取付けていた基板処理工程は操業を停止することになる。そして、近時のガラス基板の大型化は産業廃棄物量を増大させることになり、又、取替え頻度も増加することになる。
【0015】
さらに、又、取替え時には当該清浄作業空間や清浄空気管路やそれの関連機器は、その工程設備の外側にある雰囲気に曝すことになる。そして、その雰囲気は明らかに0.2ppbを越えるアンモニア、2ppbを越える有機物を含有する空気であるから、清浄状態にあった清浄作業空間や清浄空気管路やそれが接続している関連機器、当該設備の内側も確実に汚染される。特にアンモニアと水の分子は金属表面に吸着付着しやすい。
【0016】
それゆえ、取替え作業は終了しても、清浄作業空間や清浄空気管路やそれの関連機器を清浄状態に復旧させるのに長時間のクリーンアップ作業を要することになる。この間の操業停止による損失は莫大となる問題を誘起している。
【0017】
又、前記段落〔0016〕に記載したように、取替え作業時に、例えば、3〜5ppbのアンモニアを含有するクリーンルーム空気に曝したとすると、金属表面に吸着付着したアンモニアは、復旧後に清浄空気の流れによって、少しずつ脱離して清浄空気流中に混入する。例えば脱離によりアンモニアの濃度が0.4ppbとなったとすると、清浄作業空間内のガラス基板を汚染する確率が倍増することになると考えられる。又、清浄空気中の水分子が分子運動で金属表面等に凝縮するとき、アンモニア分子がその凝縮熱を奪って気化する精留効果によっても、清浄空気中のアンモニア濃度は0.2ppb以上となる。
【0018】
一方、有機性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(C)は、布状フィルタ材にプリーツを付けて袋状に縫製して、その袋中に粒状活性炭を充填したもの、又は、活性炭繊維をフィルタ材としたものが用いられている。
【0019】
したがって、捕集・除去の原理は有機性物質を選択率良く物理吸着することであるから、充填した活性炭の飽和吸着量以上の有機性汚染物質量は捕集・除去が不可能となるゆえ、これまた寿命が存在するという問題がある。
【0020】
つまり、前述のケミカルフィルタ(B)の場合と同様に、寿命となったケミカルフィルタ(C)は新品と取替えるという大懸りな作業が不可避となる。そして、前述した段落〔0013〕〜〔0017〕と全く同様の問題が発生している。
【0021】
さらに、基板処理工程排気をケミカルフィルタ(B)とケミカルフィルタ(C)に通じて清浄化しようとすると、寿命が存在するという本質的問題以外に、次のような技術的課題が存在する。これについて以下に図5を用いて詳細に説明を加える。図5は従来技術による清浄化装置の説明図である。
【0022】
処理空気を調温調湿装置60に通じるに先立って、ケミカルフィルタ(B)81を上流にケミカルフィルタ(C)82を下流に配置したケミカルフィルタユニット80に、基板処理工程の排気を通じた場合、アンモニアとHMDSはケミカルフィルタ(B)81で、TMSとレジストインク溶媒等はケミカルフィルタ(C)82で捕集・除去される。そして、それらの分子状汚染物質が除去され清浄化され、次いで処理空気送風機(2)83で昇圧されて調温調湿装置60に流入して高性能フィルタ(4)61によって粒子状汚染物質の除去と冷却除湿器62、調温器63、加湿器64によって調温調湿が行われた後、清浄化調温調湿空気送風機101で再度昇圧して清浄化調温調湿空気供給口2に送気される。
【0023】
本発明者らが確認したところによれば、排気に含まれているHMDSはケミカルフィルタ(B)81で捕集・除去される前後で、加水分解を受けて、次式(2)で示すように、アンモニアとTMSを発生する。このアンモニアは、ケミカルフィルタ(B)81に留まるが、TMSはケミカルフィルタ(C)82で捕集・除去される。
【0024】

(CH33SiNHSi(CH33+2H2O→NH3+2(CH33SiOH ・・・・(2)
【0025】
一般にアンモニアと比較して有機性ガスの吸着容量は小さいのでケミカルフィルタ(C)は容量を多く使用する必要がある。それでも初期はTMSを高捕集率で除去できるが、徐々に捕集率が低下してしまう。それゆえ、TMSをさらに捕集・除去するために、清浄作業空間100の清浄化調温調湿空気吹出し口115に設置する粒子状汚染物質を除去する高性能フィルタ(3)114とフィルタファン113とを一体化したファンフィルタユニット(FFU)110の中にケミカルフィルタ(C)111とケミカルフィルタ(B)112を配置することになる。ケミカルフィルタ(B)112は、下記の段落〔0029〕で記す現象が発生するために配置せざるを得ない。
【0026】
しかも、ケミカルフィルタ(C)82に捕集・除去されたTMSも、本発明者らが確認したところによれば、次式(3)に示す様に、さらに加水分解され、吸着サイトにシリカを蓄積させるから、以後、その吸着サイトはシリカによって閉塞され、吸着性能を失うことになる。なお、発生するメタン(CH4)はケミカルフィルタ(C)82では捕集・除去できないが汚染物質ではない。このようにシリカの蓄積はTMSだけでなく、他の有機物の捕集・除去率を予想以上に急速に低下させるという問題を惹起せしめている。
【0027】

(CH33SiOH +H2O→3CH4+SiO2 ・・・・ (3)
【0028】
又、TMSは、イオン性を有しているため、上流側に配置した、ケミカルフィルタ(B)81でも低率で捕集・除去され、加水分解されて、シリカを蓄積させる。このため、シリカが残留した活性サイトは失活するから、アンモニア、HMDSの捕集・除去率は失活したサイト数に見合って低下する。それゆえ、アンモニアを捕集することを前提とした予想寿命を大幅に短縮させるという問題を発生している。又、ケミカルフィルタ(B)81で捕集できなかった残余のアンモニアを捕集するために、さらにケミカルフィルタ(B)112が必要となる。ケミカルフィルタによる汚染物質除去方法には、このような問題があることを本発明者らは見いだした。
【0029】
図示していないが、上流にケミカルフィルタ(C)82を、下流にケミカルフィルタ(B)81を配置して、基板処理工程の排気を処理した場合、TMSとレジストインク溶媒等はケミカルフィルタ(C)82で、アンモニアとHMDSはケミカルフィルタ(B)81で捕集・除去される。
【0030】
TMSは段落〔0026〕で記した様に、式(3)式に基づいて加水分解され、ケミカルフィルタ(C)82の吸着サイトにシリカが蓄積するから、その吸着サイトは閉塞され、失活することになる。つまり、ケミカルフィルタ(C)82はTMSだけでなく、他の有機物の捕集・除去率が予想以上に急速に低下するという予想されざる問題を発生せしめていることを本発明者らは見いだした。なお、HMDSはケミカルフィルタ(C)82でもいくらか捕集・除去されるが、次第に(化2)式に基づいて加水分解される。
【0031】
ケミカルフィルタ(C)82の吸着サイトの閉塞が進行すると、HMDSとアンモニアはケミカルフィルタ(B)81で捕集・除去される。その後HMDSは加水分解を受けて、式(2)式に基づいて、アンモニアとTMSを発生する。アンモニアはケミカルフィルタ(B)81に留まるが、発生した分子状アンモニアの2倍発生する分子状TMSは捕集・除去されることなく清浄作業空間に流れて空間や基板や管路や機器を汚染することになる。それゆえ、ケミカルフィルタ(B)81の下流に図5に示す様にさらにケミカルフィルタ(C)111を配置することは避けられない。
【0032】
さらに又、式(2)と式(3)で示されるごとく、加水分解反応により水分が消費されると共に、式(3)式で生成した超微粒子シリカは、多量の水分を吸着するため、ケミカルフィルタ(B)と(C)を調温調湿装置の下流に設置した場合、清浄作業空間には所定の関係湿度以下の空気を供給することになり、調湿能力に不足を来たすという問題が発生する。以上のごとく、ケミカルフィルタには種々の問題を伴うものである。
【0033】
(回分式温度スイング吸着装置)
次に、処理空気を本発明の加湿冷却加温装置に通じた後、従来技術による回分式温度スイング吸着装置(以下、「回分式TSA装置」ということがある。)に通じた際に生起する技術課題について図を用いて説明する。図4は従来技術による回分式TSA装置120の構成図である。図4には吸着モードが(A)系統、したがって、再生モードが(B)系統の場合を示した。
【0034】
処理空気は、処理空気取入れ口41から流入して分岐/合流継手T1から開閉弁V1、分岐/合流継手T2を経て吸着材ユニット(A)43Aに流入する。吸着材ユニット(A)43Aにて塩基性汚染物質や有機性分子状汚染物質等が吸着除去される。
【0035】
すなわち、処理空気は吸着材ユニット(A)43Aを通過する間で清浄化され、分岐/合流継手T3、開閉弁V2、分岐/合流継手T4を経て清浄空気送出口50に流入する。このとき、開閉弁V1、V2は開弁状態であるが、開閉弁V4、V5、V3、V6は閉弁状態である。
【0036】
一方、再生空気は再生空気導入口51から取入れて、再生空気加熱部57に流入させる。すなわち、再生空気は再生空気フィルタ58を経て再生空気送風機52、再生空気冷却器53、再生空気予熱器54、再生空気加熱器55を流れる。ついで分岐/合流継手T8、開閉弁V7、分岐/合流継手T5を経て吸着材ユニット(B)43Bに流入する。再生モードの加熱時間帯においては再生空気冷却器53に使用する伝熱媒体の冷媒は流通させず、再生空気加熱器55には通電させる。
【0037】
したがって、吸着材ユニット(B)43Bは再生空気によって加熱されるから吸着モード時に吸着したアンモニア、レジストインク溶媒等、微量のHMDS、微量のTMSを脱離する。吸着材ユニット(B)43Bを流出した再生空気は、分岐/合流継手T6、開閉弁V8、分岐/合流継手Т7を経て再生空気予熱器54に流入する。再生空気予熱器54では高温の再生空気のもつ余剰熱で低温の再生空気を予熱する。そして高温の再生空気は冷却されて排出空気となって再生空気排出口56から排出される。
【0038】
又、再生モードの冷却時間帯においては、再生空気冷却器53には伝熱媒体の冷媒を流通させ、再生空気加熱器55には通電しない。したがって、吸着材ユニット(B)43Bは再生空気によって冷却されて、処理空気の温度に近づけて吸着モードへの切換えに備える。再生モードが(B)系統の時、開閉弁V7、V8は開弁状態である。
【0039】
このように、吸着材ユニットを2系統備える従来の回分式TSA装置においては、吸着と再生のモードを同時に実行して連続的に清浄空気を供給しようとすると、処理空気、再生空気、清浄空気、排出空気相互の混入を防止して(A)系統吸着材ユニット(A)43A、(B)系統吸着材ユニット(B)43Bのそれぞれと、それら空気の流れるダクトを接続する必要がある。そのため、吸着材ユニットの上流側には処理空気又は排出空気が流れる2系統のダクト並びに処理空気を取入れて(A)系統と(B)系統のそれぞれの吸着材ユニットへ分岐する分岐/合流継手T1、排出空気を(A)系統と(B)系統から再生空気排出口56へ導くダクトに接続するダクトの分岐/合流継手T7及びそれぞれの両側にダクト回路を開閉するための開閉弁V1、V4、V5及びV8を配置する必要がある。
【0040】
又、吸着材ユニットの下流側には清浄空気又は再生空気が流れる2系統のダクト並びに清浄空気を取出す(A)系統ダクトと(B)系統ダクトから清浄空気送出口50へ導くダクトに接続するダクトの分岐/合流継手T4、再生空気を導き(A)系統と(B)系統のそれぞれの吸着材ユニットへ送出する分岐/合流継手T8及びそれぞれの分岐/合流継手の両側に設置してダクトを開閉するための開閉弁V2、V3、V6及びV7を配置する必要がある。
【0041】
さらに、(A)系統ダクトから排出空気ダクトへ、又は、(B)系統ダクトから排出空気ダクトへ再生空気が流れるように分岐/合流継手T2、T6が、再生空気ダクトから(A)系統ダクトへ、又は、再生空気ダクトから(B)系統ダクトへ再生空気が流れるように分岐/合流継手T3、T5が必要である。結局、吸着材ユニット(A)43A及び吸着材ユニット(B)43Bの上流側と下流側のそれぞれに2系統、計4系統のダクトと計8基の開閉弁と計8基の分岐/合流継手が必要である。
【0042】
このため、極めて複雑で長いダクトの「引きまわし」が必要となる。ここで、本発明が対象としているLCD工場や半導体工場等で使用されるダクトは、径が50mm程度の小配管ではない。例えば、1000mmの正方形断面のダクトである。(処理空気量500m3/minの場合、約8m/sの流速で流すためには正方形断面のダクトの寸法は1000mmとなる。)したがって、仮にこの「引きまわし」が30mであったならば、ダクトのみで30.0m3の占有空間が必要となる。処理空気量が40m3/minの場合は、同じく約8m/sの流速、且つ、30mの引き回しでは、ダクトのみで8.7m3の占有空間が必要となる。
【0043】
つまり、常圧下にある空気が流れるダクトの占有空間は、実際は莫大なものであって、これにダクトの分岐/合流継手や、ダクトの重なり、交叉、曲がり、拡大(縮小)、開閉弁、断熱材の装着等のために必要な空間が加わるから、装置全体としての占有空間は極めて大きなものとなる。これが吸着材ユニットを2系列備える回分式TSA装置をコンパクトにするのを困難にしている第1の理由である。
【0044】
吸着モードを(A)系統から(B)系統へ、再生モードを(B)系統から(A)系統へ切換える場合は、開弁状態にある開閉弁V1、V2、V7及びV8を閉弁状態へ、閉弁状態にある開閉弁V4、V5、V3及びV6を開弁状態に切換えることになる。逆に、吸着モードを(B)系統から(A)系統へ、再生モードを(A)系統から(B)系統へ切換える際は、開閉弁V1、V2、V7及びV8を閉弁状態から開弁状態へ、開閉弁V4、V5、V3及びV6を開弁状態から閉弁状態に切換えることになる。
【0045】
さらに、吸着モードと再生モードの切換えは、処理空気と清浄空気の流れを停止させることなく、圧力損失が小さくて口径の大きい開閉弁8基を、同時に動作を開始させ、且つ、同時に動作を停止させる必要があり、しかも、動作時間を可能な限り短時間とする必要がある。
【0046】
しかしながら、8基全ての開閉弁を同時に動作を開始させて、同時に動作を停止させ、且つ、短時間で動作させることは極めて困難である。いずれかの開閉弁にわずかな遅れがあると、清浄空気の流量と圧力が変動する大きな問題がある。
【0047】
もしも、上記したように切換え時において、清浄空気の流量と圧力が変動することになった場合は、LCD製品の歩留まりを著しく低下させる大きな要因となる。
【0048】
さらに他の問題は、図4の従来技術による回分式TSA装置において、吸着モードと再生モードの切換えの際には、8基の分岐/合流継手と8基の開閉弁との間にあるダクト内の空気は、その開閉弁を閉弁状態とした場合は流れが停止するから、次の開弁となるまでの間はそのまま滞留する淀み箇所となることである。図4には淀み箇所となるダクトを破線で示した。
【0049】
例えば、分岐/合流継手T1と分岐/合流継手T6との間のダクト、特に分岐/合流継手T6と開閉弁V4との間のダクトは、再生開始直後の高濃度の脱離した汚染物質を含む排出空気が滞留する淀み箇所となるから、切換え後の清浄空気中の汚染物質濃度に影響するという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
すでに前記段落〔0026〕〜〔0031〕に記載したとおり、分子状汚染物質のケミカルフィルタでの捕集・除去率は経時的に低下して、新品と取替える必要がある。新品との取替えは前述した様に、大懸りな作業とその作業を行うために製造設備ライン操業停止という問題が発生し、加えて産業廃棄物という環境問題と清浄状態に復旧するまでの操業停止に伴うストップ損失の問題とその間のエネルギー浪費問題を同時に発生させている。又、シリカの生成に伴い、高価な調湿水量とそれを気化させる調湿用エネルギーを急変動させるため、湿度制御が混乱する問題を発生させている。
【0051】
他方、一定の生産量を維持しようとすると、余備の製造ラインを設置せざるを得ず、設備投資の増大を招いている。加えて、ケミカルフィルタ(B)やケミカルフィルタ(C)によるアンモニア、TMSや他の有機物の捕集・除去率は製品歩留まりに大きな影響を及ぼすため、常時モニタする必要があり、要員の確保とモニタ装置の導入と設置は不可欠となっている。これによる製品のコストアップも看過できない問題である。
【0052】
以上の説明から明らかなように、LCD製造における基板処理工程排気をケミカルフィルタを用いて分子状汚染物質を捕集・除去して清浄化空気とする方法は、数々の技術的問題が存在しており、結果として、製品のコストアップと環境問題とエネルギー浪費とを誘発しており、ケミカルフィルタを用いる方法を改変する方法の開発が不可避である。
【0053】
しかしながら、単に従来技術による回分式TSA装置を用いたのでは、きわめて複雑で長い引きまわしダクトが必要となり、装置をコンパクトにするのを阻むため、莫大な設備投資が避けられない。加えて、4個の開閉弁を開から閉へ、他の4個の開閉弁を閉から開へ同時に動作させる困難性とそれに伴う流量変動と圧力変動は避けられず、さらに吸着モード切換え後には、淀み箇所からの高濃度の分子状汚染物質の清浄空気中への混入問題、すなわち、分子状汚染物質の濃度変動問題も発生する。
【0054】
他方、ケミカルフィルタを用いないで、に再生可能な吸着材を用いて吸着と再生を同時に行えて、半永久的に使用可能な吸着材ロータによる空気清浄化装置が提案されている(特開平7−263172号を参照。)。
【0055】
この提案に関しては詳述はしないが、次の問題がある。第1に、長いダクトの引きまわしが必要であると同時に吸着材ロータの断面とダクトの断面の形状が全く相違するため複雑な構造形状の継手が多数必要となる。したがってコンパクトな装置とすることが困難である。第2に、それらの継手端面と吸着材ロータ端面の摺動箇所からの処理空気、再生加熱空気、再生冷却空気の漏洩を防止できない。第3に、吸着材ロータは吸着、再生、冷却の3区域に区画する必要があり、それぞれの区域に流速乃至流量、温度、圧力、流れ方向、汚染物質の質と濃度の各々が相違する処理空気、再生加熱空気、再生冷却空気の混入を防止することは極めて困難である。第4に、再生加熱空気、再生冷却空気も連続して流すためにエネルギー消費量が多いことである。
【0056】
本発明は前述の事実に鑑みてなされたもので、LCD製造や半導体製造における基板処理工程の清浄作業空間から排出される分子状汚染物質を含有する排気を清浄化処理して循環供給するに際して、当該工程の製造設備ラインの操業を停止させることなく排気中に含まれるヘキサメチルジシラザン及びトリメチルシラノールを2流体ノズルから噴出させた加湿水により捕集し、冷却器にて凝縮し加水分解して除去し調温・調湿を行った後、吸着材を用いる清浄化を行って、当該清浄作業空間に長期間に亘って連続安定に清浄化調温調湿空気を循環供給する方法を提供して、前述の問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0057】
〔1〕本発明に従えば、液晶ディスプレイ製造の基板処理工程排気を清浄化調温・調湿して循環供給する基板処理工程排気の清浄化方法において、当該排気を処理空気として加湿冷却加温装置に取入れ、加湿冷却加温した空気を得、これを、屋内又は屋外から取入れた空気を再生空気として用いる回分式温度スイング吸着装置に通じて調温・調湿と分子状汚染物質及び粒子状汚染物質の除去を実施することを特徴とする基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
【0058】
〔2〕本発明に従えば、〔1〕における前記加湿冷却加温装置は、処理空気導入口における処理空気の流速乃至流量、温度及び関係湿度を計測する計測手段、前記計測手段を用いて得られる計測値を入力して加湿断熱冷却によりその処理空気を水分で飽和させるに必要な加湿水量を演算させる演算手段、その処理空気が流れる管路中に設置してその流れと同方向に加湿水と空気とを噴出させる2流体ノズル、その2流体ノズルの下流に設置した冷却器、その冷却器の下流に設置した加温器並びに該管路外に設置した加湿水槽と空気圧縮機と凝縮水槽と冷凍機ユニット、前記演算手段を用いて得られる演算値を変換した制御信号により作動する加湿水ポンプ及びそれらを接続する配管から構成された装置であって、液晶ディスプレイ製造に適合する純水乃至超純水を用いたことを特徴とする〔1〕記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
【0059】
〔3〕本発明に従えば、〔1〕又は〔2〕における前記加湿冷却加温装置において処理空気に含まれる汚染物質であるヘキサメチルジシラザン及び/又はトリメチルシラノールを2流体ノズルから噴出させた加湿水により捕集し、冷却器にて凝縮し加水分解して除去することを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
なお、加湿冷却加温装置で使用する加湿水の水質は、液晶ディスプレイ又はLCD製造に適合する純水乃至超純水レベルの純度を保有していることが好ましい。
【0060】
〔4〕本発明に従えば、〔1〕−〔3〕における前記冷却器は、その冷却器を流出する処理空気の温度を4〜17℃の範囲で制御する機能を備えたことを特徴とするものである〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
【0061】
〔5〕本発明に従えば、〔1〕−〔4〕における加湿冷却加温装置の加温器は、その加温器を流出する処理空気の温度を15〜30℃の範囲で制御する機能を備えたことを特徴とするものである〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
【0062】
〔6〕本発明に従えば、〔1〕−〔2〕において、前記屋内又は屋外から取入れた空気を再生空気として用いる回分式温度スイング吸着装置(回分式TSA装置)は、処理空気中の塩基性分子状汚染物質と有機性分子状汚染物質を吸着材で除去する吸着モードにある吸着材ユニットの系統と、前記塩基性の分子状汚染物質、有機性の分子状汚染物質を吸着した吸着材に再生空気を通じることにより冷却・加熱する再生モードにある吸着材ユニットの系統とを、並列に配置した(A)、(B)の2系統を備え、更に当該再生空気を加熱する再生空気加熱部、並びに、吸着モードと再生モードを交互に繰り返す(A)系統と(B)系統の切換え手段である第1バルブ及び第2バルブを備えたことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
【0063】
〔7〕本発明に従えば、〔6〕における前記吸着材ユニットは、塩基性分子状汚染物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層aと、及び有機性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭を含むものを用いた吸着材層bとから構成されることを特徴とする〔6〕記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
そして、前記の吸着材ユニットは塩基性分子状汚染物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層a及び有機性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭を含むものを用いた吸着材層bから構成されていることを特徴とするものである。
【0064】
〔8〕本発明に従えば、〔6〕において、前記第1バルブ及び第2バルブは内部が枠形仕切板により4つの小室に区画されており板状回動弁体の回動によって各小室の開放と閉鎖を繰り返して、前記(A)系統と(B)系統を切換える4ポート自動切換えバルブであることを特徴とする〔6〕に記載の基板処理工程排気の清浄化方法が提供される。
【発明の効果】
【0065】
本発明の基板処理工程排気の清浄化方法によれば、多くの問題があるケミカルフィルタを使用せずに、処理空気中のアンモニア、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルシラノール(TMS)、レジストインク溶媒等の分子状汚染物質を、いずれも1ppb以下まで長期に亘り連続安定に除去できるという顕著な作用効果を奏する。したがって、産業廃棄物の大幅削減という環境改善に貢献することができる。
【0066】
又、本発明によれば、ケミカルフィルタを使用しないため、寿命となったケミカルフィルタを新品と取替えるという大懸りな作業が無用となり、それを取付けていた基板処理工程の操業を停止させる必要もなく、汚染された清浄化空間を清浄状態に回復させるために要していたクリーンアップエネルギーも無用となるというLCD製造コストに占める変動費を低減させる大きな経済効果をもたらすことができる。
【0067】
さらに又、本発明によれば、ケミカルフィルタを使用しないため余備の製造ラインは無用となり、アンモニアをはじめとする分子状汚染物質をモニタする必要がなくなり、モニタ装置と要員が不要となるというLCD製造コストに占める固定費を低減させる大きな経済的効果をもたらすことができる。
【0068】
さらに、本発明の基板処理工程排気の清浄化方法は、長期間に亘り、安定して且つ連続的に清浄化調温調湿空気を供給できるので操業度の向上と製品の歩留まり向上に寄与することができる。したがって、LCD製造コストの大幅低減に貢献することができる。
【0069】
加えて、本発明によれば、基板処理工程からの排気を処理空気として取入れて粒子状汚染物質と分子状汚染物質の除去と調温・調湿を行って基板処理工程内の清浄作業空間に循環供給するから、大容量のクリーンルーム向けの調温調湿に要した莫大なエネルギーに比べ基板処理工程の清浄作業空間向けの調温調湿エネルギーは格段に削減できる。
【0070】
又、本発明においては、再生空気は系外の屋内空気又は屋外空気を取入れて用いるから、処理空気として取入れた基板処理工程の排気はほとんど全て清浄空気として清浄作業空間に循環供給できる。したがって、1パス使い捨て方式の清浄化調温調湿装置に比べてエネルギー消費量を大幅に節減できる。
【0071】
本発明においては、基板処理工程で使用されるヘキサメチルジシラザン(HMDS)とその分解物であるアンモニアとトリメチルシラノール(TMS)に関しては水との反応性及び水への溶解性を利用して、アンモニアやレジストインク溶媒等を吸着除去するに先立って処理空気を水分で飽和させるに必要な水量の1.0〜1.2倍の加湿水と圧縮空気を噴出させる2流体ノズルを用いて20μm以下の多数の霧滴を発生させる加湿断熱冷却によって過飽和状態を実現させ、次いで冷却器に通じて凝縮させる方法により高効率で連続、安定に除去できる。
【0072】
又、本発明においては、循環空気ダクト104(図1)に高性能フィルタ(1)15(図2)を設置したのに加え、基板処理工程からの排気を処理空気としたから、粒子状汚染物質の濃度は既に極めて低減されており一旦取付けた高性能フィルタ(2)106(図1)は長期に亘って連続安定に使用できる。さらに、たとえ高性能フィルタ(1)15や除塵フィルタ(2)102(図1)や除塵フィルタ(1)12(図2)を取替えるとしても、基板処理工程の操業を停止する必要はない。
【0073】
本発明における加湿冷却加温装置は、HMDSとTMSを捕集・除去し、さらに加水分解するだけでなく、冷却器は基板処理工程の清浄作業空間で要求される関係湿度に相当する露点温度で制御する機能を有し、且つ、加温器は基板処理工程の清浄作業空間で要求される温度に制御する機能を有しているから、従来はケミカルフィルタ(図5)や吸着材ロータ(特許文献1)で示される空気清浄化装置の下流に設置されていた調温調湿装置60(図5)は無用となり、省エネルギーとシステムの簡略化が実現できる。
【0074】
本発明においては、繰返し再生使用可能であって、且つ、塩基性分子状汚染物質を高選択率で吸着する固体酸層及び有機性分子状汚染物質を高選択率で吸着する活性炭層からなる吸着材ユニットを用いたから、アンモニアは0.2ppb以下、HMDSが2ppb以下、TMSが1.0ppb以下、レジストインク溶媒等の各種の有機性汚染物質はそれぞれ0.2ppb以下、1.2ppb以下まで、長期に亘って連続して安定に除去でき、基板処理工程作業空間で要求される分子状汚染物質の清浄度条件を満たすことができる。
【0075】
本発明において吸着材ユニットに流入する処理空気中には、固体酸及び活性炭の吸着サイトを失活させるHMDS、TMSは微量であるから、吸着材ユニットは長期に亘って連続して安定に塩基性分子状汚染物質及び有機性分子状汚染物質を吸着・除去する性能を保持する。
【0076】
本発明における回分式TSA装置は、吸着材ユニットを並列に(A)、(B)2系統と再生機能を備えているから、(A)系統と(B)系統を交互に吸着モードと再生モードを繰返し切換えることによって長期に亘って連続して安定に基板処理工程排気の清浄化が可能である。
【0077】
本発明における回分式TSA装置で用いる再生空気は、系外の屋内空気又は屋外空気であり、しかも加熱時間帯には200〜250℃に加熱しているから、脱離後に吸着材に残留する汚染物質の吸着平衡分圧は極めて低いレベルとなる。
【0078】
本発明における回分式TSA装置は4ポート自動切換えバルブである第1バルブと第2バルブを備えているから、吸着モードと再生モードを交互に切換える際、清浄作業空間への流れは断続することがなく、圧力変動は発生しない。
【0079】
又、本発明における回分式TSA装置はダクトの複雑な引きまわしがないから、装置がコンパクトになり、しかも、ダクトとバルブの間に滞留・淀み箇所が生じないから、吸着モードと再生モードの切換え時においても、又、定常時においても清浄空気中の分子状汚染物質濃度の増加・変動はなく安定している。
【0080】
本発明においては、処理空気を飽和させるに必要な加湿水及び清浄空気を調湿するのに必要な調湿水は、いずれもLCD製造に適合する純水乃至超純水を用いている。したがって基板処理工程においてLCDの歩留まりは高く保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面に沿って説明する。図1はLCD製造における基板処理工程からの排気を処理空気として処理空気導入口1から取入れて、その処理空気の調温・調湿と処理空気中の分子状汚染物質及び粒子状汚染物質の除去とを行って、清浄化調温調湿空気とし、基板処理工程内の清浄作業空間100に、この清浄化調温調湿空気を、清浄化調温調湿空気供給口2から供給する本発明の実施形態の構成図である。
【0082】
この図において処理空気導入口1と清浄化調温調湿空気供給口2の間には、処理空気が流下する順に加湿冷却加温装置10、回分式温度スイング吸着装置40の二つの装置が配置されている。
【0083】
さらに、加湿冷却加温装置10の構成を図2に示した。当該加湿冷却加温装置10においては、処理空気の加湿冷却加温を行う。図2において、屋内空気流入口11から流入させた屋内空気を、除塵フィルタ(1)12に通じて除塵した後、空気圧縮機13により加圧した空気と、LCD製造に適合する純水乃至超純水を加湿水として加湿水取入れ口14から取入れて、加湿水槽18に貯留させ、加湿水ポンプ17により加圧した加湿水とを、処理空気導入口1から導入して、高性能フィルタ(1)15を通過させた処理空気が流れる管路中に設置した2流体ノズル16から処理空気流と同方向に噴出させ、当該加湿水を微粒化させる。本実施の態様においては、加湿水は、体面積平均径20μm以下の霧滴となる様に操作する。このとき、処理空気導入口1における流速乃至流量と処理空気の温度と関係湿度とを計測手段によって計測して、その計測値を入力して、処理空気を加湿断熱冷却により飽和させるに必要な水量の1.0〜1.2倍量の加湿水量を演算手段によって求め、その演算値を変換した制御信号によって作動させる加湿水ポンプ17を用いて、自動的に送水できるように設備する。かくして2流体ノズル16から霧滴を噴出させて加湿した途端に処理空気は断熱冷却されるから、処理空気導入口1における温度以下に低下して飽和状態の温度になる。そして処理空気中の水分は過飽和状態にあるから、過飽和状態にある霧滴は消滅しないで処理空気流に随伴して、管路中に設置した冷却器21まで到達する。
【0084】
本発明の実施にあたっては、最低限純水を用いるが、LCD製造の分野では超純水が必要とされ、不純物含有量がppbオーダ又はそれ以下が必要となる場合もある。水質もその分野に要求される水質を選ぶことになる。LCD製造では、抵抗率に直接関係する電解質以外に微粒子、生菌、有機炭素、シリカ等を十分除去した純水乃至超純水を使用することが好ましい。
【0085】
本発明の実施の態様においては、上記したように、加湿断熱冷却により飽和させるに必要な水量の1.0〜1.2倍を用いて霧滴を発生させるから、不飽和条件の水量による霧滴数よりは、はるかに多数の霧滴を発生させ、しかも、霧滴発生時点の不飽和から飽和するまでに霧滴から水が蒸発するから霧滴径は減少する。したがって、個々の霧滴は、不飽和条件の時よりも大きな比表面積を保有することになり、霧滴全数の表面積は莫大となる。このようにして、当該多数の霧滴は、2流体ノズル16と冷却器21までの間で、処理空気中の汚染物質の分子と衝突して、それを当該霧滴の中へ取り込み、効率よく捕集できる状態が実現できる。特に、水に溶解するアンモニア、HMDS、TMSは、衝突と共に霧滴中に溶解し、霧滴に溶解した状態で冷凍機ユニット19と接続されている冷却器21に到達する。
【0086】
冷却器21に到達した霧滴と過飽和状態の処理空気は、さらに冷却されて4〜17℃の範囲から選ばれた設定温度となる。このため、冷却器21に到達した霧滴と処理空気中の水分の過飽和分は凝縮して凝縮水となって凝縮水槽22に貯留される。このときアンモニアは水より揮発性が高い(アンモニアの沸点:−33℃、水の沸点:100℃)ため、水が凝縮してアンモニアが気化する精留効果が起こり、アンモニアは処理空気と共に冷却器21を通過して、加温器31に到達する。それゆえ、アンモニアの冷却器21での除去率は、HMDSとTMSのそれと比較すると低率である。又、水に不溶性の有機物は、アンモニアと同様に加温器31に到達する。
【0087】
水が冷却器21において凝縮する際にも、アンモニア、HMDS、TMSは水に捕集されて凝縮水槽22に貯留される。したがってアンモニア、HMDS、TMSは霧滴によって捕集された分と合わせて凝縮水槽22に貯留される。このうちアンモニアは前述の通り精留効果によって気化(揮発)する。一方、HMDSとTMSは凝縮水中に溶解した状態にある。しかしながら、HMDSは前記した式(2)と式(3)によって加水分解を受けて、アンモニアとメタンとシリカに分解される。他方のTMSも式(3)によって加水分解を受けてメタンとシリカに分解される。式(2)、式(3)式による加水分解は、冷却器21の伝熱表面でも進行する。
【0088】
このようにHMDS、TMSは加水分解によりシリカを生成するから、本発明の清浄化装置を長期に亘って操業させた場合、シリカはスケールとなって冷却器21の表面や凝縮水槽22の内面に付着して、伝熱速度を低下させたり、凝縮水の排出口を閉塞させる。このため、本発明の実施の態様においては、それらの箇所を、例えばフッ素樹脂コーティングすることによりスケール付着を防止することが好ましい。
【0089】
冷却器21を流出する処理空気は、4〜17℃の範囲から選ばれた設定温度に制御されており、その温度を露点とする水分で飽和されている。それゆえ、清浄作業空間で要求される関係湿度に相当する水分に調整することが好ましい。例えば清浄作業空間100で温度23℃、関係湿度45%の空気が要求される場合、設定温度を10.7℃として制御することにより、温度23℃において関係湿度45%となる水分に調整される。
次に処理空気を加温器31に流入させて昇温する。加温器31を流出する処理空気は15〜30℃の範囲から選ばれた設定温度に制御されているから、前記の例では加温器31の設定温度23℃として制御することにより、回分式TSA装置40に流入前に調温調湿される。
【0090】
加温器31を流出した処理空気は、処理空気送風機32で回分式TSA装置40を通過するに必要な圧力まで昇圧して、処理空気取入れ口41に流す。次いで、処理空気は図3に示す回分式TSA装置40の第1バルブ42を経て、吸着モードにある(A)系統の吸着材ユニット(A)43Aに流入する。
【0091】
本発明において、吸着材ユニット(A)43A、吸着材ユニット(B)43Bは塩基性物質を選択的に吸着する固体酸性物質であるチタンと珪素からなる複合酸化物又は、さらに酸化バナジウム等も添加した複合酸化物を通気時に圧力損失が僅少となるようにハニカム状、コルゲート状又はプリーツ状に加工して、さらに焼成して調製した成形物を積層した吸着材層aと、有機性物質を選択的に吸着する活性炭、活性コークス、グラファイト、カーボン、活性炭素繊維、ゼオライト等を通気時に圧力損失が僅少となるようにハニカム状、コルゲート状又はプリーツ状に加工して、さらに焼成して調製した成形物を積層した吸着材層bと、が直列に配列されて一体化されている。
【0092】
吸着材ユニット(A)43Aに流入した処理空気からは、塩基性物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものからなる吸着材層aを通過する間において、塩基性分子状汚染物質であるアンモニアと微量の残存HMDSとが除去され、有機性物質を選択的に吸着する活性炭を含むものからなる吸着材層bを通過する間において、有機性分子状汚染物質であるレジストインク溶媒等と微量の残存TMS並びに残存する各種有機物が除去される。
【0093】
吸着材ユニット(A)43Aから流出した処理空気は、アンモニアが0.2ppb以下、HMDSが2ppb以下、TMSが1.0ppb以下、レジストインク溶媒が1.2ppb以下まで除去された清浄空気となり、清浄空気ダクト(A)47、第2バルブ45と清浄空気送出ダクト49を通って清浄空気送出口50へ流入する。
【0094】
次に本発明においては、かくして得られた清浄空気を、清浄空気送出口50から図1の清浄化調温調湿空気送風機101に流入させ、昇圧して、清浄化調温調湿空気供給口2を経て清浄作業空間100に供給する。なお、図1に示す様に通常、清浄作業空間100内の清浄化調温調湿空気吹出し口115付近には清浄度クラスを最終調整する高性能フィルタ(2)106が設置されており、又、空気取入れ口付近には除塵フィルタ(2)102、取入れ空気ファン108,さらに、清浄作業空間からの排気を一連の処理装置10、40へ循環させるための循環送風機103、循環空気ダクト104が設置されている。
【0095】
本発明における回分式TSA装置で用いられる第1バルブと第2バルブとしては、本発明者らが創出、提案した4ポート自動切換えバルブを使用することが望ましい(特開2006−300394を参照。)。
【0096】
なお、詳しくは当該公報の内容を取り込んで本発明を実施することができる。
本発明の実施の態様において、第1バルブ及び第2バルブとして使用する、4ポート自動切換えバルブは、内部に空間を有する筐体部、当該空間部を4つの小室に区画する開口部を有する枠形仕切板、当該枠形仕切板の開口部を開放又は閉鎖する板状回動弁体並びに該4つの小室に区画されて存在する気体を常に流入させる流入ポート、流体の流入と流出を交互に行う流入/出ポート(1)、気体を常に流出させる流出ポート及び気体の流入と流出を交互に行う流入/出ポート(2)並びに前記板状回動弁体を回転軸周りに回動させる駆動手段を備える構成を有するバルブであり、且つ、前記筐体部を構成する部材、及び前記枠形仕切板、前記回転軸、前記板状回動弁体は、好ましくは断熱機能を備えるバルブである。
【0097】
本発明の実施の態様においては、いずれも同形状、同サイズ又は同機能を有するこのような4ポート自動切換えバルブを使用するものである。又、(A)系統と(B)系統の吸着モード、再生モードの切換えは、第1バルブと第2バルブを同時に作動させることによって行う。
【0098】
ここで本発明の実施例の回分式TSA装置の再生操作について図3を用いて説明する。再生モードは加熱時間帯と冷却時間帯とから構成されるが、再生モードが加熱時間帯にある場合において、図3の再生空気導入口51から取入れた常温の再生空気は、再生空気送風機52で昇圧されて再生空気予熱器54に流入して、すでに吸着材ユニットの再生を行い、当該吸着材ユニットを去る高温の再生空気のもつ廃熱を回収する。それによって、再生空気自身は常温から150〜200℃まで予熱昇温される。次いで再生空気は再生空気加熱器55に流入して200〜250℃に加熱されて流出して第2バルブ45から清浄空気ダクト(B)48を経て、再生モードにある吸着材ユニット(B)43Bに流入する。
なお、念のため、本発明における再生空気とは、吸着モードが終了した吸着材ユニットに送る、加熱した空気であって、当該加熱空気により、吸着材ユニットから吸着した不純物を脱離させる工程(再生モード)に使用する空気である。
【0099】
200〜250℃に加熱された再生空気が吸着材ユニット(B)43Bに流入することによって吸着材は加熱され、前回のサイクルにおいて(B)系統が吸着モードのとき常温状態おいて吸着材に吸着されていたアンモニア、レジストインク溶媒等と微量のHMDS及びTMSが脱離され、高温状態の再生空気の気流中に混入する。この際、アンモニアとHMDSは固体酸性物質を含むものからなる吸着材層aに、レジストインク溶媒等とTMSは活性炭を含むものからなる吸着材層bに、それぞれ吸着されていたものが加熱により脱離される。
【0100】
本発明に用いる再生空気中の分子状汚染物質は大気中のそれと略々同等であるから、アンモニアは3〜5ppb、GC/MS分析法により極めて多数の成分が検出される有機性分子状汚染物質はヘキサデカン換算10〜50ppb、酸性分子状汚染物質はNOxが1〜5ppb、SOxが0.1〜0.5ppb混在している。なお、当然、HMDS、TMS、レジストインク溶媒は検出限界以下である。そして、これを高温に加熱して脱離に用いているから、それぞれの吸着平衡分圧は常温時の吸着平衡分圧より格段に低下させることができる。また、200〜250℃に加熱したから、熱膨張により再生空気の体積流量は常温のそれの1.60倍から1.77倍となり、被吸着物質の脱離に必要な熱エネルギーはもとより吸着材層中を流れる再生空気量として充分な流速を与えることができる。つまり、本発明の脱離条件によって、吸着材層中の分子状汚染物質は徹底的に脱離されて吸着材ユニットから排出される。
【0101】
吸着材ユニット(B)43Bを流出した再生空気は、第1バルブ42を経て再生空気予熱器54で60〜70℃まで冷却されると同時に常温の再生空気を予熱する熱交換が行われて再生空気排出口56から系外に排出される。通常は、再生空気排出口56は集合排ガス処理装置(図示せず)に接続する。
【0102】
次に、再生モードが冷却時間帯となったとき、再生空気送風機52で昇圧された再生空気は、再生空気予熱器54と再生空気加熱器55を流れて第2バルブ45から清浄空気ダクト(B)48を経由して吸着材ユニット(B)43Bに流入する。再生モードが冷却時間帯にある場合においては、再生空気加熱器55には通電しないから、流入した再生空気は常温のまま吸着材ユニット(B)43B、第1バルブ42、再生空気予熱器54、再生空気排出口56を流れる。当然、加熱時間帯から冷却時間帯に切替わった時点は、常温の再生空気は再生空気予熱器54、再生空気加熱器55、第2バルブ45、清浄空気ダクト48、吸着材ユニット(B)43B、再生空気予熱器54、再生空気排出口56を冷却しながら流れる。なお、吸着モードから再生モードあるいは再生モードから吸着モードへの切換え時、本発明の回分式TSA装置においては再生空気を流さない状態でも操作できる。
【0103】
吸着モードにある(A)系統又は(B)系統が再生モードに切替った時点は、加熱時間帯となり、再生空気加熱器55に通電されるから、再生空気は清浄空気ダクト(A)47、吸着材ユニット(A)43A、再生空気予熱器54、再生空気排出口56を、加熱しながら流れる。
【0104】
吸着モードが(B)系統となった時、再生モードは(A)系統となるから、処理空気は第1バルブ42、吸着材ユニット(B)43Bを流れて清浄空気となり、第2バルブ45、清浄空気送出口50の順に流れ、再生空気は再生空気導入口51、再生空気送風機52、再生空気予熱器54、再生空気加熱器55、第2バルブ45、清浄空気ダクト(A)47、吸着材ユニット(A)43A、第1バルブ42、再生空気予熱器54、再生空気排出口56の順に流れる。
【0105】
図3において、清浄空気が流れる第2バルブ45、清浄空気ダクト(A)47、清浄空気ダクト(B)48、清浄空気送出ダクト49、清浄空気送出口50の内面を、例えばフッ素樹脂コーティングすることが好ましい。但し、清浄空気送出口50として、その内面をフッ素樹脂コーティングした3方弁を取付けることが望ましい。
【0106】
このようなフッ素樹脂コーティングを施すことによって、アンモニアや有機物の金属表面への付着が防止できるから、イニシャルスタート時や操業休止後の再スタート時のクリーンアップ作業を行う際には、第1バルブ42と第2バルブ45の同時作動と処理空気送風機32と再生空気送風機52の作動を定常状態の条件から変更して、加熱した再生空気を第2バルブ45から清浄空気ダクト(A)47に通じることによって、又、第2バルブ45から清浄空気送出ダクト49を経て、清浄空気送出口50に通じることによって、さらに又、第2バルブ45から清浄空気ダクト(B)48に通じることによって、クリーンアップできるから、定常状態に入った時点では、吸着材ユニットを流出した清浄空気にアンモニア及び又は有機物の混入をなくすことができ、かつ、短時間でクリーンアップ作業が終了する。
【0107】
以上は基板処理工程で使用されるシランカップリング剤がHMDSとTMSであるとして詳細に説明してきたが、実際にはHMDSに限らず、各種のシランカップリング剤、乃至シリル化剤、例えば、γ−アミノプロピルエトキシシラン、メタアクリルシラン、ビニルシラン、さらには、シリルクロライド類等の有機珪素化合物が使われている。又、クリーンルームの構築部材や製造設備の構成材料であるシリコーン樹脂、シリコーンゴム材、シリコーンシーリング材、シリコーンオイル、シリコーン接着剤等には様々な有機珪素化合物が使用されている。
【0108】
それらの有機珪素化合物は、いずれかの時点で、それの分解物やモノマーとなってアンモニアや塩酸とともに分子状汚染物質となって処理空気中に混入する。又、露光工程ではSOxが分子状汚染物質となって混入する場合がある。これらの分子状汚染物質を除去する清浄化にも水との反応性或いは水への溶解性という有機珪素化合物共通の特性が利用できるため、本発明の実施の態様においては、処理空気を清浄化空気として清浄作業空間に循環供給可能である。
すなわち、本発明においては、加湿断熱冷却により飽和させるに必要な水量以上の水を用いて多数の微小な霧滴を発生させ、当該多数の霧滴は、処理空気中の汚染物質の分子と衝突し、特に水に溶解する、アンモニア、HMDS、TMSは、衝突と共に霧滴中に溶解せしめることにより、除去可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の基板処理工程排気の清浄化方法によれば、ケミカルフィルタを使用せずに、処理空気中のアンモニア、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルシラノール(TMS)等の分子状汚染物質を、いずれも1ppb以下まで長期に亘り連続安定に除去できるので、産業廃棄物の大幅削減という環境改善に貢献することができる。また、ケミカルフィルタを新品と取替えるという大懸りな作業が無用となり、それを取付けていた基板処理工程の操業を停止させる必要もなく、汚染された清浄化空間を清浄状態に回復させるために要していたクリーンアップエネルギーも無用となるため、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の態様における清浄化装置の構成図である。
【図2】本発明における加湿冷却加温装置の説明図である。
【図3】本発明における回分式TSA装置の構成図である。
【図4】従来技術における回分式温度スイング吸着装置の説明図である。
【図5】従来技術による清浄化装置の説明図である。
【符号の説明】
【0111】

1:処理空気導入口
2:清浄化調温調湿空気供給口

10:加湿冷却加温装置
11:屋内空気流入口
12:除塵フィルタ(1)
13:空気圧縮機
14:加湿水取入れ口
15:高性能フィルタ(1)
16:2流体ノズル
17:加湿水ポンプ
18:加湿水槽
19:冷凍機ユニット(1)

21:冷却器
22:凝縮水槽

31:加温器
32:処理空気送風機

40:回分式TSA装置
41:処理空気取入れ口
42:第1バルブ
43A:吸着材ユニット(A)
43B:吸着材ユニット(B)

45:第2バルブ

47:清浄空気ダクト(A)
48:清浄空気ダクト(B)
49:清浄空気送出ダクト
50:清浄空気送出口
51:再生空気導入口
52:再生空気送風機
53:再生空気冷却器
54:再生空気予熱器
55:再生空気加熱器
56:再生空気排出口
57:再生空気加熱部
58:再生空気フィルタ

60:調温調湿装置
61:高性能フィルタ(4)
62:冷却除湿器
63:調温器
64:加湿器

80:ケミカルフィルタユニット
81:ケミカルフィルタ(B)
82:ケミカルフィルタ(C)
83:処理空気送風機(2)

100:清浄作業空間
101:清浄化調温調湿空気送風機
102:除塵フィルタ(2)
103:循環空気送風機
104:循環空気ダクト

106:高性能フィルタ(2)
107:空気取入れ口
108:取入れ空気ファン

110:ファンフィルタユニット
111:ケミカルフィルタ(C)
112:ケミカルフィルタ(B)
113:フィルタファン
114:高性能フィルタ(3)
115:清浄化調温調湿空気吹出し口

120:従来技術の回分式TSA装置

T1〜T8:分岐/合流点
V1〜V8:開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイ製造の基板処理工程排気を清浄化調温・調湿して循環供給する基板処理工程排気の清浄化方法において、当該排気を処理空気として加湿冷却加温装置に取入れ、加湿冷却加温した空気を得、これを、屋内又は屋外から取入れた空気を再生空気として用いる回分式温度スイング吸着装置に通じて調温・調湿と分子状汚染物質及び粒子状汚染物質の除去を実施することを特徴とする基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項2】
前記加湿冷却加温装置は、処理空気導入口における処理空気の流速乃至流量、温度及び関係湿度を計測する計測手段、前記計測手段を用いて得られる計測値を入力して加湿断熱冷却によりその処理空気を水分で飽和させるに必要な加湿水量を演算させる演算手段、その処理空気が流れる管路中に設置してその流れと同方向に加湿水と空気とを噴出させる2流体ノズル、その2流体ノズルの下流に設置した冷却器、その冷却器の下流に設置した加温器並びに該管路外に設置した加湿水槽と空気圧縮機と凝縮水槽と冷凍機ユニット、前記演算手段を用いて得られる演算値を変換した制御信号により作動する加湿水ポンプ及びそれらを接続する配管から構成された装置であって、液晶ディスプレイ製造に適合する純水乃至超純水を用いたことを特徴とする請求項1記載の基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項3】
前記加湿冷却加温装置において処理空気に含まれる汚染物質であるヘキサメチルジシラザン及び/又はトリメチルシラノールを2流体ノズルから噴出させた加湿水により捕集し、冷却器にて凝縮し加水分解して除去することを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項4】
前記冷却器は、その冷却器を流出する処理空気の温度を4〜17℃の範囲で制御する機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項5】
前記加温器は、その加温器を流出する処理空気の温度を15〜30℃の範囲で制御する機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項6】
前記屋内又は屋外から取入れた空気を再生空気として用いる回分式温度スイング吸着装置は、処理空気中の塩基性分子状汚染物質と有機性分子状汚染物質を吸着材で除去する吸着モードにある吸着材ユニットの系統と、前記塩基性の分子状汚染物質、有機性の分子状汚染物質を吸着した吸着材に再生空気を通じることにより冷却・加熱する再生モードにある吸着材ユニットの系統とを、並列に配置した(A)、(B)の2系統を備え、更に当該再生空気を加熱する再生空気加熱部、並びに、吸着モードと再生モードを交互に繰り返す(A)系統と(B)系統の切換え手段である第1バルブ及び第2バルブを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項7】
前記吸着材ユニットは塩基性分子状汚染物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層aと、及び有機性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭を含むものを用いた吸着材層bとから構成されることを特徴とする請求項6記載の基板処理工程排気の清浄化方法。
【請求項8】
前記第1バルブ及び第2バルブは内部が枠形仕切板により4つの小室に区画されており板状回動弁体の回動によって各小室の開放と閉鎖を繰り返して、前記(A)系統と(B)系統を切換える4ポート自動切換えバルブであることを特徴とする請求項6記載の基板処理工程排気の清浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−130212(P2009−130212A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304947(P2007−304947)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(594185097)伸和コントロールズ株式会社 (13)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)