説明

堰堤に堆積した土砂礫を利用した川水浄化方法。

【課題】川の自浄作用の主役は河床に付着する好気性微生物である。川をレイにするためには、川を長くするか、幅を広げるか。それができなければ微生物を増強するしかない。【解決手段】堰堤の上流側には大量の土砂礫が堆積している。これを微生物が付着する立方体に変えて飛躍的に微生物の量を増強する。
そのために
1堰堤の下部に、開口部を設け、下流側に電動弁を設備する。
2電動弁を閉めれば、土砂礫の空間から溢れた川水は堰堤の上を越流する。開ければ、土砂礫の中の川水は、必ず電動弁を通過して下流側に流れる。
3弁の開閉によって、土砂礫の空間は川水に満たされたり、流れたりするが、その度に流出した川水の体積と同じ量の溶存酸素を含む川水や空気が、土砂礫の空間を通過して微生物に酸素を供給する。
4堆積した大量の土砂礫は、数個の弁の開閉で、有用な水質浄化材となって大量の微生物が付着生育する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、川水を浄化するために、堰堤の上流側に堆積した土砂礫を、堰堤に設備した弁の開閉で、水質浄化材に変えて利用する川水の浄化方法。
【背景技術】
【0002】
国中に大小の川が無数にある。降雨量が多く川は急勾配で、台風や集中豪雨では洪水になるが、数日後にはもとの少ない水量の流れになる。これらは日常のことである。
流域内の有機性排水の量と質は、人間の活動に起因するものであるから、ほぼ一定である。降雨時などその川の流量が多いときには排水は希釈されて見えないが、平時の流量が少ない穏やかな水の流れのときには、川の流量に比較して排水量の割合が多いので汚れが目立つ。
小中の川でも、川水を浄化することは非常に難しい。それは川は河川法で規制され、官だけが計画実行できる。
降雨がないときの流量と、降雨時の流量との変動が大き過ぎる。
建設費、維持管理費が安価、故障がない、でなければならないからであり、実際にはほとんど手がついていない。
川の自浄作用を利用した試みはある。景観に配慮しながら、コンクリー護岸を土に変えたり、水路を曲げたり、水辺が草に覆われるようにする、などであるが小規模なものである。
現状は、川は洪水時に排水することが主で、平時に流れる川水を浄化することは、その川の自然の浄化作用に任せるしかない、のようである。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
流れる川水の有機物(BOD)は、すこしずつ浄化される。その主役は河床の土砂礫などの表面に付着した好気性微生物である。川水中の溶存酸素を利用できる場所では好気性微生物が、酸素が無い場所では嫌気性微生物など、場所の条件に応じた微生物が共同して有機物を吸着分解して水が浄化される。これが河川の自浄作用である。
本発明は、この微生物を飛躍的に増やして、自浄作用を増強させようとするものである。
好気性微生物は、川水中に含まれる溶存酸素が必要であるから、河床の砂礫などの表面にしか付着できない。微生物は薄く河床の表面を覆っているだけであり、そのままでは単位面積あたり微生物量は変わらない。
浄化能力を増強するということは、より多量の好気性微生物に接触させるということである。河床にある微生物の単位面積あたりの微生物量は、土砂礫の大小凹凸など場所によって変化はするがほぼ一定であると考えられるから、多量の微生物に接触させるということは、今よりも川を長くするか、幅を広くするか、微生物量を多くするしかない。しかし川を長くすることも幅を広くすることもできないから、単位面積あたりの好気性微生物量を増加させるしかない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本案は、河床安定工として砂防堰堤などを建設したとき(以下総称して堰堤と呼ぶ)に、堰堤の上流に堆積した大量の土砂礫を、好気性微生物が付着する立方体に変えて、微生物量を飛躍的に増加させようとするものである
【発明を実施するための最良の形態】
図によって説明すると
図1は、川の断面図で、浄化の主役である好気性微生物が付着しているのは河床1だけである。
図2は、川中に建設した堰堤などの構造物2、堆積した土砂3の断面図
図3は、図1と図2で示した川を俯瞰したもので、川水は、堤防4などで両側を、堰堤2で下流側を、河床1で底面を形成した、いわば大きな水槽に貯水される。この水槽内に上流から流れて自然に堆積した土砂が土砂礫3である。
この堰堤の建設によって堆積した大量の土砂礫3を、微生物が生息できる立体的な環境に作りかえることができれば、堆積した土砂礫3の下になった河床1の面積に比較して、微生物量は飛躍的に増加して、河川の浄化に役立つことになる。
図4Aは、堰堤2を建設し、土砂礫3が堆積したときの断面を図示したもので,川水の流れ5は、上流の河床1から、堆積した土砂礫3の上面を流れ、堰堤2を越えて、下流の河床1へ落下する。堆積した土砂礫3の上面の河床1には好気性微生物が生育するが、堆積した土砂礫3の内部は好気性微生物が生育できないい。水で飽和されてはいるが、水の流れは無く溶存酸素も無いからである。
これが従来の堰堤を越える水の流れである。
図4Bは、図4Aの堰堤2の下方に適当な面積の開口部(水抜穴)6を設けたものである。図3のような、水を満たした水槽の下部に穴を開ければ、川水5は、土砂礫3の中を流れ落ちて、開口部6を通過して河床1に、必ず、落下する。
図4Cは、図4Bの開口部6に、流出する川水を止めたり流したりする電動弁7を設けたものである。弁7を閉めれば、河川水5は図4Aのように土砂礫3の上面を流れる。また弁7を開ければ、土砂礫3の空間を満たしていた川水5は図4Bのように、必ず流出する。そして流出した川水の代わりに空気が、または溶存酸素を含んだ川水5が、その流出した体積の分だけ、土砂礫3の空間に入る。
弁7の開閉によって、堆積した土砂礫全体から水を抜いたり、水を満たすことができる。そのうちに条件に適した好気性微生物が土砂礫全体に増殖付着する。
堆積した土砂礫は大小さまざまな粒径の粒が堆積したもである。弁の開閉によって土砂礫内の空間では、川水が満ちたり、水位が低下して空気が入ったり、停止したりする。もともと川の中の土砂礫は水が浸透し易いが、弁の開閉の回数が無数に多くなるにつれて、土・粘土などの微細粒子は流失して、堆積した土砂礫の内部は隙間が多くなり、ますます川水が浸透し易くなる。例えば、渚で打ち寄せる波に何度も何度も洗われた砂は、極微粒子が流出して内部の空間が多くなり、かぶさった波をすぐに吸い込んでは浸透させてしまうようにである。
堰堤が新設ならば、河床上に適当な穴あき集水管を設置し、その周囲に自然に土砂礫が堆積する前に、微粒子を除いた砂礫などでで集水管の周囲を埋め戻して透水性の向上を図るのも有効である。
このようにして、この大量の土砂礫3は、好気性微生物が付着する薄い河床を無数に折り畳んで重ねて立方体にしたようなものになり、土砂礫の表面積は微細になるほど増大し、その表面に付着する微生物量は飛躍的に増大する。
この連続した空間が無数に形成された土砂礫は、廃水処理法方法のうちの、接触酸化法のハニカム(蜂の巣)材に相当するとおもわれる極めて有用な材料で、しかも無料で、さらに腐敗せず、壊れもしない。
この自然に堆積した土砂礫の内部を、川水を通過させて河床の立方体を築造し、水位を上下させ、酸素を供給する設備は、数個の電動弁と電力と弁開閉用のコントロール設備だけである。設備費は低額、修理費・動力費は極めて小額である。
弁7の径と数は、その川の平均的な低流量に合わせればよい。また、弁の位置は最下方だけでなく、例えば上方ならば河床の位置が上にあがり、利用できる土砂礫の体積が小になり小流量に対応できる。要は、流量の大小に応じて土砂礫内の水位を上下させ、または左右させて、酸素を供給することである。弁の操作によっては堰堤から流れる川水は間歇的にもなる。弁の上部には落下物に対して庇のような保護工を設ける。水質検査によって弁の操作が決まれば、あとはタイマーによる自動運転になる。必要に応じて水質検査をする。
堰堤を新設するときは、河床の集水管の配置・開口部の作成・弁の設置は、容易である。既設の堰堤に設備する場合でも 上部下部の開口部(水抜き穴)と弁の設置は、渇水時ならば可能。また集水管もできるだけ設置したい。
【発明の効果】
一般に、有機排水の処理方法としては、活性汚泥法・回転円盤法・接触酸化法などなど多数の方法がある。これらの従来の方法は、一定の土地を確保し、上屋を建築し、排水の発生場所から処理場への集水管、浄化処理設備、処理水の消毒、川への排水管、汚泥処理設備、など多大な建設費のうえに、高額な電力費・人件費・修理費などの維持管理費が必要である。例えば、都市の公共下水道、工場や団地の汚水処理場であり、各家庭の浄化槽である。これらの複雑・高価な設備の目的は、好気性微生物を大量に培養し、それに有機性排水を接触させて有機物を好気性微生物の餌とて消化し、排水を浄化しようとするものである。有機性排水は、これらの設備で90%程度は除去されるが約10%は除去できないまま処理水として川に放流されるが、川水流量の大小で希釈度は大いに変わる。
これ以上の高度処理は、建設費・維持管理費ともに多大で実施例は少ない。
本発明の処理する川水の濃度は数ppm程度である。上記の処理施設での処理する有機物排水濃度は数百ppm程度である。しかし川水は24時間連続して流れ、降雨時などで流量の変動が激しい。本発明はこれを河床の中の堰堤を利用して浄化しようとするものであり、上記した従来の処理方法とは大いに異なるが、それでも比較すれば
堰堤の建設は河川工事で借用するから、上記の建設費・動力費・維持費は不要。
本案を設備してもーー河床や水路に障害物を設置しないから、平時も洪水時でも流下水量
に影響はない。また突起物は堰堤の下流側側面に設備した数個の電
動弁だけであるから、平時でも洪水時でも、流下水量は阻害されな
い。
平水時・洪水時はーー平水時には弁の開閉で、川水は弁を通過したり、堰堤上部を流れる
。水質検査や流量の大小によって、上段下段の弁と数、などタイマ
ーで操作する。
洪水時では、弁も通過するし、それ以上の水量は堰堤上部を流れる
。集中降雨などで流下水量が激変しても、弁の開閉は必要が無く平
水時の流量になるまで待てばいい。
弁の開閉に気を使うこともないから、管理が容易になる。
水槽はーーーーーーー両側の堤防と堰堤と川底に囲まれた空間は水槽であり、この中に上
流から流れた土砂礫が自然に堆積する。
堆積した土砂礫はーー接触酸化法のハニカム(蜂の巣)材に相当し、好気性微生物が付着
し易い有用な材料に変身し、しかも無料で、さらに腐食せずに壊れ
もしない。
これが弁の開閉だけでできる。
好気性微生物はーーー堆積した土砂礫内の空間を、川水の水位が上下ながら流れ、接触す
る土砂礫の表面に、その場所の条件にかなった微生物が付着する。
これも弁の開閉だけでできる。
酸素の供給はーーーー弁を開いて排水して生ずる土砂礫内の空隙に空気が満ちることで、
また存酸素を含む川水が土砂礫の空間を上下左右することで供給さ
れる。
これも弁の開閉だけでできる
汚泥はーーーーーーー付着した微生物は水流で剥離し、下流へ流れる。
工事はーーーーーー 堰堤新設のときは、開口部、集水管、ともに工事は容易。
既設堰堤では、低流量時に堰堤の下流側から何段でもに円形の開口
を切削できる。集水管も極力設置したい。
設備費はーーーーーー数個の水中電動弁・電力・コントロール設備だけで低額。
電力費はーーーーーー数個の電動弁を開閉する電力だけで低額。
修理費はーーーーーー弁と電動弁だけで低額。
管理費はーーーーーー人件費、水質検査費、ともに低額。
急流河川が多い日本では、堰堤を建設して土砂礫を堆積させて河川の勾配を緩やかにする河床安定工事は、山間地だけでなく、市街地でも益々必要な工事です。
キレイな水は市街地でこそ必要です。
堰堤は堅牢です。堆積した土砂礫も壊れない腐敗しない自然物です。川水の浄化に適した場所の堰堤に、一度設備すれば半永久的です。上記のように設備費・工事費が低額、維持管理も容易で低額です
従来のように河床の微生物で川を浄化することも、また本発明のように、堰堤に自然に堆積する土砂礫を利用して微生物を増強して川水を浄化する、ことも自然です。安全で安心です。
【図面の簡単な説明】
【図1】河床の断面図
【図2】堰堤と堆積土砂礫の断面図
【図3】堆積した土砂礫の俯瞰図
【図4−A】従来の川水の流れ
【図4−B】開口したときの川水の流れ
【図4−C】弁を設備したときの川水の流れ
【符号の説明】
1 河床
2 堰堤
3 堆積した土砂礫
4 土砂礫を貯める堤防
5 川水の流れ
6 堰堤の開口部(水抜穴)
7 水中電動弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰堤の上流側に堆積した土砂礫を、堰堤に設備した弁の開閉で、水質浄化材に変えて利用する、川水の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【公開番号】特開2007−90317(P2007−90317A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313451(P2005−313451)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(591102280)
【Fターム(参考)】