説明

報知式低周波治療器

【課題】導子側の故障を検出し報知できる報知式低周波治療器を提供する。
【解決手段】報知式低周波治療器1の作動を設定する設定器2と、設定器2の出力を得て作動し演算を行なうCPU3と、治療用電力を発生する一方チャンネル4a及び他方チャンネル4bと、前記両チャンネル4a・4bのそれぞれに接続され人体に装着する2組の導子5と、報知式低周波治療器1の作動状況を報知する報知器7と、導子5に流れる電流を検出する電流検出回路6とからなる報知式低周波治療器1において、報知式低周波治療器1の作動中に、CPU3が、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量との比でなる倍率値から導子5の装着不良又は導子5を含む報知式低周波治療器1の故障を判定し、該判定を報知器7が報知する報知式低周波治療器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導子5を人体に装着し、人体に低周波電流を通電し電気治療を施す報知式低周波治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の特開2004−229782号公報には、スイッチ、電流検出手段、電流表示手段、コントローラ、レジスタンス、警報器等を備えた低周波治療器における故障検出装置が開示されている。
【0003】
前記公報は、出力端子間をレジスタンスで繋ぎ、電流が流れることをチェックするものであって、電圧計がない場合でも、低周波治療器本体が故障しているか否かを容易に知ることができる。
しかし、低周波治療器本体の故障は分かるが、導子側の故障は、検出できず警報できない。
又、導子装着の良否を判別する技術には、特開平9−84885号公報に示されるように電極間の導電度に基づいて判別するもの、或いは、特開2004−147918号公報に示されるように導子間の交流インピーダンスに基づいて判別するもの等がある。これらは、チャンネル毎に個別に導子装着の良否を判定することはできるが、当該チャンネルと他チャンネルとの通電調和の良否を見ることはできない。
【特許文献1】特開2004−229782号公報
【特許文献2】特開平9−84885号公報
【特許文献3】特開2004−147918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、低周波治療器本体の故障は検出し警報できるが、導子側の故障は、検出できず警報できないという点である。又、導子装着の不良は検出できるが、チャンネル間の通電調和の不良は検出できないという点である。
本発明の目的は、上記問題点を解決し、導子の装着不良又は導子を含む低周波治療器の故障を検出し報知できる報知式低周波治療器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、報知式低周波治療器(1)の作動を設定する設定器(2)と、設定器(2)の出力を得て作動し演算処理を行なうCPU(3)と、治療用電力を発生する一方チャンネル(4a)及び他方チャンネル(4b)と、前記両チャンネル(4a)・(4b)のそれぞれに接続され人体に装着する2組の導子(5)と、報知式低周波治療器(1)の作動状況を報知する報知器(7)と、導子(5)に流れる電流を検出する電流検出回路(6)とからなる報知式低周波治療器(1)において、報知式低周波治療器(1)の作動中に、CPU(3)が、一方チャンネル(4a)の通電量と他方チャンネル(4b)の通電量との比でなる倍率値をもとにして導子(5)の装着不良又は導子(5)を含む報知式低周波治療器(1)の故障を判定し、該判定を報知器(7)が報知する報知式低周波治療器である。
又、CPU(3)は、一方チャンネル(4a)の通電量と他方チャンネル(4b)の通電量との比でなる倍率値を算出する電流比較機能8と、基準値を予め設定し該基準値と前記倍率値を比較する倍率設定機能(9)とを有し、前記基準値は、一方チャンネル(4a)の通電量と他方チャンネル(4b)の通電量の内、大きい通電量の方の電流値を複数段階に区分し、これらの各段階ごとに設定したものであり、前記CPU(3)は、倍率値が基準値を超えた時に、導子装着不良と判定するものである。
更に、CPU(3)は、二個の電流値の比でなる倍率値が基準値を超えた状態が継続する時間を計数するタイマー機能(10)を有し、前記CPU(3)は、前記計数した時間が基準時間を超えると、導子装着不良と判定するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、低周波治療器において、機器の作動中に、CPU3が、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量との比でなる倍率値をもとにして導子5の装着不良又は導子5を含む報知式低周波治療器1の故障を判定し、該判定を報知器7が報知するものであるから、施療者が導子装着不良の報知をもとに導子5の装着を適切に対処することによって、導子装着が不良のままで報知式低周波治療器1を使用することを回避でき、正常な通電治療が行なえ、複数チャンネルが互いに通電調和の良い通電治療が行なえ、好都合である。
又、導子5又は報知式低周波治療器1の故障の報知をもとに、これらの故障に付いて適切に対処することによって、報知式低周波治療器1等が不良のままで使用することを回避でき、正常な通電治療が行なえ、好都合である。
【0007】
本発明に係るCPU3は、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量との比でなる倍率値を算出する電流比較機能8と、基準値を予め設定し該基準値と前記倍率値を比較する倍率設定機能9とを有し、前記基準値は、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量の内、大きい通電量の方の電流値を低・中・高出力の複数段階に区分し、これらの各段階ごとに設定したものであり、前記CPU3は、前記倍率値が基準値を超えた時に、導子装着不良と判定するものである。
電流値を低・中・高出力の3段階に区分した場合、前記低出力段階では、基準値を設定せず、導子装着不良の判定をしない。前記中出力段階では、基準値を「2」とし、2つの回路の出力の比でなる倍率値が2を超えた時に導子装着不良と判定する。前記高出力段階では、基準値を「1.5」とし、前記倍率値が1.5を超えた時に導子装着不良と判定する。
上述のように、各段階毎に基準値を設定したことにより導子装着不良の判定とその報知が適切に行なわれ、誤報知を排除でき、好都合である。
【0008】
本発明に係るCPU3は、二個の電流値の比でなる倍率値が所定の基準値を超えた状態が継続する時間を計数するタイマー機能10を有し、前記CPU3は、前記計数した時間が基準時間を超えると、導子装着不良と判定するものであるから、瞬時の導子装着不良は、導子装着不良と判定せず報知もせず、無用な判定とその報知を排除でき、好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
治療用電力を発生する一方チャンネル4a及び他方チャンネル4bと、人体に装着する導子5と、報知式低周波治療器1の状況を報知する報知器7と、報知式低周波治療器1の作動を設定する設定器2と、設定器2の指示によって作動し演算を行なうCPU3と、導子5を流れる電流を検出する電流検出回路6とからなる報知式低周波治療器1において、報知式低周波治療器1の作動中に、CPU3が、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量との比でなる倍率値をもとにして導子5の装着不良を判定し、該判定を報知器7が報知する報知式低周波治療器1になして、導子側の故障を検出し報知できるものとするという目的を実現した。
【実施例1】
【0010】
図1、2に示す本発明の報知式低周波治療器1は、患者に電気治療を施すものである。
報知式低周波治療器1は、施療者が報知式低周波治療器1の作動を設定する設定器2と、設定器2の出力によって作動し適宜複数の演算処理を行なうCPU(中央処理装置)3と、治療用電力を発生するチャンネル4と、人体に装着する導子5と、導子5を流れる電流を検出する電流検出回路6と、報知式低周波治療器1の状況を報知する報知器7とからなる。
【0011】
CPU3は、設定器2の出力その他の出力を得て適宜な演算処理を複数件行ないチャンネル4を制御する。又、CPU3は、報知式低周波治療器1の作動中に、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量との比でなる倍率値が基準値を超えた時に、導子装着不良又は導子5を含む報知式低周波治療器1の故障(以下導子装着不良等という)と判定し、該判定に係る信号を報知器7へ出力するものである。
【0012】
CPU3における導子5の装着不良等を判定する機能は、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの各通電量を電流検出回路6から得てその検出電流を比較し倍率値を算出する電流比較機能8と、基準値を設定すると共に、該基準値と前記電流比較機能8から得た倍率値とを比較する倍率設定機能9と、倍率設定機能9から出力を得てその出力中の所定出力のみを計数するタイマー機能10とを有する。
前述の計数に係る所定出力とは、具体的には、倍率設定機能9からの出力の内、倍率値が基準値を超えた状態に係る出力である。前記タイマー機能10で計数した前記所定出力の継続時間が基準時間(=具体例では5秒)を超えると、前記CPU3は、導子装着不良等と判定するものである。
【0013】
倍率設定機能9に予め設定する前記基準値は、一方チャンネル4aと他方チャンネル4bの内、大きい通電量の方の電流値を複数段階(具体例では、3段階)に区分し、これらの各段階ごとに設定するものである。
前記3段階は、低出力段階(=具体例では10mA以下)と、中出力段階(=具体例では10mA〜30mA)と、高出力段階(=具体例では30mA以上)である。
前記低出力段階では、基準値を設けず、導子装着不良等の判定をしない。
前記中出力段階では、基準値を「2.0」とし、前記倍率値が2.0を超えた時に導子装着不良等と判定する。
前記高出力段階では、基準値を「1.5」とし、前記倍率値が1.5を超えた時に導子装着不良等と判定する。
【0014】
チャンネル4は、一方チャンネル4aと、他方チャンネル4bとからなる。
一方チャンネル4aは、低周波電圧を発生する甲波形生成回路11aと、低周波電圧を増幅する甲増幅器12aと、低周波電圧を電圧変換する甲出力トランス13aとからなる。
他方チャンネル4bは、一方チャンネル4aと略同様に、乙波形生成回路11bと、乙増幅器12bと、乙出力トランス13bとからなる。
【0015】
導子5は、各出力トランス13に接続され、人体に装着して通電を行なうものである。甲・乙導子5a・5bは、甲出力トランス13aに接続され、丙・丁導子5c・5dは、乙出力トランス13bに接続される。
【0016】
電流検出回路6は、増幅器12から出力トランス13へ流れる電流を検出するものである。
甲電流検出回路6aは一方チャンネル4aの電流を検出し、乙電流検出回路6bは他方チャンネル4bの電流を検出するものである。
【0017】
報知器7は、CPU3から導子装着不良等と判定した信号を得て、当該事象を報知するものである。具体例では、表示パネル14に「導子の装着状態が不安定です。導子の装着状態を確認して下さい。」なる文章を表示する。
尚、電流値を低・高出力の2段階に区分した場合は、前記低出力段階では、基準値を設定せず、導子装着不良等の判定をしない。前記高出力段階では、基準値を「2.0」とし、2つの回路の出力の比でなる倍率値が2.0を超えた時に導子装着不良等と判定する。
【0018】
本発明の実施例1を使用するに際して、先ず、導子5を人体表皮に装着し通電可能状態にする。
【0019】
一方チャンネル4aの甲・乙導子5a・5bによって人体に流す通電経路と、他方チャンネル4bの丙・丁導子5c・5dによって人体に流す通電経路とが交差するように、甲・乙・丙・丁導子5a・5b・5c・5dを人体表皮に装着する。
【0020】
次に、低周波出力部2を作動させ、導子5に低周波電力を付与し、人体に通電する。
人体の互いに交差する二通電経路に異なる周波数の電流を流し、干渉電流を生じさせ、該干渉電流及び低周波電流で電気治療を施す。
一対二個の導子5の内一個又は二個が人体表皮から離れるとそのチャンネル4の通電電流が不安定となり又は零となる。
【0021】
電流検出回路6でチャンネル4の通電電流を検出する。
2つの検出電流を電流比較機能8で比較し倍率値を算出する。
倍率設定機能9に予め基準値を設定し、その基準値と前記倍率値とを倍率設定機能9で比較する。
前記基準値は、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量内、大きい通電量の方の電流値が10mA未満では、設定せず、導子装着不良等の判定をしない。大きい通電量の方の電流値が10mA以上30mA未満では基準値を「2.0」とし、前記倍率値が2.0を超えた時に、倍率設定機能9は導子装着不良等と判定する。
大きい通電量の方の電流値が30mA以上では基準値を「1.5」とし、前記倍率値が1.5を超えた時に、倍率設定機能9は導子装着不良等と判定する。
【0022】
タイマー機能10は、倍率設定機能9から出力される信号が所定出力の時だけ当該信号が出力される時間を計数する。即ち、倍率設定機能9から倍率値が所定の基準値を超えた状態に係る出力を得た時、その超過状態が継続する時間を計数する。
CPU3は、計数した時間が基準時間を超えると、導子装着不良等と判定した信号を報知器7へ出力する。
【0023】
報知器7は、導子5の装着が不良であることを報知信号をもって施療者又は患者に報知する。報知に係る具体例では、液晶でなる表示パネル14に「導子の装着状態が不安定です。導子の装着状態を確認して下さい。」なる文章で示す。
又、報知効果を高めるために、前述の文章(=文字列)の発光を適宜間隔をもって点滅させる。
表示パネル14の当該文章を見た施療者又は患者は、導子5の装着を適切に修正する。導子5を適切に装着し、通電を再開する。導子5の装着が適切であれば、前記倍率値は略1.0であり、装着不良の判定はなされず、その報知も消え表示されない。
導子5を適切に装着しても前記報知が消えない場合は、導子5に係るコード、プラグ、レセップ等の断線、接触不良をチェックし正常状態に修正する。
又、報知器7は、導子5又は報知式低周波治療器1の故障を報知信号をもって施療者又は患者に報知する。その場合は導子5又は報知式低周波治療器1の故障に付いて適切に対処する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
報知式低周波治療器1の作動中に、CPU3が、一方チャンネル4aの通電量と他方チャンネル4bの通電量との比でなる倍率値をもとにして導子5の装着不良等を判定し、該判定を報知器7が報知することによって、導子装着不良等のままで装置使用することを回避しようとする低周波治療器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1の電気的構成のブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 報知式低周波治療器
2 設定器
3 CPU
4 チャンネル
4a一方チャンネル
4b他方チャンネル
5 導子
6 電流検出回路
7 報知器
8 電流比較機能
9 倍率設定機能
10 タイマー機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
報知式低周波治療器(1)の作動を設定する設定器(2)と、設定器(2)の出力を得て作動し演算処理を行なうCPU(3)と、治療用電力を発生する一方チャンネル(4a)及び他方チャンネル(4b)と、前記両チャンネル(4a)・(4b)のそれぞれに接続され人体に装着する2組の導子(5)と、報知式低周波治療器(1)の作動状況を報知する報知器(7)と、導子(5)に流れる電流を検出する電流検出回路(6)とからなる報知式低周波治療器(1)において、
報知式低周波治療器(1)の作動中に、CPU(3)が、一方チャンネル(4a)の通電量と他方チャンネル(4b)の通電量との比でなる倍率値をもとにして導子(5)の装着不良又は導子(5)を含む報知式低周波治療器(1)の故障を判定し、該判定を報知器(7)が報知する報知式低周波治療器。
【請求項2】
CPU(3)は、一方チャンネル(4a)の通電量と他方チャンネル(4b)の通電量との比でなる倍率値を算出する電流比較機能8と、基準値を予め設定し該基準値と前記倍率値を比較する倍率設定機能(9)とを有し、
前記基準値は、一方チャンネル(4a)の通電量と他方チャンネル(4b)の通電量の内、大きい通電量の方の電流値を複数段階に区分し、これらの各段階ごとに設定したものであり、
前記CPU(3)は、倍率値が基準値を超えた時に、導子装着不良と判定するものであることを特徴とする請求項1記載の報知式低周波治療器。
【請求項3】
CPU(3)は、二個の電流値の比でなる倍率値が基準値を超えた状態が継続する時間を計数するタイマー機能(10)を有し、
前記CPU(3)は、前記計数した時間が基準時間を超えると、導子装着不良と判定するものであることを特徴とする請求項1記載の報知式低周波治療器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−111304(P2007−111304A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306853(P2005−306853)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】