説明

塔状PC構造物の施工方法および緊張システム装置

【課題】プレキャストブロックを多段に積み上げ、鉛直方向のPC鋼材により緊結してなる塔状PC構造物において、ブロック段積み作業・PC鋼材緊張作業を短時間に安全に行える施工方法・緊張システム装置を提供する。
【解決手段】地組した内部足場4付きのリングブロック2を段積みし、内部足場4を利用して油圧ジャッキ13をセットし、1リング毎にPC鋼材3で鉛直緊張し、鉄筋とPC鋼材で剛結され一体化した換気塔等を構築し、従来の外部足場を不要とする。門型の支持架台11に油圧ジャッキ13・油圧装置14を吊り下げて構成される仮設の緊張システム装置10を吊り上げて最上段ブロックの上に設置し、あるいは予め地上でブロックの上に設置しておき、養生シート15で覆って鉛直緊張を行い、緊張装置の運搬・セットを短時間に容易に安全に行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路トンネル等の換気塔などの塔状PC構造物の施工方法およびこの塔状PC構造物に用いられるPC鋼材の緊張システム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば道路トンネルの換気所には、地上から高く突出する換気塔が設けられており、この換気塔は、リング状のプレキャストコンクリートブロック(以下、プレキャストブロックと記載)を多段に積み上げて鉛直方向のPC鋼材で緊結するPC(プレストレストコンクリート)構造が採用されている。
【0003】
このような換気塔の施工においては、下段のブロックの上に上段のブロックを積み上げると、PC鋼材を緊張して上段のブロックと下段のブロックを接合することが行われており、従来においては、外部足場を組んで作業員が昇降し、荷役機械(クレーン)により緊張装置(緊張ジャッキ)や油圧装置などを数回にわたって高所の作業場へ吊り上げ、作業員が受け取りを行っていた。そして、供給された緊張装置(緊張ジャッキ)を作業員がひとつずつ人力でセットしていた。また、単管等でフレームを組み、1箇所ずつ養生シートを張っていた。
【0004】
なお、本発明の塔状PC構造物に関連する先行技術文献として、例えば特許文献1、2がある。この特許文献1の発明は、橋脚等の施工に適用されるものであり、フーチング内にU字状鞘管を埋設し、主鉄筋挿通孔・PC鋼より線挿通孔を備えたプレキャストブロックをフーチング上に積み重ね、ブロック同士の接合面にはエポキシ樹脂接着剤を塗布しておき、積み上げられたブロックの上方から主鉄筋を主鉄筋挿通孔に挿通し、PC鋼より線挿通孔・U字状鞘管に上方から挿通したPC鋼より線を最上ブロック上端で緊張し、軽度の縦方向プレストレスを導入した後、主鉄筋挿通孔・PC鋼より線挿通孔にグラウトを注入し、PRC構造物を形成するものである。
【0005】
特許文献2の発明は、単位プレキャストブロックを複数段積みすることにより構築されるコンクリート橋脚の構築方法であり、単位プレキャストブロックの溝部にジャッキアップ装置の油圧ジャッキの上部ジグを取付け、ジャッキアップして当該ブロックの下方に隙間を形成するジャッキアップ工程と、前記隙間に新たなブロックを挿入する挿入工程を所定回数繰り返すことによってブロックの段積みを行うものである。
【0006】
【特許文献1】特開平8−4031号公報
【特許文献2】特開2004−84322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような従来の施工方法の場合、(1)外部足場の組み立てに時間と労力がかかり、(2)重い緊張装置の運搬が大変困難であり、(3)重い緊張装置のセットも大変困難であり、(4)養生シートを設置するのに高所作業が多く危険である、などの課題があった。
【0008】
本発明は、プレキャストブロックを多段に積み上げ、各プレキャストブロックを多数の鉛直方向のPC鋼材により緊結してなる塔状PC構造物において、プレキャストブロックの段積み作業・多数のPC鋼材の緊張作業を短時間に、かつ、安全に行うことができる塔状PC構造物の施工方法および緊張システム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1の発明は、プレキャストブロック(プレキャストコンクリートブロック)を積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工方法であり、プレキャストブロックの内部には内部足場が設けられており、下段のプレキャストブロックの上に上段のプレキャストブロックを積み上げた後、この上段のプレキャストブロックの上にその内部足場を利用してPC鋼材の緊張装置(油圧ジャッキ等)を設置し、前記緊張装置により上段のプレキャストブロックのPC鋼材(PC鋼棒等)を緊張して上段のプレキャストブロックと下段のプレキャストブロックを緊結し、緊張作業が終了すると、前記緊張装置を上段のプレキャストブロック上から撤去し、前記の1ブロックの積み上げ、緊張装置の設置、PC鋼材の緊張、緊張装置の撤去を順次繰り返して塔状PC構造物を構築することを特徴とする塔状PC構造物の施工方法である。
【0010】
本発明の請求項2の発明は、プレキャストブロック(プレキャストコンクリートブロック)を積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工方法であり、プレキャストブロックの内部には内部足場が設けられており、下段のプレキャストブロックの上に上段のプレキャストブロックを積み上げた後、この上段のプレキャストブロックの上に、PC鋼材の緊張装置(油圧ジャッキ等)を備えた仮設の支持架台を設置し、前記緊張装置により上段のプレキャストブロックのPC鋼材(PC鋼棒等)を緊張して上段のプレキャストブロックと下段のプレキャストブロックを緊結し、緊張作業が終了すると、仮設の支持架台を上段のプレキャストブロック上から撤去し、前記の1ブロックの積み上げ、仮設の支持架台の設置、PC鋼材の緊張、仮設の支持架台の撤去を順次繰り返して塔状PC構造物を構築することを特徴とする塔状PC構造物の施工方法である。
【0011】
本発明の請求項3の発明は、プレキャストブロックを積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工方法であり、プレキャストブロックの内部には内部足場が設けられており、地上においてプレキャストブロックの上に、PC鋼材の緊張装置を備えた仮設の支持架台を設置した後、この支持架台付きのプレキャストブロックを下段のプレキャストブロックの上に積み上げ、前記支持架台の緊張装置により上段のプレキャストブロックのPC鋼材を緊張して上段のプレキャストブロックと下段のプレキャストブロックを緊結し、緊張作業が終了すると、仮設の支持架台を上段のプレキャストブロック上から撤去し、前記の仮設の支持架台の設置、支持架台付きプレキャストブロックの積み上げ、PC鋼材の緊張、仮設の支持架台の撤去を順次繰り返して塔状PC構造物を構築することを特徴とする塔状PC構造物の施工方法である。
【0012】
本発明は、水平断面が六角形・円形・四角形等の筒状の換気塔等の塔状PC構造物の構築に適用される。段積みされるプレキャストブロックは、リング状のプレキャストコンクリートブロックであり、工場から例えば半割りの2分割で搬送され、設置箇所で地組され、水平方向のPC鋼棒で緊結される。この地組工程において、プレキャストブロックの内部に内部足場が取付けられる。また、必要に応じて中仕切壁が取付けられる。このような内部足場付きのプレキャストブロックを大型クレーンで段積みし、1リング毎にPC鋼材で鉛直緊張し、鉄筋とPC鋼材で剛結され一体化した塔状PC構造物を構築する。内部足場は必要に応じて撤去される。
【0013】
請求項1の発明では、プレキャストブロックに内部足場が設けられているため、この内部足場を利用して緊張装置をセットすることができる。従来の外部足場の組立てが不要となることにより、ブロックの段積み作業を短時間に行うことができ、またブロックの内側で作業を行えるため、セットや緊張等の作業を安全に行うことができる。
【0014】
請求項2の発明では、プレキャストブロックの平面形状と同じ平面形状で側面形状が門型等の支持架台に緊張装置や油圧装置などを吊り下げて構成される仮設の緊張システム装置を用い、この緊張システム装置をクレーンで吊り上げて最上段のブロックの上に設置し、鉛直緊張を行い、緊張作業の終了後は撤去する。請求項3の発明では、地上において緊張システム装置を予めブロックの上に設置しておき、一緒に吊り上げて積み上げる。
【0015】
このような緊張システム装置を用いることにより、(1)重い緊張装置や油圧装置を最上段のブロックの上に一挙に設置することができ、また重い緊張装置を緊張箇所に容易にセットすることができ、ブロックの断積み作業・多数のPC鋼材の緊張作業を極めて短時間に行うことができる。(2)重い緊張装置が支持架台の天井部分から吊り下げられているため、また内部足場によりブロックの内側で作業を行うことができ、セットや緊張等の作業を極めて安全に行うことができる。(3)支持架台には、天井部分の外周部から垂れ下がる養生シート(落下防止シート)を設けておくことができ、支持架台の設置と同時に養生シートを設置することができる。従来の単管等で養生フレームを組んでシートを張る作業が不要となり、作業時間の大幅な短縮が可能となり、またブロック内部の作業箇所の外周全体を覆う養生シートにより、緊張器具や緊張部品等の飛来落下防止が完全となり、安全性が大幅に向上すると共に、高所の作業にもかかわらず作業員の安全感・安心感が増す。
【0016】
本発明の請求項4の発明は、プレキャストブロック(プレキャストコンクリートブロック)を積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工に用いられる緊張システム装置であり、プレキャストブロックの上に設置される門型の支持架台と、この支持架台の天井部分に緊張箇所の上方に位置するように設けられるハンガーレールと、このハンガーレールに移動自在に吊り下げられる緊張装置(油圧ジャッキ等)を備えていることを特徴とする緊張システム装置である。
【0017】
門型の支持架台は、例えば、プレキャストブロックの平面形状の外形に対応した天井フレームと、この天井フレームを支持する周方向に間隔をおいて複数の支持脚から構成され、支持脚の下部がプレキャストブロックの上面にボルト等により取付け・取外し可能に固定される。天井フレームの下に天井フレームに沿ってハンガーレールが配設され、このハンガーレールにトロリー・チェーンブロック等を介して緊張装置が吊り下げられる。天井フレームの内部に配置された天井ビームに油圧装置(油圧ポンプユニット)が吊り下げられる。
【0018】
天井フレーム・ハンガーレールは、プレキャストブロックの緊張箇所の上方に位置しており、支持架台を最上段のブロックの上に設置すれば、吊り下げられた緊張装置を各緊張箇所にセットすることができる。多数本のPC鋼材に対して複数台の緊張装置を配置し、1台の緊張装置を水平移動させて数箇所の緊張を行うことにより、少ない数の緊張装置で効率の良い緊張作業が可能となる。
【0019】
本発明の請求項5の発明は、請求項4に記載の緊張システム装置において、天井部分から垂れ下がる養生シート(養生ネット等の落下防止シート)が設けられていることを特徴とする緊張システム装置である。
【0020】
例えば、支持架台の天井フレームの外周に天井フレームと相似形状の養生フレームを設け、例えば養生シートの上下端部に水平のパイプ等の棒材を設け、上部の棒材を養生フレームの下に設け、巻き上げられるようにしておく。養生シートを巻き下げるだけで、ブロック内部の作業箇所の外周全体を完全に覆うことができる。養生シートの下部のパイプ等の棒材は、ブロック外側面に当接させて固定し、あるいはブロック上面に載せて固定し、緊張器具や緊張部品の飛来落下を防止する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0022】
(1) プレキャストブロックを多段に積み上げ、鉛直方向のPC鋼材により緊結してなる塔状PC構造物の施工方法において、プレキャストブロックの内部に内部足場を設け、この内部足場付きのプレキャストブロックを段積みし、内部足場を利用して緊張装置をセットし、1段毎にPC鋼材で鉛直緊張してPC鋼材で剛結され一体化した塔状PC構造物を構築するため、従来の外部足場の組立てが不要となり、ブロックの段積み作業を短時間に行うことができ、またブロックの内側で作業を行えるため、セットや緊張等の作業を安全に行うことができる。
【0023】
(2) 上記の施工方法において、門型等の支持架台に緊張装置や油圧装置などを吊り下げて構成される仮設の緊張システム装置を用いることにより、(a)重い緊張装置や油圧装置を最上段のブロックの上に一挙に設置することができ、また重い緊張装置を緊張箇所に容易にセットすることができ、ブロックの断積み作業・多数のPC鋼材の緊張作業を極めて短時間に行うことができ、(b)重い緊張装置が支持架台の天井部分から吊り下げられているため、また内部足場によりブロックの内側で作業を行うことができ、セットや緊張等の作業を極めて安全に行うことができ、(c)支持架台には、天井部分の外周部から垂れ下がる養生シートを設けておくことができ、支持架台の設置と同時に養生シートを設置することができ、従来の単管等で養生フレームを組んでシートを張る作業が不要となり、作業時間の大幅な短縮が可能となり、またブロック内部の作業箇所の外周全体を覆う養生シートにより、緊張器具や緊張部品等の飛来落下防止が完全となり、安全性が大幅に向上すると共に、高所の作業にもかかわらず作業員の安全感・安心感が増す。
【0024】
(3) 緊張システム装置は、門型の支持架台と、複数の緊張装置をブロックの緊張箇所の上方で移動自在に吊り下げるハンガーレールから構成することができ、比較的簡易な装置により緊張作業を短時間に行うことができ、また1台の緊張装置を水平移動させて数箇所の緊張を行うことにより、少ない数の緊張装置で効率の良い緊張作業が可能となる。
【0025】
(4)緊張システム装置の門型の支持架台の外周部には天井部分から垂れ下がる養生シートを設けることができ、養生シートを巻き下げるだけで、ブロック内部の作業箇所の外周全体を完全に覆うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、道路トンネルの換気所の換気塔に適用した例である。図1〜図4は、本発明の塔状PC構造物の施工方法に用いる緊張システム装置の一例を示したものである。図5〜図13は、本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例を工程順に示したものである。
【0027】
図1〜図4の実施形態において、換気塔は水平断面が六角形の筒状の塔状PC構造物1であり、平面視で六角形のリング状のプレキャストブロック2を多段に積み上げ、各リングブロック2を鉛直方向のPC鋼棒3で緊結して構築される。本発明の施工方法においては、リングブロック2の内部に内部足場4を設け、このリングブロック2が1段積み上げられると、その上に、内部足場4を利用して緊張装置の油圧ジャッキ13を設置し、あるいは本発明の緊張システム装置10を設置し、PC鋼材3の緊張を行う。例えば高さ2.5mのリングブロックを18段積み上げて高さ45mの換気塔が構築される。
【0028】
緊張システム装置10は、図1〜図3に示すように、シャンデリア型マルチジャッキハンガーであり、主として、仮設の門型の支持架台11と、ハンガーレール12と、緊張装置の油圧ジャッキ13と、油圧ポンプユニット14と、養生ネット15等の養生シート(落下防止シート)から構成されている。
【0029】
支持架台11は、天井部分11aと外周側壁部分11bから鉛直断面形状が門型に形成されている。天井部分11aは、リングブロック2の六角形に対応した六角形でH形鋼等からなる天井フレーム20と、六角形の内部に縦横に掛け渡されるH形鋼や溝形鋼からなる天井ビーム21から構成される。外周側壁部分11bは六角形の各辺に配置された支持脚22から構成される。支持脚22の上部の内側に天井フレーム20が取り付けられ、下部の設置板23がリングブロック2の上面に設置され、ボルト等により取付け・取外し可能に固定される(図1(a)参照)。天井ビーム21の4箇所にクレーンフックのワイヤが接続され、支持架台11を吊り上げることができるようにされている(図3参照)。
【0030】
天井ビーム21に油圧ポンプユニット14が吊り下げられる(図1(a)参照)。油圧ジャッキ13は、後述するように、天井フレーム20に移動可能に吊り下げられる。天井フレーム20の外周には支持部材24を介して六角形の養生フレーム25が設けられており、この養生フレーム25の各辺に養生ネット15が取付けられる。この養生ネット15は、例えば上下端部にそれぞれパイプ26を設け、上部のパイプ26を養生フレーム25の下に取付け、巻き上げて収納でき、巻き戻して外周全体を覆うことができるようにしている。下部のパイプ26は、リングブロック2の外側面に当接させて固定し、あるいはリングブロック2の上面に載せて固定し、緊張器具や緊張部品の飛来落下を防止する。
【0031】
図4に示すように、天井フレーム20の下方には、取付け部材30を介してハンガーレール12が天井フレーム20と平行に配置されている。ハンガーレール12は縦配置のフラットバーからなり、このフラットバーを上下から挟んで転動する車輪を有するトロリー31がハンガーレール12に移動自在に取付けられる。トロリー31の下部にチェーンブロック32を介して油圧ジャッキ13が吊り下げられる。
【0032】
これらトロリー31・チェーンブロック32・油圧ジャッキ13は、リングブロック2の外周側壁の上方を移動することができるため、周方向に間隔をおいて多数本のPC鋼材に対して、周方向に間隔をおいて複数台配置し、1台の油圧ジャッキ13を水平移動させて数箇所の緊張を行えるようにする。なお、油圧ジャッキ13は例えばセンターホールジャッキであり、PC鋼棒を引張って緊張力を導入し、定着ナットを回転させて定着させるものである。また、油圧ジャッキ13には、ワイヤーが取付けられており、このワイヤーを支持架台11の支持脚22に設けた係止金具にフックを介して固定し、支持架台11の吊り上げ時の油圧ジャッキ13の落下防止と、PC鋼材の緊張時の破断によるPC鋼材の飛びの防止を図る。
【0033】
以上のような構成の緊張システム装置を用いて次のような手順で換気塔の施工が行われる。
【0034】
(1) 製品搬入
図5に示すように、低床トレーラーで運搬されてきたプレキャストブロック2をクレーン40によりバランスビーム41を介して吊り上げ、換気塔設置箇所の近傍に配置した地組架台上に設置する。なお、六角形のリングブロック2は、運搬の都合上、半割りの2分割とされ、平面形状が台形のブロックが運搬される。
【0035】
(2) 製品仮組立
図6に示すように、地組架台42の上に片側のブロック2−1を設置する。地組架台42はレベル調整し、完全水平にしておく。ブロック2−1の接合端面にエポキシ系接着剤43を塗布する。もう片側のブロック2−2を設置し、引き寄せる。水平方向のPC鋼棒を用いて仮固定を行い、接着剤の硬化養生を行う。
【0036】
(3) 水平方向PC緊張
図7に示すように、半割りブロックの連結を水平方向のPC鋼棒44で行う。ブロック2には鉛直方向のPC鋼棒3・鉄筋5が埋設されており、また接合面積を増やすためブロック2の内側に凸部が設けられており、この接合凸部にPC鋼棒44を埋設配置する。このPC鋼棒44は接続具45で接続されており、突出側のPC鋼棒44に油圧ジャッキをセットして緊張し、定着具46を締め付けて結合する。緊張後、グラウトを充填する。
【0037】
(4) 背面保護モルタル工
図8に示すように、ブロック2のインサート47にボルト48をセットする。補強鉄筋49を組み立て、型枠をセットする。無収縮モルタル50を打設し、養生を行う。この背面保護モルタル工により水平方向のPC鋼棒44が完全に埋設される。
【0038】
(5) 中仕切壁取付け
図9に示すように、リングブロック2内の底部に中仕切壁を支持するH形鋼を取付けた後、中仕切壁51(4段)を配置し、両側端部を接合凸部の表面に鋼材で取付ける。
【0039】
(6) 内部足場組立て
図10に示すように、中仕切壁51の両側に仮設の内部足場4を配置し、上下方向の中間位置に支持ブラケット等で支持する。この内部足場4は例えば3分割のエキスパンドメタル等で構成されており、簡単に取付け・取外しできるようにされている。また、作業員が出入りできる蓋付きのマンホール52が設けられている。
【0040】
(7) 製品据付工
図11に示すように、地組組立完了後のリングブロック2をクレーン40により吊り上げ、既に接合の終了した最上段のリングブロック2の上に積み上げる。下段のリングブロック2には、ゴム製等のガイドプレート53を取付けておき、据付けのガイドとする。
【0041】
(8) 鉄筋継手部注入工
図12に示すように、リングブロック2には鉛直方向の鉄筋5が多数配設されており、上下の鉄筋5、5がスリーブ継手60により接続され、また上下の接合端面間の外周部にはパッキン材61が配置され、スリーブ継手60に無収縮グラウト材(モルタル)62を注入する。グラウト材62は、下のグラウト注入孔63から注入され、上のグラウト吐出孔64から吐出され、上下ブロック2、2の接合端面間・スリーブ継手60内に充填される。
【0042】
(9) 鉛直連結PC緊張工
最上段のリングブロック2の上に緊張システム装置10をクレーンで吊り込み、支持脚20の下部をリングブロック2の上面にボルト等で固定する。あるいは、地上において緊張システム装置10を予めリングブロック2の上に設置しておき、リングブロック2と一緒に吊り上げて緊張システム装置10をセットする。上部に巻き上げられている養生ネット15を垂れ下げ、外周全体を覆う。図13に示すように、リング間の無収縮グラウト材62が設計強度を発生した後、PC鋼棒3に所定の緊張力を導入して上下のリングブロック2、2を緊結する。
【0043】
リングブロック2には鉛直方向のPC鋼棒3が鉄筋5、5間に多数配設されており、P鋼棒3の最上部の定着ナット70に油圧ジャッキ13をチェーンブロック32で吊り降ろしてセットし、定着ナット70を締め付けて定着プレート71を介して所定の緊張力を導入する。例えば、36本のPC鋼棒3に対して油圧ジャッキ13が12台吊り下げられており、油圧ジャッキ13をハンガーレールに沿って水平移動させて、1台で数箇所の緊張作業を行う。
【0044】
上下のPC鋼棒3、3はカップラー72で連結され、定着プレート71の上には目地ゴム73が配置されており、このPC鋼棒連結部にPCグラウト材74をグラウト注入孔75から注入し、PC鋼棒3を定着させる。
【0045】
以上のような工程を所定回数繰り返すことにより、多段に積み上げられたリングブロック2がPC鋼棒3と鉄筋5で固く連結された換気塔が構築される。内部足場4は上部から順に撤去され、小型のエレベータを設置するなどして完成する。
【0046】
以上はシャンデリア型マルチジャッキハンガーの緊張システム装置10を用いた施工方法について説明したが、この装置を用いずに、内部足場4を利用して油圧ジャッキ13を直接セットすることも可能である。
【0047】
また、換気塔に限らず、リングブロックを多段積みし、鉛直方向の緊張により一体化して構築されるその他の塔状PC構造物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例であり、(a)は鉛直断面図、(b)は上部の部分側面図である。
【図2】本発明の施工方法に用いる緊張システム装置の一例を示す平面図である。
【図3】図2の天井部分の鉛直断面図である。
【図4】図2の天井部分の吊り下げ部分であり、(a)は側面図、(b)は鉛直断面図である。
【図5】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(製品搬入工程)を示す側面図である。
【図6】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(製品仮組立工程)を示す斜視図である。
【図7】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(水平方向PC緊張工程)であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図8】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(背面保護モルタル工工程)を示す(a)は平面図、(b)は部分平面図である。
【図9】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(中仕切壁取付工程)を示す斜視図である。
【図10】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(内部足場組立工程)であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図11】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(製品据付工工程)を示す斜視図である。
【図12】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(鉄筋継手部注入工工程)であり、(a)は平面図、(b)は鉛直断面図である。
【図13】本発明の塔状PC構造物の施工方法の一例(鉛直連結PC緊張工工程)であり、(a)は平面図、(b)は鉛直断面図である
【符号の説明】
【0049】
1…換気塔(塔状PC構造物)
2…リング状のプレキャストブロック
3…鉛直方向のPC鋼棒
4…内部足場
5…鉄筋
10…緊張システム装置
11…門型の支持架台
11a…天井部分
11b…外周側壁部分
12…ハンガーレール
13…油圧ジャッキ(緊張装置)
14…油圧ポンプユニット(油圧装置)
15…養生ネット(養生シート)
20…天井フレーム
21…天井ビーム
22…支持脚
23…設置板
24…支持部材
25…養生フレーム
26…パイプ
30…取付け部材
31…トロリー
32…チェーンブロック
40…クレーン
41…バランスビーム
42…地組架台
43…エポキシ系接着剤
44…水平方向のPC鋼棒
45…接続具
46…定着具
47…インサート
48…ボルト
49…補強鉄筋
50…無収縮モルタル
51…中仕切壁
52…蓋付きマンホール
53…ガイドプレート
60…スリーブ継手
61…パッキン材
62…無収縮グラウト材(モルタル)
63…グラウト注入孔
64…グラウト吐出孔
70…定着ナット
71…定着プレート
72…カップラー
73…目地ゴム
74…PCグラウト材
75…グラウト注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストブロックを積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工方法であり、
プレキャストブロックの内部には内部足場が設けられており、下段のプレキャストブロックの上に上段のプレキャストブロックを積み上げた後、この上段のプレキャストブロックの上にその内部足場を利用してPC鋼材の緊張装置を設置し、前記緊張装置により上段のプレキャストブロックのPC鋼材を緊張して上段のプレキャストブロックと下段のプレキャストブロックを緊結し、緊張作業が終了すると、前記緊張装置を上段のプレキャストブロック上から撤去し、前記の1ブロックの積み上げ、緊張装置の設置、PC鋼材の緊張、緊張装置の撤去を順次繰り返して塔状PC構造物を構築することを特徴とする塔状PC構造物の施工方法。
【請求項2】
プレキャストブロックを積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工方法であり、
プレキャストブロックの内部には内部足場が設けられており、下段のプレキャストブロックの上に上段のプレキャストブロックを積み上げた後、この上段のプレキャストブロックの上に、PC鋼材の緊張装置を備えた仮設の支持架台を設置し、前記緊張装置により上段のプレキャストブロックのPC鋼材を緊張して上段のプレキャストブロックと下段のプレキャストブロックを緊結し、緊張作業が終了すると、仮設の支持架台を上段のプレキャストブロック上から撤去し、前記の1ブロックの積み上げ、仮設の支持架台の設置、PC鋼材の緊張、仮設の支持架台の撤去を順次繰り返して塔状PC構造物を構築することを特徴とする塔状PC構造物の施工方法。
【請求項3】
プレキャストブロックを積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工方法であり、
プレキャストブロックの内部には内部足場が設けられており、地上においてプレキャストブロックの上に、PC鋼材の緊張装置を備えた仮設の支持架台を設置した後、この支持架台付きのプレキャストブロックを下段のプレキャストブロックの上に積み上げ、前記支持架台の緊張装置により上段のプレキャストブロックのPC鋼材を緊張して上段のプレキャストブロックと下段のプレキャストブロックを緊結し、緊張作業が終了すると、仮設の支持架台を上段のプレキャストブロック上から撤去し、前記の仮設の支持架台の設置、支持架台付きプレキャストブロックの積み上げ、PC鋼材の緊張、仮設の支持架台の撤去を順次繰り返して塔状PC構造物を構築することを特徴とする塔状PC構造物の施工方法。
【請求項4】
プレキャストブロックを積み上げ、各プレキャストブロックを鉛直方向のPC鋼材で緊結して構築される塔状PC構造物の施工に用いられる緊張システム装置であり、
プレキャストブロックの上に設置される門型の支持架台と、この支持架台の天井部分に緊張箇所の上方に位置するように設けられるハンガーレールと、このハンガーレールに移動自在に吊り下げられる緊張装置を備えていることを特徴とする緊張システム装置。
【請求項5】
請求項4に記載の緊張システム装置において、支持架台の外周部分には天井部分から垂れ下がる養生シートが設けられていることを特徴とする緊張システム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−121335(P2008−121335A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307793(P2006−307793)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【出願人】(593017887)石田工業株式会社 (6)