塗り製品及びその製造方法
【課題】塗り手法にて透過部を形成するために適した構造を有する塗り製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面3aと裏面3bとの間を貫く開孔部3cを有し、少なくとも表面3aに塗り層5が形成された本体3を用意する。本体3の開孔部3cを閉じつつ表面3a又は裏面3bのいずれか一方の面上に重ね合わせるように透過性の塗り材料を塗り、その塗り材料を乾燥させて透過層6を形成する。
【解決手段】表面3aと裏面3bとの間を貫く開孔部3cを有し、少なくとも表面3aに塗り層5が形成された本体3を用意する。本体3の開孔部3cを閉じつつ表面3a又は裏面3bのいずれか一方の面上に重ね合わせるように透過性の塗り材料を塗り、その塗り材料を乾燥させて透過層6を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過部を有する塗り器等の塗り製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器の技法の一つとして、素地を透かし彫りして開孔部を形成し、その開孔部に釉を充填してこれを焼成することにより、透過性の模様等を形成する蛍手と呼ばれる技法が知られている。開孔部を釉で埋める方法としては、例えば開孔部の周囲に釉を付着する工程とその釉を焼成する工程とを繰り返して開孔部を徐々に埋める手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。素地の開孔部に素地とは異なる材質の薄片を裏打ちしてその開孔部に釉を充填し、その後に釉を焼成し、焼成過程で裏打ち片を灰化させるか、または焼成後に裏打ち片を剥離する手法も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−215775号公報
【特許文献2】特開昭52−105083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の手法はいずれも陶磁器を対象とするものであって、釉を焼成する点で共通する。しかし、漆塗り器のような塗り製品の分野においては、素地の表面を塗り上げる方法こそ様々に開発されているものの、蛍手のような透過部を塗装で形成した塗り製品及びその製造方法は見当たらない。
【0005】
そこで、本発明は、塗り手法にて透過部を形成するために適した構造を有する塗り製品、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗り製品は、表面(3a)と裏面(3b)との間を貫く開孔部(3c)を有し、少なくとも前記表面に塗り層(5)が形成された本体(3)と、前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせて塗られた透過層(6)とを具備し、前記透過層にて前記開孔部が閉じられたものである。
【0007】
本発明の塗り製品によれば、本体の一方の面上に塗られた透過層の一部で本体の開孔部が閉じられることによって透過部が形成される。透過層が開孔部を塞ぎつつその周辺の本体表面又は裏面上に一体的に延びることにより、開孔部のみに透過性の塗り材料を塗り込んで透過部を形成した場合と比較して、透過層と本体との接合面積が増加するとともに透過部の強度が高まる。それにより、透過部の破損や脱落を抑えることができる。
【0008】
本発明の塗り製品においては、前記透過層が前記本体の前記裏面に重ね合わされてもよい。また、前記裏面にも前記塗り層が形成されている場合、前記透過層は前記裏面側の前記塗り層に重ね合わされてもよい。これらの形態によれば、塗り製品の表面側から見て裏面上の透過層が目立たない利点がある。
【0009】
本体の裏面側に透過層を設ける場合において、前記透過層内又は前記透過層上には、透過性を有する補強シート(12、13)がさらに設けられてもよい。これによれば、補強シートで透過部を補強してその破損や脱落のおそれをさらに低減することができる。補強シートを利用して透過率や装飾効果をさらに多様に設定することが可能となる。
【0010】
前記補強シート(12)が含浸性を有し、前記透過層の素材としての塗り材料が前記補強シートに含浸されていてもよい。これによれば、透過層内に補強シートが埋め込まれることにより、補強シートの剥離を防止することができる。補強シートと塗り材料とが一体化された装飾効果の高い透過部を形成することができる。あるいは、前記補強シート(13)が前記透過層上に貼り付けられてもよい。この場合には、含浸性を有しない樹脂フィルム等であっても補強シートとして利用することが可能となる。
【0011】
本発明の塗り製品においては、前記透過層が前記表面側の前記塗り層に重ね合わされるように形成されてもよい。表面側に透過層を形成した場合には、透過部とその周辺との一体感を高めることができる。透過層それ自体を塗り製品の仕上げ層として機能させることができる。
【0012】
本発明の塗り製品においては、前記透過層が、前記開孔部を前記表面から前記裏面まで埋めるように設けられてもよい。これによれば、表裏面における透過部とその周辺との段差を抑えてそれらの間の一体感を高めることができる。
【0013】
本発明の塗り製品においては、前記塗り層及び前記透過層のそれぞれが漆塗りによって形成されてもよい。これによれば、漆の透過光を利用した斬新な装飾効果を漆塗り製品に付与することができる。
【0014】
本発明の塗り製品の製造方法は、表面(3a)と裏面(3b)との間を貫く開孔部(3c)を有し、少なくとも前記表面に塗り層(5)が形成された本体(3)を用意する工程と、前記本体の前記開孔部を閉じつつ前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせるように透過性の塗り材料を塗り、該塗り材料を乾燥させて透過層(6)を形成する工程と、とを備えたものである。
【0015】
本発明の製造方法によれば、本体の開孔部を閉じつつその開孔部の周辺の表面又は裏面に一体的に延びるように塗り材料を塗って乾燥させることにより、本体の一方の面上に透過層が形成されてその一部で本体の開孔部が閉じられる。これにより、本発明の塗り製品を製造することができる。
【0016】
本発明の製造方法においては、上述した本発明の塗り製品の各形態に対応して以下のような形態で実施されてもよい。すなわち、前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記裏面に塗ってもよい。前記本体を用意する工程では前記裏面にも前記塗り層を形成し、前記透過層を形成する工程では、前記裏面側の前記塗り層に重ね合わせるようにして前記塗り材料を塗ってもよい。また、前記透過層内又は前記透過層上に、透過性を有する補強シート(12、13)をさらに設けてもよい。前記補強シートとして含浸性を有する補強シート(12)を使用し、前記透過層を形成する工程では、前記透過層の素材としての塗り材料を前記補強シートに含浸させて該補強シートを前記裏面に重ね合わせることにより前記塗り材料を塗ってもよい。あるいは、前記透過層を形成する工程において、前記乾燥前の塗り材料上に前記補強シート(13)を貼り付けるようにしてもよい。さらに、前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記表面に塗るものとしてもよい。
【0017】
本発明の製造方法において、前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有する裏打ち材(10)上に前記塗り材料を塗り、該裏打ち材の前記塗り材料が塗られた面を前記本体の前記一方の面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記本体に塗り、前記塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすようにしてもよい。この形態によれば、裏打ち材に塗り材料を塗り付けてこれを本体に重ね合わせることにより、開孔部及びその周辺の本体表面又は裏面に一括して塗り材料を塗り付けることができる。よって、多数かつ複雑な形状の透過部でもそれらを効率よく形成することができる。
【0018】
裏打ち材を使用する形態において、前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材上に透過性及び含浸性を有する補強シート(12)を敷き、前記補強シートに塗り材料を含浸させることにより前記塗り材料を前記裏打ち材上に塗り、前記裏打ち材の前記補強シートが置かれた面側を前記本体の前記裏面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記裏面に塗り、前記塗り材料の乾燥後は前記補強シートを前記本体側に残して前記裏打ち材を剥がすようにしてもよい。この形態によれば、透過層内に補強シートが埋め込むように設けられた構造の塗り製品を効率よく製造することができる。
【0019】
前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有するフィルム状の裏打ち材(10)を前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか他方の面上に貼り付けて前記開孔部を閉じ、この後、前記一方の面側から前記裏打ち材に達するまで前記塗り材料を塗り、該塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすようにしてもよい。この形態によれば、開孔部内における透過層を本体の表面又は裏面に対して容易に面一に形成することができる。
【0020】
さらに、前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材を前記表面に貼り付ける一方で、前記塗り材料を前記裏面側から塗り、乾燥前の塗り材料上に透過性を有する補強シート(13)を貼り付けるようにしてもよい。この形態によれば、透過層上に補強シートを貼り付けた構造の塗り製品を効率よく製造することができる。
【0021】
本発明の製造方法においても、塗り層及び透過層の材料は適宜に選択が可能であるが、前記塗り層及び前記透過層のそれぞれを漆塗りによって形成するようにしてもよい。これにより、漆の透過光を利用した斬新な装飾効果を備えた漆塗り製品を提供することができる。
【0022】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、本体の一方の面上に塗られた透過層の一部で開孔部を塞いで透過部を形成するようにしたため、開孔部のみに透過性の塗り材料を塗り込んで透過部を形成した場合と比較して、透過層と本体との接合面積を増加させるとともに透過部の強度を高めることが可能となる。よって、透過部の破損や脱落を抑えて、実用性及び装飾性の高い塗り製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の形態]
図1は本発明の一形態に係る製造方法によって製造された塗り皿を示している。塗り皿1の縁1aには透過部2による装飾が施されており、その透過部2に本発明が適用されている。このような塗り皿1によれば、上面側から光を当てることにより、縁1aの影Saに透過部2による明部Sbが生じてその装飾効果を楽しむことができる。
【0025】
図2は透過部2及びその周辺の断面図である。塗り皿1は、本体3の一方の面(図2では裏面3b)上に透過層6を重ね合わせた断面構造を有している。本体3は、塗り皿1に要求される形状、剛性及び強度を備えた基礎としての素地4を、塗り層5で覆った構成を有している。素地4は、例えば木材、プラスチック、金属等の素材を加工して形成される。本体3には、その表面3aと裏面3bとの間を貫く開孔部3cが形成されている。表面3aは、塗り皿1の使用状態においてユーザーの目に触れる側の面であって、塗り皿1においてはその上面が表面3aに相当する。
【0026】
塗り層5は、本体3の表面3a及び裏面3bに加えて、開孔部3cの内面も概ね一定厚さで覆うように設けられている。塗り層5に使用される塗り材料は一例として漆である。漆塗りによって塗り層5を形成する場合、その形成手順は公知の漆塗り手法を適宜に用いてよい。塗り層5は漆を多層に塗り込んだ構造であってもよい。塗り層5には加飾が施されていてもよい。
【0027】
透過層6は、本体3の裏面3b側から透過性を有する塗り材料としての漆を塗ることにより形成されている。透過層6は裏面3b側において塗り層5上に概ね一定厚さで設けられる支持部6aと、開孔部3cを閉じる閉鎖部6bとを一体化した構造である。開孔部3cが閉鎖部6bにて塞がれることにより透過部2が形成される。漆による閉鎖部6bが本体3の裏面3b側の支持部6aと一体に連なっているため、開孔部3cのみに漆を充填して透過部を形成した場合と比較して、透過層6と本体3との接合面積が増加するとともに、透過部2の強度が高まり、その破損や脱落を抑えることが可能である。
【0028】
次に、図3〜図5を参照して透過部2を形成する手順を説明する。まず、図3に示すように、裏打ち材としてのフィルムラップ10を用意し、その表面に透過層6の素材となる塗り材料としての精製漆11を適宜の厚さで塗る。精製漆11は着色されていない、透過性を有する漆である。フィルムラップ10は漆塗膜とも呼ばれるものであって、乾燥後の漆に対して剥離性を有する素材で構成される。例えば、塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム等がフィルムラップ10として使用可能である。図3に矢印Aで示したように、そのフィルムラップ10を、精製漆11が塗られた面を上にして本体3の裏面3b側の塗り層5に重ね合わせる。次に、フィルムラップ10をその下面(精製漆11が塗られていない面)側から押し均すことにより、図4に示したように精製漆11を開孔部3c内に充填させる。このとき、精製漆11が表面3aと略面一となり、開孔部3cを越えて表面3a上に溢れ出ることがないようにフィルムラップ10を押す力を加減する。フィルムラップ10上に予め塗り付ける精製漆11の厚さに関しては、裏面3bの塗り層5上に適宜な厚さの支持部6aが形成され、かつ閉鎖部6bが表面3a上に溢れ出ない程度に調整する。
【0029】
精製漆11を本体3に塗った後は、その精製漆11が乾燥するまで待つ。その乾燥は自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図5に矢印Bで示すようにフィルムラップ10を剥がす。これにより、図2に示した通りの断面構造が完成する。なお、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0030】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10上に精製漆11を塗り付け、これを本体3と重ね合わせることにより精製漆11を本体3の裏面3bに塗り付けているので、多数かつ複雑な形状の透過部2を効率よく形成することができる。閉鎖部6bが表面3aと略面一の位置まで設けられているので、透過部2と表面3aとの一体感を高めることができる。
【0031】
なお、塗り層5の形成に先立って、素地4には、開孔部3cの下孔となるべき貫通孔を予め加工しておく必要がある。その下孔は、本体3の表面3a側における素地4のエッジ4a(図2参照)がなるべく鋭利に仕上がるような加工法にて形成されることが望ましい。エッジ4aが鋭利なほど、開孔部3cの表面3a側の口元における精製漆11の後退を抑えて透過部2の厚みを確保し易いからである。例えば、レーザ加工、型成形加工、ウォータージェット加工等にて素地4を加工するとよい。
【0032】
[第2の形態]
次に、本発明の第2の形態に係る製造方法を説明する。なお、本形態は、図1に示した塗り皿1の透過部2の形成手順を第1の形態から変更したものであって、透過部2及びその周辺の断面構造は図2と同様である。従って、以下では図6〜図8を参照して透過部2の形成手順を説明し、断面構造については図2を参照するものとする。
【0033】
本形態では、図6に示すように、フィルムラップ10を本体3の表面3a側の塗り層5上に貼り付けて開孔部3cを閉じる。そのフィルムラップ10には精製漆11が塗られていない。フィルムラップ10の素材は第1の形態と同様でよい。次に、図7に示すように、本体3の裏面3b側から精製漆11を塗る。具体的には、フィルムラップ10で塞がれた開孔部3cの内部を精製漆11で埋めつつ、裏面3b側の塗り層5上に概ね均一厚さで精製漆11を塗り付ける。このとき、本体3を上下に反転させて裏面3b側を上に向けるとよい。その後、精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図8に矢印Bで示したようにフィルムラップ10を剥がす。これにより、図2に示した通りの断面構造が完成する。本形態においても、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0034】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10にて開孔部3cを表面3a側から閉じた状態で裏面3b側から精製漆11を塗り付けているので、透過層6の閉鎖部6bを表面3aに対して容易に面一に形成することができる。
【0035】
[第3の形態]
次に、本発明の第3の形態に係る製造方法を説明する。本形態は、図1に示した塗り皿1の透過部2及びその周辺の断面構造を図2の構造から図9に示した構造へと変更している。図9の断面構造は、本体3の塗り層5上に透過性を有する塗り材料として、漆を塗ることにより透過層6を形成する点で第1の形態のそれと同様であるが、その支持部6aが本体3の表面3a側に形成される点で第1の形態と相違する。このような断面構造であっても、支持部6aと閉鎖部6bとを一体化しているために、透過層6と本体3との接合面積を増加させるとともに透過部2の強度を高めて透過部2の破損や脱落を抑えることができる。
【0036】
次に、図10〜図12を参照して本形態の透過部2を形成する手順を説明する。まず、図10に示したように、フィルムラップ10を本体3の裏面3b側の塗り層5上に貼り付けて開孔部3cを閉じる。そのフィルムラップ10には精製漆11が塗られていない。フィルムラップ10の素材は第1の形態と同様でよい。次に、図11に示すように、本体3の表面3a側から精製漆11を塗工する。具体的には、フィルムラップ10で塞がれた開孔部3cの内部を精製漆11で埋めつつ、表面3a側の塗り層5上に概ね均一厚さで精製漆11を塗り付ける。このとき、本体3は表面3aが上を向くようにしておけばよい。その後、精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図12に矢印Bで示したようにフィルムラップ10を剥がす。これにより、図9に示した通りの断面構造が完成する。本形態においても、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0037】
本形態の製造方法によれば、本体3の表面3a側から透過層6を塗っているので、その透過層6それ自体を表面3aの仕上げ層として機能させることにより、表面3a側からみたときの透過部2とその周辺との一体感を高めることができる。フィルムラップ10にて開孔部3cを裏面3b側から閉じた状態で表面3a側から精製漆11を塗り付けているので、透過層6の閉鎖部6bを裏面3bに対して容易に面一に形成することができる。
【0038】
[第4の形態]
図13は本発明の第4の形態に係る塗り皿1の透過部2及びその周辺の断面構造を示している。この形態では、本体3の裏面3b側に透過層6が形成される点で図2と共通するが、その透過層6内に補強シートとしての和紙12が設けられている点、及び透過層6の閉鎖部6bが本体3の表面3aまで達することなく、本体3の裏面3b近傍の限られた範囲にのみ存在する点で図2と相違する。和紙12は透過性を有する薄さであり、透過層6の一部を構成する。つまり、本形態では、透過層6の支持部6a及び閉鎖部6bが、漆と和紙12との組み合わせによって構成される。このような構造によれば、透過部2を和紙12で補強してその強度をさらに高めることができる。従って、開孔部3cの開口面積が比較的大きい場合でも、実用に耐え得る強度を備えた透過部2を容易に形成することができる。閉鎖部6bの漆と和紙12とが融合した興趣に富む装飾効果を透過部2に付与することができる。
【0039】
以上の断面構造の透過部2を形成するためには、まず、図14に示したように、裏打ち材としてのフィルムラップ10を用意し、その表面に和紙12を敷き、その和紙12に精製漆11を含浸させる。開孔部3c内に精製漆11を幾らか塗り込むため、精製漆11を和紙12の表面に幾らか露出する程度に塗り付けるとよい。図15に矢印Aで示したように、フィルムラップ10を和紙12が置かれた面を上にして本体3の裏面3b側の塗り層5に重ね合わせる。次に、フィルムラップ10をその下面(和紙12が置かれていない面)側から押し均すことにより、図16に示したように、和紙12に含浸された精製漆11の一部を開孔部3c内に適度な厚さで塗り込む。このとき、和紙12と裏面3b側の塗り層5とを密着させてもよいし、それらの間に精製漆11のみからなる層が残されるようにしてもよい。
【0040】
フィルムラップ10を重ね合わせた後は、精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図18に矢印Bで示すように、和紙12を本体3上に残してフィルムラップ10を剥がす。これにより、図13に示した通りの断面構造が完成する。なお、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0041】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10上に和紙12を敷いてこれに精製漆11を含浸させ、その和紙12を本体3と重ね合わせることにより精製漆11を本体3の裏面3bに塗り付けているので、多数かつ複雑な形状の透過部2を効率よく形成することができる。なお、本形態では補強シートとして和紙12を利用したが、透過性を有しかつ塗り材料に対する含浸性を有する限りにおいて、和紙以外の含浸性シートを補強シートとして利用してもよい。なお、本形態では閉鎖部6bを裏面3b側の近傍に制限したが、閉鎖部6bを表面3aと略面一となるように設けてもよい。
【0042】
[第5の形態]
図17は本発明の第5の形態に係る塗り皿1の透過部2及びその周辺の断面構造を示している。この形態では、本体3の裏面3b側に透過層6が形成される点で図2と共通するが、さらに、その透過層6上に補強シート13が設けられている点で図2と相違する。補強シート13は透過性を有するフィルム状の素材である。このような構造によれば、透過部2を補強シート13で補強してその強度をさらに高めることができる。従って、開孔部3cの面積が比較的大きい場合でも、実用に耐える透過部2を容易に形成することができる。補強シート13に適宜の着色を施し、あるいは補強シート13に模様等を付すことにより、透過部2の装飾効果を様々に変化させることができる。補強シート13として含浸性を有しない素材も使用することができるので、補強シート13の選択範囲が拡がる。
【0043】
以上の断面構造の透過部2を形成するためには、図6及び図7に示した手順と同様にして本体3の裏面3b側から精製漆11を塗る。そして、図14に示したように、精製漆11が乾燥する前に、その精製漆11を覆うようにして補強シート13を貼り付ければよい。従って、補強シート13は精製漆11に対して接着性を有する素材にて構成する必要がある。補強シート13を貼り付けた後は精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図8に示した手順と同様にしてフィルムラップ10を剥がせばよい。これにより、図17に示した断面構造が完成する。
【0044】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10にて開孔部3cを表面3a側から閉じた状態で裏面3b側から精製漆11を塗り付けているので、透過層6の閉鎖部6bを表面3aに対して容易に面一に形成することができる。
【0045】
本発明は上述した形態に限るものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、上記の形態では、透過層6を形成するための塗り材料として精製漆11を用いたが、透過部2に必要な透過度が確保される限りにおいて、着色された漆を塗り材料として使用してもよい。精製漆11にガラスを撒く等して、透過部2の透過性を損なわない範囲でさらなる装飾を付してもよい。さらに、塗り材料は漆に限らず、透過性を有する化学塗料を用いてもよい。塗り層5の一部又は全部を漆に代えて化学塗料で形成してもよい。化学塗料としては、透過性を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又は酢酸ビニル系樹脂等を用いることができる。透過層6を化学塗料にて形成する場合、裏打ち材としてのフィルムラップ10は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン等で構成してもよい。
【0046】
上述した各形態では、本体の表面、裏面及び開孔部の内面のいずれにも塗り層を設けているが、塗り層は少なくとも本体の表面に設けられていればよい。例えば、本体の裏面には塗り層を設けることなく素地を露出させ、その素地上に透過層を重ね合わせてもよい。開孔部の内面についても素地を露出させ、その内面を透過層の閉鎖部で覆うようにしてもよい。
【0047】
本発明は塗り皿1に限らず、適宜の塗り製品に適用可能である。図19は、壁掛け用の照明器具20のシェード21に、本発明による透過部22を形成した例を示している。この例では、シェード21の裏面側から透過部22を介して照明光が漏れることにより、その装飾効果を楽しむことができる。さらには、食器、家具、文房具といった各種の什器類その他様々な塗り製品に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る塗り製品の一形態である塗り皿の斜視図。
【図2】第1の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図3】第1の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図4】図3に続く手順を示す図。
【図5】図4に続く手順を示す図。
【図6】第2の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図7】図6に続く手順を示す図。
【図8】図7に続く手順を示す図。
【図9】第3の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図10】第3の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図11】図10に続く手順を示す図。
【図12】図11に続く手順を示す図。
【図13】第4の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図14】第4の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図15】図14に続く手順を示す図。
【図16】図15に続く手順を示す図。
【図17】第5の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図18】第5の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図19】本発明に係る塗り製品の他の形態である照明器具用シェードの正面図。
【符号の説明】
【0049】
1 塗り皿(塗り製品)
2 透過部
3 本体
3a 本体の表面
3b 本体の裏面
3c 本体の開孔部
4 本体の素地
5 塗り層
6 透過層
6a 透過層の支持部
6b 透過層の閉鎖部
10 フィルムラップ(裏打ち材)
11 精製漆(塗り材料)
12 和紙(補強シート)
13 補強シート
20 照明器具
21 シェード(塗り製品)
22 透過部
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過部を有する塗り器等の塗り製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器の技法の一つとして、素地を透かし彫りして開孔部を形成し、その開孔部に釉を充填してこれを焼成することにより、透過性の模様等を形成する蛍手と呼ばれる技法が知られている。開孔部を釉で埋める方法としては、例えば開孔部の周囲に釉を付着する工程とその釉を焼成する工程とを繰り返して開孔部を徐々に埋める手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。素地の開孔部に素地とは異なる材質の薄片を裏打ちしてその開孔部に釉を充填し、その後に釉を焼成し、焼成過程で裏打ち片を灰化させるか、または焼成後に裏打ち片を剥離する手法も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−215775号公報
【特許文献2】特開昭52−105083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の手法はいずれも陶磁器を対象とするものであって、釉を焼成する点で共通する。しかし、漆塗り器のような塗り製品の分野においては、素地の表面を塗り上げる方法こそ様々に開発されているものの、蛍手のような透過部を塗装で形成した塗り製品及びその製造方法は見当たらない。
【0005】
そこで、本発明は、塗り手法にて透過部を形成するために適した構造を有する塗り製品、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗り製品は、表面(3a)と裏面(3b)との間を貫く開孔部(3c)を有し、少なくとも前記表面に塗り層(5)が形成された本体(3)と、前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせて塗られた透過層(6)とを具備し、前記透過層にて前記開孔部が閉じられたものである。
【0007】
本発明の塗り製品によれば、本体の一方の面上に塗られた透過層の一部で本体の開孔部が閉じられることによって透過部が形成される。透過層が開孔部を塞ぎつつその周辺の本体表面又は裏面上に一体的に延びることにより、開孔部のみに透過性の塗り材料を塗り込んで透過部を形成した場合と比較して、透過層と本体との接合面積が増加するとともに透過部の強度が高まる。それにより、透過部の破損や脱落を抑えることができる。
【0008】
本発明の塗り製品においては、前記透過層が前記本体の前記裏面に重ね合わされてもよい。また、前記裏面にも前記塗り層が形成されている場合、前記透過層は前記裏面側の前記塗り層に重ね合わされてもよい。これらの形態によれば、塗り製品の表面側から見て裏面上の透過層が目立たない利点がある。
【0009】
本体の裏面側に透過層を設ける場合において、前記透過層内又は前記透過層上には、透過性を有する補強シート(12、13)がさらに設けられてもよい。これによれば、補強シートで透過部を補強してその破損や脱落のおそれをさらに低減することができる。補強シートを利用して透過率や装飾効果をさらに多様に設定することが可能となる。
【0010】
前記補強シート(12)が含浸性を有し、前記透過層の素材としての塗り材料が前記補強シートに含浸されていてもよい。これによれば、透過層内に補強シートが埋め込まれることにより、補強シートの剥離を防止することができる。補強シートと塗り材料とが一体化された装飾効果の高い透過部を形成することができる。あるいは、前記補強シート(13)が前記透過層上に貼り付けられてもよい。この場合には、含浸性を有しない樹脂フィルム等であっても補強シートとして利用することが可能となる。
【0011】
本発明の塗り製品においては、前記透過層が前記表面側の前記塗り層に重ね合わされるように形成されてもよい。表面側に透過層を形成した場合には、透過部とその周辺との一体感を高めることができる。透過層それ自体を塗り製品の仕上げ層として機能させることができる。
【0012】
本発明の塗り製品においては、前記透過層が、前記開孔部を前記表面から前記裏面まで埋めるように設けられてもよい。これによれば、表裏面における透過部とその周辺との段差を抑えてそれらの間の一体感を高めることができる。
【0013】
本発明の塗り製品においては、前記塗り層及び前記透過層のそれぞれが漆塗りによって形成されてもよい。これによれば、漆の透過光を利用した斬新な装飾効果を漆塗り製品に付与することができる。
【0014】
本発明の塗り製品の製造方法は、表面(3a)と裏面(3b)との間を貫く開孔部(3c)を有し、少なくとも前記表面に塗り層(5)が形成された本体(3)を用意する工程と、前記本体の前記開孔部を閉じつつ前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせるように透過性の塗り材料を塗り、該塗り材料を乾燥させて透過層(6)を形成する工程と、とを備えたものである。
【0015】
本発明の製造方法によれば、本体の開孔部を閉じつつその開孔部の周辺の表面又は裏面に一体的に延びるように塗り材料を塗って乾燥させることにより、本体の一方の面上に透過層が形成されてその一部で本体の開孔部が閉じられる。これにより、本発明の塗り製品を製造することができる。
【0016】
本発明の製造方法においては、上述した本発明の塗り製品の各形態に対応して以下のような形態で実施されてもよい。すなわち、前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記裏面に塗ってもよい。前記本体を用意する工程では前記裏面にも前記塗り層を形成し、前記透過層を形成する工程では、前記裏面側の前記塗り層に重ね合わせるようにして前記塗り材料を塗ってもよい。また、前記透過層内又は前記透過層上に、透過性を有する補強シート(12、13)をさらに設けてもよい。前記補強シートとして含浸性を有する補強シート(12)を使用し、前記透過層を形成する工程では、前記透過層の素材としての塗り材料を前記補強シートに含浸させて該補強シートを前記裏面に重ね合わせることにより前記塗り材料を塗ってもよい。あるいは、前記透過層を形成する工程において、前記乾燥前の塗り材料上に前記補強シート(13)を貼り付けるようにしてもよい。さらに、前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記表面に塗るものとしてもよい。
【0017】
本発明の製造方法において、前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有する裏打ち材(10)上に前記塗り材料を塗り、該裏打ち材の前記塗り材料が塗られた面を前記本体の前記一方の面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記本体に塗り、前記塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすようにしてもよい。この形態によれば、裏打ち材に塗り材料を塗り付けてこれを本体に重ね合わせることにより、開孔部及びその周辺の本体表面又は裏面に一括して塗り材料を塗り付けることができる。よって、多数かつ複雑な形状の透過部でもそれらを効率よく形成することができる。
【0018】
裏打ち材を使用する形態において、前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材上に透過性及び含浸性を有する補強シート(12)を敷き、前記補強シートに塗り材料を含浸させることにより前記塗り材料を前記裏打ち材上に塗り、前記裏打ち材の前記補強シートが置かれた面側を前記本体の前記裏面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記裏面に塗り、前記塗り材料の乾燥後は前記補強シートを前記本体側に残して前記裏打ち材を剥がすようにしてもよい。この形態によれば、透過層内に補強シートが埋め込むように設けられた構造の塗り製品を効率よく製造することができる。
【0019】
前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有するフィルム状の裏打ち材(10)を前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか他方の面上に貼り付けて前記開孔部を閉じ、この後、前記一方の面側から前記裏打ち材に達するまで前記塗り材料を塗り、該塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすようにしてもよい。この形態によれば、開孔部内における透過層を本体の表面又は裏面に対して容易に面一に形成することができる。
【0020】
さらに、前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材を前記表面に貼り付ける一方で、前記塗り材料を前記裏面側から塗り、乾燥前の塗り材料上に透過性を有する補強シート(13)を貼り付けるようにしてもよい。この形態によれば、透過層上に補強シートを貼り付けた構造の塗り製品を効率よく製造することができる。
【0021】
本発明の製造方法においても、塗り層及び透過層の材料は適宜に選択が可能であるが、前記塗り層及び前記透過層のそれぞれを漆塗りによって形成するようにしてもよい。これにより、漆の透過光を利用した斬新な装飾効果を備えた漆塗り製品を提供することができる。
【0022】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、本体の一方の面上に塗られた透過層の一部で開孔部を塞いで透過部を形成するようにしたため、開孔部のみに透過性の塗り材料を塗り込んで透過部を形成した場合と比較して、透過層と本体との接合面積を増加させるとともに透過部の強度を高めることが可能となる。よって、透過部の破損や脱落を抑えて、実用性及び装飾性の高い塗り製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の形態]
図1は本発明の一形態に係る製造方法によって製造された塗り皿を示している。塗り皿1の縁1aには透過部2による装飾が施されており、その透過部2に本発明が適用されている。このような塗り皿1によれば、上面側から光を当てることにより、縁1aの影Saに透過部2による明部Sbが生じてその装飾効果を楽しむことができる。
【0025】
図2は透過部2及びその周辺の断面図である。塗り皿1は、本体3の一方の面(図2では裏面3b)上に透過層6を重ね合わせた断面構造を有している。本体3は、塗り皿1に要求される形状、剛性及び強度を備えた基礎としての素地4を、塗り層5で覆った構成を有している。素地4は、例えば木材、プラスチック、金属等の素材を加工して形成される。本体3には、その表面3aと裏面3bとの間を貫く開孔部3cが形成されている。表面3aは、塗り皿1の使用状態においてユーザーの目に触れる側の面であって、塗り皿1においてはその上面が表面3aに相当する。
【0026】
塗り層5は、本体3の表面3a及び裏面3bに加えて、開孔部3cの内面も概ね一定厚さで覆うように設けられている。塗り層5に使用される塗り材料は一例として漆である。漆塗りによって塗り層5を形成する場合、その形成手順は公知の漆塗り手法を適宜に用いてよい。塗り層5は漆を多層に塗り込んだ構造であってもよい。塗り層5には加飾が施されていてもよい。
【0027】
透過層6は、本体3の裏面3b側から透過性を有する塗り材料としての漆を塗ることにより形成されている。透過層6は裏面3b側において塗り層5上に概ね一定厚さで設けられる支持部6aと、開孔部3cを閉じる閉鎖部6bとを一体化した構造である。開孔部3cが閉鎖部6bにて塞がれることにより透過部2が形成される。漆による閉鎖部6bが本体3の裏面3b側の支持部6aと一体に連なっているため、開孔部3cのみに漆を充填して透過部を形成した場合と比較して、透過層6と本体3との接合面積が増加するとともに、透過部2の強度が高まり、その破損や脱落を抑えることが可能である。
【0028】
次に、図3〜図5を参照して透過部2を形成する手順を説明する。まず、図3に示すように、裏打ち材としてのフィルムラップ10を用意し、その表面に透過層6の素材となる塗り材料としての精製漆11を適宜の厚さで塗る。精製漆11は着色されていない、透過性を有する漆である。フィルムラップ10は漆塗膜とも呼ばれるものであって、乾燥後の漆に対して剥離性を有する素材で構成される。例えば、塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム等がフィルムラップ10として使用可能である。図3に矢印Aで示したように、そのフィルムラップ10を、精製漆11が塗られた面を上にして本体3の裏面3b側の塗り層5に重ね合わせる。次に、フィルムラップ10をその下面(精製漆11が塗られていない面)側から押し均すことにより、図4に示したように精製漆11を開孔部3c内に充填させる。このとき、精製漆11が表面3aと略面一となり、開孔部3cを越えて表面3a上に溢れ出ることがないようにフィルムラップ10を押す力を加減する。フィルムラップ10上に予め塗り付ける精製漆11の厚さに関しては、裏面3bの塗り層5上に適宜な厚さの支持部6aが形成され、かつ閉鎖部6bが表面3a上に溢れ出ない程度に調整する。
【0029】
精製漆11を本体3に塗った後は、その精製漆11が乾燥するまで待つ。その乾燥は自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図5に矢印Bで示すようにフィルムラップ10を剥がす。これにより、図2に示した通りの断面構造が完成する。なお、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0030】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10上に精製漆11を塗り付け、これを本体3と重ね合わせることにより精製漆11を本体3の裏面3bに塗り付けているので、多数かつ複雑な形状の透過部2を効率よく形成することができる。閉鎖部6bが表面3aと略面一の位置まで設けられているので、透過部2と表面3aとの一体感を高めることができる。
【0031】
なお、塗り層5の形成に先立って、素地4には、開孔部3cの下孔となるべき貫通孔を予め加工しておく必要がある。その下孔は、本体3の表面3a側における素地4のエッジ4a(図2参照)がなるべく鋭利に仕上がるような加工法にて形成されることが望ましい。エッジ4aが鋭利なほど、開孔部3cの表面3a側の口元における精製漆11の後退を抑えて透過部2の厚みを確保し易いからである。例えば、レーザ加工、型成形加工、ウォータージェット加工等にて素地4を加工するとよい。
【0032】
[第2の形態]
次に、本発明の第2の形態に係る製造方法を説明する。なお、本形態は、図1に示した塗り皿1の透過部2の形成手順を第1の形態から変更したものであって、透過部2及びその周辺の断面構造は図2と同様である。従って、以下では図6〜図8を参照して透過部2の形成手順を説明し、断面構造については図2を参照するものとする。
【0033】
本形態では、図6に示すように、フィルムラップ10を本体3の表面3a側の塗り層5上に貼り付けて開孔部3cを閉じる。そのフィルムラップ10には精製漆11が塗られていない。フィルムラップ10の素材は第1の形態と同様でよい。次に、図7に示すように、本体3の裏面3b側から精製漆11を塗る。具体的には、フィルムラップ10で塞がれた開孔部3cの内部を精製漆11で埋めつつ、裏面3b側の塗り層5上に概ね均一厚さで精製漆11を塗り付ける。このとき、本体3を上下に反転させて裏面3b側を上に向けるとよい。その後、精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図8に矢印Bで示したようにフィルムラップ10を剥がす。これにより、図2に示した通りの断面構造が完成する。本形態においても、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0034】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10にて開孔部3cを表面3a側から閉じた状態で裏面3b側から精製漆11を塗り付けているので、透過層6の閉鎖部6bを表面3aに対して容易に面一に形成することができる。
【0035】
[第3の形態]
次に、本発明の第3の形態に係る製造方法を説明する。本形態は、図1に示した塗り皿1の透過部2及びその周辺の断面構造を図2の構造から図9に示した構造へと変更している。図9の断面構造は、本体3の塗り層5上に透過性を有する塗り材料として、漆を塗ることにより透過層6を形成する点で第1の形態のそれと同様であるが、その支持部6aが本体3の表面3a側に形成される点で第1の形態と相違する。このような断面構造であっても、支持部6aと閉鎖部6bとを一体化しているために、透過層6と本体3との接合面積を増加させるとともに透過部2の強度を高めて透過部2の破損や脱落を抑えることができる。
【0036】
次に、図10〜図12を参照して本形態の透過部2を形成する手順を説明する。まず、図10に示したように、フィルムラップ10を本体3の裏面3b側の塗り層5上に貼り付けて開孔部3cを閉じる。そのフィルムラップ10には精製漆11が塗られていない。フィルムラップ10の素材は第1の形態と同様でよい。次に、図11に示すように、本体3の表面3a側から精製漆11を塗工する。具体的には、フィルムラップ10で塞がれた開孔部3cの内部を精製漆11で埋めつつ、表面3a側の塗り層5上に概ね均一厚さで精製漆11を塗り付ける。このとき、本体3は表面3aが上を向くようにしておけばよい。その後、精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図12に矢印Bで示したようにフィルムラップ10を剥がす。これにより、図9に示した通りの断面構造が完成する。本形態においても、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0037】
本形態の製造方法によれば、本体3の表面3a側から透過層6を塗っているので、その透過層6それ自体を表面3aの仕上げ層として機能させることにより、表面3a側からみたときの透過部2とその周辺との一体感を高めることができる。フィルムラップ10にて開孔部3cを裏面3b側から閉じた状態で表面3a側から精製漆11を塗り付けているので、透過層6の閉鎖部6bを裏面3bに対して容易に面一に形成することができる。
【0038】
[第4の形態]
図13は本発明の第4の形態に係る塗り皿1の透過部2及びその周辺の断面構造を示している。この形態では、本体3の裏面3b側に透過層6が形成される点で図2と共通するが、その透過層6内に補強シートとしての和紙12が設けられている点、及び透過層6の閉鎖部6bが本体3の表面3aまで達することなく、本体3の裏面3b近傍の限られた範囲にのみ存在する点で図2と相違する。和紙12は透過性を有する薄さであり、透過層6の一部を構成する。つまり、本形態では、透過層6の支持部6a及び閉鎖部6bが、漆と和紙12との組み合わせによって構成される。このような構造によれば、透過部2を和紙12で補強してその強度をさらに高めることができる。従って、開孔部3cの開口面積が比較的大きい場合でも、実用に耐え得る強度を備えた透過部2を容易に形成することができる。閉鎖部6bの漆と和紙12とが融合した興趣に富む装飾効果を透過部2に付与することができる。
【0039】
以上の断面構造の透過部2を形成するためには、まず、図14に示したように、裏打ち材としてのフィルムラップ10を用意し、その表面に和紙12を敷き、その和紙12に精製漆11を含浸させる。開孔部3c内に精製漆11を幾らか塗り込むため、精製漆11を和紙12の表面に幾らか露出する程度に塗り付けるとよい。図15に矢印Aで示したように、フィルムラップ10を和紙12が置かれた面を上にして本体3の裏面3b側の塗り層5に重ね合わせる。次に、フィルムラップ10をその下面(和紙12が置かれていない面)側から押し均すことにより、図16に示したように、和紙12に含浸された精製漆11の一部を開孔部3c内に適度な厚さで塗り込む。このとき、和紙12と裏面3b側の塗り層5とを密着させてもよいし、それらの間に精製漆11のみからなる層が残されるようにしてもよい。
【0040】
フィルムラップ10を重ね合わせた後は、精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図18に矢印Bで示すように、和紙12を本体3上に残してフィルムラップ10を剥がす。これにより、図13に示した通りの断面構造が完成する。なお、フィルムラップ10の剥離後、必要に応じて仕上げ処理等を適宜に施してもよい。
【0041】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10上に和紙12を敷いてこれに精製漆11を含浸させ、その和紙12を本体3と重ね合わせることにより精製漆11を本体3の裏面3bに塗り付けているので、多数かつ複雑な形状の透過部2を効率よく形成することができる。なお、本形態では補強シートとして和紙12を利用したが、透過性を有しかつ塗り材料に対する含浸性を有する限りにおいて、和紙以外の含浸性シートを補強シートとして利用してもよい。なお、本形態では閉鎖部6bを裏面3b側の近傍に制限したが、閉鎖部6bを表面3aと略面一となるように設けてもよい。
【0042】
[第5の形態]
図17は本発明の第5の形態に係る塗り皿1の透過部2及びその周辺の断面構造を示している。この形態では、本体3の裏面3b側に透過層6が形成される点で図2と共通するが、さらに、その透過層6上に補強シート13が設けられている点で図2と相違する。補強シート13は透過性を有するフィルム状の素材である。このような構造によれば、透過部2を補強シート13で補強してその強度をさらに高めることができる。従って、開孔部3cの面積が比較的大きい場合でも、実用に耐える透過部2を容易に形成することができる。補強シート13に適宜の着色を施し、あるいは補強シート13に模様等を付すことにより、透過部2の装飾効果を様々に変化させることができる。補強シート13として含浸性を有しない素材も使用することができるので、補強シート13の選択範囲が拡がる。
【0043】
以上の断面構造の透過部2を形成するためには、図6及び図7に示した手順と同様にして本体3の裏面3b側から精製漆11を塗る。そして、図14に示したように、精製漆11が乾燥する前に、その精製漆11を覆うようにして補強シート13を貼り付ければよい。従って、補強シート13は精製漆11に対して接着性を有する素材にて構成する必要がある。補強シート13を貼り付けた後は精製漆11が乾燥するまで待つ。この場合も自然乾燥でよく、焼き固める処理は必要としない。乾燥後は、図8に示した手順と同様にしてフィルムラップ10を剥がせばよい。これにより、図17に示した断面構造が完成する。
【0044】
本形態の製造方法によれば、本体3の裏面3b側から透過層6を塗っているので、表面3a側からは支持部6aが目立たない。フィルムラップ10にて開孔部3cを表面3a側から閉じた状態で裏面3b側から精製漆11を塗り付けているので、透過層6の閉鎖部6bを表面3aに対して容易に面一に形成することができる。
【0045】
本発明は上述した形態に限るものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、上記の形態では、透過層6を形成するための塗り材料として精製漆11を用いたが、透過部2に必要な透過度が確保される限りにおいて、着色された漆を塗り材料として使用してもよい。精製漆11にガラスを撒く等して、透過部2の透過性を損なわない範囲でさらなる装飾を付してもよい。さらに、塗り材料は漆に限らず、透過性を有する化学塗料を用いてもよい。塗り層5の一部又は全部を漆に代えて化学塗料で形成してもよい。化学塗料としては、透過性を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又は酢酸ビニル系樹脂等を用いることができる。透過層6を化学塗料にて形成する場合、裏打ち材としてのフィルムラップ10は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン等で構成してもよい。
【0046】
上述した各形態では、本体の表面、裏面及び開孔部の内面のいずれにも塗り層を設けているが、塗り層は少なくとも本体の表面に設けられていればよい。例えば、本体の裏面には塗り層を設けることなく素地を露出させ、その素地上に透過層を重ね合わせてもよい。開孔部の内面についても素地を露出させ、その内面を透過層の閉鎖部で覆うようにしてもよい。
【0047】
本発明は塗り皿1に限らず、適宜の塗り製品に適用可能である。図19は、壁掛け用の照明器具20のシェード21に、本発明による透過部22を形成した例を示している。この例では、シェード21の裏面側から透過部22を介して照明光が漏れることにより、その装飾効果を楽しむことができる。さらには、食器、家具、文房具といった各種の什器類その他様々な塗り製品に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る塗り製品の一形態である塗り皿の斜視図。
【図2】第1の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図3】第1の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図4】図3に続く手順を示す図。
【図5】図4に続く手順を示す図。
【図6】第2の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図7】図6に続く手順を示す図。
【図8】図7に続く手順を示す図。
【図9】第3の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図10】第3の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図11】図10に続く手順を示す図。
【図12】図11に続く手順を示す図。
【図13】第4の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図14】第4の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図15】図14に続く手順を示す図。
【図16】図15に続く手順を示す図。
【図17】第5の形態における透過部及びその周辺の断面構造を示す図。
【図18】第5の形態における透過部の形成手順を示す図。
【図19】本発明に係る塗り製品の他の形態である照明器具用シェードの正面図。
【符号の説明】
【0049】
1 塗り皿(塗り製品)
2 透過部
3 本体
3a 本体の表面
3b 本体の裏面
3c 本体の開孔部
4 本体の素地
5 塗り層
6 透過層
6a 透過層の支持部
6b 透過層の閉鎖部
10 フィルムラップ(裏打ち材)
11 精製漆(塗り材料)
12 和紙(補強シート)
13 補強シート
20 照明器具
21 シェード(塗り製品)
22 透過部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面との間を貫く開孔部を有し、少なくとも前記表面に塗り層が形成された本体と、前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせて塗られた透過層とを具備し、前記透過層にて前記開孔部が閉じられていることを特徴とする塗り製品。
【請求項2】
前記透過層が前記本体の前記裏面に重ね合わされていることを特徴とする請求項1に記載の塗り製品。
【請求項3】
前記裏面にも前記塗り層が形成され、前記透過層は前記裏面側の前記塗り層に重ね合わされていることを特徴とする請求項2に記載の塗り製品。
【請求項4】
前記透過層内又は前記透過層上には、透過性を有する補強シートがさらに設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗り製品。
【請求項5】
前記補強シートが含浸性を有し、前記透過層の素材としての塗り材料が前記補強シートに含浸されていることを特徴とする請求項4に記載の塗り製品。
【請求項6】
前記補強シートが前記透過層上に貼り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の塗り製品。
【請求項7】
前記透過層が前記表面側の前記塗り層に重ね合わされるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗り製品。
【請求項8】
前記透過層が、前記開孔部を前記表面から前記裏面まで埋めるように設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の塗り製品。
【請求項9】
前記塗り層及び前記透過層のそれぞれが漆塗りによって形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗り製品。
【請求項10】
表面と裏面との間を貫く開孔部を有し、少なくとも前記表面に塗り層が形成された本体を用意する工程と、前記本体の前記開孔部を閉じつつ前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせるように透過性の塗り材料を塗り、該塗り材料を乾燥させて透過層を形成する工程と、とを備えたことを特徴とする塗り製品の製造方法。
【請求項11】
前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記裏面に塗ることを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項12】
前記本体を用意する工程では前記裏面にも前記塗り層を形成し、前記透過層を形成する工程では、前記裏面側の前記塗り層に重ね合わせるようにして前記塗り材料を塗ることを特徴とする請求項11に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項13】
前記透過層内又は前記透過層上に、透過性を有する補強シートをさらに設けることを特徴とする請求項11又は12に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項14】
前記補強シートとして含浸性を有する補強シートを使用し、前記透過層を形成する工程では、前記透過層の素材としての塗り材料を前記補強シートに含浸させて該補強シートを前記裏面に重ね合わせることにより前記塗り材料を塗ることを特徴とする請求項13に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項15】
前記透過層を形成する工程では、前記乾燥前の塗り材料上に前記補強シートを貼り付けることを特徴とする請求項13に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項16】
前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記表面に塗ることを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項17】
前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有する裏打ち材上に前記塗り材料を塗り、該裏打ち材の前記塗り材料が塗られた面を前記本体の前記一方の面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記本体に塗り、前記塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすことを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項18】
前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材上に透過性及び含浸性を有する補強シートを敷き、前記補強シートに塗り材料を含浸させることにより前記塗り材料を前記裏打ち材上に塗り、前記裏打ち材の前記補強シートが置かれた面側を前記本体の前記裏面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記裏面に塗り、前記塗り材料の乾燥後は前記補強シートを前記本体側に残して前記裏打ち材を剥がすことを特徴とする請求項17に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項19】
前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有するフィルム状の裏打ち材を前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか他方の面上に貼り付けて前記開孔部を閉じ、この後、前記一方の面側から前記裏打ち材に達するまで前記塗り材料を塗り、該塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすことを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項20】
前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材を前記表面に貼り付ける一方で、前記塗り材料を前記裏面側から塗り、乾燥前の塗り材料上に透過性を有する補強シートを貼り付けることを特徴とする請求項19に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項21】
前記塗り層及び前記透過層のそれぞれを漆塗りによって形成することを特徴とする請求項10〜20のいずれか一項に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項1】
表面と裏面との間を貫く開孔部を有し、少なくとも前記表面に塗り層が形成された本体と、前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせて塗られた透過層とを具備し、前記透過層にて前記開孔部が閉じられていることを特徴とする塗り製品。
【請求項2】
前記透過層が前記本体の前記裏面に重ね合わされていることを特徴とする請求項1に記載の塗り製品。
【請求項3】
前記裏面にも前記塗り層が形成され、前記透過層は前記裏面側の前記塗り層に重ね合わされていることを特徴とする請求項2に記載の塗り製品。
【請求項4】
前記透過層内又は前記透過層上には、透過性を有する補強シートがさらに設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗り製品。
【請求項5】
前記補強シートが含浸性を有し、前記透過層の素材としての塗り材料が前記補強シートに含浸されていることを特徴とする請求項4に記載の塗り製品。
【請求項6】
前記補強シートが前記透過層上に貼り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の塗り製品。
【請求項7】
前記透過層が前記表面側の前記塗り層に重ね合わされるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗り製品。
【請求項8】
前記透過層が、前記開孔部を前記表面から前記裏面まで埋めるように設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の塗り製品。
【請求項9】
前記塗り層及び前記透過層のそれぞれが漆塗りによって形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗り製品。
【請求項10】
表面と裏面との間を貫く開孔部を有し、少なくとも前記表面に塗り層が形成された本体を用意する工程と、前記本体の前記開孔部を閉じつつ前記表面又は前記裏面のいずれか一方の面上に重ね合わせるように透過性の塗り材料を塗り、該塗り材料を乾燥させて透過層を形成する工程と、とを備えたことを特徴とする塗り製品の製造方法。
【請求項11】
前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記裏面に塗ることを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項12】
前記本体を用意する工程では前記裏面にも前記塗り層を形成し、前記透過層を形成する工程では、前記裏面側の前記塗り層に重ね合わせるようにして前記塗り材料を塗ることを特徴とする請求項11に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項13】
前記透過層内又は前記透過層上に、透過性を有する補強シートをさらに設けることを特徴とする請求項11又は12に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項14】
前記補強シートとして含浸性を有する補強シートを使用し、前記透過層を形成する工程では、前記透過層の素材としての塗り材料を前記補強シートに含浸させて該補強シートを前記裏面に重ね合わせることにより前記塗り材料を塗ることを特徴とする請求項13に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項15】
前記透過層を形成する工程では、前記乾燥前の塗り材料上に前記補強シートを貼り付けることを特徴とする請求項13に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項16】
前記透過層を形成する工程では、前記塗り材料を前記本体の前記表面に塗ることを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項17】
前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有する裏打ち材上に前記塗り材料を塗り、該裏打ち材の前記塗り材料が塗られた面を前記本体の前記一方の面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記本体に塗り、前記塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすことを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項18】
前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材上に透過性及び含浸性を有する補強シートを敷き、前記補強シートに塗り材料を含浸させることにより前記塗り材料を前記裏打ち材上に塗り、前記裏打ち材の前記補強シートが置かれた面側を前記本体の前記裏面に重ね合わせることにより、前記塗り材料を前記裏面に塗り、前記塗り材料の乾燥後は前記補強シートを前記本体側に残して前記裏打ち材を剥がすことを特徴とする請求項17に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項19】
前記透過層を形成する工程では、乾燥後の塗り材料に対して剥離性を有するフィルム状の裏打ち材を前記本体の前記表面又は前記裏面のいずれか他方の面上に貼り付けて前記開孔部を閉じ、この後、前記一方の面側から前記裏打ち材に達するまで前記塗り材料を塗り、該塗り材料の乾燥後に前記裏打ち材を剥がすことを特徴とする請求項10に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項20】
前記透過層を形成する工程では、前記裏打ち材を前記表面に貼り付ける一方で、前記塗り材料を前記裏面側から塗り、乾燥前の塗り材料上に透過性を有する補強シートを貼り付けることを特徴とする請求項19に記載の塗り製品の製造方法。
【請求項21】
前記塗り層及び前記透過層のそれぞれを漆塗りによって形成することを特徴とする請求項10〜20のいずれか一項に記載の塗り製品の製造方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図19】
【図3】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図19】
【公開番号】特開2009−172456(P2009−172456A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10665(P2008−10665)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(508021244)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(508021244)
【Fターム(参考)】
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