説明

塗工用組成物及び塗工紙

【課題】吸油度の値が高く、しかもインキの浸透を抑制して印刷後の裏抜けが少ない塗工紙を製造できる塗工用組成物、及び、印刷後の裏抜けが少ない塗工紙を提供すること。
【解決手段】次の(1)〜(3)を含有する塗工用組成物及びこの塗工用組成物を原紙表面に塗布して得られる塗工紙。(1)ポリアルキレンポリアミン(a)とこのポリアミン(a)の1級アミノ基のモル数に対して5〜45モル%の二塩基性カルボン酸類とポリアミン(a)の1級アミノ基及び2級アミノ基の総モル数に対して25〜85モル%の炭素数12〜24の脂肪酸類とを反応させて得られるアミン価が20〜150mgKOH/gのアミド系化合物を、水溶性有機酸並びにノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤を含有する水溶液中で、アミド系化合物の残存アミノ基に対して50〜100モル%のエピハロヒドリンと反応させて得られるアミノ系化合物、(2)顔料、(3)接着剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工用組成物及び塗工紙に関し、詳しくは、印刷後の裏抜けを防止するために用いる塗工用組成物及び塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用紙は、チラシ、カタログ、パンフレット、ダイレクトメール等の広告、宣伝を目的とした商業印刷分野での需要が伸びている。これら商業印刷物は、それ自体の商品価値は低いが、宣伝媒体として目的が達成されることが重要であるので、低コストで印刷仕上がりの良いものが求められてきている。特に通販用カタログの分野では、コストダウンのため使用される紙も一層軽量化に向かっている。しかし、軽量化するほど印刷後の裏抜けが問題となるため、低坪量でありながら印刷後の裏抜けの少ない紙が求められる。
【0003】
印刷後の裏抜けの少ない紙を得るために、比表面積の大きな填料(ホワイトカーボン、微粉シリカ等)の使用、屈折率の高い填料、顔料(二酸化チタン等)の使用、嵩高な塗工層を形成する顔料(プラスチックピグメント、デラミネーテッドクレー等)の使用、機械パルプの使用量増等の方法が検討されている。しかし一般にこれら填料、顔料は価格が高く、塗被液の粘度も高くなる傾向があり、操業性に劣る問題がある。
【0004】
また、印刷後の裏抜けの少ない紙を得るために紙の不透明度を改良する技術として、「30℃以下の融点を有する長鎖脂肪酸もしくは脂肪酸混合物の塩基性アミド類を、製紙原料に加えることを特徴とする、紙もしくは紙状材料を製造する方法」(例えば、特許文献1の特許請求の範囲を参照)、特定の構造式で表わされるアミド化合物などの化合物とエピハロヒドリンとを反応して得られる化合物を含有することを特徴とする紙用不透明化剤を用いること(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、これらの不透明度向上剤は、パルプとの相互作用により紙を厚くすることにより不透明度を改良することができ、不透明度は向上するものの、印刷後の裏抜けの少ない紙が得られず、顔料を主成分として用いる塗工用組成物を用いた場合におけるインキの裏抜けを防止に関する記載や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−252400号公報
【特許文献2】特開2000−273792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、吸油度の値が高く、しかもインキの浸透を抑制して印刷後の裏抜けが少ない塗工紙を製造することができる塗工用組成物を提供することにある。また、本発明は、この塗工用組成物を用いて製造された、印刷後の裏抜けが少ない塗工紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のアミド系化合物を特定の有機酸及び特定の乳化剤を含有する水溶液中で、特定の割合のエピハロヒドリンにより変性させることで得られるアミノ系化合物[B]を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、前記課題を解決するための手段である本発明は、
(1) 下記(I)〜(III)を含有することを特徴とする塗工用組成物。
(I)ポリアルキレンポリアミン(a)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基のモル数に対して5〜45モル%の二塩基性カルボン酸類(b)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基と2級アミノ基との総モル数に対して25〜85モル%の炭素数12〜24の脂肪酸類(c)とを反応させることにより得られるアミン価が20〜150mgKOH/gであるアミド系化合物[A]を、水溶性有機酸(d)並びにノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)を含有する水溶液中で、前記アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して50〜100モル%のエピハロヒドリン(f)と反応させることで得られるアミノ系化合物[B]
(II)顔料
(III)接着剤
(2)前記水溶性有機酸(d)の量が、アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して1〜20モル%であり、前記ノニオン性乳化剤及び/又は前記カチオン性乳化剤(e)の量が、アミド系化合物[A]に対して1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の塗工用組成物、
(3) 前記脂肪酸類(c)が飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工用組成物、
(4)固形分割合で前記顔料100質量部に対して前記アミノ系化合物[B]を0.05〜10質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工用組成物、
(5) 請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工用組成物からなる塗工層を原紙表面に有することを特徴とする塗工紙
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、印刷後のインキの浸透を抑制し、裏抜けが少ない、塗工用組成物及び塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る塗工用組成物は、下記(I)〜(III)を含有する。
(I) ポリアルキレンポリアミン(a)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基のモル数に対して5〜45モル%の二塩基性カルボン酸類(b)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基と2級アミノ基との総モル数に対して25〜85モル%の炭素数12〜24の脂肪酸類(c)とを反応させることにより得られるアミン価が20〜150mgKOH/gであるアミド系化合物[A]を、水溶性有機酸(d)並びにノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)を含有する水溶液中で、前記アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して50〜100モル%のエピハロヒドリン(f)と反応させることで得られるアミノ系化合物[B]
(II) 顔料
(III) 接着剤
【0011】
まず、アミノ系化合物[B]の原料となるアミド系化合物[A]について説明する。このアミド系化合物[A]は、ポリアルキレンポリアミン(a)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基のモル数に対して、5〜45モル%の二塩基性カルボン酸類(b)かつ、前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基と2級アミノ基との総モル数に対して、25〜85モル%の炭素数12〜24の脂肪酸類(c)を反応させることにより得ることができる。
【0012】
本発明に使用されるポリアルキレンポリアミン(a)としては、二塩基性カルボン酸類(b)及び炭素数12〜24の脂肪酸類(c)と反応することによりアミド系化合物[A]を形成できる化合物であればよく、例えば、−(−R−NH−)−(Rはアルキレン基)で示される繰り返し単位を複数有する化合物等が挙げられる。前記ポリアルキレンポリアミン(a)における「アルキレン基R」は低級のアルキレン基であるのが好ましく、具体的には、炭素数2〜6のアルキレン基であるのが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であるのがより好ましい。このようなポリアルキレンポリアミン(a)として、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン及びこれらのアミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。これらの中でも、NH−(−CHCH−NH−)−H(ただし、nは2〜8の整数である。)で示されるポリエチレンポリアミンが好ましく、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましく、さらにはテトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらはその1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、ポリアルキレンポリアミン(a)の一部をエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンに変えて使用することもできる。
【0013】
本発明に使用される二塩基性カルボン酸類(b)は、分子中に2個のカルボキシ基を有する二塩基性カルボン酸、又は、カルボキシ基を生成することのできる官能基及び/又はカルボキシ基を分子内に合計2個有する二塩基性カルボン酸誘導体であって、ポリアルキレンポリアミン(a)と反応することにより、分子内にアミド結合(−CO−NH−)を有するアミド系化合物[A]を形成できる化合物である。カルボキシ基を生成する官能基としては、化学反応例えば加水分解によりカルボキシ基を生成する、エステル基、酸無水物基等が挙げられる。前記二塩基性カルボン酸誘導体としては、例えば、二塩基性カルボン酸のモノエステル、ジエステル、酸無水物を挙げることができる。本発明において、二塩基性カルボン酸類(b)としては、二塩基性カルボン酸、二塩基性カルボン酸のモノエステル及び二塩基性カルボン酸のジエステル及び二塩基性カルボン酸の酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。前記二塩基性カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン二酸、テレフタル酸などが挙げられ、炭素数5〜10の二塩基性カルボン酸が好ましい。また、二塩基性カルボン酸のモノエステル及びジエステルとしては、前記二塩基性カルボン酸の、好ましくは炭素数1〜5、特に好ましくは炭素数1〜3の低級アルキル(メチル、エチル、プロピル)エステルを挙げることができる。酸無水物としては、前記二塩基性カルボン酸の、遊離酸の分子内脱水縮合物のほか、低級カルボン酸好ましくは炭素数1〜5の低級カルボン酸との縮合物などが挙げられる。二塩基性カルボン酸類(b)で特に好ましいものとしては、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、グルタル酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステルが挙げられる。上記二塩基性カルボン酸類は1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0014】
二塩基性カルボン酸類(b)は、ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基のモル数に対して、5〜45モル%を使用することが重要である。ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基のモル数に対して、5モル%未満の二塩基性カルボン酸類(b)を反応させたときは、吸油度の値が低く、印刷後の裏抜け防止効果が劣り、45モル%を超えて二塩基性カルボン酸類(b)を反応させたときは、吸油度の値が低く、印刷後の裏抜け防止効果が劣ることがあり、場合によってはアミノ系化合物[B]を均一な分散液又は溶液として製造することができなくなることがある。
【0015】
本発明に使用される炭素数12〜24の脂肪酸類(c)は、ポリアルキレンポリアミン(a)と反応することにより、分子内にアミド結合(−CO−NR’−、R’は水素原子又は前記繰り返し単位−RNH−からなる基)を有するアミド系化合物[A]を形成できるカルボン酸又はそのエステルである。前記脂肪酸類(c)としては、飽和であっても不飽和であってもよく、具体的には、炭素数12のドデカン酸(ラウリン酸)、炭素数14のテトラデカン酸(ミリスチン酸)、炭素数15のペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、炭素数16のヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸(パルミトイル酸)、炭素数17のヘプタデカン酸(マルガリン酸)、炭素数18のオクタデカン酸(ステアリン酸)、cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸)、11−オクタデセン酸(バクセン酸)、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸)、9,12,15−オクタデカントリエン酸((9,12,15)−リノレン酸)、6,9,12−オクタデカトリエン酸((6,9,12)−リノレン酸)、9,11,13−オクタデカトリエン酸(エレオステアリン酸)、炭素数19のノナデカン酸(ツベルクロステアリン酸)、炭素数20のイコサン酸(アラキジン酸)、8,11−イコサジエン酸、5,8,11−イコサトリエン酸、5,8,11−イコサテトラエン酸(アラキドン酸)、炭素数22のドコサン酸(ベヘン酸)、炭素数24のテトラドコサン酸(リグノセリン酸)、cis−15−テトラドコサン酸(ネルボン酸)を挙げることができ、これらのエステルであっても使用できる。この脂肪酸類(c)の炭素数は、アミド系化合物[A]及びアミノ系化合物[B]に好適な疎水性を発揮させることができる点で、12〜24であるのが重要であり、例えば、12〜22であるのが好ましい。これらの中でも飽和脂肪酸であることが好ましく、さらには炭素数18のステアリン酸が特に好ましい。上記の脂肪酸類(c)は1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0016】
炭素数12〜24の脂肪酸類(c)は、ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基と2級アミノ基の総モル数に対して、25〜85モル%を使用することが必要であり、好ましくは25〜70モル%である。ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基と2級アミノ基の総モル数に対して、25モル%未満の炭素数12〜24の脂肪酸類(c)を使用したときは吸油度の値が低く、印刷後の裏抜け防止効果が劣り、85モル%を超えて炭素数12〜24の脂肪酸類(c)使用したときは、吸油度の値が低く、印刷後の裏抜け防止効果が劣ることがあり、場合によってはアミノ系化合物[B]を製造することができなくなることがある。
【0017】
ポリアルキレンポリアミン(a)と脂肪酸類(c)及び二塩基性カルボン酸類(b)との反応は、通常、100〜200℃に加熱することにより行われる。反応時間は、通常、0.5〜10時間であり、中でも2〜6時間が好ましい。反応に際してポリアルキレンポリアミン(a)と脂肪酸類(c)及び二塩基性カルボン酸類(b)とを混合する方法に制限はなく、通常はポリアルキレンポリアミン(a)に二塩基性カルボン酸類(b)と脂肪酸類(c)とを混合して反応を進行させる方法、二塩基性カルボン酸類(b)とポリアルキレンポリアミン(a)との反応物に脂肪酸類(c)を混合して反応を進行させる方法が好ましい。アミド化反応の触媒は特に用いなくても良いが、アミド化反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのスルホン酸類、あるいは、アミド化反応に通常に用いられる触媒を使用しても良い。その使用量はポリアルキレンポリアミン(a)1モルに対し、通常の場合0.005〜0.1モルであり、好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0018】
本発明におけるアミド系化合物[A]は、アミノ基とカルボキシ基とが反応してなるアミド基を有するアミド化合物であり、通常、ポリアルキレンポリアミン(a)と二塩基性カルボン酸類(b)及び脂肪酸類(c)とが前記モル比で縮合反応して生成する。このアミド系化合物[A]は、ポリアルキレンポリアミン(a)と二塩基性カルボン酸類(b)との反応生成物(A1)、ポリアルキレンポリアミン(a)と脂肪酸類(c)との反応生成物(A2)、及びポリアルキレンポリアミン(a)と二塩基性カルボン酸類(b)及び脂肪酸類(c)との反応生成物(A3)の混合物であって単一の化合物ではないが、前記モル比で縮合反応していることから前記反応生成物(A3)が主たる反応生成物となっている。ポリアルキレンポリアミン(a)と二塩基性カルボン酸類(b)との反応生成物(A1)自体も単一の化合物ではなく、混合物であり、ポリアルキレンポリアミン(a)と脂肪酸類(c)との反応生成物(A2)自体も混合物であり、及びポリアルキレンポリアミン(a)と二塩基性カルボン酸類(b)及び脂肪酸類(c)との反応生成物(A3)自体も混合物である。したがって、アミド系化合物[A]自体は単一の化合物ではなく、アミド基という化学構造を共通にする複数種類のアミド化合物の混合物であり、その組成自体も特定することが困難である。
構造及び組成で特定することが困難ではあるが、このアミド系化合物[A]は未反応のアミノ基(本発明において「残存アミノ基」と称することがある。)を有するため、その指標となるアミン価に特徴がある。このアミド系化合物[A]のアミン価は20〜150mgKOH/gであることが重要である。アミン価が20未満であると吸油度の値が低く、アミン価が150を超えると吸油度の値が低く、いずれにおいても印刷後の裏抜け防止効果が劣る。アミド系化合物[A]のアミン価は、ポリアルキレンポリアミン(a)と二塩基性カルボン酸類(b)及び脂肪酸類(c)との使用割合や反応温度を適宜選択することにより、前記範囲内に調整できる。
【0019】
本発明におけるアミド系化合物[A]のアミン価は、アミド系化合物[A]の固形分1gに含まれるアミンを中和するのに必要な塩酸と当量である水酸化カリウムの量をミリグラム数で表示した数値であり、アミン価の測定方法は次の通りである。
採取した試料を精評し、イソプロピルアルコールを加えて溶解させ、1/2規定塩酸メタノール液でpH5になるまで滴定し、次式よりアミン価を求めたものである。
アミン価=(V×F×0.5×56.1)/S
但し、V :1/2規定塩酸メタノール液の滴定量(cc)
F :1/2規定塩酸メタノール液の力価
S :採取した試料の固形分量(g)
本発明におけるアミド系化合物[A]の残存アミノ基の量(ミリモル)は、固形分1gに含まれるアミンのミリモル数として、アミン価より次式で求めることができる。
残存アミノ基の量(ミリモル)=アミン価/56.1
【0020】
この発明のアミノ系化合物[B]は、前記アミド系化合物[A]と、水溶性有機酸(d)並びにノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)を含有する水溶液中で、アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して50〜100モル%のエピハロヒドリン(f)とを反応させることで、得られる。
このアミノ系化合物[B]は、アミド系化合物[A]がアミノ基を有する複数種の化合物の混合物であるから、アミノ基を有する複数種の化合物の混合物である。このアミノ系化合物[A]をアミノ基を有するという構造で特定することができるが、複数種のアミノ化合物の組成及び含有量を特定することが困難である。よって、このアミノ系化合物[B]は製造方法的記載により特定せざるを得ない。
【0021】
本発明に使用される水溶性有機酸(d)は、水溶性、すなわち、水に混和する性質又は水に溶解する性質を有する有機酸であり、例えば、炭素数1〜3の1価の水溶性カルボン酸が挙げられる。この水溶性カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボキシ基を有する1価の水溶性カルボン酸を挙げることができる。
【0022】
水溶性有機酸(d)は、アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して、好ましくは1〜20モル%、更に好ましくは5〜15モル%の割合で前記アミド系化合物[A]と塩を形成されるのがアミノ系化合物[B]の製造時の分散性を高めるために好ましい。
【0023】
本発明に使用されるノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)は、生成するアミノ系化合物[B]の分散性を高めることができる点で、アミド系化合物[A]とエピハロヒドリン(f)との反応に好適に用いられる。このようなノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)のうち、ノニオン性乳化剤としては、例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸アルキレンオキサイドソルビタンエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル等が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物が好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。
【0024】
本発明に使用されるノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)のうち、カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である長鎖アルキルアミン塩、ポリオキシアルキレンアミン、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩等が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物が好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。
【0025】
ノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)の使用量は、アミド系化合物[A]の固形分に対して1〜20質量%であることが、発泡性を抑えつつ、アミノ系化合物[B]の分散性を高めるためには好ましい。なお、ノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)の一部を両性乳化剤に変えて用いることもできる。
【0026】
本発明に使用されるエピハロヒドリン(f)としては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられ、その中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0027】
エピハロヒドリン(f)の使用量は、アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して、50〜100モル%であることが重要であり、好ましくは60〜80モル%である。
【0028】
エピハロヒドリン(f)の使用量がアミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して、50モル%未満であるとアミノ系化合物[B]の粘度が高くなり、塗工用組成物での分散性が悪くなるため吸油度の値が低く、印刷後の裏抜け防止効果が劣り、100モル%を超えると未反応物が多くなる。
前記水溶性有機酸(d)並びに前記ノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)は水に溶解してもよく、その場合使用する水は、純水、イオン交換水であるのが好ましい。
【0029】
水溶性有機酸(d)及びノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)を含有する水溶液中におけるアミド系化合物[A]とエピハロヒドリン(f)との反応は、40〜95℃に加熱することにより行われる。反応時間は、通常、1〜8時間であり、中でも3〜6時間が好ましい。
本発明におけるアミノ系化合物[B]は、アミド系化合物[A]とエピハロヒドリン(f)との反応生成物であり、より具体的には、アミド系化合物[A]の残存アミノ基の窒素原子とエピハロヒドリン(f)とが反応してなる化合物である。
このアミノ系化合物[B]は、塗工用組成物を調製するにあたり、アミド系化合物[A]とエピハロヒドリン(f)とを反応させて得られる反応混合物から単離した形態で使用されてもよく、また、反応混合物のまま、例えば反応生成液、反応生成懸濁液又は反応生成分散液の形態で使用されてもよい。この反応混合物は希釈又は濃縮して用いることもできる。
【0030】
本発明に係る塗工用組成物における前記(II)顔料としては、特に制限はなく、塗工紙用に従来から用いられている顔料を使用することができる。例えば、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料、有機・無機複合顔料などを使用することができ、これらの顔料は必要に応じて単独または二種以上混合で使用することができる。これらの中でも、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムから、1種以上使用することが好ましい。
【0031】
本発明で用いられる接着剤は、特に制限は無く、塗工紙用に従来から用いられている接着剤(バインダー)を使用することができる。例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用される。
【0032】
本発明の塗工用組成物には、アミノ系化合物[B]、顔料、接着剤のほか、分散剤、滑剤、増粘剤、減粘剤、消泡剤、抑泡剤、防腐剤、防カビ剤、保水剤、染料、導電剤、蛍光染料及びpH調整剤等の各種助剤も必要に応じて適宜に配合することができる。
【0033】
本発明の塗工用組成物中の、接着剤の割合は、顔料100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、特に好ましくは5〜45質量部であり、前記(I)アミノ系化合物[B]の割合は、顔料100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、特に好ましくは0.2〜5質量部である。尚、割合は、全て各成分の固形分質量である。
本発明の塗工用組成物は、アミノ系化合物[B]、顔料及び接着剤を含有していればよく、作業性などの観点から液状であるのがよい。すなわち、本発明の塗工用組成物は、アミノ系化合物[B]、顔料及び接着剤を分散媒例えば水に溶解又は分散若しくは懸濁して成る液状であるのがよい。本発明の塗工用組成物が液状である場合には、アミノ系化合物[B]、顔料及び接着剤の固形分濃度は15〜70質量%であるのが好ましい。
【0034】
本発明の塗工用組成物を調製するには、アミノ系化合物[B]、顔料及び接着剤と必要に応じて各種の助剤とを水等の媒体に均一となるように混合し、必要に応じてpHを調整する。このとき、各成分を混合する順は特に制限されない。本発明の塗工用組成物の好適な調製方法の一例として、例えば顔料を必要に応じて分散剤と共に水中に分散させ、これにアミノ系化合物[B]及び接着剤、並びに必要に応じて粘度調節剤等の助剤を加えて撹拌し、そしてさらに必要に応じてpH調整剤でpHを調節する方法が挙げられる。なお、前記アミノ系化合物[B]は粉末の状態で加えても良く、また、溶液若しくは分散液の状態で添加しても良い。
【0035】
このように本発明の塗工用組成物は、アミノ系化合物[B]と、顔料と、接着剤とを含有し、通常は、これら成分が水等の溶媒に懸濁又は分散した懸濁液又は分散液の形態すなわち塗工液の形態を取っている。この塗工用組成物は、そのpHが6〜13の範囲にあるのがよい。
【0036】
本発明に係る塗工用組成物は、原紙の表面にコーティング又は塗布する等して使用することができる。本発明に係る塗工用組成物は顔料を含有し、原紙の表面に塗工される組成物であるから、顔料を原紙の表面に塗工できる顔料塗工用組成物と称することもできる。
【0037】
本発明の塗工紙は、本発明の塗工用組成物を公知の方法で原紙の表面に塗工し、これを乾燥することにより、製造することができる。このとき、本発明の塗工用組成物の塗工量は、片面の固形分換算で0.5〜15g/m、両面の固形分換算で1〜30g/mが好ましい。
【0038】
前記原紙としては、填料として炭酸カルシウム等を使用した中性抄造紙、タルク等を使用した酸性抄造紙等の種々の上質紙、中質紙、中性又は酸性で抄造された種々の板紙、その他無機質繊維を含んだシート合成紙等に好適に使用される。また、本発明の塗工用組成物を塗工した塗工紙は、各種印刷用紙をはじめとして、インクジェット用紙、情報用紙、及びPPC用紙として好適に使用される。さらに、前記原紙は、坪量が100g/m以下であり、好ましくは30g/m〜80g/mにおいて、より本発明の効果を発揮することができる。
【0039】
本発明の塗工用組成物はブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、サイズプレスコーター、ドクターコーター、ブラシコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、キャストコーター、及びチャンプレックスコーター等の通常用いられる塗工装置によって原紙表面に塗工される。また、オンマシンコーティング及びオフマシンコーティングのいずれの塗工法も適用でき、一層塗工にも多層塗工にも適用できる。さらに、片面塗工、両面塗工のいずれにも適用可能である。
【0040】
塗工後の乾燥は、例えばガスヒーター、電気ヒーター、蒸気加熱ヒーター、赤外線ヒーター、及び熱風加熱ヒーター等、通常用いられる装置によって行うことができる。乾燥後の原紙は、必要に応じてスーパーカレンダー、水カレンダー、グロスカレンダー等の仕上げ装置を通して光沢を付与することができる。本発明の塗工用組成物の乾燥後又は光沢を付与した後に公知の方法で調湿することもできる。
このようにして本発明の塗工紙が得られる。本発明の塗工紙は原紙の少なくとも一方の表面に塗工された本発明の塗工用組成物を乾燥して得られるから、原紙の少なくとも一方に本発明の塗工用組成物で形成された塗工層を有している。この塗工層は、本発明の塗工用組成物を含有する塗工液を塗布後に乾燥して成る層である。この塗工層は、前記(I)アミノ系化合物[B]、前記(II)顔料及び前記(III)接着剤を少なくとも含有しており、これらの含有量は本発明の塗工用組成物における前記割合と基本的に同様である。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下において単に「部」、「%」で示すのは各々「質量部」、「質量%」を意味する。
【0042】
高分子カチオン性乳化剤の製造例1
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素導入管をつけた1リットルの四つ口フラスコにスチレン170部、ジメチルアミノエチルメタクリレート57部、アゾビスイソブチロニトリル3.6部及びイソプロピルアルコール68部を仕込み、80℃で3時間保持し、次いでアソビスイソブチロニトリルを0.2部仕込み、さらに、同温度で2時間保持した。ついで、90%酢酸22.3部、水558部を加え、イソプロピルアルコールを留去した。その後、水13部、4級化剤としてエピクロロヒドリン31部、を仕込み、2時間保持した。その後、固形分25%となるように水で希釈して、カチオン性共重合体水溶液を得た。これをカチオン性乳化剤として用いる。
【0043】
(アミノ系化合物の製造例1)
温度計、冷却器、撹拌機、及び、窒素導入管を備えた1リットル四つ口丸底フラスコに、テトラエチレンペンタミン1モル、アジピン酸0.6モルを仕込み170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら2時間反応させた後、さらにステアリン酸2.6モルを加え、180℃でさらに6時間反応させた。このようにして得たアミド化合物[A]のアミン価を前記に従って測定した結果を表1に示す。
このアミド系化合物[A]50.0gとイソプロピルアルコール2.5g、水369.1g、ノニオン性乳化剤(ニューコール 2320(日本乳化剤株式会社製))5.0g、水溶性有機酸(d)として酢酸0.4gを温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた500mlの四つ口フラスコに仕込み、50℃まで昇温した後、1時間攪拌した。エピクロロヒドリン4.2g(アミド化合物の残存アミノ基に対して70モル%)を加え、50℃で3時間、さらに80℃で3時間反応させた後、冷却して固形分(濃度)15%のアミノ系化合物[B1]の反応生成液を得た。得られたアミノ系化合物[B1]の反応生成液の性状を表2に示す。なお、粘度はB型粘度計(東京計器製:型式BM型)を用いて、25℃、60rpmにて測定した値である。pHはガラス電極式水素イオン濃度計(東京電波工業(株)製)を用いて、25℃にて測定した値である。
【0044】
アミノ系化合物の製造例2〜23、アミノ系化合物の比較製造例1〜10
表1に示すように変えた以外は、製造例1と同様にしてアミノ系化合物[B2]〜[B24]、[b1]〜[b10]を得ようとした。得られたアミノ系化合物[B2]〜[B24]、[b1]〜[b6]の性状を表2に示す。なお、アミノ系化合物[b7]〜[b10]は、アミノ系化合物が分離してしまい評価することはできなかった。
【0045】
【表1】

【0046】
表1中の略号の説明
TEPA:テトラエチレンペンタミン
TETA:トリエチレンテトラミン
DETA:ジエチレントリアミン
N2320:ニューコール 2320(日本乳化剤株式会社製)(タイプ:p−EO−C12−13エーテル:ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
エソミンT25:ポリオキシエチレンアルキルアミン(ライオンアクゾ株式会社製)(タイプ:p−EO−C14−18アミン)
高分子:高分子カチオン性乳化剤の製造例1で得られたカチオン性乳化剤
N2360:ニューコール 2360(日本乳化剤株式会社製)(タイプ:p−EO−C12−13エーテル:ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
N1820:ニューコール 1820(日本乳化剤株式会社製)(タイプ:p−EO−C18エーテル:ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
N2320−SN:ニューコール 2320−SN(日本乳化剤株式会社製)(タイプ:p−EO−C12−13エーテル:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)(アニオン性乳化剤)
EpiCl:エピクロロヒドリン
モル比:ポリアルキレンポリアミンを1モルとしたときの比を示す。
mol%:二塩基性カルボン酸類(b)においてはポリアルキレンポリアミン(a)の1級アミノ基に対するモル割合を示し、炭素数12〜24の脂肪酸類(c)においてはポリアルキレンポリアミン(a)の1級アミノ基と2級アミノ基の総モル数に対するモル割合を示し、水溶性有機酸(d)及びエピハロヒドリン(f)においてはアミド化合物の残存アミノ基に対するモル割合を示している。
【0047】
【表2】

【0048】
塗工用組成物の調製(実施例1〜24、比較例1〜6)
アミノ系化合物の製造例1〜24及びアミノ系化合物の比較製造例1〜6で得られたアミノ系化合物を用いて、顔料、接着剤、及びその他の薬剤を下記に示した固形分換算の割合で配合し、次いで、固形分濃度が60%、pHが9.5になるように、水及び30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、固形分濃度及びpHを調整し塗工用組成物を得た。
<顔料>
炭酸カルシウム:FMT−97(株式会社ファイマテック製) 100質量部
<接着剤>
ラテックス:JSR−0695(JSR株式会社製) 6質量部
澱粉:日食MS−4600(日本食品化工株式会社製) 3質量部
<アミノ系化合物>
実施例1〜24及び比較例1〜6で得られたアミノ系化合物 1質量部
<その他>
消泡剤:SNデフォーマー777(サンノプコ株式会社製) 0.05質量部
滑剤:DEF−963(株式会社日新化学研究所製) 0.1質量部
蛍光染料:Kayaphor HBC Liquid(日本化薬株式会社製)
0.1質量部
【0049】
塗工紙の評価
このようにして得られた実施例1〜24及び比較例1〜6の塗工用組成物それぞれを坪量47.7g/mの原紙の片面に、ワイヤーバーを用いて、固形分換算の塗工量が6g/mとなるように塗布し、塗工後直ちに230℃にて7秒間熱風乾燥した。次いで、温度20℃、相対湿度50%にて、24時間調湿し、さらに、ロール温度60℃、線圧98N/mの条件で4回カレンダー処理を行い、塗工紙を得た。得られた塗工紙を温度20℃、相対湿度50%にて、24時間調湿した後、吸油度、裏抜けの評価を行った。結果を表3に示した。なお、具体的な各試験方法は次のとおりである。
【0050】
吸油度:JAPAN TAPPI No.32−2準拠して、原紙表面に形成された塗工層の表面に石油系溶剤(新日本石油株式会社製;AFソルベント7)を滴下し、液滴が塗工層に吸収されて塗工層の表面上に見えなくなるまでの時間を測定した。液の滴下量は1μLとした。数値が高い程、石油系溶剤が塗工層に浸透しにくいことを表す。なお、比較対照とする吸油度において10秒以上差がある場合に有意差があると判断できる。
【0051】
裏抜け:RI印刷試験機((株)IHI機械システム製:RI−1型)を用いて、ヒートセットオフ輪インキ(DIC(株)製、WEB WORLD NEW ADVAN)を使用し、原紙の塗工層面側に印刷を施し、110℃で5分間の乾燥を行った。乾燥直後、裏抜け具合を目視評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎=非常に良好、○=良好、△=やや劣る、×=劣る
【0052】
【表3】

【0053】
表3の結果から、本発明の塗工用組成物を原紙の表面に塗布することにより形成された塗工層を有する塗工紙は吸油度の値が高くなるとともに裏抜けが起こりにくくなる。つまり、本発明の塗工紙は、原紙内部へのインキの浸透を抑制する塗工層を原紙の表面に形成することにより、原紙内部へのインキの浸透を抑制することができ、その結果、印刷後の裏抜けが起こりにくくなることがわかる。このように、本発明の塗工用組成物は、原紙へのインキの浸透を抑制し、原紙に塗工されたときに印刷後の裏抜けを防止することができる。さらにいうと、本発明の塗工用組成物は顔料を主成分として含有していても原紙へのインキの浸透を抑制することができ、このような顔料を主成分として含有する本発明の塗工用組成物を用いて成る本発明の塗工紙は印刷後の裏抜けが実質的に生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)〜(III)を含有することを特徴とする塗工用組成物。
(I)ポリアルキレンポリアミン(a)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基のモル数に対して5〜45モル%の二塩基性カルボン酸類(b)と前記ポリアルキレンポリアミン(a)に含まれる1級アミノ基と2級アミノ基との総モル数に対して25〜85モル%の炭素数12〜24の脂肪酸類(c)とを反応させることにより得られるアミン価が20〜150mgKOH/gであるアミド系化合物[A]を、水溶性有機酸(d)並びにノニオン性乳化剤及び/又はカチオン性乳化剤(e)を含有する水溶液中で、前記アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して50〜100モル%のエピハロヒドリン(f)と反応させることで得られるアミノ系化合物[B]
(II)顔料
(III)接着剤
【請求項2】
前記水溶性有機酸(d)の量が、アミド系化合物[A]の残存アミノ基に対して1〜20モル%であり、前記ノニオン性乳化剤及び/又は前記カチオン性乳化剤(e)の量が、アミド系化合物[A]に対して1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の塗工用組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸類(c)が飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工用組成物。
【請求項4】
固形分割合で前記顔料100質量部に対して前記アミノ系化合物[B]を0.05〜10質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工用組成物からなる塗工層を原紙表面に有することを特徴とする塗工紙。

【公開番号】特開2012−31536(P2012−31536A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171058(P2010−171058)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】