説明

塗布具

【課題】カバー体を回転自在なものとした場合、塗布作業に簡単に入れるようにした塗布具を提供することである。
【解決手段】把持部1と、把持部1からの延在部に対して取り付けられた回転ローラ3と、回転ローラ3をカバーする為に把持部1からの延在部に対して回転自在に取り付けられたカバー体4とを具備した塗布具であって、記カバー体4の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられてなる塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布具に関する。特に、黴取剤などの薬剤を塗布する為の塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種の塗布具が提案されている。特に、ペンキ等の塗料の塗布具が数多く提案されている。例えば、実開昭57−35880号公報、実開昭62−202382号公報、実開平2−48175号公報、特開2000−197849号公報、特開2002−143754号公報等において、塗料を塗布する為の塗布具として、回転ローラと、この回転ローラをカバーするカバー体とを備えたものが提案されている。
【0003】
さて、これ等の提案の塗布具にあっては、カバー体は、基本的に、その姿勢が固定のものである。その理由は、カバー体が回転自在であると、回転ローラを転がすことによって塗料が塗布されるのであるが、この際、塗布面上にカバー体の端部が引っ掻くように当ってしまい、塗膜に引っ掻き傷を付けてしまうからである。
【特許文献1】実開昭57−35880号公報
【特許文献2】実開昭62−202382号公報
【特許文献3】実開平2−48175号公報
【特許文献4】特開2000−197849号公報
【特許文献5】特開2002−143754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、塗布面が引っ掛かれるようになっても差し支え無い場合が有る。例えば、風呂場では黴が発生し易い。そこで、黴取剤を噴霧し、暫くの間、放置しておくと言った黴取作業が行なわれている。ところが、タイル間の目地に向けて黴取剤を噴霧しても、黴が全く付いて無いタイル主面に黴取剤が付くことが多く、無駄が多い。従って、このような場合には、塗布によって黴取剤を塗る方が好ましいであろうことは理解できる。その他にも塗布によって薬剤を塗る方が好ましい場合も多い。
【0005】
さて、ペンキのような塗布の場合には、その塗膜面の美観が重要なことは言うまでも無い。
【0006】
しかしながら、上述した黴取剤などの薬剤を塗布する場合には、塗布した面が引っ掻かれても差し支えが無い。なぜならば、美観が問題にならないからである。
【0007】
そこで、塗布面の美観が問題にならない黴取剤などの薬剤を塗布によって設ける場合、上述の塗布具を用いることを考えた。
【0008】
しかしながら、カバー体が固定タイプの塗布具では、その塗布作業性が良くなかった。
【0009】
そこで、カバー体を回転自在なものとした。そして、カバー体が回転自在な場合、カバー体が塗布面に当って引っ掻くようになるものの、それは問題が無いことは上述した通りであり、そればかりか塗布作業性が良いことが判って来た。
【0010】
しかしながら、カバー体が回転自在であると、塗布具を持った場合、重力の関係でカバー体が回転ローラの下側に位置することになる。従って、このままでは、塗布作業に入ることが出来ない。
【0011】
従って、本発明が解決しようとする課題は、カバー体を回転自在なものとした場合、塗布作業に簡単に入れるようにした塗布具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラと、前記回転ローラをカバーする為に前記把持部からの延在部に対して回転可能に取り付けられたカバー体とを具備した塗布具であって、
前記カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられてなる
ことを特徴とする塗布具によって解決される。
【0013】
好ましくは、上記の塗布具であって、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられてなり、前記ローラは、該ローラ前端が前記カバー体前端より突出している大きさであることを特徴とする塗布具によって解決される。
【0014】
又、上記の塗布具であって、カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成されてなることを特徴とする塗布具によって解決される。
【発明の効果】
【0015】
回転可能なカバー体を設けたことから、例えば黴取剤などの薬剤の塗布に際して、カバー体が邪魔にならず、作業性良く塗布が出来る。
【0016】
しかも、塗布に際して、回転ローラから薬剤が飛散しても、この飛散した薬剤はカバー体によって受け止められ、回転ローラから飛散した薬剤が顔に当たると言ったことを効果的に防止できる。
【0017】
そして、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられていると、例えばカバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられ、このローラはローラ前端がカバー体前端より突出している大きさであると、塗布に際して、カバー体の回転動作がスムーズに行われる。すなわち、カバー体が断面円弧形であるとすると、カバー体の重みで、カバー体は略U状(略凹状)になっている。つまり、塗布具を手にしたに過ぎない通常状態(非塗布作業時)にあっては、回転ローラの下半分がカバー体でカバーされた姿勢である。ところが、塗布に際しては、これが、例えば略90°回転させられた状態に変わらなければ、カバー体が掃除の邪魔になる。この90°の回転動作性は、上記の如きの突出部(ローラ)が設けられていると、非常に良くなる。
【0018】
又、カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成させていると、カバー体の回転に回転ローラが邪魔にならず、好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の塗布具は、例えば黴取剤などの薬剤を塗布する為の道具である。そして、把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラと、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた前記回転ローラをカバーするカバー体とを具備する。このカバー体は、特に、回転自在に取り付けられている。又、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられている。例えば、カバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられている。そして、このローラは、ローラ前端がカバー体前端より突出している大きさのものである。又、カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成されている。
【0020】
以下、更に詳しく説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態になる塗布具の斜視図である。
【0022】
図1中、1は、塗布具Aの把持部である。すなわち、塗布作業に際して、把持部1を手にして塗布が行なわれる。
【0023】
2は、把持部1から延長した所定形状の延在部である。例えば、略「マ」形状になっている。尚、このような形状は、前記特許文献などに挙げた塗布具でも周知である。
【0024】
3は回転ローラである。回転ローラ3は、その長手方向にそって軸受孔を有しており、この軸受孔に前記把持部1からの延在部2の先端が差し込まれている。従って、延在部2の先端の回りで回転ローラ3は自在に回転できるものとなっている。尚、このような回転構造も前記特許文献などで周知であるから、詳細な説明は省略される。そして、回転ローラ3は、布あるいは不織布、その他の耐薬剤(耐溶剤)性を有する材料で構成されている。
【0025】
4はカバー体である。このカバー体4のカバー面(枠部および左右の壁面を除いた部分)4aは透明ないしは半透明な樹脂で構成されている。勿論、不透明であっても良いが、薬剤の塗布に際して、回転ローラ3の具合などを観察できることから、透明ないしは半透明材で構成されていることが好ましい。カバー体の左右の壁面4b,4cは、例えば半円形の形状をしている。従って、カバー面4aは、断面が半円形である。勿論、半円を多少越えていても足りなくても差し支え無い。
【0026】
本実施形態では、カバー体4の左右壁面4b,4cに軸受部4dが構成されている。そして、一方の壁面4bの軸受部4dには、回転ローラ3の場合と同様に、把持部1からの延在部2の先端が差し込まれている。尚、軸受部4dは、壁面4bに形成された凹部と、壁面4bに設けられた先端内側に掛止用凸部を有する弾撥性の略Y形状部材とで構成されている。従って、軸受部4dを延在部2から取り外すことが出来る。すなわち、着脱式のものとなっている。又、他方の壁面4cの軸受部(軸受部4dの構造とは異なり、壁面4cに形成された貫通孔)には軸6が差し込まれ、この差し込まれた軸6の先端が前記回転ローラの軸受孔に嵌っている。従って、回転ローラ3の回転軸芯を軸心としてカバー体4も自在に回転できるように取り付けられている。
【0027】
5a,5b,5c,5dは円板(ローラ)である。そして、このローラ5a,5b,5c,5dも回転自在なように取り付けられている。ローラ5a,5bは壁面4bに取り付けられ、ローラ5c,5dは壁面4cに取り付けられている。円板5a,5b,5c,5dの取り付け中心位置(高さ)は、カバー体4の回転中心位置よりも下方の位置である。尚、この下方位置とは、塗布具Aの把持部1を自然な状態で手にしている場合、即ち、重力以外の力が作用していない状態(図1に示される状態)において、円板5a,5b,5c,5dの取り付け中心位置(高さ)がカバー体4の回転中心(延在部2)位置よりも下方の位置と言うことである。そして、円板5a,5b,5c,5dの大きさは、例えば円板5a,5cの前端がカバー体4の前端より前方側に飛び出し、円板5b,5dの後端がカバー体4の後端より後方側に飛び出す大きさである。
【0028】
さて、例えば黴取剤を浴槽の立設壁面におけるタイル間の目地に塗ろうとして、把持部1を手にした状態では、図1に示される如く、カバー体4は自身の重みでカバー面が凹状の姿勢である。すなわち、カバー体4の開口面は上側を向いている。
【0029】
この状態(カバー体4の開口面を上側)にて、塗布具Aを垂直な壁面に近付けると、先ず、垂直壁面に円板5a,5cが当たる。そうすると、この接触位置(高さ)はカバー体4の回転軸芯の高さより低い位置に在るから、作用・反作用の原理から判る通り、垂直壁面からカバー体4を時計方向に回転させる力が作用する。つまり、図2に示される如く、カバー体4が回転ローラ3を背後から覆う如く、カバー体4の開口面は水平方向から垂直方向に回転する。従って、難なく、このままで塗布モードに入ることが出来、そして塗布に際して、回転ローラ3から薬剤が飛散しても、カバー体4でカバーされているから、顔に薬剤が飛び散ることも無い。
【0030】
さて、垂直面に対する塗布に大きな特長を奏することは上記した通りであるが、水平な天井面の塗布にも威力を発揮する。水平な天井面の塗布には、下から天井に向かって塗布具Aが近付けられる。この時、カバー体4が回転自在であるにしても、自身の重さの関係で、カバー体4の開口面は常に上側を向いたままである。従って、回転ローラ3が薬剤を含んでいて、回転ローラ3から薬剤が滴るような場合が起きても、滴下した薬剤はカバー体4で受け止められ、顔に当たったり、床に落ちることも無い。従って、予め、床にシートを敷いた後で天井面の塗布と言った養生(予備)作業が不要であり、非常に簡便である。
【0031】
尚、上記カバー体4を脱着できるものとしておくと、薬剤に回転ローラを漬す場合にカバー体4を外した状態で出来、非常に便利である。勿論、完全に取り外すのみでは無く、回転ローラ3の位置から離れた位置に移動できる構造のものであっても良い。
【0032】
図3は、本発明の第2実施形態になる塗布具の説明図である。
【0033】
本実施形態の塗布具Bも基本的な構造は前記実施形態の塗布具と同じである。
但し、前記実施形態の塗布具Aは、回転ローラ3とカバー体4とが同一軸に回転自在に取り付けられたものであるのに対して、本実施形態の塗布具Bは回転ローラ3の取付軸とは異なる部材に取り付けられた点が異なる。
【0034】
すなわち、把持部1(延在部2)からの第2の延在部11に対して回転自在にカバー体4が取り付けられている。つまり、延在部11の先端部11aが案内溝部12を円周方向に動くことが出来るようになっている。そして、この回転自在な取付機構は、図3からも判る通り、遊星機構的なものである。尚、このような取付機構も取付方としては公知であるから、詳細な説明は省略される。但し、回転ローラ3を取り付けた延在部2とカバー体4を取り付けた延在部11とが別部材であると、機構的には複雑になるものの、回転ローラ3を薬剤中に浸ける場合、延在部2に対して延在部11を取り外す(両者の嵌合状態を解除する)ことが簡単に出来、カバー体4を洗浄液などの薬剤中に浸けないように出来、この点では有利である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明になる第1実施形態の塗布具の斜視図
【図2】第1実施形態の塗布具を垂直壁面に当てた時の説明図
【図3】本発明になる第2実施形態の塗布具の説明図
【符号の説明】
【0036】
1 把持部
2 延在部
3 回転ローラ
4 カバー体
4a カバー面
4b,4c 左右壁面
4d 軸受部
5a,5b,5c,5d 円板(ローラ)

代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、前記把持部からの延在部に対して取り付けられた回転ローラと、前記回転ローラをカバーする為に前記把持部からの延在部に対して回転可能に取り付けられたカバー体とを具備した塗布具であって、
前記カバー体の回転中心位置よりも下方位置において前方側に突出した突出部がカバー体に設けられてなる
ことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
カバー体の回転中心位置よりも下方位置において回転中心を有するローラがカバー体に設けられてなり、
前記ローラは、該ローラ前端が前記カバー体前端より突出している大きさである
ことを特徴とする請求項1の塗布具。
【請求項3】
カバー体の回転軸芯と回転ローラの回転軸芯とが同一ライン上に在るように構成されてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の塗布具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−131777(P2009−131777A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309868(P2007−309868)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000206934)株式会社マルテー大塚 (26)
【出願人】(000204608)大下産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】