塗布材押出容器
【課題】ラチェットアームの折損を防止する。
【解決手段】塗布材押出容器100は、本体筒2と操作筒3との一方向における相対回転によって螺合部8の螺合作用が働き移動体6が前進するものであって、軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム52及び軸線方向に突出するラチェット歯34を含むラチェット機構101を備えている。ラチェット機構101は、本体筒2と操作筒3との他方向における相対回転が規制されるようラチェットアーム52の先端部52xとラチェット歯34とを周方向に係止する。ここで、塗布材押出容器100では、ラチェット歯34の側面34cに凸部36が設けられており、相対回転が規制された状態でラチェットアーム52の先端部52xに凸部36が軸線方向に近接するため、かかる状態において他方向にさらに相対回転されても、先端部52xが軸線方向後側へ変位するのが抑制される。
【解決手段】塗布材押出容器100は、本体筒2と操作筒3との一方向における相対回転によって螺合部8の螺合作用が働き移動体6が前進するものであって、軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム52及び軸線方向に突出するラチェット歯34を含むラチェット機構101を備えている。ラチェット機構101は、本体筒2と操作筒3との他方向における相対回転が規制されるようラチェットアーム52の先端部52xとラチェット歯34とを周方向に係止する。ここで、塗布材押出容器100では、ラチェット歯34の側面34cに凸部36が設けられており、相対回転が規制された状態でラチェットアーム52の先端部52xに凸部36が軸線方向に近接するため、かかる状態において他方向にさらに相対回転されても、先端部52xが軸線方向後側へ変位するのが抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば、容器内に移動体及び螺合部を具備し、容器前部と容器後部との一方向における相対回転によって螺合部の螺合作用が働き移動体が前進するものが知られている。このような塗布材押出容器は、例えば特許文献1に記載されているようなラチェット機構を備える場合がある。
【0003】
この特許文献1に記載されたラチェット機構は、軸筒(容器前部)の内周面に径方向内側へ突出するラチェット歯と、回転体(容器後部)と同期回転可能な円板部に設けられ円周方向反時計回りに伸びるラチェットアームと、を含み、軸筒と回転体との時計方向(一方向)の相対回転を許容する一方、反時計方向(他方向)の回転を、ラチェットアームの先端の爪部をラチェット歯に係止させて規制(阻止)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような塗布材押出容器では、信頼性の向上が益々求められており、例えば、容器前部と容器後部との他方向の相対回転がラチェット機構で規制された状態(以下、「相対回転規制状態」という)において使用者により他方向にさらに相対回転される場合でも、ラチェットアームの折損を防止することが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、ラチェットアームの折損を防止することができる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、次の事象を見出した。すなわち、相対回転規制状態にて他方向にさらに相対回転されると、かかる相対回転のトルクに応じた押圧荷重がラチェットアームの先端部に負荷される。このとき、ラチェットアームにあっては、例えばその先端部側が例えば開拡するように変位してし、ラチェットアームの基端部側に応力が集中し、その結果、基端部側を折損の基点としてラチェットアームが折損し易いというという事象を見出した。そこで、相対回転規制状態においてラチェットアームの先端部の変位を規制できれば、ラチェットアームにおける応力の集中を抑制でき、ひいては、ラチェットアームの折損を防止できることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る塗布材押出容器は、容器内に移動体及び螺合部を具備し、一方向における容器前部と容器後部との相対回転によって螺合部の螺合作用が働き移動体が前進する塗布材押出容器であって、軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム、及び軸線方向に突出するラチェット歯を含み、一方向とは反対の他方向における容器前部と容器後部との相対回転が規制されるようラチェットアームの先端部とラチェット歯とを周方向に係止するラチェット機構と、ラチェットアームの先端部とラチェット歯とが周方向に係止されたときにおいて該先端部の変位を規制する規制部と、を備えていること特徴とする。
【0009】
この本発明に係る塗布材押出容器では、相対回転規制状態にラチェットアームの先端部の変位が規制部によって規制される。そのため、相対回転規制状態に容器前部と容器後部とが他方向にさらに相対回転される場合でも、ラチェットアームの先端部が変位してラチェットアームに応力集中が生じるのを抑制することができる。従って、本発明によれば、ラチェットアームの折損を防止することが可能となる。
【0010】
また、規制部は、ラチェットアームの先端部とラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、ラチェットアームの先端部に対し軸線方向に近接して該先端部の軸線方向の変位を規制する第1壁部を含むことが好ましい。この場合、相対回転規制状態においてラチェットアームの先端部が軸線方向に変位することが抑制されることになる。
【0011】
また、規制部は、ラチェットアームの先端部とラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、ラチェットアームの先端部に対し径方向に近接して該先端部の径方向の変位を規制する第2壁部を含むことが好ましい。この場合、相対回転規制状態においてラチェットアームの先端部が径方向に変位することが抑制されることになる。
【0012】
また、螺合部の一方を構成する雌螺子及びラチェットアームを含み、容器前部と同期回転可能にして軸線方向に係合する螺子筒と、ラチェット歯を含み、容器後部を構成する操作筒と、を備えていることが好ましい。この場合、螺合部の雌螺子とラチェットアームとが螺子筒として一体で成形することができ、効率的な成形及び低コスト化が実現可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラチェットアームの折損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の前方斜視図である。
【図2】図1の塗布材押出容器の縦断側面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器の分解斜視図である。
【図4】図1の塗布材押出容器における螺子筒の前方斜視図である。
【図5】図1の塗布材押出容器における螺子筒の後方斜視図である。
【図6】図1の塗布材押出容器における螺子筒の縦断側面図である。
【図7】図1の塗布材押出容器における操作筒の前方斜視図である。
【図8】図1の塗布材押出容器における操作筒の縦断側面図である。
【図9】図1の塗布材押出容器における操作筒の平面図である。
【図10】図1の塗布材押出容器における移動体の後方斜視図である。
【図11】図1の塗布材押出容器における移動体の縦断側面図である。
【図12】図1の塗布材押出容器のラチェットアームにおける先端部の変位を説明するための正面図である。
【図13】図1の塗布材押出容器のラチェットアームにおける先端部の変位を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の前方斜視図、図2は図1の塗布材押出容器の縦断側面図、図3は図1の塗布材押出容器の分解斜視図である。図1,2に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、塗布材M(図2参照)を収容して保持すると共に使用者の操作により適宜押出し(繰出し)可能とするものである。
【0017】
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0018】
塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域を内部に備えた充填部材1と、その前半部に充填部材1を内挿して該充填部材1を軸線方向及び回転方向に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。そして、塗布材押出容器100は、図2に示すように、その内部に、螺子筒5、移動体6及びピストン7を概略備えており、本体筒2には、キャップCが着脱可能に取り付けられている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0019】
螺子筒5は、本体筒2に同期回転可能にして軸線方向に係合すると共に移動体6に螺合部8を介して螺合する。移動体6は、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に螺子筒5に螺合部8を介して螺合し、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると前進する。ピストン7は、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域の後端を形成する。また、本体筒2(螺子筒5)と操作筒3とは、ラチェットアーム52及びラチェット歯34から成るラチェット機構101によって、一方向の相対回転が許容される一方で、他方向の相対回転が規制される。ちなみに、「一方向」とは軸回り回転方向における任意の一方向を意味し、「他方向」とは回転方向のうちの一方向とは反対方向を意味する。
【0020】
図3に示すように、本体筒2は、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂により成形され、段付き円筒状に構成されている。具体的には、本体筒2は、その前側に位置する小径部21xと、小径部21xの後側に段差面21pを介して連続し且つ該小径部よりも大径外形を有する大径部21yと、を有している。小径部21x及び大径部21yの内径は、外径と同様に、大径部21yに対して小径部21xが小とされている。
【0021】
小径部21xには、充填部材1を軸線方向及び回転方向に係合するものとして、径方向に貫通する貫通孔22が互いに対向するように一対形成されている。貫通孔22は、軸線方向を長手方向とする長孔形状とされている。なお、ここでの貫通孔22は、充填された塗布材Mの残量を把握する窓部としても機能する(詳しくは、後述)。
【0022】
また、小径部21xの内周面において前端を含む所定部分には、充填部材1を軸線方向に係合するため環状凸部23が設けられている。小径部21xの外周面の後端部において貫通孔22,22に対し周方向に45°離間する各位置には、キャップCを着脱可能に取り付けるためのキャップ取付部24が設けられている。
【0023】
キャップ取付部24は、キャップCを軸線方向に係止するものとして周方向に所定長延在する円弧状凸部25と、キャップCを回転方向に係止するものとして円弧状凸部25と段差面21pとの間に設けられた線状凸部26a,26bと、を含んで構成されている。線状凸部26a,26bは、円弧状凸部25と段差面21pとを連結するよう軸線方向に延在している。これら線状凸部26a,26bは、周方向に並設されており、その一方(ここでは、線状凸部26b)の突出高さが他方(ここでは、線状凸部26a)の突出高さよりも低くなっている。
【0024】
大径部21yの内周面において後端部には、操作筒3を相対回転可能にして軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)27(図2参照)が設けられている。
【0025】
キャップCは、例えば透明なAS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂で成形され、後側に開口する有底円筒状を呈している。このキャップCは、本体筒2の大径部と等しい外径を有している。また、キャップCは、図3に示すように、その内周面の後端部において周方向四等配の位置に、釦状の凸部C1〜C4を備えている。
【0026】
このようなキャップCは、その凸部C1〜C4がキャップ取付部24に軸線方向視で重ならないようにして小径部21xに外挿され、その後端面が段差面21pに突き当てられた後、凸部C1〜C4が線状凸部26bを乗り越えるまで小径部21xに対し相対回転される。これにより、凸部C1〜C4が円弧状凸部25及び段差面21pで軸線方向に係止されつつ線状凸部26a,26bで周方向に係止され、その結果、キャップCが保護部材として本体筒2に装着される。
【0027】
他方、このキャップCは、例えば使用時において、操作筒3の後端部に外挿されると共に、その凸部C1〜C4が操作筒3に回転方向に係合され、操作筒3に操作補助部材として同期回転可能に装着される。
【0028】
図2,3に示すように、充填部材1は、内部の充填領域に充填した塗布材Mを使用者による操作に従って前端部から吐出する。この充填部材1は、例えば透明なPET(ポリエチレンテレフタラート)で成形され、円筒形状を成し、その先端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。
【0029】
この充填部材1の外周面の前端部には、本体筒2の環状凸部23に係合するための環状切欠部11が設けられている。また、充填部材1の外周面において軸線方向中央部から前端部には、本体筒2の貫通孔22に係合するためのものとして、軸線方向に延在する凸部12が互いに対向するよう一対設けられている。また、充填部材1の外周面において後端部の周方向四等配位置には、螺子筒5を係合するためのものとして、周方向に延在する凸部13が設けられている。充填部材1の外周面において後端を含む所定部分には、螺子筒5を係合するためのものとして、軸線方向に延在する溝部14が周方向四等配の位置に設けられている。
【0030】
このような充填部材1は、図2,3に示すように、その前側から本体筒2に内挿され、その環状切欠部11に本体筒2の環状凸部23が突き当てられると共に、その凸部12が本体筒2の貫通孔22に嵌合することで、本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、該本体筒2と一体化されている。
【0031】
図4は図1の塗布材押出容器における螺子筒の前方斜視図、図5は図1の塗布材押出容器における螺子筒の後方斜視図、図6は図1の塗布材押出容器における螺子筒の縦断側面図である。図4に示すように、螺子筒5は、例えばPOM(ポリアセタール)で成形され、外筒5xと内筒5yとが連結部5pで連結されて成る円筒状を呈している。
【0032】
外筒5xには、充填部材1の凸部13を係合するためのものとして、径方向に貫通する貫通孔51が周方向四等配の位置に設けられている。この貫通孔51は、周方向を長手方向とする長孔形状とされている。また、図6に示すように、外筒5xの内周面において後端部の周方向四等配の位置には、充填部材1の溝部14に係合するためのものとして、軸線方向に延在する突条55が設けられている。内筒5yは、外筒5xと同軸で配設され、その軸線方向長さが外筒5xよりも小さくされている。この内筒5yの内周面には、螺合部8を構成する雌螺子8aが設けられている。
【0033】
連結部5pは、円環板状を呈し、その前面の外周縁及び内周縁に外筒5x及び内筒5yがそれぞれ接続されている。この連結部5pは、ラチェット機構101における一方の歯合部として、軸線方向に弾性力を有するよう軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム52を一対有している。
【0034】
ラチェットアーム52は、図5に示すように、その基端部52y側を中心にして軸線方向に撓むことでその素材に起因した弾性力を軸線方向に付与する。このラチェットアーム52は、連結部5pにおいて軸線を介して対向する位置に一対設けられている。具体的には、ラチェットアーム52は、断面矩形状を呈し、連結部5pにおいて周方向に延在する貫通孔53の周方向他方側(前方視で時計回り方向側)から、周方向一方側(前方視で反時計回り方向側)及び軸線方向後側に向けて螺旋状に延びるよう構成されている。
【0035】
このような螺子筒5は、図2,3に示すように、本体筒2の大径部21yと充填部材1との間に挿入される。このとき、その突条55が充填部材1の溝部14に回転方向に係合されると共に、その貫通孔51に充填部材1の凸部13が嵌合されることで、充填部材1及び本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、これらと一体化されている。
【0036】
図7は図1の塗布材押出容器における操作筒の前方斜視図、図8は図1の塗布材押出容器における操作筒の縦断側面図、図9は図1の塗布材押出容器における操作筒の平面図である。図7〜9に示すように、操作筒3は、ABS樹脂で成形され、有底円筒状に構成された尾栓部31xと、前端側に向かうように尾栓部31xの底部32の前面中央に立設された軸体31yと、を有している。
【0037】
尾栓部31xの外周面の前端部には、本体筒2に軸線方向に係合するための環状凸凹部33が設けられている。この尾栓部31xは、ラチェット機構101によって本体筒2と操作筒3との他方向の相対回転が規制された状態(以下、相対回転規制状態という)において、ラチェットアーム52の変位を規制するような内径の内周面38を有している(詳しくは、後述)。また、尾栓部31xの外周面において環状凸凹部33よりも前側には、本体筒2と操作筒3との相対回転に程好い摺動抵抗(回転抵抗)を付与するための環状弾性体であるOリング102を装着するものとして、環状に延在するOリング用溝123が形成されている(図2参照)。
【0038】
また、尾栓部31xは、ラチェット機構101における他方の歯合部として、複数のラチェット歯34を有している。ラチェット歯34は、ラチェットアーム52と係合及び係止するためのものであり、底部32の前面の周方向八等配の位置に軸線方向に突設されている。ラチェット歯34は、尾栓部31xの内周面38に連続し、軸線方向視において軸体31yに向けて放射状に所定長延在している。
【0039】
これらラチェット歯34の先端面34aは、その周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにラチェットアーム52が当接する側)に行くに従い突出高さが低くなるよう軸線方向の直交面に対し傾斜する傾斜面34bを有している。また、このラチェット歯34において周方向他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときにラチェットアーム52が当接する側)の側面34cには、相対回転規制状態のときにラチェットアーム52の先端部52xの変位を規制するものとして、軸線方向に延びる凸部36が設けられている。
【0040】
具体的には、凸部36は、側面34cの径方向外側において尾栓部31xの内周面38に連続するように設けられており、断面略矩形状を成して径方向に突出する。また、凸部36は、側面34cの前端より所定長後側の位置から側面34cの後端に亘る領域に延在し、底部32に連続している。そして、凸部36の前面36aは、軸線方向の直交面に沿う平面となっている。
【0041】
また、図7に示すように、尾栓部31xの外周面において後端を含む所定部分には、キャップCの凸部C1〜C4を係合するためのものとして、軸線方向に延在する溝部37が周方向八等配の位置に設けられている。この溝部37の溝深さは、キャップCの凸部C1〜C4を容易に進入させて確実に係合させるべく、その前端部が後端部よりも浅く(後端部が前端部よりも深く)なっている。
【0042】
軸体31yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体31yは、円柱体の外周面に、周方向四等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条39を備える横断面非円形形状とされている。
【0043】
このような操作筒3は、図2に示すように、その尾栓部31xの前側が本体筒2に内挿され、その尾栓部31xの環状凸凹部33が本体筒2の環状凹凸部27に軸線方向に係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に装着されている。このとき、ラチェットアーム52の先端部52xと操作筒3のラチェット歯34の先端面34aとは、軸線方向位置が互いに重なるよう配置されており、本体筒2と操作筒3との相対回転により回転方向に互いに係合可能となっている。また、操作筒3は、そのOリング用溝123にOリング102が設けられており、その尾栓部31xの外周面がOリング102を介して本体筒2の内周面に当接されている。
【0044】
図10は図1の塗布材押出容器における移動体の後方斜視図、図11は図1の塗布材押出容器における移動体の縦断側面図である。図10に示すように、移動体6は、例えばPOMで成形され、円筒状の外周に二平面部61a,61bを対向して設けた形状に構成されている。移動体6の二平面部61a,61bを除く部分の外面には、螺合部8を構成する雄螺子8bが設けられている。また、図11に示すように、移動体6の内周面の先端側には、その内径よりも大きい径の開口部62が設けられ、開口部62の内周面には、ピストン7を軸線方向に係合するための環状凸凹部63が設けられている。一方、移動体6の内周面の後端側には、操作筒3に軸線回り回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条6cが周方向四等配の位置に設けられている。
【0045】
このような移動体6は、図2に示すように、操作筒3の軸体31yと螺子筒5との間に挿入され、その雄螺子8bが螺子筒5の雌螺子8aと螺合すると共に、その突条6cが軸体31yの突条39,39間に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0046】
図2に示すように、ピストン7は、例えばLDPE(低密度ポリエチレン)で成形され、後側に開口する有底円筒状に構成されている。ピストン7の底部7xの後面に凹設された凹部71の外周面には、移動体6に対し軸線方向に係合する環状凹凸部72が設けられている。
【0047】
このようなピストン7は、充填部材1の内周面に密着するようにして該充填部材1に内挿される。これと共に、その凹部71が移動体6に外挿され、その環状凹凸部72が移動体6の環状凸凹部63に軸線方向に係合することで、移動体6に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、移動体6と一体化される。なお、移動体6及びピストン7は、一体で成形することも可能である。
【0048】
以上、上述した塗布材押出容器100では、塗布材Mが充填部材1の内周面及びピストン7と密着又は近接して装填されており、ピストン7を前進させて充填部材1の開口1aから塗布材Mが押し出す場合、まず、使用者によりキャップCがキャップ取付部24から取り外されると共に、このキャップCが操作筒3の尾栓部31xの後端部に外挿され、凸部C1〜C4が溝部37に嵌め込まれて、キャップCが操作筒3に同期回転可能に取り付けられる。
【0049】
そして、本体筒2とキャップCとが繰り出し方向である一方向に相対回転され、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると、螺子筒5と操作筒3とが相対回転し、螺子筒5の雌螺子8a及び移動体6の雄螺子8bにより構成された螺合部8の螺合作用が働き、操作筒3における軸体31yの突条39と移動体6の突条6cとにより構成された回り止め部との協働により、移動体6が前進する。その結果、ピストン7が前進して開口1aから塗布材Mが出現する。
【0050】
また、このように本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されるときには、ラチェット歯34の先端面34aにおいて径方向外側にラチェットアーム52の先端部52xが回転方向に当接し、先端部52xが傾斜面34bを駆け上がるように摺動すると共に、ラチェットアーム52が軸線方向に圧縮され、かかる圧縮によるラチェットアーム52の弾性力で先端部52xが軸線方向後側に押し付けられる。そして、先端部52xがラチェット歯34を乗り越え、このときにクリック感が生じるということが繰り返される。すなわち、ラチェットアーム52の先端部52xとラチェット歯34との係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与される。ここでは、相対回転1回転当り8回のクリック感が生じ、ピストン7及び移動体6の前進が感知される。
【0051】
他方、本体筒2とキャップCとが他方向に相対回転され、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、ラチェット歯34の側面34cにおいて径方向外側にラチェットアーム52の先端部52xが回転方向に当接して係止される。これにより、ラチェットアーム52が設けられた螺子筒5と操作筒3との他方向の相対回転が規制され(相対回転不能とされ)、ひいては、螺子筒5が一体に装着された本体筒2と操作筒3との他方向の相対回転が規制される。
【0052】
ここで、相対回転規制状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、かかる相対回転のトルクに応じた接線方向の押圧荷重が、ラチェット歯34の側面34cによってラチェットアーム52の先端部52xに負荷される。そのため、ラチェットアーム52は、その先端部52x側が開拡するように変位してしまうことが見出される。
【0053】
図12,13は、3次元CAEシミュレーションソフトにて押圧荷重を付与したときの解析結果を示す図であり、図1の塗布材押出容器におけるラチェットアームの先端部の変位を説明するための正面図、側面図である。各図において、(a)はラチェットアーム52の先端部52xが通常位置(初期位置)に位置する状態を示し、(b)は先端部52xが変位位置に位置する状態を示している。
【0054】
図12,13に示すように、相対回転規制状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されて先端部52xに押圧荷重が負荷されると、ラチェットアーム52にあっては、その先端部52xが軸線方向後側(アーム圧縮方向の反対側)へずれるように変位すると共に、径方向外側へずれるように変位しており、先端部52x側が開拡するような状態となることがわかる。
【0055】
この点、本実施形態の塗布材押出容器においては、上述したように、操作筒3のラチェット歯34の側面34cに凸部36が設けられており、相対回転規制状態時にラチェットアーム52の先端部52xに対し凸部36が軸線方向に近接する。よって、相対回転規制状態において他方向にさらに相対回転されても、先端部52xが凸部36の前面36aに当接され、先端部52xが前面36a以上に軸線方向後側へ変位するのが抑制(阻止)される。
【0056】
加えて、本実施形態では、相対回転規制状態時に先端部52xに対し操作筒3の尾栓部31xの内周面38が径方向外側に近接する。よって、相対回転規制状態において他方向にさらに相対回転されても、先端部52xが内周面38に当接され、先端部52xが内周面38以上に径方向外側へ変位するのが抑制(阻止)される。
【0057】
従って、本実施形態によれば、相対回転規制状態において、本体筒2と操作筒3とが他方向にさらに相対回転される場合でも、ラチェットアーム52の先端部52xが拡開するよう変位しすることを防止できる。その結果、ラチェットアーム52の基端部52y(図5参照)側に応力が集中することを抑制し、該基端部52y側を折損の基点としてラチェットアームが折損するのを防止することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、上述したように、本体筒2に一体とされた螺子筒5を備え、この螺子筒5の内筒5yに螺合部8の雌螺子8aが設けられていると共に、螺子筒5の連結部5pにラチェットアーム52が設けられている。そして、操作筒3の尾栓部31xにラチェット歯34が設けられている。よって、上記作用効果を発揮するに当たり、雌螺子8aとラチェットアーム52とを螺子筒5として一体で成形することができ、効率的な成形及び低コスト化が実現可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、上述したように、軸線方向に延在する貫通孔22が本体筒2に設けられており、この貫通孔22に透明な充填部材1の凸部12が係合されているため、貫通孔22を介して充填部材1の内部が外部から視認可能となる。つまり、貫通孔22が塗布材Mの状態を確認できる窓部として機能する。従って、この貫通孔22を介して充填部材1内の塗布材Mの残量を容易に把握することができる。なお、このように貫通孔22が軸線方向に延在していると、塗布材Mは軸線方向に押し出されて使用され軸線方向に減っていくため、残量を把握するという上記効果は顕著である。
【0060】
また、本実施形態では、上述したように、キャップCがその凸部C1〜C4によって本体筒2(キャップ取付部24)に着脱されるだけでなく、操作筒3の後端部の溝部37に着脱可能に嵌め込まれる。そして、キャップCを操作筒3に嵌め込んだ状態では、本体筒2と操作筒3とを相対回転させる際、本体筒2とキャップCとを相対回転すればよく、操作筒3の操作領域が実質的に拡大されることとなる。従って、本実施形態においては、かかる相対回転を容易化することが可能となる。
【0061】
なお、充填部材1への塗布材Mの装填方法は、溶融した塗布材Mを充填部材1の前端側から充填したり、塗布材Mを充填部材1の後端側から充填した後に当該充填部材1を組み付けたりすることが可能である。また、塗布材Mが金型や押出成形等で成形した棒状物の場合、塗布材Mを組立後に装填することも可能となる。
【0062】
以上において、ラチェット歯34の側面34cに設けられた凸部36によって規制部としての第1壁部が構成され、操作筒3の尾栓部31xの内周面38によって規制部としての第2壁部が構成される。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、第1壁部を構成する凸部36及び第2壁部を構成する内周面38を備えたが、これらの少なくとも一方のみを備えていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ラチェット歯34の側面34cに設けられた凸部36によって第1壁部を構成したが、これに限定されず、第1壁部は、ラチェットアームの先端部に対し軸線方向に近接して該先端部の軸線方向の変位を規制できるものであればよい。同様に、操作筒3の尾栓部31xの内周面38によって第2壁部を構成したが、これに限定されず、第2壁部は、ラチェットアームの先端部に対し径方向に近接して該先端部の径方向の変位を規制できるものであればよい。
【0065】
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。
【0066】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…充填部材(容器前部)、2…本体筒(容器前部)、3…操作筒(容器後部)、5…螺子筒、6…移動体、8…螺合部、8b…雌螺子、34…ラチェット歯、36…凸部(第1壁部,規制部)、38…内周面(第2壁部,規制部)、52…ラチェットアーム、52x…先端部、100…塗布材押出容器、101…ラチェット機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば、容器内に移動体及び螺合部を具備し、容器前部と容器後部との一方向における相対回転によって螺合部の螺合作用が働き移動体が前進するものが知られている。このような塗布材押出容器は、例えば特許文献1に記載されているようなラチェット機構を備える場合がある。
【0003】
この特許文献1に記載されたラチェット機構は、軸筒(容器前部)の内周面に径方向内側へ突出するラチェット歯と、回転体(容器後部)と同期回転可能な円板部に設けられ円周方向反時計回りに伸びるラチェットアームと、を含み、軸筒と回転体との時計方向(一方向)の相対回転を許容する一方、反時計方向(他方向)の回転を、ラチェットアームの先端の爪部をラチェット歯に係止させて規制(阻止)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような塗布材押出容器では、信頼性の向上が益々求められており、例えば、容器前部と容器後部との他方向の相対回転がラチェット機構で規制された状態(以下、「相対回転規制状態」という)において使用者により他方向にさらに相対回転される場合でも、ラチェットアームの折損を防止することが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、ラチェットアームの折損を防止することができる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、次の事象を見出した。すなわち、相対回転規制状態にて他方向にさらに相対回転されると、かかる相対回転のトルクに応じた押圧荷重がラチェットアームの先端部に負荷される。このとき、ラチェットアームにあっては、例えばその先端部側が例えば開拡するように変位してし、ラチェットアームの基端部側に応力が集中し、その結果、基端部側を折損の基点としてラチェットアームが折損し易いというという事象を見出した。そこで、相対回転規制状態においてラチェットアームの先端部の変位を規制できれば、ラチェットアームにおける応力の集中を抑制でき、ひいては、ラチェットアームの折損を防止できることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る塗布材押出容器は、容器内に移動体及び螺合部を具備し、一方向における容器前部と容器後部との相対回転によって螺合部の螺合作用が働き移動体が前進する塗布材押出容器であって、軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム、及び軸線方向に突出するラチェット歯を含み、一方向とは反対の他方向における容器前部と容器後部との相対回転が規制されるようラチェットアームの先端部とラチェット歯とを周方向に係止するラチェット機構と、ラチェットアームの先端部とラチェット歯とが周方向に係止されたときにおいて該先端部の変位を規制する規制部と、を備えていること特徴とする。
【0009】
この本発明に係る塗布材押出容器では、相対回転規制状態にラチェットアームの先端部の変位が規制部によって規制される。そのため、相対回転規制状態に容器前部と容器後部とが他方向にさらに相対回転される場合でも、ラチェットアームの先端部が変位してラチェットアームに応力集中が生じるのを抑制することができる。従って、本発明によれば、ラチェットアームの折損を防止することが可能となる。
【0010】
また、規制部は、ラチェットアームの先端部とラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、ラチェットアームの先端部に対し軸線方向に近接して該先端部の軸線方向の変位を規制する第1壁部を含むことが好ましい。この場合、相対回転規制状態においてラチェットアームの先端部が軸線方向に変位することが抑制されることになる。
【0011】
また、規制部は、ラチェットアームの先端部とラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、ラチェットアームの先端部に対し径方向に近接して該先端部の径方向の変位を規制する第2壁部を含むことが好ましい。この場合、相対回転規制状態においてラチェットアームの先端部が径方向に変位することが抑制されることになる。
【0012】
また、螺合部の一方を構成する雌螺子及びラチェットアームを含み、容器前部と同期回転可能にして軸線方向に係合する螺子筒と、ラチェット歯を含み、容器後部を構成する操作筒と、を備えていることが好ましい。この場合、螺合部の雌螺子とラチェットアームとが螺子筒として一体で成形することができ、効率的な成形及び低コスト化が実現可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラチェットアームの折損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の前方斜視図である。
【図2】図1の塗布材押出容器の縦断側面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器の分解斜視図である。
【図4】図1の塗布材押出容器における螺子筒の前方斜視図である。
【図5】図1の塗布材押出容器における螺子筒の後方斜視図である。
【図6】図1の塗布材押出容器における螺子筒の縦断側面図である。
【図7】図1の塗布材押出容器における操作筒の前方斜視図である。
【図8】図1の塗布材押出容器における操作筒の縦断側面図である。
【図9】図1の塗布材押出容器における操作筒の平面図である。
【図10】図1の塗布材押出容器における移動体の後方斜視図である。
【図11】図1の塗布材押出容器における移動体の縦断側面図である。
【図12】図1の塗布材押出容器のラチェットアームにおける先端部の変位を説明するための正面図である。
【図13】図1の塗布材押出容器のラチェットアームにおける先端部の変位を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の前方斜視図、図2は図1の塗布材押出容器の縦断側面図、図3は図1の塗布材押出容器の分解斜視図である。図1,2に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、塗布材M(図2参照)を収容して保持すると共に使用者の操作により適宜押出し(繰出し)可能とするものである。
【0017】
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0018】
塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域を内部に備えた充填部材1と、その前半部に充填部材1を内挿して該充填部材1を軸線方向及び回転方向に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。そして、塗布材押出容器100は、図2に示すように、その内部に、螺子筒5、移動体6及びピストン7を概略備えており、本体筒2には、キャップCが着脱可能に取り付けられている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0019】
螺子筒5は、本体筒2に同期回転可能にして軸線方向に係合すると共に移動体6に螺合部8を介して螺合する。移動体6は、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に螺子筒5に螺合部8を介して螺合し、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると前進する。ピストン7は、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域の後端を形成する。また、本体筒2(螺子筒5)と操作筒3とは、ラチェットアーム52及びラチェット歯34から成るラチェット機構101によって、一方向の相対回転が許容される一方で、他方向の相対回転が規制される。ちなみに、「一方向」とは軸回り回転方向における任意の一方向を意味し、「他方向」とは回転方向のうちの一方向とは反対方向を意味する。
【0020】
図3に示すように、本体筒2は、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂により成形され、段付き円筒状に構成されている。具体的には、本体筒2は、その前側に位置する小径部21xと、小径部21xの後側に段差面21pを介して連続し且つ該小径部よりも大径外形を有する大径部21yと、を有している。小径部21x及び大径部21yの内径は、外径と同様に、大径部21yに対して小径部21xが小とされている。
【0021】
小径部21xには、充填部材1を軸線方向及び回転方向に係合するものとして、径方向に貫通する貫通孔22が互いに対向するように一対形成されている。貫通孔22は、軸線方向を長手方向とする長孔形状とされている。なお、ここでの貫通孔22は、充填された塗布材Mの残量を把握する窓部としても機能する(詳しくは、後述)。
【0022】
また、小径部21xの内周面において前端を含む所定部分には、充填部材1を軸線方向に係合するため環状凸部23が設けられている。小径部21xの外周面の後端部において貫通孔22,22に対し周方向に45°離間する各位置には、キャップCを着脱可能に取り付けるためのキャップ取付部24が設けられている。
【0023】
キャップ取付部24は、キャップCを軸線方向に係止するものとして周方向に所定長延在する円弧状凸部25と、キャップCを回転方向に係止するものとして円弧状凸部25と段差面21pとの間に設けられた線状凸部26a,26bと、を含んで構成されている。線状凸部26a,26bは、円弧状凸部25と段差面21pとを連結するよう軸線方向に延在している。これら線状凸部26a,26bは、周方向に並設されており、その一方(ここでは、線状凸部26b)の突出高さが他方(ここでは、線状凸部26a)の突出高さよりも低くなっている。
【0024】
大径部21yの内周面において後端部には、操作筒3を相対回転可能にして軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)27(図2参照)が設けられている。
【0025】
キャップCは、例えば透明なAS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂で成形され、後側に開口する有底円筒状を呈している。このキャップCは、本体筒2の大径部と等しい外径を有している。また、キャップCは、図3に示すように、その内周面の後端部において周方向四等配の位置に、釦状の凸部C1〜C4を備えている。
【0026】
このようなキャップCは、その凸部C1〜C4がキャップ取付部24に軸線方向視で重ならないようにして小径部21xに外挿され、その後端面が段差面21pに突き当てられた後、凸部C1〜C4が線状凸部26bを乗り越えるまで小径部21xに対し相対回転される。これにより、凸部C1〜C4が円弧状凸部25及び段差面21pで軸線方向に係止されつつ線状凸部26a,26bで周方向に係止され、その結果、キャップCが保護部材として本体筒2に装着される。
【0027】
他方、このキャップCは、例えば使用時において、操作筒3の後端部に外挿されると共に、その凸部C1〜C4が操作筒3に回転方向に係合され、操作筒3に操作補助部材として同期回転可能に装着される。
【0028】
図2,3に示すように、充填部材1は、内部の充填領域に充填した塗布材Mを使用者による操作に従って前端部から吐出する。この充填部材1は、例えば透明なPET(ポリエチレンテレフタラート)で成形され、円筒形状を成し、その先端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。
【0029】
この充填部材1の外周面の前端部には、本体筒2の環状凸部23に係合するための環状切欠部11が設けられている。また、充填部材1の外周面において軸線方向中央部から前端部には、本体筒2の貫通孔22に係合するためのものとして、軸線方向に延在する凸部12が互いに対向するよう一対設けられている。また、充填部材1の外周面において後端部の周方向四等配位置には、螺子筒5を係合するためのものとして、周方向に延在する凸部13が設けられている。充填部材1の外周面において後端を含む所定部分には、螺子筒5を係合するためのものとして、軸線方向に延在する溝部14が周方向四等配の位置に設けられている。
【0030】
このような充填部材1は、図2,3に示すように、その前側から本体筒2に内挿され、その環状切欠部11に本体筒2の環状凸部23が突き当てられると共に、その凸部12が本体筒2の貫通孔22に嵌合することで、本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、該本体筒2と一体化されている。
【0031】
図4は図1の塗布材押出容器における螺子筒の前方斜視図、図5は図1の塗布材押出容器における螺子筒の後方斜視図、図6は図1の塗布材押出容器における螺子筒の縦断側面図である。図4に示すように、螺子筒5は、例えばPOM(ポリアセタール)で成形され、外筒5xと内筒5yとが連結部5pで連結されて成る円筒状を呈している。
【0032】
外筒5xには、充填部材1の凸部13を係合するためのものとして、径方向に貫通する貫通孔51が周方向四等配の位置に設けられている。この貫通孔51は、周方向を長手方向とする長孔形状とされている。また、図6に示すように、外筒5xの内周面において後端部の周方向四等配の位置には、充填部材1の溝部14に係合するためのものとして、軸線方向に延在する突条55が設けられている。内筒5yは、外筒5xと同軸で配設され、その軸線方向長さが外筒5xよりも小さくされている。この内筒5yの内周面には、螺合部8を構成する雌螺子8aが設けられている。
【0033】
連結部5pは、円環板状を呈し、その前面の外周縁及び内周縁に外筒5x及び内筒5yがそれぞれ接続されている。この連結部5pは、ラチェット機構101における一方の歯合部として、軸線方向に弾性力を有するよう軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム52を一対有している。
【0034】
ラチェットアーム52は、図5に示すように、その基端部52y側を中心にして軸線方向に撓むことでその素材に起因した弾性力を軸線方向に付与する。このラチェットアーム52は、連結部5pにおいて軸線を介して対向する位置に一対設けられている。具体的には、ラチェットアーム52は、断面矩形状を呈し、連結部5pにおいて周方向に延在する貫通孔53の周方向他方側(前方視で時計回り方向側)から、周方向一方側(前方視で反時計回り方向側)及び軸線方向後側に向けて螺旋状に延びるよう構成されている。
【0035】
このような螺子筒5は、図2,3に示すように、本体筒2の大径部21yと充填部材1との間に挿入される。このとき、その突条55が充填部材1の溝部14に回転方向に係合されると共に、その貫通孔51に充填部材1の凸部13が嵌合されることで、充填部材1及び本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、これらと一体化されている。
【0036】
図7は図1の塗布材押出容器における操作筒の前方斜視図、図8は図1の塗布材押出容器における操作筒の縦断側面図、図9は図1の塗布材押出容器における操作筒の平面図である。図7〜9に示すように、操作筒3は、ABS樹脂で成形され、有底円筒状に構成された尾栓部31xと、前端側に向かうように尾栓部31xの底部32の前面中央に立設された軸体31yと、を有している。
【0037】
尾栓部31xの外周面の前端部には、本体筒2に軸線方向に係合するための環状凸凹部33が設けられている。この尾栓部31xは、ラチェット機構101によって本体筒2と操作筒3との他方向の相対回転が規制された状態(以下、相対回転規制状態という)において、ラチェットアーム52の変位を規制するような内径の内周面38を有している(詳しくは、後述)。また、尾栓部31xの外周面において環状凸凹部33よりも前側には、本体筒2と操作筒3との相対回転に程好い摺動抵抗(回転抵抗)を付与するための環状弾性体であるOリング102を装着するものとして、環状に延在するOリング用溝123が形成されている(図2参照)。
【0038】
また、尾栓部31xは、ラチェット機構101における他方の歯合部として、複数のラチェット歯34を有している。ラチェット歯34は、ラチェットアーム52と係合及び係止するためのものであり、底部32の前面の周方向八等配の位置に軸線方向に突設されている。ラチェット歯34は、尾栓部31xの内周面38に連続し、軸線方向視において軸体31yに向けて放射状に所定長延在している。
【0039】
これらラチェット歯34の先端面34aは、その周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにラチェットアーム52が当接する側)に行くに従い突出高さが低くなるよう軸線方向の直交面に対し傾斜する傾斜面34bを有している。また、このラチェット歯34において周方向他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときにラチェットアーム52が当接する側)の側面34cには、相対回転規制状態のときにラチェットアーム52の先端部52xの変位を規制するものとして、軸線方向に延びる凸部36が設けられている。
【0040】
具体的には、凸部36は、側面34cの径方向外側において尾栓部31xの内周面38に連続するように設けられており、断面略矩形状を成して径方向に突出する。また、凸部36は、側面34cの前端より所定長後側の位置から側面34cの後端に亘る領域に延在し、底部32に連続している。そして、凸部36の前面36aは、軸線方向の直交面に沿う平面となっている。
【0041】
また、図7に示すように、尾栓部31xの外周面において後端を含む所定部分には、キャップCの凸部C1〜C4を係合するためのものとして、軸線方向に延在する溝部37が周方向八等配の位置に設けられている。この溝部37の溝深さは、キャップCの凸部C1〜C4を容易に進入させて確実に係合させるべく、その前端部が後端部よりも浅く(後端部が前端部よりも深く)なっている。
【0042】
軸体31yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体31yは、円柱体の外周面に、周方向四等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条39を備える横断面非円形形状とされている。
【0043】
このような操作筒3は、図2に示すように、その尾栓部31xの前側が本体筒2に内挿され、その尾栓部31xの環状凸凹部33が本体筒2の環状凹凸部27に軸線方向に係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に装着されている。このとき、ラチェットアーム52の先端部52xと操作筒3のラチェット歯34の先端面34aとは、軸線方向位置が互いに重なるよう配置されており、本体筒2と操作筒3との相対回転により回転方向に互いに係合可能となっている。また、操作筒3は、そのOリング用溝123にOリング102が設けられており、その尾栓部31xの外周面がOリング102を介して本体筒2の内周面に当接されている。
【0044】
図10は図1の塗布材押出容器における移動体の後方斜視図、図11は図1の塗布材押出容器における移動体の縦断側面図である。図10に示すように、移動体6は、例えばPOMで成形され、円筒状の外周に二平面部61a,61bを対向して設けた形状に構成されている。移動体6の二平面部61a,61bを除く部分の外面には、螺合部8を構成する雄螺子8bが設けられている。また、図11に示すように、移動体6の内周面の先端側には、その内径よりも大きい径の開口部62が設けられ、開口部62の内周面には、ピストン7を軸線方向に係合するための環状凸凹部63が設けられている。一方、移動体6の内周面の後端側には、操作筒3に軸線回り回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条6cが周方向四等配の位置に設けられている。
【0045】
このような移動体6は、図2に示すように、操作筒3の軸体31yと螺子筒5との間に挿入され、その雄螺子8bが螺子筒5の雌螺子8aと螺合すると共に、その突条6cが軸体31yの突条39,39間に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0046】
図2に示すように、ピストン7は、例えばLDPE(低密度ポリエチレン)で成形され、後側に開口する有底円筒状に構成されている。ピストン7の底部7xの後面に凹設された凹部71の外周面には、移動体6に対し軸線方向に係合する環状凹凸部72が設けられている。
【0047】
このようなピストン7は、充填部材1の内周面に密着するようにして該充填部材1に内挿される。これと共に、その凹部71が移動体6に外挿され、その環状凹凸部72が移動体6の環状凸凹部63に軸線方向に係合することで、移動体6に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、移動体6と一体化される。なお、移動体6及びピストン7は、一体で成形することも可能である。
【0048】
以上、上述した塗布材押出容器100では、塗布材Mが充填部材1の内周面及びピストン7と密着又は近接して装填されており、ピストン7を前進させて充填部材1の開口1aから塗布材Mが押し出す場合、まず、使用者によりキャップCがキャップ取付部24から取り外されると共に、このキャップCが操作筒3の尾栓部31xの後端部に外挿され、凸部C1〜C4が溝部37に嵌め込まれて、キャップCが操作筒3に同期回転可能に取り付けられる。
【0049】
そして、本体筒2とキャップCとが繰り出し方向である一方向に相対回転され、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると、螺子筒5と操作筒3とが相対回転し、螺子筒5の雌螺子8a及び移動体6の雄螺子8bにより構成された螺合部8の螺合作用が働き、操作筒3における軸体31yの突条39と移動体6の突条6cとにより構成された回り止め部との協働により、移動体6が前進する。その結果、ピストン7が前進して開口1aから塗布材Mが出現する。
【0050】
また、このように本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されるときには、ラチェット歯34の先端面34aにおいて径方向外側にラチェットアーム52の先端部52xが回転方向に当接し、先端部52xが傾斜面34bを駆け上がるように摺動すると共に、ラチェットアーム52が軸線方向に圧縮され、かかる圧縮によるラチェットアーム52の弾性力で先端部52xが軸線方向後側に押し付けられる。そして、先端部52xがラチェット歯34を乗り越え、このときにクリック感が生じるということが繰り返される。すなわち、ラチェットアーム52の先端部52xとラチェット歯34との係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与される。ここでは、相対回転1回転当り8回のクリック感が生じ、ピストン7及び移動体6の前進が感知される。
【0051】
他方、本体筒2とキャップCとが他方向に相対回転され、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、ラチェット歯34の側面34cにおいて径方向外側にラチェットアーム52の先端部52xが回転方向に当接して係止される。これにより、ラチェットアーム52が設けられた螺子筒5と操作筒3との他方向の相対回転が規制され(相対回転不能とされ)、ひいては、螺子筒5が一体に装着された本体筒2と操作筒3との他方向の相対回転が規制される。
【0052】
ここで、相対回転規制状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、かかる相対回転のトルクに応じた接線方向の押圧荷重が、ラチェット歯34の側面34cによってラチェットアーム52の先端部52xに負荷される。そのため、ラチェットアーム52は、その先端部52x側が開拡するように変位してしまうことが見出される。
【0053】
図12,13は、3次元CAEシミュレーションソフトにて押圧荷重を付与したときの解析結果を示す図であり、図1の塗布材押出容器におけるラチェットアームの先端部の変位を説明するための正面図、側面図である。各図において、(a)はラチェットアーム52の先端部52xが通常位置(初期位置)に位置する状態を示し、(b)は先端部52xが変位位置に位置する状態を示している。
【0054】
図12,13に示すように、相対回転規制状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されて先端部52xに押圧荷重が負荷されると、ラチェットアーム52にあっては、その先端部52xが軸線方向後側(アーム圧縮方向の反対側)へずれるように変位すると共に、径方向外側へずれるように変位しており、先端部52x側が開拡するような状態となることがわかる。
【0055】
この点、本実施形態の塗布材押出容器においては、上述したように、操作筒3のラチェット歯34の側面34cに凸部36が設けられており、相対回転規制状態時にラチェットアーム52の先端部52xに対し凸部36が軸線方向に近接する。よって、相対回転規制状態において他方向にさらに相対回転されても、先端部52xが凸部36の前面36aに当接され、先端部52xが前面36a以上に軸線方向後側へ変位するのが抑制(阻止)される。
【0056】
加えて、本実施形態では、相対回転規制状態時に先端部52xに対し操作筒3の尾栓部31xの内周面38が径方向外側に近接する。よって、相対回転規制状態において他方向にさらに相対回転されても、先端部52xが内周面38に当接され、先端部52xが内周面38以上に径方向外側へ変位するのが抑制(阻止)される。
【0057】
従って、本実施形態によれば、相対回転規制状態において、本体筒2と操作筒3とが他方向にさらに相対回転される場合でも、ラチェットアーム52の先端部52xが拡開するよう変位しすることを防止できる。その結果、ラチェットアーム52の基端部52y(図5参照)側に応力が集中することを抑制し、該基端部52y側を折損の基点としてラチェットアームが折損するのを防止することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、上述したように、本体筒2に一体とされた螺子筒5を備え、この螺子筒5の内筒5yに螺合部8の雌螺子8aが設けられていると共に、螺子筒5の連結部5pにラチェットアーム52が設けられている。そして、操作筒3の尾栓部31xにラチェット歯34が設けられている。よって、上記作用効果を発揮するに当たり、雌螺子8aとラチェットアーム52とを螺子筒5として一体で成形することができ、効率的な成形及び低コスト化が実現可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、上述したように、軸線方向に延在する貫通孔22が本体筒2に設けられており、この貫通孔22に透明な充填部材1の凸部12が係合されているため、貫通孔22を介して充填部材1の内部が外部から視認可能となる。つまり、貫通孔22が塗布材Mの状態を確認できる窓部として機能する。従って、この貫通孔22を介して充填部材1内の塗布材Mの残量を容易に把握することができる。なお、このように貫通孔22が軸線方向に延在していると、塗布材Mは軸線方向に押し出されて使用され軸線方向に減っていくため、残量を把握するという上記効果は顕著である。
【0060】
また、本実施形態では、上述したように、キャップCがその凸部C1〜C4によって本体筒2(キャップ取付部24)に着脱されるだけでなく、操作筒3の後端部の溝部37に着脱可能に嵌め込まれる。そして、キャップCを操作筒3に嵌め込んだ状態では、本体筒2と操作筒3とを相対回転させる際、本体筒2とキャップCとを相対回転すればよく、操作筒3の操作領域が実質的に拡大されることとなる。従って、本実施形態においては、かかる相対回転を容易化することが可能となる。
【0061】
なお、充填部材1への塗布材Mの装填方法は、溶融した塗布材Mを充填部材1の前端側から充填したり、塗布材Mを充填部材1の後端側から充填した後に当該充填部材1を組み付けたりすることが可能である。また、塗布材Mが金型や押出成形等で成形した棒状物の場合、塗布材Mを組立後に装填することも可能となる。
【0062】
以上において、ラチェット歯34の側面34cに設けられた凸部36によって規制部としての第1壁部が構成され、操作筒3の尾栓部31xの内周面38によって規制部としての第2壁部が構成される。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、第1壁部を構成する凸部36及び第2壁部を構成する内周面38を備えたが、これらの少なくとも一方のみを備えていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ラチェット歯34の側面34cに設けられた凸部36によって第1壁部を構成したが、これに限定されず、第1壁部は、ラチェットアームの先端部に対し軸線方向に近接して該先端部の軸線方向の変位を規制できるものであればよい。同様に、操作筒3の尾栓部31xの内周面38によって第2壁部を構成したが、これに限定されず、第2壁部は、ラチェットアームの先端部に対し径方向に近接して該先端部の径方向の変位を規制できるものであればよい。
【0065】
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。
【0066】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…充填部材(容器前部)、2…本体筒(容器前部)、3…操作筒(容器後部)、5…螺子筒、6…移動体、8…螺合部、8b…雌螺子、34…ラチェット歯、36…凸部(第1壁部,規制部)、38…内周面(第2壁部,規制部)、52…ラチェットアーム、52x…先端部、100…塗布材押出容器、101…ラチェット機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に移動体及び螺合部を具備し、容器前部と容器後部との一方向における相対回転によって前記螺合部の螺合作用が働き前記移動体が前進する塗布材押出容器であって、
軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム、及び軸線方向に突出するラチェット歯を含み、前記容器前部と前記容器後部との前記一方向とは反対の他方向における相対回転が規制されるよう前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とを周方向に係止するラチェット機構と、
前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とが周方向に係止されたときにおいて該先端部の変位を規制する規制部と、を備えていること特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記規制部は、前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、前記ラチェットアームの先端部に対し軸線方向に近接して該先端部の軸線方向の変位を規制する第1壁部を含むことを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記規制部は、前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、前記ラチェットアームの先端部に対し径方向に近接して該先端部の径方向の変位を規制する第2壁部を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記螺合部の一方を構成する雌螺子及び前記ラチェットアームを含み、前記容器前部と同期回転可能にして軸線方向に係合する螺子筒と、
前記ラチェット歯を含み、前記容器後部を構成する操作筒と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項1】
容器内に移動体及び螺合部を具備し、容器前部と容器後部との一方向における相対回転によって前記螺合部の螺合作用が働き前記移動体が前進する塗布材押出容器であって、
軸線回りに螺旋状に延在するラチェットアーム、及び軸線方向に突出するラチェット歯を含み、前記容器前部と前記容器後部との前記一方向とは反対の他方向における相対回転が規制されるよう前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とを周方向に係止するラチェット機構と、
前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とが周方向に係止されたときにおいて該先端部の変位を規制する規制部と、を備えていること特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記規制部は、前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、前記ラチェットアームの先端部に対し軸線方向に近接して該先端部の軸線方向の変位を規制する第1壁部を含むことを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記規制部は、前記ラチェットアームの先端部と前記ラチェット歯とが周方向に互いに係止されたときにおいて、前記ラチェットアームの先端部に対し径方向に近接して該先端部の径方向の変位を規制する第2壁部を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記螺合部の一方を構成する雌螺子及び前記ラチェットアームを含み、前記容器前部と同期回転可能にして軸線方向に係合する螺子筒と、
前記ラチェット歯を含み、前記容器後部を構成する操作筒と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−115485(P2011−115485A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277403(P2009−277403)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
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