塗布材押出容器
【課題】塗布材を精度よく押し出す及び引き戻す。
【解決手段】塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填部材1と、充填部材1に内挿され気密になるよう充填部材1に密接するピストン7と、を具備し、ピストン7が前進及び後退するものであって、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすように流通させる通気部110と、通気部110の空気流通を開閉する弁機構111と、を備えている。塗布材押出容器100では、ピストン7前進時において、弁機構111により通気部110の空気流通を開とし、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすため、かかる空気Aによってピストン7前進に悪影響が及ぶのを抑制できる。一方、ピストン7後退時において、弁機構111により通気部110の空気流通を閉とし、塗布材Mとピストン7との間の密閉状態を好適に保つため、減圧による吸引作用を確実発揮できる。
【解決手段】塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填部材1と、充填部材1に内挿され気密になるよう充填部材1に密接するピストン7と、を具備し、ピストン7が前進及び後退するものであって、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすように流通させる通気部110と、通気部110の空気流通を開閉する弁機構111と、を備えている。塗布材押出容器100では、ピストン7前進時において、弁機構111により通気部110の空気流通を開とし、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすため、かかる空気Aによってピストン7前進に悪影響が及ぶのを抑制できる。一方、ピストン7後退時において、弁機構111により通気部110の空気流通を閉とし、塗布材Mとピストン7との間の密閉状態を好適に保つため、減圧による吸引作用を確実発揮できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。この塗布材押出容器では、本体筒と操作筒とが一方向に相対回転されると、押出部が前進すると共に、充填部材内に充填された塗布材が押し出され、塗布材が充填部材の前端側の開口から出没する。一方、本体筒と操作筒とが一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、押出部が後退すると共に、押出部と塗布材との間において減圧による吸引作用(密着を維持しようとする作用)が働き、塗布材が引き戻されて開口から没入する。
【0003】
このような塗布材押出容器では、塗布材が充填された充填部材と押出部材とを組み付ける際、密接するように押出部材が充填部材に内挿される場合がある。この場合、塗布材と押出部材との間に空気が存在すると、その分だけ塗布材の充填量が低減すること等の理由から、例えば特許文献1,2に開示されているように、組付けの際において塗布材と押出部材との間の空気を逃がすための通気部が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−289420号公報
【特許文献2】特開2006−204415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような塗布材押出容器では、組付けの際に塗布材と押出部との間の空気を完全に無くすことは製造上困難であり、また、製造後においても、何らかの理由によって塗布材と押出部との間に空気が流入してしまうおそれがある。このように塗布材と押出部との間に空気が存在すると、押出部を前進させても、例えば、空気が有する圧縮性に起因し塗布材の出没遅れ(タイムラグ)等が発生する場合があり、塗布材を精度よく押し出すことができないおそれがある。他方、押出部の後退時には、吸引作用を確実に発揮させ、塗布材を精度よく引き戻すことが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことができる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る塗布材押出容器は、塗布材が充填される充填部材と、充填部材に内挿され気密になるよう充填部材に密接する押出部と、を具備し、押出部が前進及び後退する塗布材押出容器であって、充填部材内における塗布材と押出部との間の空気を逃がすよう流通させる通気部と、押出部の前進時に通気部における空気の流通を開とすると共に、押出部の後退時に通気部における空気の流通を閉とする弁機構と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
塗布材押出容器では、押出部の前進時において、弁機構により通気部における空気の流通が開とされることから、塗布材と押出部との間の空気を逃がすことができため、かかる空気によって押出部の前進に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となり、塗布材を精度よく押し出すことができる。一方、押出部の後退時において、弁機構により通気部における空気の流通が閉とされることから、押出部と塗布材との間の密閉状態を好適に保つことができるため、減圧による吸引作用を確実に発揮させることが可能となり、塗布材を精度よく引き戻すことができる。
【0009】
また、弁機構は、押出部の停止時に空気の流通を開とすることが好ましい。この場合、例えば塗布材押出容器の保管状態時において、塗布材と押出部との間の空気を逃がすことができるため、塗布材と押出部との間の空気が温度上昇によって膨張し塗布材が意図せず出没してしまうのを防止することが可能となる。
【0010】
また、弁機構は、押出部の停止時に空気の流通を閉とすることが好ましい。この場合、例えば塗布材押出容器の保管時において、塗布材と押出部との間の密閉状態を保つことができるため、塗布材の揮発を防止することが可能となる。
【0011】
ここで、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、押出部を前進及び後退させる移動体をさらに備え、押出部は、後方側に開口する凹部を有し、通気部は、押出部の前方側と凹部内とを連通させる貫通孔であり、移動体は、その前端部が凹部に内挿され、弁機構は、押出部の凹部の内面に設けられた弁座部と、移動体の前端部に設けられた弁体部と、を有する構成が挙げられる。
【0012】
また、移動体は、前方側が閉塞された有底筒形状を有しており、押出部の前進時に押出部の後端面に当接する鍔部を含み、鍔部の前面には、径方向に沿って延びる溝部が形成されていることが好ましい。この場合、押出部の前進時に弁機構による通気部の空気の流通が開とされている状態において、塗布材と押出部との間の空気を溝部を介して移動体の径方向外側へと積極的に逃がすことができる。
【0013】
また、移動体の前端部の外面には、押出部の前進時に空気を移動体内に流通させる貫通孔が形成されていることが好ましい。この場合、押出部の前進時に弁機構による通気部の空気の流通が開とされている状態において、塗布材と押出部との間の空気を貫通孔を介して移動体内の空間へと積極的に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】(a)は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進時の状態を示す縦断面図、(b)は図1の塗布材押出容器におけるピストン後退時の状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器におけるピストン前進限の状態を示す縦断面図である。
【図4】図1の塗布材押出容器の操作筒を示す分解斜視図である。
【図5】図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図である。
【図6】図1の塗布材押出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図である。
【図7】図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す斜視図である。
【図8】図1の塗布材押出容器の移動体を示す斜視図である。
【図9】図8のIX−IXに沿っての断面斜視図である。
【図10】図1の塗布材押出容器のピストンを示す断面斜視図である。
【図11】塗布材押出容器の製造手順を説明するための図である。
【図12】図1の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【図13】図2(a)の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【図14】図2(b)の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る塗布材押出容器のピストン後退時の状態を示す一部拡大縦断面図である。
【図16】図15の塗布材押出容器の移動体の一部を示す斜視図である。
【図17】図16のXVII−XVII線に沿っての断面斜視図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係る塗布材押出容器の保管時の状態を示す一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図、図2(a)は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進時の状態を示す縦断面図、図2(b)は図1の塗布材押出容器におけるピストン後退時の状態を示す縦断面図、図3は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進限の状態を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、塗布材Mを収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
【0018】
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0019】
塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を軸線方向及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0020】
この塗布材押出容器100は、その内部に、回転止筒4、移動螺子筒5、移動体6及びピストン(押出部)7を概略備えている。回転止筒4は、本体筒2に対し相対回転可能にして軸線方向に係合する。移動螺子筒5は、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、回転止筒4に第1の螺合部8を介して螺合する。移動体6は、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、移動螺子筒5に第2の螺合部9を介して螺合する。ピストン7は、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域1xの後端を形成する。
【0021】
この塗布材押出容器100では、本体筒2(充填部材1でも可)と操作筒3とが一方向に相対回転されると、図2(a)に示すように、移動螺子筒5が一定量前進し、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進し、ピストン7が前進する。移動螺子筒5が前進限に達した後に本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると、移動体6が単独で前進し、ピストン7が前進する。他方、図2(b)に示すように、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、移動螺子筒5が一定量後退し、移動体6が移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退し、ピストン7が後退する。移動螺子筒5が後退限に達した後に本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると、移動体6が単独で後退し、ピストン7が後退する。
【0022】
また、塗布材押出容器100は、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすために空気流通させる通気部110と、この通気部110の空気流通を開閉する弁機構111と、を備えている。通気部110は、充填部材1内における塗布材Mとピストン7との間の空間の空気Aを、空間外へ逃がすよう後方へ流通させる。弁機構111は、ピストン7の前進時に通気部110の空気流通を開とすると共に、ピストン7の後退時に通気部110の空気流通を閉とする。
【0023】
図1に示すように、本体筒2は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。本体筒2は、その軸線方向中央部の内周面に、充填部材1及び移動螺子筒5を回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びてなるローレット2aを有している。また、本体筒2の前端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)2bが設けられている。
【0024】
本体筒2の後部側の内周面でローレット2aの後側には、回転止筒4を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2cが互いに対向するように一対形成されている。さらにまた、本体筒2の内周面で円弧状凸部2cの後側には、操作筒3を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2dが、互いに対向するように一対形成されている。これら円弧状凸部2c,2dは、軸線方向視において、互いに重ならないように周方向に間欠的に設けられている。
【0025】
図4は、図1の塗布材押出容器の操作筒を示す分解斜視図である。図4に示すように、操作筒3は、本体部31と、本体部31の後端部に外挿された有底円筒状の尾栓部38と、尾栓部38内に設けられた円柱状の錘部39と、を含んで構成されている。本体部31は、例えばABS樹脂で成形され、有底円筒状に構成された筒部31xと、前端側に向かうように筒部31xの底部中央に立設された軸体31yと、を有している。
【0026】
筒部31xの外周面の前部には、本体筒2に軸線方向に係合し且つ回転止筒4の後端に突き当たる環状凸部32が設けられている。また、筒部31xの外周面の中央には、本体筒2の後端面に当接するためのものとして、円環状の鍔部33が設けられている。さらにまた、筒部31xの後端部には、尾栓部38を軸線方向に係合するための凸部34と、尾栓部38を回転方向に係合するための溝部35が設けられている。
【0027】
この筒部31xは、ラチェット歯を構成する複数の凸部36を有している。凸部36は、回転止筒4の凸部44(後述)と係合するものとして、筒部31xの外周面の前側において径方向外側に向かって突設されている。ここでの凸部36は、周方向に鋸歯形状となるように、外周面において周方向八等配の位置に設けられている。
【0028】
これら凸部36における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部36における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36bは、外周面に対し側面36aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
【0029】
軸体31yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体31yは、円柱体の外周面に、周方向六等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条37を備える横断面非円形形状とされている。
【0030】
尾栓部38は、例えばABS樹脂で成形され、本体部31の後部を覆うように当該本体部31に同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。錘部39は、金属で形成され、尾栓部38に覆われるよう本体部31と尾栓部38との間に配置されている。この錘部39によって、塗布材押出容器100全体に対し、重量感を与えることができ、高級感を高めることが可能となる。
【0031】
図1,4に示すように、本体部31、尾栓部38及び錘部39からなる操作筒3は、その本体部31の前側が本体筒2に内挿され、その鍔部33が本体筒2の後端面に突き当てられると共に、本体部31の環状凸部32が本体筒2の円弧状凸部2dに軸線方向に係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。
【0032】
図5は図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図、図6は図1の塗布材押出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図である。回転止筒4は、軟質部104と、軟質部104の前側に外挿されて固定される硬質部105と、を含んで構成されている(図1参照)。
【0033】
図5に示すように、軟質部104は、その前側に位置する円筒状の小径部104xと、該小径部104xの後側に段差面104pを介して連続する円筒状の大径部104yと、を有している。小径部104xは、内周面の前側に設けられリード12mmでピッチ2mmの第1の螺合部8を構成する雌螺子としての突条41を複数有している。これら突条41は、内周面に沿って螺旋状を成して延びると共に、隣接する突条41の端部同士は、軸線方向に互いにズレて離間している。また、突条41は、軸線方向視において互いに重ならないように間欠的に6つ設けられている。
【0034】
大径部104yは、ラチェット歯を構成する複数の凸部44を有している。凸部44は、操作筒3の凸部36と周方向に係合するものとして、大径部104yの内周面の後側において径方向内側に向かって突設されている。ここでの凸部44は、周方向に鋸歯形状となるように、内周面において周方向四等配の位置に設けられている。
【0035】
これら凸部44における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部44における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44bは、外周面に対し側面44aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
【0036】
この軟質部104は、移動螺子筒5及び操作筒3よりも軟らかいものとされている。具体的には、軟質部104は、移動螺子筒5の材質であるPOM(ポリアセタール)よりも軟らかく、且つ、操作筒3の材質であるABS樹脂よりも軟らかい材質で成形されており、ここでは、熱可塑性エラストマでインジェンクション成形されている。なお、熱可塑性エラストマとしては、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、等の何れのものを用いることができる。
【0037】
図6に示すように、硬質部105は、筒状を呈しており、その内径が軟質部104の小径部104xの外径と等しくされている。硬質部105の外周面の後端部には、本体筒2に軸線方向に係合するための環状凸部106が設けられている。また、硬質部105の内周面の前端部には、軟質部104に対する挿入方向を規制する(つまり、前後方向が逆にならないようにする)ためのものとして、環状凸部107が設けられている。
【0038】
この硬質部105は、軟質部104よりも硬いものとされている。具体的には、硬質部105は、POM、ABS樹脂又はHDPE(高密度ポリエチレン)でインジェンクション成形されており、軟質部104よりも硬度が大きいものとなっている。そして、硬質部105は、図1に示すように、その環状凸部107が前側に位置する状態にして、その後端面105a(図8参照)が段差面104pに当接するまで軟質部104の小径部104xに外挿され、嵌合されて装着(固定)されている。
【0039】
図1,5,6に示すように、軟質部104及び硬質部105からなる回転止筒4は、その前側から本体筒2に内挿され、その環状凸部106が本体筒2の円弧状凸部2cに軸線方向に係合している。また、回転止筒4は、その後側が操作筒3の本体部31に外挿され、その後端面が環状凸部32(図4参照)に突き当てられている。これにより、回転止筒4は、軸線方向に挟持され、本体筒2に対して相対回転可能にして軸線方向に係合され装着される。
【0040】
これと共に、回転止筒4は、軟質部104の凸部44が操作筒3の凸部36に当接し、回転方向(周方向)に係合している。そして、凸部44と凸部36との間には、例えば軟質部104の柔軟性に起因した弾性力(可撓性)等によって、所定係合力が生じることとなる。これにより、操作筒3と回転止筒4とは、一方向に相対回転される場合に同期回転可能となり、また、他方向に相対回転される場合、小回転力が加わると同期回転可能となると共に大回転力が加わると相対回転可能となる(詳しくは後述)。
【0041】
図7は、図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す斜視図である。図7に示すように、移動螺子筒5は、例えばPOMで成形され、筒状を呈している。移動螺子筒5の前端部5xは、前端から軸線方向に所定長延在し対向するよう一対形成されたスリット51によって、径方向外側に拡開可能に構成されている。前端部5xの外周面の前側においてスリット51に近接する位置には、前端部5xの外径を調整するためのものとして、複数(ここでは4つ)の凸部52が設けられている。
【0042】
また、前端部5xの内周面において前端から所定長後方に亘る領域には、第2の螺合部9を構成する雌螺子53(図13参照)が設けられている。なお、ここでの第2の螺合部9のピッチは、第1の螺合部8のピッチより細かいものとされており、第1の螺合部8のリード(本体筒2と操作筒3との相対回転一回転当たりの推進量)が第2の螺合部9のリードよりも大きく設定されている。
【0043】
また、移動螺子筒5の中央部の外周面における後側には、円環状の鍔部54が設けられている。鍔部54の外周面には、本体筒2のローレット2aに係合するものとして、軸線方向に沿って延びる突条55が複数設けられている。また、移動螺子筒5の後端部の外周面には、第1の螺合部8を構成する雄螺子としての突条56が設けられている。これら突条56は、外周面おいて軸線を挟んで対向する一対の対向部分に設けられている。つまり、かかる対向部分にのみ螺旋状を成して延在するように、間欠的に設けられている。
【0044】
図1,7に示すように、この移動螺子筒5は、本体筒2に内挿され、その突条55が本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、移動螺子筒5は、操作筒3の軸体31yに外挿されると共に、その後端部の突条56が回転止筒4の軟質部104の突条41と螺合するように構成されている。ここでは、軟質部104が軟らかいことから、第1の螺合部8の螺合作用を充分に発揮させるべく、複数の突条56が複数の突条56に同時に係合するようになっている。
【0045】
図8は図1の塗布材押出容器の移動体を示す斜視図、図9は図8のIX−IXに沿っての断面斜視図である。図8,9に示すように、移動体6は、ピストン7を前方へ押し出して前進させると共に後方へ引き戻して後退させるものである。移動体6は、例えばPOMで成形され、その前端側が閉塞された有底円筒状(有底筒形状)に構成されている。移動体6は、その前端から所定長後方の位置に鍔部6aを備えている。鍔部6aは、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転された際にピストン7の後端面に当接してピストン7を前方へ押圧する。
【0046】
また、移動体6は、その鍔部6aより後側から後端部に亘る外周面に、第2の螺合部9の雄螺子6bを有している。図9に示すように、この移動体6の内周面において周方向六等配の位置には、操作筒3に回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条6cが設けられている。
【0047】
本実施形態の移動体6は、その前端部を構成するものとして、鍔部6aの前側に設けられた円筒部6dと、該円筒部6dの前側に設けられた弁体部6eと、を備えている。円筒部6dは、その外周面に、互いに対向するよう形成された二平面部6f,6fを有している。弁体部6eは、弁機構111を構成するものであり、ピストン7の弁座部7b(後述)に気密に当接する。弁体部6eは、円筒部6dの径よりも大径の円柱状を呈している。この弁体部6eは、移動体6の筒孔6xをその前端で密閉している。
【0048】
また、円筒部6dにおける二平面部(外面)6f,6fのそれぞれには、ピストン7の前進時で弁機構111が開のときに空気A(図1参照)を積極的に流通させるものとして、円筒部6dの内周面に至り且つ径方向に延在する貫通孔6gが形成されている。貫通孔6gは、断面円形状を呈しており、互いに対向するように一対設けられている。
【0049】
また、鍔部6aの前面には、ピストン7の前進時で弁機構111が開のときに空気A(図1参照)を積極的に流通させるものとして、径方向に延在する断面矩形状の溝部6hが形成されている。溝部6hは、二平面部6f,6fに連続すると共に、互いに対向するように一対設けられている。
【0050】
図1,8,9に示すように、この移動体6は、その後端側から、操作筒3の軸体31yと移動螺子筒5との間に外挿されている。このとき、移動体6は、その雄螺子6bが移動螺子筒5の雌螺子53と螺合すると共に、その突条6cが軸体31yの突条37,37間(図4参照)に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0051】
図10は、図1の塗布材押出容器のピストンを示す断面斜視図である。図10に示すように、ピストン7は、例えばPP(ポリプロピレン)、HDPE、又はLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、前方側に向けて凸とされた釣り鐘形状(笠形状)を呈しており、その内部に、後方側に開口する凹部7aを有している。
【0052】
凹部7aの内周面には、弁機構111を構成するものとして、移動体6の弁体部6eに気密に当接する弁座部7bが設けられている。弁座部7bは、径方向内側に突出し、且つ周方向に沿って延在している。この弁座部7bは、弁体部6eとの気密性を高めるものとして、その前方側の角部が切欠かれてなるような傾斜面7cを有している。
【0053】
また、ピストン7は、該ピストン7の前方側と凹部7a内とを連通させる貫通孔7dを上記通気部110として有している。この貫通孔7dは、ピストン7の前面から凹部7a内に至るよう径方向に沿って延在すると共に、互いに対向するよう一対設けられている。つまり、ここでの貫通孔7dは、ピストン7が呈する形状に起因してその前方側外周部に形成された空間と凹部7aとを連通させている。このピストン7の外周面には、充填部材1に対する気密性(シーリング性)を確保するものとして、該充填部材1の内周面に当接する環状突部7eが設けられている。
【0054】
図1,10に示すように、このピストン7は、その凹部7aが移動体6の前端部に外挿されることで、移動体6に対し相対回転可能且つ軸線方向移動可能(所定範囲内を移動可能)に装着されている。これにより、弁座部7b及び弁体部6eは、軸線方向に沿って所定範囲内を移動可能にして互いに係合することとなる。
【0055】
図1に示すように、充填部材1は、内部の充填領域1xに充填した塗布材Mを使用者による操作に従って前端部から吐出する。この充填部材1は、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂やABS樹脂等で成形され、円筒形状を成し、その前端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。開口1aは、軸線方向に対し所定角度で傾斜する傾斜角度面で形成されている。なお、この開口1aは、軸線方向の垂直面で形成するフラット形状とする場合や山形形状とする場合もある。
【0056】
また、充填部材1の外周面には、本体筒2の環状凹凸部2bに軸線方向に係合するための環状凸凹部1bが設けられている。また、充填部材1の外周面において環状凸凹部1bより後側の周方向四等配位置には、軸線方向に延びる突条1gが、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0057】
この充填部材1は、その後側から、本体筒2と移動螺子筒5との間に挿入され、その環状凸凹部1bに本体筒2の環状凹凸部2bが軸線方向に係合すると共に、その突条1gに本体筒2のローレット2aが回転方向に係合することで、本体筒2に軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化されている。また、充填部材1の後端部には、ピストン7が気密に密着するようにして内挿される。つまり、ピストン7は、充填部材1に内挿され、充填部材1に対し気密になるよう密接しつつ軸線方向に摺動可能となっている。
【0058】
さらに、塗布材押出容器100では、本体筒2内において充填部材1の後端面と移動螺子筒5の鍔部54(図7参照)との間に、所定弾性力を有する弾性部材としてのコイルバネ14が同軸で介在するように装着されており、移動螺子筒5が軸線方向後方に付勢されている。これにより、移動螺子筒5が一定量前進して第1の螺合部8の螺合作用が解除されたとき、移動螺子筒5は、第1の螺合部8が螺合復帰するように付勢されることとなる。
【0059】
ちなみに、ここでいう螺合復帰は、第1の螺合部8の雄螺子としての突条56が、雌螺子としての突条41の螺子山の側面に当接するまで戻る段階を意味している(以下、同じ)。コイルバネ14としては、例えば、POMやPP(ポリプロピレン)等の樹脂を利用し一部を切り欠いた円筒形状を射出成形で製造した樹脂バネや、ステンレス製線材をコイル状にしたスプリングを採用することができる。
【0060】
次に、塗布材押出容器100の製造手順の一例について説明する。図11は、塗布材押出容器の製造手順を説明するための図である。
【0061】
図11に示すように、まず、移動体6の前端部をピストン7の凹部7aに内挿し、移動体6に対して所定範囲内を軸線方向移動可能となるようピストン7を装着する。また、移動螺子筒5を移動体6に後側から外挿し、移動螺子筒5の雌螺子53を移動体6の外周面の雄螺子6bに螺合させる。そして、コイルバネ14を移動螺子筒5の周囲に位置するよう該移動螺子筒5に前側から外挿し、仮組品を得る。
【0062】
続いて、回転止筒4を操作筒3の本体部31に前側から外挿し、これを本体筒2に後側から内挿する。また、上記仮組品を本体筒2に前側から内挿し、移動螺子筒5の外周面の突条56に回転止筒4の内周面の突条41を螺合させると共に、操作筒3の軸体31yに移動体6を外挿する。これにより、本体側組立品40を得る。
【0063】
一方、充填部材1の開口1aをシール部材13で塞ぎ逆さにした状態とし、この状態で充填部材1の内部に所定量の溶融塗布材M1をノズル19から吐出する。これにより、充填部材1の先端から後端への途中まで溶融塗布材M1を密着するように充填する(いわゆる直接充填)。続いて、溶融塗布材M1が冷却固化し塗布材Mとなった後、塗布材Mが充填された充填部材1に対して上記本体側組立品40を組み付けるよう装着する。具体的には、上方から本体側組立品40の先端側を外挿し、ピストン7を充填部材1に気密に内挿しながら、本体筒2に充填部材1を係合し装着する。
【0064】
このとき、充填部材1の内周面がピストン7の外周面(特に環状突部7e)に摺接することから、ピストン7には後方側へ作用する摺動抵抗が作用するため、図1に示すように、ピストン7が移動体6に対し後方へ移動し、これにより、弁機構111が開(弁体部6e及び弁座部7bが係合解除状態)となる。そしてその後、シール部材13を外すことで、初期状態の塗布材押出容器100が得られる。
【0065】
ここで、充填部材1と本体側組立品40とを組み付ける際、上記のようにピストン7を充填部材1に気密に密接させていることから、充填部材1内の塗布材M上の空気にあっては、充填部材1内の塗布材Mとピストン7との間にそのまま残留し、充填領域1xの無駄スペースとして多く残ってしまうことが懸念される。その結果、残った空気が充填領域1xの上げ底部分となり、塗布材Mの充填量が低減してしまうことが懸念される。
【0066】
この点、本実施形態では、上述したように、通気部110としての貫通孔7dがピストン7に形成されていると共に、充填部材1及び本体側組立品40の組付時に弁機構111が開とされて貫通孔7dの空気の流通が許容されている。よって、かかる組付時においては、充填部材1内の塗布材M上の空気を、貫通孔7dを通じて凹部7a内へ流入させ、弁機構111を介して容器内の後側へ逃がすことができ、無駄スペースが生じて塗布材Mの充填量が少なくなるのを防止することが可能となる。
【0067】
また、移動体6に溝部6h及び貫通孔6gが形成されていることから、弁機構111を介して逃がした空気については、溝部6h及び貫通孔6gそれぞれを通じて容器外へと積極的に流通される(詳しくは、後述)。
【0068】
なお、溶融塗布材M1の充填量を厳密に制御し、組付後の初期状態において塗布材Mとピストン7との間に空気Aを存在させずにこれらを丁度一致させることは、製造上、極めて困難である。また、溶融塗布材M1を多く充填してしまうと、組付けの際に塗布材Mがピストン7により押し出されて開口1aより無駄に出現してしまうおそれがある。この点、初期状態の塗布材押出容器100では、塗布材Mとピストン7との間に少量の空気Aが存在するように塗布材Mが充填部材1の前端から後端への途中まで充填されているため、組付けの際、塗布材Mがピストン7により押し出されて充填部材1から出現することが防止されている。
【0069】
ちなみに、このように塗布材Mが充填された充填部材1を本体側組立品40に組み付ける構成とすると、軟らかい半固形状の塗布材や細く脆い塗布材や軟質状やジェル状の塗布材であっても充填部材1に安全に保護される。ここで、塗布材Mを例えば軟質状やジェル状のものとすると、充填部材1に密接し易いため、塗布材Mを後退させるのに都合がよい。
【0070】
次に、塗布材押出容器100の動作の一例について説明する。図12は、図1の塗布材押出容器の一部拡大図、図13は図2(a)の塗布材押出容器の一部拡大図、図14は図2(b)の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【0071】
[繰出し時]
図1,11に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、充填領域1xに充填された塗布材Mとピストン7との間に少量の空気Aが存在する状態にある。そして、使用者によりキャップCが取り外されて本体筒2と操作筒3とが繰り出し方向である一方向に相対回転されると、回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36に当接して回転方向に係止(強固に係合)され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転する。よって、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、移動螺子筒5の突条56及び回転止筒4の突条41により構成された第1の螺合部8の螺合作用が働き、移動螺子筒5の突条55と充填部材1の突条1gとにより構成された回止め部との協働により、移動螺子筒5が前進する。
【0072】
これと同時に、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、移動螺子筒5の雌螺子53及び移動体6の雄螺子6bにより構成された第2の螺合部9の螺合作用が働き、操作筒3における軸体31yの突条37と移動体6の突条6cとにより構成された回止め部との協働により、移動体6も前進する。すなわち、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進する。
【0073】
これにより、移動体6がピストン7に対し所定量前進し、図2(a),13に示すように、鍔部6aがピストン7の後端面に当接してピストン7を前方に押圧し、ピストン7が前進する。このとき、弁体部6e及び弁座部7bが離間して係合解除され、弁機構111が開となることから、塗布材Mとピストン7との間の空気Aにあっては、ピストン7の貫通孔7dから凹部7a内へと流れ、弁機構111を介して容器内の後側へと良好に逃がされることとなる。その結果、空気Aが直ちに無くされ、塗布材Mがピストン7の前面と密着した状態で前方へ押し出されて前進され(繰り出され)、塗布材Mが開口1aから出現する。
【0074】
なお、弁機構111を介して後側へ逃がされた空気Aは、移動体6の溝部6hを通じて径方向外側に向けて流通され、移動螺子筒5のスリット51(図7参照)を通ると共に、移動体6の貫通孔6gを通じて移動体6の筒内6x内へと流通され、その後、充填部材1と本体筒2との隙間Eから外部へ排出される。
【0075】
続いて、一方向の相対回転が続けられると、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が開とされた状態で移動体6及びピストン7が前進し、塗布材Mが開口1aからさらに押し出されて出現すると共に、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41の前端から外れ、第1の螺合部8の螺合作用が解除され、移動螺子筒5が前進限に達する。
【0076】
そして、一方向の相対回転が引き続き続けられると、螺合復帰するよう第1の螺合部8がコイルバネ14で付勢されながら第2の螺合部9の螺合作用のみが働き、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が開とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに前進し、塗布材Mが開口1aからさらに押し出されて出現し、その後、移動体6及びピストン7が前進限に達することとなる(図3参照)。
【0077】
ちなみに、移動螺子筒5の前進限の状態では、コイルバネ14の縮小の弾性力により移動螺子筒5が後方側へ付勢されることから、繰戻し方向である他方向へ本体筒2と操作筒3とが相対回転された場合、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41における回転方向隣の先端に直ちに進入し、第1の螺合部8が直ちに螺合復帰する。
【0078】
また、第2の螺合部9の螺合作用のみが働き移動体6及びピストン7が前進するときには、螺合解除された第1の螺合部8がコイルバネ14の付勢力で螺合復帰する方向に付勢されていることから、突条41,56同士の係合及び係合解除が繰り返され(つまり、突条41,56が互いに当接したり離れたりするのが繰り返され)、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与され、塗布材Mの押出しが使用者に感知される。このとき、上述したように、突条41が突条56よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音(音量)が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
【0079】
また、移動体6及びピストン7の前進限の状態では、移動体6の突条6cが操作筒3の突条37から外れているものの第2の螺合部9が螺合されたままであることから、第2の螺合部9及び移動螺子筒5を介して移動体6がコイルバネ14で後方に引っ張られる。そのため、かかる前進限の状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転された場合、突条6c,37同士が直ちに係合して回止め部が働き、移動体6及びピストン7が直ちに後退する。
【0080】
[繰戻し時]
一方、図2(b),14に示すように、例えば使用後にあって、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、操作筒3及び回転止筒4に小回転力が加わり、回転止筒4の凸部44の側面44a(図5参照)が操作筒3の凸部36の側面36a(図4参照)に当接して所定係合力で周方向に係合され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転することから、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が後退する。
【0081】
これと同時に、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6も後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退する。
【0082】
このとき、移動体6がピストン7に対して所定量後退し、弁体部6eが弁座部7bに係合してピストン7を後方に引っ張り、ピストン7が後退する。つまり、移動体6によってピストン7に後方側へ作用する引張力が働く。これに併せ、充填部材1の内周面がピストン7の外周面に摺接することから、ピストン7には前方側へ作用する摺動抵抗が働く。よって、弁体部6e及び弁座部7bが互いに押し付けられるよう動作し、弁体部6eと弁座部7bとが気密に係合する。
【0083】
ここでは、上記のように弁座部7bが傾斜面7cを有することから、弁座部7bの傾斜面7cが弁体部6eにくさび接触するよう係合するため、弁体部6eと弁座部7bとが互いに強固に気密化される。その結果、弁機構111が閉となって貫通孔7dの空気の流通が閉となる、すなわち、貫通孔7dから凹部7aへの空気の流通が遮断される。
【0084】
従って、このようにピストン7及び移動体6が後退すると、充填部材1内の減圧作用(密閉状態を保つ作用)が良好且つ確実に発揮され、塗布材Mがピストン7の前面と気密に密着した状態でピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されて後退され(繰り戻され)、開口1aから没入する。
【0085】
続いて、他方向の相対回転が続けられると、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が閉とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに後退し、充填部材1内の減圧作用によりピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されてさらに後退すると共に、移動螺子筒5の鍔部54が回転止筒4の前端面に当接し、第1の螺合部8の螺合作用が停止され、移動螺子筒5が後退限に達する。
【0086】
続いて、第1の螺合部8における螺合作用の停止前よりも大きい操作回転力で本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転され、操作筒3及び回転止筒4に大回転力が加わると、凸部44が凸部36の側面36aを駆け上がるように摺動して凸部36を乗り越え、操作筒3と回転止筒4とが相対回転(いわゆる「空回転」)される。よって、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が閉とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに後退し、充填部材1内の減圧作用によりピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されてさらに後退する。
【0087】
そして、停止前よりも大きい操作回転力によって他方向の相対回転が続けられると、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が閉とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに後退し、充填部材1内の減圧作用によりピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されてさらに後退すると共に、移動体6の後端が操作筒3の本体部31の底面に達し、移動体6及びピストン7が後退限に達することとなる。
【0088】
ちなみに、第2の螺合部9の螺合作用のみで移動体6がさらに後退する際に回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36を乗り越えるとき、クリック感が生じる。すなわち、移動体6がさらに後退するに際して、凸部44,36同士の係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与されることとなる。これにより、相対回転1回転当り8回のクリック感が生じ、ピストン7及び移動体6の後退が感知される。このとき、上述したように、凸部44が凸部44よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
【0089】
また、移動体6及びピストン7の後退限の状態では、その後に他方向に相対回転されて過大な回転力が第2の螺合部9に加わっても、スリット51によって前端部5xが拡開されて第2の螺合部9の螺合作用が解除される。
【0090】
[保管時]
他方、保管時(つまり、本体筒2と操作筒3とが相対回転されずにピストン7が停止しているとき)においては、移動体6による引張力及び摺動抵抗がピストン7に作用していないことから、弁体部6e及び弁座部7bが係合解除され、若しくは非気密に接触されるため、弁機構111が開となって貫通孔7dの空気の流通が開となる。
【0091】
以上、本実施形態の塗布材押出容器100では、ピストン7の前進時において、弁機構111によって貫通孔7dにおける空気の流通が開とされることから、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすことができる。そのため、かかる空気Aによってピストン7の前進に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となり、例えば、空気Aの高圧縮性に起因してピストン7の前進と塗布材Mの出没との間にタイムラグが生じるのを抑制し、塗布材Mを精度よく押し出すことができる。一方、ピストン7の後退時において、弁機構111によって貫通孔7dにおける空気の流通が閉とされることから、ピストン7と塗布材Mとの間の密閉状態を好適に保つことができる。そのため、減圧による吸引作用を確実に発揮させることが可能となり、塗布材Mを精度よく引き戻すことができる。
【0092】
また、上述したように、前進時に塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすことができるため、空気Aの温度変化により塗布材Mが開口1aから意図せず出没又は没入してしまうのを抑制することが可能となる。その結果、塗布材押出容器100に求められる耐久性(例えば、周囲環境5℃〜40℃で製品異常が生じないこと等)を、確実に確保することができる。
【0093】
さらに、上述したように、塗布材押出容器100の組付時に弁機構111により貫通孔7dの空気の流通が開とされているため、空気Aで充填領域1xが上げ底されるのを抑制でき、充填部材1内に無駄スペースが生じて塗布材Mの充填量が少なくなるのを防止することも可能となる。
【0094】
ところで、一般的に、塗布材押出容器100では、例えば、極端な温度低下によって塗布材Mが収縮すると、充填部材1内における塗布材Mの周囲に隙間が形成されてしまい、この隙間を介して、ピストン7の後退時に塗布材Mとピストン7との間に外部から空気が流入される場合がある。このように何らかの理由によって塗布材Mとピストン7との間に空気が流入される場合でも、本実施形態にあっては、ピストン7の前進時に空気Aを逃がすことができるため、その後の温度安定化した通常状態でのピストン7の後退時には、吸引作用を確実に発揮することができる。
【0095】
また、本実施形態では、上述したように、塗布材押出容器100の保管状態時であってピストン7が停止しているとき、弁機構111が貫通孔7dの空気の流通を開として塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がしていることから、例えば空気Aの温度上昇による膨張や長期保管による温度変化の連続等のために塗布材Mが意図せず出没してしまうのを防止することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態では、上述したように、移動体6の鍔部6aの前面に、径方向に沿って延びる溝部6hが形成されている。よって、ピストン7の前進時に弁機構111が開とされている状態で鍔部6aがピストン7の後端面に当接しているとき、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを溝部6hを介して移動体6の径方向外側へと積極的に逃がすことができる。
【0097】
また、本実施形態では、上述したように、移動体6の円筒部6dに貫通孔6gが形成されている。そのため、ピストン7の前進時に弁機構111が開とされている状態において、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを貫通孔6gを介して移動体6内の空間へと積極的に逃がすことができる。
【0098】
また、本実施形態では、上述したように、通気部110としての貫通孔7dが、ピストン7の前方側外周部に形成された空間と凹部7aとを連通している。そのため、塗布材Mとピストン7との間において特に残り易い部分の空気Aをも逃がすよう流通させることができる。なお、通気部は、ピストン7の前面の軸中心位置に軸方向に延在する貫通孔であってもよく、通気部110の構成及び数は、例えばピストン7の形状、塗布材Mの粘性等の性質、等に応じて適宜設定することが可能である。
【0099】
また、本実施形態のように移動体6が有底筒状であると、移動体6を樹脂成形する際、内部ピンが後端部側で片持ち状に支持されるため、撓みが発生することが懸念される。この点、本実施形態では、移動体6の前端部側に貫通孔6gが形成されていることから、移動体6の樹脂成形の際に貫通孔6gを利用して内部ピンを前端部側で支持できるため、撓み防止ひいては成形精度向上が可能となる。
【0100】
ちなみに、本実施形態では、次の作用効果も奏される。すなわち、上述したように、第2の螺合部9のみで移動体6が前進又は後退するとき、使用者にクリック感が付与される。これと共に、突条41が突条56よりも軟らかくされているため、かかるクリック感のクリック音を小さくしつつ(緩和しつつ)該クリック音を重厚なものとすることができる。よって、クリック音を高級感溢れる付加価値の高いものにすることができ、高級感を有するクリック感を生じさせることが可能となる。
【0101】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0102】
図15は本発明の第2実施形態に係る塗布材押出容器のピストン後退時の状態を示す一部拡大縦断面図、図16は図15の塗布材押出容器の移動体の一部を示す斜視図、図17は図16のXVII−XVII線に沿っての断面斜視図である。図15に示すように、本実施形態の塗布材押出容器200が上記第1実施形態と異なる点は、移動体6(図1参照)に代えて移動体206を備えた点である。
【0103】
図16,17に示すように、移動体206は、弁体部201を備えている。弁体部201は、弁機構111を構成するものであり、円筒部6dの径よりも大径の円筒状を呈している。弁体部201の外周面において円筒部6d側は、後方に行くに従って縮径するよう傾斜する傾斜面201aとなっている。つまり、弁体部201は、傾斜面201aを介して円筒部6dと連続している。この傾斜面201aは、弁座部7bの傾斜面7cと一層気密に係合させるべく、該傾斜面7cと等しい傾斜角度を有している。また、円筒部6dは、その内部に円板状の仕切部202を有しており、これにより、移動体206の筒孔206xがその前端で密閉されている。
【0104】
鍔部6aには、上記溝部6h及び上記貫通孔6gに対応するものとして、径方向に延在する貫通孔204が形成されている。貫通孔204は、ピストン7の前進時で弁機構111が開のときに空気A(図1参照)を流通させるためのものであり、鍔部6aの外周面から筒孔206xの内周面に至ると共に、鍔部6aの前面に開口している。この貫通孔204は、二平面部6f,6fに連続すると共に、互いに対向するように一対設けられている。このような移動体206にあっては、インジェクション成形で形成される場合、弁体部201の筒内側の内型(コア部)が先に離型された後、弁体部201及び円筒部6dの外側の外型(キャビティ部)が無理抜き等により離型され、これにより、その傾斜面201aにパーティングラインが無いものとなっている。
【0105】
以上のように構成された本実施形態の塗布材押出容器200では、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると、移動体6の前進によって鍔部6aがピストン7の後端面に当接してピストン7を前方に押圧し、ピストン7が前進する。このとき、弁体部6e及び弁座部7bが離間して係合解除され、弁機構111が開となることから、塗布材Mとピストン7との間の空気Aにあっては、ピストン7の貫通孔7dから凹部7aへと流れ、弁機構111を介して容器内の後側へと良好に逃がされる。
【0106】
そして、弁機構11を介して後側へ逃がされた空気Aは、移動体206の貫通孔204を通じて径方向外側に向けて流通され、移動螺子筒5のスリット51(図7参照)を通って、充填部材1と本体筒2との隙間Eから外部へ排出されると共に、この貫通孔204を通じて移動体6の筒孔6x内へと流通される。
【0107】
一方、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、図15に示すように、移動体206の後退によって弁体部201がピストン7の弁座部7bに係合してピストン7を後方に引っ張り、ピストン7が後退すると共に、ピストン7に前方側への摺動抵抗が働く。よって、弁体部201及び弁座部7bが互いに押し付けられるよう動作し、弁体部201と弁座部7bとが気密に係合する。
【0108】
ここでは、上記のように弁座部7bが傾斜面7cを有すると共に弁体部201が傾斜面201aを有することから、傾斜面同士の接触となるため、弁体部201と弁座部7bとが互いに強固に気密化される。その結果、弁機構111が閉となって貫通孔7dにおける空気の流通が閉となる、すなわち、貫通孔7dから凹部7aへの空気の流通が遮断される。また、上記のように移動体206は傾斜面201aにパーティングラインが存在しないよう形成されることから、傾斜面7c,201aを互いに精度よく当接させることができるため、弁機構111が閉のときに弁体部201と弁座部7bとを一層気密化させることが可能となる。
【0109】
以上、本実施形態の塗布材押出容器200でも、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことが可能となるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、上述したように、弁機構111が閉のときにおいて、弁座部7bが傾斜面7cに弁体部201の傾斜面201aが当接される(傾斜面同士の接触となる)ため、弁機構111の気密効果を高めることができる。
【0110】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0111】
図18は、本発明の第3実施形態に係る塗布材押出容器の保管時の状態を示す一部拡大縦断面図である。図18に示すように、本実施形態の塗布材押出容器300が上記第1実施形態と異なる点は、コイルバネ214をさらに備えた点である。
【0112】
コイルバネ214は、軸線方向に所定弾性力を有する弾性部材であり、ピストン7の凹部7a内に配設され、この凹部7aの底部と弁体部6eとの間に介在されている。コイルバネ214は、保管時にて移動体6がピストン7に対し後方へ移動するように移動体6を軸線方向後方へ付勢する。換言すると、保管時にてピストン7が移動体6に対し前方へ移動するようにピストン7を軸線方向前方へ付勢する。ここでのコイルバネ214の所定弾性力は、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに移動体6がピストン7に対して前進可能な弾性力に設定されている。
【0113】
以上、本実施形態の塗布材押出容器300でも、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことが可能となるという上記作用効果が奏される。
【0114】
また、本実施形態では、保管時において、コイルバネ214によって移動体6がピストン7に対し後方へ移動されることから、弁体部6e及び弁座部7bが互いに押し付けられるよう動作するため、弁体部6eと弁座部7bとが気密に係合し、弁機構111が閉となって貫通孔7dの空気の流通が閉となる。従って、保管時において、塗布材Mとピストン7との間の密閉状態を保つことができるため、塗布材Mの揮発を防止することが可能となる。なお、塗布材Mを長く維持させるために該塗布材Mに揮発性の溶材(シクロメチコン、メチルトリメチコン、イソドデカン、イソヘキサデカン、水等)が多く含まれる場合、かかる効果は顕著となる。
【0115】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る塗布材押出容器は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0116】
例えば、上記実施形態では、容器前部(本体筒2)と容器後部(操作筒3)とを相対回転してピストン7を前進及び後退させたが、容器中間部等の他の部位を相対回転してピストン7を前進及び後退させたり、ノック作用によりピストン7を前進及び後退させたり等してもよく、要は、本発明は、押出部が前進及び後退する塗布材押出容器であればよい。
【0117】
また、上記実施形態では、本体筒2と操作筒3とが一方向/他方向に相対回転されると、第1の螺合部8の螺合作用が働くと同時に第2の螺合部9の螺合作用が働くように構成したが、第1の螺合部8の螺合作用のみが働いた後、第2の螺合部8の螺合作用のみが働いように構成してもよい。また、本発明は、第1又は第2の螺合部8,9の何れか一方のみを有していてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、弁機構111として弁体部6e,201及び弁座部7bを備えているが、弁機構111はこれに限定されるものではなく、押出部の前進時に通気部における空気の流通を開とすると共に押出部の後退時に通気部における空気の流通を閉とする構成を有していればよい。
【0119】
なお、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。
【0120】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…充填部材、6…移動体、6e,201…弁体部、6a…鍔部、6g…貫通孔、6h…溝部、7…ピストン(押出部)、7a…凹部、7b…弁座部、7d…貫通孔(通気部)、100,200…塗布材押出容器、110…通気部、111…弁機構、204…貫通孔(溝部)、A…空気、M…塗布材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。この塗布材押出容器では、本体筒と操作筒とが一方向に相対回転されると、押出部が前進すると共に、充填部材内に充填された塗布材が押し出され、塗布材が充填部材の前端側の開口から出没する。一方、本体筒と操作筒とが一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、押出部が後退すると共に、押出部と塗布材との間において減圧による吸引作用(密着を維持しようとする作用)が働き、塗布材が引き戻されて開口から没入する。
【0003】
このような塗布材押出容器では、塗布材が充填された充填部材と押出部材とを組み付ける際、密接するように押出部材が充填部材に内挿される場合がある。この場合、塗布材と押出部材との間に空気が存在すると、その分だけ塗布材の充填量が低減すること等の理由から、例えば特許文献1,2に開示されているように、組付けの際において塗布材と押出部材との間の空気を逃がすための通気部が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−289420号公報
【特許文献2】特開2006−204415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような塗布材押出容器では、組付けの際に塗布材と押出部との間の空気を完全に無くすことは製造上困難であり、また、製造後においても、何らかの理由によって塗布材と押出部との間に空気が流入してしまうおそれがある。このように塗布材と押出部との間に空気が存在すると、押出部を前進させても、例えば、空気が有する圧縮性に起因し塗布材の出没遅れ(タイムラグ)等が発生する場合があり、塗布材を精度よく押し出すことができないおそれがある。他方、押出部の後退時には、吸引作用を確実に発揮させ、塗布材を精度よく引き戻すことが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことができる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る塗布材押出容器は、塗布材が充填される充填部材と、充填部材に内挿され気密になるよう充填部材に密接する押出部と、を具備し、押出部が前進及び後退する塗布材押出容器であって、充填部材内における塗布材と押出部との間の空気を逃がすよう流通させる通気部と、押出部の前進時に通気部における空気の流通を開とすると共に、押出部の後退時に通気部における空気の流通を閉とする弁機構と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
塗布材押出容器では、押出部の前進時において、弁機構により通気部における空気の流通が開とされることから、塗布材と押出部との間の空気を逃がすことができため、かかる空気によって押出部の前進に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となり、塗布材を精度よく押し出すことができる。一方、押出部の後退時において、弁機構により通気部における空気の流通が閉とされることから、押出部と塗布材との間の密閉状態を好適に保つことができるため、減圧による吸引作用を確実に発揮させることが可能となり、塗布材を精度よく引き戻すことができる。
【0009】
また、弁機構は、押出部の停止時に空気の流通を開とすることが好ましい。この場合、例えば塗布材押出容器の保管状態時において、塗布材と押出部との間の空気を逃がすことができるため、塗布材と押出部との間の空気が温度上昇によって膨張し塗布材が意図せず出没してしまうのを防止することが可能となる。
【0010】
また、弁機構は、押出部の停止時に空気の流通を閉とすることが好ましい。この場合、例えば塗布材押出容器の保管時において、塗布材と押出部との間の密閉状態を保つことができるため、塗布材の揮発を防止することが可能となる。
【0011】
ここで、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、押出部を前進及び後退させる移動体をさらに備え、押出部は、後方側に開口する凹部を有し、通気部は、押出部の前方側と凹部内とを連通させる貫通孔であり、移動体は、その前端部が凹部に内挿され、弁機構は、押出部の凹部の内面に設けられた弁座部と、移動体の前端部に設けられた弁体部と、を有する構成が挙げられる。
【0012】
また、移動体は、前方側が閉塞された有底筒形状を有しており、押出部の前進時に押出部の後端面に当接する鍔部を含み、鍔部の前面には、径方向に沿って延びる溝部が形成されていることが好ましい。この場合、押出部の前進時に弁機構による通気部の空気の流通が開とされている状態において、塗布材と押出部との間の空気を溝部を介して移動体の径方向外側へと積極的に逃がすことができる。
【0013】
また、移動体の前端部の外面には、押出部の前進時に空気を移動体内に流通させる貫通孔が形成されていることが好ましい。この場合、押出部の前進時に弁機構による通気部の空気の流通が開とされている状態において、塗布材と押出部との間の空気を貫通孔を介して移動体内の空間へと積極的に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】(a)は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進時の状態を示す縦断面図、(b)は図1の塗布材押出容器におけるピストン後退時の状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器におけるピストン前進限の状態を示す縦断面図である。
【図4】図1の塗布材押出容器の操作筒を示す分解斜視図である。
【図5】図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図である。
【図6】図1の塗布材押出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図である。
【図7】図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す斜視図である。
【図8】図1の塗布材押出容器の移動体を示す斜視図である。
【図9】図8のIX−IXに沿っての断面斜視図である。
【図10】図1の塗布材押出容器のピストンを示す断面斜視図である。
【図11】塗布材押出容器の製造手順を説明するための図である。
【図12】図1の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【図13】図2(a)の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【図14】図2(b)の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る塗布材押出容器のピストン後退時の状態を示す一部拡大縦断面図である。
【図16】図15の塗布材押出容器の移動体の一部を示す斜視図である。
【図17】図16のXVII−XVII線に沿っての断面斜視図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係る塗布材押出容器の保管時の状態を示す一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図、図2(a)は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進時の状態を示す縦断面図、図2(b)は図1の塗布材押出容器におけるピストン後退時の状態を示す縦断面図、図3は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進限の状態を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、塗布材Mを収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
【0018】
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0019】
塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を軸線方向及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0020】
この塗布材押出容器100は、その内部に、回転止筒4、移動螺子筒5、移動体6及びピストン(押出部)7を概略備えている。回転止筒4は、本体筒2に対し相対回転可能にして軸線方向に係合する。移動螺子筒5は、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、回転止筒4に第1の螺合部8を介して螺合する。移動体6は、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、移動螺子筒5に第2の螺合部9を介して螺合する。ピストン7は、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域1xの後端を形成する。
【0021】
この塗布材押出容器100では、本体筒2(充填部材1でも可)と操作筒3とが一方向に相対回転されると、図2(a)に示すように、移動螺子筒5が一定量前進し、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進し、ピストン7が前進する。移動螺子筒5が前進限に達した後に本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると、移動体6が単独で前進し、ピストン7が前進する。他方、図2(b)に示すように、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、移動螺子筒5が一定量後退し、移動体6が移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退し、ピストン7が後退する。移動螺子筒5が後退限に達した後に本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると、移動体6が単独で後退し、ピストン7が後退する。
【0022】
また、塗布材押出容器100は、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすために空気流通させる通気部110と、この通気部110の空気流通を開閉する弁機構111と、を備えている。通気部110は、充填部材1内における塗布材Mとピストン7との間の空間の空気Aを、空間外へ逃がすよう後方へ流通させる。弁機構111は、ピストン7の前進時に通気部110の空気流通を開とすると共に、ピストン7の後退時に通気部110の空気流通を閉とする。
【0023】
図1に示すように、本体筒2は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。本体筒2は、その軸線方向中央部の内周面に、充填部材1及び移動螺子筒5を回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びてなるローレット2aを有している。また、本体筒2の前端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)2bが設けられている。
【0024】
本体筒2の後部側の内周面でローレット2aの後側には、回転止筒4を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2cが互いに対向するように一対形成されている。さらにまた、本体筒2の内周面で円弧状凸部2cの後側には、操作筒3を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2dが、互いに対向するように一対形成されている。これら円弧状凸部2c,2dは、軸線方向視において、互いに重ならないように周方向に間欠的に設けられている。
【0025】
図4は、図1の塗布材押出容器の操作筒を示す分解斜視図である。図4に示すように、操作筒3は、本体部31と、本体部31の後端部に外挿された有底円筒状の尾栓部38と、尾栓部38内に設けられた円柱状の錘部39と、を含んで構成されている。本体部31は、例えばABS樹脂で成形され、有底円筒状に構成された筒部31xと、前端側に向かうように筒部31xの底部中央に立設された軸体31yと、を有している。
【0026】
筒部31xの外周面の前部には、本体筒2に軸線方向に係合し且つ回転止筒4の後端に突き当たる環状凸部32が設けられている。また、筒部31xの外周面の中央には、本体筒2の後端面に当接するためのものとして、円環状の鍔部33が設けられている。さらにまた、筒部31xの後端部には、尾栓部38を軸線方向に係合するための凸部34と、尾栓部38を回転方向に係合するための溝部35が設けられている。
【0027】
この筒部31xは、ラチェット歯を構成する複数の凸部36を有している。凸部36は、回転止筒4の凸部44(後述)と係合するものとして、筒部31xの外周面の前側において径方向外側に向かって突設されている。ここでの凸部36は、周方向に鋸歯形状となるように、外周面において周方向八等配の位置に設けられている。
【0028】
これら凸部36における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部36における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36bは、外周面に対し側面36aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
【0029】
軸体31yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体31yは、円柱体の外周面に、周方向六等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条37を備える横断面非円形形状とされている。
【0030】
尾栓部38は、例えばABS樹脂で成形され、本体部31の後部を覆うように当該本体部31に同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。錘部39は、金属で形成され、尾栓部38に覆われるよう本体部31と尾栓部38との間に配置されている。この錘部39によって、塗布材押出容器100全体に対し、重量感を与えることができ、高級感を高めることが可能となる。
【0031】
図1,4に示すように、本体部31、尾栓部38及び錘部39からなる操作筒3は、その本体部31の前側が本体筒2に内挿され、その鍔部33が本体筒2の後端面に突き当てられると共に、本体部31の環状凸部32が本体筒2の円弧状凸部2dに軸線方向に係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。
【0032】
図5は図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図、図6は図1の塗布材押出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図である。回転止筒4は、軟質部104と、軟質部104の前側に外挿されて固定される硬質部105と、を含んで構成されている(図1参照)。
【0033】
図5に示すように、軟質部104は、その前側に位置する円筒状の小径部104xと、該小径部104xの後側に段差面104pを介して連続する円筒状の大径部104yと、を有している。小径部104xは、内周面の前側に設けられリード12mmでピッチ2mmの第1の螺合部8を構成する雌螺子としての突条41を複数有している。これら突条41は、内周面に沿って螺旋状を成して延びると共に、隣接する突条41の端部同士は、軸線方向に互いにズレて離間している。また、突条41は、軸線方向視において互いに重ならないように間欠的に6つ設けられている。
【0034】
大径部104yは、ラチェット歯を構成する複数の凸部44を有している。凸部44は、操作筒3の凸部36と周方向に係合するものとして、大径部104yの内周面の後側において径方向内側に向かって突設されている。ここでの凸部44は、周方向に鋸歯形状となるように、内周面において周方向四等配の位置に設けられている。
【0035】
これら凸部44における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部44における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44bは、外周面に対し側面44aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
【0036】
この軟質部104は、移動螺子筒5及び操作筒3よりも軟らかいものとされている。具体的には、軟質部104は、移動螺子筒5の材質であるPOM(ポリアセタール)よりも軟らかく、且つ、操作筒3の材質であるABS樹脂よりも軟らかい材質で成形されており、ここでは、熱可塑性エラストマでインジェンクション成形されている。なお、熱可塑性エラストマとしては、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、等の何れのものを用いることができる。
【0037】
図6に示すように、硬質部105は、筒状を呈しており、その内径が軟質部104の小径部104xの外径と等しくされている。硬質部105の外周面の後端部には、本体筒2に軸線方向に係合するための環状凸部106が設けられている。また、硬質部105の内周面の前端部には、軟質部104に対する挿入方向を規制する(つまり、前後方向が逆にならないようにする)ためのものとして、環状凸部107が設けられている。
【0038】
この硬質部105は、軟質部104よりも硬いものとされている。具体的には、硬質部105は、POM、ABS樹脂又はHDPE(高密度ポリエチレン)でインジェンクション成形されており、軟質部104よりも硬度が大きいものとなっている。そして、硬質部105は、図1に示すように、その環状凸部107が前側に位置する状態にして、その後端面105a(図8参照)が段差面104pに当接するまで軟質部104の小径部104xに外挿され、嵌合されて装着(固定)されている。
【0039】
図1,5,6に示すように、軟質部104及び硬質部105からなる回転止筒4は、その前側から本体筒2に内挿され、その環状凸部106が本体筒2の円弧状凸部2cに軸線方向に係合している。また、回転止筒4は、その後側が操作筒3の本体部31に外挿され、その後端面が環状凸部32(図4参照)に突き当てられている。これにより、回転止筒4は、軸線方向に挟持され、本体筒2に対して相対回転可能にして軸線方向に係合され装着される。
【0040】
これと共に、回転止筒4は、軟質部104の凸部44が操作筒3の凸部36に当接し、回転方向(周方向)に係合している。そして、凸部44と凸部36との間には、例えば軟質部104の柔軟性に起因した弾性力(可撓性)等によって、所定係合力が生じることとなる。これにより、操作筒3と回転止筒4とは、一方向に相対回転される場合に同期回転可能となり、また、他方向に相対回転される場合、小回転力が加わると同期回転可能となると共に大回転力が加わると相対回転可能となる(詳しくは後述)。
【0041】
図7は、図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す斜視図である。図7に示すように、移動螺子筒5は、例えばPOMで成形され、筒状を呈している。移動螺子筒5の前端部5xは、前端から軸線方向に所定長延在し対向するよう一対形成されたスリット51によって、径方向外側に拡開可能に構成されている。前端部5xの外周面の前側においてスリット51に近接する位置には、前端部5xの外径を調整するためのものとして、複数(ここでは4つ)の凸部52が設けられている。
【0042】
また、前端部5xの内周面において前端から所定長後方に亘る領域には、第2の螺合部9を構成する雌螺子53(図13参照)が設けられている。なお、ここでの第2の螺合部9のピッチは、第1の螺合部8のピッチより細かいものとされており、第1の螺合部8のリード(本体筒2と操作筒3との相対回転一回転当たりの推進量)が第2の螺合部9のリードよりも大きく設定されている。
【0043】
また、移動螺子筒5の中央部の外周面における後側には、円環状の鍔部54が設けられている。鍔部54の外周面には、本体筒2のローレット2aに係合するものとして、軸線方向に沿って延びる突条55が複数設けられている。また、移動螺子筒5の後端部の外周面には、第1の螺合部8を構成する雄螺子としての突条56が設けられている。これら突条56は、外周面おいて軸線を挟んで対向する一対の対向部分に設けられている。つまり、かかる対向部分にのみ螺旋状を成して延在するように、間欠的に設けられている。
【0044】
図1,7に示すように、この移動螺子筒5は、本体筒2に内挿され、その突条55が本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、移動螺子筒5は、操作筒3の軸体31yに外挿されると共に、その後端部の突条56が回転止筒4の軟質部104の突条41と螺合するように構成されている。ここでは、軟質部104が軟らかいことから、第1の螺合部8の螺合作用を充分に発揮させるべく、複数の突条56が複数の突条56に同時に係合するようになっている。
【0045】
図8は図1の塗布材押出容器の移動体を示す斜視図、図9は図8のIX−IXに沿っての断面斜視図である。図8,9に示すように、移動体6は、ピストン7を前方へ押し出して前進させると共に後方へ引き戻して後退させるものである。移動体6は、例えばPOMで成形され、その前端側が閉塞された有底円筒状(有底筒形状)に構成されている。移動体6は、その前端から所定長後方の位置に鍔部6aを備えている。鍔部6aは、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転された際にピストン7の後端面に当接してピストン7を前方へ押圧する。
【0046】
また、移動体6は、その鍔部6aより後側から後端部に亘る外周面に、第2の螺合部9の雄螺子6bを有している。図9に示すように、この移動体6の内周面において周方向六等配の位置には、操作筒3に回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条6cが設けられている。
【0047】
本実施形態の移動体6は、その前端部を構成するものとして、鍔部6aの前側に設けられた円筒部6dと、該円筒部6dの前側に設けられた弁体部6eと、を備えている。円筒部6dは、その外周面に、互いに対向するよう形成された二平面部6f,6fを有している。弁体部6eは、弁機構111を構成するものであり、ピストン7の弁座部7b(後述)に気密に当接する。弁体部6eは、円筒部6dの径よりも大径の円柱状を呈している。この弁体部6eは、移動体6の筒孔6xをその前端で密閉している。
【0048】
また、円筒部6dにおける二平面部(外面)6f,6fのそれぞれには、ピストン7の前進時で弁機構111が開のときに空気A(図1参照)を積極的に流通させるものとして、円筒部6dの内周面に至り且つ径方向に延在する貫通孔6gが形成されている。貫通孔6gは、断面円形状を呈しており、互いに対向するように一対設けられている。
【0049】
また、鍔部6aの前面には、ピストン7の前進時で弁機構111が開のときに空気A(図1参照)を積極的に流通させるものとして、径方向に延在する断面矩形状の溝部6hが形成されている。溝部6hは、二平面部6f,6fに連続すると共に、互いに対向するように一対設けられている。
【0050】
図1,8,9に示すように、この移動体6は、その後端側から、操作筒3の軸体31yと移動螺子筒5との間に外挿されている。このとき、移動体6は、その雄螺子6bが移動螺子筒5の雌螺子53と螺合すると共に、その突条6cが軸体31yの突条37,37間(図4参照)に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0051】
図10は、図1の塗布材押出容器のピストンを示す断面斜視図である。図10に示すように、ピストン7は、例えばPP(ポリプロピレン)、HDPE、又はLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、前方側に向けて凸とされた釣り鐘形状(笠形状)を呈しており、その内部に、後方側に開口する凹部7aを有している。
【0052】
凹部7aの内周面には、弁機構111を構成するものとして、移動体6の弁体部6eに気密に当接する弁座部7bが設けられている。弁座部7bは、径方向内側に突出し、且つ周方向に沿って延在している。この弁座部7bは、弁体部6eとの気密性を高めるものとして、その前方側の角部が切欠かれてなるような傾斜面7cを有している。
【0053】
また、ピストン7は、該ピストン7の前方側と凹部7a内とを連通させる貫通孔7dを上記通気部110として有している。この貫通孔7dは、ピストン7の前面から凹部7a内に至るよう径方向に沿って延在すると共に、互いに対向するよう一対設けられている。つまり、ここでの貫通孔7dは、ピストン7が呈する形状に起因してその前方側外周部に形成された空間と凹部7aとを連通させている。このピストン7の外周面には、充填部材1に対する気密性(シーリング性)を確保するものとして、該充填部材1の内周面に当接する環状突部7eが設けられている。
【0054】
図1,10に示すように、このピストン7は、その凹部7aが移動体6の前端部に外挿されることで、移動体6に対し相対回転可能且つ軸線方向移動可能(所定範囲内を移動可能)に装着されている。これにより、弁座部7b及び弁体部6eは、軸線方向に沿って所定範囲内を移動可能にして互いに係合することとなる。
【0055】
図1に示すように、充填部材1は、内部の充填領域1xに充填した塗布材Mを使用者による操作に従って前端部から吐出する。この充填部材1は、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂やABS樹脂等で成形され、円筒形状を成し、その前端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。開口1aは、軸線方向に対し所定角度で傾斜する傾斜角度面で形成されている。なお、この開口1aは、軸線方向の垂直面で形成するフラット形状とする場合や山形形状とする場合もある。
【0056】
また、充填部材1の外周面には、本体筒2の環状凹凸部2bに軸線方向に係合するための環状凸凹部1bが設けられている。また、充填部材1の外周面において環状凸凹部1bより後側の周方向四等配位置には、軸線方向に延びる突条1gが、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0057】
この充填部材1は、その後側から、本体筒2と移動螺子筒5との間に挿入され、その環状凸凹部1bに本体筒2の環状凹凸部2bが軸線方向に係合すると共に、その突条1gに本体筒2のローレット2aが回転方向に係合することで、本体筒2に軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化されている。また、充填部材1の後端部には、ピストン7が気密に密着するようにして内挿される。つまり、ピストン7は、充填部材1に内挿され、充填部材1に対し気密になるよう密接しつつ軸線方向に摺動可能となっている。
【0058】
さらに、塗布材押出容器100では、本体筒2内において充填部材1の後端面と移動螺子筒5の鍔部54(図7参照)との間に、所定弾性力を有する弾性部材としてのコイルバネ14が同軸で介在するように装着されており、移動螺子筒5が軸線方向後方に付勢されている。これにより、移動螺子筒5が一定量前進して第1の螺合部8の螺合作用が解除されたとき、移動螺子筒5は、第1の螺合部8が螺合復帰するように付勢されることとなる。
【0059】
ちなみに、ここでいう螺合復帰は、第1の螺合部8の雄螺子としての突条56が、雌螺子としての突条41の螺子山の側面に当接するまで戻る段階を意味している(以下、同じ)。コイルバネ14としては、例えば、POMやPP(ポリプロピレン)等の樹脂を利用し一部を切り欠いた円筒形状を射出成形で製造した樹脂バネや、ステンレス製線材をコイル状にしたスプリングを採用することができる。
【0060】
次に、塗布材押出容器100の製造手順の一例について説明する。図11は、塗布材押出容器の製造手順を説明するための図である。
【0061】
図11に示すように、まず、移動体6の前端部をピストン7の凹部7aに内挿し、移動体6に対して所定範囲内を軸線方向移動可能となるようピストン7を装着する。また、移動螺子筒5を移動体6に後側から外挿し、移動螺子筒5の雌螺子53を移動体6の外周面の雄螺子6bに螺合させる。そして、コイルバネ14を移動螺子筒5の周囲に位置するよう該移動螺子筒5に前側から外挿し、仮組品を得る。
【0062】
続いて、回転止筒4を操作筒3の本体部31に前側から外挿し、これを本体筒2に後側から内挿する。また、上記仮組品を本体筒2に前側から内挿し、移動螺子筒5の外周面の突条56に回転止筒4の内周面の突条41を螺合させると共に、操作筒3の軸体31yに移動体6を外挿する。これにより、本体側組立品40を得る。
【0063】
一方、充填部材1の開口1aをシール部材13で塞ぎ逆さにした状態とし、この状態で充填部材1の内部に所定量の溶融塗布材M1をノズル19から吐出する。これにより、充填部材1の先端から後端への途中まで溶融塗布材M1を密着するように充填する(いわゆる直接充填)。続いて、溶融塗布材M1が冷却固化し塗布材Mとなった後、塗布材Mが充填された充填部材1に対して上記本体側組立品40を組み付けるよう装着する。具体的には、上方から本体側組立品40の先端側を外挿し、ピストン7を充填部材1に気密に内挿しながら、本体筒2に充填部材1を係合し装着する。
【0064】
このとき、充填部材1の内周面がピストン7の外周面(特に環状突部7e)に摺接することから、ピストン7には後方側へ作用する摺動抵抗が作用するため、図1に示すように、ピストン7が移動体6に対し後方へ移動し、これにより、弁機構111が開(弁体部6e及び弁座部7bが係合解除状態)となる。そしてその後、シール部材13を外すことで、初期状態の塗布材押出容器100が得られる。
【0065】
ここで、充填部材1と本体側組立品40とを組み付ける際、上記のようにピストン7を充填部材1に気密に密接させていることから、充填部材1内の塗布材M上の空気にあっては、充填部材1内の塗布材Mとピストン7との間にそのまま残留し、充填領域1xの無駄スペースとして多く残ってしまうことが懸念される。その結果、残った空気が充填領域1xの上げ底部分となり、塗布材Mの充填量が低減してしまうことが懸念される。
【0066】
この点、本実施形態では、上述したように、通気部110としての貫通孔7dがピストン7に形成されていると共に、充填部材1及び本体側組立品40の組付時に弁機構111が開とされて貫通孔7dの空気の流通が許容されている。よって、かかる組付時においては、充填部材1内の塗布材M上の空気を、貫通孔7dを通じて凹部7a内へ流入させ、弁機構111を介して容器内の後側へ逃がすことができ、無駄スペースが生じて塗布材Mの充填量が少なくなるのを防止することが可能となる。
【0067】
また、移動体6に溝部6h及び貫通孔6gが形成されていることから、弁機構111を介して逃がした空気については、溝部6h及び貫通孔6gそれぞれを通じて容器外へと積極的に流通される(詳しくは、後述)。
【0068】
なお、溶融塗布材M1の充填量を厳密に制御し、組付後の初期状態において塗布材Mとピストン7との間に空気Aを存在させずにこれらを丁度一致させることは、製造上、極めて困難である。また、溶融塗布材M1を多く充填してしまうと、組付けの際に塗布材Mがピストン7により押し出されて開口1aより無駄に出現してしまうおそれがある。この点、初期状態の塗布材押出容器100では、塗布材Mとピストン7との間に少量の空気Aが存在するように塗布材Mが充填部材1の前端から後端への途中まで充填されているため、組付けの際、塗布材Mがピストン7により押し出されて充填部材1から出現することが防止されている。
【0069】
ちなみに、このように塗布材Mが充填された充填部材1を本体側組立品40に組み付ける構成とすると、軟らかい半固形状の塗布材や細く脆い塗布材や軟質状やジェル状の塗布材であっても充填部材1に安全に保護される。ここで、塗布材Mを例えば軟質状やジェル状のものとすると、充填部材1に密接し易いため、塗布材Mを後退させるのに都合がよい。
【0070】
次に、塗布材押出容器100の動作の一例について説明する。図12は、図1の塗布材押出容器の一部拡大図、図13は図2(a)の塗布材押出容器の一部拡大図、図14は図2(b)の塗布材押出容器の一部拡大図である。
【0071】
[繰出し時]
図1,11に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、充填領域1xに充填された塗布材Mとピストン7との間に少量の空気Aが存在する状態にある。そして、使用者によりキャップCが取り外されて本体筒2と操作筒3とが繰り出し方向である一方向に相対回転されると、回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36に当接して回転方向に係止(強固に係合)され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転する。よって、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、移動螺子筒5の突条56及び回転止筒4の突条41により構成された第1の螺合部8の螺合作用が働き、移動螺子筒5の突条55と充填部材1の突条1gとにより構成された回止め部との協働により、移動螺子筒5が前進する。
【0072】
これと同時に、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、移動螺子筒5の雌螺子53及び移動体6の雄螺子6bにより構成された第2の螺合部9の螺合作用が働き、操作筒3における軸体31yの突条37と移動体6の突条6cとにより構成された回止め部との協働により、移動体6も前進する。すなわち、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進する。
【0073】
これにより、移動体6がピストン7に対し所定量前進し、図2(a),13に示すように、鍔部6aがピストン7の後端面に当接してピストン7を前方に押圧し、ピストン7が前進する。このとき、弁体部6e及び弁座部7bが離間して係合解除され、弁機構111が開となることから、塗布材Mとピストン7との間の空気Aにあっては、ピストン7の貫通孔7dから凹部7a内へと流れ、弁機構111を介して容器内の後側へと良好に逃がされることとなる。その結果、空気Aが直ちに無くされ、塗布材Mがピストン7の前面と密着した状態で前方へ押し出されて前進され(繰り出され)、塗布材Mが開口1aから出現する。
【0074】
なお、弁機構111を介して後側へ逃がされた空気Aは、移動体6の溝部6hを通じて径方向外側に向けて流通され、移動螺子筒5のスリット51(図7参照)を通ると共に、移動体6の貫通孔6gを通じて移動体6の筒内6x内へと流通され、その後、充填部材1と本体筒2との隙間Eから外部へ排出される。
【0075】
続いて、一方向の相対回転が続けられると、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が開とされた状態で移動体6及びピストン7が前進し、塗布材Mが開口1aからさらに押し出されて出現すると共に、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41の前端から外れ、第1の螺合部8の螺合作用が解除され、移動螺子筒5が前進限に達する。
【0076】
そして、一方向の相対回転が引き続き続けられると、螺合復帰するよう第1の螺合部8がコイルバネ14で付勢されながら第2の螺合部9の螺合作用のみが働き、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が開とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに前進し、塗布材Mが開口1aからさらに押し出されて出現し、その後、移動体6及びピストン7が前進限に達することとなる(図3参照)。
【0077】
ちなみに、移動螺子筒5の前進限の状態では、コイルバネ14の縮小の弾性力により移動螺子筒5が後方側へ付勢されることから、繰戻し方向である他方向へ本体筒2と操作筒3とが相対回転された場合、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41における回転方向隣の先端に直ちに進入し、第1の螺合部8が直ちに螺合復帰する。
【0078】
また、第2の螺合部9の螺合作用のみが働き移動体6及びピストン7が前進するときには、螺合解除された第1の螺合部8がコイルバネ14の付勢力で螺合復帰する方向に付勢されていることから、突条41,56同士の係合及び係合解除が繰り返され(つまり、突条41,56が互いに当接したり離れたりするのが繰り返され)、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与され、塗布材Mの押出しが使用者に感知される。このとき、上述したように、突条41が突条56よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音(音量)が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
【0079】
また、移動体6及びピストン7の前進限の状態では、移動体6の突条6cが操作筒3の突条37から外れているものの第2の螺合部9が螺合されたままであることから、第2の螺合部9及び移動螺子筒5を介して移動体6がコイルバネ14で後方に引っ張られる。そのため、かかる前進限の状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転された場合、突条6c,37同士が直ちに係合して回止め部が働き、移動体6及びピストン7が直ちに後退する。
【0080】
[繰戻し時]
一方、図2(b),14に示すように、例えば使用後にあって、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、操作筒3及び回転止筒4に小回転力が加わり、回転止筒4の凸部44の側面44a(図5参照)が操作筒3の凸部36の側面36a(図4参照)に当接して所定係合力で周方向に係合され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転することから、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が後退する。
【0081】
これと同時に、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6も後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退する。
【0082】
このとき、移動体6がピストン7に対して所定量後退し、弁体部6eが弁座部7bに係合してピストン7を後方に引っ張り、ピストン7が後退する。つまり、移動体6によってピストン7に後方側へ作用する引張力が働く。これに併せ、充填部材1の内周面がピストン7の外周面に摺接することから、ピストン7には前方側へ作用する摺動抵抗が働く。よって、弁体部6e及び弁座部7bが互いに押し付けられるよう動作し、弁体部6eと弁座部7bとが気密に係合する。
【0083】
ここでは、上記のように弁座部7bが傾斜面7cを有することから、弁座部7bの傾斜面7cが弁体部6eにくさび接触するよう係合するため、弁体部6eと弁座部7bとが互いに強固に気密化される。その結果、弁機構111が閉となって貫通孔7dの空気の流通が閉となる、すなわち、貫通孔7dから凹部7aへの空気の流通が遮断される。
【0084】
従って、このようにピストン7及び移動体6が後退すると、充填部材1内の減圧作用(密閉状態を保つ作用)が良好且つ確実に発揮され、塗布材Mがピストン7の前面と気密に密着した状態でピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されて後退され(繰り戻され)、開口1aから没入する。
【0085】
続いて、他方向の相対回転が続けられると、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が閉とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに後退し、充填部材1内の減圧作用によりピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されてさらに後退すると共に、移動螺子筒5の鍔部54が回転止筒4の前端面に当接し、第1の螺合部8の螺合作用が停止され、移動螺子筒5が後退限に達する。
【0086】
続いて、第1の螺合部8における螺合作用の停止前よりも大きい操作回転力で本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転され、操作筒3及び回転止筒4に大回転力が加わると、凸部44が凸部36の側面36aを駆け上がるように摺動して凸部36を乗り越え、操作筒3と回転止筒4とが相対回転(いわゆる「空回転」)される。よって、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が閉とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに後退し、充填部材1内の減圧作用によりピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されてさらに後退する。
【0087】
そして、停止前よりも大きい操作回転力によって他方向の相対回転が続けられると、弁機構111において貫通孔7dの空気の流通が閉とされた状態で移動体6及びピストン7がさらに後退し、充填部材1内の減圧作用によりピストン7の後退に従って塗布材Mが充填部材1内で引き戻されてさらに後退すると共に、移動体6の後端が操作筒3の本体部31の底面に達し、移動体6及びピストン7が後退限に達することとなる。
【0088】
ちなみに、第2の螺合部9の螺合作用のみで移動体6がさらに後退する際に回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36を乗り越えるとき、クリック感が生じる。すなわち、移動体6がさらに後退するに際して、凸部44,36同士の係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与されることとなる。これにより、相対回転1回転当り8回のクリック感が生じ、ピストン7及び移動体6の後退が感知される。このとき、上述したように、凸部44が凸部44よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
【0089】
また、移動体6及びピストン7の後退限の状態では、その後に他方向に相対回転されて過大な回転力が第2の螺合部9に加わっても、スリット51によって前端部5xが拡開されて第2の螺合部9の螺合作用が解除される。
【0090】
[保管時]
他方、保管時(つまり、本体筒2と操作筒3とが相対回転されずにピストン7が停止しているとき)においては、移動体6による引張力及び摺動抵抗がピストン7に作用していないことから、弁体部6e及び弁座部7bが係合解除され、若しくは非気密に接触されるため、弁機構111が開となって貫通孔7dの空気の流通が開となる。
【0091】
以上、本実施形態の塗布材押出容器100では、ピストン7の前進時において、弁機構111によって貫通孔7dにおける空気の流通が開とされることから、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすことができる。そのため、かかる空気Aによってピストン7の前進に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となり、例えば、空気Aの高圧縮性に起因してピストン7の前進と塗布材Mの出没との間にタイムラグが生じるのを抑制し、塗布材Mを精度よく押し出すことができる。一方、ピストン7の後退時において、弁機構111によって貫通孔7dにおける空気の流通が閉とされることから、ピストン7と塗布材Mとの間の密閉状態を好適に保つことができる。そのため、減圧による吸引作用を確実に発揮させることが可能となり、塗布材Mを精度よく引き戻すことができる。
【0092】
また、上述したように、前進時に塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がすことができるため、空気Aの温度変化により塗布材Mが開口1aから意図せず出没又は没入してしまうのを抑制することが可能となる。その結果、塗布材押出容器100に求められる耐久性(例えば、周囲環境5℃〜40℃で製品異常が生じないこと等)を、確実に確保することができる。
【0093】
さらに、上述したように、塗布材押出容器100の組付時に弁機構111により貫通孔7dの空気の流通が開とされているため、空気Aで充填領域1xが上げ底されるのを抑制でき、充填部材1内に無駄スペースが生じて塗布材Mの充填量が少なくなるのを防止することも可能となる。
【0094】
ところで、一般的に、塗布材押出容器100では、例えば、極端な温度低下によって塗布材Mが収縮すると、充填部材1内における塗布材Mの周囲に隙間が形成されてしまい、この隙間を介して、ピストン7の後退時に塗布材Mとピストン7との間に外部から空気が流入される場合がある。このように何らかの理由によって塗布材Mとピストン7との間に空気が流入される場合でも、本実施形態にあっては、ピストン7の前進時に空気Aを逃がすことができるため、その後の温度安定化した通常状態でのピストン7の後退時には、吸引作用を確実に発揮することができる。
【0095】
また、本実施形態では、上述したように、塗布材押出容器100の保管状態時であってピストン7が停止しているとき、弁機構111が貫通孔7dの空気の流通を開として塗布材Mとピストン7との間の空気Aを逃がしていることから、例えば空気Aの温度上昇による膨張や長期保管による温度変化の連続等のために塗布材Mが意図せず出没してしまうのを防止することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態では、上述したように、移動体6の鍔部6aの前面に、径方向に沿って延びる溝部6hが形成されている。よって、ピストン7の前進時に弁機構111が開とされている状態で鍔部6aがピストン7の後端面に当接しているとき、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを溝部6hを介して移動体6の径方向外側へと積極的に逃がすことができる。
【0097】
また、本実施形態では、上述したように、移動体6の円筒部6dに貫通孔6gが形成されている。そのため、ピストン7の前進時に弁機構111が開とされている状態において、塗布材Mとピストン7との間の空気Aを貫通孔6gを介して移動体6内の空間へと積極的に逃がすことができる。
【0098】
また、本実施形態では、上述したように、通気部110としての貫通孔7dが、ピストン7の前方側外周部に形成された空間と凹部7aとを連通している。そのため、塗布材Mとピストン7との間において特に残り易い部分の空気Aをも逃がすよう流通させることができる。なお、通気部は、ピストン7の前面の軸中心位置に軸方向に延在する貫通孔であってもよく、通気部110の構成及び数は、例えばピストン7の形状、塗布材Mの粘性等の性質、等に応じて適宜設定することが可能である。
【0099】
また、本実施形態のように移動体6が有底筒状であると、移動体6を樹脂成形する際、内部ピンが後端部側で片持ち状に支持されるため、撓みが発生することが懸念される。この点、本実施形態では、移動体6の前端部側に貫通孔6gが形成されていることから、移動体6の樹脂成形の際に貫通孔6gを利用して内部ピンを前端部側で支持できるため、撓み防止ひいては成形精度向上が可能となる。
【0100】
ちなみに、本実施形態では、次の作用効果も奏される。すなわち、上述したように、第2の螺合部9のみで移動体6が前進又は後退するとき、使用者にクリック感が付与される。これと共に、突条41が突条56よりも軟らかくされているため、かかるクリック感のクリック音を小さくしつつ(緩和しつつ)該クリック音を重厚なものとすることができる。よって、クリック音を高級感溢れる付加価値の高いものにすることができ、高級感を有するクリック感を生じさせることが可能となる。
【0101】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0102】
図15は本発明の第2実施形態に係る塗布材押出容器のピストン後退時の状態を示す一部拡大縦断面図、図16は図15の塗布材押出容器の移動体の一部を示す斜視図、図17は図16のXVII−XVII線に沿っての断面斜視図である。図15に示すように、本実施形態の塗布材押出容器200が上記第1実施形態と異なる点は、移動体6(図1参照)に代えて移動体206を備えた点である。
【0103】
図16,17に示すように、移動体206は、弁体部201を備えている。弁体部201は、弁機構111を構成するものであり、円筒部6dの径よりも大径の円筒状を呈している。弁体部201の外周面において円筒部6d側は、後方に行くに従って縮径するよう傾斜する傾斜面201aとなっている。つまり、弁体部201は、傾斜面201aを介して円筒部6dと連続している。この傾斜面201aは、弁座部7bの傾斜面7cと一層気密に係合させるべく、該傾斜面7cと等しい傾斜角度を有している。また、円筒部6dは、その内部に円板状の仕切部202を有しており、これにより、移動体206の筒孔206xがその前端で密閉されている。
【0104】
鍔部6aには、上記溝部6h及び上記貫通孔6gに対応するものとして、径方向に延在する貫通孔204が形成されている。貫通孔204は、ピストン7の前進時で弁機構111が開のときに空気A(図1参照)を流通させるためのものであり、鍔部6aの外周面から筒孔206xの内周面に至ると共に、鍔部6aの前面に開口している。この貫通孔204は、二平面部6f,6fに連続すると共に、互いに対向するように一対設けられている。このような移動体206にあっては、インジェクション成形で形成される場合、弁体部201の筒内側の内型(コア部)が先に離型された後、弁体部201及び円筒部6dの外側の外型(キャビティ部)が無理抜き等により離型され、これにより、その傾斜面201aにパーティングラインが無いものとなっている。
【0105】
以上のように構成された本実施形態の塗布材押出容器200では、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると、移動体6の前進によって鍔部6aがピストン7の後端面に当接してピストン7を前方に押圧し、ピストン7が前進する。このとき、弁体部6e及び弁座部7bが離間して係合解除され、弁機構111が開となることから、塗布材Mとピストン7との間の空気Aにあっては、ピストン7の貫通孔7dから凹部7aへと流れ、弁機構111を介して容器内の後側へと良好に逃がされる。
【0106】
そして、弁機構11を介して後側へ逃がされた空気Aは、移動体206の貫通孔204を通じて径方向外側に向けて流通され、移動螺子筒5のスリット51(図7参照)を通って、充填部材1と本体筒2との隙間Eから外部へ排出されると共に、この貫通孔204を通じて移動体6の筒孔6x内へと流通される。
【0107】
一方、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると、図15に示すように、移動体206の後退によって弁体部201がピストン7の弁座部7bに係合してピストン7を後方に引っ張り、ピストン7が後退すると共に、ピストン7に前方側への摺動抵抗が働く。よって、弁体部201及び弁座部7bが互いに押し付けられるよう動作し、弁体部201と弁座部7bとが気密に係合する。
【0108】
ここでは、上記のように弁座部7bが傾斜面7cを有すると共に弁体部201が傾斜面201aを有することから、傾斜面同士の接触となるため、弁体部201と弁座部7bとが互いに強固に気密化される。その結果、弁機構111が閉となって貫通孔7dにおける空気の流通が閉となる、すなわち、貫通孔7dから凹部7aへの空気の流通が遮断される。また、上記のように移動体206は傾斜面201aにパーティングラインが存在しないよう形成されることから、傾斜面7c,201aを互いに精度よく当接させることができるため、弁機構111が閉のときに弁体部201と弁座部7bとを一層気密化させることが可能となる。
【0109】
以上、本実施形態の塗布材押出容器200でも、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことが可能となるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、上述したように、弁機構111が閉のときにおいて、弁座部7bが傾斜面7cに弁体部201の傾斜面201aが当接される(傾斜面同士の接触となる)ため、弁機構111の気密効果を高めることができる。
【0110】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0111】
図18は、本発明の第3実施形態に係る塗布材押出容器の保管時の状態を示す一部拡大縦断面図である。図18に示すように、本実施形態の塗布材押出容器300が上記第1実施形態と異なる点は、コイルバネ214をさらに備えた点である。
【0112】
コイルバネ214は、軸線方向に所定弾性力を有する弾性部材であり、ピストン7の凹部7a内に配設され、この凹部7aの底部と弁体部6eとの間に介在されている。コイルバネ214は、保管時にて移動体6がピストン7に対し後方へ移動するように移動体6を軸線方向後方へ付勢する。換言すると、保管時にてピストン7が移動体6に対し前方へ移動するようにピストン7を軸線方向前方へ付勢する。ここでのコイルバネ214の所定弾性力は、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに移動体6がピストン7に対して前進可能な弾性力に設定されている。
【0113】
以上、本実施形態の塗布材押出容器300でも、塗布材を精度よく押し出す及び引き戻すことが可能となるという上記作用効果が奏される。
【0114】
また、本実施形態では、保管時において、コイルバネ214によって移動体6がピストン7に対し後方へ移動されることから、弁体部6e及び弁座部7bが互いに押し付けられるよう動作するため、弁体部6eと弁座部7bとが気密に係合し、弁機構111が閉となって貫通孔7dの空気の流通が閉となる。従って、保管時において、塗布材Mとピストン7との間の密閉状態を保つことができるため、塗布材Mの揮発を防止することが可能となる。なお、塗布材Mを長く維持させるために該塗布材Mに揮発性の溶材(シクロメチコン、メチルトリメチコン、イソドデカン、イソヘキサデカン、水等)が多く含まれる場合、かかる効果は顕著となる。
【0115】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る塗布材押出容器は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0116】
例えば、上記実施形態では、容器前部(本体筒2)と容器後部(操作筒3)とを相対回転してピストン7を前進及び後退させたが、容器中間部等の他の部位を相対回転してピストン7を前進及び後退させたり、ノック作用によりピストン7を前進及び後退させたり等してもよく、要は、本発明は、押出部が前進及び後退する塗布材押出容器であればよい。
【0117】
また、上記実施形態では、本体筒2と操作筒3とが一方向/他方向に相対回転されると、第1の螺合部8の螺合作用が働くと同時に第2の螺合部9の螺合作用が働くように構成したが、第1の螺合部8の螺合作用のみが働いた後、第2の螺合部8の螺合作用のみが働いように構成してもよい。また、本発明は、第1又は第2の螺合部8,9の何れか一方のみを有していてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、弁機構111として弁体部6e,201及び弁座部7bを備えているが、弁機構111はこれに限定されるものではなく、押出部の前進時に通気部における空気の流通を開とすると共に押出部の後退時に通気部における空気の流通を閉とする構成を有していればよい。
【0119】
なお、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。
【0120】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…充填部材、6…移動体、6e,201…弁体部、6a…鍔部、6g…貫通孔、6h…溝部、7…ピストン(押出部)、7a…凹部、7b…弁座部、7d…貫通孔(通気部)、100,200…塗布材押出容器、110…通気部、111…弁機構、204…貫通孔(溝部)、A…空気、M…塗布材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材が充填される充填部材と、前記充填部材に内挿され気密になるよう前記充填部材に密接する押出部と、を具備し、前記押出部が前進及び後退する塗布材押出容器であって、
前記充填部材内における前記塗布材と前記押出部との間の空気を逃がすよう流通させる通気部と、
前記押出部の前進時に前記通気部における空気の流通を開とすると共に、前記押出部の後退時に前記通気部における空気の流通を閉とする弁機構と、を備えたことを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記弁機構は、前記押出部の停止時に前記通気部における前記空気の流通を開とすることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記弁機構は、前記押出部の停止時に前記通気部における前記空気の流通を閉とすることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記押出部を前進及び後退させる移動体をさらに備え、
前記押出部は、後方側に開口する凹部を有し、
前記通気部は、前記押出部の前方側と前記凹部内とを連通させる貫通孔であり、
前記移動体は、その前端部が前記凹部に内挿され、
前記弁機構は、前記押出部の前記凹部の内面に設けられた弁座部と、前記移動体の前記前端部に設けられた弁体部と、を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記移動体は、前方側が閉塞された有底筒形状を有しており、前記押出部の前進時に前記押出部の後端面に当接する鍔部を含み、
前記鍔部の前面には、径方向に沿って延びる溝部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の塗布材押出容器。
【請求項6】
前記移動体の前記前端部の外面には、前記押出部の前進時に前記空気を前記移動体内に流通させる貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項5記載の塗布材押出容器。
【請求項1】
塗布材が充填される充填部材と、前記充填部材に内挿され気密になるよう前記充填部材に密接する押出部と、を具備し、前記押出部が前進及び後退する塗布材押出容器であって、
前記充填部材内における前記塗布材と前記押出部との間の空気を逃がすよう流通させる通気部と、
前記押出部の前進時に前記通気部における空気の流通を開とすると共に、前記押出部の後退時に前記通気部における空気の流通を閉とする弁機構と、を備えたことを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記弁機構は、前記押出部の停止時に前記通気部における前記空気の流通を開とすることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記弁機構は、前記押出部の停止時に前記通気部における前記空気の流通を閉とすることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記押出部を前進及び後退させる移動体をさらに備え、
前記押出部は、後方側に開口する凹部を有し、
前記通気部は、前記押出部の前方側と前記凹部内とを連通させる貫通孔であり、
前記移動体は、その前端部が前記凹部に内挿され、
前記弁機構は、前記押出部の前記凹部の内面に設けられた弁座部と、前記移動体の前記前端部に設けられた弁体部と、を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記移動体は、前方側が閉塞された有底筒形状を有しており、前記押出部の前進時に前記押出部の後端面に当接する鍔部を含み、
前記鍔部の前面には、径方向に沿って延びる溝部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の塗布材押出容器。
【請求項6】
前記移動体の前記前端部の外面には、前記押出部の前進時に前記空気を前記移動体内に流通させる貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項5記載の塗布材押出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−244929(P2011−244929A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119446(P2010−119446)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】
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