説明

塗布液および樹脂層付きキャリア材料

【課題】無機充填材を含む塗布液を基材に積層しても、樹脂のはじきや、塗りむらの発生することのない塗布液および樹脂層付きキャリア材料を提供すること。
【解決手段】金属箔または樹脂フィルムからなるキャリア材料の、一方の面側に樹脂層を形成するための無機充填材を含む塗布液であって、η20/η100で表されるチキソ指数Tが、0.8以上、1.3以下であり、η50/η100で表されるチキソ指数Tが、0.8以上、1.3以下であり、η/η100で表されるチキソ指数Tが、0.6以上、1.0以下であり、かつ、T<TおよびT<Tであり、また、T/Tが、0.9以上、1.1以下であることを特徴とする塗布液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液および樹脂層付きキャリア材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層プリント回路板を製造する場合、回路が形成された内層回路基板上にガラスクロス基材にエポキシ樹脂を含浸して半硬化させたプリプレグシートを1枚以上重ね、更にその上に銅箔を重ね熱板プレスにて加圧一体成形するという工程を経ていた。この方法では、多層積層プレス時に、ガラスクロス入りプリプレグと銅箔とを順次セットし、これを複数回繰り返している。そのため、それぞれのセット工数、および多工程による異物の混入などの恐れがあった。
【0003】
近年、これらの問題を解決するため、既存のプレス設備を用いガラスクロスがないRCC(Resin Coated Copper)といわれている銅箔に直接絶縁樹脂層を積層した材料を、多層プリント回路板の製造に用いられるようになり、薄型化された多層プリント配線板の製造が可能となったことから、近年、ますます需要が増えてきている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、搭載部品との半田接続信頼性をより向上させるために、多層プリント配線板の低線膨張率化が検討されている。低線膨張性を付与する手法のひとつとして、基材に積層させる樹脂組成物に無機充填材を配合する手法が挙げられる(例えば、特許文献2)。しかし、無機充填材の添加量を増やすことにより、樹脂組成物を含む塗布液中の無機充填材の分散性が悪くなり、例えば基材として、銅箔に積層したとき分散性の悪い個所で、樹脂のはじきや、塗りむらが発生することがあった。
【特許文献1】特開2000−244114号公報
【特許文献2】特開2005−290029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無機充填材を含む塗布液を基材に積層しても、樹脂のはじきや、塗りむらの発生することのない塗布液および樹脂層付きキャリア材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布液は、金属箔または樹脂フィルムからなるキャリア材料の、一方の面側に樹脂層を形成するための無機充填材を含む塗布液であって、η20/η100で表されるチキソ指数Tが、0.8以上、1.3以下であり、η50/η100で表されるチキソ指数Tが、0.8以上、1.3以下であり、η/η100で表されるチキソ指数Tが、0.6以上、1.0以下であり、かつ、T<TおよびT<Tであり、また、T/Tが、0.9以上、1.1以下であることを特徴とする。
η:25℃におけるE型粘度計による回転数5rpmの粘度
η20 :25℃におけるE型粘度計による回転数20rpmの粘度
η50 :25℃におけるE型粘度計による回転数50rpmの粘度
η100:25℃におけるE型粘度計による回転数100rpmの粘度
【0007】
この塗布液においては、無機充填材を含んでいても回転粘度計で回転数を変えても粘度変化の小さい(チキソ性のない)塗布液を提供できる。これにより、ニュートニアン流動性に近い特性をもつことにより、わずかな剪断力でも流動性を生じるので、塗りむらや、はじきのない塗布液とすることができる。
【0008】
また、前記塗布液のレーザー回折・散乱法による平均粒子径は、0.8μm以上、5μm以下であり、さらに、前記塗布液の、レーザー回折・散乱法による粒子径0.2μm〜10μm以下の間に存在する粒子は、前記塗布液全体の98%以上である塗布液としてもよい。これにより、無機充填材が、塗布液中にある範囲の粒度分布で均一に分散しているため、ほんのわずかな剪断力でも流動性を生じるようになり、塗りむらや、はじきのない塗布液とすることができる。
【0009】
また、本発明で得られた塗布液を、キャリア材料の一方の面側に樹脂層として形成した樹脂層付キャリア材料を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無機充填材を含む塗布液を基材に積層しても、樹脂のはじきや、塗りむらの発生することのない塗布液および樹脂層付きキャリア材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の塗布液および樹脂層付きキャリア材料について、説明する。
【0012】
本発明の塗布液は、金属箔または樹脂フィルムからなるキャリア材料の、一方の面側に樹脂層を形成するための無機充填材を含む塗布液であって、η20/η100で表されるチキソ指数Tが、0.8以上、1.3以下であり、η50/η100で表されるチキソ指数Tが、0.8以上、1.3以下であり、η/η100で表されるチキソ指数Tが、0.6以上、1.1以下である。さらに、T<TおよびT<Tであり、また、T/Tが、0.9以上、1.1以下である。
η:25℃におけるE型粘度計による回転数5rpmの粘度
η20 :25℃におけるE型粘度計による回転数20rpmの粘度
η50 :25℃におけるE型粘度計による回転数50rpmの粘度
η100:25℃におけるE型粘度計による回転数100rpmの粘度
【0013】
この塗布液においては、無機充填材を含んでいても回転粘度計で回転数を変えても粘度変化の小さい(チキソ性のない)塗布液とすることができる。これにより、ニュートニアン流動性に近い特性をもつことにより、わずかな剪断力でも流動性を生じるので、キャリア材料の一面側に樹脂層を形成する際、塗りむらや、はじきのない塗布液とすることができる。このような、性状は、塗布液中に無機充填材を含む樹脂材料が均一に分散しているからと推察される。
【0014】
本発明の塗布液は、η/η100で表されるチキソ指数Tが、1より小さいことが好ましい。これにより、さらに、低い剪断力の塗布液となり、塗りむらやはじきのない塗布液とすることができる。
【0015】
本発明の塗布液のレーザー回折・散乱法による平均粒子径は、0.8μm以上、5μm以下であることが好ましく、1μm〜2μmであることがさらに好ましい。また、レーザー回折・散乱法による粒子径0.2μm〜10μmm以下の間に存在する粒子は、塗布液全体の98%以上であることが好ましい。この範囲内にあれば、無機充填材が、塗布液中にある範囲の粒度分布で均一に分散しているため、ほんのわずかな剪断力でも流動性を生じるようになり、塗りむらや、はじきのない塗布液とすることができる。
【0016】
次に、塗布液を構成する樹脂成分について説明する。
【0017】
本発明の樹脂成分として、エポキシ樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂などを挙げることができる。この中でも特にフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。
【0018】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、無機充填材を除く前記樹脂成分全体の10〜90重量%が好ましく、特に25〜75重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると樹脂組成物の硬化性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張性、耐熱性が低下する場合がある。
【0019】
本発明の樹脂成分として、シアネート樹脂を含んでもよい。シアネート樹脂としては、特に限定はされないが、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これにより、耐熱性を向上させることができる。
【0020】
さらに前記シアネート樹脂は、これをプレポリマー化したものも用いることができる。すなわち、前記シアネート樹脂を単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応などにより、例えば3量化することで得られるものであり、樹脂組成物の成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いた場合、良好な成形性、流動性を発現できる。
【0021】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、無機充填材を除く、前記樹脂成分全体の10〜90重量%が好ましく、特に25〜75重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると絶縁樹脂層を形成するのが困難となる場合があり、前記上限値を超えると絶縁樹脂層の強度が低下する場合がある。
【0022】
また、本発明の樹脂成分として、エポキシ樹脂およびシアネート樹脂を含んでいてもよい。エポキシ樹脂と、シアネート樹脂は、上述した樹脂を用いることができる。それぞれの樹脂の含有量は、特に限定はされないが、エポキシ樹脂100重量部としたとき、50重量%以上、300重量%以下が好ましい。
【0023】
本発明の塗布液は無機充填材を含む。無機充填材としては、特に限定されないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらの中でも特に、シリカが好ましく、溶融シリカが低熱膨張性に優れる点で好ましい。また、破砕状、球状のシリカが存在するが、樹脂組成物の溶融粘度を下げる点において、球状シリカが好ましい。
【0024】
前記球状シリカは、さらに予め表面処理する処理剤で処理されたものであることが好ましい。前記処理剤は、官能基含有シラン類、環状オリゴシロキサン類、オルガノハロシラン類、およびアルキルシラザン類からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物であることが好ましい。
【0025】
また、前記処理剤の中でも、オルガノハロシラン類およびアルキルシラザン類を用いて球状シリカの表面処理することは、シリカ表面を疎水化するのに好適であり、前記樹脂組成物中における球状シリカの分散性に優れる点において好ましい。通常の官能基含有シラン類と、前記オルガノハロシラン類またはアルキルシラザン類の組合せで使用する場合、いずれを先に表面処理に用いても良いが、オルガノハロシラン類またはアルキルシラザン類を先に分散させる方が、球状シリカ表面に有機物親和性を与え、次の官能基含有シラン類の表面処理を効果的にすることができるので好ましい。ここで用いる通常の官能基含有シラン類と、前記オルガノハロシラン類またはアルキルシラザン類の使用量の比は、50
0/1〜50/1(重量比)であることが好ましい。前記範囲を外れると機械的強度が低下する場合がある。
【0026】
前記官能基含有シラン類は、特に限定されないが、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、3−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、および3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカトプロピルトリエトキシシラン、および3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、およびN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、およびビニルトリクロロシランなどのビニルシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、および3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイドシラン、(5-ノルボルネン-2-イル)トリメトキシシラン、(5-ノルボルネン-2-イル)トリエトキシシラン、および(5-ノルボルネン-2-イル)エチルトリメトキシシランなどの(5-ノルボルネン-2-イル)アルキルシラン、およびフェニルトリメトキシシランなどのフェニルシランなどを挙げることができる。
【0027】
前記環状オリゴシロキサン類は、特に限定されないが、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オリタメチルシクロテトラシロキサンなどを挙げることができる。
【0028】
前記オルガノハロシラン類は、特に限定されないが、例えばトリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシランおよびメチルトリクロロシランなどを挙げることができる。これらの中で、ジメチルジクロロシランがより好ましい。
【0029】
前記アルキルシラザン類は、特に限定されないが、例えばヘキサメチルジシラザン、1,3 −ジビニル1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザンおよびへキサメチルシクロトリシラザンなどを挙げることができる。これらの中でヘキサメチルジシラザンがより好ましい。
【0030】
前記球状シリカを予め表面処剤を用い処理する方法は、公知の方法により行うことができる。例えば、球状シリカをミキサーに入れ、窒素雰囲気下で、撹拌しながら前記処理剤を噴霧し、所定温度で一定時間保持することにより行うことができる。前記噴霧する処理剤は予め溶剤に溶かしておいても良い。また、球状シリカと処理剤とをミキサーに入れ、さらに溶剤を添加し撹拌したり、シリカ表面のシラノールとカップリング剤の反応を促進するために、加温したり、少量の水を添加したり、酸やアルカリを用いることもできる。
【0031】
前記処理時の温度は、処理剤の種類によるが、処理剤の分解温度以下で行うことが必要である。また、処理温度が低すぎると処理剤と球状シリカの結合力が低く、処理の効果が得られない。よって処理剤にあわせた適切な温度で処理を行う必要がある。更に、保持時間は、処理剤の種類または処理温度により適宜調製できる。
【0032】
前記無機充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01〜5.00μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜2.0μmである。無機充填材の平均粒子径が前記下限値未満であると、本発明の樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製する際に、樹脂ワニスの粘度が高くなるため、樹脂フィルム付きまたは、金属箔付き絶縁樹脂シートを作製する際の作業性に影響を与える場合がある。一方、前記上限値を超えると、樹脂ワニス中で無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。無機充填材の平均粒子径を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0033】
また前記無機充填材は、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いることもできるし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いることができる。さらに平均粒子径が単分散及び/または、多分散の無機充填材を1種類または2種類以上とを併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0034】
前記無機充填材の含有量は、前記樹脂成分全体の40〜85重量%であれば、硬化物の線熱膨張係数を、15ppm〜21ppmに調製することができる。さらに好ましくは無機充填材の含有量が55〜75重量%とすることで、低吸水性を付与する効果が発現できる。
【0035】
前記予め表面処理された球状シリカの含有量は、全無機充填材中の5〜50重量%であることが好ましい。これにより成形性および機械強度に優れる。前記下限値未満では、機械強度が低下する恐れがある。また、前記上限値より多いと、無機充填材が凝集し成形性が低下する恐れがある。
【0036】
本発明の塗布液の、懸滴法による表面張力が、25mN/m以上、50mN/m以下であってもよい。
【0037】
次に、樹脂層付きキャリア材料について説明する。
本発明の塗布液は、無機充填材を含有する。塗布液を構成する樹脂成分は、エポキシ樹脂、シアネート樹脂を含んでいてもよい。
【0038】
前記無機充填材と、樹脂成分を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエ
ン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール等の有機溶剤中で、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶解、混合、撹拌して塗布液を作製する。
【0039】
前記塗布液中の樹脂成分の含有量は、特に限定されないが、45〜85重量%が好ましく、特に55〜75重量%が好ましい。
【0040】
次に前記樹脂ワニスを、各種塗工装置を用いて、樹脂フィルム上または金属箔上に塗工した後、これを乾燥する。または、塗布液をスプレー装置により樹脂フィルム若しくは金属箔に噴霧塗工した後、これを乾燥する。これらの方法により樹脂層付き樹脂フィルムまたは金属箔を作製することができる。
前記塗工装置は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターおよびカーテンコーターなどを用いることができる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター、およびコンマコーターを用いる方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁樹脂層の厚みを有する樹脂層付き樹脂フィルムまたは金属箔を効率よく製造することができる
【0041】
図1は、本発明の樹脂層付き樹脂フィルム(図1(a))または樹脂層付き金属箔(図1(b))の一例を模式的に示す断面図である。樹脂層付き樹脂フィルム1または樹脂層付き金属箔2は、前記の塗布液から得られた樹脂層で構成される絶縁樹脂層3を、樹脂フィルム4または金属箔5上に積層してなるものである。前記樹脂層で構成される絶縁樹脂層は、樹脂層に「はじき」や「塗りスジ」のない樹脂層となり、回路段差の埋め込み性、および埋め込み後の平坦性、およびレーザー加工性に優れる。
【0042】
前記樹脂層付き樹脂フィルム1または樹脂層付き金属箔2の絶縁樹脂層3の厚さは、特に限定されないが、1〜60μmが好ましく、特に5〜40μmが好ましい。絶縁樹脂層の厚さは、絶縁信頼性を向上させる上で前記下限値以上が好ましく、多層配線板における目的の一つである薄膜化を達成する上で前記上限値以下が好ましい。これより、多層プリント配線板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適な絶縁樹脂層厚みを確保することができる。
【0043】
前記樹脂フィルムは、絶縁樹脂層を積層して用いるため積層時の取扱いが容易であるものを選択することが好ましい。また、樹脂フィルム付き絶縁樹脂シートを内層回路に積層後、樹脂フィルムを剥離することから、内層回路板に積層後、剥離が容易であるものであることが好ましい。したがって、前記樹脂フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることが好ましい。これら樹脂フィルムの中でも、ポリエステルで構成される樹脂フィルムが最も好ましい。これにより、絶縁樹脂層3から適度な強度で剥離することが容易となる。
金属箔は、前記樹脂フィルム同様、内層回路に金属箔付き絶縁樹脂シートを積層後、剥離して用いても良いし、また、金属箔をエッチングし導体回路として用いても良い。その点において、銅やアルミニウムを用いることが好ましい。前記樹脂フィルムまたは金属箔の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。金属箔または樹脂フィルムの厚さが前記範囲内であると、取扱いが容易で、また絶縁樹脂層の平坦性に優れる。
【0044】
以下、本発明の塗布液および樹脂層付きキャリア材料の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
下記の原料を、表1に示した量(重郎部)で配合し塗布液を得た。
(1)ノボラック型シアネート樹脂:ロンザジャパン(株)製、プリマセットPT−30、重量平均分子量約700
(2)ビスフェノール型シアネート樹脂:旭化成エポキシ(株)社製AroCyB−30
(3)ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂:日本化薬(株),NC−3000H、エポキシ当量275
(4)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業社製「エピクロンN−690」エポキシ当量210
(5)フェノキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製、YX−8100H30、重量平均分子量30000)
(6)イミダゾール:2−エチル−4−メチルイミダゾール
(7)エポキシシラン型カップリング剤:GE東芝シリコーン(株)製,A−187
(8)溶融球状シリカ:(株)アドマテックス社製 球状シリカ、SO−25R、平均粒径0.5μm
(9)溶媒:メチルエチルケトン
【0046】
【表1】

【0047】
得られた塗布液を、銅箔(厚さ0.018mm、古河サーキットフォイル(株)製に樹脂厚さが40μmとなるように塗工し、120℃の乾燥機で10分間乾燥させ金属箔つき樹脂フィルムを得た。
得られた金属箔つき樹脂フィルムについて、以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
(1)η20/η100で表されるチキソ指数T
η50/η100で表されるチキソ指数T
η/η100で表されるチキソ指数T
/T
η:25℃におけるE型粘度計による回転数5rpmの粘度
η20 :25℃におけるE型粘度計による回転数20rpmの粘度
η50 :25℃におけるE型粘度計による回転数50rpmの粘度
η100:25℃におけるE型粘度計による回転数100rpmの粘度
(2)表面張力 懸滴法
(3)平均粒子系 レーザー回折・散乱法による
(4)塗りむら、スジ:樹脂フィル面を目視にて観察し、塗りむら、スジの発生状況を観察した。
塗りむら、スジが認められない:○、若干の発生あり:△、発生あり:×
【0049】
【表2】

【0050】
表2からもあきらかなように、実施例1ないし8は、塗工した樹脂面に塗りむら塗スジのない金属箔つき樹脂フィルムが得られた。また、例えば、塗布液を調整後数日放置し、無機充填材や樹脂成分を均一化することにより実験的に確かめることができた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】樹脂層付き樹脂フィルムまたは樹脂層付き金属箔の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 樹脂層付き樹脂フィルム
2 樹脂層付き金属箔
3 絶縁樹脂層
4 樹脂フィルム
5 金属箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔または樹脂フィルムからなるキャリア材料の、一方の面側に樹脂層を形成するための無機充填材を含む塗布液であって、
η20/η100で表されるチキソ指数Tが、
0.8以上、1.3以下であり、
η50/η100で表されるチキソ指数Tが、
0.8以上、1.3以下であり、
η/η100で表されるチキソ指数Tが、
0.6以上、1.1以下であり、
かつ、T<TおよびT<Tであり、また、T/Tが、0.9以上、1.1以下であることを特徴とする塗布液。
η:25℃におけるE型粘度計による回転数5rpmの粘度
η20 :25℃におけるE型粘度計による回転数20rpmの粘度
η50 :25℃におけるE型粘度計による回転数50rpmの粘度
η100:25℃におけるE型粘度計による回転数100rpmの粘度
【請求項2】
前記チキソ指数Tは、1より小さい請求項1に記載の塗布液。
【請求項3】
懸滴法による表面張力が、25mN/m以上、50mN/m以下である請求項2に記載の塗布液。
【請求項4】
前記塗布液のレーザー回折・散乱法による平均粒子径は、0.8μm以上、5μm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布液。
【請求項5】
前記塗布液は、レーザー回折・散乱法による粒子径0.2μm〜10μm以下の間に存在する粒子は、前記塗布液全体の98%以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布液。
【請求項6】
前記塗布液を構成する樹脂成分は、エポキシ樹脂を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の塗布液。
【請求項7】
前記塗布液を構成する樹脂成分は、シアネート樹脂を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の塗布液。
【請求項8】
前記無機充填材の含有量は、前記樹脂成分に対して40重量部以上、85重量部以下である請求項6または7に記載の塗布液。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかで得られた塗布液を、キャリア材料の一方の面側に樹脂層として形成した樹脂層付キャリア材料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−57527(P2009−57527A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228509(P2007−228509)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】