塗布用固形物の塗布具
【課題】塗布用固形物3を自動的に繰り出すことが可能であると共に、適度に厚みを持たせた塗布を行うことが可能である棒状固形物の塗布具1を提供する。
【解決手段】外筒2に塗布用固形物3を収容し、塗布用固形物3の中央部に外筒2内へ収容した摺動体7における摺動体本体7bの前方へ形成した軸部7aを挿通し、押動体6を内筒9に対して前進可能後退不能とすると共に、摺動体7を押動体6に対して後退可能前進不能とし、外筒2の前端開口部2aから突出する摺動体7の軸部7aおよび塗布用固形物3の突出量を一定にする。
【解決手段】外筒2に塗布用固形物3を収容し、塗布用固形物3の中央部に外筒2内へ収容した摺動体7における摺動体本体7bの前方へ形成した軸部7aを挿通し、押動体6を内筒9に対して前進可能後退不能とすると共に、摺動体7を押動体6に対して後退可能前進不能とし、外筒2の前端開口部2aから突出する摺動体7の軸部7aおよび塗布用固形物3の突出量を一定にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形糊や口紅などの化粧具あるいはクレヨンなど固形筆記体の塗布用固形物の先端塗布面を被塗布面に押圧しながら塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布する塗布用固形物の塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外筒の下端に回転可能に装着した底部を回転させることによって、外筒の内部に配設された受皿が上昇し、固形糊などの塗布用固形物が外筒の前方開口部より繰り出される構造の塗布具はよく知られている。
【0003】
また、図12の塗布具101に示すように、外筒102と内筒103と棒状固形糊104と支持体105とからなり、塗布時に内筒103の先端部106および棒状固形糊104の先端塗布面107を、紙面等の被塗布面10に対して垂直に押圧したまま塗布面に沿って移動させることにより、内筒103を外筒102の前端開口部108に没入させながら連続した糊の塗布を行うことができる構造の塗布具、あるいは国際公開第WO01/007338号パンフレットに記載があるように、外筒の前端開口部から突出させた固形物収容筒およびその内部に収容した塗布用固形物を被塗布面に押圧しながら塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布することができる構造の塗布具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO01/007338号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、回転操作で塗布用固形物を繰り出す構造では、片手で外筒を把持しながら、もう片方の手で底部を回転させる必要があり、連続した塗布を行うためには、塗布前に塗布用固形物の先端をあらかじめ外筒の前方開口部より長く突出させておく必要があるために、塗布している最中に塗布用固形物が折れてしまうことがあったり、塗布用固形物が軟らかいものである場合には、必要以上の塗布を行ってしまうといった問題があった。
【0006】
また、WO01/007338号パンフレットに記載された構造は、固形物収容筒の後退に伴って塗布用固形物を連続して塗布することができ、また固形物収容筒が被塗布面に当接することで自動的に後退することから、あらかじめ塗布用固形物の先端を長く突出させておく必要がなく、さらに塗布用固形物が固形物収容筒に収容された状態で塗布を行うことができるため、塗布している最中に塗布用固形物が折れてしまうことがなく、塗布用固形物に軟らかいものを用いることができるものである。しかしながら、固形物収容筒の前端部が被塗布面に接触しながら塗布用固形物の塗布が行える構造であることから、塗布用固形物の塗布を行いながらも被塗布面に塗布された塗布用固形物が固形物収容筒の先端で擦り取られてしまい、被塗布面に塗布用固形物を厚く塗布したい場合に不都合が生じていた。図10に示した塗布具101も同様に、被塗布面10に塗布した糊を内筒103の先端部106が擦り取る構造であり、被塗布面に対して糊を厚く塗布したい場合に不都合が生じた。
【0007】
本発明の目的は前述の問題点を鑑みて、塗布用固形物を自動的に繰り出すことが可能であると共に、適度に厚みを持たせた塗布を行うことが可能である棒状固形物の塗布具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「被塗布面に、外筒内に配設した塗布用固形物の先端塗布面を押圧しながら被塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布する構造の塗布用固形物の塗布具であって、外筒に塗布用固形物を収容し、前記塗布用固形物の中央部に前記外筒内へ収容した摺動体における摺動体本体の前方へ形成した軸部を挿通し、前記摺動体の摺動体本体部の後方に前記外筒に設けた底蓋を配し、該摺動体と該底蓋との間にスプリングを介在させて当該摺動体を当該底蓋から離間するよう弾発させ、前記摺動体本体部の外側に前記塗布用固形物を前方へ押動させる押動体の筒部を配し、該押動体の前方に設けた皿部に前記塗布用固形物の後端部を接触させ、前記押動体の外側に前記外筒に固設した内筒を配し、前記内筒の内方に突設した第一係止爪を前記押動体の側面に形成した第一連続突起へ係止させることにより、前記押動体を前記内筒に対して前進可能後退不能とし、前記押動体の内方に突設した第二係止爪を前記摺動体の側面に形成した第二連続突起へ係止させることにより、前記摺動体を前記押動体に対して後退可能前進不能とすると共に、前記摺動体に設けた突起を前記内筒に設けた溝部に係止させ、前記スプリングに弾発された前記摺動体の前進を前記摺動体の突起が前記内筒の溝部の前方に当接することで規制して、前記外筒の前端開口部から突出する前記摺動体の軸部および前記塗布用固形物の突出量を一定にする構造の塗布用固形物の塗布具。」である。
【0009】
本発明における摺動体の軸部は、塗布用固形物の中央部を挿通できる形態であればよく、その横方向における断面形状としては円形、楕円形、四角形、三角形など特に規制はなく、軸部は軸心方向に対して真っ直ぐでも傾斜していても蛇行していてもよいが、被塗布面に対する当接力を摺動体本体部が効率よく受けるようにするためには、軸部を軸心方向に対して真っ直ぐに形成した方がよい。また軸部の先端は、軸部を紙面など被塗布面に接触させた際の滑り性をよくするために、先端に丸みを持たせることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布用固形物を自動的に繰り出すことが可能であると共に、塗布用固形物が外筒の前端開口部から自動的に一定量を突出するので、厚みを持たせた塗布を行うことが可能な塗布用固形物の塗布具を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例の塗布用固形物の塗布具の外観斜視図で、図2〜図11におけるX−X断面およびY−Y断面の断面方向を示す図である。
【図2】X−X断面斜視図である。
【図3】Y−Y断面斜視図である。
【図4】塗布する前の状態を示すX−X断面図である。
【図5】塗布する前の状態を示すY−Y断面図である。
【図6】塗布している状態を示すX−X断面図である。
【図7】塗布している状態を示すY−Y断面図である。
【図8】塗布した後の状態を示すX−X断面図である。
【図9】塗布した後の状態を示すY−Y断面図である。
【図10】塗布用固形物が減った状態を示すX−X断面図である。
【図11】塗布用固形物が減った状態を示すY−Y断面図である。
【図12】従来構造の塗布具における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を用いて本発明の実施例について説明を行う。本実施例では内部に固形糊を塗布用固形物として収容した塗布具について説明を行うが、塗布用固形物は固形糊に限定されるものではない。また本実施例の説明では、図面の下方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。尚、図中における同じ部材、同じ部品、同じ箇所を示す場合は同じ符号を付してある。
【実施例】
【0013】
図1に示すように本実施例の塗布用固形物の塗布具1は、外筒2の前端開口部2aから固形糊3の先端部31を常時突出させ、紙面等の被塗布面に固形糊3が塗布できるようにしてある。本実施例ではキャップ4を、開口部41に塗布具1の前方小径部21を装着させ固形糊3の乾燥を防げるようにしてある。また外筒2の後端開口部2bには底蓋部材5を嵌着して固定してある。
【0014】
図2、図3に示すように塗布具1は、固形糊3を外筒2の前方収容筒部2c内に収容してあり、外周面32を前方収容筒部2cに摺動可能に接触させ、底面33を外筒2の内部に配した押動体6の皿部6aに接触させている。また、固形糊3の中央部には、押動体6の内部に配した摺動体7の軸部7aを挿通し、摺動体7の摺動体本体部7bの内面と底蓋部材5の前方に形成した突出部5aの係止段部5bとの間にコイルスプリング8を配して、摺動体7を底蓋部材5から離間するよう弾発してある。摺動体7の摺動体本体部7bの外側には押動体6の筒部6bを配してあり、押動体6の外側に配した内筒9の後部を底蓋部材5の外周に形成した筒部5c内に挿着して、外筒2に対して内筒9を抜け止め状態に固設してある。底蓋部材5の筒部5cの外面には外向凸部5dを設けてあり、外筒2の内面に形成した内向凸部2dを乗り越えさせて、底蓋部材5を外筒2から抜け止め状態にしてある。図3に示すように、内筒9の外側には突起9aを形成してあり、外筒2に固定した底蓋部材5に形成した係止窓5eの前端部に当接させ固定してある。また、摺動体7の後端部には外方へ突出した鍔部7cを形成してあり、鍔部7cの先端に突起7dを形成して内筒9の後端部に形成した溝部9bの前端に当接させ、コイルスプリング8に弾発された摺動体7の前進を規制してある。
【0015】
図2を用いて押動体6と内筒9との関係を詳述すると、押動体6の筒部6bの外面には、軸心に沿った方向に連続する第一連続突起6cを形成してあり、内筒9の内面に形成した第一係止爪9cを係止させている。第一連続突起6cは、前方から後方へ向かって外方へ傾斜する傾斜面61と、傾斜面61に連接して軸心へ向かって垂設した垂直面62とを軸心方向へ複数連設させた突起63で構成してあり、内筒9の第一係止爪9cには、第一連続突起6cの傾斜面61に対向する形状に形成した傾斜面91と、第一連続突起6cの垂直面62に当接する垂直面92とを設けてある。本実施例の第一係止爪9cは、内筒9の一部を切り欠いて前方を自由端とする弾性片9dを形成してあり、第一連続突起6cの突起63の傾斜面61が第一係止爪9bの傾斜面91を外方へ弾性変形させるように当接しながら押動体6が前進できるようにしてあり、第一係止爪9cを乗り越えた第一連続突起6cの垂直面62が第一係止爪9cの垂直面92と当接することで押動体6の後退を防止している。
【0016】
図3を用いて押動体6と摺動体7との関係を詳述すると、摺動体7の摺動体本体部7bの外面には、軸心に沿った方向に連続する第二連続突起7eを形成してあり、押動体6の内面に形成した第二係止爪6dを係止させている。第二連続突起7eは、後方から前方へ向かって外方へ傾斜する傾斜面71と、傾斜面71に連接して軸心へ向かって垂設した垂直面72とを軸心方向へ複数連設させた突起73で構成してあり、押動体6の第二係止爪6dには、第二連続突起7eの傾斜面71に対向する形状に形成した傾斜面64と、第二連続突起7eの垂直面72に当接する垂直面65とを設けてある。本実施例の第二係止爪6dは、押動体6の一部を切り欠いて後方を自由端とする弾性片6eを形成してあり、第二連続突起7eの突起73の傾斜面71が第二係止爪6dの傾斜面64を外方へ弾性変形させるように当接しながら押動体6が摺動体7に対して相対的に前進できるようにしてあり、第二係止爪6dを乗り越えた突起73の垂直面72が第二係止爪6dの垂直面65と当接することで摺動体7に対する押動体6の後退を防止している。
【0017】
次に図6〜図9を用いて、本実施例の塗布具にて紙面に固形糊を塗布する作業についての説明を行う。図6に示すように本実施例の塗布具1は、固形糊3を紙面10に対して垂直に押圧したまま紙面10に沿って移動させると、押動体6の垂直面62が内筒9の垂直面92に当接していることから、押動体6が後退することなく固形糊3を紙面10に塗布させることができる。また、固形糊3が消耗しながら摺動体7の先端が丸い軸部先端7fが紙面10に接触することで、摺動体7がコイルスプリング8を圧縮しながら後退し、図7に示すように摺動体7の第二連続突起7eが第二係止爪6dを乗り越える。
【0018】
図6および図7の状態から固形糊3の紙面10への押圧力を開放すると、図9に示すようにコイルスプリング8の弾発力で摺動体7が前進して、第二連続突起7eの垂直面72に垂直面65が当接している押動体6の第二係止爪6dが前方へ押動され、押動体6が摺動体7に従動して、摺動体7の突起7dが内筒9の溝部9bの前端に当接するまで前進する。結果、塗布により減った固形糊3の先端部31を、図4および図5で示した状態まで外筒2の前端開口部2aから突出させることができる。この時、図8に示すように、前進した押動体6の第一連続突起6cの傾斜面61が、内筒9の第一係止爪9cの傾斜面91を乗り越えることとなり、図4から図8の変化が示すように、内筒9の第一係止爪9cに対し、第一連続突起6cの突起63が一つ前進した状態となる。これを繰り返すことにより固形糊3を連続して塗布するがことができ、図10および図11の状態を経て押動体6の皿部6aが紙面に接するまで固形糊3を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の塗布用固形物の塗布具は、塗布用固形物を自動的に繰り出すことが可能であることから、大きな被筆記面に塗布用固形物を大量に塗布したい用途の塗布用固形物の塗布具に適しており、また塗布用固形物が外筒の前端開口部から自動的に一定量を突出するので、被筆記面に塗布用固形物を盛り上げるようにして塗布を行いたい用途の塗布用固形物の塗布具に適している。
【符号の説明】
【0020】
1…塗布具、
2…外筒、2a…前端開口部、2b…後端開口部、2c…収容部、
2d…内向凸部、
21…前方小径部、
3…固形糊、31…先端部、32…外周面、33…底面、
4…キャップ、41…開口部、
5…底蓋部材、5a…突出部、5b…係止段部、5c…筒部、
5d…外向凸部、5e…係止窓、
6…押動体、6a…皿部、6b…筒部、6c…第一連続突起、
6d…第二係止爪、6e…弾性片、
61…傾斜面、62…垂直面、63…突起、64…傾斜面、
65…垂直面、
7…摺動体、7a…軸部、7b…摺動体本体部、7c…鍔部、
7d…突起、7e…第二連続突起、7f…軸部先端、
71…傾斜面、72…垂直面、73…突起、
8…コイルスプリング、
9…内筒、9a…突起、9b…溝部、9c…第一係止爪、9d…弾性片、
91…傾斜面、92…垂直面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形糊や口紅などの化粧具あるいはクレヨンなど固形筆記体の塗布用固形物の先端塗布面を被塗布面に押圧しながら塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布する塗布用固形物の塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外筒の下端に回転可能に装着した底部を回転させることによって、外筒の内部に配設された受皿が上昇し、固形糊などの塗布用固形物が外筒の前方開口部より繰り出される構造の塗布具はよく知られている。
【0003】
また、図12の塗布具101に示すように、外筒102と内筒103と棒状固形糊104と支持体105とからなり、塗布時に内筒103の先端部106および棒状固形糊104の先端塗布面107を、紙面等の被塗布面10に対して垂直に押圧したまま塗布面に沿って移動させることにより、内筒103を外筒102の前端開口部108に没入させながら連続した糊の塗布を行うことができる構造の塗布具、あるいは国際公開第WO01/007338号パンフレットに記載があるように、外筒の前端開口部から突出させた固形物収容筒およびその内部に収容した塗布用固形物を被塗布面に押圧しながら塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布することができる構造の塗布具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO01/007338号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、回転操作で塗布用固形物を繰り出す構造では、片手で外筒を把持しながら、もう片方の手で底部を回転させる必要があり、連続した塗布を行うためには、塗布前に塗布用固形物の先端をあらかじめ外筒の前方開口部より長く突出させておく必要があるために、塗布している最中に塗布用固形物が折れてしまうことがあったり、塗布用固形物が軟らかいものである場合には、必要以上の塗布を行ってしまうといった問題があった。
【0006】
また、WO01/007338号パンフレットに記載された構造は、固形物収容筒の後退に伴って塗布用固形物を連続して塗布することができ、また固形物収容筒が被塗布面に当接することで自動的に後退することから、あらかじめ塗布用固形物の先端を長く突出させておく必要がなく、さらに塗布用固形物が固形物収容筒に収容された状態で塗布を行うことができるため、塗布している最中に塗布用固形物が折れてしまうことがなく、塗布用固形物に軟らかいものを用いることができるものである。しかしながら、固形物収容筒の前端部が被塗布面に接触しながら塗布用固形物の塗布が行える構造であることから、塗布用固形物の塗布を行いながらも被塗布面に塗布された塗布用固形物が固形物収容筒の先端で擦り取られてしまい、被塗布面に塗布用固形物を厚く塗布したい場合に不都合が生じていた。図10に示した塗布具101も同様に、被塗布面10に塗布した糊を内筒103の先端部106が擦り取る構造であり、被塗布面に対して糊を厚く塗布したい場合に不都合が生じた。
【0007】
本発明の目的は前述の問題点を鑑みて、塗布用固形物を自動的に繰り出すことが可能であると共に、適度に厚みを持たせた塗布を行うことが可能である棒状固形物の塗布具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「被塗布面に、外筒内に配設した塗布用固形物の先端塗布面を押圧しながら被塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布する構造の塗布用固形物の塗布具であって、外筒に塗布用固形物を収容し、前記塗布用固形物の中央部に前記外筒内へ収容した摺動体における摺動体本体の前方へ形成した軸部を挿通し、前記摺動体の摺動体本体部の後方に前記外筒に設けた底蓋を配し、該摺動体と該底蓋との間にスプリングを介在させて当該摺動体を当該底蓋から離間するよう弾発させ、前記摺動体本体部の外側に前記塗布用固形物を前方へ押動させる押動体の筒部を配し、該押動体の前方に設けた皿部に前記塗布用固形物の後端部を接触させ、前記押動体の外側に前記外筒に固設した内筒を配し、前記内筒の内方に突設した第一係止爪を前記押動体の側面に形成した第一連続突起へ係止させることにより、前記押動体を前記内筒に対して前進可能後退不能とし、前記押動体の内方に突設した第二係止爪を前記摺動体の側面に形成した第二連続突起へ係止させることにより、前記摺動体を前記押動体に対して後退可能前進不能とすると共に、前記摺動体に設けた突起を前記内筒に設けた溝部に係止させ、前記スプリングに弾発された前記摺動体の前進を前記摺動体の突起が前記内筒の溝部の前方に当接することで規制して、前記外筒の前端開口部から突出する前記摺動体の軸部および前記塗布用固形物の突出量を一定にする構造の塗布用固形物の塗布具。」である。
【0009】
本発明における摺動体の軸部は、塗布用固形物の中央部を挿通できる形態であればよく、その横方向における断面形状としては円形、楕円形、四角形、三角形など特に規制はなく、軸部は軸心方向に対して真っ直ぐでも傾斜していても蛇行していてもよいが、被塗布面に対する当接力を摺動体本体部が効率よく受けるようにするためには、軸部を軸心方向に対して真っ直ぐに形成した方がよい。また軸部の先端は、軸部を紙面など被塗布面に接触させた際の滑り性をよくするために、先端に丸みを持たせることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布用固形物を自動的に繰り出すことが可能であると共に、塗布用固形物が外筒の前端開口部から自動的に一定量を突出するので、厚みを持たせた塗布を行うことが可能な塗布用固形物の塗布具を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例の塗布用固形物の塗布具の外観斜視図で、図2〜図11におけるX−X断面およびY−Y断面の断面方向を示す図である。
【図2】X−X断面斜視図である。
【図3】Y−Y断面斜視図である。
【図4】塗布する前の状態を示すX−X断面図である。
【図5】塗布する前の状態を示すY−Y断面図である。
【図6】塗布している状態を示すX−X断面図である。
【図7】塗布している状態を示すY−Y断面図である。
【図8】塗布した後の状態を示すX−X断面図である。
【図9】塗布した後の状態を示すY−Y断面図である。
【図10】塗布用固形物が減った状態を示すX−X断面図である。
【図11】塗布用固形物が減った状態を示すY−Y断面図である。
【図12】従来構造の塗布具における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を用いて本発明の実施例について説明を行う。本実施例では内部に固形糊を塗布用固形物として収容した塗布具について説明を行うが、塗布用固形物は固形糊に限定されるものではない。また本実施例の説明では、図面の下方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。尚、図中における同じ部材、同じ部品、同じ箇所を示す場合は同じ符号を付してある。
【実施例】
【0013】
図1に示すように本実施例の塗布用固形物の塗布具1は、外筒2の前端開口部2aから固形糊3の先端部31を常時突出させ、紙面等の被塗布面に固形糊3が塗布できるようにしてある。本実施例ではキャップ4を、開口部41に塗布具1の前方小径部21を装着させ固形糊3の乾燥を防げるようにしてある。また外筒2の後端開口部2bには底蓋部材5を嵌着して固定してある。
【0014】
図2、図3に示すように塗布具1は、固形糊3を外筒2の前方収容筒部2c内に収容してあり、外周面32を前方収容筒部2cに摺動可能に接触させ、底面33を外筒2の内部に配した押動体6の皿部6aに接触させている。また、固形糊3の中央部には、押動体6の内部に配した摺動体7の軸部7aを挿通し、摺動体7の摺動体本体部7bの内面と底蓋部材5の前方に形成した突出部5aの係止段部5bとの間にコイルスプリング8を配して、摺動体7を底蓋部材5から離間するよう弾発してある。摺動体7の摺動体本体部7bの外側には押動体6の筒部6bを配してあり、押動体6の外側に配した内筒9の後部を底蓋部材5の外周に形成した筒部5c内に挿着して、外筒2に対して内筒9を抜け止め状態に固設してある。底蓋部材5の筒部5cの外面には外向凸部5dを設けてあり、外筒2の内面に形成した内向凸部2dを乗り越えさせて、底蓋部材5を外筒2から抜け止め状態にしてある。図3に示すように、内筒9の外側には突起9aを形成してあり、外筒2に固定した底蓋部材5に形成した係止窓5eの前端部に当接させ固定してある。また、摺動体7の後端部には外方へ突出した鍔部7cを形成してあり、鍔部7cの先端に突起7dを形成して内筒9の後端部に形成した溝部9bの前端に当接させ、コイルスプリング8に弾発された摺動体7の前進を規制してある。
【0015】
図2を用いて押動体6と内筒9との関係を詳述すると、押動体6の筒部6bの外面には、軸心に沿った方向に連続する第一連続突起6cを形成してあり、内筒9の内面に形成した第一係止爪9cを係止させている。第一連続突起6cは、前方から後方へ向かって外方へ傾斜する傾斜面61と、傾斜面61に連接して軸心へ向かって垂設した垂直面62とを軸心方向へ複数連設させた突起63で構成してあり、内筒9の第一係止爪9cには、第一連続突起6cの傾斜面61に対向する形状に形成した傾斜面91と、第一連続突起6cの垂直面62に当接する垂直面92とを設けてある。本実施例の第一係止爪9cは、内筒9の一部を切り欠いて前方を自由端とする弾性片9dを形成してあり、第一連続突起6cの突起63の傾斜面61が第一係止爪9bの傾斜面91を外方へ弾性変形させるように当接しながら押動体6が前進できるようにしてあり、第一係止爪9cを乗り越えた第一連続突起6cの垂直面62が第一係止爪9cの垂直面92と当接することで押動体6の後退を防止している。
【0016】
図3を用いて押動体6と摺動体7との関係を詳述すると、摺動体7の摺動体本体部7bの外面には、軸心に沿った方向に連続する第二連続突起7eを形成してあり、押動体6の内面に形成した第二係止爪6dを係止させている。第二連続突起7eは、後方から前方へ向かって外方へ傾斜する傾斜面71と、傾斜面71に連接して軸心へ向かって垂設した垂直面72とを軸心方向へ複数連設させた突起73で構成してあり、押動体6の第二係止爪6dには、第二連続突起7eの傾斜面71に対向する形状に形成した傾斜面64と、第二連続突起7eの垂直面72に当接する垂直面65とを設けてある。本実施例の第二係止爪6dは、押動体6の一部を切り欠いて後方を自由端とする弾性片6eを形成してあり、第二連続突起7eの突起73の傾斜面71が第二係止爪6dの傾斜面64を外方へ弾性変形させるように当接しながら押動体6が摺動体7に対して相対的に前進できるようにしてあり、第二係止爪6dを乗り越えた突起73の垂直面72が第二係止爪6dの垂直面65と当接することで摺動体7に対する押動体6の後退を防止している。
【0017】
次に図6〜図9を用いて、本実施例の塗布具にて紙面に固形糊を塗布する作業についての説明を行う。図6に示すように本実施例の塗布具1は、固形糊3を紙面10に対して垂直に押圧したまま紙面10に沿って移動させると、押動体6の垂直面62が内筒9の垂直面92に当接していることから、押動体6が後退することなく固形糊3を紙面10に塗布させることができる。また、固形糊3が消耗しながら摺動体7の先端が丸い軸部先端7fが紙面10に接触することで、摺動体7がコイルスプリング8を圧縮しながら後退し、図7に示すように摺動体7の第二連続突起7eが第二係止爪6dを乗り越える。
【0018】
図6および図7の状態から固形糊3の紙面10への押圧力を開放すると、図9に示すようにコイルスプリング8の弾発力で摺動体7が前進して、第二連続突起7eの垂直面72に垂直面65が当接している押動体6の第二係止爪6dが前方へ押動され、押動体6が摺動体7に従動して、摺動体7の突起7dが内筒9の溝部9bの前端に当接するまで前進する。結果、塗布により減った固形糊3の先端部31を、図4および図5で示した状態まで外筒2の前端開口部2aから突出させることができる。この時、図8に示すように、前進した押動体6の第一連続突起6cの傾斜面61が、内筒9の第一係止爪9cの傾斜面91を乗り越えることとなり、図4から図8の変化が示すように、内筒9の第一係止爪9cに対し、第一連続突起6cの突起63が一つ前進した状態となる。これを繰り返すことにより固形糊3を連続して塗布するがことができ、図10および図11の状態を経て押動体6の皿部6aが紙面に接するまで固形糊3を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の塗布用固形物の塗布具は、塗布用固形物を自動的に繰り出すことが可能であることから、大きな被筆記面に塗布用固形物を大量に塗布したい用途の塗布用固形物の塗布具に適しており、また塗布用固形物が外筒の前端開口部から自動的に一定量を突出するので、被筆記面に塗布用固形物を盛り上げるようにして塗布を行いたい用途の塗布用固形物の塗布具に適している。
【符号の説明】
【0020】
1…塗布具、
2…外筒、2a…前端開口部、2b…後端開口部、2c…収容部、
2d…内向凸部、
21…前方小径部、
3…固形糊、31…先端部、32…外周面、33…底面、
4…キャップ、41…開口部、
5…底蓋部材、5a…突出部、5b…係止段部、5c…筒部、
5d…外向凸部、5e…係止窓、
6…押動体、6a…皿部、6b…筒部、6c…第一連続突起、
6d…第二係止爪、6e…弾性片、
61…傾斜面、62…垂直面、63…突起、64…傾斜面、
65…垂直面、
7…摺動体、7a…軸部、7b…摺動体本体部、7c…鍔部、
7d…突起、7e…第二連続突起、7f…軸部先端、
71…傾斜面、72…垂直面、73…突起、
8…コイルスプリング、
9…内筒、9a…突起、9b…溝部、9c…第一係止爪、9d…弾性片、
91…傾斜面、92…垂直面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布面に、外筒内に配設した塗布用固形物の先端塗布面を押圧しながら被塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布する構造の塗布用固形物の塗布具であって、外筒に塗布用固形物を収容し、前記塗布用固形物の中央部に前記外筒内へ収容した摺動体における摺動体本体の前方へ形成した軸部を挿通し、前記摺動体の摺動体本体部の後方に前記外筒に設けた底蓋を配し、該摺動体と該底蓋との間にスプリングを介在させて当該摺動体を当該底蓋から離間するよう弾発させ、前記摺動体本体部の外側に前記塗布用固形物を前方へ押動させる押動体の筒部を配し、該押動体の前方に設けた皿部に前記塗布用固形物の後端部を接触させ、前記押動体の外側に前記外筒に固設した内筒を配し、前記内筒の内方に突設した第一係止爪を前記押動体の側面に形成した第一連続突起へ係止させることにより、前記押動体を前記内筒に対して前進可能後退不能とし、前記押動体の内方に突設した第二係止爪を前記摺動体の側面に形成した第二連続突起へ係止させることにより、前記摺動体を前記押動体に対して後退可能前進不能とすると共に、前記摺動体に設けた突起を前記内筒に設けた溝部に係止させ、前記スプリングに弾発された前記摺動体の前進を前記摺動体の突起が前記内筒の溝部の前方に当接することで規制して、前記外筒の前端開口部から突出する前記摺動体の軸部および前記塗布用固形物の突出量を一定にする構造の塗布用固形物の塗布具。
【請求項1】
被塗布面に、外筒内に配設した塗布用固形物の先端塗布面を押圧しながら被塗布面に沿って移動させることにより、塗布用固形物を被塗布面に塗布する構造の塗布用固形物の塗布具であって、外筒に塗布用固形物を収容し、前記塗布用固形物の中央部に前記外筒内へ収容した摺動体における摺動体本体の前方へ形成した軸部を挿通し、前記摺動体の摺動体本体部の後方に前記外筒に設けた底蓋を配し、該摺動体と該底蓋との間にスプリングを介在させて当該摺動体を当該底蓋から離間するよう弾発させ、前記摺動体本体部の外側に前記塗布用固形物を前方へ押動させる押動体の筒部を配し、該押動体の前方に設けた皿部に前記塗布用固形物の後端部を接触させ、前記押動体の外側に前記外筒に固設した内筒を配し、前記内筒の内方に突設した第一係止爪を前記押動体の側面に形成した第一連続突起へ係止させることにより、前記押動体を前記内筒に対して前進可能後退不能とし、前記押動体の内方に突設した第二係止爪を前記摺動体の側面に形成した第二連続突起へ係止させることにより、前記摺動体を前記押動体に対して後退可能前進不能とすると共に、前記摺動体に設けた突起を前記内筒に設けた溝部に係止させ、前記スプリングに弾発された前記摺動体の前進を前記摺動体の突起が前記内筒の溝部の前方に当接することで規制して、前記外筒の前端開口部から突出する前記摺動体の軸部および前記塗布用固形物の突出量を一定にする構造の塗布用固形物の塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−14357(P2013−14357A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147818(P2011−147818)
【出願日】平成23年7月3日(2011.7.3)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月3日(2011.7.3)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】
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