説明

塗布装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は塗布装置、特に回路基板上に部品を接着するための接着剤塗布を行なう塗布装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、チップマウンタによって回路基板上に部品を搭載する場合、搭載に先だって部品を固定するための接着剤をメモリーに格納されている順に1点ずつ塗布する装置が知られている。
【0003】このようなチップ部品接着のための接着剤の塗布専用の装置の他、チップマウンタのオプションとして装着されることもある。接着剤の塗布は接着剤を収容し、1点ずつ塗布するためのディスペンサをXYテーブルの制御によって基板上の所定位置に移動し、順次ディスペンサを駆動して接着剤を塗布していく。
【0004】接着剤の塗布位置は、部品の搭載座標と搭載部品に対する接着剤の塗布(例えば部品1点あたり4点など)のオフセットデータとしてメモリ中に記憶される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の塗布装置における接着剤塗布制御のためのデータはメモリ中で接着剤の塗布に最適な順序で並んでいるわけではない。従って、メモリ上に並んでいる並び方に応じて接着剤塗布を行うと、ディスペンサの移動に無駄な動きが多くなって作業時間が長くなる。
【0006】そこで、接着剤塗布の最適パスを算出するアルゴリズムを用いて、接着剤の塗布順序を最適化するのが望ましい。このような問題解決のため、従来より「セールスマン巡回法」などのアルゴリズムが知られているが、この手法ではソートすべき座標点が多くなるにつれて、指数的に演算時間が増大する。
【0007】従って、塗布処理に必要な全体の処理時間のうち演算時間の占める割合が非常に大きくなり、処理時間の短縮が難しくなるという問題がある。
【0008】本発明の課題は、以上の問題を解決し、簡易な演算により、制御装置に負担をかけることなく、高速な接着剤塗布制御を行なえる塗布装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために、本発明においては、回路基板上に塗布ノズルを介して、部品接着のための接着剤を塗布する塗布装置において、接着剤吐出位置に関する制御データを格納した記憶手段と、接着剤吐出を行なう回路基板上の領域を接着剤ディスペンサの2次元走査方向のうち第1の走査方向に関して塔載すべき部品数から所定の演算により算出し分割数で分割し、さらにこの分割された分割領域内に位置する前記記憶手段内の制御データを前記2次元走査方向のうち第2の走査方向に関して並べ替える演算手段と、前記の並べ替えられた制御データに基づいて接着剤吐出を行なう接着剤ディスペンサの2次元走査位置を制御する制御手段とを有する構成を採用した。
【0010】
【作用】以上の構成によれば、接着剤吐出を行なう回路基板上の領域を塔載すべき部品数から所定の演算により算出した分割数で分割し、さらにこの分割された分割領域内に位置する接着剤吐出位置に関する制御データをそれぞれ並べ替えることにより、接着剤吐出を行なう接着剤ディスペンサの塗布位置制御を高速に行なえる。
【0011】
【実施例】以下、図面に示す実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0012】図1は本発明を採用した塗布装置の要部の構成を示している。図において符号11は接着剤の塗布座標を計算する演算部で、この演算部は塗布装置の主制御部であるマイクロプロセッサ、ROM、RAMなどの制御回路から構成される。符号12は接着剤塗布を行う実行部で、XYテーブル14および接着剤のディスペンサ13を制御することによって基板上の所定位置に接着剤塗布を行う。実行部12はマイクロプロセッサ、ROM、RAM及びディスペンサ13、XYテーブル14の駆動回路などからなる。
【0013】図3(A)はチップをマウントすべき搭載位置を示している。基板21上には図中のXで示すように部品が搭載される。これらの部品の搭載位置、および接着パターンのデータは演算部11のRAMなどのメモリ上に図3(A)右側に符号24〜26で示すようなテーブル形式で格納される。符号24は部品の搭載位置の座標を格納するテーブルで、図中に拡大して示すように搭載位置23のXY座標データを収容する。
【0014】また、符号26はあらかじめ用意された複数の接着パターンを格納するものである。このテーブルには部品搭載位置23を中心として何点の接着剤塗布を行うか、またその各塗布点の部品搭載位置23からのオフセットデータとして構成される。
【0015】搭載位置データ24内の各部品については接着パターンデータ26内の接着パターンのいずれかが関連づけられるが、この関連づけは部品データ25によって行われる。部品データ25は例えば搭載位置データ24および26内の部品の座標と接着パターンをそれぞれ指し示すポインタ(アドレスデータ)を、部品1点についてひとつずつ格納したものである。
【0016】ここで注意すべきなのは、搭載データ24内の部品データのポインタを参照することによってその部品の搭載位置と接着パターンを決めることができるが、搭載データ24は、接着剤塗布に最も適した形で配列されているとは限らないことである。
【0017】そこで、本発明では搭載データ24内のデータを塗布に最も適した順序に並べ替える、あるいは別のポインタテーブルを用いて塗布に最適な順序にテーブル25内のデータを示す別のポインタを並べ替える処理を行う。
【0018】図3(B)、(C)は並べ替えの様子を示している。例えば図3(B)のように基板21上に符号1〜9の部品搭載位置があるとすると、ディスペンサを図3(C)に示すように、ひと筆書状に基板21のX軸方向の往復走査を繰り返すのが最も都合がよい。
【0019】このような経路を決定するために、セールスマン巡回法などのアルゴリズムに基づいて、1〜9の全ての搭載位置に関して演算を行うと、搭載位置が増えるほど指数関数的に演算時間が増大する。そこで、本発明では図3(B)に示すように基板21のY方向に基板21の搭載領域を分割する。
【0020】この時の分割数は、たとえば搭載部品数の平方根とするのが都合がよい。すなわち、分割領域には全分割領域の数とほぼ同じだけの搭載点が含まれる確率が高くなるように分割を行う。図3(B)の場合は搭載点が9点のため、分割領域は図示のように3分割となる。搭載点が16程度ならば、分割は4とすればよい。
【0021】なお、搭載部品数の平方根が整数でない場合には、切捨、四捨五入などの適当な整数化を行なえばよい。また、領域分割数は、搭載部品数の平方根でなくてもよく、当業者において領域分割数決定のための適当なアルゴリズムがあれば、それを採用してよい。
【0022】上記領域分割ののち、各分割領域について制御データを整列させる。また、塗布の際には図3(C)のように往復走査を行うため、隣りあう分割領域どうしでは整列順を互いに逆にする。
【0023】このようにして、一度に整列するデータの数を大きく減少(部品点数の平方根分の1)することができ、演算処理を簡単かつきわめて高速に行うことができるようになる。この高速化の効果は、搭載部品数が多いほど顕著になるのはいうまでもない。
【0024】図2に上記構成において接着剤塗布の際に演算部11および実行部12で実行される制御手順A、Bをそれぞれ示す。演算部11および実行部12の処理A、Bはそれぞれコンカレント(並列的)に動作する。まず演算部11の処理Aから説明する。これらの制御手順は、演算部11、実行部12のROMに格納しておく。
【0025】ステップS11ではテーブル25に用意されている搭載座標をY方向にソートする。ステップS12では搭載座標を図3(B)に示すように分割する。この時の分割数は搭載部品数の平方根によって決定される。
【0026】ステップS13では搭載座標に基づいて接着パターンのテーブル26を参照して、吐出座標を計算する。吐出座標はテーブル26内でオフセット量として記憶されているので、搭載座標にこれらのオフセットを加算することによって絶対座標が求められる。
【0027】ステップS14では吐出座標をX方向に昇順にソートする。ステップS15では接着剤吐出開始を実行部12に指示する。実行部の処理については後述する。
【0028】ステップS16〜22のループは、2回目以降の吐出制御を示す。ここでは、分割された各領域について吐出座標を決定する処理を行う。ステップS16では吐出座標を計算し、ステップS17では現在扱っている分割領域が奇数番目の分割領域かどうかを判定する。ここで、奇数分割領域ではステップS18へ、偶数分割領域ではステップS19へ移行する。ここで偶数および奇数は、図3(B)の分割領域の番号に対応する。
【0029】ステップS18ではX方向に分割領域内の吐出座標をソートするが、その際データを昇順にソートする。また、ステップS19ではその逆に降順にソートする。ここで昇順および降順は、図3(B)のX軸に関する+および−の方向に対応する。ステップS20では吐出終了信号が実行部12から出力されるのを待ち、吐出終了信号を受信した場合には、ステップS21においてステップS5と同様に吐出開始信号を実行部12に与える。
【0030】ステップS22では最終分割領域の最終データを処理したかどうかが判定され、全てのデータを処理していない場合にはステップS16に戻って上記の処理を繰り返す。ステップS23では最後の吐出終了信号を待つ。
【0031】一方、処理Bにおいて実行部12は、まずステップS31において吐出開始信号が演算部11から出力されるのを待つ。吐出開始信号を入力するとステップS32に進み、演算部11から与えられた吐出位置の絶対座標に基づいてXYテーブル14を制御し、ディスペンサ13を吐出位置に移動させる。
【0032】そしてステップS33で接着剤吐出を実行し、ステップS34では与えられた全ての座標について接着剤吐出を終了したかどうかを判定する。
【0033】一つの搭載部品についての数点の接着剤吐出位置か、あるいは複数の搭載部品についての複数の接着剤吐出位置が、まとめて実行部12に入力されるものとし、ステップS34では送信された全ての吐出座標について処理を終了したかどうかが判定される。ステップS34が肯定されるとステップS35に移行し、吐出完了信号を演算部11に出力する。
【0034】以上の構成によれば、接着剤塗布位置の並べ替えを行うことによって効率的な接着剤塗布処理が可能である。
【0035】また並べ替えの際、全データについて並べ替えを行うのではなく、搭載部品数の平方根に応じた分割数で領域を分割し、各分割領域について昇順および降順にソートを行い、最終的に塗布のための経路がひと往復走査によるひと筆書状となるように制御を行うため、並べ替えのための演算処理時間を著しく短縮し、従って全体の処理時間を短縮できる。また、並べ替えの際に要するメモリのワークエリアのサイズも小さくてすむ。
【0036】さらに、ソートを分割した領域について少しずつ行うようにしているので、図2に示したようなコンカレント処理に適した方法となっており、演算部11あるいは実行部12の負荷が少なくてすむなどの優れた利点がある。
【0037】
【発明の効果】以上から明らかなように、本発明によれば、回路基板上に塗布ノズルを介して、部品接着のための接着剤を塗布する塗布装置において、接着剤吐出位置に関する制御データを格納した記憶手段と、接着剤吐出を行なう回路基板上の領域を接着剤ディスペンサの2次元走査方向のうち第1の走査方向に関して塔載すべき部品数から所定の演算により算出した分割数で分割し、さらにこの分割された分割領域内に位置する前記記憶手段内の制御データを前記2次元走査方向のうち第2の走査方向に関して並べ替える演算手段と、前記の並べ替えられた制御データに基づいて接着剤吐出を行なう接着剤ディスペンサの2次元走査位置を制御する制御手段とを有する構成を採用しているので、接着剤吐出を行なう回路基板上の領域を塔載すべき部品数から所定の演算により算出した分割数で分割し、さらにこの分割された分割領域内に位置する接着剤吐出位置に関する制御データをそれぞれ並べ替えることにより、制御データの並べ替えのための演算処理時間を著しく短縮し、従って全体の処理時間を短縮でき、また、並べ替えの際に要するメモリ容量を低減できる、さらに、これらの処理時間短縮効果およびメモリ容量低減効果を塔載すべき部品数に応じて適切に得ることができるなどの優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による塗布装置のブロック図である。
【図2】本発明による塗布装置制御手順を示したフローチャート図である。
【図3】本発明による塗布装置制御の概要を示した説明図である。
【符号の説明】
11 演算部
12 実行部
21 基板
22 接着剤吐出位置
23 部品搭載位置
24 搭載位置データ
25 部品データ
26 接着パターンデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回路基板上に塗布ノズルを介して、部品接着のための接着剤を塗布する塗布装置において、接着剤吐出位置に関する制御データを格納した記憶手段と、接着剤吐出を行なう回路基板上の領域を接着剤ディスペンサの2次元走査方向のうち第1の走査方向に関して載すべき部品数から所定の演算により算出した分割数で分割し、さらにこの分割された分割領域内に位置する前記記憶手段内の制御データを前記2次元走査方向のうち第2の走査方向に関して並べ替える演算手段と、前記の並べ替えられた制御データに基づいて接着剤吐出を行なう接着剤ディスペンサの2次元走査位置を制御する制御手段とを有することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】 前記部品搭載および接着剤吐出を行なう回路基板上の領域の分割数を、搭載すべき部品数の平方根にほぼ等しくとることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】 接着剤吐出を行なう接着剤ディスペンサにより2次元走査を行なう場合、前記第2の走査方向に沿った走査は、往復走査で行なうものとし、この往復走査方向に整合した整列順序で前記演算手段による第2の走査方向に関する制御データの並べ替えを行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】 前記部品搭載位置に関する制御データが絶対座標データとして、接着剤吐出位置に関する制御データが各部品の絶対座標データに関連づけられたオフセットデータとして前記記憶手段に格納されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項5】 接着剤吐出位置に関する制御データが部品の絶対座標データに関連づけられたオフセットデータパターンとして前記記憶手段の所定領域に用意され、さらに前記絶対座標データとして構成された部品搭載位置に関する制御データに関連づけて前記オフセットデータパターンを指定する制御データを記憶することを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3021782号(P3021782)
【登録日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【発行日】平成12年3月15日(2000.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−145118
【出願日】平成3年6月18日(1991.6.18)
【公開番号】特開平4−369297
【公開日】平成4年12月22日(1992.12.22)
【審査請求日】平成10年5月20日(1998.5.20)
【出願人】(000003399)ジューキ株式会社 (1,557)
【参考文献】
【文献】特開 平3−217270(JP,A)