説明

塗料かす処理装置

【課題】塗料かすを含む被処理水を効率よく浄化できる塗料かす処理装置を提供する。
【解決手段】塗料かす処理装置10は、塗料かすを含む被処理水が供給される流入槽11と、樋部材12と、樋部材12の下方に配置された流水案内板13と、処理槽14と、スラッジ搬出コンベア15と、フィルタ機構16などを有している。樋部材12は、流出口20の下方に位置する第1の端部31と、流出口20から遠い側に位置する第2の端部32とを有している。この樋部材12は、第2の端部32が第1の端部31よりも高くなるように、水平面Aに対し角度θをなすよう傾斜した姿勢で配置されている。またこの樋部材12は、被処理水をオーバーフローさせるための上縁25,26を有している。樋部材12の下縁50,51と流水案内板13との間に、アンダーフローを生じさせるためのスリット52,53が形成されている。流水案内板13は、先端45,46が低くなっている傾斜面13b,13cを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装ブース等から排出される塗料かす(塗料スラッジ)を処理するための塗料かす処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴霧ノズル等を使用して塗装作業を行う場合、作業環境や周囲の環境が悪化することを防ぐために塗装ブースが使われている。例えば特許文献1に開示されているベンチュリーブースタイプの塗装ブースでは、塗料ミストを含んだ空気を排気ファンによって渦巻室に吸引し、渦巻室の遠心力により塗料ミストを空気流から分離するとともに、塗料ミストを水膜に衝突させて捕集している。捕集された塗料ミストを含む水は、水中ダクトから処理槽に戻されて再利用されている。
【0003】
一方、特許文献2に開示されているウォーターブースタイプの塗装ブースでは、ポンプによって汲み上げた水を水流板に沿って膜状に流すことによりウォーターカーテンを形成し、このウォーターカーテンに塗料ミストを触れさせることにより、塗料ミストを洗い流している。また前記水流板の裏側に配置されたシャワーノズルからシャワー水を噴出することによって、前記ウォーターカーテンによって捕集できなかった塗料ミストを水中に落とすように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−273292号公報
【特許文献2】特許第3704084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記塗装ブースで捕集された塗料ミストは、水と一緒に処理槽内に落ちて凝集することにより、処理槽内で塗料かす(塗料スラッジ)となる。この塗料かすが水面に浮いたり、処理槽内に沈殿するなどして処理槽内に溜まる。従来の塗装ブースは処理槽内の水を浄化する機構を有しないため、定期的に作業員が人力で塗料かすを取り除いている。しかし定期的な掃除をしても、汚れた水は交換しない限り清浄にならない。このため塗料かすが次第に処理槽内に溜まり、塗料かすが処理槽の底面や水面付近で固化するなど、除去しにくく、汚れの原因にもなる。
【0006】
そこで、処理槽内の塗料かすをスラッジ搬出コンベアによって処理槽外に搬送することも考えられた。しかし塗装ブースなどから送られてくる大量の被処理水は、供給管から処理槽内に勢いよく吐出されるため、被処理水が処理槽内で激しく攪拌されてしまう。このため塗料かすが水中に拡散してしまうことから、被処理水中の塗料かすをスラッジ搬出コンベアによって効率良く排出することができない。このため処理槽内に多量の塗料かすが滞留することになり、たとえば夜間や休日など処理装置が長時間停止されたときに多量の塗料かすが処理槽の底面に沈殿したり、処理槽の内壁に固着して腐敗するなどの問題が生じることがあった。
【0007】
従って本発明の目的は、塗料かすが混入した被処理水を効率よく浄化することができる塗料かす処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗料かす処理装置は、塗料かすを含む被処理水が供給される流入槽と、前記流入槽の流出口付近に位置する第1の端部と前記流出口から遠い側に位置する第2の端部とを有し前記第2の端部が第1の端部よりも高くなるよう傾斜した姿勢で配置されかつ被処理水がオーバーフローすることのできる上縁を有する一対の側壁を備えた樋部材と、前記樋部材の下方に配置され前記樋部材のそれぞれの上縁からオーバーフローした被処理水を受ける一対の傾斜面を有する流水案内板と、前記一対の側壁のそれぞれの下縁と前記流水案内板の上面との間に形成され前記樋部材を流れる被処理水に前記各傾斜面に向かうアンダーフローを生じさせるスリットと、前記各傾斜面を伝って流れ落ちる被処理水を収容する処理槽と、前記処理槽に配置され前記処理槽の水面に沿って移動する上側部分と前記処理槽の底面に沿って移動する下側部分とを有するスラッジ搬出コンベアと、前記処理槽内に流入した被処理水を濾過するフィルタ機構とを具備している。
【0009】
本発明の1つの実施の形態では、前記流水案内板は、前記流出口付近に位置する上流側の端部と、前記流出口から遠い側に位置する下流側の端部を有し、この下流側の端部が前記上流側の端部よりも高くなるよう傾斜した姿勢で前記樋部材の下側に配置されている。また前記スラッジ搬出コンベアは、第1の方向と第2の方向とに切換え可能なコンベア駆動機構を有し、該コンベアが前記第1の方向に移動するときに該コンベアの前記上側部分によって前記水面付近の塗料かすがスラッジ排出部に向って搬送され、該コンベアが前記第2の方向に移動するときに該コンベアの前記下側部分によって前記処理槽の底面に存在する塗料かすが前記スラッジ排出部に向って搬送される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樋部材を流れる被処理水が樋部材の一対の側壁の上縁からオーバーフローする。オーバーフローした被処理水は、樋部材の長手方向各部の流量ばらつきが少ない状態で流水案内板のそれぞれの傾斜面上に落下する。このため各傾斜面を伝って流れる被処理水が一箇所に集中することなく処理槽内の広い領域に流入し、被処理水が処理槽内で激しく攪拌されたり、水面が大きく波立つことを回避できる。このため塗料かすが被処理水の水面に浮きやすくなり、水面近くに浮いた塗料かすを水面に沿って移動するスラッジ搬出コンベアの上側部分によって効率良く掻き出すことができる。
【0011】
また、樋部材の下部付近において被処理水がスリットから常時流れるアンダーフローを生じることにより、樋部材の内側で沈殿しようとする塗料かすを流し出すことができるとともに、樋部材の上部では被処理水をオーバーフローさせることにより、被処理水に浮遊している塗料かすを樋部材の外に流し出すことができる。このため樋部材の内側に塗料かすが付着することを防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る塗料かす処理装置の正面図。
【図2】図1に示された塗料かす処理装置の平面図。
【図3】図1に示された塗料かす処理装置を図1中のF3−F3線に沿う断面で模式的に示す断面図。
【図4】図1に示された塗料かす処理装置の一部を斜め上方から見た斜視図。
【図5】図1に示された塗料かす処理装置の一部を正面側の上方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の1つの実施形態に係る塗料かす処理装置について、図1から図5を参照して説明する。
図1は塗料かす処理装置10の正面図、図2は塗料かす処理装置10の平面図である。塗料かす処理装置10は、流入槽(クッションタンク)11と、樋部材12と、樋部材12の下方に配置された流水案内板13と、処理槽14と、スラッジ搬出コンベア15と、フィルタ機構16と、フィルタ機構16によって濾過された水を収容するクリーン槽17などを備えている。
【0014】
流入槽11には、塗料かすを含む被処理水W1が塗装ブース等の塗装設備(図示せず)から供給管18によって供給されるようになっている。流入槽11は、被処理水W1を樋部材12に向けて流出させるための流出口20を有している。この流出口20は、ある程度の高さH1(図1に示す)と長さL1を有する一対の板部材20a,20bによって構成され、流入槽11内の被処理水を樋部材12に向かって高低差(落差)を伴って流出させるようになっている。
【0015】
図3は、塗料かす処理装置10を模式的に示す断面図である。図4と図5は、それぞれ塗料かす処理装置10の一部を上方から見た斜視図である。流入槽11に供給された被処理水W1は、流出口20から出て樋部材12に流入する。樋部材12は、互いに平行に配置された一対の側壁12a,12bを備えている。側壁12a,12bは、ステンレス鋼板等の耐腐食性を有する板金からなる。側壁12a,12bの上縁25,26には、それぞれ外側に向けて折曲げられたガイド部25a,26aが形成されている。
【0016】
樋部材12は水平方向に長い形状をなし、長手方向の一方(流出口20の下方付近)に位置する第1の端部31と、長手方向の他方(流出口25から遠い側)に位置する第2の端部32とを有している。
【0017】
この樋部材12は、第2の端部32が第1の端部31よりも高くなるように、水平面A(図1に示す)に対して角度θをなすよう傾斜した姿勢で配置されている。第2の端部32に止水壁33が設けられている。この止水壁33は、側壁12a,12bの上縁25,26から高さH2(図1に示す)だけ上方に突出している。樋部材12の傾斜角度θは樋部材12の流量に応じて設定される が、θの一例は2°である。
【0018】
樋部材12の上縁25,26は、被処理水が均等にオーバーフローするように、第1の端部31と第2の端部32とにわたって直線状に形成されている。流水案内板13の上面から樋部材12の上縁25,26までの高さh1,h2(図3に示す)は互いに等しい。このため樋部材12の内側を流れる被処理水W1の一部が、側壁12a,12bの上縁25,26のガイド部25a,25bの先端から流水案内板13に向かって、互いにほぼ均等の量が二方に分かれて流れ落ちる。
【0019】
樋部材12の下方に流水案内板13が配置されている。流水案内板13はウォーターシェッダー(water shedder)とも称される部材であり、ステンレス鋼板等の耐腐食性を有する板金からなり、樋部材12に沿って平行に配置されている。この流水案内板13は水平方向に長い形状をなし、長手方向の一方(流出口20の下方付近)に位置する上流側の端部41と、長手方向の他方(流出口20から遠い側)に位置する下流側の端部42とを有している。この流水案内板13は、下流側の端部42が上流側の端部41よりも高くなるように、水平面A(図1に示す)に対して角度θをなすよう傾斜した姿勢で配置されている。
【0020】
図3に示されるように流水案内板13は上に凸の形状をなし、その幅方向中央に最も高い稜線部13aが形成されている。稜線部13aは樋部材12の幅方向中央付近に位置している。稜線部13aを境に、稜線部13aの両側にそれぞれ傾斜面13b,13cが形成されている。これら傾斜面13b,13cは、稜線部13aから離れるにつれて低くなり、先端45,46が最も低くなるように傾斜している。
【0021】
このため樋部材12の一方の上縁25からオーバーフローした被処理水W1は、流水案内板13の一方の傾斜面13bの上に流れ落ちるとともに、この傾斜面13bを伝って傾斜面13bの先端45から処理槽14に流入する。樋部材12の他方の上縁26からオーバーフローした被処理水W1は、流水案内板13の他方の傾斜面13cの上に流れ落ちるとともに、この傾斜面13cを伝って傾斜面13cの先端46から処理槽14に流入することになる。
【0022】
側壁12a,12bの下縁50,51と流水案内板13との間にスリット52,53が形成されている。スリット52,53は樋部材12の上縁25,26と平行に形成されている。スリット52,53の開口幅G1,G2(図3に示す)は、流水案内板13の長手方向に実質的に一定である。スリット52,53の開口幅G1,G2は、スリット52,53から流出する被処理水の量が互いにほぼ等しくなるように設定されている。
【0023】
樋部材12の内側を流れる被処理水の一部はスリット52,53を通り、流水案内板13の傾斜面13b,13cに向かって流出する。すなわちアンダーフローを生じる。この場合、一方のスリット52から流出する被処理水が流水案内板13の一方の傾斜面13bに向かい、他方のスリット53から流出する被処理水が流水案内板13の他方の傾斜面13cに向かう。
【0024】
図1に示すように処理槽14の側部に、斜め上方に向かって延出する掻き上げ部60が形成されている。掻き上げ部60に第1のガイド板61と第2のガイド板62が配置されている。掻き上げ部60の上部に、スラッジ排出部65とコンベア駆動機構66が配置されている。コンベア駆動機構66は、スラッジ搬出コンベア15を駆動するためのモータを含んでいる。スラッジ排出部65とコンベア駆動機構66とは、処理槽14の水面W2(図3に示す)よりも高い位置に設けられている。
【0025】
スラッジ排出部65の下方にスラッジ回収ボックス67が置かれている。スラッジ回収ボックス67の底部67aは、スラッジ回収ボックス67に収容された塗料かすに付着している水を排出できるように通水性を有している。底部67aから排出された水は、流通部68を通って掻き上げ部60に戻される。このためスラッジ回収ボックス67に収容された塗料かすは、比較的短時間でほぼ乾燥状態となる。
【0026】
スラッジ搬出コンベア15は、上側のスプロケット70と下側のスプロケット71との間を無端移動する一対のチェーン72,73(図3に示す)と、チェーン72,73に所定間隔で取付けられた複数のスクレーパ74とを有している。このコンベア15は、処理槽14の水面W2に沿って移動する上側部分15aと、処理槽14の底面14aに沿って移動する下側部分15bとを有している。
【0027】
前記した流水案内板13の一方の傾斜面13bの先端45は、コンベア15の上側部分15aの一方のチェーン72に向かって被処理水を流すことができるように、一方のチェーン72を臨む位置に配置されている。他方の傾斜面13cの先端46は、コンベア15の上側部分15aの他方のチェーン73に向かって被処理水を流すことができるように、他方のチェーン73を臨む位置に配置されている。
【0028】
スラッジ搬出コンベア15は、コンベア駆動機構66の正逆回転可能なモータの回転方向に応じて、図1に矢印M1で示す第1の方向と、矢印M2で示す第2の方向に切換えることができる。コンベア駆動機構66のモータは、切換手段として機能するタイマを含む制御部(図示せず)によって、予め設定された時間ごとに回転方向を切換えることができる。この場合のタイマは、第1の方向M1が第2の方向M2よりも長時間となるように、方向を切換えるタイミング(インターバル)が設定されている。なお、手動で操作されるスイッチによって、移動方向M1,M2を切換えてもよい。
【0029】
図1に示されるように、処理槽14にフィルタ機構16が設けられている。フィルタ機構16は、少なくとも1つのフィルタドラム81と、フィルタドラム81を回転させるフィルタ回転機構82を含んでいる。フィルタドラム81は、例えばフォトエッチングによって形成された多数の小孔を有している。フィルタドラム81は処理槽14内の水面W2の下に配置され、水平方向に延びる軸線回りに回転することができる。このフィルタドラム81は、コンベア15の上側部分15aと下側部分15bとの間に配置されている。
【0030】
フィルタドラム81の周面に、フィルタドラム81の目詰まりを防ぐための掻き取り部材85(図1に一部を示す)が接している。この掻き取り部材85によって掻き取られた塗料かすは、処理槽14の底面14aに向けて落とされる。フィルタドラム81の内側の流路86は、クリーン槽17に設けられたオーバーフロー槽90(図3に示す)に連通している。クリーン槽17には、濾過後の水を再び塗装ブースに送るためのポンプ91が設けられている。
【0031】
オーバーフロー槽90は、処理槽14の水面W2の高さを保持するための水面保持手段として機能する。フィルタドラム81を通って濾過された被処理水W1は、流路86からオーバーフロー槽90を経てクリーン槽17に流入する。このオーバーフロー槽90により、処理槽14内の水面W2がコンベア15の上側部分15aのスクレーパ74と接することができる高さに維持される。
【0032】
次に前記構成の塗料かす処理装置10の作用について説明する。
塗装ブースなどの塗装設備から送られてくる塗料かすを含む被処理水W1は、図1に示す供給管18から流入槽11に供給される。流入槽11に供給された被処理水W1は、図5に示すように、流出口20から樋部材12に向かって高低差を伴って流出する。
【0033】
樋部材12の内側に流入した被処理水W1は、樋部材12の第1の端部31から第2の端部32の止水壁33に向かって流動しつつ、被処理水W1の一部が樋部材12の上縁25,26からオーバーフローして流水案内板13の傾斜面13b,13cの上に落ちる。また被処理水W1の一部は、スリット52,53を通って流水案内板13の傾斜面13b,13cに向かう。
【0034】
一方の傾斜面13b上の被処理水は、この傾斜面13bに沿って流れ、傾斜面13bの先端45から一方のチェーン72に向かって流れ落ち、処理槽14内に流入する。他方の傾斜面13c上の被処理水は、この傾斜面13cに沿って流れ、傾斜面13cの先端46から他方のチェーン73に向かって流れ落ち、処理槽14内に流入する。このためチェーン72,73に塗料かすが付着して固化してしまう不具合を防ぐことができる。
【0035】
ここで仮に、樋部材12が水平面Aと平行となるように水平に配置されていると、流出口20から樋部材12に流れ込む被処理水が止水壁33に向かって勢いよく流れて止水壁33にぶつかるため、第2の端部32付近のオーバーフロー量が第1の端部31付近のオーバーフロー量よりも多くなる。すなわち樋部材12が水平に配置されていると、樋部材12からオーバーフローする被処理水の量が樋部材12の長手方向各部で大きくばらつく原因となる。そうすると、流水案内板13上に落ちる被処理水の量が流水案内板13の長手方向各部で大きくばらついてしまう。
【0036】
しかるに本実施形態の樋部材12は、下流側の第2の端部32が高くなるように角度θをなして傾斜した姿勢で配置されているため、止水壁33に向かって流れる被処理水が第2の端部32付近で多くのオーバーフローを生じることを抑制できる。しかも樋部材12内の被処理水を一対の側壁12a,12bの上縁25,26から二方に分けてオーバーフローさせることができる。オーバーフローした被処理水は、流水案内板13の各傾斜面13b,13cが受ける。また樋部材12内の被処理水の一部は、一対のスリット52,53から二方に分かれて流水案内板13の各傾斜面13b,13cに向かう。
【0037】
このため流水案内板13の各傾斜面13b,13cの上を被処理水がほぼ均等に近い状態で流れるようになり、流水案内板13の長手方向各部における流量のばらつきを抑制できる。その結果、処理槽14内の広い領域に被処理水を分散流入させることができる。このため処理槽14内の水面が大きく波立ったり、処理槽14内で被処理水が攪拌される程度を小さくすることができる。このため塗料かすが水面W2に浮きやすくなり、塗料かすが水中に拡散してしまうことが抑制される。
【0038】
水面W2付近に浮遊する塗料かすS1(図3に示す)は、スラッジ搬出コンベア15が第1の方向M1に移動する際に、コンベア15の上側部分15aのスクレーパ74によってスラッジ排出部65に搬送され、スラッジ回収ボックス67に落とされる。このため処理槽14内の塗料かすを効率良く排出することができる。
【0039】
一方、処理槽14の底面14aに沈んでいる塗料かすS2(図3に示す)は、スラッジ搬出コンベア15が第2の方向M2に移動する際に、コンベア15の下側部分15bのスクレーパ74によって、処理槽14の底面14aからスラッジ排出部65に搬送され、スラッジ回収ボックス67に落とされる。
【0040】
その一方で、処理槽14内の被処理水がフィルタドラム81によって濾過される。濾過された水W3は、フィルタドラム81の内側の流路86とオーバーフロー槽90を経てクリーン槽17に流入する。そしてポンプ91によって汲み上げられ、バルブ92を経て再び塗装ブース等に送られて再利用される。フィルタドラム81の周面に吸着された塗料かすは、フィルタドラム81の回転に伴い、掻き取り部材85によって、処理槽14の底面14aに向けて落とされる。
【0041】
以上説明したように本実施形態の塗料かす処理装置10によれば、樋部材12から流水案内板13上に流出した被処理水が、流水案内板13の先端45,46から処理槽14内の広い領域に流入し、一箇所に集中することがないため、処理槽14内の水面W2が大きく波立つことを回避できるとともに、処理槽14内の被処理水が激しく攪拌されることを回避できる。このため塗料かすが水面W2に浮きやすくなり、水面W2に浮いた塗料かすをスラッジ搬出コンベア15によって効率良く搬出することができる。このため処理槽14内の塗料かすを早い段階で除去することができ、塗料かすが処理槽14内で固化することを防止できるものである。そしてフィルタドラム81によって浄化されたクリーンな水W3をポンプ91によって再循環させることができる。
【0042】
また、樋部材12の下部のスリット52,53から被処理水を常時流すアンダーフローにより、樋部材12の内側で沈殿しようとする塗料かすを流し出す効果がある。さらに樋部材12の上部から被処理水を常時オーバーフローさせることにより、被処理水に浮遊している塗料かすを樋部材12の外に流し出す効果がある。オーバーフローさせないで樋部材12の内側で水面を保つと、浮遊している塗料かすが水面を漂い、樋部材12の内面に付着して固まってしまう。このため本実施形態のように樋部材12の被処理水を常にオーバーフローさせ、浮遊している塗料かすを追い出すことにより、樋部材12に塗料かすが付着することを防止できるものである。
【0043】
なお、この発明を実施するに当たり、流入槽や樋部材、流水案内板をはじめとして、処理槽やスラッジ排出コンベア、フィルタ機構、クリーン槽など、塗料かす処理装置の構成要素を本発明を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
10…塗料かす処理装置、11…流入槽、12…樋部材、12a,12b…側壁、13…流水案内板、13a,13b…傾斜面、14…処理槽、15…スラッジ搬出コンベア、15a…上側部分、15b…下側部分、16…フィルタ機構、17…クリーン槽、20…流出口、25,26…上縁、31…第1の端部、32…第2の端部、33…止水壁、52,53…スリット、65…スラッジ排出部、72,73…チェーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料かすを含む被処理水が供給される流入槽と、
前記流入槽の流出口付近に位置する第1の端部と前記流出口から遠い側に位置する第2の端部とを有し、前記第2の端部が第1の端部よりも高くなるよう傾斜した姿勢で配置されかつ被処理水がオーバーフローすることのできる上縁を有する一対の側壁を備えた樋部材と、
前記樋部材の下方に配置され、前記樋部材のそれぞれの上縁からオーバーフローした被処理水を受ける一対の傾斜面を有する流水案内板と、
前記一対の側壁のそれぞれの下縁と前記流水案内板の上面との間に形成され、前記樋部材を流れる被処理水に前記各傾斜面に向かうアンダーフローを生じさせるスリットと、
前記各傾斜面を伝って流れ落ちる被処理水を収容する処理槽と、
前記処理槽に配置され前記処理槽の水面に沿って移動する上側部分と前記処理槽の底面に沿って移動する下側部分とを有するスラッジ搬出コンベアと、
前記処理槽内に流入した被処理水を濾過するフィルタ機構と、
を具備したことを特徴とする塗料かす処理装置。
【請求項2】
前記流水案内板は、前記流出口付近に位置する上流側の端部と、前記流出口から遠い側に位置する下流側の端部を有し、この下流側の端部が前記上流側の端部よりも高くなるよう傾斜した姿勢で前記樋部材の下側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の塗料かす処理装置。
【請求項3】
前記スラッジ搬出コンベアは、第1の方向と第2の方向とに切換え可能なコンベア駆動機構を有し、該コンベアが前記第1の方向に移動するときに該コンベアの前記上側部分によって前記水面付近の塗料かすがスラッジ排出部に向って搬送され、該コンベアが前記第2の方向に移動するときに該コンベアの前記下側部分によって前記処理槽の底面に存在する塗料かすが前記スラッジ排出部に向って搬送されることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料かす処理装置。
【請求項4】
前記フィルタ機構は、前記処理槽内に回転可能に設けられたフィルタドラムと、該フィルタドラムによって濾過された水をクリーン槽に導く流路と、該フィルタドラムの周面に接することにより該フィルタドラムの目詰まりを防ぐ掻き取り部材とを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の塗料かす処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−17914(P2013−17914A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151136(P2011−151136)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【特許番号】特許第4848475号(P4848475)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(594204756)株式会社ブンリ (11)
【Fターム(参考)】