説明

塗料用溶剤およびその製造方法

【課題】合成樹脂に対する溶解力を落とさず、塗装性や速乾性を有し、法規制の変更等にも対応して入手可能で、人体と環境にも悪影響の少ない塗料用溶剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】好ましくは灯油留分を原料とし、沸点120℃〜200℃の低沸点イソパラフィンを主剤とし、これにグリコールエーテルを加えてなる塗料用溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用溶剤およびその製造方法に関し、特に、合成樹脂塗料用に用いられ、人体や環境への影響の少ない塗料用溶剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用や家庭用を問わず多種の塗料が利用され、利用範囲の広がりとともに、塗料の特性あるいはその溶剤の特性等に対して使用上での要求に加え、社会的な制約が課されている。具体的には、塗装対象物に対応した塗着性や耐熱性あるいは耐候性等を有する塗料、塗装の容易さ、塗装後の乾燥時間の短縮、あるいは人体や環境への影響の少ない塗料や溶剤等々、その要求事項は様々である。塗料は、一般に、水性塗料,油性塗料、合成樹脂塗料等に分類される。中でも、乾燥時間の短い塗料としては、合成樹脂塗料が多用され、その溶剤として多く用いられているシンナーにも速乾性が要求される。
【0003】
こうした塗料用シンナーは、「一般にペンキと呼ばれる油性塗料の希釈・洗浄等の用途に用いられるが、他にも塗料用シンナーで希釈可能な、一液タイプ・二液タイプウレタン塗料、エポキシ塗料などの希釈・洗浄などにも多く用いられている。塗料用シンナーは、一般にミネラルターペンの様な芳香族炭化水素類を多く含む石油系炭化水素混合物が多く使用されている。これらの成分であるトルエン、キシレンに代表される芳香族炭化水素類は、溶解力が強く、適度な乾燥性を持ち、塗料用シンナーに適している。しかし、これらの芳香族炭化水素類は、近年、シックハウスなどに見られる有毒性が注目され、特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律(以下「化管法」という)、溶剤中毒予防規則(以下「有機則」という)や、各地方条例等により、使用量・排出量が管理され、環境流出の低減が推進されている。このため、これら芳香族炭化水素類を用いた塗料用溶剤も、これらの法規制の対象となり、使用が著しく制限されることとなった」。(例えば特許文献1参照)
【0004】
このため、「こうした芳香族炭化水素を殆ど含有しなくとも、塗料溶解性・乾燥性を維持し、かつ従来の塗料用シンナーよりも法規制が少なく、人体と環境にも悪影響の少ない塗料用溶剤」が求められ、新たな開発製品が提案されている。具体的には、「1種または2種以上の脂肪族炭化水素類と、エステル変性グリコールエーテル誘導体とを有する塗料用溶剤であって、好ましくは脂肪族炭化水素が、ノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびナフテンから選択される1種または2種以上であり、エステル変性グリコールエーテル誘導体が、グリコールエーテル部がプロピレングリコールモノアルキルエーテルであり、エステル部が酢酸またはプロピオン酸である構成の塗料用溶剤」(例えば特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−022149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような塗料用溶剤あるいは従前の塗料用溶剤には、塗装性や速乾性あるいは安全性という普遍的な特性とともに、多くの資質・特性が要求され、それぞれにいくつかの課題がある。さらに、上記のような法的あるいは環境面の課題に加え、以下に挙げるような問題点や課題が生じることがあった。
(i)塗料用溶剤の成分あるいはその一部が、特定の化学物質に限定される場合においては、コスト面のみならず量的な確保あるいは適用範囲が限定されることから、広い用途での要求に対応できないことがあった。特に、特殊な特定の化学物質の場合には、大きな課題となる。
(ii)化管法や有機則等は、新たな環境や人体に対する影響の発見や社会的要請により見直しがされることがある。塗料用溶剤に対しても、こうした法改正等の適用により、従前使用可能であった特定の溶剤,試剤あるいは化学物質が使用できない場合が起り、その代替として使用可能な溶剤が困難となることがある。具体的には、従前あらゆるシンナーの主力溶剤として用いられていたベンゼン・トルエン・キシレン等の芳香族系炭化水素や最近ではアルキルベンゼンなどが対象物質になった。
(iii)塗料用溶剤の中には、従前の石油精製プロセスや化学プロセスあるいは工業製品の製造プロセス等において発生する副生成物や余剰製品あるいは廃棄処理物質等を原料として利用し作製される溶剤あるいはこれを利用した溶剤がある。こうした場合、生産量の変化に伴う原料の入手量の変化、あるいは新たなプロセスへの変更に伴う原料入手の停止等の事態が生じ、その代替として使用可能な溶剤が困難となることがある。
【0007】
本発明の目的は、主として合成樹脂塗料に用いる溶剤として、当該合成樹脂に対する溶解力を落とさず、塗装性や速乾性を有し、法規制の変更等にも対応して入手可能で、人体と環境にも悪影響の少ない塗料用溶剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す塗料用溶剤およびその製造方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明に係る塗料用溶剤は、沸点120℃〜200℃の低沸点イソパラフィンを主剤とし、これにグリコールエーテルを加えてなることを特徴とする。
合成樹脂塗料に用いられる塗料用溶剤には、上記のように多くの課題がある。このとき、個々の課題に対しては、それぞれの固有の要求にあった特性の有機溶剤を選択することによって対応することが可能であるが、上記のように法規制等代替溶剤の選定は、経済的な条件を含め、従前にない困難性を有している。本発明者は、各種無機あるいは有機溶剤の特性だけではなく、これらの生産性や用途を含む実施可能な態様(国内生産設備や海外市場動向)を検証し、合成樹脂塗料に用いられる塗料用溶剤として、非常に溶解力が高く、塗装性や速乾性法規制の変更等にも対応して入手可能で、人体と環境にも悪影響の少ない特性を有する溶剤を作製することができることを見出した。具体的には、主剤として低沸点イソパラフィンを選択するとともに、これにグリコールエーテルを加えた溶剤を作製することによって、これらの諸特性を確保することが可能となった。なお、ここでいう「低沸点」とは、表記の通り沸点約200℃以下の物質特性をいう。
【0010】
本発明は、上記塗料用溶剤であって、前記低沸点イソパラフィンが、灯油留分を原料とし、沸点120℃〜200℃からなる蒸留成分であることを特徴とする。
低沸点イソパラフィンとして、単体成分,例えばイソデカン(沸点168℃)により構成される溶剤あるいはいくつかの単体成分を混合した溶剤を用いることも可能であるが、灯油留分が低沸点イソパラフィンを主成分とすることから、グリコールエーテルとの混合物について塗料用溶剤としての利用可能性を検証したところ、本願目的を十分達成できる特性を有することが確認できた。また、こうした一般的に使用されている商品を原材料とすることによって、コスト面や入手可能性等において優位である。なお、ここでいう「灯油留分」とは、例えばJIS K2203(2009)に準ずる品質を有するものであり、かつ蒸留後において上記法規制に抵触しないように芳香族炭化水素が殆ど含まれない蒸留成分をいう。
【0011】
本発明は、上記塗料用溶剤であって、前記グリコールエーテルが、セロソルブ系あるいはプロピレングリコールエーテル系であることを特徴とする。
塗料用溶剤において、塗料に対する高い親和性を有する従前の芳香族炭化水素等と同じ機能を有する試剤として、上記のようにグリコールエーテルが非常に好適であることを見出した。本発明は、その中でもさらに塗料の高い溶解度を確保することができる試剤を検証した結果、例えばブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル,沸点172℃)等のセロソルブ系あるいはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM,沸点121℃)等のプロピレングリコールエーテル系がより好適であることを見出した。
【0012】
本発明は、上記塗料用溶剤であって、前記低沸点イソパラフィンを約65〜70%、前記グリコールエーテルを約30〜35%を含有することを特徴とする。
塗料用溶剤に要求される上記特性のうち、塗料の溶解性や速乾性という主要な特性は、溶剤の組成に依存する。本発明は、使用される合成樹脂塗料の特性との関係から、2つの試剤がこうして範囲にあることが、溶解性や速乾性をより向上させるために、好ましいことを見出した。
【0013】
本発明に係る塗料用溶剤の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1)灯油を蒸留し、120〜200℃の留分を取り出す工程
(2)前記留分約65〜70重量部にグリコールエーテル約30〜35重量部を加えて塗料用溶剤を作製する工程
上記のように、灯油留分中には低沸点イソパラフィンが多く含まれることから、これを塗料用溶剤として用いることが可能であり、その使用範囲および使用量の大きさから非常に入手が容易で安定した原料供給源として利用することができる。本発明は、塗料用溶剤の製造方法として、こうした原料である灯油入手から最終グリコールエーテルの工程を確定にするとともに、これらの主要工程を明確にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る塗料用溶剤の製造方法を例示する全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係る塗料用溶剤は、沸点120℃〜200℃の低沸点イソパラフィンを主剤とし、これにグリコールエーテルを加えてなること特徴とする。主として合成樹脂塗料に用いる溶剤として、当該合成樹脂に対する溶解力を落とさず、塗装性や速乾性を有し、法規制の変更等にも対応して入手可能で、人体と環境にも悪影響の少ない塗料用溶剤を構成することができる
【0016】
ここで、本発明の塗料用溶剤は、低沸点イソパラフィンが約65〜70%、グリコールエーテルが約20〜30%含まれることが好ましい。こうした範囲にある溶剤を作製することによって、より溶解性や速乾性の高い塗料用溶剤として使用することができる。つまり、低沸点イソパラフィンの成分比率を70%以上に大きくすると、高い溶解機能を有するグリコールエーテルの比率が低下することとなり、逆に低沸点イソパラフィンの成分比率を65%以下に小さくすると、グリコールエーテルの溶解機能が高くなり、乾燥時の塗料の再溶解などによる速乾性の低下の可能性がある。また、例えば、建築用塗装等のように、同一部分に複数回塗装を繰り返す場合には、下地の塗装膜を損なうことなく再塗装を行う必要があるが、30%以上のグリコールエーテルによって溶解機能が高くなりすぎると、下地の塗装膜の溶解あるいはムラ等の発生が生じることがある。
【0017】
<低沸点イソパラフィン>
本発明に係る塗料用溶剤の主剤として、沸点120℃〜200℃の低沸点イソパラフィンを用いる。塗料用溶剤として使用可能な溶剤の沸点は、使用前の塗料の安定性から120℃以上が好ましく、さらに好ましくは150℃以上である。一方、速乾性が要求されることから、220℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。ここで、法の適用性あるいは化学物質としての安定性や安全性あるいは入手の容易性を考慮すれば、パラフィン系炭化水素が好ましいことは、既述の通りである。また、溶剤の入手の容易性をさらに検証すると、石油化学工業製品である直鎖のノルマルパラフィン系溶剤については、n−オクタン等沸点120℃以下の特定の炭化水素の入手は容易であるが、沸点120℃以上の炭化水素は、その用途が限定されることから入手が容易とはいえない。また、合成樹脂の溶解性は、沸点の高い炭素数が多い炭化水素ほど高い傾向があり、同じ炭素数のノルマルパラフィン系炭化水素とイソパラフィン系炭化水素を比較した場合、後者の方が、沸点が低い傾向がある。例えば、ノルマルデカン174℃に対するイソデカン167℃、あるいはノルマルオクタン126℃,イソオクタン99℃等を挙げることができる。一方、イソパラフィン系炭化水素は、後述するように、灯油留分の主成分であることから、非常に入手が容易である。本発明においては、こうした特性や使用実態あるいは将来的な入手容易性を総合的に勘案し、イソパラフィン系炭化水素を塗料用溶剤に選定した。また、このとき、イソデカン等特定の成分から構成される溶剤を用いることも可能であるが、後述する灯油留分のような複合成分を用いても、本発明の目的を十分達成できる特性を有することが確認できた。
【0018】
ここで、低沸点イソパラフィンとして、灯油留分を原料とし、沸点120℃〜200℃からなる蒸留成分を用いることが好ましい。灯油留分は、通常、石油あるいは改質油から精製され、イソパラフィンを主成分とする沸点160℃〜270℃のからなる蒸留成分である。市販の液体燃料として、大量かつ非常に身近に入手可能な試剤であるとともに、石油系有機溶剤として、多くの用途に使用されている。従って、灯油留分を蒸留し、低沸点成分として沸点120℃〜200℃として取出すことによって、上記低沸点イソパラフィンを構成し、グリコールエーテルとの混合物について塗料用溶剤としての利用することが可能となった。こうした一般的に使用されている商品を原材料とすることによって、所望の特性を確保ながら、低コストで容易に入手することが可能となった。
【0019】
本発明にいう沸点120℃〜200℃の低沸点イソパラフィン単体としては、例えば、イソノナン(沸点約150℃)、イソデカン(沸点約170℃)、イソウンデカン(沸点約190℃)、イソドデカン(沸点約180℃)、2−メチルウンデカン、2,10−ジメチルウンデカンなどが挙げられる。これらのイソパラフィンは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、これらの脂肪族炭化水素の一種類以上を主成分として含む炭化水素混合物として用いてもよい。
【0020】
<グリコールエーテル>
本発明に係る塗料用溶剤には、グリコールエーテルを加える。グリコールエーテルを加えることによって、従前の芳香族炭化水素等と同じ機能を有し、低沸点イソパラフィンとの親和性を有するとともに、合成樹脂塗料の高い溶解度を確保し、塗装性や速乾性法規制の変更等にも対応することができる。利用できるグリコールエーテルには、特に制限はないが、速乾性が要求されることから、イソパラフィンと同程度の沸点を有するものが好ましい。具体的には、セロソルブ系あるいはプロピレングリコールエーテル系であることが好ましい。
【0021】
セロソルブ系のグリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルソロセルブ,沸点125℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルソロセルブ,沸点136℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点141℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ,沸点172℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点160℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールノルマルブチルエーテル(沸点231℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点249℃)等が挙げられる。
【0022】
また、プロピレングリコールエーテル系としては、プロピレングリコールメチルエーテル(PM,沸点121℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、プロピレングリコールノルマルプロピルエーテル(沸点150℃)、プロピレングリコールイソブチルエーテル(沸点157℃)、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル(沸点170℃)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB,沸点174℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(沸点190℃)、ジプロピレングリコールノルマルプロピルエーテル(沸点212℃)、ジプロピレングリコールノルマルブチルエーテル(沸点229℃)等が挙げられる。
【0023】
これらのグリコールエーテルの中でも、塗料の溶解力やコスト等から、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)やPM(プロピレングリコールメチルエーテル)が好ましい。特にブチルセロソルブは、イソパラフィンと沸点が近く同等の乾燥機能を有するとともに、上記法規制に適合する消防法第2石油類として、ラッカーや樹脂溶剤、粘度調整剤、印刷インキ、液体洗剤等多用途に使用され、入手が容易であることから、より好ましい。
【0024】
<本袋体の製造方法>
本発明における塗料用溶剤の製造方法(以下「本製造方法」という)は、次ぎの2つの主要な工程を含むことを特徴とする。
(1)灯油を蒸留し、120〜200℃の留分を取り出す工程
(2)留分約65〜70重量部にグリコールエーテル約30〜35重量部を加えて塗料用溶剤を作製する工程
具体的には、灯油およびグリコールエーテルを原料として、以下の工程によって、本発明に係る塗料用溶剤が作製される。グリコールエーテルとしてブチルセロソルブを用いた場合について、図1に例示するプロセスに沿って説明する。
【0025】
(1)灯油を蒸留し、120〜200℃の留分を取り出す工程
120〜200℃の留分を取り出す工程は、詳しくは、図1に示すように、以下の工程から構成される。
(1−1)灯油を所定量(例えば10,000L)準備する工程
原料としての灯油(沸点160〜270℃)は、例えばJIS K2203(2009)に準ずる品質が確保されるものであれば、特定の石油精製プロセスから供給されたものや市販のもの等を問うものではない。また、市販の灯油においては芳香族炭化水素が殆ど含まれないが、もし含まれる場合であっても、200℃以下の蒸留成分として含まれないものは使用することができる。
(1−2)灯油を常温の液体状態で蒸留装置の塔下部に導入する工程
蒸留装置(蒸留塔)の規模や構成に限定はないが、一般には、塔下部にリボイラが設けられ、約200℃程度に加温された灯油は、気化されて蒸留塔上部に上昇し、蒸留塔上部のさらに上部の塔頂部には凝縮器および凝縮液取出し部が設けられ、蒸散した灯油成分のうち200℃以下の留分が凝縮して凝縮液取出し部に溜められる構成を有する。
(1−3)120〜200℃の蒸留成分を取り出す工程
凝縮液取出し部に溜められた留分を連続あるいはバッチ的に塔外に取り出す。このとき、蒸留成分の殆どは160〜200℃の沸点を有するが、原料中に共沸混合物として150℃以下の留分を含む場合には、本蒸留成分として含まれる。また、塔下部には、200℃以上の留分と凝縮液として落下してきた200℃以下の留分の一部が残留することから、該残留液を蒸留塔上部に循環流とすることによって、効率よく200℃以下の留分を取り出すことができる。
【0026】
(2)留分にグリコールエーテルを加えて塗料用溶剤を作製する工程
次に、留分約65〜70重量部にグリコールエーテル約30〜35重量部を加えて塗料用溶剤を作製する。詳しくは、以下の工程による(図1参照)。
(2−1)グリコールエーテルを準備する工程
例えば、ブチルソロセルブを所定量(例えば5,000L)準備する。準備するブチルソロセルブは、ラッカー等に用いられる既述のような試剤を使用することができる。
(2−2)灯油留分にグリコールエーテルを加える工程
上記(1−3)の灯油留分を導入した所定の容器に、準備したブチルソロセルブを導入する。このときの導入量は、留分約65〜70重量部に対しグリコールエーテル約30〜35重量部とする。混合比率は、使用される合成樹脂の仕様に応じて調整される。
(2−3)容器内の混合試剤を攪拌し、均一に混合された塗料用溶剤を作製する工程
これらの操作は、例えば約20,000L容量の容器内で導入された各試剤をバッチ的に処理することができる。また、これより少容量の容器に連続的に導入して連続処理することができる。このとき混合に伴う発熱があれば、容器を冷却し、試剤の蒸散およびそれに伴う混合比率の変化が生じないようにする。
【0027】
以上の工程によって作製された塗料用溶剤は、所定容量のタンクに注入され、仕様に対応した合成樹脂材料と混合され、所望の塗料が作製される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点120℃〜200℃の低沸点イソパラフィンを主剤とし、これにグリコールエーテル系溶剤を加えてなることを特徴とする塗料用溶剤。
【請求項2】
前記低沸点イソパラフィンが、灯油留分を原料とし、沸点120℃〜200℃からなる蒸留成分であることを特徴とする請求項1記載の塗料用溶剤。
【請求項3】
前記グリコールエーテルが、セロソルブ系あるいはプロピレングリコールエーテル系であることを特徴とする請求項1または2記載の塗料用溶剤。
【請求項4】
前記低沸点イソパラフィンを約65〜70%、前記グリコールエーテルを約30〜35%を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の塗料用溶剤。
【請求項5】
以下の工程を含むことを特徴とする塗料用溶剤の製造方法。
(1)灯油を蒸留し、120〜200℃の留分を取り出す工程
(2)前記留分約65〜70重量部にグリコールエーテル約30〜35重量部を加えて塗料用溶剤を作製する工程。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116988(P2012−116988A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269576(P2010−269576)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(510318790)環境パートナーシップ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】