説明

塗料組成物、フィンおよび熱交換器

【課題】充分に高い親水性が長期にわたって得られる塗膜を形成できるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物を提供する。
【解決手段】塗料組成物は、親水性樹脂と、水溶性セルロースとを含み、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物であって、前記親水性樹脂が、下記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマー(ただし、R1はHまたはCHである。)と、アルカリ金属の水酸化物とを含み、pHが3.0〜5.0の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、フィンおよび熱交換器に関し、特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンや工業用熱交換器などの熱交換器のフィンには、軽量性、加工性、熱伝導性から、アルミニウムやアルミニウム合金が広く使用されている。
また、エアコンなどの熱交換器では、空気中から凝縮した水滴がフィンに付着すると、通風抵抗が増加して圧力損失が大きくなり、熱交換器の能力低下が生じる。また、フィンに付着した水滴が、熱交換器の外部に飛散する場合もある。このため、従来から、フィンへの水滴の付着を防止するとともに、フィンに付着した水を容易に流下させるために、フィンの表面に親水性皮膜を形成することが試みられてきた。
【0003】
また、近年、熱交換器の小型化やエネルギー消費効率(COP)の向上を図るために、フィンの形状が複雑化されるとともに、フィンのピッチが狭められる傾向にある。フィンに水滴が付着することによる悪影響は、フィンの形状が複雑であるほど、また、フィンのピッチが狭いほど顕著となるため、近年、フィンの表面の親水性をより一層向上させることが要求されている。
この問題を解決するために、相溶性の異なる複数の樹脂を使用して、樹脂系皮膜の表面形態を祖面化し、表面積を増大させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2967855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、初期の親水性は高いが、親水性の効果が長期にわたって維持できないことが問題となっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、充分に高い親水性が長期にわたって得られる塗膜を形成できるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物を提供することを課題としている。
【0006】
また、本発明は、軽量で加工性、熱伝導性に優れたものであって、しかも、長期にわたって充分に高い親水性が得られる塗膜が、表面に形成されているフィンを提供することを課題としている。
また、本発明は、空気中から凝縮した水滴がフィンに付着することによる圧力損失が小さく、長期にわたって使用した場合でも熱交換能力が低下しにくく、フィンに付着した水滴の外部への飛散が生じにくい熱交換器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗料組成物は、親水性樹脂と、水溶性セルロースとを含み、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物であって、前記親水性樹脂が、下記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマー(ただし、R1はHまたはCHである。)と、アルカリ金属の水酸化物とを含み、pHが3.0〜5.0の範囲であるものであることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
また、上記の本発明の塗料組成物は、前記アクリルポリマー100質量部に対して1〜3質量部のアニオン系の界面活性剤が含まれているものとすることができる。
また、上記の本発明の塗料組成物は、前記水溶性セルロースが、前記アクリルポリマー100質量部に対して10〜40質量部含まれているものとすることができる。
【0010】
また、本発明のフィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、表面に、上記のいずれかの塗料組成物から形成された塗膜が形成されてなるものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の熱交換器は、本発明のフィンを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料組成物は、親水性樹脂と、水溶性セルロースとを含み、前記親水性樹脂が、上記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマーと、アルカリ金属の水酸化物とを含み、pHが3.0〜5.0の範囲であるものであるため、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、充分に高い親水性が長期にわたって得られる塗膜を形成できるものとなる。
【0013】
また、本発明のフィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、表面に、上記のいずれかの塗料組成物から形成された塗膜が形成されてなるものであるので、長期にわたって充分に高い親水性が得られる塗膜が、表面に形成されているものとなる。しかも、本発明のフィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるものであるので、軽量で加工性、熱伝導性に優れたものとなる。
また、本発明の熱交換器は、本発明のフィンを備えているので、長期にわたって使用した場合でも空気中から凝縮した水滴がフィンに付着しにくく、フィンに水滴が付着することによる圧力損失の低下や、フィンに付着した水滴の外部への飛散が生じにくいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の塗料組成物、フィンおよび熱交換器について詳細に説明する。
「塗料組成物」
本発明の塗料組成物は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物であり、親水性樹脂と、水溶性セルロースとを含むものである。
【0015】
「親水性樹脂」
本発明の塗料組成物を構成する親水性樹脂は、下記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマー(ただし、R1はHまたはCHである。)と、アルカリ金属の水酸化物とを含むものである。親水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は50,000〜1000,000が望ましい。50,000未満だと塗膜の密着性に劣り、1000,000を超えると非常に粘度が高くなるため、塗料製作時の取扱いが難しく、また、塗工時にロールで気泡を巻き込み易くなることから、気泡を起因とする筋状の塗工不良が発生する。
【0016】
【化2】

【0017】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられ、上記のいずれかを単独あるいは混合して使用できる。
【0018】
また、親水性樹脂のpHは、3.0〜5.0の範囲であり、3.0〜4.0の範囲であることがより好ましい。親水性樹脂のpHが3.0〜4.0の範囲であると、塗料組成物から形成された塗膜の密着性がより優れたものとなるとともに、塗膜に汚染物質が付着した場合における親水性がより一層優れたものとなる。
親水性樹脂のpHが3.0未満であると、アルカリ金属の水酸化物の量が不十分となり、アクリルポリマーを構成するカルボキシル基からアルカリ金属イオンを電離させる効果が十分に得られず、カルボン酸陰イオンの量が不足して、塗料組成物から形成された塗膜の親水性が十分に得られない。
【0019】
また、親水性樹脂のpHが5.0を超えると、塗料組成物から形成された塗膜の表面に凹凸が形成される。塗膜の表面に形成された凹凸は、塗膜を形成するために塗料組成物を乾燥させる過程において、塗料組成物のアクリルポリマーを構成するカルボキシル基のプロトンの電離度が低下すると共に、塗料組成物中におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度が必要以上に高くなり、pHがアルカリ性とされることによって、塗料組成物中における水溶性セルロースの溶解度が低下し、焼付け時の半乾燥状態の塗膜中で水溶性セルロースがアクリル系樹脂よりも先に析出することによって生じると考えられる。塗膜の表面が凹凸であると、初期は優れた親水性を発揮するが、油脂類などの汚染物質がある程度付着した段階で表面が撥水化されてしまい、塗膜の表面が平滑である場合と比較して、著しく親水性が劣化するので望ましくない。また、塗膜の表面が凹凸であると、表面に塗膜が形成されたフィンを加工する際に、塗膜に塗布される揮発油の乾燥速度が遅くなる傾向があるため好ましくない。
【0020】
また、親水性樹脂のpHが5.0を超えると、塗膜を形成するために塗料組成物を乾燥させる過程において、塗料組成物中におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度が過剰に高くなる。その結果、塗料組成物のpHがアルカリ性とされると、水溶性セルロースが熱分解されやすくなる。水溶性セルロースが熱分解すると特有の臭気が発生するため、表面に塗膜が形成されたフィンを備えた熱交換器において、使用時に臭気の問題が発生する場合がある。
また、親水性樹脂のpHが5.0を超えると、水溶性セルロースと架橋反応する官能基が少なくなるため、十分な密着性が得られない。
【0021】
「水溶性セルロース」
本発明の塗料組成物を構成する水溶性セルロースとしては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。
【0022】
本発明の塗料組成物を構成するアクリルポリマーと水溶性セルロースとの割合は、特に限定されるものではないが、水溶性セルロースが、アクリルポリマー100質量部に対して10〜40質量部含まれていることが好ましい。アクリルポリマー100質量部に対する水溶性セルロースの濃度が上記範囲未満であると、水溶性セルロースとアクリルポリマーとの架橋反応が不十分となり、充分な親水性が得られない場合がある。また、アクリルポリマー100質量部に対する水溶性セルロースの濃度が上記範囲を超えると、焼付け後に臭気が発生する場合がある。また、アクリルポリマー100質量部に対する水溶性セルロースの濃度が上記範囲を超えると、アクリルポリマーの量に対する水溶性セルロースの量が過剰となり、過剰な水溶性セルロースが塗膜表面に凹凸を生じさせる場合がある。
【0023】
また、本発明の塗料組成物では、アクリルポリマー100質量部に対して1〜3質量部のアニオン系の界面活性剤が含まれていることが望ましい。アニオン系の界面活性剤の量が上記範囲未満であると、塗料組成物の塗布されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面の状態によっては、充分な濡れ性が得られず、塗布時に塗膜はじき等の不良が発生する場合がある。また、アニオン系の界面活性剤の量が上記範囲を超えると、塗膜の密着性の低下を引き起こす可能性がある。
アニオン系の界面活性剤の中でも、特にベンゼン環を有するアニオン系界面活性剤が望ましい。ベンゼン環を有するアニオン系界面活性剤は、ベンゼン環を有しないアニオン系界面活性剤に比べて、塗膜の密着性が低下しづらく、耐水溶解性が向上する。ベンゼン環を有するアニオン系界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムやドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0024】
また、本発明の塗料組成物には、必要により応じて更に他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金の腐食や不快な臭気の発生を防止することを目的として、水溶性の樹脂や、防黴剤、抗菌剤、消臭剤等を、親水性や親水性の維持性、耐食性を阻害しない範囲で添加できる。
【0025】
本発明の塗料組成物は、水または水を主とする溶媒中に親水性樹脂と、水溶性セルロースとを溶解させることによって得られる。そして、得られた塗料組成物に、必要に応じてアクリルポリマー100質量部に対して1〜3質量部のアニオン系の界面活性剤を添加する。
【0026】
本発明の塗料組成物は、親水性樹脂と、水溶性セルロースとを含み、前記親水性樹脂が、上記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマーと、アルカリ金属の水酸化物とを含み、pHが3.0〜5.0の範囲であるものであるため、以下に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、充分に高い親水性が長期にわたって得られる塗膜を形成できるものとなる。
【0027】
図1は、本発明の塗料組成物から形成された塗膜における親水性機能を説明するための図である。図1(a)は、本発明の塗料組成物から形成された塗膜の表面状態を示した概略図であり、図1(b)は、図1(a)に示す塗膜の表面に水が付着した時の塗膜の表面状態を示した概略図である。なお、図1(a)および図1(b)において、符号Meは、アルカリ金属を示している。また、図1(c)は、アルカリ金属の水酸化物を含まず、図1(a)におけるMeに代えて、アルカリ金属以外の金属Me2が結合していること以外は、図1(a)に示す塗膜と同様である塗膜の表面に、水が付着した時の塗膜の表面状態を示した概略図である。
【0028】
図1(a)に示す本発明の塗料組成物から形成された塗膜1では、親水性樹脂が、上記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマーと、アルカリ金属の水酸化物とを含み、pHが3.0〜5.0の範囲であるものであり、クリルポリマーに対するアルカリ金属の水酸化物の量が適量であるので、塗料組成物から形成された塗膜1に水が付着すると、図1(b)に示すように、アクリルポリマーを構成するカルボキシル基に結合しているアルカリ金属イオンMeが直ちに電離して、カルボキシル基が親水基として機能するカルボン酸陰イオンになる。このことにより、本発明の塗料組成物から形成された塗膜1では、高い親水性が長期にわたって得られる。
【0029】
これに対し、例えば、本発明の塗料組成物を構成するアルカリ金属の水酸化物に代えて、アルカリ金属以外の金属の水酸化物を用いてpHの調整を行なうことにより、図1(a)におけるMeに代えて、図1(c)に示すように、アルカリ金属以外の金属Me2が結合している場合、塗膜面に水が付着しても金属Me2が金属イオンとして電離しないため、充分な親水性が得られない。
【0030】
また、例えば、本発明の塗料組成物を構成するアルカリ金属の水酸化物に代えて、アンモニアやアミン類などを用いてpHの調整を行なった場合、塗料組成物から形成された塗膜において、アクリルポリマーを構成している本来親水性を出すべきカルボキシル基同士の架橋もしくは水素結合が起こりやすくなり、親水基として機能するカルボキシル基の数が少なくなってしまうし、図1(b)に示すカルボン酸陰イオンも生成されないため、十分な親水性が得られない。
【0031】
また、本発明の塗料組成物では、親水性樹脂のpHが3.0〜5.0の範囲であるため、本発明の塗料組成物から形成された塗膜は、表面が十分に平滑なものとなり、塗膜の表面が凹凸である場合と比較して、表面に塗膜が形成されたフィンを加工する際に塗膜に塗布される揮発油の乾燥速度が十分に速いものとなる。しかも、本発明の塗料組成物から形成された塗膜は、表面が十分に平滑なものであるので、建材や壁紙の接着剤に含まれる可塑剤や、調理時にミストとして発生する脂肪酸や脂肪酸エステル等の油脂類からなる汚染物質を吸着しづらいものであるとともに、汚染物質が付着したとしても優れた親水性を維持することができるものである。よって、本発明の塗料組成物から形成された塗膜は、耐汚染性に優れ、長期にわたって優れた親水維持性が得られる塗膜となる。
【0032】
また、本発明の塗料組成物は、親水性樹脂のpHが3.0〜5.0の範囲であるため、水溶性セルロースが熱分解されることによる臭気の発生を防止できるとともに、十分に高い密着性を有する塗膜を形成できるものとなる。
【0033】
また、本発明の塗料組成物において、水溶性セルロースが、アクリルポリマー100質量部に対して10〜40質量部含まれている場合、水溶性セルロースとアクリルポリマーとが架橋反応することによって、塗料組成物から形成された塗膜の耐水溶解性を向上させることができるので、高い親水性がより一層長期にわたって得られる塗膜を形成できる。
【0034】
また、本発明の塗料組成物において、アクリルポリマー100質量部に対して1〜3質量部のアニオン系の界面活性剤が含まれている場合、塗料組成物の塗布されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面の状態によらず充分な濡れ性が得られるので、塗布時における塗膜はじき等の不良を防止できる。
【0035】
なお、本発明の塗料組成物は、酸性であるため、アニオン系の界面活性剤を用いた場合と比較して、カチオン系の界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を用いた場合の方が、表面張力の低下効果が大きく、濡れ性が向上する。しかし、カチオン系の界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を用いた場合、ロールコートなどを用いて塗料組成物を塗布する際に起泡しやすいものとなるため、泡に起因する筋状の塗装不良が生じやすい。
これに対し、アニオン系の界面活性剤を用いた場合には、塗布時に起泡しにくいものとなるので、カチオン系の界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を用いた場合と比較して、塗装不良を生じにくく、好ましい。
【0036】
「フィン」
図2(a)は、本発明のフィンの一例を示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すフィンの一部を拡大して示した断面図である。
フィン10は細長い短冊形状を有しており、銅製の伝熱管を通すフレア11が、長さ方向に単列、或いは複数列で等間隔に配されている。また、フィン10の表面には、伝熱性能の向上を目的にスリット12などを設けることがある。
図2(a)に示すフィン10は、図2(b)に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン基材13の表面に、本発明の塗料組成物から形成された塗膜14が形成されてなるものである。
フィン基材13としては、燐酸クロメート皮膜やエポキシ樹脂皮膜などからなる下地処理層の形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金板などが好適に用いられる。また、フィン基材13の表面に形成された塗膜14の膜厚は0.5〜2.0μm程度であることが好ましい。
【0037】
図2(a)に示すフィン10は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる平板状のフィン基材13の表面に、本発明の塗料組成物を塗布して焼付けを行うことにより塗膜14を形成したのち、フィン基材13をプレス加工する方法などにより所定の形状とすることによって得られる。焼付け温度は、特に限定されないが、耐水性、親水性に優れた塗膜14を得るために、200〜280℃の範囲とすることが好ましい。
【0038】
図2(a)に示すフィン10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、表面に、本発明の塗料組成物から形成された塗膜14が形成されているものであるので、軽量で加工性、熱伝導性に優れたものであって、しかも、長期にわたって充分に高い親水性が得られるものとなる。
【0039】
「熱交換器」
図3は、本発明の熱交換器の一例を示した斜視図である。
図3に示す熱交換器20は、図2(a)に示すフィン10と、複数の伝熱管30とを備えたものである。フィン10は、一定の等間隔で平行に並べられており、フィン10の相互間に空気が流動するようになっている。伝熱管30は、フィン10のカラーを貫通しており、その内部を冷媒が流動するようになっている。
図3に示す熱交換器20は、図2(a)に示すフィン10を備えているので、長期にわたって使用した場合でも空気中から凝縮した水滴がフィン10に付着しにくく、フィン10に水滴が付着することによる圧力損失の低下や、フィン10に付着した水滴の外部への飛散が生じにくいものとなる。
【0040】
「実験例」
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示すアクリルポリマーとpH調整剤とを用いて、表1に示すpHのA〜Iの親水性樹脂を得た。
【0041】
【表1】

【0042】
そして、表1に示すA〜Iの親水性樹脂と、表2に示すイ〜ハの水溶性セルロースと、表3に示すい〜はの界面活性剤とを、表4〜表6に示す質量部で含む水溶液からなる実施例1〜25および比較例1〜12の塗料組成物を得た。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
このようにして得られた実施例1〜25および比較例1〜12の塗料組成物を、表7に示すa〜cの下地処理層が形成され、脱脂・洗浄されたアルミニウム合金材(材調質;1200−H24、サイズ;幅240mm、長さ350mm、厚み0.1mm)からなる試験体の表面に、バーコーターを用いて塗布し、200℃で30秒間の焼付けを行うことにより、膜厚1μmの塗膜を形成し、塗装性と、以下に示す皮膜性能について以下に示すように評価した。その結果を表4〜表6に示す。
【0049】
【表7】

【0050】
「塗装性」
◎ 塗料弾きが全く無く、塗装面筋状ムラも全く無し
○ 塗料弾き、塗装面筋状ムラも若干あるものの、目視外観上問題無し
△ 塗料弾き、塗装面筋状ムラが多数あり、目視外観上問題あり
× 塗料弾きがひどく、塗装が不可能
【0051】
(皮膜性能)
「密着性」
ラビングテスター(太平理化工業製)を用い、荷重500gで水ラビング試験を行った。
◎ 20往復後に皮膜剥離無し
○ 10往復では皮膜剥離無し、20往復未満で皮膜剥離
△ 5往復では皮膜剥離無し、10往復未満で皮膜剥離
× 5往復未満で皮膜剥離
【0052】
「親水維持性」
実施例1〜25および比較例1〜12の試験体を、プレス油(商品名:AF−3C:出光興産製)に浸漬させた後、160℃で4分間乾燥させ、流水中に480時間浸漬させた。その後、水接触角を測定した。
◎ 水接触角が20°未満
○ 水接触角が20°以上30°未満
△ 水接触角が30°以上40°未満
× 水接触角が40°以上
【0053】
「耐食性」
JIS Z 2301に基づいて480時間の塩水噴霧試験を行った。
◎ RN(レイティングナンバー)10
○ RN9.8以上
△ RN9.5以上RN9.8未満
× RN9.5未満
【0054】
「耐汚染性」
実施例1〜25および比較例1〜12の試験体を、プレス油(商品名:AF−3C:出光興産製)に浸漬させた後、160℃で4分間乾燥させ、流水中に72時間浸漬させた。その後、容量15Lの密閉ガラス容器に、実施例1〜25および比較例1〜12の試験体と汚染物質(パルミチン酸+ヘキサデカノール)とを入れ、100℃で24時間暴露した。その後、水接触角を測定した。
◎ 水接触角が20°未満
○ 水接触角が20°以上35°未満
△ 水接触角が35°以上50°未満
× 水接触角が50°以上
【0055】
「臭気」
官能検査による。
◎ ほとんど臭気が感じられない
○ かすかに臭う
△ 臭う
× かなりきつい臭気を感じる
「表面粗さ:塗膜表面凹凸」
3Dレーザ顕微鏡(商品名:VK−9700:キーエンス製)を用いて、塗膜の中心線平均粗さRaを算出した。
なお、表面粗度Raが0.1以上である場合、粗面(目視で外観上でも確認でき、問題あり)であり、表面粗度Raが0.05〜0.1未満である場合、やや粗面(目視で外観上でも確認できない)であり、表面粗度Raが0.05未満である場合、ほぼ平滑である。
【0056】
表4および表5に示すように、実施例1〜25では、いずれも塗装性の評価が◎または○であり、皮膜性能のすべての評価が◎または○であり、表面粗度Raが0.1未満となった。
これに対し、親水性樹脂のpHが5を超えている比較例1〜2では、いずれも臭気、耐食性、耐汚染性の評価が×となり、表面粗さRaも0.1以上であった。
また、親水性樹脂のpHが3未満である比較例3〜4では、いずれも親水維持性、耐食性および耐汚染性の評価が×となった。
【0057】
また、アクリルポリマーとして本発明外のものを用いた比較例5〜比較例6では、耐食性および耐汚染性、臭気の評価が△または×となった。
また、pH調整剤としてアルカリ金属の水酸化物でないものを用いた比較例7〜比較例8では、いずれも親水維持性、耐食性、耐汚染性、臭気の評価が△または×となった。
【0058】
また、水溶性セルロースを含まない比較例9〜比較例12では、親水維持性、耐食性、耐汚染性および臭気の評価が△または×となった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の塗料組成物から形成された塗膜における親水性機能を説明するための図である。
【図2】図2(a)は、本発明のフィンの一例を示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すフィンの一部を拡大して示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の熱交換器の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10…フィン、11…フレア、12…スリット、13…フィン基材、14…塗膜、20…熱交換器、30…伝熱管。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性樹脂と、水溶性セルロースとを含み、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗布される塗料組成物であって、
前記親水性樹脂が、下記一般式で示される化合物(1)を含むアクリルポリマー(ただし、R1はHまたはCHである。)と、アルカリ金属の水酸化物とを含み、pHが3.0〜5.0の範囲のものであることを特徴とする塗料組成物。
【化1】

【請求項2】
前記アクリルポリマー100質量部に対して1〜3質量部のアニオン系の界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記水溶性セルロースが、前記アクリルポリマー100質量部に対して10〜40質量部含まれていることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、表面に、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の塗料組成物から形成された塗膜が形成されていることを特徴とするフィン。
【請求項5】
請求項4に記載のフィンを備えていることを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−256399(P2009−256399A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103735(P2008−103735)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】