説明

塗料組成物

【課題】耐水性を損なうことなく、かつ防錆性に優れることで長期の耐久性を有し、さらに外観と密着性にも優れた塗膜を簡便に形成することができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】含フッ素共重合体(A)と、金属酸化物を含むガラス(B)とを含有することを特徴とする塗料組成物。前記金属酸化物を含むガラス(B)が、リン酸系ガラスである塗料組成物。前記金属酸化物を含むガラス(B)が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対し、2〜20質量部含有される塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素樹脂は耐候性に優れていることから、フッ素樹脂塗料として広く用いられている。フッ素樹脂塗料は、長寿命であり、大気汚染物質の排出量が低く、省資源化にも有利という特徴を有していることから、近年、環境対応が進むなかで需要が伸びている塗料である。また、フッ素樹脂塗料は粉体化できるため、輸送時のコストが安く、粉体塗料としても広く用いられている。
しかしながら、フッ素樹脂塗料は、光、水等の影響により酸成分を生じ、この酸成分によって、建築材料、構造材料等に用いられている鋼材に錆を発生させることが知られている。鋼材に錆が発生すると、塗膜が膨れて損傷し、長期の耐久性の点で問題が生じる。
鋼材の防錆を図る方法としては、鋼材にあらかじめプライマー等の防錆塗装を施してからフッ素樹脂塗料を塗装する方法があるが、塗装工程が増えて煩雑になるという欠点があった。また、フッ素樹脂塗料にエポキシ樹脂を添加して、基材との密着性を上げることで錆の発生を抑制する方法もあるが、塗膜の耐候性が低下するという欠点があった。フッ素樹脂塗料の顔料に防錆顔料を用いる方法もあるが、耐候性が低下するという欠点があった。また、フッ素樹脂塗料に、防錆剤、シランカップリング剤等を添加して防錆を図る方法もあるが、これらの添加剤は液状のものが多く、フッ素樹脂塗料にブロッキングを生じさせるという欠点があった。
かかる問題に対し、金属水酸化物の一種であるハイドロタルサイト類等を添加して、錆の原因となる酸成分をトラップする技術(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が提案されている。また、金属酸化物等の塩基性無機固形物質を添加して、酸成分をトラップする技術(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0003】
一方、金属酸化物を含むガラスは、高い難燃性および発煙抑制性能を発揮する(例えば、特許文献4参照)ことから、樹脂組成物等の難燃剤として用いられている。また、金属酸化物を含むガラスは、高い耐水性を有する(例えば、非特許文献1参照)ことが知られている。
【特許文献1】特開2000−129165号公報
【特許文献2】特開2004−352994号公報
【特許文献3】特許第3102514号公報
【特許文献4】特開2005−60676号公報
【非特許文献1】旭ファイバーグラス社、ガラスパウダーZPシリーズ[平成19年5月21日検索]、インターネット< URL:http://www.afgc.co.jp/kogyo/prodcuts/glass_powder.html)>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のハイドロタルサイトを用いる方法は、その添加量によっては、塗膜の平滑性、透明性、光沢性といった外観の低下が生じ、また、基材に対しての密着性が低下するという問題があった。特許文献3の金属酸化物を用いる方法は、金属酸化物による耐水性の低下が懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐水性を損なうことなく、かつ防錆性に優れることで長期の耐久性を有し、さらに外観と密着性にも優れた塗膜を簡便に形成することができる塗料組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 含フッ素共重合体(A)と、金属酸化物を含むガラス(B)とを含有することを特徴とする塗料組成物。
[2] 前記金属酸化物を含むガラス(B)が、リン酸系ガラスである[1]に記載の塗料組成物。
[3] 前記金属酸化物を含むガラス(B)が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対し、2〜20質量部含有される[1]または[2]に記載の塗料組成物。
[4] 含フッ素共重合体(A)が、フルオロオレフィンの単量体(A1)に基づく重合単位と、架橋反応可能な官能基を有する単量体(A2)に基づく重合単位とを有する[1]〜[3]のいずれかに記載の塗料組成物。
[5] 前記フルオロオレフィンの単量体(A1)が、クロロトリフルオロエチレンである[4]に記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐水性を損なうことなく、かつ防錆性に優れることで長期の耐久性を有し、さらに外観と密着性にも優れた塗膜を簡便に形成することができる塗料組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)と、金属酸化物を含むガラス(B)とを含有することを特徴とする。
<含フッ素共重合体(A)>
含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィン系の単量体(A1)に基づく重合単位と、架橋反応可能な官能基を有する単量体(A2)に基づく重合単位とを有することが好ましい。含フッ素共重合体(A)は、好ましくはこれら単量体(A1)と単量体(A2)とを含む単量体組成物を重合反応せしめることにより得られる。
単量体(A1)としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフルオロオレフィンが挙げられる。単量体(A1)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。単量体(A1)の中でも、他の単量体との共重合性が良好である点、顔料分散性が良好である点等から、クロロトリフルオロエチレンが好ましく用いられる。
【0008】
単量体(A1)に基づく重合単位は、含フッ素共重合体(A)を構成する重合単位全体に対して、30〜70モル%が好ましく、40〜60モル%が特に好ましい。単量体(A1)に基づく重合単位が30モル%以下では、充分な耐候性が得られにくくなり、70モル%以上では塗料用溶剤への溶解性が不充分になる。
単量体(A2)に基づく重合単位が有する官能基としては、水酸基、カルボキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、ビニル基等が挙げられる。これらの中でも、共重合体の安定性に優れ、入手しやすい硬化剤を使用できる点で水酸基が好ましい。水酸基を有する単量体(A2)の具体例としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。これら単量体(A2)は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これら単量体(A2)の中でも、反応性に優れ、ガラス転移点が下がりにくい点で、ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
単量体(A2)に基づく重合単位は、含フッ素共重合体(A)を構成する重合単位全体に対して5〜20モル%が好ましく、特に5〜15モル%が好ましい。単量体(A2)が5モル%未満であると、充分な塗膜性能が得られにくくなり、また20モル%を超えると充分な耐候性が得られにくくなる。
【0009】
含フッ素共重合体(A)の重合反応においては、単量体(A1)、単量体(A2)の他に、必要に応じて、単量体(A1)、単量体(A2)と共重合可能なその他の単量体を用いてもよい。かかるその他の単量体の例としては、単量体(A1)、単量体(A2)と共重合を形成するための二重結合を有する単量体が好ましい。具体的には、単量体(A2)に含まれないその他のビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、プロペニルエーテル、プロペニルエステル、アクリレート、メタクリレート等が挙げられる。なお、これらその他の単量体は、単独で用いてもよく、また2種以上用いてもよい。
【0010】
単量体(A2)に含まれないその他のビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル(EVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、2−エチルヘキシルビニルエーテル(EHVE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、t-ブチルビニルエーテル(TBVE)、オクタデシルビニルエーテル(ODVE)等といった直鎖状、分岐状、環状構造を有したアルキルビニルエーテル;シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルのエチレンオキサイド付加物といったノニオン性親水基を有するビニルエーテルが挙げられる。
ビニルエステルとしては、酪酸ビニル、酢酸ビニル(VA)、ピバリン酸ビニル(VPV)、ピバル酸ビニル、ヒドロアンゲリカ酸ビニル、バーサテック酸ビニル(VVA)、パラターシャリー安息香酸ビニル(VTBBA)、分岐状のアルキル基を有するベオバ−10(シェル化学社製)等が挙げられる。
アリルエーテルとしては、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテルが挙げられる。
アリルエステルとしては、プロピオン酸アリル、酢酸アリル等の脂肪酸アリルエステルが挙げられる。
プロペニルエーテルとしては、メチルイソプロペニルエーテル等のアルキルイソプロペニルエーテルが挙げられる。
プロペニルエステルとしては、酢酸イソプロペニル等のアルキルイソプロペニルエステルが挙げられる。
アクリレートとしては、エチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−トもしくはシクロヘキシルアクリレ−ト等が挙げられる。
メタクリレートとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物類;メチルメタアクリレ−ト、エチルメタアクリレ−ト、ブチルメタアクリレ−ト等が挙げられる。
【0011】
含フッ素共重合体(A)の示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(T)は、30〜80℃が好ましく、35〜60℃が特に好ましい。Tが上記範囲よりも小さいと、塗膜の透明性、耐溶剤性が低下する傾向がある。Tが上記範囲を超えた場合も、塗膜の透明性が低下する傾向がある。
【0012】
<金属酸化物を含むガラス(B)>
本発明者らは、金属酸化物を含むガラス(B)に防錆効果を有することを見出した。これは、ガラス中の金属酸化物が塗料組成物中に発生する酸成分のトラップ作用を失っていないためであると考えられる。また、ガラス(B)は、塗膜の耐水性を低下させることがない。ガラス(B)は、ハイドロタルサイトより少ない添加量でも防錆効果を発揮することができるので、塗膜の外観を損ねることが無い。
【0013】
ガラス(B)に含まれる金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化バリウム、酸化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも酸化亜鉛が好ましい。これら金属酸化物は一種単独で含まれていてもよいが、2種以上含まれていることが好ましい。
金属酸化物の含有量は、ガラス(B)に20〜60質量%であることが好ましい。また、金属酸化物が酸化亜鉛の場合、その含有量はガラス(B)に30〜40質量%であることが好ましい。
【0014】
ガラス(B)としては、リン酸を主成分としたリン酸系ガラス、ホウケイ酸塩を主成分としたホウケイ酸系ガラス、酸化ケイ素(シリカ)を主成分としたシリカガラス、酸化ケイ素、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムを主成分としたソーダガラス等が挙げられる。これらの中でも、酸成分のトラップ作用に優れたリン酸系ガラスが好ましい。
【0015】
リン酸イオンは、鋼材の錆の原因の一つである鉄イオン(Fe3+)に対し、大きなキレート力を有している。そのため、ガラス(B)にリン酸系ガラスを用いた場合、塗料組成物中にリン酸イオンが生成し、これが鋼材から生成するアルミニウムイオン、鉄イオンと結合し、例えば、(Fe3+、Al3+)x・(P10)yコンプレックスからなる不動態皮膜を形成して、鋼材の表面を不動態化すると考えられる。そして、溶存酸素または水が存在すると、(Fe3+、Al3+)x・(P10)yコンプレックスは解重合してオルトリン酸塩へと変化し、再び不動態皮膜を形成するため、長期的に良好な防錆性を示すものと推定される。
このように、リン酸系ガラスを用いれば、金属酸化物による酸成分のトラップ作用に加えて、リン酸イオンと金属イオンとによる不動態皮膜が形成されることにより、優れた防錆性を発揮することができる。
【0016】
リン酸系ガラス中のリン成分の量は、その組成を安定に保つために、Pに換算したモル%表示で10〜60%が好ましく、15〜45%がより好ましい。好ましいリン酸系ガラスは、Pを含み、かつ少なくともXO(ここでXはMg、Ca、Zn、Sn、Ba等の2価の金属)、YO(ここでYはLi、Na、K等の1価のアルカリ金属)、Al、B、SOのいずれか1種以上の金属酸化物を含むリン酸系ガラスである。具体的には、例えば、P−ZnO−YO系ガラス、P−ZnO−XO系ガラス、P−ZnO−SO系ガラス、P−Al−B系ガラス等が挙げられる。本発明では、P−ZnO−YO系ガラス、P−ZnO−XO系ガラス、P−ZnO−SO系ガラス(以下、総じてP−ZnO系ガラスと略する。)等の酸化亜鉛(ZnO)を従成分として含んだリン酸系ガラスが好ましく用いられる。P−ZnO系ガラスは、リン酸系ガラスの中でも高い耐水性を有しているため、保管時の吸湿による変質が少なく好ましい。
【0017】
−ZnO系ガラスは、その組成中の成分の割合が、15〜45モル%のP、3〜60モル%のXO(ただし、少なくともその一部はZnO)、3〜40モル%のYO、0〜15モル%のAl、3〜25モル%のBおよび0〜30モル%のSOであることが好ましい。特に好ましいリン酸系ガラスは、モル%表示で、20〜27%のP、10〜55%のZnO、0〜15%のZnO以外のXO、5〜35%のYO、1〜5%のAl、8〜20%のBおよび3〜20%のSOを成分として含むリン酸系ガラスである。また、本発明における効果を損なわない範囲において、上記以外にSr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Mo等の金属酸化物を含有してもよい。
【0018】
ガラス(B)の原料形態としては、特に制限はなく、ペレット、粒状、微細粉末、繊維等の種々の形態が挙げられるが、微細粉末が好ましい。
ガラス(B)は、本発明の塗料組成物中に微細粉末の形態で含有されていることが好ましい。粉末状であれば、酸成分との接触面積が大きくなり、防錆効果をより発揮しやすくなる。
微細粉末の粒径は、3μm〜20μmが好ましい。3μm未満であると、比表面積が増えることで塗膜の連続性が低下し、塗膜の耐久性が低下する。20μmを超えると、塗膜の透明性、塗膜の平滑性、塗膜の光沢が低下する。
なお、金属酸化物を含むガラスの微細粉末は市販されており、例えば、リン酸系ガラスの微細粉末であるガラスパウダーZP150(旭ファイバーグラス社製)等を挙げることができる。なお、上記ZP150は、高い難燃性、および発煙抑制性能を発揮することから、従来、樹脂組成物等の難燃剤として用いられているものである。
【0019】
塗料組成物中におけるガラス(B)の含有量は、含フッ素共重合体(A)100質量部に対して2〜20質量部が好ましく、4.3〜17.2質量部がより好ましく、8.6〜12.9質量部が特に好ましい。ガラス(B)の配合量が2質量部未満であると、充分な防錆効果が得られにくい。20質量部を超えると、得られる塗料の粘性が高くなり、塗装に支障をきたす。また、塗膜の透明性、平滑性、光沢性、塗膜の密着性が低下する等、良好な塗膜が形成し難くなる。
【0020】
<その他の成分>
次に、本発明の塗料組成物に、好ましく使用される硬化剤、顔料等のその他の成分について説明する。
硬化剤としては、含フッ素共重合体(A)中に存在する架橋反応可能な官能基と反応しうる官能基を複数有する化合物であればよい。このような硬化剤としては、例えば、メラミン系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
メラミン系硬化剤としては、グリコールウリア構造を有するメラミン硬化剤(例えば、サイメル社製、商品名:パウダーリンクシリーズ)が挙げられる。
ポリイソシアネート系硬化剤としては、イソホロンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体であって、イプシロンカプロラクタムやオキシム類でイソシアネート基が保護されることによって、特定の温度で保護基が解離して反応が開始するように構成されたブロックイソシアネート;イソシアネート基同士をカップリングさせて、特定の温度で解離して反応開始するように構成されたブロック剤フリーポリイソシアネート等が好ましく挙げられる。具体的な商品名として、デグサ社製のベスタゴンシリーズ、バイエル社製のクレランシリーズ、イーストマン社製のアルキュアシリーズ等が挙げられる。
【0021】
含フッ素共重合体(A)と硬化剤との混合比は、硬化剤の種類により適宜決定される。例えば、含フッ素共重合体(A)の官能基が水酸基の場合、メラミン系硬化剤、あるいはポリイソシアネート系硬化剤が好ましく用いられるが、その混合比は、水酸基に対するメラミンおよび/またはイソシアネート基のモル比で0.7−1.4が好ましい。
【0022】
顔料としては、塗料に通常使用される顔料を用いることができる。好ましくは、樹脂特性を最大限発揮できるような良好な耐候性を有した顔料である。良好な耐候性を有した顔料としては、例えば、酸化鉄、コバルト、ビスマス等を含有した金属酸化物系顔料;ペリレン、ジケトピロロピロール(DPP)等の有機顔料;表面処理をシリカで行っている酸化チタン等の顔料が挙げられる。
なお、炭酸カルシウム、垂晶石粉等の体質顔料(塗膜の補強、増量を目的とした顔料)は、耐候性能を損なわない程度の添加量であれば使用可能である。顔料全体に対する体質顔料の含有量としては、顔料全体の100質量%中に、体質顔料30質量%以下が好ましく、質量15質量%以下がより好ましい。
なお、顔料の配合量としては、含フッ素共重合体(A)100質量部に対して、5〜150質量部の範囲で混合されるのが好ましい。
【0023】
本発明の塗料組成物には、硬化剤、顔料の他にも、従来から塗料用途に使用している添加剤等を含有可能である。具体例としては、酸化防止剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、スリップ剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0024】
以上の成分を定められた量に従って混合することにより、本発明の塗料組成物が製造される。現在一般的に行われている溶融混練法での製造法を例に挙げると、計量された塗料組成物の原材料を固形状態で混合し、その後120℃近辺に加熱された押出機中で溶融混練を行い、溶融状態の粉体塗料組成物を冷却してから、粉砕、分級を行うことで、20〜150μmの体積平均粒径を有する粉体塗料が得られる。
得られた粉体塗料は、静電粉体塗装装置、摩擦帯電塗装装置、電界流動浸漬塗装装置等を用いることにより、要求される塗膜厚に塗装される。さらに、塗装された被塗物を180℃以上の雰囲気中で20分以上晒すことにより、本発明の塗料組成物からなる塗膜が得られる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
[含フッ素共重合体(A)の合成]
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、キシレン503g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)558g、4−ヒドロキシビニルエーテル(HBVE)145g、炭酸カルシウム12gおよびパーブチルピバレート(PBPV)7gを仕込み、液体窒素による固化・脱気により液中の溶存酸素を除去した。次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。10時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液を室温まで冷却した後、未反応モノマーをパージして、得られた反応液を濾過して未溶解形物を除去し、固形分濃度65質量%、Tg50℃のフッ素樹脂の溶液A−1を得た。この溶液A−1を減圧乾燥することにより、水酸価50mgKOH/gの固形の含フッ素共重合体(A−1)を得た。
【0026】
[実施例1:フッ素樹脂粉体塗料組成物(C)の作成]
原材料として、含フッ素共重合体(A−1)の58質量部、ε−カプロラクタムブロックイソシアネート樹脂(商品名:B−1530、デグサ社製)の14質量部、ベンゾインの0.4質量部、アクリル酸オリゴマー系レべリング剤(商品名:BYK−360P、BYK−Chemie社製)の1質量部、二酸化チタン(商品名:R960、堺化学社製)の35質量部、ジブチル錫ジラウリレートの0.002質量部、リン酸系ガラスのガラスパウダー(商品名:ZP150、旭ファイバーグラス社製)の2.5質量部を用いた。
ここで、ZP150の組成および性状は以下の通りである。
ZP150の組成:P 37.5質量%、ZnO 35.2質量%、Al2.0質量%、B 7.4質量%、KO 4.5質量%、LiO 1.3質量%、NaO 3.9質量%、SO 8.2質量%。
ZP150の性状:比重3.0、平均粒径3.6μmの微細粉末、T=359℃、T=540℃。
【0027】
これらの原材料を、高速ミキサー内に投入して1分間混合後、120℃に温度調整した2軸練合機(Prism社製の2軸練合機)で混練を行い、吐出された混練物を冷却ロールで冷延後、ジョークラッシャーで塊砕を行った後、ピンミルを用いて粉砕し、150メッシュの網で分級を行い、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(C)を得た。なお、フッ素樹脂粉体塗料組成物(C)に含有されるリン酸系ガラスのガラスパウダーは、含フッ素共重合体(A−1)100質量部に対し、4.3質量部である。
【0028】
[実施例2:フッ素樹脂粉体塗料組成物(D)の作成]
リン酸系ガラスのガラスパウダー(商品名:ZP150、旭ファイバーグラス社製)の配合量を5.0質量部とした以外は実施例1と同様にして、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(D)を得た。なお、フッ素樹脂粉体塗料組成物(D)に含有されるリン酸系ガラスのガラスパウダーは、含フッ素共重合体(A−1)100質量部に対し、8.6質量部である。
【0029】
[実施例3:フッ素樹脂粉体塗料組成物(E)の作成]
リン酸系ガラスのガラスパウダー(商品名:ZP150、旭ファイバーグラス社製)の配合量を7.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(E)を得た。なお、フッ素樹脂粉体塗料組成物(E)に含有されるリン酸系ガラスのガラスパウダーは、含フッ素共重合体(A−1)100質量部に対し、12.9質量部である。
【0030】
[実施例4:フッ素樹脂粉体塗料組成物(F)の作成]
リン酸系ガラスのガラスパウダー(商品名:ZP150、旭ファイバーグラス社製)の配合量を10.0質量部とした以外は実施例1と同様にして、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(F)を得た。なお、フッ素樹脂粉体塗料組成物(F)に含有されるリン酸系ガラスのガラスパウダーは、含フッ素共重合体(A−1)100質量部に対し、17.2質量部である。
【0031】
[比較例1:フッ素樹脂粉体塗料組成物(G)の作成]
リン酸系ガラスのガラスパウダー(商品名:ZP150、旭ファイバーグラス社製)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(G)を得た。
【0032】
[比較例2:フッ素樹脂粉体塗料組成物(H)の作成]
リン酸系ガラスのガラスパウダー(商品名:ZP150、旭ファイバーグラス社製)の代わりに、ハイドロタルサイト(商品名:キョーワード500SH、協和化学社製)の5.0質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(H)を得た。
【0033】
[比較例3:フッ素樹脂粉体塗料組成物(J)の作成]
ハイドロタルサイト(商品名:キョーワード500SH、協和化学社製)の配合量を10.0質量部とした以外は比較例2と同様にして、50%体積平均粒子径35μmの粉体塗料組成物(J)を得た。
【0034】
[評価方法]
上記塗料組成物(C)〜(J)について、クロメート処理を行ったアルミ板に粉体静電塗装装置(GX静電塗装機、日本パーカライジング社製)を用いて、−80kvの電圧をかけ、50μmの塗膜厚になるように静電塗装を行った。
その後、熱風循環式乾燥機を用いて、200℃の雰囲気中で20分間焼付乾燥を行い、塗膜を形成した。得られた塗膜について以下の評価を行った。
1.塗膜表面の状態
塗膜表面の状態を目視で観察し、米国PCIの粉体塗料外観標準板にて10段階で評価した。なお、10が一番状態の良い場合で、1が一番悪い状態である。
2.塗膜の鏡面光沢値
塗膜の60°鏡面光沢値をJIS K5600−4−7に準拠する試験法で測定し、評価した。
3.塗膜の密着性
JIS K5600−5−6に準拠する試験法で測定し、評価した。なお、数値が小さいほど密着性がよい。
4.耐塩水噴霧性
JIS K5400耐塩水噴霧性試験方法に準じて評価を実施し、500時間経過後の塗膜の錆発生を観察し、下記の基準で判定した。
○:クロスカットした部分から発生した錆汁が2箇所以下。
△:クロスカットした部分から発生した錆汁が3箇所以上5箇所以下。
×:クロスカットした部分から発生した錆汁が6箇所以上。
【0035】
【表1】

【0036】
[評価]
比較例1の塗料組成物(G)は、ガラス(B)を添加しなかった例であり、塗膜の錆発生が観察され、耐塩水噴霧性不良と評価された。また、防錆剤としてハイドロタルサイト(キョーワード500SH)を用いた比較例2の塗料組成物(H)は、耐塩水噴霧性のみならず、他の項目でも良好な結果を得られなかった。比較例3の塗料組成物(J)は、塗料組成物(H)よりハイドロタルサイトを多く添加した例であり、塗料組成物(H)よりは耐塩水噴霧性がやや改善されたものの、他の項目では、良好な結果が得られなかった。
一方、ガラス(B)(ZP150)を用いた各実施例は、各評価のバランスが取れていた。特に、塗料組成物(D)、塗料組成物(E)は、耐塩水噴霧性が良好であり、かつ塗膜表面が良好な平滑性および光沢性を有し、さらには塗膜の密着性にも優れており、実施例の中でも特に優れた防錆性、外観、および密着性を有していた。これは、塗料組成物中におけるガラス(B)の含有量が、含フッ素共重合体(A)100質量部に対して特に好ましい範囲で含有されているためであると判断された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素共重合体(A)と、金属酸化物を含むガラス(B)とを含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物を含むガラス(B)が、リン酸系ガラスである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物を含むガラス(B)が、前記含フッ素共重合体(A)100質量部に対し、2〜20質量部含有される請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
含フッ素共重合体(A)が、フルオロオレフィンの単量体(A1)に基づく重合単位と、架橋反応可能な官能基を有する単量体(A2)に基づく重合単位とを有する請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記フルオロオレフィンの単量体(A1)が、クロロトリフルオロエチレンである請求項4に記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2008−303316(P2008−303316A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152623(P2007−152623)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】