説明

塗料配合を色合わせするためのコンピュータ実装型の方法

修繕塗料配合を色合わせするコンピュータ実装型の方法を開示する。該方法は、自動車塗料の色コードを入力することと、色コードに関連付けられる配合についてコンピュータデータベースを検索することと、表示するために複数の配合を選択することと、選択された配合のデジタル画像を複数の観察角で表示することと、自動車塗料への最良適合物として、表示された配合のうちの1つを決定することと、最良適合に対する配合を識別することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタ上に色チップを表示するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を設計する場合、自動車塗料は、その塗料のプライム配合(prime formulation)と呼ばれる、生産用に指定された本来の配合を有する。しかしながら、製造現場で自動車に塗布される塗料の色は、様々となる傾向がある。塗料組成の構成要素が生産工程の間に若干変化する場合、1つの生産施設内でも変形性が観察され得る。これは、特定の生産施設で製造される自動車の塗料色におけるドリフトとして、典型的に見なされている。加えて、同じ自動車製造業者の異なる生産施設で製造される自動車間で、塗料色のよりさらに顕著な差異が観察され得る。それぞれの生産施設は、塗料に添加される顔料および他の着色剤を含む、塗料構成要素に対して異なるロットを受け取る場合があり、それにより、生産施設間において塗料色の差異が生じる。
【0003】
自動車が修繕される場合、本来の塗料に合わせるべき修繕塗料が自動車に塗布される。しかしながら、製造時に自動車に塗布される本来の塗料の色ずれのため、修繕塗料を本来の塗料に合わせることは困難である。本来の自動車塗料と、自動車の修繕塗料との差異が把握され得る。自動車の再塗装を行う数多くの車体修繕工場において、相手先ブランド製造業者によって生産される塗料の色のばらつきを、色合わせすることは困難である。
【0004】
自動車は、本来の塗料配合を参照する色コードを含む、一連の識別タグを典型的に含む。塗料色のばらつきのため、各色コードは、プライム配合に関連付けられた複数の変形配合に概して対応する。修繕塗料人員は、修繕される自動車の塗料に最も良く適合する1つの色コードに関連付けられた複数の配合から、塗料配合を選択しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
修繕工場での典型的な色合わせ工程は、修繕工程が開始されてから数日後に発生する。従来、塗装工は、修繕される自動車の特定の色に適合させるため、多くの塗料配合のうちから1つを選ぶ選択に直面する。塗料配合は、プライム配合と全てではないがいくつかの変形色との物理的塗料チップにおいて具現化され得る。塗装工は、修繕される自動車と、手元の塗料チップの色を比較して、修繕される自動車の塗料の色に最も近く適合する塗料チップを視覚的に選択し得る。この技術では、車体修繕工場は、修繕工場が必要だとみなす全ての色の膨大なライブラリを維持することが求められ、また、修繕される自動車の塗料の色と、数多くの塗料チップを比較する塗装工の能力に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動車を修繕するための塗料配合を色合わせするコンピュータ実装型の方法に関し、(a)自動車塗料の色コードを識別することと、(b)該色コードに関連付けられる色参照チップを選択することと、(c)該自動車の該塗料と該色参照チップとの色ずれを視覚的に決定することと、(d)該色コードに関連付けられる塗料配合についてコンピュータデータベースを検索することと、(e)表示するために複数の該塗料配合を選択することと、(f)該選択された配合の塗料画像を複数の観察角で表示することと、(g)該色ずれを考慮して、該自動車塗料に最も良く適合する該表示された塗料画像のうちの1つを識別することと、(h)該最も良く適合した塗料画像の該塗料配合を識別することとを含む。
【0007】
また、本発明は、自動車塗料に修繕塗料配合を色合わせするためのコンピュータ製品も備え、(a)コンピュータ実装型の色コードデータベースであって、塗料配合に色コードを関連付けるデータベースと、(b)該データベース内で該色コードに対する検索を開始するように構成される色コード入力デバイスと、(c)該色コードの該検索において見つけられた塗料配合を表示するように構成される塗料配合出力デバイスと、(d)該塗料配合の色画像を表示するように構成される画像表示デバイスであって、該色画像は、配合パネルのデジタル画像である、画像表示デバイスとを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の方法のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の方法に用いられる鏡面反射角の概略図である。
【図3】図3は、本発明によるデジタル色チップを表示するコンピュータモニタの概略図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態によるデジタル色チップを表示するコンピュータモニタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、塗装されたパネルのデジタル色画像を、表示画面上に提示するためのシステムに関して記述する。色画像は、自動車を修繕するための塗料配合を選択するために、車体修繕される自動車に対する塗料配合を表示するのに特に適している。写真画像は、色配合中の実際の金属パターン、質感および色効果顔料(フレーク顔料等)の粒径を表現することができる。しかしながら、これは限定を意図するものではない。また、本発明は、色効果顔料を有さないソリッドカラー配合と併用され得る。また、本発明は、色効果顔料を含んでもよく、または含まなくてもよい、建築塗料、消費者製品および工業被覆を含む他の用途において、色見本を表示することおよび塗料配合を選択することにも適用可能である。
【0010】
図1に関して、本発明の方法は、修繕される自動車の自動車製造業者色コード、色コードの色配合を示す物理的色チップ、および色コードに関連付けられた既知の配合のデジタル写真を活用する。色チップは、特定の塗料配合で被覆された物理的チップを意味する。ステップ10において、車体修繕工場人員は、自動車の色コードを識別する。色コードは、ドアステッカー上または自動車内のどこかに設置されるプラーク上等、自動車上に提供され得る。代替として、色コードは、色生産本または塗料チップ本等に明記され得る。ステップ12において、プライムおよび少なくともいくつかの変形を含む色コードのための色チップが識別される。ステップ14において、車体工場人員は、自動車に最も近い色を有する色チップを選択する(ステップ16において)ために、自動車に近接して、または自動車に対して色チップを配置することによって、種々の角度で、識別された色チップを自動車塗料と比較する。ステップ18において、選択された色チップは、自動車に対して多数の角度で観察される。ステップ20で、自動車に対して多数の角度で観察される場合、色チップが容認可能であると決定されたならば、ステップ22において、その色チップに対する配合が色検索システムにおいて識別される。
【0011】
しかし、多数の観察角で自動車と比較される場合、選択された色チップは、容認可能でない、つまり、選択された色チップと自動車塗料との間に、色の判別可能なずれまたは差異がある可能性が高い。その場合、選択された色チップは、以下のように色が調整され得る参照色チップとして機能する。ステップ24において、色コードは、色検索システムに入力され、既知の塗料配合を包含するそのデータベース内で、その色コードの検索が開始される。色検索システムのソフトウェアは、色コードのプライム配合および変形について検索する。データベース検索の結果は、色コードに対するプライムおよび変形色のリストとして、コンピュータモニタ等の出力デバイス上に表示される。リストは、配合の種類(例えば、プライム、変形、または特殊)に対する識別コードまたは変形色指定、および配合対プライム色の色ずれ方向を指標する記号を、配合ごとに含む。色ずれ方向は、フラッシュで観察された場合、プライムよりも緑色である、またはフロップで観察された場合、プライムよりも青色である等、その配合の色がプライム配合と異なる程度の指標である。色ずれ方向は、自動車塗料の視覚的評価、多数の観察角での参照色チップの外観、および特定の色ずれ方向が有用であるという決定に基づいて、修繕される自動車の塗料により近く適合すると塗装工が考えるリスト内で配合を選択するために、塗装工によって使用され得る。
【0012】
ステップ28において、1つ以上のプライムおよび変形配合が、表示するために選択される。ステップ30において、コンピュータシステムは、多数の角度で、選択されたプライムおよび変形の画像を、表示デバイス(コンピュータモニタの表示画面等)上に表示する。選択されたプライムおよび変形の画像は、下記に詳述するように、多数の観察角で撮った配合のデジタル写真であり得る。ステップ32で、ユーザは、参照色チップと自動車塗料との間で判別された色ずれに対処しながら、多数の観察角での自動車色への最良適合物を提供するプライムまたは変形の塗料画像を選択する。ステップ34において、データベースは、選択された最も良く適合した塗料画像の配合を提供する。次いで、自動車への塗布ために配合が調製され得る。
【0013】
本発明による色モニタ上に表示される塗料画像は、プライムおよび変形の配合パネルのデジタル写真である。多くの塗料配合は、塗料配合中に角度依存的効果(gonioapparent effect)をもたらす色効果顔料または他の添加剤(金属および干渉フレーク等)を含む。デジタル写真を作成するために、色コードに関連付けられた塗料配合のプライムおよび変形が調製され、基板上に被覆され、複数の照明角で基板に向けられた光源を任意に用いて複数の観察角で撮影される。限定されない一実施例において、図2は、光が被覆表面を照射する時に光が反射する、鏡面反射および非鏡面反射角を描写する。表面に対して法線方向で観察される場合(つまり、鏡面反射角から45°)、被覆表面は、中間非鏡面反射角または正面で観察されると考えられる。鏡面反射角から15°(または25°)で被覆表面を観察することは、近位鏡面反射角またはフラッシュで被覆表面を観察することと考えられる。同様に、遠方非鏡面反射角またはフロップ観察角は、反射の鏡面反射角から通常は75°(または105°もしくは110°)である。フラッシュ角度およびフロップ角度は、本明細書に記載される幾何学に限定されない。しかしながら、特定の色コードのプライムおよび変形を直接比較するために、フラッシュの角度およびフロップの角度は、その色コードのために製作される全ての色写真について一定である。
【0014】
図3は、本発明による色モニタ50上に、塗料画像がどのように描写されるかの概略図を示す。描写された実施形態において、3つの色変形(A、BおよびC)の塗料画像(デジタル写真)は、フラッシュ52、正面54、およびフロップ56の3つの横列で表示される。コンピュータソフトウェアにより、ユーザは、塗料画像の縦列A−Cの順を再配置して、色を並べて比較することが可能である。図3は、塗料画像の3つの縦列を示すが、これは限定を意図するものではない。コンピュータモニタの寸法、選択された変形の数量、およびコンピュータモニタ上に示される画像の寸法に応じて、より多くのまたはより少ない数量の色変形が表示され得る。この様態において、ユーザは、一度に全ての3つの角度で、複数の塗料配合を観察することにより、塗料画像を並べて比較することができ、また、再塗布される自動車への最良適合物を決定することができる。
【0015】
特殊干渉色ずれを伴う塗料色の画像は、光源の角度を、パネル表面に対してより傾斜のある、またはよりフラットな角度にすることが可能となるようにパネルを撮影することによって、作成することもできる。特定の色コードのプライムおよび変形を直接比較するために、フラット角度(45°等)の照明および傾斜角度(75°または110°等)の照明が、その色コードのために製作され、図4に描写したように表示される全ての色写真について一定である。色モニタ150は、3つの色変形(A、BおよびC)を、フラット角度の照明(152)および傾斜角度の照明(154)に対して2つの横列に表示する。表示150上の画像は、表示50のように修正および/または再配置することができる。
【0016】
本発明のコンピュータ製品は、塗料配合を色コードに関連付ける色コード検索可能コンピュータデータベースを備えている。色コード入力デバイスは、コンピュータソフトウェアを介して、データベース内で色コードの検索を開始するように提供され、塗料配合出力デバイスは、色コードの検索において見つけられた塗料配合を表示するように提供される。また、コンピュータ製品は、塗料配合(例えば、配合パネル)の色画像を表示するように構成される画像表示デバイスも備え、塗料配合出力デバイスおよび画像表示デバイスは、同じデバイスであり得る。本発明のコンピュータ製品は、ノート型ポータブルコンピュータであり得るパーソナルコンピュータを備え得る。塗料配合出力デバイスおよび/または画像表示デバイスは、例えば、陰極線管(cathode ray tube:CRT)または液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)あるいは他の平面パネル表示デバイス等の、特に制限されないが、コンピュータに接続することができ、また、情報を色で表示することができる任意のデバイス(本明細書においてコンピュータモニタと称する)であり得る。画像表示デバイスは、基準に対して、表示される画像の色を補正するための色補正システムを備え得る。加えて、本発明は、小型携帯情報端末(handheld portable digital assistants:PDA)との併用に適している。本発明のコンピュータモニタは、本発明の色合わせ製品を操作するためのタッチパネル型デバイスを備え得る。一実施形態において、横列52、54および56の写真への背景58は、灰色または別の暗い中間色である。灰色(または他の暗い中間色)背景は、白色または他の明るい背景と比較すると、デジタル写真の色を評価する観察者の能力を向上させることが判明している。
【0017】
ユーザは、例えば、正面およびフラッシュならびにフロップ等の、多数の観察角で表示される塗料画像に基づいて、修繕対象の自動車に最も良く色適合する塗料画像を選択する。一実施形態において、ユーザは、所望の変形をコンピュータモニタ上でダブルクリックするか、または、その他の方法で変形を選択し、そして、選択された変形の配合を提供する別画面が提示される。代替として、ユーザは、選択した変形の配合を、出版物で調べてもよい。
【0018】
前述の説明に開示される概念から逸脱することなく、本発明に対する改変がなされ得ることは、当業者によって容易に理解される。かかる改変は、特許請求の範囲が、その文言により明白に記述しない限り、以下の特許請求の範囲に含まれるとみなされる。従って、本明細書中で詳細に説明される特定の実施形態は、例示の目的のみで、本発明の範囲を限定するものではなく、その範囲は添付の特許請求の範囲ならびにその任意および全ての均等物を包括する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を修繕するための塗料配合を色合わせするコンピュータ実装型の方法であって、
(a)自動車塗料の色コードを識別することと、
(b)該色コードに関連付けられる色参照チップを選択することと、
(c)該自動車の該塗料と該色参照チップとの色ずれを視覚的に決定することと、
(d)該色コードに関連付けられる塗料配合に対してコンピュータデータベースを検索することと、
(e)表示するために複数の塗料配合を選択することと、
(f)該選択された配合の塗料画像を複数の観察角で表示することと、
(g)該色ずれを考慮して、該自動車塗料に最も良く適合する表示された塗料画像のうちの1つを識別することと、
(h)最も良く適合した塗料画像の塗料配合を識別することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記自動車に関する情報または塗料色参照出版物から、前記色コードを識別することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された配合は、プライム配合およびプライム配合の変形を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表示するために配合を選択することは、前記配合の色ずれ方向を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された配合の前記塗料画像は、相互に隣接して表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塗料画像は、複数の観察角および/または照明角で、前記選択された配合を表示する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記塗料画像は、複数の観察角または複数の照明角、あるいは両方で、前記選択された配合を表示する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記塗料画像は、遠方非鏡面反射角で表示される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
自動車塗料に修繕塗料配合を色合わせするためのコンピュータ製品であって、
(a)コンピュータ実装型の色コードデータベースであって、塗料配合および該塗料配合のデジタル画像に色コードを関連付けるデータベースと、
(b)該データベース内で該色コードに対して検索を開始するように構成される、色コード入力デバイスと、
(c)該検索において見つけられた塗料配合または該塗料配合の色画像、あるいは両方を表示するように構成される出力デバイスと
を備えている、コンピュータ製品。
【請求項10】
画像表示デバイスが、複数の観察角度で、各塗料配合を配合パネルの一式の画像として表示する、請求項9に記載のコンピュータ製品。
【請求項11】
前記一式の画像は、各観察角度に対する前記画像が相互に隣接している状態で配置される、請求項10に記載のコンピュータ製品。
【請求項12】
前記色画像は、複数の観察角、複数の照明角、または両方で記録された、塗料配合のデジタル写真を備えている、請求項10に記載のコンピュータ製品。
【請求項13】
前記出力デバイスは、塗料配合に関する情報を表示するコンピュータモニタを備えている、請求項9に記載のコンピュータ製品。
【請求項14】
前記情報は、配合識別、変形の種類、および/または色ずれ方向を備えている、請求項13に記載のコンピュータ製品。
【請求項15】
前記変形の種類は、プライム配合、変形配合、および/または特殊変形配合である、請求項14に記載のコンピュータ製品。
【請求項16】
前記出力デバイスは、表示画面を備えている、請求項10に記載のコンピュータ製品。
【請求項17】
前記表示画面上に表示される色画像を補正するための色補正ソフトウェアをさらに備えている、請求項16に記載のコンピュータ製品。
【請求項18】
画像の周囲の表示画面背景は、灰色である、請求項16に記載のコンピュータ製品。
【請求項19】
前記一式の画像は、前記表示画面上で再配置可能である、請求項16に記載のコンピュータ製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522255(P2011−522255A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511761(P2011−511761)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/045214
【国際公開番号】WO2009/148888
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】