説明

塗装ミスト飛散低減フード装置及び塗装装置

【課題】従来の塗装ミスト飛散低減フード装置では、フード及び作業台等の大きな質量を自動接近したり、自動的に一定距離を保持して追従するようにしており、追従性が悪く、場合によってはフードの一部が、塗装した塗料が乾燥していない塗装面に接触し、塗膜を傷つけたり、逆に離れ過ぎたりして飛散する塗装ミストが増加するという問題がある。
【解決手段】そのために、本発明の塗装ミスト飛散低減フード装置は、フードと、フードの前方又はフードの前部外周にフードの前方の開放部を囲むように設けられた可動部材と、フードと可動部材との間に設けられた可撓性の可動板カバーと、フードに取り付けられ可動部材を前後方向に移動させる可動板駆動装置とを備えたことにより、飛散する塗装ミストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の建造船ドック或いは修繕船ドック(屋外)等における塗装ミスト飛散低減フード装置及び塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建造船ドック或いは修繕船ドックで行われる塗装工事は屋外で行われており、気象条件の影響を受け、塗装ミストが飛散し、周辺地域に被害をもたらすケースが生じている。
そこで、塗装ミスト等の飛散を防止すべく、図8に示すように、船体外板1を塗装するに当たり、ドック側壁2に配設された自走機(移動台車)3、アーム昇降装置4及びアーム旋回装置5で昇降、旋回自在の作業台支持アーム6及びリンク部材7、リンク部材7、作業台支持アーム6で水平に維持される先端の架台8及び作業台9、支持材により作業台9に取付けられたフード100、支持材の下部に配設された前後移動装置10および水平回転装置11、フードの周囲に配設され船体外板1に対して所定の距離を位置するのを検出する位置検出器を備え、フード100の周囲が船体外板1に対して所定の距離を位置するのを検出する位置検出器を配設し、フード100を船体外板1に自動接近したり、自動的に一定距離を保持して追従できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、フード100及び作業台9等の大きな質量を自動接近したり、自動的に一定距離を保持して追従するようにしており、追従性が悪く、場合によってはフード100の一部が、塗装した塗料が乾燥していない船体外板1に接触し、塗膜を傷つけたり、逆に離れ過ぎたりして飛散する塗装ミストが増加するという問題がある。
【0004】
また、装置本体に設けられるとともに被塗装面に向けて塗料を噴射するノズルと、被塗装面を包囲するように装置本体に設けられるとともにエアー噴射部及びエアー吸引部から構成され、エアー噴射部から被塗装面に向けて噴射されたエアー及びノズルから噴射された塗料の残滓塗料をエア吸引部から吸引することにより被塗装面の周囲にエアーカーテンを形成するエアーカーテン形成装置とからなる塗料飛散防止装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、本願出願人の実験及び解析によると、エアー噴射部と被塗装面との距離が離れ過ぎた場合、あるいはエアー噴射範囲が狭い場合は、飛散の防止を十分に行うことができず、エアー噴射部と被塗装面との距離を適正な位置に保ち、噴射範囲を広く取る必要があることが判明した。
【0006】
【特許文献1】特公昭62−36747号公報
【特許文献2】特開2005−161282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、塗装装置のフードの前端面と被塗装面とを適正な距離に保つとともに、適正な距離に保つべく移動させる可動部の質量を低減させることにより応答性を良くした塗装ミスト飛散低減フード装置及び塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点に対し本発明は、以下の各手段を以って課題の解決を図る。
【0009】
第1の手段の塗装ミスト飛散低減フード装置は、
フードと、
前記フードの前方又は前記フードの前部外周に前記フードの前方の開放部を囲むように設けられた可動部材と、
前記フードと前記可動部材との間に設けられた可撓性の可動板カバーと、
前記フードに取り付けられ前記可動部材を前後方向に移動させる可動板駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の手段の塗装ミスト飛散低減フード装置は、
フードと、
前記フードの前方又は前記フードの前部外周に前記フードの前方の開放部を囲むように設けられた一体構造の枠状の可動部材と、
前記フードと前記可動部材との間に全周囲に亘って設けられた可撓性の可動板カバーと、
前記フードに取り付けられ前記可動部材を前後方向に移動させる3個の可動板駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
第3の手段の塗装ミスト飛散低減フード装置は、
フードと、
前記フードの前方又は前記フードの前部外周に前記フードの前方の開放部を囲むように設けられると共に端部同士がピンにより結合された4本の可動部材と、
前記フードと前記可動部材との間に設けられた可撓性の可動板カバーと、
前記フードに取り付けられ前記可動部材を前後方向に移動させる4個の可動板駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
第4の手段は、第1乃至3のいずれかの手段の塗装ミスト飛散低減フード装置において、
前記可動部材の外周囲に、エアーを噴出するシール部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
第5の手段は、第1乃至3のいずれかの手段の塗装ミスト飛散低減フード装置において、
前記可動部材は、エアーを噴出するシール部材であることを特徴とする。
【0014】
第6の手段は、第1乃至5のいずれかの手段の塗装ミスト飛散低減フード装置において、
前記可動板駆動装置に設けられ塗装面との距離を計測する距離センサーと、
前記距離センサーからの信号に基づき前記可動板駆動装置により前記可動部材を前後方向に駆動する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
第7の手段は、第6の手段の塗装ミスト飛散低減フード装置において、
前記制御装置は、前記距離センサーからの計測信号に基づき、前記各可動板駆動装置により前記可動部材の急速引き込み/緩慢押し出し駆動を行うものであることを特徴とする。
【0016】
第8の手段の塗装装置は、
移動台車と、
前記移動台車に垂直面内及び水平面内で旋回可能に設けられた作業台支持アームと、
前記作業台支持アームの先端に設けられた作業台と、
前記作業台に設けられたフード支持アームと、
前記フード支持アームの先端に垂直面内で旋回可能に取り付けられた請求項1乃至7のいずれかに記載の塗装ミスト飛散低減フード装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
特許請求の範囲に記載の各請求項に係る発明は、上記の各手段を採用しており、フードの前方又はフードの前部外周に設けられた可動部材を、可動板駆動装置により船体外板等の塗装面から適正な所定の距離に保持するようにしたので、可動部材の前端と塗装面との間の隙間を狭くすることができるため、隙間を通過し飛散する塗装ミストの量を大幅に低減することができる。
【0018】
また、適正な所定の距離に保持するために可動させる部材は可動部材(及び、若干の付属品)のみで軽量なため、可動板駆動装置を小さな(駆動力の小さい)ものとすることができる。
これにより、制御の応答性が良くなる。
また、可動部材の急速引き込み/緩慢押し出し制御を行うようにしたので、船体外板に塗装された塗膜に傷つけることを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の各実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フード装置及び塗装装置につき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フードの正面図、図2は、図1の側面図である。
図3は、図2の可動板駆動装置の詳細側面図、図4は、図2の可動板駆動装置の詳細平面図、図5は、図2の可動板駆動装置の詳細正面図、図6は、図1の可動板の制御フローチャートである。
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フードの詳細側断面図である。
【0020】
<本発明の第1の実施の形態>
先ず、図1〜図6に基づき、図8を一部参照して、本発明の第1の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フード及び塗装装置につき説明する。
図1、2に示すフード装置20は、フード支持アーム12を介して作業台9に取り付けられている。
なお、図示を省略しているが、実際には、フード装置20は、フード支持アーム12に垂直方向に旋回可能に取り付けられている。
【0021】
また、作業台9は、図8に図示のように、前後移動装置10及び水平回転装置11を介して、架台8に前後移動且つ水平面内で旋回可能に取り付けられている。
一方、ドック側壁2には、移動台車3が水平方向(船体外板1の船首尾方向)に移動可能に設けられている。
【0022】
移動台車3と作業台9とは、作業台支持アーム6及びリンク部材7により連結されている。
作業台支持アーム6及びリンク部材7は、アーム昇降装置4或いはアーム旋回装置5により、垂直面内及び水平面内で旋回できるようになっている。
作業台9は、作業台支持アーム6の先端に前後左右上下方向に移動自在且つ水平面内で旋回可能に取り付けられている。
そして、作業台支持アーム6がどのように傾いても、作業台9は常に水平になるようになっている。
フード装置20は、作業台9上のフード支持アーム12の先端に垂直面内で旋回可能に取り付けられている。
なお、移動台車3は、ドックの底面を自走するものとしても良い。
【0023】
このように、本発明の第1の実施の形態に係る塗装装置は、ドックの側壁或いは底面を自走する移動台車3と、移動台車3に垂直面内及び水平面内で旋回可能に設けられた作業台支持アーム6と、作業台支持アーム6の先端に設けられた作業台9と、作業台9を水平に保持する図示略の水平保持装置と、作業台9に設けられたフード支持アーム12と、フード支持アーム12の先端に垂直面内で旋回可能に取り付けられた塗装ミスト飛散低減フード装置20ととにより構成されている。
この場合、作業台支持アーム6は、図8に図示のものに限定されるものではなく、テレスコープ型、くの字の折れ曲がり型等、種々の形態のものが適用可能である。
【0024】
次に、フード装置20につき詳細に説明する。
フード装置20は、図1、図2に示すように、前後面が開放された台形台状のフード21、枠状の可動部材22、可撓性の可動板カバー23、可動板を駆動する可動板駆動装置30等により構成されている。
可動部材22は、フード21の前方に、フード21の前端部の全周囲に対峙するように前後方向に移動可能に設けられている。
【0025】
図1、図2に図示の例では、可動部材22は、フード21の前方に設けられているが、これに限定されるものではなく、フード21の前部の外周を囲むように設けられたものでも良い。
また、可動部材22は、L型鋼材を枠状に形成しているが、これに限定されるものではなく、円管部材により、フード21の前方或いは前部の外周を囲むように枠状に形成したものでも良い。
【0026】
フード21の前端部の全周囲と前後方向に移動する枠状の可動部材22とは、可撓性の可動板カバー23により密閉されている。
この可動板カバー23は、布、合成繊維製、ゴム等の軟らかい材質のもの、或いはある程度硬質の部材を蛇腹状にしたものとすることができる。
可動板カバー23は、フード21の上部左右の可動板駆動装置30と、フード21の下部中央の可動板駆動装置30により、前後方向に駆動されるようになっている。
【0027】
次に、可動板駆動装置30につき詳細に説明する。
図3〜図5に示すように、フード21の外面には、駆動装置取付台31が取り付けられている。
駆動装置取付台31の前方には、可動板支持台32が前後方向に移動可能に設けられている。
可動板支持台32の左右には、一対の可動板案内棒39の基部が取り付けられている。
一方、駆動装置取付台31の左右には、各可動板案内棒39を案内する一対のLMベアリング40が取り付けられている。
【0028】
可動板支持台32の中央には、可動板駆動シリンダー33の可動板駆動用ピストン37の基部が、ジョイント38を介して連結されている。
一方、駆動装置取付台31の中央には、可動板駆動シリンダー33が取り付けられている。
このようにして、可動板支持台32は、駆動装置取付台31に対し、可動板案内棒39に案内されて、可動板駆動シリンダー33により前後方向に駆動されるようになっている。
【0029】
可動板支持台32には、可動板駆動シリンダー33及び可動板駆動用ピストン37、可動板案内棒39、LMベアリング40を塗装ミストから保護するための駆動装置カバー45が取り付けられている(なお、図3では図示を省略している)。
この駆動装置カバー45は、可動板カバー23と同様に、布、合成繊維製、ゴム等の軟らかい材質のもの、或いはある程度硬質の部材を蛇腹状にしたものとすることができる。
【0030】
各可動板支持台32にはセンサー取付台41が取り付けられ、センサー取付台41にはセンサーカバー43が取り付けられ、センサーカバー43内には、船体外板1との距離を計測する距離センサー42が収納されている。
なお、図示を省略しているが、センサーカバー43内にはエアーが供給されており、塗装ミストが侵入してり距離センサー42の計測面が汚れるのを防止するようになっている。
【0031】
なお、駆動装置取付台31には、可動板駆動シリンダー33にエアーを供給するホース、距離センサー42用の電線等用のケーブルベアー44が取り付けられている。
【0032】
図3に図示のように、フード21の下部中央の可動板駆動装置30の可動板支持台32と可動部材22の下部中央とは、可動板下部支持用フランジユニット36により連結、支持されている。
そして、可動部材22は、下部中央の可動板駆動装置30の可動板支持台32に対し、ある程度前後左右に旋回可能になっている。
【0033】
一方、フード21の上部左右の可動板駆動装置30の可動板支持台32に取り付けられたとスプリング把持具35と可動部材22の上部左右とは、可動板上部支持用スプリング34により連結、支持されている。
この可動板上部支持用スプリング34は、可動部材22がフード21に対し傾いたときに、可動部材22と可動板支持台32との距離の変化を吸収するためのものである。
また、左右一対の可動板上部支持用スプリング34は、可動部材22の荷重の少なくとも半分以上を支持(残りの荷重は、下部の可動板駆動装置30の可動板下部支持用フランジユニット36で支持)するような弾性係数の大きいスプリングである。
【0034】
そして、3個の可動板駆動装置30により可動部材22を前後方向に移動させる際に、3個の可動板駆動装置30の可動板駆動用ピストン37の伸縮量が同じ場合には、可動板駆動用ピストン37の伸縮移動の際には、可動部材22が殆ど振動することなく、可動部材22をフード21の前面と並行になるように保持し、可動板駆動用ピストン37の伸縮量が異なった場合には、この可動板上部支持用スプリング34により、伸縮量差(距離さ)による歪を吸収できるようになっている。
【0035】
なお、可動板下部支持用フランジユニット36と可動板上部支持用スプリング34とは、上下逆になるようにしても良い。
例えば、可動部材22の上部中央を、可動板下部支持用フランジユニット36によりある程度前後左右に旋回可能に吊り下げるように保持し、可動部材22の下部左右を、可動板上部支持用スプリング34により連結、支持するようにしても良い。
【0036】
次に、図6に基づき、各可動板駆動装置30の制御装置につき説明する。
この制御装置は、作業台9に設置されており、電気(電子)回路のみならず、エアー供給用の各種の弁類も含んでいる。
【0037】
制御装置の盤表面には、1個の手動/自動の選択スイッチ(切替え式、或いは押しボタン式、等)と、1個の非常停止スイッチと、距離センサー42にて計測された距離を表示する3個の表示器と、3組の操作スイッチ(切替えスイッチ式、押しボタン式、或いはジョイスチック式、等)と、1個の共通操作スイッチ(切替えスイッチ式、押しボタン式、或いはジョイスチック式、等)が設けられている。
【0038】
先ず、スタート(ステップS0)後、選択スイッチが手動に切替えられているか自動に切替えられているかを判断する(ステップS1)。
選択スイッチが手動に切替えられている場合には、作業員が、3個の表示器を参照しながら、共通操作スイッチ又は/及び3組の操作スイッチにより、可動板駆動装置30を同時に或いは個々に駆動して、可動部材22を前後方向に移動させる(ステップS2)。
【0039】
選択スイッチが自動に切替えられている場合には、各距離センサー42にて計測された計測値に基づき、船体外板1と可動部材22との距離が適正な距離になるように自動的に制御される。
先ず、各距離センサー42にて、各点の船体外板1と可動部材22との距離が計測される(ステップS3)。
【0040】
そして、各測定値が下限設定値以下(平均値−許容値)か否かが判定される(ステップS4)。
各測定値が下限設定値以下と判定(Yes)された場合、可動部材22が船体外板1に接触し、船体外板1に塗装された塗膜に傷つけることを防止するために、平均値になるように可動部材22を急速に引き込む(ステップS5)。
【0041】
各測定値が下限設定値以下でないと判定(No)された場合、次に、各測定値が上限設定値(平均値+許容値)以上か否かが判定される(ステップS6)。各測定値が上限設定値以上と判定(Yes)された場合、可動部材22と船体外板1との隙間がひろがって飛散する塗装ミストが増加しないようにすべく、平均値になるように可動部材22を緩慢に押し出す(ステップS7)。
各測定値が上限設定値(平均値+許容値)以上でないと判定された場合(No)には、可動板駆動装置30を駆動する必要がないので、各距離センサー42による距離計測(ステップS5)に戻り、以下、このルーチンを終了まで繰り返す。
【0042】
この上記のステップS3〜S7の制御は、個々の可動板駆動装置30毎に独立して行われる。
個々の可動板駆動装置30の制御は、PID制御、PI制御等一般的な制御装置が採用可能である。
そして、可動部材22の急速引き込み/緩慢押し出し制御の具体的な方法、構成としては、次の種々のものが適用可能である。
【0043】
例えば、PID制御、PI制御において、引き込み時の時定数を大きくし、押し出し時の時定数を小さくするようにしても良い。
または、可動板駆動シリンダー33へのエアー供給を切り替える3方切換電磁弁において、押し出し時には低電流(或いは低電圧)で駆動用の電磁コイルを励磁するようにしても良い。
【0044】
または、可動板駆動シリンダー33と3方切換電磁弁とを接続するエアーラインにおいて、可動板駆動シリンダー33の可動部材22押し出し側のシリンダー室に接続されるラインを2ラインとし、この2ラインに互いに逆方向の逆止弁を設け、可動部材22押し出し時に流れるラインにオリフィスを設け、可動部材22押し出し時に可動部材22押し出し側のシリンダー室に供給されるエアーの流れを抑制し、可動板駆動用ピストン37及び可動部材22を緩やかに押し出すように構成しても良い。
或いは、可動板駆動シリンダー33と3方切換電磁弁とを接続するエアーラインにおいて、可動板駆動シリンダー33の可動部材22引き込み側のシリンダー室に接続されるラインを2ラインとし、この2ラインに互いに逆方向の逆止弁を設け、可動部材22押し出し時に流れるラインにオリフィスを設け、可動部材22押し出し時に可動部材22引き込み側のシリンダー室から戻るエアーの流れを抑制し、可動板駆動用ピストン37の移動を緩やかにするように構成しても良い。
【0045】
本発明の第1の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フード及び塗装装置によれば、フード21の前方又はフード21の前部外周に設けられた可動部材22を、可動板駆動装置30により船体外板1等の塗装面からから適正な所定の距離に保持するようにしたので、可動部材22の前端と塗装面との間の隙間を狭くすることができるため、隙間を通過し飛散する塗装ミストの量を大幅に低減することができる。
しかも、また、塗装ミストの飛散量が減少することに伴い、図示略の吸引する塗装ミスト量も低減するため、フィルタ寿命が延びて、吸引効果時間も増加する。
【0046】
また、適正な所定の距離に保持するために可動させる部材は可動部材22(及び、若干の付属品)のみで軽量なため、可動板駆動装置30を小さな(駆動力の小さい)ものとすることができる。
これにより、制御の応答性が良くなる。
また、可動部材22の急速引き込み/緩慢押し出し制御を行うようにしたので、船体外板1に塗装された塗膜に傷つけることを確実に防止することができる。
【0047】
また、枠状の可動部材22の下部を可動板下部支持用フランジユニット36により連結、支持すると共に、枠状の可動部材22の上部を可動板上部支持用スプリング34により連結、支持するよう構成されているので、可動部材22がフード21に対し傾いたときに、可動部材22と可動板支持台32との距離の変化を吸収できると共に、可動板駆動用ピストン37及び可動板案内棒39に過大な横荷重が掛からない。
しかも、可動板上部支持用スプリング34により可動部材22の荷重の一部を負担しており、一つの可動板駆動装置30に可動部材22の全荷重が集中することがなく、可動板駆動装置30を小さな容量のものとすることができる。
【0048】
<本発明の第2の実施の形態>
図7に基づき、本発明の第2の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フード装置及び塗装装置につき説明する。
本発明の第2の実施の形態のものは、本発明の第1の実施の形態のものに対し、図7に示すように可動部材22の前方に、シール部材46が全周囲に亘って取り付けられている。
その他の構成(制御装置を含む)については、本発明の第1の実施の形態のものと同様のものを備えている。
なお、可動部材22そのものをシール部材46としても良い。
【0049】
シール部材46の少なくとも1つのシールの基部には、エアーを供給するために所定間隔で穿設された複数のシールエアー噴出穴47が設けられている。
このシールエアー噴出穴47は、エアーヘッダー48に通じている。
このようにして、図示略のエアー源から供給されたエアーは、エアーヘッダー48、複数のシールエアー噴出穴47を介して、船体外板1に向かって噴出されるようになっている。
【0050】
本発明の第2の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フード装置及び塗装装置によれば、本発明の第1の実施の形態のものによる作用効果に加えて、更に、シール部材46により、フード21外に飛散する塗装ミストを更に低減することができる。
しかも、船体外板1との距離が適正な距離に保持されているので、噴出させるエアーの量を低減し、噴射範囲を広くすることができる。
【0051】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は上記の各実施の形態に限定されず、本発明の範囲内で種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【0052】
例えば、可動部材22を上下左右の4本の可動部材片に分割し、可動部材片の隣接する端部同士をピンにより結合した構造のものとしても良い。
この場合、4個の可動板駆動装置30を、上下の可動部材片の左右端部、或いは左右の可動部材片の上下端部に連結する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フードの正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図2の可動板駆動装置の詳細側面図である。
【図4】図2の可動板駆動装置の詳細平面図である。
【図5】図2の可動板駆動装置の詳細正面図である。
【図6】図1の可動板の制御フローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る塗装ミスト飛散低減フードの詳細側断面図である。
【図8】従来のものの側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 船体外板
2 ドック側壁
3 移動台車
4 アーム昇降装置
5 アーム旋回装置
6 作業台支持アーム
7 リンク部材
8 架台
9 作業台
10 前後移動装置
11 水平回転装置
12 フード支持アーム
20 フード装置
21 フード
22 可動部材
23 可動板カバー
30 可動板駆動装置
31 駆動装置取付台
32 可動板支持台
33 可動板駆動シリンダー
34 可動板上部支持用スプリング
35 スプリング把持具
36 可動板下部支持用フランジユニット
37 可動板駆動用ピストン
38 ジョイント
39 可動板案内棒
40 LMベアリング
41 センサー取付台
42 距離センサー
43 センサーカバー
44 ケーブルベアー
45 駆動装置カバー
46 シール部材
47 シールエアー噴出穴
48 エアーヘッダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードと、
前記フードの前方又は前記フードの前部外周に前記フードの前方の開放部を囲むように設けられた可動部材と、
前記フードと前記可動部材との間に設けられた可撓性の可動板カバーと、
前記フードに取り付けられ前記可動部材を前後方向に移動させる可動板駆動装置とを備えたことを特徴とする塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項2】
フードと、
前記フードの前方又は前記フードの前部外周に前記フードの前方の開放部を囲むように設けられた一体構造の枠状の可動部材と、
前記フードと前記可動部材との間に全周囲に亘って設けられた可撓性の可動板カバーと、
前記フードに取り付けられ前記可動部材を前後方向に移動させる3個の可動板駆動装置とを備えたことを特徴とする塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項3】
フードと、
前記フードの前方又は前記フードの前部外周に前記フードの前方の開放部を囲むように設けられると共に端部同士がピンにより結合された4本の可動部材と、
前記フードと前記可動部材との間に設けられた可撓性の可動板カバーと、
前記フードに取り付けられ前記可動部材を前後方向に移動させる4個の可動板駆動装置とを備えたことを特徴とする塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項4】
前記可動部材の外周囲に、エアーを噴出するシール部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項5】
前記可動部材は、エアーを噴出するシール部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項6】
前記可動板駆動装置に設けられ塗装面との距離を計測する距離センサーと、
前記距離センサーからの信号に基づき前記可動板駆動装置により前記可動部材を前後方向に駆動する制御装置とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記距離センサーからの計測信号に基づき、前記各可動板駆動装置により前記可動部材の急速引き込み/緩慢押し出し駆動を行うものであることを特徴とする請求項6に記載の塗装ミスト飛散低減フード装置。
【請求項8】
移動台車と、
前記移動台車に垂直面内及び水平面内で旋回可能に設けられた作業台支持アームと、
前記作業台支持アームの先端に設けられた作業台と、
前記作業台に設けられたフード支持アームと、
前記フード支持アームの先端に垂直面内で旋回可能に取り付けられた請求項1乃至7のいずれかに記載の塗装ミスト飛散低減フード装置とを備えたことを特徴とする塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−202080(P2009−202080A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45728(P2008−45728)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】