説明

塗装充填装置

【課題】安価な構成で塗料の定量供給を確実に行うことができる塗料充填装置を提供すること。
【解決手段】塗料充填装置1は、塗料バッグ12内への塗料充填時に塗料カートリッジ2から排出される塗料押出液L1を一旦蓄えるリザーバータンク4を備える。リザーバータンク4内に蓄えられる塗料押出液L1の液面の位置が光電センサ33,34によって検出される。制御装置6は、光電センサ33,34により検出した液面の位置に基づいて、塗料カートリッジ2内の塗料押出液L1の液量を監視することで、塗料バッグ12への塗料P1の充填量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料カートリッジに一定量の塗料を充填する塗料充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディなどの被塗装物を塗装する塗装システムにおいては、高品質な塗装が要求されるため、塗着効率や塗膜の平滑性などに優れた静電塗装機が用いられている。この静電塗装機としては、塗料カートリッジを塗装機本体に装着して定量の塗料押出液を充填することにより、塗料カートリッジ内の塗料を押し出して塗装を行うようにした塗装機が実用化されている。
【0003】
ところで、静電塗装機では、塗料供給系を流れる塗料を介して電流がリークするおそれがあるため、それを防止する絶縁対策が必要となる。この対策としては、塗料が充填される塗料バッグを備えた塗料カートリッジを塗装機に装着することが提案されている。
【0004】
この塗料カートリッジに塗料を定量供給する装置として、計量シリンダ方式の塗料充填装置や光電管方式の塗料充填装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。図6には計量シリンダ方式の塗料充填装置40の具体例を示し、図7には光電管方式の塗料充填装置50の具体例を示している。図6に示されるように、塗料充填装置40は、塗料カートリッジ41の塗料バッグ42から塗料押出液L1を排出するための排出経路43に接続された計量シリンダ44を備えている。計量シリンダ44には、サーボモータ45が装着されており、そのサーボモータ45を駆動することによって、ピストン46のスライド量が制御される。これによって、塗料カートリッジ41から所定量の塗料押出液L1を排出し、その排出量に応じて塗料バッグ42に所定量の塗料P1を充填する。
【0005】
また、図7の塗料充填装置50では、塗料カートリッジ51内における塗料バッグ52の塗料充填状態が光電センサ53を用いて検出されている。具体的には、光電センサ53は、発光素子54と、受光素子55と、各素子54,55の間の光路を形成する光ファイバ56(光電管)とからなる。塗料カートリッジ51において、塗料充填時には塗料バッグ52が横方向に広がり、その変形に伴い塗料バッグ52の長さが短くなる。一方、塗料排出時には塗料バッグ52が萎縮し、その変形に伴い塗料バッグ52の長さが長くなる。この塗料バッグ52の挙動を光電センサ53を利用して検出し、塗料P1を充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−100145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図6のような計量シリンダ方式の塗料充填装置40では、サーボモータ45を用いているため、高価な装置となる。さらに、サーボモータ45を駆動するために電気スイッチ等が必要となるため、防爆規制に触れる一部の地域では塗料充填装置40を使用することができないといった問題がある。また、図7に示す光電管方式の塗料充填装置50では、塗料カートリッジ51内における塗料バッグ52の変形は一様ではないため、塗料P1の定量供給が困難である。このため、塗料P1の過充填による塗料バッグ52の破裂や充填量不足などの問題が生じてしまう。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価な構成で塗料の定量供給を確実に行うことができる塗料充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、塗料を充填する塗料バッグを有し、塗料押出液によって前記塗料バッグ内の塗料を押し出すように構成された塗料カートリッジに塗料を定量供給する塗料充填装置であって、前記塗料バッグ内への塗料充填時に前記塗料カートリッジから排出される前記塗料押出液を一旦蓄えるリザーバータンクと、前記リザーバータンク内の液面の位置を検出するための液面位置検出手段と、前記液面位置検出手段によって検出された液面の位置に基づいて前記塗料カートリッジ内の前記塗料押出液の液量を監視することで、前記塗料バッグへの塗料の充填量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする塗料充填装置をその要旨とする。
【0010】
手段1に記載の発明によると、塗料カートリッジの塗料バッグ内に塗料を充填すると、その充填量に応じた液量の塗料押出液が塗料カートリッジから排出され、リザーバータンク内に蓄えられる。このとき、液面位置検出手段によって、リザーバータンク内の液面の位置が検出される。そして、制御装置により、液面の位置に基づいて塗料カートリッジ内の塗料押出液の液量が監視され、その液量に応じて塗料バッグに充填される塗料の充填量を制御することができる。このようにすると、従来技術のように比較的高価なサーボモータ等を使用しなくても、塗料カートリッジに一定量の塗料を正確に充填することができる。また、塗料充填装置の構成が簡素化されるため、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記液面位置検出手段は、前記リザーバータンク内における前記塗料押出液の液面の下限位置と上限位置とをそれぞれ検出するために設けられた一対の光電センサを含むことをその要旨とする。
【0012】
手段2に記載の発明によると、リザーバータンク内における塗料押出液の液面の下限位置と上限位置とが一対の光電センサによって検出される。そして、リザーバータンク内において、下限位置から上限位置まで増加する塗料押出液の増加量を監視することにより、その増加量に応じた塗料を塗料バッグ内に定量供給することができる。またこの場合、液面位置検出手段として光電センサを用いているので、防爆構造の装置を容易に実現することができ、防爆規制のある地域においても本発明の塗料充填装置を使用することが可能となる。
【0013】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記リザーバータンク内の押出液貯留室には、前記塗料押出液よりも比重の小さい材料からなるフロート部材が収容され、前記液面位置検出手段は、前記液面に浮かぶ前記フロート部材が前記光電センサの発する光を遮断するか否かを検出することにより、前記液面の位置を間接的に検出することをその要旨とする。
【0014】
塗料押出液として透明な液体が用いられる場合、その液面の位置を直接検出することは困難である。これに対して、手段3に記載の発明のように、リザーバータンク内の押出液貯留室において塗料押出液の液面にフロート部材を浮かべ、そのフロート部材の位置に基づいて液面の位置を間接的に検出することにより、その液面の位置を確実に検出することができる。
【0015】
手段4に記載の発明は、手段3において、前記押出液貯留室は、前記下限位置及び前記上限位置の間に形成された大径部と、前記下限位置及び前記上限位置に対応してそれぞれ形成された小径部とを有することをその要旨とする。
【0016】
手段4に記載の発明によると、リザーバータンクの押出液貯留室において、液面の下限位置及び上限位置に対応して小径部がそれぞれ形成されている。このようにすると、下限位置及び上限位置に対応する小径部では、液量の増減に伴う液面の位置の変化量が大きくなるため、押出液貯留室に蓄えられる液量をより正確に監視することができる。
【0017】
手段5に記載の発明は、手段2乃至4のいずれかにおいて、前記液面位置検出手段において前記液面の下限位置を検出するための光電センサは、前記塗料バッグの外部への塗料漏れの有無を検知する塗料漏れ検知センサを兼ねていることをその要旨とする。
【0018】
手段5に記載の発明によると、液面の下限位置を検出するための光電センサによって塗料漏れの有無が検知される。具体的には、塗料カートリッジに不具合が生じて塗料バッグの外部に塗料が漏れた場合、塗料押出液に塗料が混ざる。そして、その塗料を含んだ塗料押出液がリザーバータンクの押出液貯留室に供給されると、光電センサによって検出される光の検出量が少なくなり、その光電センサの検出結果に基づいて、塗料漏れの有無を検知することができる。なお、上限位置を検出するための光電センサでは、液面に浮かぶフロート部材を検知するため、塗料漏れを検知することができないが、下限位置を検出するための光電センサでは、塗料漏れを早期に検知することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、手段1〜5に記載の発明によると、安価な構成で塗料の定量供給を確実に行うことができる塗料充填装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施の形態の塗料充填装置を示す概略構成図。
【図2】塗料充填方法を示す説明図。
【図3】塗料充填方法を示す説明図。
【図4】塗料充填方法を示す説明図。
【図5】塗料充填方法を示す説明図。
【図6】従来の計量シリンダ方式の塗料充填装置を示す概略構成図。
【図7】従来の光電管方式の塗料充填装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1に示されるように、本実施の形態の塗料充填装置1は、塗料カートリッジ2に塗料P1を定量供給するための装置であって、塗料供給器3、リザーバータンク4、押出液貯留タンク5、及び制御装置6を備えている。
【0023】
塗料供給器3は、図示しない塗料タンクやポンプ等を含み、塗料経路11を介して塗料カートリッジ2に接続される。塗料供給器3は、ポンプを駆動することによって塗料タンク内の塗料を塗料カートリッジ2に供給する。
【0024】
塗料カートリッジ2は筒状に形成されており、そのカートリッジ2内には塗料バッグ12が設けられている。塗料バッグ12は、可撓性を有する樹脂製のバッグであり、変形可能となっている。塗料バッグ12は、塗料カートリッジ2の内部領域を、塗料P1が充填される塗料室14と、塗料P1を塗料室14から押し出すための塗料押出液L1が給排される塗料押出液室15とに区画しており、塗料P1と塗料押出液L1との接触を防止するようになっている。また、塗料カートリッジ2において、塗料バッグ12への塗料充填時には、塗料P1の充填量と同じ容量の塗料押出液L1が塗料押出液室15から排出されるようになっている。なお、本実施の形態で用いられる塗料押出液L1は、有機溶剤などの油性透明液体である。
【0025】
塗料カートリッジ2の塗料押出液室15は、押出液供給経路17を介して押出液貯留タンク5に接続されている。この押出液供給経路17の途中にポンプ18が設けられており、そのポンプ18を駆動することで、押出液貯留タンク5内に蓄えられている塗料押出液L1が塗料カートリッジ2の塗料押出液室15に供給されるようになっている。
【0026】
また、塗料カートリッジ2の塗料押出液室15は、押出液排出経路19を介してリザーバータンク4に接続されている。押出液排出経路19の途中には、三方切替バルブ21が設けられており、この三方切替バルブ21はリザーバータンク4に加えて押出液貯留タンク5にも接続されている。三方切替バルブ21は、押出液排出経路19を切り替えるバルブであり、塗料カートリッジ2からリザーバータンク4への排出経路19を連通する際には、リザーバータンク4から押出液貯留タンク5への排出経路19を遮断する。また、三方切替バルブ21は、塗料カートリッジ2からリザーバータンク4への排出経路19を遮断する際には、リザーバータンク4から押出液貯留タンク5への排出経路19を連通させる。なお、この三方切替バルブ21は、図示しないエア供給装置から供給されるパイロットエアによって駆動されるエアバルブである。
【0027】
リザーバータンク4には、塗料充填時に塗料カートリッジ2から排出される塗料押出液L1を一旦蓄えるための押出液貯留室23が形成されており、その貯留室23は、直径が大きな大径部24と、その大径部24の上端側及び下端側に設けられた小径部25とを有する。また、押出液貯留室23の下端部に押出液排出経路19が接続されており、この下端部から塗料押出液L1が給排されるようになっている。さらに、押出液貯留室23の上端部には、エア供給経路26とエア排出経路27とが接続されている。エア供給経路26上にはその経路を開閉するためのエア供給バルブ28が設けられるとともに、エア排出経路27上にもその経路を開閉するためのエア排出バルブ29が設けられている。
【0028】
なお、各バルブ28,29は、三方切替バルブ21と同様に、図示しないエア供給装置から供給されるパイロットエアによって駆動されるエアバルブである。また、各バルブ21,28,29にパイロットエアを供給するエア供給装置は、制御装置6から出力される駆動信号に基づいて制御されるようになっている。
【0029】
ここで、エア排出経路27上のエア排出バルブ29を閉じるとともにエア供給経路26上のエア供給バルブ28を開いて、図示しないエア供給装置からエアを押出液貯留室23の上端部に供給する。このエアの供給により、押出液貯留室23内の塗料押出液L1が下端部から押し出される。また、エア供給経路26上のエア供給バルブ28を閉じるとともに、エア排出経路27上のエア排出バルブ29を開く。その状態で、下端部から押出液貯留室23内に塗料押出液L1が流入されると、押出液貯留室23のエアが上端部からエア排出経路27を介して排出される。
【0030】
リザーバータンク4の押出液貯留室23内には、塗料押出液L1よりも比重の小さい材料からなり、塗料押出液L1の液面に浮かぶ球形のフロート部材31が収納されている。フロート部材31は、押出液貯留室23の小径部25よりも小さな直径を有し、大径部24と小径部25との間で移動が可能である。また、このフロート部材31の表面もしくは全体が、光を通さない遮光材料を用いて形成されている。
【0031】
リザーバータンク4には、塗料押出液L1の液面に浮かぶフロート部材31を利用してその液面の位置を検知するための液面位置検出手段が設けられている。具体的には、本実施の形態の液面位置検出手段は、押出液貯留室23において上端側及び下端側の小径部25に対応した位置にそれぞれ配置される一対の光電センサ33,34を含む。光電センサ33,34は、光を発する発光素子35と、光を受光して電気信号に変換する受光素子36と、発光素子35と受光素子36との間の光路を構成する光ファイバ37とからなる。押出液貯留室23においてその上端側及び下端側にある小径部25には、光を透過する透明部材からなるのぞき窓(図示略)が形成されており、のぞき窓の部分に光ファイバ37の端部が配置されている。また、光電センサ33,34の発光素子35及び受光素子36は制御装置6に接続されている。
【0032】
制御装置6は、CPU、ROM、RAM、及び入出力ポート等からなる周知のコンピュータにより構成されており、光電センサ33,34の検知信号に基づいて、塗料カートリッジ2への塗料P1の充填量を制御する。具体的には、リザーバータンク4において、塗料押出液L1の液面上昇に伴いフロート部材31が押出液貯留室23の上側の小径部25に上昇すると、発光素子35の光がフロート部材31によって遮断される。このとき、受光素子36にて光が受光されなくなるため、上側の光電センサ33の検知信号が変化する。制御装置6は、光電センサ33の検知信号に基づいて、液面が上限位置に達したことを判断する。一方、塗料押出液L1の液面下降に伴いフロート部材31が押出液貯留室23の下側の小径部25に下降すると、発光素子35の光がフロート部材31によって遮断される。このとき、受光素子36にて光が受光されなくなるため、下側の光電センサ34の検知信号が変化する。制御装置6は、その検知信号に基づいて、液面が下限位置に達したことを判断する。
【0033】
制御装置6は、光電センサ33,34の検知信号により、リザーバータンク4内における塗料押出液L1の液面の位置を判断し、その液面の位置に基づいて、塗料カートリッジ2内の塗料押出液L1の液量を監視する。このとき、制御装置6は、リザーバータンク4内において塗料押出液L1の液面が下限位置から上限位置に達するまで塗料供給器3を駆動し、上限位置に達したときに、塗料供給器3を停止させる。この結果、リザーバータンク4内に供給された塗料押出液L1の増加量と同量の塗料P1が塗料カートリッジ2の塗料バッグ12内に充填される。
【0034】
また、本実施の形態において、下限位置を検出するための光電センサ34は、塗料バッグ12の外部への塗料漏れの有無を検知する塗料漏れ検知センサを兼ねている。具体的には、塗料カートリッジ2に不具合が生じて塗料バッグ12の外部に塗料P1が漏れた場合、塗料押出液L1に塗料P1が混ざる。そして、その塗料P1を含んだ塗料押出液L1がリザーバータンク4の押出液貯留室23に供給されると、光電センサ34によって検出される光の検出量が少なくなり、その光電センサ34の検出結果に基づいて、塗料漏れが検出される。
【0035】
次に、本実施の形態における塗料充填装置1を用いて塗料カートリッジ2に塗料P1を定量供給する際の動作例について説明する。
【0036】
先ず、図2に示されるように、塗料充填装置1に塗料カートリッジ2を装着する。また、制御装置6は、図示しないエア供給装置を制御してパイロットエアを三方切替バルブ21に供給してその三方切替バルブ21を動作させる。このとき、三方切替バルブ21によって、塗料カートリッジ2からリザーバータンク4への排出経路19が遮断されるとともに、リザーバータンク4から押出液貯留タンク5への排出経路19が連通される。その後、制御装置6は、押出液貯留タンク5に接続されるポンプ18を駆動することで、押出液貯留タンク5内の塗料押出液L1を押出液供給経路17を介して塗料カートリッジ2の塗料押出液室15に供給する。この結果、図3に示されるように、塗料バッグ12が押し潰されて塗料室14に残存する塗料P1が塗料経路11を介して排出される。そして、制御装置6は、塗料室14に残存する全ての塗料P1が排出されたときに、ポンプ18の駆動を停止させる。なおここでは、塗料経路11には、塗料供給器3は接続されておらず、回収タンクなどの塗料回収装置が設けられている。
【0037】
また、図2に示されるように、リザーバータンク4内の塗料押出液室15に塗料押出液L1が残っている場合、制御装置6は、図示しないエア供給装置からのパイロットエアによって、エア供給経路26上のエア供給バルブ28を開くとともに、エア排出経路27上のエア排出バルブ29を閉じる。そして、エア供給装置からエア供給経路26を介して押出液貯留室23にエアを供給することで、押出液貯留室23内に残存する塗料押出液L1を排出経路19及び三方切替バルブ21を介して押出液貯留タンク5に排出する。このとき、リザーバータンク4内に塗料押出液L1の液面が下限位置となるまで押出液貯留室23内の塗料押出液L1が排出される。その後、制御装置6は、光電センサ34の検知信号に基づいて、液面が下限位置となったことを判断したときに、エア供給装置からのパイロットエアによって、エア供給バルブ28を閉じて塗料押出液L1の排出を停止させる(図3参照)。
【0038】
次いで、制御装置6は、エア供給装置からのパイロットエアによって三方切替バルブ21を動作させる。このとき、三方切替バルブ21によって、塗料カートリッジ2からリザーバータンク4への排出経路19が連通されるとともに、リザーバータンク4から押出液貯留タンク5への排出経路19が遮断される。その後、制御装置6は、エア供給装置からのパイロットエアによって、エア排出経路27上のエア排出バルブ29を開く。
【0039】
さらに、塗料経路11に塗料供給器3が接続された後、制御装置6は、その塗料供給器3を作動させることで、塗料経路11を介して塗料カートリッジ2の塗料バッグ12内に塗料P1を充填する。このとき、塗料カートリッジ2において塗料バッグ12が膨らむ。この結果、塗料カートリッジ2の塗料押出液室15から塗料押出液L1が排出され、その押出液L1は押出液排出経路19を通ってリザーバータンク4内に一旦蓄えられる(図4参照)。
【0040】
ここでは、塗料バッグ12内への塗料P1の充填量に応じて、リザーバータンク4内の押出液貯留室23に塗料押出液L1が蓄えられていき、押出液貯留室23での塗料押出液L1の液面が上昇する。そして、塗料押出液L1の液面に浮かぶフロート部材31も上昇していく。フロート部材31が上限位置に達していない場合には、上側の光電センサ33において、発光素子35の光がフロート部材31にて遮られないため受光素子36で検出される。一方、フロート部材31が上限位置に達すると、光電センサ33において、発光素子35の光がフロート部材31にて遮られるため受光素子36で検出されなくなる。そして、受光素子36における光検出の有無に応じた検知信号が光電センサ33から出力され、制御装置6はその検知信号に基づいて、塗料押出液L1の液面が上限位置に達したことを判断する。
【0041】
制御装置6は、液面が上限位置に達したことを判断したとき、塗料供給器3の駆動を停止して、塗料カートリッジ2への塗料P1の充填を停止させる(図5参照)。以上の工程を得て塗料充填を完了した塗料カートリッジ2が塗料充填装置1から取り外される。
【0042】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0043】
(1)本実施の形態の塗料充填装置1では、光電センサ33,34によって、リザーバータンク4内における塗料押出液L1の液面の位置が検出され、制御装置6によって、その液面の位置に基づいて塗料カートリッジ2内の塗料押出液L1の液量が監視される。そして、塗料押出液L1の液量に応じて塗料バッグ12に充填される塗料P1の充填量が制御される。このようにすると、従来技術のように比較的高価なサーボモータ等を使用しなくても、塗料カートリッジ2に一定量の塗料を正確に充填することができる。またこの場合、塗料充填装置1の構成が簡素化されるため、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0044】
(2)本実施の形態の塗料充填装置1では、液面位置検出手段として光電センサ33,34が用いられている。また、三方切替バルブ21、エア供給バルブ28、及びエア排出バルブ29として、エアにより駆動されるエアバルブが用いられている。このように構成すると、防爆構造の塗料充填装置1を容易に実現することができ、防爆規制のある地域においても塗料充填装置1を使用することが可能となる。
【0045】
(3)本実施の形態の塗料充填装置1では、リザーバータンク4内の押出液貯留室23にて塗料押出液L1の液面にフロート部材31を浮かべ、そのフロート部材31の位置に基づいて液面の位置を間接的に検出している。本実施の形態で用いられる塗料押出液L1は透明な液体であるため、その液面の位置を直接検出することは困難であるが、フロート部材31を用いて液面の位置を間接的に検出することにより、液面の位置を確実に検出することができる。
【0046】
(4)本実施の形態の塗料充填装置1では、リザーバータンク4の押出液貯留室23において、液面の下限位置及び上限位置の間に大径部24が形成されるとともに下限位置及び上限位置に対応して小径部25がそれぞれ形成されている。このようにすると、下限位置及び上限位置に対応する小径部25では、液量の増減に伴う液面の位置の変化量が大きくなるため、押出液貯留室23に蓄えられる液量を正確に監視することができる。
【0047】
(5)本実施の形態の塗料充填装置1では、塗料カートリッジ2に不具合が生じて塗料バッグ12の外部に塗料が漏れた場合、リザーバータンク4の下側に配置される光電センサ34の検出結果に基づいて、塗料漏れを検知することができる。なお、上限位置を検出するための上側の光電センサ33では、塗料押出液L1が上限位置まで達しないと塗料漏れを検知することができないが、下限位置を検出するための下側の光電センサ34では、塗料漏れを早期に検知することができる。
【0048】
(6)本実施の形態の塗料充填装置1では、リザーバータンク4の押出液貯留室23において塗料押出液L1の液面が下限位置に達したときに、塗料押出液L1の排出を止めることで、押出液貯留室23内に所定量の塗料押出液L1が残存するように構成している。このようにすると、エアが排出経路19に混入するといったエア噛みを防止することができる。この結果、エア噛みによる塗料P1の充填誤差を防止することができ、塗料カートリッジ2への塗料充填をより正確に行うことができる。
【0049】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0050】
・上記実施の形態では、液面位置検出手段として光電センサ33,34を用いるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、磁石を用いた近接センサを用いるようにしてもよい。具体的には、磁石を有するフロート部材31をリザーバータンク4内に収容し、液面位置検出手段としての近接センサ(磁気センサ)でフロート部材31の近接を検出し、その検出結果に応じて塗料押出液L1の液面の位置を判断するように構成してもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、リザーバータンク4内の押出液貯留室23は、大径部24及び小径部25を有する形状であったが、これに限定されるものではない。例えば、直径が等しい円柱形状や四角柱形状の押出液貯留室23に変更してもよい。またこの場合、液面の上限位置及び下限位置を検出するための一対の光電センサ33,34のうちの少なくとも一方のセンサをリザーバータンク4の上下方向に移動可能に設けてもよい。このようにすると、リザーバータンク4に蓄えられる塗料押出液L1の液量を光電センサ33,34の位置によって変更することができ、その液量に応じて塗料充填量を調整することができる。このように塗料充填装置を構成すると、充填容量の異なる塗料カートリッジ2への塗料P1の充填が可能となる。
【0052】
・上記実施の形態では、エアを供給及び排出するためのエア給排手段として、エア供給経路26、エア排出経路27、エア供給バルブ28及びエア排出バルブ29を備え、リザーバータンク4にエアを供給することで、リザーバータンク4内の塗料押出液L1を排出するよう構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、塗料押出液L1とは比重が異なる液体をリザーバータンク4に供給及び排出するための液体給排手段を備え、リザーバータンク4に液体を供給することで、リザーバータンク4内の塗料押出液L1を排出するよう構成してもよい。この場合、液体はエアのように圧縮されることがなく、塗料押出液L1をより確実に排出することができる。さらに、塗料押出液L1を押し出すための液体として所定色(例えば黒色)に着色した液体を用いれば、塗料押出液L1と着色液との界面(塗料押出液L1の液面)を容易に判断することができる。この結果、上記実施の形態のようなフロート部材31を用いなくても、光電センサ33,34によって塗料押出液L1の液面の位置を確実に検出することができる。
【0053】
また、エア給排手段や液体給排手段などを設けずに、リザーバータンク4と押出液貯留タンク5との高低差を利用して、リザーバータンク4から押出液貯留タンク5に塗料押出液L1を排出するよう構成してもよい。このようにすれば、塗料充填装置1の構成が簡素化されて、その装置コストを抑えることができる。
【0054】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0055】
(1)手段1において、前記リザーバータンク内の押出液貯留室には、磁石を有し、前記塗料押出液よりも比重の小さい材料からなるフロート部材が収容され、前記液面位置検出手段は、前記塗料押出液の液面に浮かぶ前記フロート部材の磁石の近接に基づいて、前記液面の位置を検出することを特徴とする塗料充填装置。
【0056】
(2)手段2において、前記液面位置検出手段を構成する前記一対の光電センサのうちの少なくとも一方のセンサが前記リザーバータンクの上下方向に移動可能に設けられることを特徴とする塗料充填装置。
【0057】
(3)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記リザーバータンクにエアを供給及び排出するためのエア給排手段を備え、前記エア給排手段から供給される前記エアによって、前記リザーバータンク内に一旦蓄えられた前記塗料押出液がタンク外部に排出されることを特徴とする塗料充填装置。
【0058】
(4)手段1において、前記塗料押出液とは比重が異なる液体を前記リザーバータンクに供給及び排出するための液体給排手段を備え、前記液体給排手段から供給される前記液体によって、前記リザーバータンク内に一旦蓄えられた前記塗料押出液がタンク外部に排出されること塗料充填装置。
【0059】
(5)塗料を充填する塗料バッグを有し、塗料押出液によって前記塗料バッグ内の塗料を押し出すように構成された塗料カートリッジに塗料を定量供給する塗料充填方法であって、前記塗料バッグ内への塗料充填時に前記塗料カートリッジから排出される前記塗料押出液をリザーバータンクに一旦蓄えるステップと、前記リザーバータンク内の液面の位置を検出するステップと、前記液面の位置に基づいて前記塗料カートリッジ内の前記塗料押出液の液量を監視することで、前記塗料バッグへの塗料の充填量を制御するステップとを含むことを特徴とする塗料充填方法。
【符号の説明】
【0060】
1…塗料充填装置
2…塗料カートリッジ
4…リザーバータンク
6…制御装置
12…塗料バッグ
23…押出液貯留室
24…大径部
25…小径部
31…フロート部材
33,34…光電センサ
L1…塗料押出液
P1…塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を充填する塗料バッグを有し、塗料押出液によって前記塗料バッグ内の塗料を押し出すように構成された塗料カートリッジに塗料を定量供給する塗料充填装置であって、
前記塗料バッグ内への塗料充填時に前記塗料カートリッジから排出される前記塗料押出液を一旦蓄えるリザーバータンクと、
前記リザーバータンク内の液面の位置を検出するための液面位置検出手段と、
前記液面位置検出手段によって検出された液面の位置に基づいて前記塗料カートリッジ内の前記塗料押出液の液量を監視することで、前記塗料バッグへの塗料の充填量を制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする塗料充填装置。
【請求項2】
前記液面位置検出手段は、前記リザーバータンク内における前記塗料押出液の液面の下限位置と上限位置とをそれぞれ検出するために設けられた一対の光電センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の塗料充填装置。
【請求項3】
前記リザーバータンク内の押出液貯留室には、前記塗料押出液よりも比重の小さい材料からなるフロート部材が収容され、
前記液面位置検出手段は、前記液面に浮かぶ前記フロート部材が前記光電センサの発する光を遮断するか否かを検出することにより、前記液面の位置を間接的に検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の塗料充填装置。
【請求項4】
前記押出液貯留室は、前記下限位置及び前記上限位置の間に形成された大径部と、前記下限位置及び前記上限位置に対応してそれぞれ形成された小径部とを有することを特徴とする請求項3に記載の塗料充填装置。
【請求項5】
前記液面位置検出手段において前記液面の下限位置を検出するための光電センサは、前記塗料バッグの外部への塗料漏れの有無を検知する塗料漏れ検知センサを兼ねていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の塗料充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−71222(P2012−71222A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216013(P2010−216013)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】