説明

塗装機洗浄液回収装置

【課題】塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄し、液体塗料の搬送経路の終端たる塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を効率良く回収することが可能な塗装機洗浄液回収装置を提供する。
【解決手段】
塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、塗装機1の本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を回収する回収装置100に、洗浄液の噴射位置に配置された本体50に対向する位置に設けられるフィルタを有し本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液をフィルタで受けてその流れを緩和する緩和部110と、洗浄液の噴射位置に配置された本体50に対向するとともに緩和部110を挟んで本体50の反対側となる位置に設けられる容器121を有し緩和部110を通過した洗浄液を受け止めて回収する液体回収部120と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗料を用いて塗装を行う塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄する技術に関する。より詳細には、液体塗料の搬送経路を洗浄する洗浄液を効率良く回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料噴射口から噴射される液体塗料の種類(色、溶媒の性質等)を切り替える際に、当該液体塗料を充填した容器から(より厳密には、液体塗料の種類の切替を行う切り替えバルブユニットから)塗料噴射口までの液体塗料の搬送経路に所定の洗浄液を供給し、塗料噴射口から噴射することにより当該搬送経路を洗浄し、切り替え前の液体塗料が切り替え後の液体塗料に混入することを防止する塗装機の技術は公知となっている。
【0003】
また、水性の液体塗料を用いる塗装機において、塗料噴射口から噴射される洗浄液をウォーターカーテンに当てて回収し、回収された洗浄液に含まれる液体塗料の成分を回収して再利用する水性塗料のリサイクルシステムの技術も知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0004】
以下では、図5の(a)を用いて従来のスプレー式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法について説明する。
【0005】
スプレー式塗装機の本体514は通常はロボットアームの先端部等に設けられ、塗装の対象物に対する相対位置や姿勢を変更することが可能である。
本体514の先端部には、塗料噴射口514a、霧化エア噴射口514b・514b、シェーピングエア噴射口514c・514cが形成される。
【0006】
塗料噴射口514aは塗装機における液体塗料の搬送経路の終端部を成す。塗料噴射口514aから液体塗料が外部に向けて噴射される。
【0007】
霧化エア噴射口514b・514bは圧縮空気を供給する経路の終端部を成し、塗料噴射口514aの近傍に配置される。霧化エア噴射口514b・514bから噴射される圧縮空気を塗料噴射口514aから噴射される液体塗料に吹き付けることにより、当該液体塗料を霧化する(微粒子化する)とともに所定の噴射方向に吹き飛ばす。
【0008】
シェーピングエア噴射口514c・514cは圧縮空気を供給する経路の終端部を成し、塗料噴射口514aおよび霧化エア噴射口514b・514bの周囲に形成された突起部分に配置される。
シェーピングエア噴射口514c・514cから噴射される圧縮空気を噴射方向に吹き飛ばされる霧化状態の液体塗料の流れに吹き付けることにより、塗装パターンの形状を略楕円形に整える。
【0009】
従来のスプレー式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄は、本体514を上面が開口した容器521の上方となる所定の洗浄位置に移動させるとともに本体514の先端部を下方に向け、本体514の液体塗料の搬送経路に洗浄液および圧縮空気を交互に供給して当該搬送経路内を洗浄し、塗料噴射口514aから噴射される洗浄液(厳密には、液体塗料と洗浄液との混合物)および圧縮空気を略円筒形状の側面を有する容器521の底面で受け止めて当該洗浄液を回収する、という一連の手順により行われる。
【0010】
しかし、上記従来のスプレー式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法は以下の問題を有する。
【0011】
すなわち、液体塗料の搬送経路に残留する液体塗料を短時間で除去し、搬送経路の清浄度を確保するためには、本体514の塗料噴射口514aから噴射される洗浄液および圧縮空気の勢いを強くする(圧縮空気の圧力を高くする、あるいは流量を大きくする)ことが望ましく、かつ、本体514の表面に洗浄液が付着することを防止する観点からは洗浄時に霧化エア噴射口514b・514bから噴射される圧縮空気の勢いを一定以上に保持することが望ましいが、塗料噴射口514aから洗浄液と交互に噴射される圧縮空気および霧化エア噴射口514b・514bから噴射される圧縮空気の勢いが強いと容器521の底に衝突する時の洗浄液および圧縮空気の勢いも強くなる。
その結果、洗浄液の一部が容器521の内部で跳ね上がり、跳ね上がった洗浄液が容器521の底面から内側面に沿って上部の開口部へと至る容器521の内部の空気の流れに乗って容器521の外部に流出し、容器521に回収される洗浄液の量が減少する、すなわち洗浄液の回収率が低下する。
【0012】
通常、塗装機で用いられる液体塗料が有機溶剤を溶媒とする油性塗料である場合には有機溶剤を含む洗浄液が用いられる。また、塗装機で用いられる液体塗料が水を主たる溶媒とする水性塗料である場合には水を主成分とする洗浄液が用いられるが、当該水性塗料は通常は10重量%程度の有機溶剤を含む。
従って、容器521の外部に流出する洗浄液には、有機溶剤等のVOC(Volatile Organic Compounds)が含まれることとなる。
VOCは浮遊粒子状物質や光化学オキシダントの原因となることから大気への放出をすることが望ましくないものである。そのため、通常は塗装機が設けられている塗装ブースや塗装工程に設けられた空調設備、あるいは排ガス処理設備等によりVOCを除去することとなるが、洗浄液の回収率が低下すると、その分だけこれらの空調設備および排ガス処理設備等への負担が大きくなる。
【0013】
以下では、図5の(b)を用いて従来の回転霧化式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法について説明する。
【0014】
回転霧化式塗装機の本体614は通常はロボットアームの先端部等に設けられ、塗装の対象物に対する相対位置や姿勢を変更することが可能である。
本体614は、本体基部615、回転霧化頭616を具備する。
本体基部615は本体614の主たる構造体であり、その基部はロボットアームの先端部等に固定される。本体基部615の内部には液体塗料の搬送経路や圧縮空気の経路が形成され、回転霧化頭616を回転駆動するモータが設けられる。
回転霧化頭616は本体614の先端部を成す部材であり、本体基部615の先端部に配置される。回転霧化頭616は本体基部615に設けられたモータの回転軸に固定され、当該モータの駆動により回転する。
【0015】
回転霧化頭616の先端部には塗料噴射口616a・616a・・・が形成される。
塗料噴射口616a・616a・・・は塗装機における液体塗料の搬送経路の終端部を成す。塗料噴射口616a・616a・・・から液体塗料が外部に向けて噴射される。
塗装時に回転霧化頭616を回転させることにより、塗料噴射口616a・616a・・・から噴射される液体塗料に遠心力を作用させ、液体塗料を霧化する(微粒子化する)とともに回転霧化頭616の回転軸(モータの駆動軸)の半径方向に飛ばす。
【0016】
本体基部615の先端部かつ回転霧化頭616を取り囲む位置にはシェーピングエア噴射口615a・615a・・・が形成される。
シェーピングエア噴射口615a・615a・・・から噴射される圧縮空気を回転霧化頭616の半径方向に飛ばされる霧化状態の液体塗料の流れに吹き付けることにより、当該液体塗料の飛ぶ方向を曲げ、霧化状態の液体塗料を所定の噴射方向(通常は回転霧化頭616の回転軸の軸線方向)に飛ばす。
【0017】
従来の回転霧化式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄は、容器621の上面621aに形成された本体614の直径よりもやや大きい開口部621bに本体614の先端部(回転霧化頭616)が下向きに進入する所定の洗浄位置に本体614を移動させ、シェーピングエア噴射口615a・615a・・・からの圧縮空気の噴射を止めるとともに回転霧化頭616が回転した状態で本体614の液体塗料の搬送経路に洗浄液および圧縮空気を交互に供給して当該搬送経路内を洗浄し、塗料噴射口616a・616a・・・から回転霧化頭616の回転軸の半径方向に噴射される洗浄液(厳密には、液体塗料と洗浄液との混合物)を主として容器621の内側面で受け止めて当該洗浄液を回収する、という一連の手順により行われる。
【0018】
上記従来の回転霧化式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法は、(i)そもそも回転霧化式塗装機はスプレー式塗装機の如く液体塗料を霧化するための圧縮空気(霧化エア)を噴射する構造を有さないので塗料噴射口616a・616a・・・から噴射される洗浄液の勢いがスプレー式塗装機に比べて弱いこと、および(ii)回転霧化頭616の外部表面を洗浄液で併せて洗浄するために回転霧化頭616を回転させつつ洗浄液を噴射する構成上、洗浄液が容器621の内側面で跳ね返って容器621の外部に飛び出すことを防止すべく容器621の開口部621bに対応する部分を除いて上面621aにより覆われていること、から従来のスプレー式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法に比べて洗浄液の回収率が高いという利点を有する。
【0019】
しかし、上記従来の回転霧化式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法は、特に回転霧化頭616の直径が小さい場合には洗浄時に回転霧化頭616の周囲に負圧となる領域が発生し易く、回転霧化頭616の回転軸の半径方向に遠心力により飛ばされる洗浄液が当該負圧となる領域に引き寄せられて本体614の表面に付着する場合があるという問題がある。
また、上記従来の回転霧化式塗装機の液体塗料の搬送経路の洗浄方法は、容器621の内側面で跳ね返った洗浄液が上面621aの内側に滴状に付着し、これが本体614の表面に滴下して付着するという問題がある。
本体614の表面に付着した洗浄液には先の塗装に用いられた液体塗料が混入していることから、次の塗装時に塗装の対象物の塗装面を汚染し、塗装面の品質低下の原因となる恐れがある。
【特許文献1】特開2002−79153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上の如き状況に鑑み、塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、前記塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を効率良く回収することが可能な塗装機洗浄液回収装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0022】
即ち、請求項1においては、
塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、前記液体塗料の搬送経路の終端であり前記塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を回収する塗装機洗浄液回収装置であって、
前記洗浄液の噴射位置に配置された塗装機に対向する位置に設けられるフィルタを有し、前記塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を前記フィルタで受けてその流れを緩和する緩和部と、
前記洗浄液の噴射位置に配置された塗装機に対向するとともに前記緩和部を挟んで前記塗装機の反対側となる位置に設けられる容器を有し、前記緩和部を通過した洗浄液を受け止めて回収する液体回収部と、
を具備するものである。
【0023】
請求項2においては、
前記緩和部のフィルタにおける前記洗浄液を受ける面は、
前記洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角だけ傾斜するものである。
【0024】
請求項3においては、
前記緩和部のフィルタは金属材料からなる網であるものである。
【0025】
請求項4においては、
前記液体回収部は、
前記緩和部を通過した洗浄液を受け止める受け面を有し、
前記液体回収部に予め所定量の洗浄液を貯溜することにより前記液体回収部の受け面に洗浄液を張った状態とするものである。
【0026】
請求項5においては、
前記液体回収部は、
前記緩和部を通過した洗浄液を受け止める受け面を有し、
前記液体回収部の受け面は、
前記洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角だけ傾斜するものである。
【0027】
請求項6においては、
前記液体回収部は、
前記液体回収部の受け面に沿って洗浄液をフローする洗浄液フロー機構を有するものである。
【0028】
請求項7においては、
前記洗浄液フロー機構は、
前記受け面の下部に貯溜された洗浄液を前記受け面の上部に搬送する搬送ポンプを備えるものである。
【0029】
請求項8においては、
前記緩和部は、
平面視で前記液体回収部に収まる範囲に配置されるものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、前記塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を効率良く回収することが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下では、図1を用いて塗装機1について説明する。
塗装機1は主としてカラーチェンジバルブユニット10、第一塗料タンク21、第二塗料タンク22、第三塗料タンク23、第四塗料タンク24、洗浄液タンク25、圧縮エア供給配管26、第一ポンプ31、第二ポンプ32、第三ポンプ33、第四ポンプ34、第五ポンプ35、塗料配管40、本体50、回収装置100等を具備する。
【0032】
カラーチェンジバルブユニット10は塗装機1が取り扱う液体塗料の種類を切り替えるものであり、主として第一切り替えバルブ11、第二切り替えバルブ12、第三切り替えバルブ13、第四切り替えバルブ14、第五切り替えバルブ15、第六切り替えバルブ16、ヘッダー17を具備する。
「液体塗料」は液体状の、すなわちある程度の流動性を有する塗料である。
液体塗料には水性の液体塗料(溶媒の主成分が水である液体塗料)、油性の液体塗料(溶媒の主成分が有機溶剤である液体塗料)が含まれる。また、液体塗料には二液混合型の塗料も含まれる。
【0033】
第一切り替えバルブ11、第二切り替えバルブ12、第三切り替えバルブ13、第四切り替えバルブ14、および第五切り替えバルブ15は、いずれも、一つの入力ポートと、吐出側出力ポートおよび戻り側出力ポートからなる二つの出力ポートとを有する三方弁である。
第一切り替えバルブ11、第二切り替えバルブ12、第三切り替えバルブ13、第四切り替えバルブ14、および第五切り替えバルブ15は、いずれも、(a)吐出側出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(戻り側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)と、(b)戻り側出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(吐出側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)と、を切り替えることが可能である。
【0034】
第六切り替えバルブ16は、一つの入力ポートと一つの出力ポートとを有する開閉弁であり、それぞれ(α)出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態と、(β)出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態と、を切り替えることが可能である。
【0035】
ヘッダー17はその表面に六つの入力ポートと一つの出力ポートを有し、これら計七つのポートを相互に連通接続する経路をその内部に有する部材である。ヘッダー17の内部に形成される経路は、本実施例における液体塗料の搬送経路の一部を成す。
ヘッダー17の六つの入力ポートには、それぞれ第一切り替えバルブ11の吐出側出力ポート、第二切り替えバルブ12の吐出側出力ポート、第三切り替えバルブ13の吐出側出力ポート、第四切り替えバルブ14の吐出側出力ポート、第五切り替えバルブ15の吐出側出力ポート、第六切り替えバルブ16の出力ポートが連通接続される。
【0036】
第一塗料タンク21、第二塗料タンク22、第三塗料タンク23、および第四塗料タンク24は、それぞれ異なる種類の液体塗料を貯溜する容器である。第一塗料タンク21、第二塗料タンク22、第三塗料タンク23、および第四塗料タンク24には貯溜された液体塗料を撹拌する撹拌装置が設けられる。
【0037】
第一塗料タンク21は圧送配管21aおよび戻り配管21bを有する。
圧送配管21aの一端は液体塗料が貯溜される第一塗料タンク21の内部空間の底部と連通接続され、圧送配管21aの他端は第一切り替えバルブ11の入力ポートに連通接続される。
戻り配管21bの一端は第一切り替えバルブ11の戻り側出力ポートに連通接続され、戻り配管21bの他端は第一塗料タンク21の内部空間に連通接続される。
同様に、第二塗料タンク22は圧送配管22aおよび戻り配管22bを有し、第三塗料タンク23は圧送配管23aおよび戻り配管23bを有し、第四塗料タンク24は圧送配管24aおよび戻り配管24bを有する。これらの圧送配管および戻り配管の構成はそれぞれ圧送配管21aおよび戻り配管21bと略同じであることから説明を省略する。
【0038】
洗浄液タンク25は、洗浄液を貯溜する容器である。
「洗浄液」は第一塗料タンク21、第二塗料タンク22、第三塗料タンク23、および第四塗料タンク24に貯溜される液体塗料、すなわち塗装機1により用いられる液体塗料の種類や性質に応じて適宜選択される液体である。洗浄液は、液体塗料が水性である場合には水を含む液体であり、液体塗料が油性である場合には当該油性の液体塗料を希釈し得る有機溶剤を含む液体である。
【0039】
洗浄液タンク25は圧送配管25aおよび戻り配管25bを有する。
圧送配管25aの一端は液体塗料が貯溜される第五塗料タンク25の内部空間の底部と連通接続され、圧送配管25aの他端は第五切り替えバルブ15の入力ポートに連通接続される。
戻り配管25bの一端は第五切り替えバルブ15の戻り側出力ポートに連通接続され、戻り配管25bの他端は洗浄液タンク25の内部空間に連通接続される。
【0040】
圧縮空気供給配管26は圧縮空気を供給するための配管である、圧縮エア供給配管26の一端は第六切り替えバルブ16の入力ポートに連通接続され、圧縮エア供給配管26の他端は図示せぬコンプレッサーに接続される。
【0041】
第一ポンプ31は圧送配管21aの中途部に設けられるポンプであり、第一塗料タンク21に貯溜される液体塗料を圧送配管21aを介して第一切り替えバルブ11に圧送する。
第二ポンプ32は圧送配管22aの中途部に設けられるポンプであり、第二塗料タンク22に貯溜される液体塗料を圧送配管22aを介して第二切り替えバルブ12に圧送する。
第三ポンプ33は圧送配管23aの中途部に設けられるポンプであり、第三塗料タンク23に貯溜される液体塗料を圧送配管23aを介して第三切り替えバルブ13に圧送する。
第四ポンプ34は圧送配管24aの中途部に設けられるポンプであり、第四塗料タンク24に貯溜される液体塗料を圧送配管24aを介して第四切り替えバルブ14に圧送する。
第五ポンプ35は圧送配管25aの中途部に設けられるポンプであり、洗浄液タンク25に貯溜される洗浄液を圧送配管25aを介して第五切り替えバルブ15に圧送する。
【0042】
塗料配管40は液体塗料を搬送するための配管である。塗料配管40の一端はヘッダー17の出力ポートに接続される。塗料配管40は本実施例における液体塗料の搬送経路の一部を成す。
【0043】
本体50は通常はロボットアーム(不図示)の先端部等に設けられ、塗装の対象物に対する相対位置や姿勢を変更することが可能である。
本体50の先端部には、塗料噴射口50a、霧化エア噴射口50b・50b、シェーピングエア噴射口50c・50cが形成される。
【0044】
本体50の内部には液体塗料を搬送するための経路51が形成される。
経路51は本実施例における液体塗料の搬送経路の一部を成す。経路51の一端は本体50の基部側に開口し、塗料配管40の他端に連通接続される。経路51の他端は本体50の先端部にて開口し、塗料噴射口50aを成す。
塗料噴射口50aは本発明に係る塗料噴射口の実施の一形態であり、塗装機1により用いられる液体塗料を外部に噴射するための開口である。塗料噴射口50aは塗装機1における液体塗料の搬送経路の終端を成す。
【0045】
また、本体50の内部には圧縮空気を供給するための経路(不図示)が形成され、当該経路の一端はコンプレッサー(不図示)に接続され、他端は本体50の先端部にて開口し、霧化エア噴射口50b・50b、およびシェーピングエア噴射口50c・50cを成す。
霧化エア噴射口50b・50bは塗料噴射口50aの近傍に配置される。
シェーピングエア噴射口50c・50cは塗料噴射口50aおよび霧化エア噴射口50b・50bの周囲に形成された突起部分に配置される。
【0046】
以下では、塗装機1により塗装を行う前の状態について説明する。
塗装を行う前は、第一ポンプ31、第二ポンプ32、第三ポンプ33、第四ポンプ34、第五ポンプが駆動しており、かつ第一切り替えバルブ11、第二切り替えバルブ12、第三切り替えバルブ13、および第四切り替えバルブ14はいずれも(b)戻り出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(吐出側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)となっている。
従って、第一塗料タンク21に貯溜された液体塗料は、圧送配管21a、第一切り替えバルブ11および戻り配管21bからなる循環経路を経て再び第一塗料タンク21に戻される。第二塗料タンク22、第三塗料タンク23、第四塗料タンク24にそれぞれ貯溜された液体塗料、および洗浄液タンク25に貯溜された洗浄液も同様である。
また、第六切り替えバルブ16は(β)出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態である。
さらに、霧化エア噴射口50b・50bおよびシェーピングエア噴射口50c・50cからは圧縮空気の噴射は停止している。
【0047】
以下では、塗装機1による第一塗料タンク21に貯溜された液体塗料を用いた塗装手順について説明する。
【0048】
(1)まず、ロボットアームを動作させ、当該ロボットアームの先端部に固定された本体50を所定の塗装位置(対象物の表面から所定距離だけ離れた位置)に配置する。
(2)次に、霧化エア噴射口50b・50bおよびシェーピングエア噴射口50c・50cから所定の流量の圧縮空気を噴射する。
(3)続いて、第一切り替えバルブを(a)吐出側出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(戻り側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)に切り替える。第一塗料タンク21に貯溜された液体塗料は、圧送配管21a、第一切り替えバルブ11、ヘッダー17、塗料配管40を経て本体50に供給され、次いで経路51を経て塗料噴射口50aから外部に噴射される。
【0049】
塗料噴射口50aから外部に噴射された液体塗料には霧化エア噴射口50b・50bから噴射される圧縮空気が吹き付けられ、当該液体塗料が霧化する(微粒子化する)とともに所定の噴射方向に吹き飛ばされる。
また、塗料噴射口50aから外部に噴射され、所定の噴射方向に吹き飛ばされる霧化状態の液体塗料の流れにはシェーピングエア噴射口50c・50cから噴射される圧縮空気が吹き付けられ、霧化状態の液体塗料は塗装パターンの形状が略楕円形に整えられた状態で塗装の対象物の表面に付着する。
【0050】
以下では、図1を用いて本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第一実施例である回収装置100について説明する。
回収装置100は塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、当該搬送経路の終端であり本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を回収するものである。
【0051】
「液体塗料の搬送経路」は、液体塗料を搬送するための経路である。本実施例の場合、ヘッダー17、塗料配管40および経路51を合わせたものが「液体塗料の搬送経路」に相当する。
【0052】
回収装置100は主として緩和部110、液体回収部120を具備する。
【0053】
緩和部110は本発明に係る緩和部の実施の一形態であり、本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液および圧縮空気を受けて当該洗浄液の流れ(勢い)を緩和するものである。
本実施例の緩和部110は金属材料からなる網であり、これをフィルタとして用いている。フィルタを金属材料からなる網とすることにより、洗浄液が緩和部に吸着されて洗浄液の回収率が低下するといった事態を防止することが可能である。
【0054】
緩和部110は洗浄液の噴射位置に配置された本体50に対向する位置に設けられる。
ここで、「洗浄液の噴射位置」は塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄する時に塗装機のノズルが配置される位置を指し、通常はノズルが固定されたロボットアーム等の可動域の範囲内に設定される。従って、「洗浄液の噴射位置」は、通常は塗装機が設けられる塗装ブースの内部等に設定されることとなる。
また、「ノズルに対向する位置」は、ノズルに形成された塗料噴射口から噴射される洗浄液を受け得る位置を指す。
本実施例では本体50を洗浄液の噴射位置において洗浄液の噴射方向が下向きとなるように配置するとともに本体50の下方に緩和部110を配置する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば塗装機のノズルを横向きや斜め下向きに配置し、当該ノズルから噴射される洗浄液を受け得る位置に緩和部を配置する構成としても良い。
【0055】
図1に示す如く、緩和部110のフィルタにおける洗浄液を受ける面は、洗浄液の噴射方向に対して直角(90°)ではなく、洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角θ1だけ傾斜した状態に保持される。
【0056】
液体回収部120は本発明に係る液体回収部の実施の一形態であり、緩和部110を通過した洗浄液を回収するものである。
ここで、「洗浄液が緩和部を通過する」とは、洗浄液が緩和部のフィルタによって勢いを弱められつつフィルタのメッシュを通ること、および洗浄液が緩和部のフィルタに一時的に付着し、その後滴下することを含む。
【0057】
液体回収部120は容器121を有する。容器121は側面および底面121aを有し、上面が開口している。液体回収部120は容器121の底面121aを洗浄液および圧縮空気を受け止める「受け面」とする。底面121aにより受け止められた洗浄液は容器121の内部に回収される。
容器121は洗浄液の噴射位置に配置された本体50に対向するとともに緩和部110を挟んで本体50の反対側となる位置に設けられる。
このように本体50、緩和部110および液体回収部120を配置することにより、緩和部110を通過してきた洗浄液を更に液体回収部120の受け面(容器121の底面121a)で確実に受け止めて回収することが可能であり、洗浄液の回収率の向上に寄与する。
【0058】
また、液体回収部120は容器121の内部に緩和部110を収容しているので、緩和部110は平面視で液体回収部120に収まる範囲に配置されることとなる。
このように構成することにより、緩和部110に一時的に付着し、その後滴下する洗浄液を液体回収部120に効率良く回収することが可能であり、洗浄液の回収率向上に寄与する。
なお、本実施例では液体回収部120の容器121の内部に緩和部110を収容する構成としたが、本発明はこれに限定されず、緩和部を液体回収部の外部(例えば、液体回収部の容器の上面開口部の上方)に配置する構成としても良い。
【0059】
以下では、塗装機1における液体塗料の搬送経路の洗浄手順について説明する。
上記洗浄手順は、塗装機1において塗装に用いる液体塗料の種類を切り替える場合や、塗装作業を終了する場合に行われる。
【0060】
(1)まず、第一切り替えバルブを(b)戻り側出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(吐出側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)に切り替え、搬送経路への液体塗料の供給を停止する。
(2)次に、ロボットアームを動作させ、当該ロボットアームの先端部に固定された本体50を所定の洗浄位置に配置する。
(3)続いて、第五切り替えバルブを(a)吐出側出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(戻り側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)とするとともに第六切り替えバルブ16を(β)出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態とする状態、および、第五切り替えバルブを(b)戻り側出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態(吐出側出力ポートと入力ポートとの間が遮断された状態)とするとともに第六切り替えバルブ16を(α)出力ポートと入力ポートとの間が連通接続された状態とする状態、を交互に切り替え、液体塗料の搬送経路に洗浄液と圧縮空気とを交互に供給する。
【0061】
塗装機1における液体塗料の搬送経路に洗浄液および圧縮空気が交互に供給されると、これらにより当該搬送経路が洗浄され、その後塗料噴射口50aから所定の噴射方向(本実施例の場合、下方)に噴射される。
すなわち、第五切り替えバルブ15、洗浄液タンク25および第五ポンプ35は塗装機1における液体塗料の搬送経路に洗浄液を供給する洗浄液供給装置60としての機能を果たし、第六切り替えバルブ16および圧縮エア供給配管26は塗装機1における液体塗料の搬送経路に圧縮空気(気体)を供給する圧縮気体供給装置70としての機能を果たす。
【0062】
塗料噴射口50aから噴射された洗浄液および圧縮空気の流れは緩和部110のフィルタに衝突し、その勢いが弱められつつ緩和部110を通過してさらに下方に移動する。
緩和部110を通過した洗浄液および圧縮空気の流れは液体回収部120の容器121の底面121aに衝突する。このとき、緩和部110により洗浄液および圧縮空気の流れはその勢いが弱まっているため、洗浄液および圧縮空気の流れのうち液体である洗浄液については底面121aに受け止められて容器121の内部に回収され、圧縮空気については容器121の底面121aから内側面に沿って移動し、容器121の外部(上方)に排気される。
【0063】
以上の如く、回収装置100は、
塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、液体塗料の搬送経路の終端であり塗装機1の(本体50に形成された)塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を回収する塗装機洗浄液回収装置であって、
洗浄液の噴射位置に配置された塗装機1(本体50)に対向する位置に設けられるフィルタを有し、塗装機1の(本体50に形成された)塗料噴射口50aから噴射される洗浄液をフィルタで受けてその流れを緩和する緩和部110と、
洗浄液の噴射位置に配置された塗装機1(本体50)に対向するとともに緩和部110を挟んで塗装機1(本体50)の反対側となる位置に設けられる容器121を有し、緩和部110を通過した洗浄液を受け止めて回収する液体回収部120と、
を具備するものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、塗装機1の(本体50に形成された)塗料噴射口50aから噴射される洗浄液および圧縮空気の流れを先に緩和部110で受け、その勢いを弱めてから液体回収部120で受け止めることにより液体である洗浄液を回収するので、洗浄液が容器121の内部で跳ね上がり、圧縮空気の流れに乗って容器121の外部に流出することを抑制することが可能である。結果として、洗浄液を効率良く回収することが可能である。
【0064】
また、回収装置100の緩和部110のフィルタにおける洗浄液を受ける面は、洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角θ1だけ傾斜するものである。
このように構成することにより、緩和部のフィルタにおける洗浄液を受ける面が洗浄液の噴射方向に対して直角となる(傾斜しない)場合よりもフィルタによる洗浄液および圧縮空気の流れの勢いをより効率良く緩和することが可能であり、ひいては洗浄液の回収率の向上に寄与する。
換言すれば、(A)緩和部のフィルタにおける洗浄液を受ける面を洗浄液の噴射方向に対して直角とした場合(洗浄液の噴射方向に対して傾斜しない場合)に比べてフィルタの厚みが薄くても同等の回収率を達成可能であるため、回収装置100の小型化および簡素化に寄与する。さらに、(B)緩和部のフィルタにおける洗浄液を受ける面を洗浄液の噴射方向に対して直角とした場合(洗浄液の噴射方向に対して傾斜しない場合)に比べてフィルタのメッシュを粗くしても同等の回収率を達成可能であるため、回収装置100のコスト削減に寄与する。
また、緩和部110のフィルタにおける洗浄液を受ける面を洗浄液の噴射方向に対して傾斜させることにより、緩和部110に付着した洗浄液は緩和部110をつたって緩和部110の最下部に移動し、そこから滴下して液体回収部120に回収されることから、洗浄液の回収率向上に寄与する。
なお、傾斜角θ1の大きさは洗浄液の勢いやフィルタの網目(メッシュ)の大きさ等に応じ、実験結果等に基づいて適宜選択することが望ましい。
【0065】
また、回収装置100の緩和部110のフィルタは金属材料からなる網であるものである。
このように構成することにより、洗浄液が緩和部に吸着されて洗浄液の回収率が低下するといった事態を防止することが可能である。
【0066】
また、回収装置100の緩和部110は、
平面視で液体回収部120に収まる範囲に配置されるものである。
このように構成することにより、緩和部110に一時的に付着し、その後滴下する洗浄液を液体回収部120に回収することが可能であり、洗浄液の回収率向上に寄与する。
【0067】
なお、本実施例の塗装機1は異なる四種類の液体塗料を切り替えて塗装に用いる構成であるが、本発明はこれに限定されず、二種類以上の複数種類の液体塗料を切り替えて塗装に用いる塗装機に広く適用可能である。
【0068】
また、一種類の液体塗料を塗装に用いる(液体塗料を切り替える機構を有さない)塗装機であっても、液体塗料が搬送経路に残留した状態で長時間放置すると搬送経路の内部に残留した液体塗料が固まる等の問題を引き起こすため、塗装終了後に液体塗料の搬送経路を洗浄するのが一般的である。従って、本発明は一種類の液体塗料を塗装に用いる塗装機に対しても適用することが可能である。
【0069】
本実施例は搬送経路の清浄度向上および洗浄時間の短縮のために洗浄液および圧縮空気を交互に液体塗料の搬送経路に供給する構成としたが、本発明はこれに限定されず、洗浄時に洗浄液のみを液体塗料の搬送経路に供給する構成としても良い。
【0070】
また、従来は、スプレー式の塗装機および回転霧化式の塗装機とが混在する工程では塗装機(より厳密には、塗装機の本体)の形式毎に異なる形状(回収方法)の洗浄液回収装置を適宜使い分ける必要があったが、本発明に係る塗装機洗浄液回収装置はスプレー式の塗装機および回転霧化式の塗装機のいずれに対しても適用可能である。
従って、スプレー式の塗装機および回転霧化式の塗装機とが混在する工程への導入時に塗装機洗浄液回収装置の共有化を図る(本体の形式が異なる複数の塗装機間で同一の塗装機洗浄液回収装置を使用する)ことが可能であり、省スペース化、工程の簡素化に寄与する。
なお、本発明に係る塗装機洗浄液回収装置を回転霧化式の塗装機に適用する場合、従来の回収装置の如くシェーピングエアを止めて回転霧化頭の回転軸の半径方向に洗浄液を飛ばすのではなく、シェーピングエアを所定量噴射することにより塗料噴射口から噴射される洗浄液を所定の噴射方向に向けて収斂させた状態で回収することが望ましい。
【0071】
以下では、図2を用いて本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第二実施例である回収装置200について説明する。
回収装置200は塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄し、当該搬送経路の終端であり本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を回収するものである。
なお、図2における塗装機1の構成は図1における塗装機1と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0072】
回収装置200は主として緩和部210、液体回収部220を具備する。
【0073】
緩和部210は本発明に係る緩和部の実施の一形態であり、本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を受けて当該洗浄液の流れ(勢い)を緩和するものである。
なお、緩和部210の構成は図1における緩和部110と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0074】
液体回収部220は本発明に係る液体回収部の実施の一形態であり、緩和部210を通過した洗浄液を回収するものである。
【0075】
液体回収部220は容器221を有する。容器221は側面および底面221aを有し、上面が開口している。液体回収部220は、容器221の底面221aを緩和部210を通過してきた洗浄液および圧縮空気を受け止める「受け面」とする。底面221aにより受け止められた洗浄液は容器221の内部に回収される。
【0076】
図2に示す如く、液体回収部220(容器221)には予め所定量の洗浄液222が貯溜される。その結果、液体回収部220の受け面(容器221の底面221a)に洗浄液222が張られた状態となる。
【0077】
このように構成することにより、緩和部210を通過した洗浄液および圧縮空気の流れは液体回収部220の受け面(容器221の底面221a)に張られた液体である洗浄液222に衝突することになり、衝突時に洗浄液および圧縮空気の流れの勢いがさらに弱められる。その結果、洗浄液の跳ね返りが抑制され、洗浄液の回収率がさらに向上する。
なお、本実施例では液体回収部220に貯溜される洗浄液222を液体塗料の搬送経路を洗浄する洗浄液と全く同じもの(成分や組成が同じであるもの)とする構成としたが、本発明はこれに限定されず、液体塗料の搬送経路の洗浄に係る洗浄液の回収やその後の処理に支障が生じない範囲であれば成分や組成が多少異なる構成としても良い。
【0078】
以下では、図3を用いて本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第三実施例である回収装置300について説明する。
回収装置300は塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄し、当該搬送経路の終端であり本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を回収するものである。
なお、図3における塗装機1の構成は図1における塗装機1と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0079】
回収装置300は主として緩和部310、液体回収部320を具備する。
【0080】
緩和部310は本発明に係る緩和部の実施の一形態であり、本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を受けて当該洗浄液の流れ(勢い)を緩和するものである。
なお、緩和部310の構成は図1における緩和部110と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0081】
液体回収部320は本発明に係る液体回収部の実施の一形態であり、緩和部310を通過した洗浄液を回収するものである。
【0082】
液体回収部320は容器321および傾斜板322を有する。
容器321は側面および底面を有し、上面が開口している。
傾斜板322は板状の部材であり、容器221の内部空間における底部に設けられる。傾斜板322の一端は容器221の底面と内側面との境界部に固定され、傾斜板322の他端は容器221の内側面の中途部に固定される。従って、傾斜板322の上面は洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角θ2だけ傾斜した状態となる。
そして、液体回収部320は傾斜板322の上面を緩和部310を通過してきた洗浄液および圧縮空気を受け止める「受け面」とする。傾斜板322の上面により受け止められた洗浄液は容器321の内部に回収される。
【0083】
このように構成することにより、緩和部310を通過してきた洗浄液および圧縮空気の流れのうち、圧縮空気については傾斜板322の上面を傾斜板322の一端(容器221の底面と内側面との境界部に固定されている方の端部)に向かって流れることとなり、洗浄液の噴射方向に対して受け面が直角になっている場合よりも圧縮空気が受け面に衝突するときの勢いが緩和される。
その結果、洗浄液が受け面に衝突するときの勢いも緩和されるので、容器321の内部での洗浄液の跳ね上がりが抑制され、洗浄液の回収率が向上する。
また、傾斜板322が傾斜していることにより、傾斜板322の上面において受け止められた洗浄液が傾斜板322に沿って容器321の底部の一端(容器221の底面と内側面との境界部に傾斜板322の一端が固定されている部分)に貯溜されることとなり、回収後の洗浄液の取り扱いが容易である。
【0084】
傾斜板322の傾斜角θ2は予め実験等により洗浄液の跳ね上がりを確認した上で設定することが望ましく、緩和部310のフィルタの傾斜角θ1と同じでも異なっていても良い。
また、本実施例では容器321の内部空間における底部に傾斜板322を設けることにより液体回収部320の受け面を洗浄液の噴射方向に対して傾斜させる構成としたが、液体回収部が有する容器の底面を噴射方向に対して傾斜した形状とし、これを受け面とする構成としても同様の効果を奏する。
【0085】
以下では、図4を用いて本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第四実施例である回収装置400について説明する。
回収装置400は塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄し、当該搬送経路の終端であり本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を回収するものである。
なお、図4における塗装機1の構成は図1における塗装機1と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0086】
回収装置400は主として緩和部410、液体回収部420を具備する。
【0087】
緩和部410は本発明に係る緩和部の実施の一形態であり、本体50に形成された塗料噴射口50aから噴射される洗浄液を受けて当該洗浄液の流れ(勢い)を緩和するものである。
なお、緩和部410の構成は図1における緩和部110と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0088】
液体回収部420は本発明に係る液体回収部の実施の一形態であり、緩和部410を通過した洗浄液を回収するものである。
【0089】
液体回収部420は容器421、フロー板422、下部貯溜槽423、上部貯留槽424、洗浄液フロー機構425を有する。
【0090】
容器421は側面および底面を有し、上面が開口している。
【0091】
フロー板422は板状の部材であり、容器421の内部空間における底部に設けられる。
フロー板422の上面は洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角θ3だけ傾斜している。
液体回収部420はフロー板422の上面を緩和部410を通過してきた洗浄液および圧縮空気を受け止める「受け面」とする。フロー板422の上面により受け止められた洗浄液は容器421の内部に回収される。
【0092】
下部貯溜槽423はフロー板422の端部のうち最下部を成す端部に延設される槽である。下部貯溜槽423には予め洗浄液440が貯溜される。
上部貯留槽424はフロー板422の端部のうち最上部を成す端部に延設される槽である。上部貯留槽424には予め洗浄液440が貯溜される。
【0093】
洗浄液フロー機構425は液体回収部420の受け面に沿って洗浄液440をフローするものである。
【0094】
洗浄液フロー機構425は主として搬送ポンプ426、戻り配管427、圧送配管428、排出配管429、バルブ430、バルブ431等を備える。
【0095】
搬送ポンプ426は液体回収部420の受け面の下部(本実施例の場合、厳密には下部貯溜槽423)に貯溜された洗浄液440を液体回収部420の受け面の上部(本実施例の場合、厳密には上部貯留槽424)に搬送するものである。
搬送ポンプ426の吸入側ポートは戻り配管427の一端に連通接続され、戻り配管427の他端は下部貯溜槽423の内部空間の底部と連通接続される。
搬送ポンプ426の吐出側ポートは圧送配管428の一端に連通接続され、圧送配管428の他端は上部貯溜槽424の内部空間に配置される。
【0096】
排出配管429は洗浄液440を液体回収部420の外部に排出するための配管である。
排出配管429の一端は圧送配管428の中途部に連通接続される。
【0097】
バルブ430は圧送配管428の中途部かつ排出配管429と圧送配管428との連通接続部よりも搬送ポンプ426から遠い位置に設けられる開閉弁である。バルブ431は排出配管429の中途部に設けられる開閉弁である。
【0098】
塗装機1における液体塗料の搬送経路を洗浄する洗浄液を回収するときは、バルブ430を開き、バルブ431を閉じた状態で搬送ポンプ426を駆動する。
下部貯溜槽423に貯溜された洗浄液440は戻り配管427、搬送ポンプ426、圧送配管428を経て上部貯溜槽424の内部空間に供給される。
上部貯溜槽424の内部空間に供給された洗浄液440は、上部貯溜槽424からオーバーフローし、フロー板422の上面、すなわち液体回収部420の受け面に沿って下方にフローし、下部貯溜槽423に回収される。
【0099】
洗浄液440を外部に排出するときは、バルブ431を開き、バルブ430を閉じた状態で搬送ポンプ426を駆動する。
下部貯溜槽423に貯溜された洗浄液440は戻り配管427、搬送ポンプ426、圧送配管428、排出配管429を経て外部に排出される。
【0100】
以上の如く、回収装置400の液体回収部420は、
液体回収部420の受け面(フロー板422の上面)に沿って洗浄液440をフローする洗浄液フロー機構425を有するものである。
このように構成することにより、緩和部410を通過した洗浄液および圧縮空気の流れは液体回収部420の受け面(フロー板422の上面)に沿ってフローする液体である洗浄液440に衝突することになり、衝突時に洗浄液および圧縮空気の流れの勢いがさらに弱められる。
また、緩和部410を通過してきた洗浄液および圧縮空気の流れのうち、圧縮空気についてはフロー板422の上面をフロー板422の最下部を成す端部に向かって流れることとなり、洗浄液の噴射方向に対して受け面が直角になっている場合よりも圧縮空気が受け面に衝突するときの勢いが緩和される。
その結果、フロー板422の上面への衝突時における洗浄液の跳ね返りが抑制され、洗浄液の回収率がさらに向上する。
【0101】
フロー板422の傾斜角θ3は予め実験等により洗浄液の跳ね上がりの状況を確認した上で設定することが望ましく、緩和部410のフィルタの傾斜角θ1と同じでも異なっていても良い。
また、本実施例では容器421の内部空間における底部にフロー板422、下部貯溜槽423および上部貯溜槽424を設ける構成としたが、液体回収部が有する容器の底面をフロー板422、下部貯溜槽423および上部貯溜槽424に対応する形状としても同様の効果を奏する。
【0102】
さらに、本実施例では下部貯溜槽423および上部貯溜槽424を有する構成としたが、下部貯溜槽423についてはフロー板422が傾斜していればその最下部に対応する位置に自ずと洗浄液440が貯溜されることから、下部貯溜槽423を省略しても同様の効果を奏する。
なお、上部貯溜槽424についても省略することは可能であるが、フロー板422の上面に沿って洗浄液440を均一にフローさせるという観点からは、上部貯溜槽424から洗浄液440をオーバーフローさせる構成が望ましい。
ただし、例えば圧送配管428の他端をフロー板422の上部において複数に分岐させ、分岐した複数の開口部をフロー板422の上面の上部に適宜間隔を空けて配置した場合には、上部貯溜槽424を省略してもフロー板422の上面に沿って洗浄液440を均一にフローさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第一実施例を示す図。
【図2】本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第二実施例を示す図。
【図3】本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第三実施例を示す図。
【図4】本発明に係る塗装機洗浄液回収装置の第四実施例を示す図。
【図5】従来の塗装機洗浄液回収装置の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0104】
1 塗装機
50 本体
50a 塗料噴射口
100 回収装置(塗装機洗浄液回収装置)
110 緩和部
120 液体回収部
121 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装機における液体塗料の搬送経路を洗浄した後、前記液体塗料の搬送経路の終端であり前記塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を回収する塗装機洗浄液回収装置であって、
前記洗浄液の噴射位置に配置された塗装機に対向する位置に設けられるフィルタを有し、前記塗装機の塗料噴射口から噴射される洗浄液を前記フィルタで受けてその流れを緩和する緩和部と、
前記洗浄液の噴射位置に配置された塗装機に対向するとともに前記緩和部を挟んで前記塗装機の反対側となる位置に設けられる容器を有し、前記緩和部を通過した洗浄液を受け止めて回収する液体回収部と、
を具備する塗装機洗浄液回収装置。
【請求項2】
前記緩和部のフィルタにおける前記洗浄液を受ける面は、
前記洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角だけ傾斜する請求項1に記載の塗装機洗浄液回収装置。
【請求項3】
前記緩和部のフィルタは金属材料からなる網である請求項1または請求項2に記載の塗装機洗浄液回収装置。
【請求項4】
前記液体回収部は、
前記緩和部を通過した洗浄液を受け止める受け面を有し、
前記液体回収部に予め所定量の洗浄液を貯溜することにより前記液体回収部の受け面に洗浄液を張った状態とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の塗装機洗浄液回収装置。
【請求項5】
前記液体回収部は、
前記緩和部を通過した洗浄液を受け止める受け面を有し、
前記液体回収部の受け面は、
前記洗浄液の噴射方向に対して直角となる状態から所定の傾斜角だけ傾斜する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の塗装機洗浄液回収装置。
【請求項6】
前記液体回収部は、
前記液体回収部の受け面に沿って洗浄液をフローする洗浄液フロー機構を有する請求項5に記載の塗装機洗浄液回収装置。
【請求項7】
前記洗浄液フロー機構は、
前記受け面の下部に貯溜された洗浄液を前記受け面の上部に搬送する搬送ポンプを備える請求項6に記載の塗装機洗浄液回収装置。
【請求項8】
前記緩和部は、
平面視で前記液体回収部に収まる範囲に配置される請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の塗装機洗浄液回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−45530(P2009−45530A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212429(P2007−212429)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591274059)ランズバーグ・インダストリー株式会社 (38)
【Fターム(参考)】