説明

塗装機洗浄用ホッパー

【課題】ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことにより、清掃の頻度を減らすことができる塗装機洗浄用ホッパーを提供すること。
【解決手段】塗装機洗浄用ホッパー2は、ホッパー本体23と、ホッパー本体23の開口部23aを覆う上蓋24とを備える。上蓋24は、塗装機4の回転霧化頭30をホッパー本体23内に挿入可能とする挿入孔22を有する。挿入孔22の下方には、ホッパー本体23内の気流を調整する気流調整板11が設けられる。挿入孔22の内径は、挿入孔22の中央部から上側開口端及び下側開口端に行くに従って大きくなる。また、上蓋裏面24bは略凹状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機を洗浄する際に用いられる塗装機洗浄用ホッパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車ボディなどの被塗装物の塗装には、塗装ロボットが主に使用されている。この塗装ロボットは、被塗装物を塗装する際に屈伸・回転するアームと、アームの先端部に装備される塗装機とを備えている。塗装機はベル型の回転霧化頭などを備えている。なお、塗装ロボットは、被塗装物を塗装する動作の他に、色替の際に生じる余剰塗料を廃塗料回収容器(例えば、特許文献1参照)内に吹き捨てるという動作も行うようになっている。
【0003】
このような廃塗料回収容器としては、例えば、図5に示されるような塗装機洗浄用ホッパー41が提案されている。塗装機洗浄用ホッパー41を構成するホッパー本体42は、上部に挿入孔45を有している。そして、塗装機43の回転霧化頭44を挿入孔45を介してホッパー本体42内に挿入した状態で、塗装機43内の塗料が吹き捨てられる。
【0004】
ところで、塗装機43で微粒化された塗料は極めて軽いため、周囲の気流の影響を受けやすい。特に、回転霧化頭44を高速回転させると、その周囲に上昇気流が発生して塗料が舞い上がるため、舞い上がった塗料が回転霧化頭44に付着してすぐに汚れてしまう。この問題を解決するために、従来は、回転霧化頭44の周囲からシェーピングエアを噴射して、上昇気流を抑えるようになっていた。
【0005】
しかしながら、シェーピングエアを噴射する場合、シェーピングエアが別の上昇気流を発生させ、その上昇気流の影響を受けて塗料粒子が舞い上がってしまう可能性がある。そこで、シェーピングエアを噴射する代わりに、ホッパー本体42内における挿入孔45の下方位置に気流調整板46を設けることが考えられる(図5参照)。これにより、塗料粒子を舞い上がらせる上昇気流を遮断することができる。
【特許文献1】特開2000−189849号公報(図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転霧化頭44によって霧化された塗料は、気流調整板46に接触して跳ね返り、ホッパー本体42の上部裏面に接触する。この塗料粒子の流れに伴い、ホッパー本体42内の挿入孔45近傍に渦流が生じ、そこに滞留部分A1ができてしまう。また、ホッパー本体42内の上部と側壁との接続部分近傍に淀みが生じ、そこに滞留部分A2ができてしまう。このホッパー本体42内における滞留部分A1,A2の近傍は、塗料が集中的に付着するために汚れやすい。ゆえに、ホッパー本体42内を頻繁に清掃することが必要となる。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことにより、清掃の頻度を減らすことができる塗装機洗浄用ホッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた塗装機洗浄用ホッパーであって、前記挿入孔の内径を、前記挿入孔の中央部から上側開口端に行くに従って大きくするとともに、前記中央部から下側開口端に行くに従って大きくしたことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパーをその要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の発明によると、挿入孔の内径が、挿入孔の中央部から上端開口部及び下側開口端に行くに従って大きくなっているため、挿入孔を介してホッパー本体内に挿入した回転霧化頭を高速回転させると、挿入孔の内周面に沿って空気が滑らかに流れた後、連続して上蓋裏面に沿って空気が滑らかに流れる。その結果、上蓋の挿入孔近傍に渦流が発生しにくくなるため、同挿入孔近傍に汚れが集中しにくくなる。従って、ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことができるため、塗装機洗浄用ホッパーの清掃の頻度を減らすことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた塗装機洗浄用ホッパーであって、前記上蓋裏面を略凹状に形成したことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパーをその要旨とする。
【0011】
従って、請求項2に記載の発明によると、上蓋裏面が略凹状に形成されているため、上蓋裏面とホッパー本体の内周面とが滑らかに連続する。よって、上蓋裏面からホッパー本体の内周面に沿って空気が滑らかに流れる。その結果、上蓋裏面とホッパー本体の内周面との接続部分近傍に淀みが生じにくくなり、同接続部分近傍に汚れが集中しにくくなる。従って、ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことができるため、塗装機洗浄用ホッパーの清掃の頻度を減らすことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた塗装機洗浄用ホッパーであって、前記挿入孔の内径を、前記挿入孔の中央部から上側開口端に行くに従って大きくするとともに、前記中央部から下側開口端に行くに従って大きくし、前記上蓋裏面を略凹状に形成したことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパーをその要旨とする。
【0013】
従って、請求項3に記載の発明によると、挿入孔の内径が、挿入孔の中央部から上端開口部及び下側開口端に行くに従って大きくなっているため、挿入孔を介してホッパー本体内に挿入した回転霧化頭を高速回転させると、挿入孔の内周面に沿って空気が滑らかに流れた後、連続して上蓋裏面に沿って空気が滑らかに流れる。その結果、上蓋の挿入孔近傍に渦流が発生しにくくなるため、同挿入孔近傍に汚れが集中しにくくなる。また、上蓋裏面が略凹状に形成されているため、上蓋裏面とホッパー本体の内周面とが滑らかに連続する。よって、上蓋裏面からホッパー本体の内周面に沿って空気が滑らかに流れる。その結果、上蓋裏面とホッパー本体の内周面との接続部分近傍に淀みが生じにくくなり、同接続部分近傍に汚れが集中しにくくなる。従って、ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことができるため、塗装機洗浄用ホッパーの清掃の頻度を減らすことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた塗装機洗浄用ホッパーであって、前記上蓋において前記挿入孔の周辺部の厚さを5mm以上20mm以下に設定するとともに、前記挿入孔の内周面を、前記挿入孔の中心に向かって略凸状に形成するとともに、前記上蓋を厚さ方向に切断した切断面において前記挿入孔の内周面にあたる部分に現われる曲線を、前記厚さの1.0倍以上1.5倍以下の直径の円弧を含むものとし、上蓋裏面を略凹状に形成するとともに、前記切断面において前記上蓋裏面にあたる部分に現われる曲線を、50mm以上150mm以下の半径の円弧を含むものとしたことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパーをその要旨とする。
【0015】
従って、請求項4に記載の発明によると、上蓋における挿入孔の周辺部の厚さが5mm以上20mm以下に設定されるとともに、上蓋を厚さ方向に切断した切断面において挿入孔の内周面にあたる部分に現れる曲線が、前記厚さの1.0倍以上1.5倍以下の直径の円弧を含むものとなっている。このため、挿入孔を介してホッパー本体内に挿入した回転霧化頭を高速回転させると、挿入孔の内周面から上蓋裏面に沿って空気が滑らかに流れる。その結果、上蓋の挿入孔近傍に渦流が発生しにくくなるため、同挿入孔近傍に汚れが集中しにくくなる。また、上蓋裏面が略凹状に形成されるとともに、前記切断面において上蓋裏面にあたる部分に現れる曲線が、50mm以上150mm以下の半径の円弧を含むものとなっている。よって、上蓋裏面とホッパー本体の内周面とが滑らかに連続するため、上蓋裏面からホッパー本体の内周面に沿って空気が滑らかに流れる。その結果、上蓋裏面とホッパー本体の内周面との接続部分近傍に淀みが生じにくくなり、同接続部分近傍に汚れが集中しにくくなる。従って、ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことができるため、塗装機洗浄用ホッパーの清掃の頻度を減らすことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記上蓋が前記ホッパー本体に対して着脱可能に取り付けられており、前記気流調整部材が前記上蓋に設けられていることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項5に記載の発明によると、上蓋がホッパー本体に対して着脱可能に取り付けられているため、上蓋を外すことにより塗装機洗浄用ホッパーの内部を容易に掃除できるとともに、上蓋裏面や気流調整部材も掃除することができる。また、気流調整部材が上蓋に設けられているため、気流調整部材と上蓋との位置関係は、上蓋の取付状態にかかわらず一定に保たれる。ゆえに、上蓋の取付状態に応じてホッパー本体内の気流が変化することに起因した塗装機洗浄用ホッパーの機能低下を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、ホッパー本体内での汚れの集中を減らすことにより、清掃の頻度を減らすことができる塗装機洗浄用ホッパーを提供することができる。特に、請求項5に記載の発明によると、上蓋の取付状態に応じてホッパー本体内の気流が変化することに起因した塗装機洗浄用ホッパーの機能低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した塗装機洗浄用ホッパーの一実施形態を図1〜図3に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1,図2に示されるように、塗装機洗浄用ホッパー2は、例えば塗装ロボットに取り付けられた塗装機4を洗浄するためのものである。塗装機4は、自動車ボディなどの被塗装物(図示略)に対して塗装作業を行う際に用いられている。塗装機4は、略円筒状の塗装機本体32と、ベル型の回転霧化頭30とを備えている。塗装機本体32は、塗料が充填される塗料容器(図示略)と、塗料容器内の塗料を回転霧化頭30に供給する塗料供給機構(図示略)とを備えている。回転霧化頭30は、塗装機本体32に取り付けられており、塗装機本体32内に設けられた霧化頭回転用モータによって回転するようになっている。そして、回転霧化頭30が回転すると、塗料供給機構によって供給されてきた塗料は、遠心力によって外周側に飛散して霧化されるようになっている。また、回転霧化頭30の後部33は略円筒状をなしており、回転霧化頭30の前部31は、前端に行くに従って外径が大きくなる後面(テーパ面)31aを有している。
【0021】
図1,図2に示されるように、塗装機洗浄用ホッパー2は、水などの洗浄液を回収する機能と、色替時に塗装機4から吹き捨てられた塗料を回収する機能とを有している。図1〜図3に示されるように、塗装機洗浄用ホッパー2は、略円筒状をなすホッパー本体23と、上面視略円形状をなす上蓋24とを備えている。なお、本実施形態では、ホッパー本体23及び上蓋24がステンレス製であるため、洗浄液に起因した錆びの発生を防止することができる。ホッパー本体23は、開口部23aを上端部に有するとともに、ホッパー本体23内の廃液を排出する廃液排出口(図示略)を下端部に有している。ホッパー本体23の開口部23aの外周側には、ホッパー本体23の外周側に向かって突出する縁部23bが設けられている。
【0022】
一方、上蓋24は、ホッパー本体23の外径と略同じ直径に設定され、開口部23aを覆うようにホッパー本体23に取り付けられている。具体的には、上蓋24の外周部25とホッパー本体23の前記縁部23bとにボルト26を挿通し、同ボルト26の先端にナット27を締結させることにより、上蓋24がホッパー本体23に取り付けられる。即ち、上蓋24は、ホッパー本体23に対して着脱可能に取り付けられている。また、上蓋24の中央部には、前記回転霧化頭30をホッパー本体23内に挿入可能な挿入孔22が設けられている。挿入孔22は円形状をなしており、その内径は、挿入した回転霧化頭30との間に10mm以上50mm以下の隙間が生じる程度の大きさに設定されている。
【0023】
図1〜図3に示されるように、上蓋24における挿入孔22の周辺部の厚さt1(図2,図3参照)は、図5に例示した従来のものよりも厚く設定され、本実施形態では約8mmに設定されている(ちなみに、従来は約2mmに設定)。また、上蓋表面24aと挿入孔22の内周面との接続部分(挿入孔22の上側開口縁)が面取りされるとともに、上蓋裏面24bと内周面との接続部分(挿入孔22の下側開口縁)が面取りされている。このため、挿入孔22の内周面は、挿入孔22の中心に向かって略凸状に形成されている。即ち、挿入孔22の内径は、挿入孔22の中央部から上側開口端に行くに従って大きくなるとともに、挿入孔22の中央部から下側開口端に行くに従って大きくなっている。
【0024】
また、上蓋24は、上蓋裏面24bが略凹状に形成されるとともに、挿入孔22の内周面から前記ホッパー本体23の側壁23c側に行くに従って徐々に肉厚となるように形成されている。なお、上蓋24を厚さ方向に切断した切断面において、上蓋裏面24bの側壁23c近傍にあたる部分に現われる曲線は、約100mmの半径の円弧C1(図1,図3参照)を含んでいる。
【0025】
図1,図2に示されるように、ホッパー本体23内には、同ホッパー本体23内の気流を調整する気流調整板11(気流調整部材)が設けられている。気流調整板11は、挿入孔22の下方であって、ホッパー本体23内に挿入された回転霧化頭30の下方に配置されている。本実施形態において、挿入孔22近傍の上蓋裏面24bと気流調整板11の上面との距離は、約30mmに設定され、回転霧化頭30の前端と気流調整板11の上面との距離は、約20mmに設定されている。気流調整板11は略円板状をなしており、気流調整板11の外径は挿入孔22の内径よりも大きく設定されている。ちなみに、図5に例示した従来の気流調整板の外径は約200mmであったが、本実施形態の気流調整板11は、その外径を約240mmに設定している。そして、気流調整板11は、複数本(本実施形態では4本)の支持柱13(柱状部材)を介して上蓋24に接続されている。具体的には、上蓋24を挿通したボルト14を支持柱13の上端部に締結させ、気流調整板11を挿通したボルト15を支持柱13の下端部に締結させることにより、気流調整板11が上蓋24に接続される。なお、各支持柱13は、互いに同一の長さのものが用いられているため、気流調整板11は、上蓋24(具体的には、上蓋表面24a)に対して平行になる。また、各支持柱13は、気流調整板11の外周部において等間隔(本実施形態では90°間隔)に配置されている。これにより、挿入孔22から流入する空気の流れが支持柱13によって乱されにくくなる。また、気流調整板11が各支持柱13によって正確に位置決めされるため、気流調整板11を安定した状態で固定できる。また、気流調整板11の中心部には、円形状をなす通気孔12が設けられている。通気孔12は、回転霧化頭30の回転によりその直下に生ずる負圧部分に、気流調整板11の下方から空気を供給するための通路となっている。通気孔12の内径は、回転霧化頭30の外径よりも小さく設定されている。
【0026】
次に、塗装機洗浄用ホッパー2の作用を説明する。
【0027】
まず、塗装機4による被塗装物の塗装が終了し、次の被塗装物を塗装するにあたって色替をする必要が生じた場合、塗装ロボットを駆動して塗装機4を移動させ、回転霧化頭30を挿入孔22を介して塗装機洗浄用ホッパー2内に挿入させる。このとき、回転霧化頭30は、前端が気流調整板11の上面の約20mm上方に位置するように挿入される。そして、霧化頭回転用モータを駆動して回転霧化頭30を15000rpmで回転させ、この状態で塗料を噴射させることにより、塗装機4内の塗料を塗装機洗浄用ホッパー2内に吹き捨てる。
【0028】
このとき、回転霧化頭30によって霧化された塗料は、気流調整板11側に流れるが、回転霧化頭30の回転時に生じる遠心力の影響を受けて回転霧化頭30の径方向外側にも流れる。その結果、塗料粒子は、気流調整板11の上部B1(図2参照)に接触して跳ね返り、上蓋24の上蓋裏面24b側に向かって流れる(図1,図2の矢印F1参照)。
【0029】
また、塗料粒子が矢印F1方向に流れるのに伴い、ホッパー本体23内の挿入孔22近傍の領域B2(図2参照)が負圧部分となる。これにより、塗装機洗浄用ホッパー2外にある空気が、挿入孔22を介してホッパー本体23内の領域B2に向けて流入する(図2の矢印F2参照)。このとき、ホッパー本体23内に流入する空気は、略凸状に形成された挿入孔22の内周面に沿って上蓋裏面24b側に回り込むように流れるため、空気の剥離による領域B2での渦流の発生が抑えられる。ゆえに、挿入孔22近傍の上蓋裏面24bに汚れが付着しにくくなる。
【0030】
さらに、上蓋24の上蓋裏面24bに到達した塗料粒子は、上蓋裏面24bに沿ってホッパー本体23の側壁23c側に流れる(矢印F1参照)。なお、上蓋裏面24bが略凹状に形成され、上蓋裏面24bと側壁23cの内周面とが滑らかに連続するため、塗料粒子は、上蓋裏面24bから側壁23cの内周面に沿って滑らかに流れる。ゆえに、上蓋裏面24bと側壁23cの内周面との接続部分近傍に淀みが生じにくくなるため、同接続部分(円弧C1の部分)への汚れの付着が抑えられる。
【0031】
洗浄作業が終了すると、霧化頭回転用モータの駆動を停止させて回転霧化頭30を停止させるとともに、塗装機本体32内の塗料容器に次色塗料を充填して色替を行う。その後、塗装ロボットを駆動して塗装機4を上昇させることにより、回転霧化頭30を塗装機洗浄用ホッパー2の外部に移動させる。続いて、塗装ロボットは、塗装機4を塗装作業開始位置に移動させ、次の被塗装物の塗装を開始させる。
【0032】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0033】
(1)本実施形態の塗装機洗浄用ホッパー2によれば、挿入孔22の周辺部が従来のもの(図5参照)よりも厚く設定され、挿入孔22の上端開口縁及び下端開口縁が面取りされている。このため、挿入孔22近傍を流れる空気に乱れが生じにくくなり、挿入孔22近傍の上蓋裏面24bに汚れが集中しにくくなる。また、上蓋裏面24bが略凹状に形成され、上蓋裏面24bと側壁23cの内周面とが滑らかに連続する。このため、上蓋裏面24bとホッパー本体23の内周面との接続部分に淀みが生じにくくなり、同接続部分近傍に汚れが集中しにくくなる。従って、塗装機洗浄用ホッパー2の清掃の頻度を減らすことができる。
【0034】
また、塗料粒子が、ホッパー本体23の上部(挿入孔22近傍や、上蓋裏面24bとホッパー本体23の内周面との接続部分近傍など)に残らずに下方に流れやすくなるため、回転霧化頭30に塗料粒子が付着することによる塗装機4の汚れも防止できる。
【0035】
(2)本実施形態の気流調整板11は、従来よりも外径が大きなものが用いられており、その外径は約240mmに設定されている。よって、気流調整板11の上部B1に付着した塗料粒子は、気流調整板11上に広げられて堆積しにくくなるため、気流調整板11が従来のものよりも汚れにくくなる。従って、気流調整板11の清掃の頻度を減らすことができる。
【0036】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0037】
・上記実施形態では、挿入孔22の上側開口縁及び下側開口縁が面取りされることにより、挿入孔22の内周面が挿入孔22の中心に向かって略凸状に形成されていた。しかし、例えば図4(a)に示されるように、挿入孔22の内周面を、上蓋24を厚さ方向に切断した切断面において挿入孔22の上側開口縁及び下側開口縁にあたる部分に曲線が現われる形状としてもよい。即ち、挿入孔22の上側開口縁及び下側開口縁にアールを有する形状としてもよい。また、図4(b)に示されるように、挿入孔22の内周面全体がアールとなる形状にしてもよい。具体的には、前記切断面において挿入孔22の内周面にあたる部分に現われる曲線が、厚さt1の約1.2倍の直径の円弧を含む形状としてもよい。
【0038】
・上記実施形態の上蓋24は、ステンレス製であったが、他の金属材料によって形成されていてもよい。また、上蓋24は、金属材料以外によって形成されていてもよく、例えば、耐溶剤性のゴム材(ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム(FPM)など)によって形成されていてもよい。
【0039】
・上記実施形態において、気流調整板11と上蓋24とを一体形成してもよい。
【0040】
・上記実施形態では、気流調整板11は、支持柱13を介してボルト14,15を用いて上蓋24に接続されていた。しかし、気流調整板11を上蓋24に接続する方法を変更してもよい。例えば、接着剤を用いて、支持柱13と上蓋24とを接着するとともに、支持柱13と気流調整板11とを接着することにより、気流調整板11を上蓋24に接続してもよい。
【0041】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0042】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記気流調整部材は略円板状をなしており、前記気流調整部材の外径は前記挿入孔の内径よりも大きいこと。
【0043】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記上蓋は、前記挿入孔の内周面から前記ホッパー本体の側壁側に行くに従って徐々に肉厚となるように形成されていること。
【0044】
(3)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記ホッパー本体の前記開口部の外周側に縁部が設けられ、前記上蓋の外周部と前記縁部とにボルトを挿通し、前記ボルトの先端にナットを締結させることにより、前記上蓋が前記ホッパー本体に取り付けられること。
【0045】
(4)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記気流調整部材は、複数本の柱状部材を介して前記上蓋に接続されること。
【0046】
(5)上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた塗装機洗浄用ホッパーであって、上蓋表面と前記挿入孔の内周面との接続部分を面取りするとともに、上蓋裏面と前記内周面との接続部分を面取りし、前記上蓋裏面を略凹状に形成したことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパー。
【0047】
(6)上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた塗装機洗浄用ホッパーであって、前記挿入孔の上側開口縁及び下側開口縁を面取りするとともに、前記上蓋裏面を略凹状に形成したことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパー。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態における塗装機洗浄用ホッパー及び回転霧化頭などを示す概略断面図。
【図2】塗装機洗浄用ホッパー及び回転霧化頭などを示す要部断面図。
【図3】上蓋及び気流調整板を示す概略断面図。
【図4】(a)及び(b)は、他の実施形態における上蓋の要部断面図。
【図5】従来技術における塗装機洗浄用ホッパー及び回転霧化頭などを示す概略断面図。
【符号の説明】
【0049】
2…塗装機洗浄用ホッパー
4…塗装機
11…気流調整部材としての気流調整板
22…挿入孔
23…ホッパー本体
23a…開口部
24…上蓋
24b…上蓋裏面
30…回転霧化頭
C1…円弧
t1…厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、
前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、
前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた
塗装機洗浄用ホッパーであって、
前記挿入孔の内径を、前記挿入孔の中央部から上側開口端に行くに従って大きくするとともに、前記中央部から下側開口端に行くに従って大きくしたことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパー。
【請求項2】
上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、
前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、
前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた
塗装機洗浄用ホッパーであって、
前記上蓋裏面を略凹状に形成したことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパー。
【請求項3】
上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、
前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、
前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた
塗装機洗浄用ホッパーであって、
前記挿入孔の内径を、前記挿入孔の中央部から上側開口端に行くに従って大きくするとともに、前記中央部から下側開口端に行くに従って大きくし、
前記上蓋裏面を略凹状に形成した
ことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパー。
【請求項4】
上端部に開口部を有するホッパー本体と、前記開口部を覆う上蓋とを備え、
前記上蓋が、塗装機に回転可能に設けられた回転霧化頭を前記ホッパー本体内に挿入可能な挿入孔を有し、
前記ホッパー本体内の気流を調整する気流調整部材が、前記挿入孔の下方に位置するように設けられた
塗装機洗浄用ホッパーであって、
前記上蓋において前記挿入孔の周辺部の厚さを5mm以上20mm以下に設定するとともに、
前記挿入孔の内周面を、前記挿入孔の中心に向かって略凸状に形成するとともに、前記上蓋を厚さ方向に切断した切断面において前記挿入孔の内周面にあたる部分に現われる曲線を、前記厚さの1.0倍以上1.5倍以下の直径の円弧を含むものとし、
上蓋裏面を略凹状に形成するとともに、前記切断面において前記上蓋裏面にあたる部分に現われる曲線を、50mm以上150mm以下の半径の円弧を含むものとした
ことを特徴とする塗装機洗浄用ホッパー。
【請求項5】
前記上蓋が前記ホッパー本体に対して着脱可能に取り付けられており、前記気流調整部材が前記上蓋に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗装機洗浄用ホッパー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate