説明

塗装装置

【課題】エアや塗料の流路を容易に点検でき、かつ、軽量化を実現できる塗装装置を提供すること。
【解決手段】塗装装置は、回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で回転霧化頭に液体塗料を供給することで、液体塗料を帯電させて霧化し、静電塗装を行う。塗装装置は、ヘッド部20およびボディ部10と、ヘッド部20の先端側に設けられた回転霧化頭と、ヘッド部20およびボディ部10の基端側から先端側に延びてエアおよび塗料が流通する複数のチューブ13、通路435、および通路202と、を備え、ボディ部10の中央部分の外径は、両端側よりも小さく、チューブ13は、透過性を有する管であり、ボディ部10の中央部分の外周面に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関する。詳しくは、回転霧化頭の先端から液体塗料を噴霧して静電塗装を行う回転霧化式塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディなどを塗装する塗装装置として、例えば回転霧化式塗装装置が知られている。この回転霧化式塗装装置は、回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で、回転霧化頭に導電性塗料(液体塗料)を供給する。これにより、液体塗料を帯電させて霧化し、回転霧化頭の先端縁から噴霧して、静電塗装を行う。
【0003】
以上の塗装装置は、例えば、ロボットアームの先端に取り付けられ、回転霧化頭と、この回転霧化頭を回転させる駆動機構と、これらを収容するハウジングと、を備える。このハウジング内部には、エアや塗料が流通する流路が設けられている。
【特許文献1】特開2006―167518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、ハウジングの内部に流路が設けられているため、流路内を点検することが困難になる、という問題があった。また、ハウジングの内部に流路を形成するため、ハウジングの外径が大きくなり、重量が増大する、という問題があった。
【0005】
本発明は、エアや塗料の流路を容易に点検でき、かつ、軽量化を実現できる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗装装置(例えば、後述の塗装装置1)は、回転霧化頭(例えば、後述の回転霧化頭21)に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で当該回転霧化頭に液体塗料を供給することで、液体塗料を帯電させて霧化し、静電塗装を行う塗装装置であって、本体(例えば、後述のヘッド部20およびボディ部10)と、当該本体の先端側に設けられた回転霧化頭(例えば、後述の回転霧化頭21)と、前記本体の基端側から先端側に延びてエアおよび塗料が流通する複数の流路(例えば、後述のチューブ13、通路435、および通路202)と、を備え、前記本体の中央部分の外径は、両端側よりも小さく、前記複数の流路の少なくとも一部(例えば、後述のチューブ13)は、透過性を有する管であり、前記本体の中央部分の外周面に配置されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、本体の中央部分の外径を両端側よりも小さくしたので、塗装装置を軽量化できる。
また、複数の流路の少なくとも一部を、透過性を有する管とし、この管を本体の中央部分の外周面に配置した。よって、この管内の状況を目視で確認したり、この管に測定器具を取り付けたりすることで、エアや塗料の流路を容易に点検できる。
例えば、自動車の塗装色を変更する際に不具合が発生した場合、この塗料が流通する管を目視で確認することで、塗料の流動状態を容易に確認できる。また、塗装範囲の制御に不具合が発生した場合、エアが流通する管を、エア流量の測定器具が設けられた管に交換して、エアの流動状態を容易に確認できる。
【0008】
この場合、前記本体の中央部分を覆うカバー部(例えば、後述のカバー部12)をさらに備えることが好ましい。
【0009】
この発明によれば、本体の中央部分を覆うカバー部を設けたので、塗装装置を駆動する場合には、透過性を有する管が汚れるのを防止できる。一方、塗装装置を検査する場合には、カバー部のみを取り外すことで、透過性を有する管を容易に点検できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本体の中央部分の外径を両端側よりも小さくしたので、塗装装置を軽量化できる。
また、複数の流路の少なくとも一部を、透過性を有する管とし、この管を本体の中央部分の外周面に配置した。よって、この管内の状況を目視で確認したり、この管に測定器具を取り付けたりすることで、エアや塗料の流路を容易に点検できる。例えば、自動車の塗装色を変更する際に不具合が発生した場合、この塗料が流通する管を目視で確認することで、塗料の流動状態を容易に確認できる。また、塗装範囲の制御に不具合が発生した場合、エアが流通する管を、エア流量の測定器具が設けられた管に交換して、エアの流動状態を容易に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1の動作を示す斜視図である。図2は、塗装装置1の側面図である。
塗装装置1は、自動車のボディ2を静電塗装するものであり、ロボットアーム3の先端に取り付けられた円柱状の本体としてのボディ部10と、このボディ部10の先端に着脱可能に設けられた本体としてのヘッド部20と、ボディ部10とヘッド部20とを連結する連結リング50と、を備える。
【0012】
図3は、塗装装置1の部分拡大断面図である。
ボディ部10は、複数の流路としてのチューブ13が接続された長尺状のボディ部本体11と、このボディ部本体11の中央部分の外周面を覆うカバー部12と、を備える。
【0013】
ボディ部本体11は、基部30と、この基部30に取り付けられてカスケード41が収容されたカスケード収容部40と、を備える。
【0014】
基部30は、円盤状の底部31と、この底部31の外周縁に立設された壁部32と、を備える。壁部32の外周面には、ねじ部33が設けられ、このねじ部33には、円筒状のホルダ34が螺合している。このホルダ34の先端側の内側には、全周に亘って凹部35が形成されている。
【0015】
カスケード収容部40は、長尺状であり、基端側と先端側に鍔状の基端フランジ部42および先端フランジ部43が形成されている。これにより、ボディ部10の中央部分の外径は、基端側および先端側の外径よりも小さくなっている。
【0016】
カスケード収容部40には、基端面から先端面に至る貫通孔44が形成されており、カスケード41は、この貫通孔44に収容されている。具体的には、カスケード41は、カスケード41の外周面の大部分と貫通孔44の内壁面との間に間隙が生じるように収容されている。
【0017】
カスケード41には、基部30を貫通して延びる低電圧ケーブル45が接続されており、この低電圧ケーブル45を介して供給される電力を昇圧して出力する。このカスケード41の先端側は、先端フランジ部43の先端面の略中央から軸方向に沿って突出しており、このカスケード41の先端には、カスケードカバー46が取り付けられている。
【0018】
カスケード収容部40の外周面には、第1ポート401が設けられ、この第1ポート401には、継手402を介して上述のチューブ13が接続される。
【0019】
基端フランジ部42は、基部30の開放面を塞いだ状態で、基部30に固定されている。この基端フランジ部42には、上述のチューブ13が挿通される複数のチューブ挿通孔421が形成されている。
【0020】
先端フランジ部43の基端面には、複数の第2ポート431が円環状に配列されて設けられる。これら第2ポート431には、それぞれ、継手432を介して、上述のチューブ13が接続される。
また、先端フランジ部43の外周面には、全周に亘って突起434が形成されている。
【0021】
先端フランジ部43の先端面には、第3ポート433が円環状に配列されて設けられる。これら第3ポート433は、先端フランジ部43の先端面に面一で露出して設けられ、流路としての通路435を通して、第2ポート431および第1ポート401のそれぞれに連通する。
なお、図3に示す第2ポート431は、カスケード41が収容された貫通孔44に連通し、残る第2ポートは、図示しないが、第3ポート433に連通する。
また、先端フランジ部43の先端面の外周側には、位置決めピン436が突出して設けられている。
【0022】
連結リング50は、円筒状であり、連結リング50の基端側の内周面には、全周に亘って突起51が形成されている。また、連結リング50の先端側の内周面には、ねじ部52が形成されている。
連結リング50の突起51が先端フランジ部43の突起434に係止することで、連結リング50の先端側への移動が規制されるとともに、回転自在に保持される。
【0023】
複数のチューブ13は、透過性を有しており、図示しない光供給源、圧縮エア供給源、および塗料供給源から、ロボットアーム3のフランジ面を通り、基部30の内部まで延びている。これらのチューブ13は、さらに、カスケード収容部40のチューブ挿通孔421に挿通されて、カスケード収容部40の外周面上に沿って延びて、第2ポート431や第1ポート401に接続される。
【0024】
光供給源から供給される光信号、圧縮エア供給源から供給されたエア、および塗料供給源から供給される液体塗料は、これらチューブ13を流通して、第2ポート431に到達し、その後、通路435を通って、第4ポート201に到達する。
なお、図示しないが、光供給源から延びるチューブ13には、光ファイバが収容されており、この光ファイバを通して、光信号が伝達される。
【0025】
カバー部12は、円筒形状であり、ボディ部本体11に沿って2分割可能となっている。具体的には、カバー部12は、半円筒形状の2つのカバー片12A、12Bで構成される。
これらカバー片12A、12Bの先端縁は、連結リング50の内周面とボディ部本体11の先端フランジ部43の外周面との間に挿入されて挟持されており、この連結リング50により保持されている。また、これらカバー片12A、12Bの基端縁は、ボディ部本体11のホルダ34の先端側の凹部35に嵌合しており、このホルダ34により保持されている。
【0026】
ヘッド部20は、先端部分が屈曲した略くの字形状であり、図示しないエアモータと、このエアモータにより回転駆動される回転霧化頭21と、回転霧化頭21に塗料を供給する図示しない塗料供給部と、回転霧化頭21を囲繞するエアキャップ22と、が設けられている(図2参照)。
ヘッド部20の基端側の外周面には、ねじ部23が形成されており、このヘッド部20のねじ部23には、連結リング50のねじ部52が螺合している。
【0027】
ヘッド部20の基端面には、ボディ部10の先端フランジ部43に設けられた第3ポート433に対応する位置に、それぞれ、第4ポート201が配列されている。これら第4ポート201は、ヘッド部20の基端面に面一で露出して設けられ、流路としての通路202を通して、上述の塗料供給部、エアモータ、回転霧化頭21、およびエアキャップ22に連通する。
【0028】
これにより、第4ポート201に到達した光信号、エア、および液体塗料は、これら通路202を流通して、塗料供給部、エアモータ、回転霧化頭21、およびエアキャップ22に供給されることになる。また、塗料供給部、エアモータ、回転霧化頭21、およびエアキャップ22から出力されて通路202を流通する光信号、エア、および液体塗料は、第4ポート201に到達し、通路435およびチューブ13に流通することになる。
【0029】
さらに、ヘッド部20の基端面には、第4ポート201のそれぞれを囲む複数のOリング204が装着されている。
【0030】
塗料供給部には、塗料が流通する通路とエアが流通する通路とが接続される。この塗料供給部には、塗料が流通する通路を開閉する塗料弁が設けられており、この塗料弁は、エアの圧力により開閉される。
【0031】
エアモータには、エアが流通する通路が接続されており、このエアモータにエアを供給することにより、回転霧化頭21を高速回転させることができる。さらに、このエアモータには、光信号が伝達される光ファイバが接続されており、この光ファイバを通して、エアモータの回転数が光信号として出力される。
エアキャップ22には、エアが流通する通路が接続されており、このエアキャップ22に供給するエア流量を変化させることで、エアキャップ22から噴射するエアの流量が変化し、塗装範囲を調整する。
【0032】
ヘッド部20の基端面には、カスケード41の先端側が挿入されるカスケード挿入部24と、位置決めピン436が挿入される位置決めピン挿入穴203が形成されている。
カスケード挿入部24の底面には、電力伝送路26の接続端子25が設けられており、この接続端子25は、回転霧化頭21に電気的に接続されている。この電力伝送路26により、カスケードから出力された電力は、回転霧化頭21に伝送される。
【0033】
塗装装置1の動作について説明する。
まず、エア供給源からエアモータにエアを供給して、回転霧化頭21を高速で回転させる。さらに、カスケード41により低電圧電源からの電流を昇圧して、回転霧化頭21に高電圧の電流を印加する。
【0034】
そして、塗料供給部にエアを供給して塗料弁を開放し、この塗料供給部から回転霧化頭21の内周面に塗料が吐出され、この塗料は、高電圧が印加されて帯電し、回転霧化頭21の遠心力によって霧化状態となり、回転霧化頭21からワークに向かって噴霧される。これにより、静電塗装が行われる。
【0035】
次に、塗装装置1からカバー部12を取り外す手順について、図4を参照しながら説明する。
まず、ホルダ34を回転させて、ホルダ34を後退させる。これにより、カバー部12の基端縁は、ホルダ34による保持が解除される。次に、カバー部12を塗装装置1の基端側に移動させると、カバー部12の先端縁は、連結リング50と先端フランジ部43との間から抜き取られて、この連結リング50による保持が解除される。続いて、カバー部12をカバー片12Aとカバー片12Bとに分割する。このようにして、カバー部12を取り外す。
【0036】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ボディ部本体11の中央部分の外径を両端側よりも小さくしたので、塗装装置1を軽量化できる。
また、複数の流路の少なくとも一部を、透過性を有するチューブ13とし、このチューブ13を本体の中央部分の外周面に配置した。よって、このチューブ13内の状況を目視で確認したり、チューブ13に測定器具を取り付けたりすることで、塗装装置1をロボットアーム3から取り外すことなく、エアや塗料の流路を容易に点検できる。
例えば、自動車の塗装色を変更する際に不具合が発生した場合、塗料が流通するチューブ13を目視で確認することで、塗料の流動状態を容易に確認できる。また、塗装範囲の制御に不具合が発生した場合、エアが流通するチューブ13を、圧力計や流量計が設けられたチューブに交換することで、エアの流動状態を容易に確認できる。
【0037】
(2)ボディ部本体11の中央部分を覆うカバー部12を設けたので、塗装装置1を駆動する場合には、チューブ13が汚れるのを防止できる。一方、塗装装置1を検査する場合には、カバー部12のみを取り外すことで、チューブ13を容易に点検できる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗装装置の動作を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る塗装装置の側面図である。
【図3】前記実施形態に係る塗装装置の部分拡大断面図である。
【図4】前記実施形態に係る塗装装置のカバー部を取り外す手順を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 塗装装置
10 ボディ部(本体)
12 カバー部
13 チューブ(流路)
21 回転霧化頭
20 ヘッド部(本体)
21 回転霧化頭
202 通路(流路)
435 通路(流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で当該回転霧化頭に液体塗料を供給することで、液体塗料を帯電させて霧化し、静電塗装を行う塗装装置であって、
本体と、当該本体の先端側に設けられた回転霧化頭と、前記本体の基端側から先端側に延びてエアおよび塗料が流通する複数の流路と、を備え、
前記本体の中央部分の外径は、両端側よりも小さく、
前記複数の流路の少なくとも一部は、透過性を有する管であり、前記本体の中央部分の外周面に配置されることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装装置において、
前記本体の中央部分を覆うカバー部をさらに備えることを特徴とする塗装装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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