説明

塗装装置

【課題】修理や調整を容易にできる塗装装置を提供すること。
【解決手段】塗装装置は、ボディ部10と、このボディ部10に着脱可能なヘッド部20と、ボディ部10およびヘッド部20を連結する連結リング50と、を備え、ボディ部10には、電力を昇圧して出力するカスケード41と、光信号、エア、および塗料が流通する複数のチューブ13および通路435と、が設けられ、ヘッド部20には、回転霧化頭と、カスケード41から出力される電力を伝送する電力伝送路26と、通路202と、が設けられる。ボディ部10の接続面には、カスケード41の少なくとも一部が突出するとともに、通路435の第3ポート433が露出し、ヘッド部20の接続面には、電力伝送路が接続されかつカスケード41の突出した部分が挿入されるカスケード挿入部24が形成されるとともに、第3ポート433に接続される第4ポート201が露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関する。詳しくは、回転霧化頭の先端から液体塗料を噴霧して静電塗装を行う回転霧化式塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディなどを塗装する塗装装置として、例えば回転霧化式塗装装置が知られている。この回転霧化式塗装装置は、回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で、回転霧化頭に導電性塗料(液体塗料)を供給する。これにより、液体塗料を帯電させて霧化し、回転霧化頭の先端縁から噴霧して、静電塗装を行う。
【0003】
以上の塗装装置は、例えば、ロボットアームの先端に取り付けられ、回転霧化頭と、この回転霧化頭を回転させる駆動機構と、これらを収容するハウジングと、を備える。
【特許文献1】特開2006―167518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、塗装装置の全体が一体化しており、そのため、塗装装置を修理したり調整したりする際には、塗装装置の全体をロボットアームから取り外す必要がある。そのため、塗装装置の修理や調整に時間がかかる場合があった。
【0005】
本発明は、修理や調整を容易にできる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗装装置(例えば、後述の塗装装置1)は、回転霧化頭(例えば、後述の回転霧化頭21)に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で当該回転霧化頭に液体塗料を供給することで、液体塗料を帯電させて霧化し、静電塗装を行う塗装装置であって、ボディ部(例えば、後述のボディ部10)と、当該ボディ部に着脱可能なヘッド部(例えば、後述のヘッド部20)と、前記ボディ部および前記ヘッド部を連結する連結手段(例えば、後述の連結リング50)と、を備え、前記ボディ部には、電力を昇圧して出力するカスケード(例えば、後述のカスケード41)と、前記回転霧化頭の回転数を表す光信号、エア、および塗料のうち少なくとも1つが流通する複数の第1流路(例えば、後述のチューブ13および通路435)と、が設けられ、前記ヘッド部には、前記回転霧化頭と、前記カスケードから出力される電力を伝送する電力伝送路(例えば後述の電力伝送路26)と、第2流路(例えば、後述の通路202)と、が設けられ、前記ボディ部の接続面には、前記カスケードの少なくとも一部が突出するとともに、前記第1流路の端面(例えば、後述の第3ポート433)が露出し、前記ヘッド部の接続面には、前記電力伝送路が接続されかつ前記カスケードの突出した部分が挿入される挿入部(例えば、後述のカスケード挿入部24)が形成されるとともに、前記第1流路の端面に接続される前記第2流路の端面(例えば、後述の第4ポート201)が露出することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ボディ部とヘッド部とを互いに接近させて、連結手段により、これらボディ部とヘッド部とを固定する。これにより、カスケードの突出した部分を挿入部に挿入して、カスケードを電力伝送路に接続するとともに、第1流路の端面を第2流路の端面に接続する。よって、カスケードから出力される電力を、電力伝送路を介して伝送でき、また、第1流路に流通する光信号、エア、塗料を第2流路に流通させたり、第2流路に流通する光信号、エア、塗料を第1流路に流通させたりできる。
このように、塗装装置をボディ部とヘッド部とに2分割したので、ロボットアームに塗装装置を取り付けても、塗装装置の修理や調整の際に、ロボットアームから塗装装置の全体を取り外す必要はなく、ヘッド部のみを取り外すことができ、塗装装置の修理や調整が容易になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ボディ部とヘッド部とを互いに接近させて、連結手段により、これらボディ部とヘッド部とを固定する。これにより、カスケードの突出した部分を挿入部に挿入して、カスケードを電力伝送路に接続するとともに、第1流路の端面を第2流路の端面に接続する。よって、カスケードから出力される電力を、電力伝送路を介して伝送でき、また、第1流路に流通する光信号、エア、塗料を第2流路に流通させたり、第2流路に流通する光信号、エア、塗料を第1流路に流通させたりできる。このように、塗装装置をボディ部とヘッド部とに2分割したので、ロボットアームに塗装装置を取り付けても、ロボットアームから塗装装置の全体を取り外す必要はなく、ヘッド部のみを取り外すことができ、塗装装置の修理や調整が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1の動作を示す斜視図である。図2は、塗装装置1の側面図である。
塗装装置1は、自動車のボディ2を静電塗装するものであり、ロボットアーム3の先端に取り付けられた円柱状のボディ部10と、このボディ部10の先端に着脱可能に設けられたヘッド部20と、ボディ部10とヘッド部20とを連結する連結手段としての連結リング50と、を備える。
【0010】
図3は、塗装装置1の部分拡大断面図である。
ボディ部10は、複数の第1流路としてのチューブ13が接続された長尺状のボディ部本体11と、このボディ部本体11の中央部分の外周面を覆うカバー部12と、を備える。
【0011】
ボディ部本体11は、基部30と、この基部30に取り付けられてカスケード41が収容されたカスケード収容部40と、を備える。
【0012】
基部30は、円盤状の底部31と、この底部31の外周縁に立設された壁部32と、を備える。壁部32の外周面には、ねじ部33が設けられ、このねじ部33には、円筒状のホルダ34が螺合している。このホルダ34の先端側の内側には、全周に亘って凹部35が形成されている。
【0013】
カスケード収容部40は、長尺状であり、基端側と先端側に鍔状の基端フランジ部42および先端フランジ部43が形成されている。
【0014】
カスケード収容部40には、基端面から先端面に至る貫通孔44が形成されており、カスケード41は、この貫通孔44に収容されている。具体的には、カスケード41は、カスケード41の外周面の大部分と貫通孔44の内壁面との間に間隙が生じるように収容されている。
【0015】
カスケード41には、基部30を貫通して延びる低電圧ケーブル45が接続されており、この低電圧ケーブル45を介して供給される電力を昇圧して出力する。このカスケード41の先端側は、先端フランジ部43の先端面の略中央から軸方向に沿って突出しており、このカスケード41の先端には、カスケードカバー46が取り付けられている。
【0016】
カスケード収容部40の外周面には、第1ポート401が設けられ、この第1ポート401には、継手402を介して上述のチューブ13が接続される。
【0017】
基端フランジ部42は、基部30の開放面を塞いだ状態で、基部30に固定されている。この基端フランジ部42には、上述のチューブ13が挿通される複数のチューブ挿通孔421が形成されている。
【0018】
先端フランジ部43の基端面には、複数の第2ポート431が円環状に配列されて設けられる。これら第2ポート431には、それぞれ、継手432を介して、上述のチューブ13が接続される。
また、先端フランジ部43の外周面には、全周に亘って突起434が形成されている。
【0019】
図4は、先端フランジ部43の正面図である。
先端フランジ部43の先端面には、第1流路の端面としての第3ポート433が円環状に配列されて設けられる。これら第3ポート433は、先端フランジ部43の先端面に面一で露出して設けられ、第1流路としての通路435を通して、第2ポート431および第1ポート401のそれぞれに連通する。
なお、図3に示す第2ポート431は、カスケード41が収容された貫通孔44に連通し、残る第2ポートは、図示しないが、第3ポート433に連通する。
また、先端フランジ部43の先端面の外周側には、位置決めピン436が突出して設けられている。
【0020】
図3に戻って、連結リング50は、円筒状であり、連結リング50の基端側の内周面には、全周に亘って突起51が形成されている。また、連結リング50の先端側の内周面には、ねじ部52が形成されている。
連結リング50の突起51が先端フランジ部43の突起435に係止することで、連結リング50の先端側への移動が規制されるとともに、回転自在に保持される。
【0021】
複数のチューブ13は、透過性を有しており、図示しない光供給源、圧縮エア供給源、および塗料供給源から、ロボットアーム3のフランジ面を通り、基部30の内部まで延びている。これらのチューブ13は、さらに、カスケード収容部40のチューブ挿通孔421に挿通されて、カスケード収容部40の外周面上に沿って延びて、第2ポート431や第1ポート401に接続される。
【0022】
光供給源から供給される光信号、圧縮エア供給源から供給されたエア、および塗料供給源から供給される液体塗料は、これらチューブ13を流通して、第2ポート431に到達し、その後、通路435を通って、第4ポート201に到達する。
なお、図示しないが、光供給源から延びるチューブ13には、光ファイバが収容されており、この光ファイバを通して、光信号が伝達される。
【0023】
カバー部12は、円筒形状であり、ボディ部本体11に沿って2分割可能となっている。具体的には、カバー部12は、半円筒形状の2つのカバー片12A、12Bで構成される。
これらカバー片12A、12Bの先端縁は、連結リング50の内周面とボディ部本体11の先端フランジ部43の外周面との間に挿入されている。また、これらカバー片12A、12Bの基端縁は、ボディ部本体11のホルダ34の先端側の凹部35に嵌合している。
【0024】
ヘッド部20は、先端部分が屈曲した略くの字形状であり、図示しないエアモータと、このエアモータにより回転駆動される回転霧化頭21と、回転霧化頭21に塗料を供給する図示しない塗料供給部と、回転霧化頭21を囲繞するエアキャップ22と、が設けられている(図2参照)。
ヘッド部20の基端側の外周面には、ねじ部23が形成されており、このヘッド部20のねじ部23には、連結リング50のねじ部52が螺合している。
【0025】
ヘッド部20の基端面には、ボディ部10の先端フランジ部43に設けられた第3ポート433に対応する位置に、それぞれ、第2流路の端面としての第4ポート201が配列されている。これら第4ポート201は、ヘッド部20の基端面に面一で露出して設けられ、第2流路としての通路202を通して、上述の塗料供給部、エアモータ、回転霧化頭21、およびエアキャップ22に連通する。
【0026】
これにより、第4ポート201に到達した光信号、エア、および液体塗料は、これら通路202を流通して、塗料供給部、エアモータ、回転霧化頭21、およびエアキャップ22に供給されることになる。また、塗料供給部、エアモータ、回転霧化頭21、およびエアキャップ22から出力されて通路202を流通する光信号、エア、および液体塗料は、第4ポート201に到達し、通路435およびチューブ13に流通することになる。
【0027】
さらに、ヘッド部20の基端面には、第4ポート201のそれぞれを囲む複数のOリング204が装着されている。
【0028】
塗料供給部には、塗料が流通する通路とエアが流通する通路とが接続される。この塗料供給部には、塗料が流通する通路を開閉する塗料弁が設けられており、この塗料弁は、エアの圧力により開閉される。
【0029】
エアモータには、エアが流通する通路が接続されており、このエアモータにエアを供給することにより、回転霧化頭21を高速回転させることができる。さらに、このエアモータには、光信号が伝達される光ファイバが接続されており、この光ファイバを通して、エアモータの回転数が光信号として出力される。
エアキャップ22には、エアが流通する通路が接続されており、このエアキャップ22に供給するエア流量を変化させることで、エアキャップ22から噴射するエアの流量が変化し、塗装範囲を調整する。
【0030】
ヘッド部20の基端面には、カスケード41の先端側が挿入される挿入部としてのカスケード挿入部24と、位置決めピン436が挿入される位置決めピン挿入穴203が形成されている。
カスケード挿入部24の底面には、電力伝送路26の接続端子25が設けられており、この接続端子25は、回転霧化頭21に電気的に接続されている。この電力伝送路26により、カスケードから出力された電力は、回転霧化頭21に伝送される。
【0031】
塗装装置1の動作について説明する。
まず、エア供給源からエアモータにエアを供給して、回転霧化頭21を高速で回転させる。さらに、カスケード41により低電圧電源からの電流を昇圧して、回転霧化頭21に高電圧の電流を印加する。
【0032】
そして、塗料供給部にエアを供給して塗料弁を開放し、この塗料供給部から回転霧化頭21の内周面に塗料が吐出され、この塗料は、高電圧が印加されて帯電し、回転霧化頭21の遠心力によって霧化状態となり、回転霧化頭21からワークに向かって噴霧される。これにより、静電塗装が行われる。
【0033】
次に、塗装装置1のボディ部10とヘッド部20とを接続する手順について、図5を参照しながら説明する。
まず、ボディ部10とヘッド部20とを互いに接近させて、カスケード41の突出した部分をカスケード挿入部24に挿入するとともに、位置決めピン436を位置決めピン挿入穴203に挿入する。これにより、これらボディ部10とヘッド部20との相対位置が位置決めされる。
【0034】
その後、連結リング50を回転させることにより、連結リング50のねじ部52をヘッド部20のねじ部23に螺合する。
すると、ヘッド部20の基端面とボディ部10の先端面とが当接し、第3ポート433は第4ポート201に接続される。このとき、ヘッド部20の基端面に取り付けられたOリング204がボディ部10の先端面に密着し、第3ポート433と第4ポート201との間の気密性が保持される。
また、同時に、カスケード挿入部24に挿入されたカスケード41の先端面は、カスケード挿入部24の接続端子25に接続される。
【0035】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ボディ部10とヘッド部20とを互いに接近させて、連結リング50により、これらボディ部10とヘッド部20とを固定する。
これにより、カスケード41の突出した部分をカスケード挿入部24に挿入して、カスケード41を電力伝送路の接続端子25に接続するとともに、第3ポート433は第4ポート201に接続する。よって、カスケード41から出力される電力を、電力伝送路を介して伝送できる。また、チューブ13および通路435に流通する光信号、エア、および塗料を、通路202に流通させたり、通路202に流通する光信号、エア、塗料をチューブ13および通路435に流通させたりできる。
このように、塗装装置1をボディ部10とヘッド部20とに2分割したので、ロボットアーム3に塗装装置1を取り付けても、塗装装置1の修理や調整の際に、ロボットアーム3から塗装装置1の全体を取り外す必要はなく、ヘッド部20のみを取り外すことができ、塗装装置の修理や調整が容易になる。
【0036】
(2)ヘッド部20の基端面にOリング204を設けたので、Oリング204の装着状態を容易に確認でき、第3ポート433と第4ポート201との間の気密性を容易に保持できる。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗装装置の動作を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る塗装装置の側面図である。
【図3】前記実施形態に係る塗装装置の部分拡大断面図である。
【図4】前記実施形態に係る塗装装置の先端フランジ部の正面図である。
【図5】前記実施形態に係る塗装装置のボディ部とヘッド部とを接続する手順を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 塗装装置
21 回転霧化頭
10 ボディ部
13 チューブ(第1流路)
20 ヘッド部
24 カスケード挿入部(挿入部)
26 電力伝送路
50 連結リング(連結手段)
41 カスケード
201 第4ポート(第2流路の端面)
202 通路(第2流路)
433 第3ポート(第1流路の端面)
435 通路(第1流路)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で当該回転霧化頭に液体塗料を供給することで、液体塗料を帯電させて霧化し、静電塗装を行う塗装装置であって、
ボディ部と、当該ボディ部に着脱可能なヘッド部と、前記ボディ部および前記ヘッド部を連結する連結手段と、を備え、
前記ボディ部には、電力を昇圧して出力するカスケードと、前記回転霧化頭の回転数を表す光信号、エア、および塗料のうち少なくとも1つが流通する複数の第1流路と、が設けられ、
前記ヘッド部には、前記回転霧化頭と、前記カスケードから出力される電力を伝送する電力伝送路と、第2流路と、が設けられ、
前記ボディ部の接続面には、前記カスケードの少なくとも一部が突出するとともに、前記第1流路の端面が露出し、
前記ヘッド部の接続面には、前記電力伝送路が接続されかつ前記カスケードの突出した部分が挿入される挿入部が形成されるとともに、前記第1流路の端面に接続される前記第2流路の端面が露出することを特徴とする塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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