説明

塗装設備

【課題】排気利用型の塗装設備において消費エネルギを効果的に低減する。
【解決手段】第1塗装室2からの排気空気Ea′を洗浄水Wと気液接触させて浄化する湿式浄化手段9aを備え、この湿式浄化手段9aによる浄化排気空気Ea′を換気用空気として第2塗装室4に供給する第2給気手段16,17a,17bを設ける塗装設備において、湿式浄化手段9aによる浄化排気空気Ea′をヒートポンプ18の吸熱機能により冷却して除湿する冷却除湿手段20と、この冷却除湿手段20により除湿した浄化排気空気Ea′を冷却除湿手段20での空気冷却に伴うヒートポンプ18の放熱機能により加熱して再熱する再熱手段21とを設け、これら除湿及び再熱により温湿度調整した浄化排気空気Ea″(Sb)を第2給気手段16,17a,17bにより第2塗装室4に供給する構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装設備に関し、空調機による調整空気を第1塗装室に供給する給気手段と、この給気手段による空気供給に伴い前記第1塗装室から排出される排気空気を洗浄水と気液接触させて浄化する湿式浄化手段とを備え、この湿式浄化手段による浄化排気空気を換気用空気として第2塗装室に供給する第2給気手段を設ける塗装設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に塗装設備では、塗装室から排出される排気空気に未塗着の浮遊塗料ミストなどが含まれることに対し、この排気空気を湿式浄化手段により洗浄水と気液接触させて浄化した上で外部に排出することが多い。
【0003】
これに対し、本発明に係る塗装設備は、第1塗装室から排出される排気空気を湿式浄化手段により浄化した上で第2給気手段により換気用空気として第2塗装室に供給し、これにより、第1塗装室からの排気空気を換気用空気として物質面において第2塗装室で再利用するとともに、その排気空気が保有する温熱や冷熱(換言すれば、排気空気の残存温熱や残存冷熱)の利用も図るものである。
【0004】
ところで従来、この種の排気利用形式の塗装設備では、第2塗装室に供給する換気用空気の一部についてのみ湿式浄化手段による浄化排気空気を利用し、浄化排気空気のうち余剰となるかなりの部分は従前と同様、外部に排出していた。
【0005】
そして、この一部排気利用形式の塗装設備では、第2塗装室への浄化排気空気の供給に併行して、第1塗装室と同様、第2塗装室用の空調機により調整した外部空気(例えば温湿度調整した新鮮外気など)を第2塗装室に供給し、この調整外部空気の供給により第2塗装室の室内を所要の温湿度状態に調整するようにしていた(特許文献1参照、特に、第4頁左上欄第2行目〜右上欄下から第8行目、並びに、第3図及び第4図)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−103564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した一部排気利用形式の塗装設備では、湿式浄化手段での洗浄水との気液接触で高湿になった浄化排気空気(即ち、大きな除湿負荷となる空気)が供給される第2塗装室の室内を所要の温湿度状態に調整するのに、第2塗装室用の空調機に未だ大容量の空調機が必要で、第2塗装室用の空調機に付随する冷凍機等の冷熱源機器並びにボイラやバーナあるいは電気ヒータ等の温熱源機器にも大容量のものが必要になって、第2塗装室の温湿度調整に要する消費エネルギが嵩むとともに設備コストも嵩み、この点で、全体として排気空気の利用効果があまり得られない問題があった。
【0008】
一方、この問題に対し、湿式浄化手段による浄化排気空気の利用を促進するため、第2塗装室に供給する換気用空気の全量(ないしは大部分)について湿式浄化手段による浄化排気空気を利用する形式を採るとともに、第2塗装室に供給する浄化排気空気を冷却して除湿する除湿器、及び、その除湿に続き浄化排気空気を加熱して再熱する再熱器を設け、これら除湿及び再熱により温湿度調整した浄化排気空気を第2塗装室に供給することで、外部空気を調整対象とする第2塗装室用の空調機を省きながら、第2塗装室の室内を所要の温湿度状態に調整するようにした全量排気利用形式の塗装設備もある。
【0009】
しかしながら、この全量排気利用形式の塗装設備にしても、湿式浄化手段での洗浄水との気液接触で高湿になった大量の浄化排気空気を除湿する除湿器及びその除湿後の大量の浄化排気空気を再熱する再熱器に大容量のものが必要で、除湿器に付随する冷凍機等の冷熱源機器、並びに、再熱器に付随するボイラやバーナあるいは電気ヒータ等の温熱源機器の夫々に大容量のものが必要になって、やはり第2塗装室の温湿度調整に要する消費エネルギが嵩むとともに設備コストが嵩むものであった。
【0010】
また、この全量排気利用形式のものでは、湿式浄化手段による浄化排気空気の保有温熱、特に高湿の浄化排気空気が大量に保有する潜熱分(元を辿れば第1塗装室からの排気空気の保有温熱)を除湿器及びそれに付随の冷熱源機器を通じて外部に廃棄する形態となり、これらのことから、この全量排気利用形式の塗装設備にしても、やはり排気空気の利用効果が未だ十分に得られない問題があった。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な空調方式を採ることで上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は塗装設備に係り、その特徴は、
空調機による調整空気を第1塗装室に供給する給気手段と、この給気手段による空気供給に伴い前記第1塗装室から排出される排気空気を洗浄水と気液接触させて浄化する湿式浄化手段とを備え、
この湿式浄化手段による浄化排気空気を換気用空気として第2塗装室に供給する第2給気手段を設ける塗装設備であって、
前記湿式浄化手段による浄化排気空気をヒートポンプの吸熱機能により冷却して除湿する冷却除湿手段と、
この冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気を前記冷却除湿手段での空気冷却に伴う前記ヒートポンプの放熱機能により加熱して再熱する再熱手段とを設け、
これら冷却除湿手段による除湿及び再熱手段による再熱により温湿度調整した浄化排気空気を前記第2給気手段により前記第2塗装室に供給する構成にしてある点にある。
【0013】
つまり、この構成によれば、湿式浄化手段による浄化排気空気(即ち、洗浄水との気液接触で浄化された第1塗装室からの排気空気)を換気用空気として第2塗装室に供給するのに、冷却除湿手段による除湿及びそれに続く再熱手段による再熱により温湿度調整した浄化排気空気を第2塗装室に供給するから、前述した全量排気利用形式の塗装設備と同様、第2塗装室に供給する換気用空気の全量(ないしは、その一部にしても割合的に大きい量)について湿式浄化手段による浄化排気空気を利用する形態を採りながら、温湿度調整した大量の浄化排気空気の供給により第2塗装室を所要の温湿度状態に調整することができる。
【0014】
また、このように全量排気利用形式の塗装設備と同様の空調形態を採りながらも、湿式浄化手段による浄化排気空気を除湿及び再熱するのに、ヒートポンプの吸熱機能(即ち、冷媒の気化熱奪取で生じる吸熱機能)により浄化排気空気を冷却して除湿するとともに、その空気冷却に伴うヒートポンプの放熱機能(即ち、冷媒の凝縮熱放出で生じる放熱機能)により除湿後の浄化排気空気を加熱して再熱するから、換言すれば、ヒートポンプの吸熱機能により浄化排気空気から汲み上げた熱をもって除湿後の浄化排気空気を再熱するから、前述した全量排気利用形式の塗装設備や一部排気利用形式の塗装設備で要した冷凍機等の大容量の冷熱源機器及びボイラやバーナあるいは電熱ヒータなどの大容量の温熱源機器を不要化(ないしは大巾に小容量化)して、冷温熱源機器の装備として実質的にヒートポンプの装備だけで済ませることができる。
【0015】
そしてまた、この構成によれば、湿式浄化手段による浄化排気空気の保有温熱、特に洗浄水との気液接触で高湿となった浄化排気空気が大量に保有する潜熱分を冷却除湿手段での冷却除湿に伴いヒートポンプにより回収して、その回収熱を再熱手段での再熱で除湿後の浄化排気空気に戻す形態(換言すれば、大量の保有潜熱分が顕熱化された状態で第2塗装室の温湿度調整に活かされる形態)となることから、第2塗装室に供給する換気用空気の全量(ないしは割合的に大きい量)について浄化排気空気を利用することと相俟って、湿式浄化手段による浄化排気空気の利用度(即ち、湿式浄化手段により浄化した第1塗装室からの排気空気の利用度)も一層効果的に高めることができる。
【0016】
これらのことから、上記構成によれば、第1塗装室からの排気空気の物質面での利用効果や保有熱量面での利用効果を十分に発揮させた状態で、第2塗装室の温湿度調整に要する消費エネルギを効果的に低減することができ、また、設備コストの低減や省スペース化も効果的に実現することができる。
【0017】
なお、上記構成の実施においてヒートポンプには、圧縮式ヒートポンプを初め吸収式や吸着式など、各種形式のヒートポンプを使用することができるが、発生冷熱と発生温熱との温度差、即ち、冷却除湿手段での空気冷却温度(装置露点温度)と再熱手段での空気加熱温度(再熱温度)との温度差を大きく採ることができる点では、CO2冷媒の超臨界型の圧縮式ヒートポンプを使用するのがよい。
【0018】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再熱手段は、前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の一部を前記ヒートポンプの放熱機能により加熱し、その加熱空気を前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の残部に混合する構成にしてある点にある。
【0019】
つまり、冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気をヒートポンプの放熱機能により加熱するには、除湿後の浄化排気空気の全量をヒートポンプ冷媒とフィンチューブ式やプレート式などの熱交換器により熱交換させる、あるいは、除湿後の浄化排気空気の全量をヒートポンプの放熱機能により加熱した熱媒液とフィンチューブ式やプレート式などの熱交換器により熱交換させる方式が一般的であるが、この方式では、熱交換器通過過程のいわゆるバイパスファクタを小さくして加熱効率を高く確保しようとすると、熱交換器における浄化排気空気の通気抵抗が大きくなって浄化排気空気の搬送動力が嵩み、また、この搬送動力の増大を回避するには熱交換器が大型化する。
【0020】
これに対し、上記構成では、除湿後の浄化排気空気の一部をヒートポンプの放熱機能により熱交換器で集中的に加熱し、その加熱空気を除湿後の浄化排気空気の残部に混合することで除湿後の浄化排気空気の残部も加熱し、これにより、冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の全量を加熱して再熱する処理形態を採る。
【0021】
即ち、このように除湿後の浄化排気空気の残部については加熱空気の混合により加熱する形態を採ることで、除湿後の浄化排気空気の一部をヒートポンプの放熱機能により熱交換器で加熱する部分については、バイパスファクタを小さくして加熱効率を高く確保し、また、熱交換器を小型なものにしながらも、再熱手段の全体としては、除湿後の浄化排気空気の通気抵抗を小さくして浄化排気空気の搬送動力を小さいものにすることができ、また、そのことで、除湿後の浄化排気空気の一部を加熱する熱交換器を含めて再熱手段を小型化することができる。
【0022】
そしてまた、加熱空気の混合により除湿後の浄化排気空気の残部を加熱するのであれば、熱交換器において生じるバイパスファクタのない状態で、除湿後の浄化排気空気の残部を効率良く加熱することができるから、上記の如く除湿後の浄化排気空気の一部をヒートポンプの放熱機能により熱交換器で加熱する部分のバイパスファクタを小さくして加熱効率を高く確保することと相俟って、再熱手段全体としての加熱効率も高く確保することができ、これにより、加熱能率が低いことで生じるエネルギロスなども効果的に抑止することができる。
【0023】
なお、上記構成の実施において、除湿後の浄化排気空気に加熱空気を混合するのに、加熱空気を多数の噴出孔から除湿後の浄化排気空気に対し均等に分散させた状態で供給して混合するようにすれば、除湿後の浄化排気空気を加熱空気の混合段階から均一に加熱することができ、これにより、第2塗装室に対する温湿度調整の機能を温湿度分布の均一性の面で一層高めることができる。
【0024】
また、上記構成の実施において、ヒートポンプの放熱機能により加熱する除湿後の浄化排気空気の一部を一定量に保持する(換言すれば、除湿後の浄化排気空気の残部に混合する加熱空気を一定量に保持する)ようにすれば、その一部空気量(加熱空気量)が変化することで再熱手段において生じる送出空気温度の不安定化や送出空気量の不安定化などを防止することができ、第2塗装室に対する温湿度調整の機能を安定性の面でも一層高めることができる。
【0025】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再熱手段は、前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の一部と外部空気との混合空気を前記ヒートポンプの放熱機能により加熱し、その加熱混合空気のうちの浄化排気空気の混合量に相当する一部量を前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の残部に混合するとともに、前記加熱混合空気の残部を外部に排出する構成にしてある点にある。
【0026】
つまり、この構成によれば、基本的に上記第2特徴構成と同様の機能を得ることができるが、それに加えて、ヒートポンプの放熱量を変更することなく再熱手段での空気加熱量(即ち、再熱量)を種々に設定変更することが可能になる。
【0027】
即ち、圧縮式ヒートポンプでは圧縮機仕事量の分だけ吸熱量よりも放熱量の方が大きくなるが、一般に空気を冷却除湿に続いて再熱する一連の処理では除湿工程での空気冷却量と再熱工程での空気加熱量とは等しいことが多く、この為、圧縮式ヒートポンプの吸熱量と除湿工程での空気冷却量とが平衡するように圧縮式ヒートポンプの能力を設定した場合には、圧縮式ヒートポンプの放熱量が再熱工程での空気加熱量に対して過剰になる。
【0028】
また、これとは別に第2塗装室の温湿度調整上の理由など、種々の理由で再熱工程での空気加熱量をヒートポンプの放熱量より小さく設定することが必要になる場合もある。
【0029】
このことに対し、上記構成によれば、ヒートポンプの放熱機能により加熱した加熱混合空気のうちの浄化排気空気の混合量に相当する一部量を残部空気加熱用として除湿後の浄化排気空気の残部に混合し、これにより、前述の如く除湿後の浄化排気空気の残部も加熱して除湿後の浄化排気空気の全量を加熱するが、加熱混合空気の残部(即ち、加熱混合空気のうちの外部空気の混合量に相当するは量)は外部に排出するから、その排出による熱廃棄分(即ち、外部に排出する加熱混合空気の残部がヒートポンプの放熱機能による加熱で得た熱量分)だけ、再熱手段での空気加熱量をヒートポンプの放熱量より小さくすることができる。
【0030】
従って、ヒートポンプの放熱機能により加熱する混合空気における浄化排気空気(除湿後の浄化排気空気の一部)と外部空気との混合比を変更すれば、ヒートポンプの放熱量を変更することなく、ヒートポンプの放熱量以下の範囲で再熱手段における空気加熱量(再熱量)を種々に設定変更することができる。
【0031】
そしてまた、この構成によれば、冷却除湿手段での空気冷却量の変化に応じたヒートポンプ能力の変更(ヒートポンプ吸熱量の変更)など、何らかの要因でヒートポンプの能力を変更した場合には、それに伴うヒートポンプの放熱量変化(混合空気加熱量の変化)に伴い外部への廃棄熱量も変化することから、ヒートポンプの能力変更にかかわらず再熱手段での空気加熱量をヒートポンプの放熱量より所定割合だけ小さくした状態を維持することもできる。
【0032】
なお、上記構成の実施において、混合空気における浄化排気空気と外部空気との混合比を変更するのに、浄化排気空気の混合量は一定に保持して、外部空気の混合量変更のみにより混合比を変更するようにすれば、前述と同様、浄化排気空気の混合量(換言すれば、除湿後の浄化排気空気の残部に混合する加熱空気量)が変化することで再熱手段において生じる送出空気温度の不安定化や送出空気量の不安定化などを防止することができ、第2塗装室に対する温湿度調整の機能をその安定性の面で一層高めることができる。
【0033】
また、上記構成の実施において、外部へ排出する加熱混合空気の残部が保有する温熱(即ち、元々はヒートポンプ放熱量の一部)を他部において回収利用するようにすれば、設備全体のエネルギ効率を一層高めることができる。
【0034】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記冷却除湿手段は、前記ヒートポンプの吸熱機能により貯留熱媒液を所定温度に冷却する熱媒液槽と、
この熱媒液槽との間で循環させる熱媒液と前記湿式浄化手段による浄化排気空気とを熱交換させて浄化排気空気を冷却する空気冷却器と、
この空気冷却器に対する熱媒液の供給量を調整する流量調整手段とを備える構成にしてある点にある。
【0035】
つまり、この構成では、上記流量調整手段により空気冷却器に対する熱媒液の供給量を調整することで、空気冷却器での空気冷却量を調整して冷却除湿手段での浄化排気空気の除湿量を調整するが、上記の如く空気冷却器との間で循環させる熱媒液を熱媒液槽に貯留して、この貯留熱媒液をヒートポンプの吸熱機能により所定温度に冷却する構成にすれば、流量調整手段による熱媒液供給量の調整で生じる空気冷却器での空気冷却量の変化に対し熱媒液槽における貯留熱媒液の保有冷熱をもって緩衝機能させることができる。
【0036】
即ち、この緩衝機能により、空気冷却器での空気冷却量の変化に伴うヒートポンプ能力の急変を抑止することができてヒートポンプ運転の安定性を高めることができ、これにより、第2塗装室に対する温湿度調整の機能をその安定性の面でさらに高めることができる。
【0037】
また逆言すれば、上記緩衝機能により、ヒートポンプの能力変化の応答遅れを待たずに空気冷却器での空気冷却量を変更することができて、冷却除湿手段での空気除湿における除湿量調整の応答性(即応性)を高めることができ、これにより、第2塗装室に対する温湿度調整の機能をその応答性の面でも高くすることができる。
【0038】
なお、上記構成の実施において、熱媒液槽の貯留熱媒液をヒートポンプの吸熱機能により冷却するには、熱媒液槽とヒートポンプの吸熱器(冷媒側から言えば蒸発器)との間で熱媒液を循環させる方式や、ヒートポンプの吸熱器を熱媒液槽の貯留熱媒液中に浸漬配置する方式など、種々の方式を採用することができる。
【0039】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記冷却除湿手段は、前記ヒートポンプの吸熱機能と補助冷熱源機器の吸熱機能とにより前記湿式浄化手段による浄化排気空気を冷却する冷却側併用運転が可能な構成にしてある点にある。
【0040】
つまり、この構成によれば、ヒートポンプの放熱量と再熱手段での空気加熱量とが平衡するようにヒートポンプの能力の設定してある状況下や、ヒートポンプの能力が上限に達している状況下など、ヒートポンプの能力を増大側に調整できない状況下においてヒートポンプの吸熱量が冷却除湿手段での空気冷却量に対して不足となることに対し、上記の冷却側併用運転を採用すれば、ヒートポンプ吸熱量の不足分を補助冷熱源機器の吸熱機能により賄うことができる。
【0041】
即ち、ヒートポンプの能力を増大側に調整できない状況下においても冷却除湿手段における空気冷却量の増大を可能にして冷却除湿手段での浄化排気空気の除湿量を増大させることができ、これにより、第2塗装室の温湿度調整において湿度の調整機能を一層高めることができる。
【0042】
なお、上記構成の実施においては、冷却側併用運転を常時的に実施して、冷却除湿手段での空気冷却量の変化に対してはヒートポンプの吸熱量と補助冷熱源機器の吸熱量とのいずれか一方又は両方を調整する方式、あるいは、ヒートポンプの単独運転では冷却除湿手段での空気冷却量を賄えない状態に至ったとき冷却側併用運転を実施する方式のいずれを採用してもよい。
【0043】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再熱手段は、前記ヒートポンプの放熱機能と補助温熱源機器の放熱機能とにより前記冷却除湿手段による除湿後の浄化排気空気を加熱する加熱側併用運転が可能な構成にしてある点にある。
【0044】
つまり、この構成によれば、ヒートポンプの吸熱量と冷却除湿手段での空気冷却量とが平衡するようにヒートポンプの能力の設定してある状況下や、ヒートポンプの能力が上限に達している状況下など、ヒートポンプの能力を増大側に調整できない状況下においてヒートポンプの放熱量が再熱手段での空気加熱量に対して不足となることに対し、上記の加熱側併用運転を採用すれば、ヒートポンプ放熱量の不足分を補助温熱源機器の放熱機能により賄うことができる。
【0045】
即ち、ヒートポンプの能力を増大側に調整できない状況下においても再熱手段における空気加熱量の増大を可能にして再熱手段での浄化排気空気の再熱量を増大させることができ、これにより、第2塗装室の温湿度調整において温度の調整機能を一層高めることができる。
【0046】
なお、上記構成の実施においては、加熱側併用運転を常時的に実施して、再熱手段での空気加熱量の変化に対してはヒートポンプの放熱量と補助冷熱源機器の放熱量とのいずれか一方又は両方を調整する方式、あるいは、ヒートポンプの単独運転では再熱手段での空気加熱量を賄えない状態に至ったとき加熱側併用運転を実施する方式のいずれを採用してもよい。
【0047】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ヒートポンプの放熱機能の一部により前記再熱手段において前記冷却除湿手段による除湿後の浄化排気空気を加熱し、
前記ヒートポンプの放熱機能の他部により前記空調機において前記第1塗装室に供給する空気を加熱する構成にしてある点にある。
【0048】
つまり、この構成によれば、ヒートポンプの放熱機能を第1塗装室に対する空調機での空気加熱にも利用(即ち、第1塗装室に供給する空気の調整にも利用)するから、ヒートポンプ駆動エネルギ(圧縮式ヒートポンプで言えば圧縮機駆動動力)の供給だけで低温熱源から高温熱源へ大量の熱を汲み上げて冷熱と温熱とを発生できるという消費エネルギ面でのヒートポンプの利点を一層活かした形態にして、塗装設備の消費エネルギを一層効果的に低減することができる。
【0049】
本発明の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ヒートポンプの吸熱機能の一部により前記冷却除湿手段において前記湿式浄化手段による浄化排気空気を冷却し、
前記ヒートポンプの吸熱機能の他部により前記空調機において前記第1塗装室に供給する空気を冷却する構成にしてある点にある。
【0050】
つまり、この構成によれば、ヒートポンプの吸熱機能を第1塗装室に対する空調機での空気冷却にも利用(即ち、第1塗装室に供給する空気の調整にも利用)するから、上記第7特徴構成と同様、ヒートポンプ駆動エネルギの供給だけで低温熱源から高温熱源へ大量の熱を汲み上げて冷熱と温熱とを発生できるという消費エネルギ面でのヒートポンプの利点を一層活かした形態にして、塗装設備の消費エネルギを一層効果的に低減することができる。
【0051】
なお、第7,第8特徴構成に代え、ヒートポンプの放熱機能の他部やヒートポンプの吸熱機能の他部を第1塗装室に対する空調機での空気加熱や空気冷却以外に利用することも可能であるが、これに比べ、上記第7,第8特徴構成であれば、冷温熱の回収利用系を第1塗装室と第2塗装室との間で完結することができて、冷温熱の回収利用系を簡素化することができ、この点、塗装設備の設備構成を簡素化ないしコンパクト化する上で一層有利である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】塗装設備の構成図
【図2】第1実施形態を示すヒートポンプ周りの回路図
【図3】第2実施形態を示すヒートポンプ周りの回路図
【図4】他の実施形態を示す要部の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0053】
〔第1実施形態〕
図1は塗装設備を示し、この塗装設備では、搬送手段1により所定ピッチで順次に搬送される被塗物B(本例では自動車ボディ)を作業員が塗装ガンを用いて吹き付け塗装するマニュアル塗装作業室としての第1塗装室2を設けるとともに、この第1塗装室2での吹き付け塗装に続いて、搬送手段1により順次に搬送される被塗物Bを塗装ロボット3により吹き付け塗装するロボット塗装作業室としての第2塗装室4を設けてある。
【0054】
各塗装室2,4の天井部には給気チャンバ5a,5bを設け、これら給気チャンバ5a,5bに供給される調整空気Sa,Sbを天井フィルタ6a,6bを通じて天井部の全面から層流状に各塗装室2,4に供給することで、各塗装室2,4を換気するとともに各塗装室2,4の室内を塗装作業に適した所要の温湿度状態に調整する。
【0055】
また、各塗装室2,4の下方には、天井部からの調整空気Sa,Sbの供給に伴い各塗装室2,4から格子床7a,7bを通じて排出される排気空気Ea,Ebを洗浄水Wとの合流状態で絞り路8a,8bに高速通過させて洗浄水Wと激しく気液接触させることで、排気空気Ea,Ebに含まれる未塗着の浮遊塗料ミストなどを洗浄水Wに捕捉させて排気空気Ea,Ebを浄化する湿式浄化装置9a,9b(湿式浄化手段の一例)を設けてある。
【0056】
なお、塗料ミストを捕捉した洗浄水Wは、それに含まれる塗料分を除去した上で再び湿式浄化装置9a,9bに供給して再使用するようにしてある。
【0057】
第1塗装室2の給気チャンバ5aには空調機10により温湿度調整した調整空気Saを給気ファン11により給気路12を通じて供給するようにしてあり、これら給気ファン11及び給気路12は空調機10による調整空気Saを第1塗装室2に供給する給気手段を構成する。
【0058】
そして、空調機10には、空気取入口10a,プレバーナ10b,フィルタ10c,ワッシャ10d,空気冷却器10e,アフターバーナ10f,蒸気加湿器10g,空気送出口10hを、その順に空気流れ方向に並べて装備してある。
【0059】
つまり、冷房期には、この空調機10において、空気取入口10aから取り入れた外部空気A(一般的には新鮮外気)に対し、ワッシャ10dによる断熱加湿と、空気冷却器10eによる冷却除湿と、アフターバーナ10fによる再熱(加熱)とを、その順に施す冷房モード運転を実施することで、設定温湿度(設定乾球温度ta,設定絶対湿度xa)の調整空気Saを生成し、この生成調整空気Saを空気送出口10hから送出して給気路12を通じ第1塗装室2に供給する。
【0060】
また、暖房期には、この空調機10において、空気取入口10aから取り入れた外部空気Aに対し、プレバーナ10bによる予熱と、ワッシャ10dによる断熱加湿と、アフターバーナ10fによる加熱と、蒸気加湿器10gによる加湿とを、その順に施す暖房モード運転を実施することで、設定温湿度ta,xaの調整空気Saを生成し、この生成調整空気Saを空気送出口10hから送出して給気路12を通じ第1塗装室2に供給する。
【0061】
なお、一般に冷房期と暖房期とでは調整空気Saの設定温湿度ta,xaを異ならせる場合が多く、また、冷房モード運転又は暖房モード運転を選択的に実施する中間期についても調整空気Saの設定温湿度ta,xaを異ならせる場合が多い。
【0062】
13は循環路13aを通じて空気冷却器10eに供給する空気冷却用の熱媒液を冷却する冷凍機、14はアフターバーナ10f及びプレバーナ10bに対する燃料供給路、15は蒸気加湿器10gに対する蒸気供給路であり、13b,14a,14b,15aは各路13a,14,15に装備した流量調整用の弁装置である。
【0063】
即ち、これら弁装置13b,14a,14b,15aにより空気冷却器10eに対する冷却熱媒液Cの供給量、アフターバーナ10f及びプレバーナ10bの夫々に対する燃料供給量、蒸気加湿器10gに対する蒸気供給量を調整して、空気冷却器10eによる空気冷却量、アフターバーナ10f及びプレバーナ10bの夫々による空気加熱量、蒸気加湿器10gによる空気加湿量を調整することで、生成調整空気Saの温湿度を設定温湿度ta,xaに調整する。
【0064】
なお、調整空気Saの供給による第1塗装室2の換気については、その換気回数をかなり大きく設定してあることから、上記調整空気Saの供給により第1塗装室2の室内は調整空気Saの設定温湿度ta,xaとほぼ同じ温湿度状態に調整保持される。
【0065】
一方、第2塗装室4については、第1塗装室2の湿式浄化装置9aから送出される浄化排気空気Ea′(即ち、湿式浄化装置9aで塗料ミスト等が除去されて浄化された第1塗装室2からの排気空気)を第2塗装室4の給気チャンバ5bに導く中継路16を設け、この中継路16に中継ファン17a及び第2給気ファン17bを介装してある。
【0066】
つまり、第2塗装室4に供給する換気用空気の全量について、湿式浄化装置9aによる浄化排気空気Ea′を換気用空気として中継路16を通じ第2塗装室4に供給するようにしてあり、中継路16、中継ファン17a、第2給気ファン17bは、湿式浄化装置9aによる浄化排気空気Ea′を換気用空気として第2塗装室4に供給する第2給気手段を構成する。
【0067】
そして、このように湿式浄化装置9aによる浄化排気空気Ea′を第2塗装室4に供給することで、湿式浄化装置9aによる浄化排気空気Ea′を換気用空気として物質面において第2塗装室4で再利用するとともに、その浄化排気空気Ea′が保有する冷温熱も第2塗装室4において利用するようにしてある。
【0068】
また中継路16において中継ファン17aと第2給気ファン17bとの間には、残存異物除去用のフィルタ19、及び、そのフィルタ19を通過した浄化排気空気Ea′をヒートポンプ18(本例ではCO2冷媒の超臨界型の圧縮式ヒートポンプ)の吸熱機能により冷却して除湿する冷却除湿装置20(冷却除湿手段の一例)を介装するとともに、その冷却除湿装置20で除湿した浄化排気空気Ea′を加熱して再熱する再熱装置21(再熱手段の一例)を装備してある。
【0069】
即ち、第2塗装室4については、これら冷却除湿装置20による除湿、及び、再熱装置21による再熱により温湿度調整した浄化排気空気Ea″を調整空気Sbとして供給することで、室内を所要の温湿度状態に調整する。
【0070】
なお、超臨界型の圧縮式ヒートポンプでは、冷媒rの凝縮工程が臨界点よりも高圧域にあって明確な冷媒凝縮現象が見られないが、本書では便宜上、超臨界型の圧縮式ヒートポンプにおいて一般圧縮式ヒートポンプの凝縮工程に相当する工程部分で生じる冷媒現象を一般の圧縮式ヒートポンプと同様に凝縮と称する。
【0071】
冷却除湿装置20には、図2に示すように、ヒートポンプ18の吸熱機能により貯留熱媒液Cを所定温度に冷却する熱媒液槽22、及び、この熱媒液槽22との間で循環路23を通じて循環ポンプ24により熱媒液Cを循環させる空気冷却器25を備えさせるとともに、この空気冷却器25に対する熱媒液Cの供給量を調整する分流型三方弁からなる弁装置26(流量調整手段の一例)を備えさせてある。
【0072】
つまり、この冷却除湿装置20は、空気冷却器25において浄化排気空気Ea′を冷却熱媒液Cと熱交換させることで冷却して除湿し、弁装置26により空気冷却器25に対する冷却熱媒液Cの供給量を調整して空気冷却器25での空気冷却量を調整することで浄化排気空気Ea′の除湿量を調整する構成にしてある。
【0073】
そして、熱媒液槽22の貯留熱媒液Cをヒートポンプ18の吸熱機能により冷却する構成としては、ヒートポンプ18の吸熱器18a(冷媒側から言えば蒸発器)と熱媒液槽22との間で循環ポンプ27により熱媒液Cを循環させる循環路28を設け、この循環路28での熱媒液循環において、熱媒液槽22から取り出した熱媒液Cをヒートポンプ18の吸熱器18aでヒートポンプ18における低圧側冷媒rと熱交換させて低圧側冷媒rの蒸発に伴う気化熱奪取により冷却し、その冷却熱媒液Cを熱媒液槽22に戻すことにより、熱媒液槽22の貯留熱媒液Cを冷却するようにしてある。
【0074】
また、本例の塗装設備では後述の如く、ヒートポンプ18の放熱量と再熱装置21での空気加熱量(再熱量)とを平衡させるようにヒートポンプ18の能力を調整する方式を採ることから、ヒートポンプ18の吸熱量が冷却除湿装置20での空気冷却量に対して不足となる状況も生じ得るが、これに対する対策として、熱媒液槽22との間で循環路29を通じ循環ポンプ30により熱媒液Cを循環させてヒートポンプ18とともに熱媒液槽22の貯留熱媒液Cを冷却する補助冷凍機31(補助冷熱源機器の一例)を設けてある。
【0075】
即ち、この補助冷凍機31を設けることにより、冷却除湿装置20の空気冷却器25においてヒートポンプ18の吸熱機能と補助冷凍機31の吸熱機能とにより浄化排気空気Ea′を冷却する冷却側併用運転を行ない、これにより、冷却除湿装置20での空気冷却量に対するヒートポンプ吸熱量の不足分を補助冷凍機31により賄うようにしてある。
【0076】
熱媒液槽22に対するヒートポンプ側の循環路28及び補助冷凍機側の循環路29には夫々、熱媒液槽22への熱媒液Cの戻し量を調整する分流型三方弁からなる弁装置32a,32bを設けてあり、熱媒液槽22における貯留熱媒液Cの温度を検出する温度センサ33の検出情報に基づき、弁制御器34により各循環路28,29の弁装置32a,32bを自動操作することで、熱媒液槽22における貯留熱媒液Cの温度を所定温度に調整するようにしてある。
【0077】
他方、再熱装置21には、同図2に示す如く、冷却除湿装置20で除湿した後の浄化排気空気Ea′の一部ea′を抽気ファン35により常時一定量だけ中継路16から取り出してヒートポンプ18の放熱器18b(冷媒側から言えば凝縮器)に導く抽気路36と、その取り出し一部空気ea′をヒートポンプ18の放熱器18bから中継路16における抽気路接続部よりも下流側の部分で戻す還気路37と、この還気路37を通じて戻る還気空気ea′を多数の噴出孔38aから除湿後の浄化排気空気Ea′の残部に対し均等に分散させた状態で噴出供給して混合する混合器38とを備えさせてある。
【0078】
つまり、この再熱装置21は、除湿後の浄化排気空気Ea′の一部ea′を抽気路36を通じヒートポンプ18の放熱器18bに導くことでヒートポンプ18における高圧側冷媒rと熱交換させて高圧側冷媒rの凝縮に伴う凝縮熱放出により加熱し、この加熱空気ea′を還気空気として還気路37を通じ混合器38により除湿後の浄化排気空気Ea′の残部に混合することで、除湿後の浄化排気空気Ea′の残部も加熱し、これにより、冷却除湿装置21で除湿した浄化排気空気Ea′の全量を再熱して、除湿による湿度調整に続き再熱により温度調整した浄化排気空気Ea″を生成する構成にしてある。
【0079】
中継路16における混合器38よりも下流側部分には、冷却除湿装置20及び再熱装置21により温湿度調整した浄化排気空気Ea″(即ち、第2塗装室4に供給する調整空気Sb)の温度t及び湿度xを検出する温度センサ39及び湿度センサ40を装備してあり、また、この塗装設備にはヒートポンプ18、冷却除湿装置20、再熱装置21を司る制御器として、これら温度センサ39及び湿度センサ40の検出情報に基づき、空気冷却器25に対する弁装置26を自動操作するとともに、ヒートポンプ18の能力(具体的には圧縮機回転数)をインバータ制御等により自動調整する第2塗装室用の空調制御器41を設けてある。
【0080】
そして、この第2塗装室用の空調制御器41は、湿度センサ40の検出情報に基づき空気冷却器25に対する弁装置26を調整することで、冷却除湿装置20による除湿量を調整して、第2塗装室4に供給する調整空気Sb(=Ea″)の湿度xを設定絶対湿度xbに調整し、また、温度センサ39の検出情報に基づきヒートポンプ18の能力を調整することで、再熱装置21において混合器38の噴出孔38aから噴出させる加熱空気ea′の温度を調整(即ち、再熱装置21による再熱量を調整)して、第2塗装室4に供給する調整空気Sb(=Ea″)の温度tを設定乾球温度tbに調整する構成にしてある。
【0081】
なお、第1塗装室2と同様、調整空気Sb(=Ea″)の供給による第2塗装室4の換気については、その換気回数をかなり大きく設定してあることから、上記調整空気Sbの供給により第2塗装室4の室内は調整空気Sbの設定温湿度tb,xbとほぼ同じ温湿度状態に調整保持される。
【0082】
調整空気Sb(=Ea″)の供給に伴い第2塗装室4から排出される排気空気Ebは第2塗装室4の湿式浄化装置9bにより浄化した上で、排気路42を通じ排気ファン43により外部に排出する。
【0083】
本例ではフィルタ19、冷却除湿装置20の空気冷却器25、再熱装置21の混合器38を一つの装置ケース44に内装した例を示したが、これらフィルタ19、空気冷却器25、混合器38を各別の装置ケースに内装した状態で中継路16に介在させるようにしてもよい。
【0084】
〔第2実施形態〕
上記の第1実施形態では、ヒートポンプ18の放熱量と再熱装置21での空気加熱量(再熱量)とを平衡させるようにヒートポンプ18の能力を調整する方式の塗装設備を示したが、この第2実施形態では、逆にヒートポンプ18の吸熱量と冷却除湿手段20での空気冷却量とを平衡させるようにヒートポンプ18の能力を調整する方式の塗装設備を示す。
【0085】
即ち、この第2実施形態では、図1に示す冷却除湿装置20を、図3に示す如く、ヒートポンプ18の吸熱器18aと空気冷却器25との間で循環路23′を通じて熱媒液Cを循環ポンプ24′により直接的に循環させる構成にしてある。
【0086】
即ち、この冷却除湿装置20では、循環路23′での熱媒液循環に伴いヒートポンプ18の吸熱器18aで冷却した熱媒液Cとフィルタ19を通過した浄化排気空気Ea′とを空気冷却器25において熱交換させることにより、浄化排気空気Ea′を冷却して除湿する。
【0087】
また、この冷却除湿装置20では、空気冷却器25に対する冷却熱媒液Cの供給量を調整する分流型三方弁からなる弁装置26′(流量調整手段の一例)を循環路23′に装備し、この弁装置26′により空気冷却器25への冷却熱媒液Cの供給量を調整することで、空気冷却器25での空気冷却量を調整して浄化排気空気Ea′の除湿量を調整する。
【0088】
一方、図1に示す再熱装置21については同図3に示す如く、図2に示した再熱装置21に対し、中継路16から抽気路36へ取り出した除湿後の浄化排気空気Ea′の一部ea′に対しフィルタ45aにより除塵した外部空気aを混合する混合路45と、還気路37を通じてヒートポンプ18の放熱器18bから中継路16側へ戻す混合空気ma(即ち、抽気路36へ取り出した浄化排気空気ea′と混合路45からの外部空気aとの混合空気)の一部ma″を外部に排出する排気路46とを付加した構成にしてある。
【0089】
また、この再熱装置21には、混合路45からの外部空気aの混合量を調整する混合側のダンパ装置47、及び、排気路46を通じて外部に排出する一部空気ma″の排出量を調整する排気側のダンパ装置48を設けてあり、そして、この排気側のダンパ装置48については、還気路37における排気路46の接続部よりも下流側に装備した風量センサ49の検出情報に基づき、排気側のダンパ装置48を調整して排気路46から外部に排出する一部空気ma″の排出量を調整することで、還気路37を通じて中継路16の混合器38に供給する混合空気ma′の量を設定量(ここでは、抽気路36への空気取出量(設計量)と等しい量)に自動調整するダンパ制御器50を設けてある。
【0090】
つまり、この再熱装置21では、抽気路36を通じてヒートポンプ18の放熱器18bに導いた混合空気maをヒートポンプ18の放熱機能により加熱し、その加熱混合空気maのうち浄化排気空気ea′の混合量に相当する量の加熱混合空気ma′を混合器38により浄化排気空気Ea′の残部に混合することで、浄化排気空気Ea′の残部も加熱して、冷却除湿装置20で除湿した浄化排気空気Ea′の全量を再熱する。
【0091】
そして、ヒートポンプ18の吸熱量と冷却除湿手段20での空気冷却量とを平衡させるようにヒートポンプ18の能力が調整されることに対し、ヒートポンプ18の放熱量のうち再熱装置21での空気加熱(再熱)において余る余剰分については、排気路46を通じて外部に排出する加熱混合空気ma″の保有熱として外部に廃棄するようにしてある。
【0092】
一方、ヒートポンプ18、冷却除湿装置20、再熱装置21を司る第2塗装室用の空調制御器41については、ヒートポンプ18の吸熱量と冷却除湿手段20での空気冷却量とを平衡させる制御方式として、湿度センサ40の検出情報に基づき空気冷却器25に対する弁装置26′を調整することで、冷却除湿装置20での空気除湿量を調整して、第2塗装室4に供給する調整空気Sb(=Ea″)の湿度xを設定絶対湿度xbに調整する構成にしてある。
【0093】
また、温度センサ39の検出情報に基づき混合側ダンパ装置47を調整して、混合路45からの外部空気aの混合量を調整することで、それに伴う排気側ダンパ装置48による排気路46から空気排出量の調整により外部への廃棄熱量を調整(即ち、再熱装置21での再熱量を調整)して、第2塗装室4に供給する調整空気Sb(=Ea″)の温度tを設定乾球湿度tbに調整する構成にしてある。
【0094】
なお、ヒートポンプ18は、冷却除湿装置20に供給する熱媒液Cの温度を設定出口温度に調整維持するようにヒートポンプ能力をインバータ制御等により調整する自己調整機能を備えており、従って、空気冷却器25に対する冷却熱媒液Cの供給量を調整弁26′により調整すると、それに追随してヒートポンプ18の能力も自動的に調整され、これにより、ヒートポンプ18の吸熱量と冷却除湿手段20での空気冷却量とが平衡するようにヒートポンプ18の能力が調整される。
【0095】
また、この第2実施形態では、ヒートポンプ18の放熱量のうち再熱装置21での空気加熱(再熱)において余る余剰分を排気路46から排出する加熱混合空気ma″とともに外部に廃棄する例を示したが、これに代え、排気路46から排出される加熱混合空気ma″を、図4に破線で示す如く第1塗装室用の空調機10における空気取入口10aからの取り入れ外部空気Aに混合するようにして、この空調機10での空気予熱に利用するようにしてもよい。
【0096】
その他については、第1実施形態と同様である。
【0097】
〔別実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を列記する。
第1塗装室2からの排気空気Eaと洗浄水Wとを気液接触させて排気空気Eaを浄化する湿式浄化手段は、前述の実施形態で示した湿式浄化装置9aに限らず、種々の構造のものを採用することができ、例えば、第1塗装室2からの排気空気Eaに対し洗浄水Wをノズル等により噴霧して両者を気液接触させる構造などであってもよい。
【0098】
湿式浄化手段9aによる浄化排気空気Ea′を冷却して除湿する冷却除湿手段も前述の実施形態で示した冷却除湿装置20に限らず、ヒートポンプ18の吸熱機能により浄化排気空気Eaを冷却除湿するものであれば、種々の構造のものを採用することができ、例えば、湿式浄化手段9aによる浄化排気空気Ea′とヒートポンプ18の低圧側冷媒とを熱交換器で直接に熱交換させて、浄化排気空気Ea′を冷却除湿する構造などであってもよい。
【0099】
また同様に、冷却除湿手段20により除湿した浄化排気空気Eaを加熱して再熱する再熱手段も前述の実施形態で示した再熱装置21に限らず、冷却除湿手段20での空気冷却に伴うヒートポンプ18の放熱機能により除湿後の浄化排気空気Ea′を再熱するものであれば種々の構造のものを採用でき、例えば、除湿後の浄化排気空気Ea′の全量とヒートポンプ18の高圧側冷媒とを熱交換器で直接に熱交換させて、除湿後の浄化排気空気Ea′を再熱する構造や、ヒートポンプ18の放熱機能により加熱した熱媒液と除湿後の浄化排気空気Ea′とを熱交換器で熱交換させて、除湿後の浄化排気空気Ea′を再熱する構造などであってもよい。
【0100】
前述の第1実施形態では、冷却除湿手段20をヒートポンプ18の吸熱機能と補助冷熱源機器31(補助冷凍機)の吸熱機能とにより湿式浄化手段9aによる浄化排気空気Ea′を冷却して除湿する冷却側併用運転が可能な構成にしたが、これに代えて、あるいは、これと組み合わせて、再熱手段21を、ヒートポンプ18の放熱機能と補助温熱源機器の放熱機能とにより冷却除湿手段20による除湿後の浄化排気空気Ea′を加熱して再熱する加熱側併用運転が可能な構成にしてもよい。
【0101】
前述の第2実施形態において、排気路46から排出される加熱混合空気ma″を第1塗装室用の空調機10における空気取入口10aからの取り入れ外部空気Aに混合して空調機10での空気予熱に利用する構成に代表されるように、ヒートポンプ18の放熱機能の一部により再熱手段21において冷却除湿手段20による除湿後の浄化排気空気Ea′を加熱して再熱し、これに併行して、ヒートポンプ18の放熱機能の他部を第1塗装室用の空調機10において第1塗装室2に供給する空気Saの加熱(予熱や再熱)に利用するようにしてもよい。
【0102】
また同様に、ヒートポンプ18の吸熱機能の一部により冷却除湿手段20において湿式浄化手段9aによる浄化排気空気Ea′を冷却して除湿し、これに併行して、ヒートポンプ18の吸熱機能の他部を第1塗装室用の空調機10において第1塗装室2に供給する空気Saの冷却(予冷や冷却)に利用するようにしてもよい。
【0103】
本発明のよる塗装設備の実施において、被塗物Wは自動車ボディに限られるものではなく、被塗物は自動車部品、電気製品のケースや部品、鋼板類などのようなものであってもよい。
【0104】
また、第1塗装室は作業員が被塗物を塗装するマニュアル塗装作業室に限られるものではなく、同様に第2塗装室も塗装ロボットが被塗物を塗装するロボット塗装作業室に限られるものではなく、第1及び第2塗装室は各々、マニュアル塗装作業室又はロボット塗装作業室のいずれであってもよく、また、マニュアル塗装作業とロボット塗装作業とを併行実施する塗装作業室であってもよい。
【0105】
前述の実施形態では第1塗装室2において塗装した被塗物Wを続いて第2塗装室4で塗装する形態(即ち、被塗物Wの搬送経路上で第2塗装室4を第1塗装室2の下手側に位置させる形態)を示したが、これとは逆に被塗物Wの搬送経路上において第1塗装室2を第2塗装室4の下手側に位置させる形態や、第1塗装室2と第2塗装室4とを被塗物搬送経路上で並列に配置する形態を採用してもよい。
【0106】
さらにまた、第1塗装室2と第2塗装室4とは互いに異なる被塗物Wを塗装する塗装室であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、自動車ボディなどの各種被塗物の塗装において調整空気を要する複数の塗装室を備える塗装設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
10 空調機
Sa 調整空気
2 第1塗装室
11,12 給気手段
Ea 排気空気
W 洗浄水
9a 湿式浄化手段
Ea′ 浄化排気空気
4 第2塗装室
16 第2給気手段
17a,17b 第2給気手段
18 ヒートポンプ
20 冷却除湿手段
21 再熱手段
Ea″(Sb) 温湿度調整した浄化排気空気
ea′ 除湿した浄化排気空気の一部,加熱空気
a 外部空気
ma 混合空気
ma′ 加熱混合空気の一部
ma″ 加熱混合空気の残部
C 熱媒液
22 熱媒液槽
25 空気冷却器
26,26′ 流量調整手段
31 補助冷熱源機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機による調整空気を第1塗装室に供給する給気手段と、この給気手段による空気供給に伴い前記第1塗装室から排出される排気空気を洗浄水と気液接触させて浄化する湿式浄化手段とを備え、
この湿式浄化手段による浄化排気空気を換気用空気として第2塗装室に供給する第2給気手段を設ける塗装設備であって、
前記湿式浄化手段による浄化排気空気をヒートポンプの吸熱機能により冷却して除湿する冷却除湿手段と、
この冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気を前記冷却除湿手段での空気冷却に伴う前記ヒートポンプの放熱機能により加熱して再熱する再熱手段とを設け、
これら冷却除湿手段による除湿及び再熱手段による再熱により温湿度調整した浄化排気空気を前記第2給気手段により前記第2塗装室に供給する構成にしてある塗装設備。
【請求項2】
前記再熱手段は、前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の一部を前記ヒートポンプの放熱機能により加熱し、その加熱空気を前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の残部に混合する構成にしてある請求項1記載の塗装設備。
【請求項3】
前記再熱手段は、前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の一部と外部空気との混合空気を前記ヒートポンプの放熱機能により加熱し、その加熱混合空気のうちの浄化排気空気の混合量に相当する一部量を前記冷却除湿手段により除湿した浄化排気空気の残部に混合するとともに、前記加熱混合空気の残部を外部に排出する構成にしてある請求項2記載の塗装設備。
【請求項4】
前記冷却除湿手段は、前記ヒートポンプの吸熱機能により貯留熱媒液を所定温度に冷却する熱媒液槽と、
この熱媒液槽との間で循環させる熱媒液と前記湿式浄化手段による浄化排気空気とを熱交換させて浄化排気空気を冷却する空気冷却器と、
この空気冷却器に対する熱媒液の供給量を調整する流量調整手段とを備える構成にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装設備。
【請求項5】
前記冷却除湿手段は、前記ヒートポンプの吸熱機能と補助冷熱源機器の吸熱機能とにより前記湿式浄化手段による浄化排気空気を冷却する冷却側併用運転が可能な構成にしてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装設備。
【請求項6】
前記再熱手段は、前記ヒートポンプの放熱機能と補助温熱源機器の放熱機能とにより前記冷却除湿手段による除湿後の浄化排気空気を加熱する加熱側併用運転が可能な構成にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装設備。
【請求項7】
前記ヒートポンプの放熱機能の一部により前記再熱手段において前記冷却除湿手段による除湿後の浄化排気空気を加熱し、
前記ヒートポンプの放熱機能の他部により前記空調機において前記第1塗装室に供給する空気を加熱する構成にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装設備。
【請求項8】
前記ヒートポンプの吸熱機能の一部により前記冷却除湿手段において前記湿式浄化手段による浄化排気空気を冷却し、
前記ヒートポンプの吸熱機能の他部により前記空調機において前記第1塗装室に供給する空気を冷却する構成にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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