説明

塩を用いた蛋白のフロキュレーション

例えば組換え蛋白を単離するための分離方法を開示する。この方法は、蛋白を有する培地中で第1陽イオンおよび第1陰イオンを有する固体を形成させること、ならびにその蛋白からその固体を分離することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年9月15日に出願された米国仮出願第60/717838号の利益を主張するものであり、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、分離方法、例えば1つまたは複数の可溶性不純物、細胞、細胞片、または不溶性不純物などの不純物を含む液体から精製された生成物を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオテクノロジー産業の中で、商業規模で蛋白を精製することは、治療目的および診断目的の組換え蛋白の開発への重要な課題である。収量、純度、および処理量に関する問題に製造部門は取り組んでいる。組換え蛋白の技術が出現したことで、関心対象の蛋白は、その蛋白をコードしている遺伝子を発現するように操作された培養真核宿主細胞系を使用して産生させることができる。しかし、宿主細胞の培養プロセスの結果として生じうるものは、所望の蛋白と、蛋白変異体などのその蛋白自体に由来するか、または宿主細胞の蛋白、DNA、および細胞片などの宿主細胞に由来するかのいずれかの不純物との混合物である。医薬用途への所望の組換え蛋白の使用は、これらの不純物から十分なレベルの蛋白を確実に回収できることを条件とすることがある。組換え技法は、自然界に見出されない蛋白、例えば新規な突然変異蛋白、融合蛋白、または培地への蛋白分泌を指令する異種シグナル配列を有する蛋白を産生させることもできる。組換え蛋白は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、NS0骨髄腫細胞、およびピキア・パストリス酵母細胞を含めた多くの真核細胞型に発現させることができる。
【0004】
典型的には、組換え蛋白を産生させるために、発現させる蛋白をコードしている遺伝子を、所望の細胞型にその遺伝子の転写および翻訳を指令するための適切な配列と共に含む組換えDNAベクターが作製される。ベクターは、例えば薬物耐性遺伝子である選択マーカーもしくは逆選択マーカーなどの配列、および/または蛋白発現配列の安定した保持を促進するように設計された配列を含むこともある。哺乳動物細胞については、プラスミドベクターおよびウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターを使用することができる。
【0005】
ベクターの作製に続いて、次にベクターを細胞に導入する。ベクターは、標準的な方法、例えばリポフェクション、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、またはバイオリスティックス(遺伝子銃)を使用して裸のDNAとしてトランスフェクトすることができる。ウイルスベクターは、ウイルス粒子を用いた感染により導入することができる。次に、ベクターを含有する細胞を求めて細胞をスクリーニングまたは選択する。
【0006】
ベクターを含有し、組換え蛋白を発現する細胞は液体培地中または固体支持体上で生育させることができ、蛋白はその細胞培養物から単離することができる。哺乳動物細胞の密度は、10細胞/mLから2×10細胞/mL以上の範囲である。大部分の蛋白は分泌される。分泌された蛋白の濃度は、4mg/Lから10g/Lの範囲になりうる。しかし、蛋白が細胞内で産生される場合は、細胞を破壊して蛋白を放出させるが、蛋白が分泌される場合は、細胞および細胞片を除去した後で生育培地または支持体から蛋白を単離することができる。次に、単離した蛋白は精製することができる。
【0007】
細胞および細胞片を除去するために使用される従来の生物薬剤学的蛋白精製方法には、遠心分離、精密濾過、およびデプスフィルターがある。珪藻土などの濾過助剤は、これらの工程の能率を高めるために使用することができるが、濾過助剤は常に有効とは限らず、関心対象の産物に有意に結合することがある。濾過助剤の使用は、大規模な生物薬剤的作業の一部としては厄介でありうる固体または均質懸濁液の添加もまた必要とすることがある。
【0008】
高分子凝集剤は、哺乳動物細胞培養のプロセス流れを清澄化することを助けるために使用することができるが、高分子凝集剤には限界がある可能性がある。例えば、加工助剤として典型的には使用される硫酸プロタミン製剤は、関心対象の蛋白の不活性化または沈殿析出による産物の損失に関する懸念のせいで適用が限定されている(Scopes、1987)。医学用途のために販売されているような高品質試薬は高価なことがある。場合によっては、非常に低レベルまでの除去には、患者に予期しない作用がないことを保証するための確認が欠かせないことがある。例えば、キトサンは詳細に明らかにされた試薬ではなく、清澄化の適用に日常的に使用するには、その一貫した能率に関して懸念がある。DEAEデキストランなどの多荷電ポリマー、廃水処理に使われることの多いアクリルアミド系ポリマー(NALCO Water Handbook、第8章)、およびポリエチレンアミン(PEI)は、清澄化の適用での使用が考えられてきた。後者の2種類のポリマーに関して、アクリルアミド試薬は有毒試薬の混入の可能性があり、ポリエチレンアミンは高度に有効な清澄化試薬であるが、多くの場合、発癌物質の疑いのある様々な量のエチレンイミンモノマーが混入している(Scawenら)。さらに、PEIを含めたこれらのポリマーの多くは、多数のクロマトグラフィー樹脂にほぼ非可逆的に結合することによって、下流の加工処理の選択肢が限られる傾向がある。これらのポリマーに関連する規制の問題および原料再利用の問題が、主として学術研究への応用を制限してきた。
【0009】
ミョウバンおよび鉄塩などの非ポリマー系凝集剤は、廃水処理産業で利用されてきた(NALCO Water Handbook)。これらの物質は蛋白産物に結合することがあり、また化学反応を触媒して安全性または有効性に影響しうる蛋白の修飾を招くおそれがあることから、これらの物質は蛋白産物の加工処理に有用ではないと考えられよう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は分離方法に関する。この分離方法は、1つまたは複数の可溶性不純物、不溶性不純物、細胞、または細胞片などの不純物を含有する液体から組換え蛋白などの蛋白を単離するために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、不純物の除去を助ける沈殿を形成することができる1つまたは複数(例えば2つ以上)の可溶性溶液を液体に添加することを含む分離方法を特徴とする。この沈殿は不純物の方に強く結合し、標的産物にはあまり強く結合しない。この溶液には、例えば一緒に混合したときに、例えば粒子、コロイド物質、細胞片、または細胞と相互作用することができ、不溶性の沈殿を形成する可溶性陽イオン、例えば金属イオンおよび/または可溶性陰イオンが含まれうる。結果として生じた沈殿は、精密濾過、デプス濾過、または遠心分離などの固液分離技法を使用して清澄化または除去することができる。処理された液体は、同様に加工処理された未処理の液体に比べて低い不純物レベルを有しうる。
【0012】
不純物は、液体中に懸濁状態で見出される要素に関係することがある。いくつかの実施形態では、不純物にはコロイド物質、粒子状物質、細胞、膜断片などの細胞片、および典型的な加工条件で不溶性のその他の大きな細胞複合体が含まれる。不純物は、典型的な加工条件で可溶性のままである細胞構成要素を意味することもある。DNA、宿主細胞蛋白、およびリン脂質は、清澄化のときに溶液状態で存在する細胞構成要素の例である。さらに、不活性アイソフォームまたは凝集した種などの可溶性の産物関連不純物も存在することがある。
【0013】
不純物のレベルは、様々な方法により評価することができる。液体中の破片の量の尺度を与える一方法は、濁度の比濁(nephalometric)測定である。あるいは、破片のレベルは、既知の容量の液体を加工するために必要なメンブランフィルターの面積を測定することにより評価することができる。特異的な不純物は、液体に可溶性で、評価に特異的生化学試験を必要とすることもある。DNAレベルは、市販の色素であるPicogreen(Invitrogen、製品番号P−7581)を使用することなどにより、蛍光測定に基づく方法を使用して測定することができる。代わりの取り組みには、スロットブロット技法などのハイブリダイゼーション法、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)がある。宿主細胞の蛋白レベルは、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)法、逆相クロマトグラフィー法、または酵素結合免疫吸着検定(ELISA)法により評価することができる。リン脂質は、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0014】
生じた沈殿は、懸濁状態の不純物および可能性不純物の両方と相互作用することがあり、この相互作用は、精製した液体中のこれらの不純物のレベルを減少させることがある。結果として、この分離方法は、費用節減および/または時間節約、ならびに例えば組換え蛋白の産生のために哺乳動物細胞培養物を使用する工業プロセスのための産物の品質向上をもたらすことができる。
【0015】
別の態様では、本発明は、その後のクロマトグラフィー工程の能率、例えばプロテインAクロマトグラフィー工程の能率を高めることを特徴とする。プロテインAクロマトグラフィーは、典型的にはスタフィロコッカス・アウレウスのプロテインAが固定化された樹脂に無細胞馴化培地を直接適用することにより行われる。この樹脂は、続いて中性pH(pH約6〜8)の水溶液で洗浄し、結合した蛋白は、多くの場合、酸性緩衝液で溶出させる。それに続く加工処理の前に、溶出液のプールは中性pHに調整する。プロテインAの溶出液のプールは、特に高密度細胞培養物を負荷に使用した場合に、中和時に沈殿することが多い。本発明によると、プロテインA工程による宿主細胞蛋白の除去は、未処理液体に比べて負荷物を金属および陰イオンで処理した場合の方が大きい。複数の実施形態では、負荷する液体を陽イオンおよび陰イオンで処理しておいた場合に、中和時のプロテインAのピークの沈殿析出が少なくなることが多く、加工処理の向上となっている。
【0016】
別の態様では、本発明は2つの可溶性薬剤の選択を特徴とし、これらの薬剤は、混合すると固体を形成し、その固体は、適切な条件で高い産物回収率を伴って加工処理液の純度を向上することができる。これらの薬剤には、カルシウム、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、炭酸塩、フッ化物、亜硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、およびアルギン酸塩がありうるが、それに限定されるわけではない。これらの化合物は、金属への好ましいリガンドである多価金属イオンと、一価陰イオンまたはその代わりに多価(multivalentまたはpolyvalent)陰イオンとの組合せに相当する。これらの陽イオンおよび陰イオンの塩は、やや溶けにくい複合体を潜在的に形成するために適した条件で混合したとき、清澄化の応用に有用性を有することがある。
【0017】
別の態様では、本発明は、蛋白を含む培地中で第1陽イオンおよび第1陰イオンを有する固体を形成させること、ならびにその蛋白からその固体を分離することを含む方法を特徴とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、蛋白を有する培地に第1陽イオンおよび第1陰イオンを導入すること、その第1陽イオンおよび第1陰イオンを有する固体を沈殿させること、ならびにその蛋白からその固体を分離することを含む方法を特徴とする。
【0019】
本明細書に記載する方法は、培地、例えば液体培地(例えば混濁した懸濁物)から1つまたは複数の不純物の濾過を容易にするために使用することができる。例えば、これらの方法は、従来の濾過方法を使用した不純物の除去を困難または不都合にしている、1つまたは複数の混濁起因物質を有する培地に使用することができる。したがって別の態様では、本発明は、(i)標的成分(例えば精製すべき成分)と、沈殿または凝集した宿主細胞蛋白、脂質、細胞片、全細胞、沈殿したDNA、またはプロテインAのピークを中和したときに形成する沈殿などの1つまたは複数の混濁起因物質とを含む培地(例えば液体培地)中で第1陽イオンおよび第1陰イオンを含む固体を形成させること、ならびに(ii)例えば濾過によりその溶液からその固体および混濁起因物質を分離することを含む方法を特徴とする。複数の実施形態では、混濁起因物質は、コロイド物質、砂、土などの環境起源由来の粒子状物質、研磨したステンレス鋼微粉、または消泡剤もしくは尿素などの沈殿した賦形剤などの非細胞起源とすることができる。培地(例えば混濁した懸濁物)は、濁度計により測定したときに5NTU超、または100NTU超、または500NTU超などの比較的高い濁度を有することがある。いくつかの実施形態では、この固体の存在は培地の濾過性能を増大させることができる。いくつかの実施形態では、処理した培地(例えば工程(i)および(ii)を行った後の培地)の濁度は、未処理培地よりも小さいことがある。いくつかの実施形態では、標的成分は蛋白(例えば可溶性蛋白、例えば抗体)とすることができる。この方法は、濾過後に溶液から標的成分を回収することをさらに含むことができる。
【0020】
複数の実施形態は、以下の特徴を1つまたは複数含むことができる。
【0021】
第1陽イオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、スカンジウムイオン、ランタンイオン、ケイ素イオン、チタンイオン、ジルコニウムイオン、トリウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、クロムイオン、鉄イオン、ニッケル、亜鉛イオン、またはバナジウムイオンとすることができる。第1陽イオンはカルシウムイオンとすることができる。
【0022】
第1陰イオンは、リン酸イオン、炭酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、亜硫酸イオン、モリブデン酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、ケイ酸イオン、およびアルギン酸イオンとすることができる。第1陰イオンはリン酸イオンとすることができる。
【0023】
第1陽イオンはカルシウムイオンとすることができ、第1陰イオンはリン酸イオンとすることができる。
【0024】
この固体は、約10−4を超えない溶解度積定数を有することがある。
【0025】
この方法は、約4mMから約200mMの第1陽イオンまたは第1陰イオンを培地に導入することをさらに含むことができる。
【0026】
第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積は、約10−5、10−4、または2.7×10−2を超えることがある。
【0027】
培地中の第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度は異なることがある。
【0028】
培地中の第1陽イオンの濃度および第1陰イオン濃度は実質的に同じでありうる。
【0029】
この方法は、培地のpHを変化させることをさらに含むことができる。
【0030】
培地のpHは、約5から約9に維持されることがある。
【0031】
この方法は、培地中の蛋白の少なくとも約50%の分離をもたらすことがある。この方法は、培地中の蛋白の少なくとも約70%の分離をもたらすことがある。
【0032】
この方法は、清澄化された培地の清澄化された濁度を、その培地と同一で、その固体を有さない第2の清澄化された培地に比べて少なくとも約30%だけ減少させることをさらに含むことができる。この方法は、清澄化された培地の濁度を、その培地と同一で、その固体を有さない第2の清澄化された培地に比べて少なくとも約50%だけ減少させることをさらに含むことができる。
【0033】
培地は細胞を含むことができる。培地は哺乳動物細胞をさらに含むことができる。培地は真核細胞をさらに含むことができる。
【0034】
この方法は、培地を遠心分離すること、精密濾過膜を通してその培地を濾過すること、またはデプスフィルターを通してその培地を濾過することをさらに含むことができる。
【0035】
固体は、第2陽イオン種または第2陰イオンをさらに含むことができる。
【0036】
固体を形成させて分離した後で、蛋白を含む培地をプロテインAカラムに適用して溶出させ、第1培地と同一で、固体の形成を有さない第2培地を同様に溶出させたピークよりも低い濁度を有する溶出ピークをもたらすことができる。
【0037】
固体を形成させて分離した後で、蛋白を含む培地をプロテインAカラムに適用して溶出させ、その培地と同一で、固体の形成を有さない第2培地の溶出ピークよりも低い可溶性不純物レベルを有する溶出ピークをもたらすことができる。
【0038】
第1陽イオンおよび第1陰イオンは連続して導入することができる。
【0039】
第1陽イオンおよび第1陰イオンは同時に導入することができる。
【0040】
この方法は、異なる濃度の第1陽イオンおよび第1陰イオンを培地に導入すること、または同一濃度の第1陽イオンおよび第1陰イオンを培地に導入することを含むことができる。
【0041】
この方法は、培地の温度を調整することをさらに含むことができる。
【0042】
この蛋白は分泌蛋白とすることができる。その蛋白は、抗体、抗体の抗原結合断片、可溶性受容体、受容体融合体、サイトカイン、成長因子、酵素、または凝固因子とすることができる。
【0043】
その蛋白が抗体またはその断片である実施形態では、その蛋白は少なくとも1つ、典型的には2つの完全長重鎖、および/または少なくとも1つ、典型的には2つの軽鎖を含むことができる。あるいは、その抗体またはその断片は、抗原結合断片(例えばFab、F(ab’)、Fv、または単鎖Fv断片)のみを含むことができる。その抗体またはその断片は、モノクローナル抗体または単一特異性抗体とすることができる。その抗体またはその断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、またはin vitroで作製された抗体のこともある。なお他の実施形態では、その抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、その抗体は例えばκまたはλから選択される軽鎖を有する。一実施形態では、その抗体の性質を改変するために(例えばFc受容体の結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞の機能、または補体機能のうち1つまたは複数を増加または減少させるために)、定常領域が改変、例えば突然変異されている。典型的には、その抗体またはその断片は、前もって決定された抗原、例として例えば神経変性障害、代謝障害、炎症障害、自己免疫障害、および/または悪性障害などの障害に関連する抗原に特異的に結合する。本発明の方法により分離することのできる抗体の例には、Aβペプチド、インターロイキン13(IL−13)、インターロイキン−22(IL−22)、5T4、および増殖分化因子8(GDF−8)に対する抗体があるが、それに限定されるわけではない。
【0044】
他の態様、特徴、および利点は、その好ましい実施の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1に関して、組換え蛋白などの標的蛋白を分離するための方法30を示す。方法30は、その蛋白および(細胞片、細胞、DNA、宿主細胞蛋白、および不活性アイソフォームまたは凝集した種などの産物関連不純物を含みうるが、それに限定されるわけではない)不純物を含有する液体に可溶性塩(カルシウム含有塩およびリン酸含有塩など)を添加することを含む(工程32)。これらの塩溶液は、これらの塩溶液を混合したときの液体におけるpH変化を最小にするため、またはpHを最適化するための緩衝化剤を有することがある。接触(例えば混合)したときに、これらの可溶性塩は反応を開始し、培地中で沈降しうる不溶性沈殿(固体リン酸カルシウムなど)を形成することが多い。図1に示すように、続いて培地を所定のpHに滴定調節し、必要に応じて温度を調整し(工程34)、沈殿析出を高めてもよい。沈降途中の沈殿は、細胞および破片、ならびに潜在的にその他の不純物も沈降させるが、標的蛋白は本質的にその液体に引き続き可溶性である。沈殿析出を促進し、清澄化を最適化する一方で高レベルの標的蛋白の回収を維持するために、この液体懸濁液を目標時間適切な条件でインキュベートする(工程36)。続いて、標的蛋白を含有する液体から沈殿を分離する(工程38)。この作業は、重力沈降、遠心分離、または濾過を含めた様々な方法で行うことができ、濾過の選択肢には、タンジェンシャルフロー濾過、デプス濾過、荷電媒質を通した濾過、珪藻土が媒質の構成要素であるパッド濾過がある。培地に添加する陽イオンおよび陰イオンの量は、沈殿析出または破片の重力沈降に十分ではないおそれがあるが、それでも濾過助剤として作用することにより濾過を促進することができる。固液分離は、一連の前記選択項目による加工処理すること、典型的には滅菌等級とみなすことができる小さい公称孔径(0.45、0.2、または0.1μMなど)に級別されるフィルターを通した液体の通過で最高点に達することを含みうる。本明細書に記載するフロキュレーション方法により清澄化された液体は、一次清澄化の一環として、または遠心分離などの初回固液分離工程後のいずれかで濾過面積が小さくて済むことがある。さらに、パッド後および滅菌等級のフィルター後の濁度は、フロキュレーションしていない対照に比べて有意に低下することがある。
【0046】
典型的には、その後の精製は、一連のクロマトグラフィー工程により進めることができるが、結晶化および沈殿析出などの他の精製方法を考えることもできる。記載した方法を使用した清澄化の後に、抗体についてはプロテインAカラムであることが多い第1クロマトグラフィー工程の能率が高まることがある。宿主細胞蛋白を含めた宿主細胞由来不純物の全体的な除去は、フロキュレーション処理を行わないときよりも大きくなりうる。多くの場合で、中和されたプロテインAの溶出液プールのピークもまた、未処理対照に比べて少ない沈殿析出を有する。この沈殿析出レベルの減少は、より小さいフィルター面積を必要とすることもあり、必要な加工処理時間が短縮することもある。沈殿析出レベルの減少は、望まれない不純物が除去されたことも示している。
【0047】
理論に縛られることを望まないが、不溶性沈殿は、細胞、細胞片、およびその他のプロセス流れの不純物に選択的に結合するが、蛋白とは有意に相互作用しないことにより、蛋白の分離を高めると考えられる。仮説を立てられた不純物除去プロセスの非限定的な例を下の式(1)に示す:
【0048】
【化1】

【0049】
式(1)を参照すると、Mは可溶性[すなわち「(s)」]陽イオンであり、A−は、Mと相互作用して不溶性の塩または複合体を形成することができる可溶性陰イオンであり、影付きの丸および黒丸は、それぞれ可溶性不純物または不溶性不純物を表し、1は陽イオン−陰イオン塩または複合体と、それに結合した不純物とを含む不溶性沈殿であり(1は本明細書において「最終複合体もしくは塩」または「第1陽イオンおよび第1陰イオンを有する固体」と呼ばれることもある)、下向きの矢印は1が沈殿析出した形態であることを示す。例えばリン酸カルシウムは、DNA、宿主細胞蛋白、および細胞片とイオン的および/またはキレート化により相互作用することができるが、標的蛋白と有意には相互作用しない。この選択性によって、その蛋白は上清中に残り、続いて培地および馴化培地のその他の構成要素から容易に分離される。
【0050】
図1をさらに参照すると、分離方法30は、第1可溶性塩および第2可溶性塩を培地に導入すること(工程32)を含む。この培地は、例えば組換え蛋白が形成した馴化水溶液とすることができる。第1可溶性塩は第1陽イオンを含み、第2可溶性塩は第1陰イオンを含む。接触させると、第1陽イオンおよび第1陰イオンは培地中で相互作用することができ、不溶性沈殿の形成を開始することがある。pHまたは温度の液体環境を任意の時間に調整して、沈殿析出条件を最適化することができ(例えば工程34)、溶液を目標時間インキュベートし、系を完全に平衡状態にさせる(工程36)。
【0051】
一般に、関心対象の産物を有する液体中に比較的不溶性の塩または複合体を形成することができる任意の陽イオン(例えば第1陽イオン)/陰イオン(例えば第1陰イオン)の組合せを選択することができる。複数の実施形態では、そのような塩または複合体は、関心対象の産物を有する液体に匹敵する溶液に溶けない、やや溶けにくい、ほとんど溶けない、極めて溶けにくい、または溶けにくいと分かることがある。陽イオン/陰イオンの組合せの例には、選択された陽イオン(例えば第1陽イオン、例えば下記式2のM)および選択された陰イオン(例えば第1陰イオン、例えば下記式2のA)が、水に比較的不溶性の塩または複合体(例えば下記式2のMA)を形成することができる組合せが含まれる:
【0052】
【化2】

【0053】
式中、「(s)」および下向きの矢印は、式(1)に関して定義した通りである。多くの場合、The Merck Indexまたはthe Handbook of Physics and Chemistryまたはその他の類似の参考文献に記載されている水への溶解度の特徴付けは、潜在的能率の適切な指標となる。
【0054】
いくつかの実施形態では、選択した陽イオンおよび選択した陰イオンは、水において約1×10−4から約1×10−50(例えば約1×10−5から約1×10−50、約1×10−6から約1×10−50、約1×10−4から約1×10−40)の溶解度積定数(Ksp)を有する塩または複合体を形成することができる。いくつかの実施形態では、例示的な陽イオンおよび陰イオンは、第1陽イオンおよび第1陰イオンの溶解度積定数(Ksp)([陽イオン]×[陰イオン])が例えば約10−4未満、好ましくは約10−5または10−6を下回ると同定することができる。10−4未満のKsp値を有する物質はこの方法に利用することができる。それは、その陽イオンおよび陰イオンを混合したときに、これらの物質がそれぞれ最大で10mMの最終溶液を生じることができ、10mMを超えたその陽イオンまたは陰イオンの添加は、沈殿およびその後のフロキュレーションを生じることができるからである。上に挙げたよりも高いKsp値を有する物質を使用することもできるが、固体を形成させるために過剰量の陽イオンおよび陰イオンが必要になるおそれがある。
【0055】
陽イオン(例えば第1陽イオン)は、アルカリ土類金属、遷移金属、または典型元素でありうる。これらの元素は、硬い酸、境界域の酸(borderline acid)、または軟らかい酸に分類されることがある。第1陽イオンの例にはカルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、アルミニウムイオン(Al3+)、銅イオン(Cu(I)またはCu(II))、スカンジウムイオン(Sc+3)、ランタンイオン(La+3)、ケイ素イオン(Si4+)、チタンイオン(Ti(III)またはTi(IV))、トリウムイオン、ジルコニウムイオン、マンガンイオン(Mn(II)またはMn(III))、コバルトイオン(Co(II)またはCo(III))、クロムイオン(Cr(II)またはCr(III))、鉄イオン(Fe(II)またはFe(III))、ニッケルイオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、およびバナジウムイオン(V(III)、V(IV)、またはV(V))がある。これらは硬い酸および境界域の酸に相当する。第1陰イオンは原子種または分子種とすることができる。いくつかの実施形態では、第1陽イオンは、Ca2+、Mg2+、Mn(II)、Co(II)、またはNi2+とすることができる。ある実施形態では、第1陽イオンはCa2+とすることができる。
【0056】
第1陰イオンの例には、使用する金属イオンへの好ましいリガンドである陰イオンがある。硬い酸および境界域の酸について、陰イオンにはフッ化物イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン、水酸化物イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、モリブデン酸イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、およびクエン酸イオン、ならびにある程度は硫酸イオンおよび過塩素酸イオンが含まれることがある(Aquatic Chemistry、W.StummおよびJS Morgan編、J Wiley、(1981)、343頁;ならびにR.G.Pearson、J.Amer.Chem.Soc.、第85巻、3533頁(1963)参照)。いくつかの実施形態では、第1陰イオンはリン酸イオン、亜硫酸イオン、炭酸イオン、フッ化物イオン、モリブデン酸イオン、またはケイ酸イオンとすることができる。ある実施形態では、第1陰イオンはリン酸イオンとすることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1陽イオンはCa2+とすることができ、第1陰イオンは、リン酸イオン、亜硫酸イオン、炭酸イオン、フッ化物イオン、モリブデン酸イオン、またはケイ酸イオンとすることができる。ある実施形態では、第1陽イオンはCa2+とすることができ、第1陰イオンはリン酸イオンとすることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1陽イオンは、Mg2+、Mn(II)、Co(II)、またはNi2+とすることができ、第1陰イオンはリン酸イオン、炭酸イオン、またはフッ化物イオンとすることができる。
【0059】
第1陽イオンおよび第1陰イオンそれぞれについての初濃度(すなわち(沈殿析出の開始前に)培地に導入される第1陽イオンおよび第1陰イオンの濃度)は、最終複合体の溶解度に応じて約2ミリモル濃度から約200ミリモル濃度の範囲(例えば約3ミリモル濃度から約200ミリモル濃度、約4ミリモル濃度から約200ミリモル濃度、約5ミリモル濃度から約200ミリモル濃度、約4ミリモル濃度から約100ミリモル濃度、約4ミリモル濃度から約50ミリモル濃度、約4ミリモル濃度から約40ミリモル濃度、約4ミリモル濃度から約30ミリモル濃度、約4ミリモル濃度から約10ミリモル濃度、約10ミリモル濃度から約80ミリモル濃度、約10ミリモル濃度から約40ミリモル濃度、約10ミリモル濃度から約30ミリモル濃度、約20ミリモル濃度から約80ミリモル濃度、約20ミリモル濃度から約40ミリモル濃度、例えば約4ミリモル濃度、約6ミリモル濃度、約10ミリモル濃度、約13.3ミリモル濃度、約16ミリモル濃度、約20ミリモル濃度、約24ミリモル濃度、約30ミリモル濃度、約33.3ミリモル濃度、約40ミリモル濃度、約50ミリモル濃度、または約80ミリモル濃度)とすることができる。ある実施形態では、(沈殿析出の開始前に)培地に導入される第1陽イオンの濃度は、約6ミリモル濃度、約10ミリモル濃度、約20ミリモル濃度、約24ミリモル濃度、約30ミリモル濃度、約40ミリモル濃度、約50ミリモル濃度、または約80ミリモル濃度とすることができる。ある実施形態では、(沈殿析出の開始前に)培地に導入される第1陰イオンの濃度は、4ミリモル濃度、約10ミリモル濃度、約13.3ミリモル濃度、約16ミリモル濃度、約20ミリモル濃度、約24ミリモル濃度、約30ミリモル濃度、約40ミリモル濃度、約50ミリモル濃度、または約80ミリモル濃度とすることができる。例えば、(沈殿の開始前に)培地に導入される第1陽イオンの濃度は約30ミリモル濃度とすることができ、(沈殿の開始前に)培地に導入される第1陰イオンの濃度は約20ミリモル濃度とすることができる。別の例として、(沈殿の開始前に)培地に導入される第1陽イオンの濃度は約24ミリモル濃度とすることができ、(沈殿の開始前に)培地に導入される第1陰イオンの濃度は約16ミリモル濃度とすることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1陽イオンおよび第1陰イオンの上記初濃度の積は、約4×10−6から約4×10−2、(例えば約1.6×10−5から約4×10−2、約2.5×10−5から約4×10−2、約1.6×10−5から約6.4×10−3、または約2.5×10−5から約6.4×10−3)とすることができる。いくつかの実施形態では、第1陽イオンおよび第1陰イオンの上記初濃度の積は、約1×10−5超、約2×10−5超、約1×10−4超、約2×10−4超、約10×10−4超、または約2.7×10−2とすることができる。いくつかの実施形態では、これらの濃度は、不純物と一緒になった不溶性塩の有意な沈殿析出を招くことがある。高すぎる濃度は、総液体容量の約10%を超える固体容量を招くことがある。500mMを超える陽イオンまたは陰イオンの濃度は、低い溶解度定数を有すると大きな固体容量を与えることがある。大きな固体容量から標準的な固液分離技法を用いて十分な産物を回収することは困難なおそれがある。沈殿の例には、リン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、リン酸マンガン、炭酸マンガン、リン酸コバルト、リン酸ニッケル、および炭酸ニッケルがある。
【0061】
いくつかの実施形態では、液体培地中の最終的な塩または複合体(例えば式(1)の1、すなわち陽イオン−陰イオンの塩または複合体と、それに結合している不純物とを含む不溶性沈殿)のKspは、約1×10−4から約1×10−50(例えば約1×10−5から約1×10−50、約1×10−6から約1×10−50、約1×10−4から約1×10−40)とすることができる。いくつかの実施形態では、液体培地中の最終的な塩または複合体のKspは、例えば約10−4未満、好ましくは約10−5または10−6未満とすることができる。例えば、表1でカルシウム40mMおよびリン酸20mMを有する抗IL13#2試料では、遠心分離後(すなわち沈殿析出後)の上清は、カルシウム8.19mMおよびリン酸1.04mMを含有した。この可溶性カルシウムおよびリン酸のレベルは8.5×10−6のKspに対応する。表1でカルシウム80mMおよびリン酸20mMを有する抗AB#1試料では、遠心分離後の上清はカルシウム22.2mMおよびリン酸0.4mMを含有した。この可溶性カルシウムおよびリン酸のレベルは8.4×10−6のKspに対応する。
【0062】
いくつかの実施形態では、液体培地中の最終的な塩または複合体(例えば式(1)の1)のKspは、水における陽イオン−陰イオンの塩または複合体自体(すなわち不純物が結合していないもの、例えば式(2)の2)のKspとは異なる(例えばそのKspよりも大きい)ことがある。例えば、式(1)および(2)を参照すると、液体中の例えば1(例えばMA=リン酸カルシウム)のKspは、水におけるリン酸カルシウム自体(例えばMA=リン酸カルシウムである式(2)の2)のKspとは異なる(例えばそのKspよりも大きい)ことがある。
【0063】
沈殿を形成するその他の実施を行うことができる。例えば、第1陽イオンおよび第1陰イオンは、実質的に同時または連続的に培地に導入することができる。第1陽イオンがカルシウムイオンであり、第1陰イオンが亜硫酸イオンである実施では、カルシウムを導入する前に培地に亜硫酸塩を導入することで、不純物の沈殿析出を高めることができる(実施例2)。第1陽イオンおよび第1陰イオンの濃度は、実質的に同じこともあり、異なる(陽イオンに富むまたは陰イオンに富む)こともある。例えば一方のイオンの濃度は、もう一方のイオンの濃度の約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、または約5倍の大きさとすることができる。いくつかの実施では、1つを超える陽イオンおよび/または1つを超える陰イオンが培地に導入される。陽イオンの総濃度は、約5ミリモル濃度から約200ミリモル濃度の範囲とすることができ、陰イオンの総濃度も同様でありうる。ポリマー性溶液を使用する場合、ポリマーの分子量に基づくとmM単位の濃度は実質的に低いおそれがあり、その代わりに濃度はモノマーの分子量に依存することがある。その他の実施では、1つまたは複数の陽イオンのみ、または1つまたは複数の陰イオンのみが培地に導入される。例えば、蛋白を有する培地が沈殿を形成することができる陰イオンまたは陽イオンをすでに含む場合、それぞれ適切な陽イオンまたは陰イオンを添加して沈殿を形成させることができる。あるいは、イオンを添加して、すでに培地中にあるイオンと反応させ、第1沈殿を形成させることができ、そしてさらなる陽イオン/陰イオンの組合せを培地に添加して他の沈殿を形成させることができる。
【0064】
図1に示すように、この方法は、所望により適切なpHに培地を滴定調節することおよび/または温度を調整すること(工程34)を含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、培地のpHを所定のpHに調整して沈殿を増大させることができる(工程34)。培地のpHは、例えば塩基(例えばNaOH)またはリン酸もしくは塩酸などの酸を用いて滴定調節することによって増加または減少させることができる。所定のpHは、例えば培地中の陽イオンおよび陰イオン、培地中のその他の物質、ならびに/または培地の組成の関数とすることができる。所定のpHは、約5から約9、例えば約6.5から約9の範囲とすることができる。
【0066】
その他の実施形態では、培地のpHは調整されない。
【0067】
いくつかの実施形態では、培地を加熱または冷却して能率を最適化することがある(工程34)。pHを調整することと同様に、培地を加熱またはインキュベートする温度および時間は、例えば培地中の陽イオンおよび陰イオン、培地中のその他の物質、ならびに/または培地の組成の関数とすることができる。
【0068】
培地は室温でインキュベートすることができ、または例えば約37℃に加熱することができる。インキュベーション時間または加熱時間(工程36)は、約1時間から約12時間までの範囲とすることができる。培地をインキュベートまたは加熱する間に、培地は(例えば物質の剪断を低下させるために低速で)混合することができ、または培地は最初の時間混合し、そして沈殿が沈降できるように混合せずに静置させ、それにより蛋白を有する上清を容易に分離させることができる。
【0069】
その他の実施形態では、沈殿が良好な分離を十分にもたらすならば、培地は加熱しない。
【0070】
次に、上清からの沈殿の分離を助けるために培地を遠心分離し(工程38)、それにより上清の濁度は低下する。デプス濾過または精密濾過などのその他の固体除去方法が可能である。下記の実施例に例示するように、フロキュレーションを起こしていない未処理対照溶液に比べて少なくとも約30%だけ培地の濁度が低下することがある。いくつかの実施では、培地の濁度は少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%以上だけ低下する。本明細書に使用するように、濁度は標準的な手順に従って比濁計(HACH(ラブランド、コロラド州)により製造されたものなど)を使用して測定する。
【0071】
遠心分離などによる一次清澄化後に、濾過を用いたさらなる破片除去が行われることがある(工程38)。下記実施例に例示するように、本明細書に記載する分離方法は、少なくとも約50%(少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%など)の蛋白回収率で高い収率をもたらすことができる。本明細書に使用するように、回収率は、処理前プール中の標的蛋白の質量に対する処理後のプール中の質量として計算される。産物の質量は、標的蛋白の濃度と容量との積であり、ここで濃度は、高速液体クロマトグラフィーアッセイなどの様々な方法により決定することができる。抗体である標的蛋白について、濃度は、多くの場合プロテインAに基づく分析方法を使用して決定することができる。生物薬剤用細胞培養、精製、または蛋白の特徴付けの方法の分野の技術者は、適切なアッセイ法を識別することができる。
【0072】
続いて蛋白は、従来法に従って精製することができる。
【0073】
蛋白またはポリペプチド
本発明は、液体からの蛋白、例えば可溶性蛋白または分泌蛋白の分離に関する。本明細書に使用する用語「蛋白」は、ユニットとして機能することができる1つまたは複数のポリペプチドを表す。本明細書に使用する「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して一緒に結合した連続するアミノ酸鎖を表す。用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸鎖を表すために使用されるが、当業者ならば、この用語が長鎖に限定されず、ペプチド結合を介して一緒に結合した2つのアミノ酸を備える最小の鎖を表しうることを理解するであろう。単一のポリペプチドがユニットとして機能できるならば、用語「ポリペプチド」および「蛋白」は相互交換可能に使用することができる。
【0074】
ある実施形態では、蛋白は組換え産生される。本明細書に使用する用語「組換え発現された蛋白」および「組換え蛋白」は、ヒトの手によってポリペプチドを発現するように操作された宿主細胞から発現したポリペプチドを表す。ある実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。ある実施形態では、この操作は1つまたは複数の遺伝子修飾を含んでもよい。例えば、発現させるポリペプチドをコードしている1つまたは複数の異種遺伝子の導入により、宿主細胞を遺伝子修飾してもよい。組換え発現された異種ポリペプチドは、宿主細胞で通常発現されるポリペプチドに同一または類似とすることができる。組換え発現された異種ポリペプチドは、宿主細胞にとって外来、例えば宿主細胞で通常発現されるポリペプチドとは異種のこともある。ある実施形態では、組換え発現された異種ポリペプチドはキメラである。例えば、ポリペプチドの一部は、宿主細胞に通常発現されるポリペプチドと同一または類似するアミノ酸配列を有するが、他の部分がその宿主細胞にとって外来のアミノ酸配列を有することがある。さらに、またはあるいは、ポリペプチドは、共に宿主細胞に通常発現される2つ以上の異なるポリペプチド由来のアミノ酸配列を有することがある。さらにポリペプチドは、共に宿主細胞にとって外来の2つ以上のポリペプチド由来のアミノ酸配列を有することがある。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、1つまたは複数の内因性遺伝子の活性化またはアップレギュレーションにより遺伝子修飾されている。
【0075】
本発明により望ましくは分離することができる任意の蛋白は、多くの場合、関心対象の、または有用な、生物活性または化学活性に基づいて選択されるものである。例えば、本発明は、数ある中で任意の医薬的または商業的に関連する抗体、受容体、サイトカイン、成長因子、酵素、凝固因子、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤を分離するために採用することができる。本発明により分離することができる蛋白の以下のリストは、事実上単なる例示であり、限定する列挙であることを意図しない。当業者は、本発明により任意の蛋白を発現させることができることを了解しているものであり、必要に基づいて産生される特定の蛋白を選択することができるものである。
【0076】
抗体および結合断片
免疫グロブリンとしても公知である抗体は、典型的にはそれぞれ約25kDaの2つの軽(L)鎖と、それぞれ約50kDaの2つの重(H)鎖とから構成される四量体グリコシル化蛋白である。λおよびκと名付けられた2種類の軽鎖を抗体に見出すことができる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、5つの主クラス、すなわちA、D、E、G、およびMに割り当てることができ、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAに分けることができる。各軽鎖は、1つのN末端可変(V)ドメイン(VL)および1つの定常(C)ドメイン(CL)を含む。各重鎖は、1つのN末端Vドメイン(VH)、3つまたは4つのCドメイン(CH)、および1つのヒンジ領域を含む。最もVHに近いCHドメインはCH1と呼ぶ。VHドメインおよびVLドメインは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)と呼ばれる4領域の比較的保存された配列からなり、これらの領域は、3領域の超可変配列(相補性決定領域(CDR))の足場を形成している。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用を担う残基の大部分を有する。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。したがって、重鎖上のCDR構成要素は、H1、H2、およびH3と呼ばれるが、軽鎖上のCDR構成要素は、L1、L2、およびL3と呼ばれる。CDR3は、典型的には抗体結合部位内の分子多様性の最大の原因である。例えばH3は、わずか2つのアミノ酸残基のこともあり、26個を超えるアミノ酸のこともある。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体配置は、当技術分野で十分に公知である。抗体構造の総説については、Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory、Harlowら編、1988を参照されたい。当業者は、各サブユニット構造、例えばCH、VH、CL、VL、CDR、FR構造が、活性な断片、例えばVH、VL、もしくはCDRサブユニットのうち抗原に結合する部分、すなわち抗原結合断片を備えること、または例えばCHサブユニットのうち例えばFc受容体および/または補体に結合し、かつ/もしくは活性化する部分を備えることを認識しているものである。CDRは、典型的にはSequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991)、Kabatら編に記載されているKabatのCDRを表す。抗原結合部位を特徴付けるための別の基準は、Chothiaに記載されている超可変ループを参照することである。例えば、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜4638を参照されたい。なお別の基準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアに使用されるAbMの規定である。一般に例えばAntibody Engineering Lab Manual(Duebel,S.およびKontermann,R.編、Springer−Verlag、ハイデルベルク)の中のProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domainsを参照されたい。KabatのCDRに関して記載された実施形態は、代わりに、Chothiaの超可変ループまたはAbMで規定されたループに関する同様に記載された関係を使用して実施することができる。
【0077】
本明細書に使用される用語「抗体」は、少なくとも1つ、典型的には2つのVHドメインもしくはその部分、および/または少なくとも1つ、典型的には2つのVLドメインもしくはその部分を備える蛋白を含む。一実施形態では、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖の4量体であり、ここで、免疫グロブリン重鎖および軽鎖は例えばジスルフィド結合により相互に結合している。抗体またはその部分は、齧歯類、霊長類(例えばヒトおよび非ヒト霊長類)、ラクダ科の動物(例えばラクダまたはラマ)を非限定的に含めた任意の起源から得ることができ、組換え産生、例えばキメラ化、ヒト化することができ、かつ/または本明細書にさらに詳細に記載するようにin vitroで作製することができる。
【0078】
抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、すなわちVLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる1価断片、(ii)F(ab’)2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド結合により結合している2つのFab断片を備える2価断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片、(vi)ラクダまたはラクダ化可変ドメイン、(vii)単鎖Fv(scFv)、ならびに(viii)二重特異性抗体がある。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL、およびVHは別々の遺伝子によりコードされているが、これらのドメインを蛋白一本鎖として作ることができる合成リンカーにより、組換え法を用いて、これらのドメインを連結することができ、その蛋白一本鎖では、VL領域およびVH領域は、対を形成して1価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として公知であり、例えばBirdら(1988)Science242:423〜26;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879〜83を参照されたい)。このような単鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語に包含されることが意図される。これらの断片は、当業者に公知の従来技法を使用して得られ、これらの断片は、無傷抗体と同様に機能について評価される。
【0079】
抗原結合断片は、所望により例えば安定性、エフェクター細胞の機能、または補体結合のうち1つまたは複数を高める部分を含むことができる。例えば、抗原結合断片は、PEG化部分、アルブミン、または重鎖もしくは/または軽鎖の定常領域(もしくはその部分)を含むことができる。
【0080】
「二重特異性」抗体または「二機能」抗体以外では、抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であることが了解されている。「二重特異性」抗体もしくは「二機能抗体」、またはその抗原結合断片は、2つの異なる抗原結合部位を有する人工ハイブリッド抗体またはその断片である。二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、ハイブリドーマの融合、Fab’断片同士の結合、または組換えを含めた様々な方法により産生することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547〜1553(1992)を参照されたい。
【0081】
抗体またはその抗原結合断片を得るために、当業者に公知の数多くの方法が利用できる。例えば、モノクローナル抗体は、公知の方法によるハイブリドーマの作製により産生させることができる。次に、この方法で形成したハイブリドーマは、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)および表面プラズモン共鳴(Biacore(商標))分析などの標準法を用いてスクリーニングし、特定抗原と特異的に結合する抗体を産生する1つまたは複数のハイブリドーマを同定する。任意の形態の特定の抗原は、免疫原として、例えば組換え抗原、天然形態、任意の変異体、またはその断片、およびその抗原性ペプチドとして使用することができる。
【0082】
抗体を作る方法の一例は、蛋白発現ライブラリー、例えばファージディスプレイライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えばLadnerら、米国特許第5223409号;Smith(1985)Science228:1315〜1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;およびWO90/02809に記載されている。
【0083】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定抗原は、非ヒト動物、例えば齧歯動物、例えばマウス、ハムスター、またはラットを免疫するために使用することができる。一実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を有して、マウス抗体産生を欠損したマウス系統を操作して創出することができる。ハイブリドーマ技法を使用して、所望の特異性を有する、遺伝子由来の抗原特異的モノクローナル抗体を産生させ、選択してもよい。例えばXENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics7:13〜21、US2003−0070185、1996年10月31日に公表されたWO96/34096、および1996年4月29日に提出されたPCT出願PCT/US96/05928を参照されたい。
【0084】
別の実施形態では、モノクローナル抗体を非ヒト動物から得て、次に当技術分野で公知の組換えDNA技法を使用して修飾抗体、例えばヒト化抗体、脱免疫化抗体、キメラ抗体を産生してもよい。キメラ抗体を製造するための様々なアプローチが記載されている。例えばMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851、1985;Takedaら、Nature314:452、1985;Cabillyら、米国特許第4816567号;Bossら、米国特許第4816397号;Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496;欧州特許公開0173494;英国特許GB2177096Bを参照されたい。ヒト化抗体は、例えばヒト重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を発現するが、内因性のマウス免疫グロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを使用して産生させることもできる。Winterは、本明細書に記載されるヒト化抗体を調製するために使用することができる例示的なCDRグラフト化方法を記載している(米国特許第5225539号)。特定のヒト抗体のCDRの全てを非ヒトCDRの少なくとも部分と交換することができ、またはCDRの一部だけを非ヒトCDRと交換することができる。所定の抗原にヒト化抗体を結合させるために、必要な数のCDRを交換することだけが必要である。
【0085】
ヒト化抗体またはその断片は、抗原の結合に直接は関与しないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメイン由来の等価の配列に交換することにより作製することができる。ヒト化抗体またはその断片を作製するための方法の例は、Morrison(1985)Science229:1202〜1207;Oiら(1986)BioTechniques4:214;およびUS5585089;US5693761;US5693762;US5859205;およびUS6407213に示されている。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つ由来の免疫グロブリンFv可変ドメインの全てまたは一部をコードしている核酸配列を単離、操作、および発現させることを含む。そのような核酸は、上記の所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマから、およびその他の起源から得ることができる。次に、ヒト化抗体分子をコードしている組換えDNAは、適切な発現ベクターにクローニングすることができる。
【0086】
ある実施形態では、ヒト化抗体は、保存的置換、コンセンサス配列の置換、生殖細胞系列置換、および/または復帰突然変異の導入により最適化される。そのような改変された免疫グロブリン分子は、当技術分野で公知の任意のいくつかの技法により作ることができ(例えばTengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:7308〜7312、1983;Kozborら、Immunology Today、4:7279、1983;Olssonら、Meth.Enzymol.、92:3〜16、1982)、またはPCT公開WO92/06193またはEP0239400の教示に従って作ることもできる)。
【0087】
抗体またはその断片は、WO98/52976およびWO00/34317に開示された方法により、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失、すなわち「脱免疫化」により修飾することもできる。簡潔には、MHCクラスIIに結合するペプチドについて、抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを分析することができる。これらのペプチドは(WO98/52976およびWO00/34317に規定されるように)潜在的T細胞エピトープに相当する。潜在的T細胞エピトープを検出するために、「ペプチドスレディング(peptide threading)」という名のコンピュータモデリングの取り組みを適用することができ、さらに、WO98/52976およびWO00/34317に記載されているようにV配列およびV配列に存在するモチーフについて、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを検索することができる。これらのモチーフは18個の主要MHCクラスII DRアロタイプのうち任意のものに結合し、したがって、潜在的T細胞エピトープを構成している。検出された潜在的T細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは1アミノ酸置換によって除去することができる。典型的には、保存的置換が行われる。全ての場合ではなく多くの場合に、ヒト生殖細胞系列抗体配列中のある位置に共通のアミノ酸を使用することができる。ヒト生殖細胞系列配列は、例えばTomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776〜798;Cook,G.P.ら(1995)Immunol.Today、第16(5)巻:237〜242;Chothia,D.ら、(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜4638に開示されている。V BASEディレクトリーは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の総合ディレクトリー(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering(ケンブリッジ、英国)による編集)を提供している。これらの配列は、例えばフレームワーク領域およびCDRについてのヒト配列の起源として使用することができる。US6300064に記載されているようにヒトのコンセンサスフレームワーク領域もまた使用することができる。
【0088】
ある実施形態では、抗体は、改変された免疫グロブリン定常領域またはFc領域を有することがある。例えば、本明細書における教示により産生された抗体は、補体受容体および/またはFc受容体などのエフェクター分子に強くまたはより高い特異性で結合することがあり、このことは、エフェクター細胞活性、溶解、補体介在性活性、抗体の除去、および抗体の半減期などのいくつかの抗体の免疫機能を制御することができる。抗体のFc領域に結合する典型的なFc受容体(例えばIgG抗体)には、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnサブクラスという受容体が、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングされた形態を含めて含まれるが、それに限定されるわけではない。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol9:457〜92、1991;Capelら、Immunomethods4:25〜34、1994;ならびにde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330〜41、1995)に総説されている。
【0089】
本発明の方法により分離することができる抗体の非限定的な例には、Aβ、IL−13、IL−22、GDF8、および5T4に対する抗体があるが、それに限定されるわけではない。これらの抗体のそれぞれは、本明細書下記および添付の実施例にさらに詳細に記載されている。
【0090】
抗Aβ抗体
添付の実施例に記載したように、抗AB抗体は本発明の方法により分離することができる。用語「AB抗体」、「Aβ抗体」、「抗Aβ抗体」、および「抗Aβ」は本明細書において相互交換可能に使用され、APP、Aβ蛋白、またはその両方の1つまたは複数のエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体を表す。エピトープまたは抗原決定基の例は、ヒトアミロイド前駆体蛋白(APP)に見出すことができるが、好ましくはAPPのAβペプチドに見出される。APPの複数のアイソフォーム、例えばAPP695、APP751、およびAPP770が存在する。APPの中のアミノ酸は、APP770アイソフォームの配列に従って番号が割り付けられる(例えばGenBank受託番号第P05067号を参照のこと)。Aβ(本明細書においてβアミロイドペプチドおよびAベータとも呼ばれる)ペプチドは、APPの39〜43アミノ酸の約4kDaの内部断片である(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42、およびAβ43)。例えばAβ40は、APPの残基672〜711からなり、Aβ42はAPPの残基672〜713からなる。異なるセクレターゼ酵素によるAPPのin vivoまたはin situ蛋白分解プロセシングの結果として、Aβは「短鎖型」の長さ40アミノ酸および長さ42〜43アミノ酸の「長鎖型」の両方で見出される。エピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのN末端内に位置することがあり、それらは、Aβのアミノ酸1〜10、好ましくはAβ42の残基1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、2〜7、3〜6、もしくは3〜7の残基、またはAβの残基2〜4、5、6、7、もしくは8、Aβの残基3〜5、6、7、8、もしくは9、またはAβ42の残基4〜7、8、9、もしくは10の中の残基を含む。「中心部(central)」エピトープまたは抗原決定基は、Aβペプチドの中心部または中央部に位置し、Aβのアミノ酸16〜24、16〜23、16〜22、16〜21、19〜21、19〜22、19〜23、または19〜24の中の残基を含む。「C末端」エピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのC末端の中に位置し、Aβのアミノ酸33〜40、33〜41、または33〜42の中の残基を含む。
【0091】
様々な実施形態では、Aβ抗体は末端特異的である。本明細書に使用する用語「末端特異的」は、AβペプチドのN末端残基またはC末端残基に特異的に結合するが、同じ残基を備える長鎖Aβ種の中またはAPPの中に存在すると同残基を認識しない抗体を表す。
【0092】
様々な実施形態では、Aβ抗体は「C末端特異的」である。本明細書に使用する用語「C末端特異的」は、Aβペプチドの遊離C末端を特異的に認識する抗体を意味する。C末端特異的Aβ抗体の例には、残基40で終止するAβペプチドを認識するが、残基41、42、および/または43で終止するAβペプチドを認識しない抗体;残基42で終止するAβペプチドを認識するが、残基40、41、および/または43で終止するAβペプチドを認識しない抗体などが含まれる。
【0093】
一実施形態では、抗体は3D6抗体もしくはその変異体、または10D5抗体もしくはその変異体とすることができ、これら抗体の両方が米国特許公開番号2003/0165496A1、米国特許公開番号2004/0087777A1、国際特許公開WO02/46237A3に記載されている。3D6および10D5の記載は、例えば国際特許公開WO02/088306A2および国際特許公開WO02/088307A2にも見出すことができる。3D6は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ、具体的には残基1〜5に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)である。比較すると、10D5は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ、具体的には残基3〜6に特異的に結合するmAbである。別の実施形態では、抗体は、米国特許公開番号20040082762A1および国際特許公開WO03/077858A2に記載されているような12B4抗体またはその変異体であってもよい。12B4は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ、具体的には残基3〜7に特異的に結合するmAbである。なお別の実施形態では、抗体は、米国特許出願第10/858855号および国際特許出願PCT/US04/17514に記載されている12A11抗体またはその変異体であってもよい。12A11は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ、具体的には残基3〜7に特異的に結合するmAbである。なお別の実施形態では、抗体は、米国特許出願第10/789273号および国際特許出願WO01/62801A2に記載されている266抗体とすることができる。本発明に使用するために、ヒトβアミロイドペプチドに位置するC末端エピトープに特異的に結合するように設計された抗体には、米国特許第5786160号に記載されている369.2Bがあるが、それに限定されるわけではない。
【0094】
例示的な実施形態では、抗体はAβペプチドに選択的に結合するヒト化抗Aβペプチド3D6抗体である。さらに具体的には、このヒト化抗Aβペプチド3D6抗体は、(例えばアルツハイマー病を患う患者での)脳の斑沈着に見出されるヒトβアミロイド1〜40ペプチドまたは1〜42ペプチドに位置するNH末端エピトープに特異的に結合するように設計されている。
【0095】
抗AB抗体を使用して、アミロイド病、特にアルツハイマー病を治療することができる。用語「アミロイド病」には、不溶性アミロイド線維の形成または沈着に関連する(か、またはそれによって引き起こされる)任意の疾患が含まれる。アミロイド病の例には、全身性アミロイドーシス、アルツハイマー病、成人発症型糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、およびプリオン関連伝染性海綿状脳症(ヒトにおけるクールーまたはクロイツフェルト−ヤコブ病、ならびにそれぞれヒツジおよびウシにおけるスクレーピーおよびBSE)があるが、それに限定されるわけではない。沈着する線維のポリペプチド構成要素の性質によって、種々のアミロイド病が規定または特徴付けされている。例えば、アルツハイマー病を有する対象または患者においてβアミロイド蛋白(例えば野生型、変異型、または短縮型βアミロイド蛋白)は、特徴的なアミロイド沈着のポリペプチド構成要素である。したがって、アルツハイマー病は、例えば対象または患者の脳における「Aβの沈着を特徴とする疾患」または「Aβの沈着と関連する疾患」の一例である。用語「βアミロイド蛋白」、「βアミロイドペプチド」、「βアミロイド」、「Aβ」、および「Aβペプチド」は、本明細書において相互交換可能に使用される。
【0096】
抗5T4抗体
5T4抗原は以前に特徴付けられた(例えばWO89/07947参照)。ヒト5T4の完全核酸配列は公知である(Myersら(1994)J Biol Chem169:9319〜24およびGenBank(受託番号第Z29083号))。その他の種由来の5T4抗原、例えばマウス5T4(WO00/29428)、イヌ5T4(WO01/36486)、またはネコ5T4(US05/0100958)の配列も公知である。
【0097】
ヒト5T4は、癌腫で広く発現するが、正常な成体組織では高度に限定された発現パターンを有する約72kDaの糖蛋白である。この蛋白は結腸直腸および胃の癌における転移と強く相関していると考えられる。5T4抗原の発現は、乳癌および卵巣癌においても高頻度で見出される(Starzynskaら(1998)Eur.J.Gastroenterol.Hepatol.10:479〜84;Starzynskaら(1994)Br.J.Cancer69:899〜902;Starzynskaら(1992)Br.J.Cancer66:867〜9)。5T4は、メカニズムに関与している可能性がある、腫瘍進行および転移能についてのマーカーとして提案された(Carsbergら(1996)Int J Cancer68:84〜92)。5T4は、免疫療法剤としての使用もまた提案された(WO00/29428参照)。5T4の抗原ペプチドは例えばUS05/0100958に開示されており、その内容は参照により組み込まれている。
【0098】
いくつかの係属中の出願、例えば米国出願公開番号2003/0018004および番号2005/0032216は、一般に抗5T4モノクローナル抗体をコードしている核酸、そのベクターおよび宿主細胞に関する。一般にヒト化抗5T4 H8モノクローナル抗体およびそのカリケアマイシンコンジュゲート、ならびにこれらのカリケアマイシンコンジュゲートを使用した治療方法に関する仮特許出願が提出されている(米国出願公開番号2006/0088522)。これらの出願の全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0099】
抗IL13抗体
本発明の方法により分離することができる抗体の別の例は、抗IL−13抗体である。インターロイキン13(IL−13)は、Tリンパ球およびマスト細胞により分泌される、以前に特徴付けられたサイトカインである(McKenzieら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:3735〜39;Bostら(1996)Immunology87:663〜41)。用語「IL−13」は、インターロイキン13を表し、IL−13のプロセシングされていない完全長前駆体型および翻訳後開裂の結果として生じる成熟型を含む。この用語は、修飾(例えば組換え修飾)された配列を含めて、成熟IL−13に関連する少なくともいくつかの生物学的活性を維持する、IL−13の任意の断片および変異体も表す。用語「IL−13」は、ヒトIL−13およびその他の脊椎動物の種が含まれる。いくつかの係属中の出願、例えば米国出願公開番号2006/0063228Aおよび番号2006/0073148がヒトおよびサルのIL−13、IL−13ペプチドに対する抗体、それを産生するベクターおよび宿主細胞を開示している。これらの全公報の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0100】
IL−13はIL−4といくつかの生物学的活性を共有する。例えば、IL−4またはIL−13のいずれかは、B細胞においてIgEのアイソタイプスイッチを引き起こすことができる(Tomkinsonら(2001)J.Immunol.166:5792〜5800)。さらに、喘息患者では細胞表面CD23および血清CD23(sCD23)のレベル増加が報告された(Sanchez−Guererroら(1994)Allergy49:587〜92;DiLorenzoら(1999)Allergy Asthma Proc.20:119〜25)。しかも、IL−4またはIL−13のいずれかはB細胞および単球上のMHCクラスIIおよび低親和性IgE受容体(CD23)の発現をアップレギュレーションすることができ、その結果として、抗原提示の増強およびマクロファージ機能の調節が生じる(Tomkinsonら、上記)。これらの観察は、IL−13が気道好酸球増加症および気道過敏症(AHR)の発生に重要なプレーヤーとなりうることを示唆している(Tomkinsonら、上記;Wills−Karpら(1998)Science282:2258〜61)。したがって、IL−13の阻害は、呼吸器障害(例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD))、気道炎症を伴うその他の状態、好酸球増加症、線維症、および過剰粘液産生(例えば嚢胞性線維症および肺線維症)、アトピー性障害(例えばアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎)、皮膚(アトピー性皮膚炎)、消化器(例えば潰瘍性大腸炎および/またはクローン病などの炎症性腸疾患(IBD))、肝臓(例えば肝硬変、肝細胞癌)の炎症状態および/または自己免疫状態、強皮症、白血病、膠芽腫、およびリンパ腫(例えばホジキンリンパ腫)などの腫瘍または癌(例えば軟部組織腫瘍または固形腫瘍)、ウイルス感染(例えばHTLV−1による)、他の器官の線維症、例えば肝臓の線維症(例えばBおよび/またはC型肝炎ウイルスにより起こる線維症)を非限定的に含めたいくつかの炎症状態および/またはアレルギー状態の病態の改善に有用である可能性がある。
【0101】
抗IL22抗体
本発明の方法により分離することができる別の抗体の例は抗IL−22抗体である。インターロイキン22(IL−22)は、IL−10と配列相同性を示す、以前に特徴付けられたクラスIIサイトカインである。T細胞におけるその発現は、IL−9またはConAによりアップレギュレーションされる(Dumoutier L.ら(2000)Proc Natl Acad Sci USA97(18):10144〜9)。LPS投与に応答してIL−22 mRNAの発現がin vivoで誘導されること、およびIL−22が急性期応答を示すパラメーターを調節すること(Dumoutier L.ら(2000)上記;Pittman D.ら(2001)Genes and Immunity2:172)、ならびにマウスのコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルにおいて抗IL−22中和抗体を使用することによるIL−22活性の低下が炎症症状を改善することが研究から示された。したがって、例えば自己免疫障害(例えば関節リウマチなどの関節炎性障害)、呼吸器障害(例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD))、例えば皮膚(例えば乾癬)、心血管系(例えばアテローム性動脈硬化症)、神経系(例えばアルツハイマー病)、腎臓(例えば腎炎)、肝臓(例えば肝炎)、および膵臓(例えば膵炎)の炎症状態の治療のために、IL−22アンタゴニスト、例えば抗IL−22中和抗体およびその断片を使用して、in vivoで免疫抑制を誘導することができる。
【0102】
用語「IL−22」は、IL−22のプロセシングされていない完全長前駆体型および翻訳後開裂の結果として生じた成熟型を含めたインターロイキン22を表す。この用語は、修飾された配列を含めて、成熟IL−22に関連する少なくともいくつかの生物学的活性を維持するIL−22の任意の断片および変異体も表す。用語「IL−22」は、ヒトIL−22およびその他の脊椎動物の種が含まれる。ヒトおよび齧歯動物IL−22のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列、ならびにIL−22に対する抗体は、例えば米国出願公開番号2005−0042220および番号2005−0158760、ならびに米国特許第6939545号に開示されている。これらの公報全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0103】
抗GDF8抗体
本発明の方法により分離することができるなお別の例示的な抗体は、抗GDF8抗体である。ミオスタチンとしても知られている成長分化因子8(GDF−8)は分泌蛋白であり、形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリーの構造的に関係する成長因子のメンバーであり、これら成長因子の全てが生理学的に重要な成長調節特性および形態形成特性を有する(Kingsleyら(1994)Genes Dev.、8:133〜146;Hoodlessら(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.、228:235〜272)。TGF−βと同様に、ヒトGDF−8は375アミノ酸長の前駆蛋白として合成される。前駆GDF−8蛋白はホモ二量体を形成する。プロセシングのときにアミノ末端プロペプチドがArg−266で開裂する。「潜在型結合ペプチド」(LAP)として知られている開裂したプロペプチドは、このホモ二量体に非共有結合したままであることによって、この複合体を不活性化することができる(Miyazonoら(1988)J.Biol.Chem.263:6407〜6415;Wakefieldら(1988)J.Biol.Chem.263:7646〜7654;Brownら(1990)Growth Factors、3:35〜43;およびThiesら(2001)Growth Factors、18:251〜259)。成熟GDF−8とプロペプチドとの複合体は、一般に「小型潜在型複合体(small latent complex)」と呼ばれる(Gentryら(1990)Biochemistry、29:6851〜6857;Derynckら(1995)Nature、316:701〜705;およびMassague(1990)Ann.Rev.Cell Biol.、12:597〜641)。その他の蛋白もまた成熟GDF−8と結合してその生物学的活性を阻害することが知られている。そのような阻害蛋白にはフォリスタチンおよびフォリスタチン関連蛋白がある(Gamerら(1999)Dev.Biol.、208:222〜232)。
【0104】
用語「GDF−8」は成長分化因子8を表し、必要に応じて、GDF−8に構造または機能的に関係する因子、例えばBMP−11およびTGF−βスーパーファミリーに属するその他の因子を表す。この用語は、GDF−8のプロセシングされていない完全長前駆体型、ならびに翻訳後開裂の結果として生じた成熟型およびプロペプチド型を表す。この用語は、修飾された配列を含めて、成熟GDF−8に関連する少なくともいくつかの生物学的活性を維持するGDF−8の任意の断片および変異体も表す。ヒトGDF−8および(マウス、ヒヒ、ウシ、ニワトリを含む)多数のその他の哺乳動物種のアミノ酸配列は、例えばUS2004−0142382、US2002−0157125、およびMcPherronら(1997)Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.、94:12457〜12461に開示されており、この全ての内容は、その全体がこれによって参照により組み込まれている)。GDF−8に対する中和抗体の例は、例えばUS2004−0142382に開示されており、この例を使用して、筋肉組織または骨密度の増加が望ましい状態を治療または予防することができる。疾患および障害の例には、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)、筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮症、臓器萎縮症、虚弱、トンネル症候群、鬱血性閉塞性肺疾患、筋肉減少症、悪液質、およびその他の筋消耗症候群などの筋肉および神経筋障害、脂肪組織障害(例えば肥満)、2型糖尿病、耐糖能障害、代謝性症候群(例えばシンドロームX)、熱傷などの外傷または窒素不均衡により誘導されるインスリン抵抗性、ならびに骨変性疾患(例えば骨関節炎および骨粗しょう症)が含まれる。
【0105】
可溶性受容体および受容体融合体
いくつかの実施形態では、本発明の方法により分離される蛋白は、可溶性受容体またはその断片とすることができる。可溶性受容体の例には、可溶性腫瘍壊死因子α受容体およびβ受容体などの受容体(TNFR−1(1991年3月20日に公表されたEP417563)、TNFR−2(1991年3月20日に公表されたEP417014)、ならびにNaismithおよびSprang、J Inflamm.47(1〜2):1〜7、1995〜96に総説されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)の細胞外ドメインが含まれる。その他の実施形態では、可溶性受容体には、例えばUS2003−0108549(この内容もまた参照により組み込まれている)に記載されているようなインターロイキン21受容体(IL−21R)の細胞外ドメインが含まれる。
【0106】
その他の実施形態では、本発明の方法は、可溶性受容体融合体を分離するために使用される。融合蛋白は、ターゲティング部分、例えば可溶性受容体断片またはリガンドと、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgE)を含めた様々なアイソタイプの免疫グロブリン鎖、Fc断片、重鎖定常領域とを含むことができる。例えば融合蛋白は、受容体の細胞外ドメインと、例えばそれが融合したヒト免疫グロブリン(例えばヒトIgG、例えばヒトIgG1もしくはヒトIgG4、またはその突然変異型)のFc鎖とを含むことができる。一実施形態では、ヒトFc配列は1つまたは複数のアミノ酸で突然変異しており、例えば残基254および257で野生型配列から突然変異して、Fc受容体の結合が低下している。融合蛋白は、さらに、第1部分を第2部分、例えば免疫グロブリン断片に結合させるリンカー配列を含むことができる。例えば融合蛋白は、ペプチドリンカー、例えば長さ約4から20アミノ酸、さらに好ましくは5から10アミノ酸のペプチドリンカーを含むことがあり、このペプチドリンカーは長さ8アミノ酸である。例えば、融合蛋白には、式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly)y(式中、yは1、2、3、4、5、6、7、または8である)を有するペプチドリンカーを含むことができる。その他の実施形態では、さらなるアミノ酸配列を融合蛋白のN末端またはC末端に付加して、発現、立体柔軟性、検出および/または単離もしくは精製を促進することができる。
【0107】
ある実施形態では、可溶性受容体融合体は可溶性TNFR−Ig(例えばTNF受容体、例えばp55もしくはp75ヒトTNF受容体の可溶性断片、またはその誘導体)、例えば75kdのTNFR−IgG(例えばヒトIgG1のFc部分に融合した75kDのTNF受容体)を含む。
【0108】
本発明のキメラ蛋白または融合蛋白は、標準的な組換えDNA技法により産生させることができる。例えば、異なるポリペプチド配列をコードしているDNA断片は、従来技法に従って、例えば連結のための平滑末端または付着末端、適切な末端を用意するための制限酵素消化、必要に応じた付着末端の平滑化、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結を用いることによりフレーム内で一緒に連結する。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含めた従来技法により合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続する遺伝子断片の間で相補的突出を生じるアンカープライマーを用いて行うことができ、これらの遺伝子断片を続いてアニーリングし、再増幅させてキメラ遺伝子配列を作製することができる(例えばAusubelら(編)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、1992参照)。さらに、融合部分をコードしている多数の発現ベクターが市販されている(例えば免疫グロブリン重鎖のFc領域)。免疫グロブリン融合ポリペプチドは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第5516964号、第5225538号、第5428130号、第5514582号、第5714147号、および第5455165号に記載されている。
【0109】
成長因子およびサイトカイン
医薬品および/または市販薬剤として有効であることが示され、本発明の教示により望ましくは産生することができる別のクラスのポリペプチドには、成長因子およびサイトカインなどのその他のシグナル伝達分子がある。
【0110】
成長因子は、典型的には細胞により分泌され、他の細胞上の受容体に結合し、それを活性化し、受容体細胞の代謝変化または発生変化を開始する糖蛋白である。哺乳動物成長因子および他のシグナル伝達分子の非限定的な例には、サイトカイン、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、aFGFおよびbFGFなどの線維芽細胞成長因子(FGF)、TGF−αおよびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5を含めたTGF−βなどの形質転換成長因子(TGF)、インスリン様成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合蛋白、CD−3、CD−4、CD−8、およびCD−19などのCD蛋白、エリスロポイエチン、骨誘導因子、免疫毒素、骨形成蛋白(BMP)、インターフェロンα、β、およびγなどのインターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSF、およびG−CSF、インターロイキン(TL)、例えばIL−1からIL−13(例えばIL−11)、腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβ、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、濾胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、グルカゴン、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブランド因子などの凝固因子、プロテインCなどの抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、ウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、造血成長因子、エンケファリナーゼ、RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted)、ヒトマクロファージ炎症性蛋白(MIP−1−α)、ミュラー管抑制物質、レラクシンA鎖、レラクシンB鎖、プロレラクシン、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3、4、5、もしくは6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)などの神経栄養因子、またはNGF−βなどの神経成長因子がある。当業者は、本発明の方法および組成物により発現させることができるその他の成長因子またはシグナル伝達分子を認識しているものである。
【0111】
成長因子またはその他のシグナル伝達分子のグリコシル化パターンの特異的改変は、その治療的性質に劇的な効果を有することが示された。一例として、慢性貧血を患う患者の通常の治療方法は、患者による赤血球の産生を促進するために、組換えヒトエリスロポイエチン(rHuEPO)の頻回注射を患者に行うことである。rHuEPOのアナログであるダルベポエチンアルファ(Aranesp(登録商標))は、通常のrHuEPOよりも長い持続時間をもつように開発された。ダルベポエチンアルファとrHuEPOとの主な違いは、2つの余剰のシアル酸含有N結合オリゴ糖鎖の存在である。ダルベポエチンアルファの産生は、in vitro糖工学を使用して実現された(全体が参照により本明細書に組み込まれているElliottら、Nature Biotechnology21(4):414〜21、2003参照)。Elliottらは、rHuEPOポリペプチド主鎖に余剰のグリコシル化部位を組み込むためにin vitro突然変異誘発を使用し、その結果としてダルベポエチンアルファアナログの発現をもたらした。余剰のオリゴ糖鎖は、EPO受容体結合部位の遠位に位置し、受容体の結合を妨害しないようである。しかし、ダルベポエチンアルファの半減期はrHuEPOの最大3倍の長さであり、その結果としてずっと有効な治療剤となる。
【0112】
凝固因子
凝固因子は、医薬品および/または市販薬剤として有効なことが示された。血友病Bは患者の血液が凝固できない障害である。したがって、出血を来すどのような小さな創傷も潜在的に致命的な事象である。例えば、第IX凝固因子(第IX因子または「FIX」)は、その欠損が血友病Bを生じる1本鎖糖蛋白である。FIXは1本鎖チモーゲンとして合成され、これは、活性化ペプチドの放出により2本鎖セリンプロテアーゼ(第IXa因子)に活性化されることができる。第IXa因子の触媒ドメインは重鎖に位置する(全体が参照により本明細書に組み込まれているChangら、J.Clin.Invest.、100:4、1997参照)。FIXは、N結合およびO結合糖鎖の両方を含む複数のグリコシル化部位を有する。セリン61でのある特定のO結合構造(Sia−α2,3−Gal−β1,4−GlcNAc−β1,3−Fuc−α1−O−Ser)は、かつてFIXに独特であると考えられていたが、それ以来、哺乳動物およびドロソフィラにNotch蛋白を含む少数のその他の分子に見出された(Maloneyら、Journal of Biol.Chem.、275(13)、2000)。細胞培養したチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞により産生されたFIXは、セリン61オリゴ糖鎖に幾分変動を示す。これらの異なる糖形態およびその他の潜在的糖形態は、ヒトもしくは動物に投与された場合に異なる凝固誘導能を有するおそれがあり、かつ/または血中で異なる安定性を有して有効性の低い凝固を生じるおそれがある。
【0113】
臨床的には血友病Bと区別が付かない血友病Aは、1本鎖として合成され、次に2本鎖活性型にプロセシングされる別の糖蛋白であるヒト第VIII凝固因子の異常により起こる。本発明は、第VIII凝固因子の凝固活性を調節するために、第VIII凝固因子のグリコシル化パターンを制御または改変するためにも採用することができる。本発明により産生させることができるその他の凝固因子には、組織因子およびフォンウィルブランド因子がある。
【0114】
酵素
医薬品および/または市販薬剤として有効なことが示され、本発明の教示により望ましくは産生することができる別のクラスのポリペプチドには、酵素がある。酵素は、グリコシル化パターンが酵素活性に影響する糖蛋白とすることができる。したがって、本発明は、細胞培養で酵素を産生させるためにも使用することができ、ここで、産生された酵素は、より広範囲であるか、さもなければより望ましいグリコシル化パターンを有する。
【0115】
1つに過ぎない非限定的な例として、グルコセレブロシダーゼ(GCR)の欠損はゴーシェ病として知られる状態を生じ、この疾患はある細胞のライソソームへのグルコセレブロシダーゼ蓄積によって起こる。ゴーシェ病の対象は、脾腫大、肝腫大、骨格障害、血小板減少症、および貧血を含めた一連の症状を示す。FriedmanおよびHayesは、アミノ酸一次配列に1置換を有する組換えGCR(rGCR)が、天然GCRに比べてグリコシル化パターンの改変、具体的にはフコース残基およびN−アセチルグルコサミン残基の増加を示すことを示した(米国特許第5549892号)。
【0116】
FriedmanおよびHayesは、このrGCRが天然rGCRに比べて薬物動態的性質の向上を示すことも実証した。例えば、天然GCRの約2倍のrGCRは肝クッパー細胞を標的とした。これら2つの蛋白のアミノ酸一次配列は1残基が異なるが、FriedmanおよびHayesは、rGCRのグリコシル化パターン改変がクッパー細胞への標的付けにも影響すると仮定した。当業者は、酵素的、薬物動態的、および/または薬力学的性質の改変を示す結果、グリコシル化パターンに改変を生じる酵素のその他の公知の例を認識しているものである。
【0117】
蛋白の産生
本発明の方法により分離される蛋白は、当技術分野で十分に公知の技法を使用して組換え産生させることができる。この蛋白をコードしているヌクレオチド配列は、典型的には所望の量の修飾抗体を産生させるために使用することができる宿主細胞に導入するために、発現ベクターに挿入され、今度はポリペプチドを与える。用語「ベクター」は、多くの場合核酸、例えば遺伝子を含み、さらに核酸の複製、転写、安定性、および/または宿主細胞からの蛋白の発現もしくは分泌に必要な最小エレメントを含む核酸構築物を含む。そのような構築物は、染色体外エレメントとして存在してもよく、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。
【0118】
用語「発現ベクター」は、所望の蛋白産物の高レベル発現のために核酸構築物が最適化されている特異的な種類のベクターを含む。発現ベクターは、多くの場合、特異的な種類の細胞での高レベル転写のために最適化され、かつ/または特異的誘導剤の使用に基づいて発現が構成性であるように最適化された、プロモーターおよびエンハンサーエレメントなどの転写調節因子を有する。発現ベクターは、さらに蛋白の適正で、かつ/または高い翻訳を与える配列を有する。当業者に公知なように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、およびレトロウイルスからなる群から容易に選択することができる。用語「発現カセット」は、遺伝子を有し、その遺伝子に加えて、宿主細胞におけるその遺伝子の適正で、かつ/または高い発現をさせるエレメントを有する核酸構築物を含む。抗体を産生させるために、軽鎖および重鎖をコードしている核酸を発現ベクターに挿入することができる。そのような配列は、同一の核酸分子(例えば同一の発現ベクター)に存在してもよく、代わりに別々の核酸分子(例えば別々の発現ベクター)から発現させてもよい。
【0119】
用語「作動可能に連結した」は、構成要素が意図した方法で機能可能な(例えば機能的に連結した)関係にある並置が含まれる。例として、関心対象のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーター/エンハンサーは、前記ポリヌクレオチドに連結する結果、プロモーター/エンハンサーにより指令される発現を活性化する状態で、関心対象のポリヌクレオチドの発現が実現される。
【0120】
発現ベクターは、典型的にはエピソームまたは宿主染色体DNAに内在する部分のいずれかとして宿主生物において複製することができる。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列を用いて形質転換された細胞の検出を可能にするために、選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、またはネオマイシン耐性)を有する(例えばItakuraら、米国特許第4704362号参照)。免疫グロブリンDNAカセット配列、挿入配列、および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞でのベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)および選択マーカー遺伝子などのさらなる配列を有することがある。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば米国特許第4399216号、第4634665号、および第5179017号(全てAxelらによる)参照)。例えば、典型的には選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞にG418、ヒグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を用いてdhfr−宿主細胞に使用するためのもの)およびneo遺伝子(G418選択用)がある。
【0121】
ベクターが適切な宿主細胞に組み込まれたならば、その宿主細胞は、ヌクレオチド配列の高レベル発現ならびに所望の抗体の収集および精製に適した条件で維持される。細胞培養と、蛋白またはポリペプチドの発現とに感受性の任意の宿主細胞は、本発明により利用することができる。ある実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。本発明により使用することができる哺乳動物細胞の非限定的な例には、BALB/cマウス骨髄腫系(NSO/l、ECACC第85110503号)、ヒト網膜芽細胞(PER.C6、CruCell(ライデン、オランダ))、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL1651)、ヒト胎児腎臓系(293または懸濁培養での成長用にサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.、36:59、1977);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216、1980)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.、23:243〜251、1980);サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587)、ヒト子宮頸部癌細胞(HeLa、ATCC CCL2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34)、バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.、383:44〜68、1982)、MRC5細胞、FS4細胞、およびヒト肝細胞癌系(Hep G2)がある。
【0122】
さらに、本発明によりポリペプチドまたは蛋白を発現する任意の数の市販および非市販のハイブリドーマ細胞系を利用することができる。当業者は、ハイブリドーマ細胞系が異なる栄養要求性を有することがあり、かつ/または最適の成長およびポリペプチドもしくは蛋白の発現のために異なる培養条件を必要とすることがあると認識しているものであり、必要に応じて条件を変更することができるものである。
【0123】
これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサーなどの発現制御配列(Queenら、Immunol.Rev.89:49(1986))、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列などの必要なプロセシング情報部位を含むことができる。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。例えばCoら、(1992)J.Immunol.148:1149を参照されたい。哺乳動物宿主細胞の発現用の好ましい調節配列には、FF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞での高レベルの蛋白発現を指令するウイルスエレメントが含まれる。ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えばStinskiによる米国特許第5168062号、Bellらによる米国特許第4510245号、およびSchaffnerらによる米国特許第4968615号を参照されたい。例示的な実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子は、(例えばCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなどのSV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する)エンハンサー/プロモーター調節エレメントに作動可能に連結させ、遺伝子の高レベル転写を推進する。本発明の例示的な実施形態では、この構築物は、真核宿主細胞に本発明のポリペプチドを相対的に高レベル発現する内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。適合性のIRES配列は米国特許第6193980号に開示されており、この特許もまた本明細書に組み込まれている。
【0124】
あるいは、コード配列は、トランスジェニック動物のゲノムに導入し、続いてトランスジェニック動物の乳汁に発現させるために導入遺伝子に組み込むことができる(例えばDeboerら、US5741957、Rosen、US5304489、およびMeadeら、US5849992参照)。適切な導入遺伝子には、カゼインまたはβラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子に由来するプロモーターおよびエンハンサーに作動可能に連結した軽鎖および/または重鎖についてのコード配列が含まれる。
【0125】
原核宿主細胞もまた、本発明の抗体の産生に適することがある。イー・コリは、本発明のポリヌクレオチド(例えばDNA配列)をクローニングするために特に有用な一原核宿主である。使用に適するその他の微生物宿主には、バシルス・サチルスなどの桿菌属、エシェリキア、サルモネラ、およびセラチアなどの腸内細菌科、ならびに種々のシュードモナス種がある。これらの原核宿主では、発現ベクターを作ることもでき、発現ベクターは典型的には宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば複製起点)を有するものである。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージλ由来のプロモーター系などの任意の数の様々な十分に公知のプロモーターが存在するものである。プロモーターは、所望によりオペレーター配列を用いて典型的には発現を制御するものであり、転写および翻訳を開始し、完了するためにリボソーム結合部位配列などを有するものである。
【0126】
原核生物における蛋白の発現は、ほとんどの場合融合蛋白または非融合蛋白のいずれかの発現を指令している構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを用いてイー・コリで行われる。融合ベクターは、それにコードされている抗体に、多くの場合組換え抗体の定常領域にいくつかのアミノ酸を付加するが、その抗体の特異性または抗原認識には影響しない。融合ペプチドのアミノ酸の付加は、例えばマーカー(例えばmycまたはflagなどのエピトープタグ)として抗体にさらなる機能を付加することができる。
【0127】
酵母などのその他の微生物もまた発現に有用である。サッカロミセスは、所望通りに発現制御配列(例えばプロモーター)、複製起点、終結配列などを有する適切なベクターを伴う、好ましい酵母宿主である。典型的なプロモーターには、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよびその他の糖分解酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターには、とりわけアルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用を担う酵素由来のプロモーターが含まれる。
【0128】
関心対象のポリヌクレオチド配列を有するベクター(例えば重鎖および軽鎖をコードしている配列ならびに発現制御配列)は、十分に公知の方法により宿主細胞に導入することができ、その方法は細胞性宿主の種類に応じて異なる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、通常原核細胞に利用されるが、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、バイオリスティックス、またはウイルスに基づくトランスフェクションはその他の細胞性宿主に使用することができる。(一般に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれているSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、第2版、1989)を参照されたい)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクションの使用がある(一般にSambrookら、上記を参照)。トランスジェニック動物の産生のために、受精した卵母細胞に導入遺伝子をマイクロインジェクションすることもでき、胚性幹細胞のゲノムに組み込み、除核した卵母細胞にその細胞の核を導入することもできる。
【0129】
重鎖および軽鎖を別々の発現ベクターにクローニングするとき、これらのベクターを同時トランスフェクションし、無傷の免疫グロブリンの発現および集合を得る。いったん発現すると、本発明の抗体全体、その二量体、個別の軽鎖および重鎖、またはその他の免疫グロブリン形態は、本明細書に記載するように分離し、かつ/または硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含めた当技術分野で公知の手順によりさらに精製することができる(一般にScopes、Protein Purification(Springer−Verlag、ニューヨーク(1982)参照)。医薬用途には少なくとも均質性が約90から95%の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98から99%以上の均質性が最も好ましい。
【0130】
以下の実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0131】
実施例1
様々な陽イオンおよび陰イオンを用いたフロキュレーション:様々なモノクローナル抗体(mAb)(表1に示す)は、無血清培地で培養した組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により産生させた。125mLのエルレンマイヤーフラスコに細胞含有馴化培地約50mLを分注した(1000mLフラスコに400mL入れた抗GDF8#2を有する30/20リン酸カルシウムの例および2000mLフラスコに1000mL入れた抗IL13#1を有する30/20リン酸カルシウムの例を除く)。pHを制御するためにHEPESを40mMまで添加した。最終目標濃度(表1参照)に達するように、この溶液に金属陽イオンの濃縮溶液を添加し、静かに混合した。陰イオン濃縮溶液をこの混合物(表1参照)に添加して、最終陰イオン濃度を実現し、静かに混合した。(下記表1で星印(*)で示した一部の実施例では、陰イオンを最初に添加し、次に陽イオンを添加した)。pHは、目標となるpH範囲までNaOHの添加により増加させるか、またはHClの添加により減少させた。多くの例では、pHは調整する必要がなかった。この混合物は、陰性対照と共に振盪器上で18〜25℃で1から4時間インキュベートさせた。インキュベーションの後で、この混合物を50mL遠沈管に注いだ。各混合物を340gで10分間遠心分離した。清澄化された上清を分注し、比濁計(HACH(ラブランド、コロラド州))を使用して濁度を測定した。結果として得られた濁度は、未処理対照の結果からの減少率として表1に報告する。抗体濃度は、抗体に一般的なプロテインA HPLC法により測定した。未処理対照に比べた回収率を表1に報告する。
【0132】
表1:陽イオンであるカルシウム、マグネシウム、マンガン、コバルト(II)、およびニッケルについてのフロキュレーションの結果。陰イオンを陽イオンの前に添加した星印(*)を付けた場合を除き、全ての処理は陰イオンの前に陽イオンを添加して行った。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
【表5】

【0138】
一部試料の上清中のカルシウムおよびリン酸の残留レベルを測定した。残留カルシウムは、BioAssay Systems QuantiChrom(商標)Calcium Assay Kit(DICA−500)を使用して測定した。残留リン酸は、BioAssay Systems Malachite Green Phosphate Assay Kit(POMG−25H)を使用して測定した。表1でカルシウム40mMおよびリン酸20mMを有する抗IL13#2試料では、遠心分離後の上清はカルシウム8.19mMおよびリン酸1.04mMを含有した。このレベルの可溶性カルシウムおよびリン酸は8.5×10−6のKspに換算することができる。表1でカルシウム80mMおよびリン酸20mMを有する抗AB#1試料では、遠心分離後の上清は、カルシウム22.2mMおよびリン酸0.4mMを含有した。このレベルの可溶性カルシウムおよびリン酸は、8.4×10−6のKspに換算される。
【0139】
実施例2
陰イオン/陽イオンの添加順序の効果:mAbである抗GDF8#1は、無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた。約50mLの細胞含有馴化培地を3本の125mLエルレンマイヤーフラスコA、B、およびCに分注した。試料Aは未処理のまま放置し、陰性対照とした。試料BおよびCのpHを制御するためにHEPESを40mMまで添加した。濃度50mMまで5M塩化カルシウムを試料Bに添加し、静かに混合後、0.5M亜硫酸ナトリウムを濃度33.3mMまで添加した。試料Cについては添加順序を逆にした。0.5M亜硫酸ナトリウムを濃度33.3mMまで添加し、静かに混合後、5M塩化カルシウムを濃度50mMまで添加した。3つの混合物は全て7.4から7.6のpHを有した。これらの混合物を振盪器上で18〜25℃で1時間インキュベートさせた。インキュベーション後に、これらの混合物を50mL遠沈管に注いだ。各混合物を340gで10分間遠心分離した。清澄化された上清を取り出し、プロテインA HPLCにより抗体濃度について、比濁計を用いて濁度についてアッセイした。
【0140】
試料BおよびCは、共に未処理試料に比べて94%の抗体回収率を有した。最初に陽イオンを添加した試料Bは未処理試料に比べて沈殿が形成したことを示す濁度の増加を示したが、この沈殿は遠心分離により容易に除去するには小さすぎた。最初に陰イオンを添加した試料Cは、未処理試料に比べて濁度の46%の減少を示し、これは、形成した沈殿が遠心分離により容易に沈殿するのに十分な大きさであったことを示している。濁度の減少は、若干量の細胞片および/またはコロイド物質が沈殿により結合され、ペレット中に除去されたことも示している。
【0141】
実施例3
沈殿剤としてカルシウムおよびリン酸を使用したパイロットスケール実験ならびに下流の清澄化工程およびクロマトグラフィー工程に及ぼす効果:mAbである抗AB#1は、500Lバイオリアクター中の無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた。収集時に、培養液を室温(18〜25℃)にした。培養液350Lを未処理のまま放置し、陰性対照とした。培養液150Lを200Lカルボイに移し、オーバーヘッドミキサーでゆっくりと混合した。pHを制御するために緩衝液を40mMまで添加した。次に、2Mリン酸カリウムを濃度20mMまで添加した。次に、5M塩化カルシウムを濃度30mMまで添加した。この混合物のpHは7.3であった。フロキュレーションした培養液を混合しながら160分間インキュベートした。インキュベーションの終わりにこの混合物のpHは7.0であった。
【0142】
フロキュレーションした培養液および未処理培養液の両方は、Alfa Laval BTPX205分離板型遠心分離器により流速4.4L/minおよびボウル速度7630RPM(8000g)で加工処理した。未処理試料についての117NTUに比べて、フロキュレーションした試料の定常状態遠心分離物の濁度は14NTUであり、濁度の88%の減少であった。フロキュレーションした遠心分離物での抗体力価の回収率は未処理遠心分離物の96%であった。フロキュレーションした遠心分離物中の宿主細胞蛋白(HCP)のレベルは、533341ppmから348087ppmに、未処理遠心分離物に比べて35%減少した。
【0143】
フロキュレーションした遠心分離物および未処理遠心分離物の両方にフィルター1平方メートル当たり遠心分離物250Lの性能までMillipore A1HCパッドフィルターを通過させて加工処理した。未処理試料は、24L/mで4NTUから121L/mで26NTUまで、254L/mで37NTUまでと、着実に増加する濁度の流出を示した。未処理試料についての最終的なパッド濾液プールの濁度は21NTUであった。フロキュレーションした試料は、21L/mで2NTUから150L/mで6NTUまで、254L/mで7NTUまでと、パッドを通過した濁度にわずかな増加だけを示した。フロキュレーションした試料についての最終的なパッド濾液プールの濁度は5NTUで、未処理試料に比べて濁度の76%の減少であった。
【0144】
パッド濾過および0.2μmポリッシングフィルターを通過させたさらなる濾過の後に、試料はGE Healthcare MabSelectプロテインAアフィニティーカラムを使用したクロマトグラフィーにかけた。抗体をプロテインAカラムから溶出させた場合、ピークプールは多くの場合混濁しており、ピークを中和したときに濁度は典型的には増加する。未処理ピークのプールは10NTUの濁度を有し、中和すると22NTUまで増加した。フロキュレーションしたピークのプールは3NTUの濁度を有し、中和すると未処理ピークよりも63%低い8NTUまで増加した。
【0145】
実施例4
カルシウムおよびリン酸を用いたフロキュレーションは、清澄化した馴化培地およびプロテインAのピークの両方で濁度減少を生じる。細胞関連不純物および産物関連不純物の両方の有意な減少も実現した。
【0146】
mAbである抗5T4は、無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた。培地約3Lを未処理のままで放置し、陰性対照とした。別に培養液3Lを4L容器に入れた。pHを制御するために緩衝液を40mMまで添加し、18〜24℃で静かに混合した。次に、2Mリン酸カリウムを濃度20mMまで添加し、この溶液を静かに混合した。次に、5M塩化カルシウムを濃度30mMまで添加し、この溶液を静かに混合した。この混合物のpHは7.2であった。フロキュレーションした培養液を3個の2Lエルレンマイヤーフラスコに移し、混合しながら2時間インキュベートした。インキュベーションの終わりにこの混合物のpHは7.0であった。
【0147】
フロキュレーションした培養液および未処理の培養液の両方の試料50mLを340gで10分間遠心分離した。清澄化した上清を取り出し、プロテインA HPLCにより抗体濃度について、そして比濁計を使用して濁度についてアッセイした。産物関連物質の総回収率は未処理試料に比べて78%であった。未処理試料の濁度は29NTUであった。フロキュレーションした試料の濁度は2NTUであり、未処理試料に比べて濁度の93%の減少であった。
【0148】
フロキュレーションした試料および未処理試料の両方は、Millipore A1HCパッドフィルターを通過させて加工処理した。パッド濾過および0.2μmポリッシングフィルターを通過させたさらなる濾過の後に、試料はGE Healthcare MabSelectプロテインAアフィニティーカラムを使用したクロマトグラフィーにかけた。高濃度でのプロテインAカラムからの抗体溶出液として、産物ピークの頂点での物質は沈殿することが多く、混濁した溶液を生じた。分光光度計で吸光度600nmにより測定したとき、未処理試料のピーク頂点での沈殿析出レベルは1.85AUであった。分光光度計で吸光度600nmにより測定したとき、フロキュレーションした試料のピーク頂点での沈殿折出レベルは0.03AUであり、未処理試料に比べて濁度の98%の減少であった。
【0149】
抗体をプロテインAカラムから溶出させると、ピークのプールは時折混濁している。中和すると、物質が沈殿して溶液から沈降するときの濁度は、pH5.5からpH6.0の間で典型的には有意に増加する。この沈殿の一部はpHが7を超えると再び可溶性になる傾向がある。抗体濃度8.1mg/mLの未処理ピークのプールは、溶出時に濁度8.5NTUを有し、pH5.5から6.0では839NTUに増加し、pH7.0では53NTUに減少した。0.2μm滅菌等級のフィルターを通過させて濾過すると、濁度は40NTUに減少しただけであった。
【0150】
フロキュレーションした産物のプールは小容量でカラムから溶出し、その結果さらに濃縮されていた。抗体濃度15.1mg/mLのフロキュレーションしたピークのプールは、溶出時に濁度5.6NTUを有し、pH5.5から6.0では31NTUに増加し、これは、対照から濁度の96%の減少であった。濁度は、15.1mg/mLのときpH7.0で46NTUにやや増加した。0.2μmの滅菌等級のフィルターを通過させて濾過すると、濁度は8.1NTUに減少し、これは、対照から80%の減少であった。
【0151】
中和したプロテインAのピークを未処理対照と一致するように濃度8.1mg/mLに希釈すると、濾過していないフロキュレーションした試料の濁度は46NTUから25NTUに減少し、これは、未処理試料に比べて53%の減少であった。0.2μm滅菌等級のフィルターを通過させて濾過すると、濁度は4.1NTUに減少し、これは、未処理試料に比べて濁度の90%の減少であった。
【0152】
プロテインAのピークのプールに存在する高分子量(HMW)凝集体のレベルは、サイズ排除HPLCにより測定した。未処理試料中の凝集体のレベルは9.51%であった。フロキュレーションした試料中の凝集体のレベルは1.05%であり、これは、未処理試料に比べて凝集体の89%の減少であった。凝集体の減少を考慮すると、培養液中の産物回収率78%は所望のモノマーの回収率85%に換算される。
【0153】
CHO細胞により分泌される望ましくない不純物である宿主細胞蛋白(HCP)のレベルは、ELISAを使用したプロセスのうち種々の工程で測定した。HCPレベルは、抗体1mg当たりのHCPのngに等しい百万分率(ppm)として報告する。未処理培養液中のHCPレベルは2.53E6ppmであった。フロキュレーションした馴化培地中のHCPレベルは3.83E5ppmで、これは、未処理培養液から84%の減少であった。未処理培養液およびフロキュレーションした培養液の両方が、パッドフィルターを通過すると、それぞれ1.02E6および1.62E5まで、HCPが約60%減少した。プロテインAカラムを通過して精製すると、未処理試料中のHCPレベルは1.03E5ppmまで90%だけ減少した。フロキュレーションした試料中のHCPレベルは、3.83E2ppmまで98%だけ減少した。全体的に見て、未処理精製手順についてHCPの1.4logの除去があった。フロキュレーションした精製手順は、HCPの3.8logの除去を実現し、未処理精製手順に比べてHCPの250倍の減少を生じた。
【0154】
いくつかの実施を記載したが、本発明はそれに限定されるわけではない。
【0155】
一例としていくつかの実施では、本明細書に記載するフロキュレーション方法は、細胞の不在下、例えば細胞を除去した後で行うことができる。その培地は無細胞不溶性物質を有することがある(下記実施例5参照)。
【0156】
実施例5
混濁した蛋白含有溶液の濾過を助けるために固体沈殿を形成させるためのカルシウムおよびリン酸の使用:mAbである抗GDF8#1を無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた。細胞はAlfa Laval BTPX205分離板型遠心分離器により除去し、結果として生じた遠心分離物をMillipore A1HCパッドフィルターを通過させて加工処理した。パッド濾過および0.2μmポリッシングフィルターを通過させたさらなる濾過の後に、試料はGE Healthcare MabSelectプロテインAアフィニティーカラムを使用してクロマトグラフィーにかけた。低pH緩衝液を使用して抗体をプロテインAカラムから溶出させると、ピークのプールは時折混濁している。中和すると濁度は典型的には有意に増加する。
【0157】
この実施例では、プロテインAのピークは4℃で7日間濾過せずに保ち、次に室温に加温した。ピークの濁度は192NTUであった。ピークを2つの800mL試料に分け、一方の試料を未処理のまま放置した。2つ目の試料に4mMリン酸カリウムおよび6mM塩化カルシウムを添加した。次に、処理した試料は2Lエルレンマイヤーフラスコ中で18〜25℃で1時間振盪した。振盪した後、処理した試料の濁度は460NTUであった。
【0158】
次に、未処理試料および処理した試料の両方は、17.7cmMillipore Express SHC0.5/0.2μmポリエーテルスルホンカプセルフィルターを通過させて濾過した。各フィルターを通過することができた溶液の量に基づいて最大フィルター性能を計算した。最大フィルター性能は、フィルターが詰まって溶液がそれ以上通過できなくなるまで、フィルター1mを通過することができる溶液のリットル数である。未処理試料は、約30L/mの最大フィルター性能に達することができたが、処理した試料は約1500L/mの最大フィルター性能に達し、これは、フィルター性能の50倍の増加であった。未処理試料および処理した試料両方のフィルター後の濁度は9NTUであり、これは、処理がさらなる粒子状物質の除去をそれ以上生じたとは思われないが、実際に濾過助剤として働き、フィルターが詰まるまで大容量の溶液にフィルターを通過させたことを示していた。
【0159】
実施例6
混濁した蛋白含有溶液中の粒子状物質の除去を助けるために固体沈殿を形成させるためのカルシウムおよびリン酸の使用に及ぼす規模および混合方法の効果:図2および3に「mAb B」と示す抗AB#2mAbは、パイロットスケールバイオリアクター中の無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた(細胞培養液160〜500L)。細胞含有馴化培地約125L、1.5L、または50mLを200Lカルボイ、2Lビーカー、または125mLエルレンマイヤーフラスコにそれぞれ分注した。pHを制御するためにHEPESを40mMまで添加した。200Lカルボイおよび2Lビーカーを撹拌羽根で混合した。125mLエルレンマイヤーは振盪器により混合した。リン酸カリウムの濃縮溶液を各混合物に添加し、最終溶液で最終濃度20mMを実現した。塩化カルシウム濃縮溶液を各溶液に添加して、最終目標濃度30mMを実現し、混合した。最終pHは7.0から7.5であった。この固体および培地は室温(20〜23℃)の混合条件で1時間を超えてインキュベートした。未処理試料の一定分量50mLならびに処理した試料125L、1.5L、および50mLを340×gで10分間遠心分離した。上清の濁度および抗体濃度を測定した。
【0160】
規模および混合方法が濁度に及ぼす効果を図2に示す。規模および混合方法(撹拌羽根または振盪器)には依存せずに、全てのフロキュレーションの例で濁度は対照よりも90%超減少する。さらに、処理した全ての試料で抗体回収率は未処理試料の100%であった。したがって、これらの大きく異なる条件について、本発明のフロキュレーションは規模または混合方法に依存するとは思われない。
【0161】
CHO細胞により分泌される不必要な不純物である宿主細胞蛋白(HCP)のレベルは、ELISAを使用して未処理上清および処理した125L試料で測定した。HCPレベルは、抗体1mg当たりのHCPのngに等しい百万分率(ppm)として報告する。処理した125L試料は、未処理試料に比べてHCPが50%減少した。
【0162】
実施例7
混濁した蛋白含有溶液中の粒子状物質の除去を助けるために固体沈殿を形成させるためのカルシウムおよびリン酸の使用に及ぼす混合速度の効果:図3に「mAb B」と示す抗AB#2mAbは、パイロットスケールバイオリアクター中の無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた(細胞培養液160〜500L)。細胞含有馴化培地約125Lを2つの200Lカルボイに入れた。pHを制御するためにHEPESを40mMまで添加した。混合は撹拌羽根で行い、一方はチップ速度0.9m/sで、もう一方は2.5m/sで運転した。リン酸カリウムの濃縮溶液をこの混合物に添加し、最終溶液で最終濃度20mMを実現した。塩化カルシウム濃縮溶液をこの溶液に添加して、30mMの最終目標濃度を実現し、混合した。最終pHは7.0から7.5であった。この固体および培地は室温(20〜23℃)の混合条件でインキュベートし、試料を様々な時点で採取した。各試料上清の濁度は、340×gで10分間遠心分離後に測定した。撹拌羽根のチップ速度が濁度に及ぼす効果を図3に示す。濁度は、1時間後に検討したフロキュレーションの例の全てで、チップ速度には依存せずに対照から90%超減少する。チップ速度が速いと、15分の時点で濁度の減少が速いと思われた。しかし、この差は有意ではない。したがって、1時間のインキュベーション後に検討した速度についての本発明のフロキュレーションは、チップ速度に依存するとは思われない。
【0163】
CHO細胞により産生された不必要な不純物である宿主細胞蛋白(HCP)のレベルは、ELISAを使用して未処理上清および処理した0.9m/s試料で測定した。HCPレベルは、抗体1mg当たりのHCPのngに等しい百万分率(ppm)として報告する。処理した試料は、未処理試料に比べてHCPが47%減少した。
【0164】
実施例8
大規模フロキュレーション:
沈殿剤としてカルシウムおよびリン酸を使用したパイロット実験および下流の清澄化工程およびクロマトグラフィー工程に及ぼす効果:mAbである抗IL−13#1(図4および5にmAb Eと示す)は、190Lバイオリアクター中の無血清培地で培養した組換えCHO細胞により5つの異なるバッチで産生させた。バイオリアクターを培養時間12〜14日で運転し、細胞は8×10〜11×10生細胞/mLの生存度を有し、66〜88%が生存していた。採集時に、培養液を室温(18〜25℃)にした。(最初の4つのバッチについては)培養液150Lは200Lカルボイに移すか、(最後のバッチについては)バイオリアクターの中に放置し、オーバーヘッドミキサーでゆっくりと混合した。pHを制御するためにHEPES緩衝液を40mMまで添加した。次に、2Mリン酸カリウムを濃度20mMまで添加した。次に、5M塩化カルシウムを濃度30mMになるように添加した。この混合物のpHは7から7.5であった。フロキュレーションした培養液は、混合しながら2から3時間インキュベートした。
【0165】
フロキュレーションした培養液は、4から5L/minの流速および7630RPM(8000g)のボウル速度でAlfa Laval BTPX205分離板型遠心分離器により加工処理した。図4に、得られた遠心分離上清の濁度を、(340gで10分間の未処理対照の遠心分離から得られた)フロキュレーションしていない試料の上清と比較する。全ての場合で、フロキュレーションは濁度を85%超減少させる。フロキュレーションした上清中の抗体力価の回収率は、インキュベーション時間の関数として図5に示すが、全ての場合で75%超である。試料50mLをバッチ403および405から採取し、125mLエルレンマイヤーフラスコ中でさらなる時間インキュベートした。7時間後にバッチ403は未処理試料の60%の力価を有し、バッチ405は未処理試料の80%の力価を有した。
【0166】
CHO細胞により分泌された不必要な不純物である宿主細胞蛋白(HCP)のレベルは、ELISAを使用して未処理上清および処理した遠心分離上清で測定した。HCPレベルは、抗体1mg当たりのHCPのngに等しい百万分率(ppm)として報告する。5つのバッチから処理した試料は、未処理試料に比べて49%〜69%のHCPの減少を示した。
【0167】
最初の3つのバッチは、Millipore A1HCパッドフィルターを通過させて、1平方メートルおよび1時間当たり120リットルの流束でフィルター1平方メートル当たり遠心分離上清270Lの性能まで加工処理し、圧力の増加も増加も伴わなかった。
【0168】
濁度により測定したとき、パッド濾過後の試料は一般に数日間安定なままであった。
【0169】
最後の2つのバッチは、パッドを通過させずに直接0.2μmフィルターにかけた。0.2μmフィルターの前にパッドフィルターを使用せずに、それぞれ730および160L/mのフィルター性能を実現した。これらのフィルター性能は、フロキュレーションしていない物質でのフィルター性能よりも濾過性の有意な向上を示している。室温(18〜24℃)で0.2μmで濾過した遠心分離上清(パッドなし)を保存すると、カルシウムおよびリン酸の沈殿継続が原因で、濁度は数時間以内に増加し始める。24〜48時間後に、沈殿は沈降し、容器の底にリン酸カルシウムの結晶層を形成する。結果として生じた清澄化した蛋白含有溶液は、沈殿の沈降前および後の両方で優れた濾過性を有する。沈殿への抗体の損失はない。
【0170】
最終バッチについてのフロキュレーションは、パイロットバイオリアクターで直接行った。リアクターは標準的な定置洗浄(CIP)手順(水すすぎに続いて60〜80℃の0.1N NaOHによる洗浄)を使用して効果的に洗浄した。
【0171】
全ての5つのバッチは、プロテインAカラム、陰イオン交換工程、ウイルス停留フィルター、および最終的な限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)によりパイロットスケールで加工処理したが、作業に問題はなかった。中和したプロテインAのピークは、全て<20NTUの濁度を有し、高度に濾過性であった。サイズ排除HPLCおよびSDS−PAGEゲル電気泳動により測定した高分子量凝集物および低分子量切断物(clip)のレベルなどの産物の品質、ならびに陽イオン交換HPLCにより測定した酸性種および塩基性種のレベルは、この抗体を用いて予め行ったフロキュレーションなしのパイロット実験(campaign)に匹敵した。
【0172】
実施例9
沈殿剤としてのカルシウムおよびリン酸の使用ならびに下流のプロテインAクロマトグラフィー工程およびその後の濾過に及ぼす効果:3つのmAb、すなわち抗AB#2、抗GDF8#1、および抗IL22は、無血清培地で培養した組換えCHO細胞により産生させた。それぞれについて培養液を半分に分け、最初の試料を未処理のままとした。2番目の試料(処理した試料)にHEPESを40mMのレベルまで、リン酸カリウムを20mMのレベルまで、そして塩化カルシウムを30mMのレベルまで添加した。試料由来の全ての細胞は遠心分離により除去し、結果として得られた上清はMillipore A1HCパッドフィルターを通過させて加工処理した。パッド濾過および0.2μmポリッシングフィルターを通過させたさらなる濾過の後で、試料はGE Healthcare MabSelectプロテインAアフィニティーカラムを使用してクロマトグラフィーにかけた。低pH緩衝液を使用して抗体をプロテインAカラムから溶出させると、ピークのプールは時折混濁する。中和すると、濁度は典型的には有意に増加する。
【0173】
未処理試料および処理した試料の中和されたピークの濁度を下記表2に示す。3つの処理試料は全て未処理試料に比べて中和されたピークの濁度に有意な減少を示した。
【0174】
【表6】

【0175】
次に、未処理で中和した抗IL22のピークおよび処理して中和した抗IL22のピークは、2.8cmPall Acrodisc Supor0.8/0.2μmポリエーテルスルホン製シリンジフィルターを通過させて濾過した。各フィルターを通過することができた溶液の量に基づいて、最大フィルター性能を計算した。最大フィルター性能は、フィルターが詰まって溶液がそれ以上通過できなくなるまでフィルター1mを通過することができる溶液のリットル数である。未処理試料は、約10〜30L/mの最大フィルター性能を実現することができた。170L/mの処理した試料は、流れを減少させずにフィルターを通過し、この段階では処理した試料は残存しなかった。処理した試料は、最大フィルター性能を正確に計算するには速すぎる速度でフィルターを通過した。しかし、170L/mの目標まで流出の減少はなく、最大性能は170L/mよりも有意に大きいと考えることができる。
【0176】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0177】
その他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に属する。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】分離方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
【図2】規模および混合方法がフロキュレーションに及ぼす効果を示す図である。
【図3】混合速度がフロキュレーションに及ぼす効果を示す図である。
【図4】5回のパイロットスケールのフロキュレーション実験の図的要約である。
【図5】図4に要約した5回のパイロットスケールの各フロキュレーション実験についての経時的な抗体回収率(%)の変化を示す図的要約である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白を含む培地中で第1陽イオンおよび第1陰イオンを含む固体を形成させ;および
該蛋白から該固体を分離することを含む、方法。
【請求項2】
第1陽イオンが、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウム、スカンジウム、ランタン、ケイ素、チタン、ジルコニウム、トリウム、マンガン、コバルト、銅、クロム、鉄、ニッケル、亜鉛およびバナジウムからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1陽イオンがカルシウムである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1陰イオンが、リン酸イオン、炭酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、亜硫酸イオン、モリブデン酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、ケイ酸イオン、およびアルギン酸イオンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第1陰イオンがリン酸イオンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1陽イオンがカルシウムであり、第1陰イオンがリン酸イオンである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
固体の溶解度積定数が約10−4にすぎない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
約4mMから約200mMの第1陽イオンまたは第1陰イオンを培地に導入することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
固体形成前の第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積が約10−5よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項10】
固体形成前の第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積が約10−4よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項11】
固体形成前の第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積が約2.7x10−2よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項12】
培地中の第1陽イオンと第1陰イオンの濃度が異なる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
培地中の第1陽イオンと第1陰イオンの濃度が実質的に同じである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
培地のpHを変化させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
培地のpHが約5と約9の間に維持される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
培地中の蛋白の少なくとも約50%が分離される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
培地中の蛋白の少なくとも約70%が分離される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
清澄化された培地の濁度を、該培地と同一で、固体を含まない第2の清澄化された培地と比べて少なくとも約30%だけ減少させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
清澄化された培地の濁度を、該培地と同一で、固体を含まない第2の清澄化された培地と比べて少なくとも約50%だけ減少させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
培地が哺乳動物細胞をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
培地が真核細胞をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
培地を遠心分離に付すこと、精密濾過膜を通してその培地を濾過すること、またはデプスフィルターを通してその培地を濾過することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
固体が第2陽イオン種または第2陰イオンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
固体を形成させて分離した後で、蛋白を含む培地をプロテインAカラムに適用して溶出させ、第1培地と同一で、固体形成を有さない第2培地を同様に溶出させたピークよりも低い濁度を有する溶出ピークを得る、請求項1記載の方法。
【請求項25】
固体を形成させて分離した後で、蛋白を含む培地をプロテインAカラムに適用して溶出させ、該培地と同一で、固体形成を有さない第2培地の溶出ピークよりも低い可溶性不純物レベルを有する溶出ピークを得る、請求項1記載の方法。
【請求項26】
第1陽イオンおよび第1陰イオンを蛋白を含む培地に導入し;
該第1陽イオンおよび第1陰イオンを含む固体を沈殿させ;および
該固体を該蛋白より分離することを含む、方法。
【請求項27】
第1陽イオンおよび第1陰イオンが連続的に導入される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
第1陽イオンおよび第1陰イオンが同時に導入される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
第1陽イオンが、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウム、スカンジウム、ランタン、ケイ素、チタン、ジルコニウム、トリウム、マンガン、コバルト、銅、クロム、鉄、ニッケル、亜鉛およびバナジウムからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
第1陰イオンが、リン酸イオン、炭酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、亜硫酸イオン、モリブデン酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、ケイ酸イオン、およびアルギン酸イオンからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項31】
固体の溶解度積定数が約10−4にすぎない、請求項26記載の方法。
【請求項32】
約4mMから約200mMの第1陽イオンまたは第1陰イオンを培地に導入することをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項33】
第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積が約10−5よりも大きい、請求項26記載の方法。
【請求項34】
第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積が約10−4よりも大きい、請求項26記載の方法。
【請求項35】
第1陽イオンの濃度および第1陰イオンの濃度の積が約2.7x10−2よりも大きい、請求項26記載の方法。
【請求項36】
異なる濃度の第1陽イオンと第1陰イオンを培地に導入することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項37】
同じ濃度の第1陽イオンと第1陰イオンを培地に導入することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項38】
培地のpHを変化させることをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項39】
培地のpHが約5と約9の間に維持される、請求項26記載の方法。
【請求項40】
培地の温度を調整することをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項41】
培地中の蛋白の少なくとも約50%が分離される、請求項26記載の方法。
【請求項42】
培地中の蛋白の少なくとも約70%が分離される、請求項26記載の方法。
【請求項43】
清澄化された培地の濁度を、該培地と同一で、固体を含まない第2の清澄化された培地と比べて少なくとも約30%だけ減少させることをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項44】
清澄化された培地の濁度を、該培地と同一で、固体を含まない第2の清澄化された培地と比べて少なくとも約50%だけ減少させることをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項45】
培地が哺乳動物細胞をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項46】
培地が真核細胞をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項47】
培地を遠心分離に付すことをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項48】
固体が第2陽イオンまたは第2陰イオンをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項49】
固体を形成させて分離した後で、蛋白を含む培地をプロテインAカラムに適用して溶出させ、第1培地と同一で、固体形成を有さない第2培地を同様に溶出させたピークよりも低い濁度を有する溶出ピークを得る、請求項26記載の方法。
【請求項50】
固体を形成させて分離した後で、蛋白を含む培地をプロテインAカラムに適用して溶出させ、該培地と同一で、固体形成を有さない第2培地の溶出ピークよりも低い可溶性不純物レベルを有する溶出ピークを得る、請求項26記載の方法。
【請求項51】
蛋白が分泌蛋白である、請求項1記載の方法。
【請求項52】
蛋白が、抗体、抗体の抗原結合断片、可溶性受容体、受容体融合体、サイトカイン、成長因子、酵素および凝固因子からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
蛋白が抗体またはその抗体の抗原結合断片である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
抗体またはその抗体の抗原結合断片がAβペプチド、インターロイキン−13、インターロイキン−22、5T4または成長分化因子−8と結合する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
蛋白が分泌蛋白である、請求項26記載の方法。
【請求項56】
蛋白が、抗体、抗体の抗原結合断片、可溶性受容体、受容体融合体、サイトカイン、成長因子、酵素および凝固因子からなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
蛋白が抗体またはその抗体の抗原結合断片である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
抗体またはその抗体の抗原結合断片がAβペプチド、インターロイキン−13、インターロイキン−22、5T4または成長分化因子−8と結合する、請求項57記載の方法。
【請求項59】
(i)標的成分と、混濁起因物質とを含む培地中で第1陽イオンおよび第1陰イオンを含む固体を形成させること;および(ii)濾過によりその溶液からその固体および混濁起因物質を分離することを含む、方法
【請求項60】
標的成分が蛋白である、請求項59記載の方法。
【請求項61】
蛋白が可溶性蛋白である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
第1陽イオンがカルシウムである、請求項26記載の方法。
【請求項63】
第1陰イオンがリン酸イオンである、請求項26記載の方法。
【請求項64】
第1陽イオンがカルシウムで、第1陰イオンがリン酸イオンである、請求項26記載の方法。
【請求項65】
培地の温度を調整することをさらに含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−508486(P2009−508486A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531194(P2008−531194)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/035025
【国際公開番号】WO2007/035283
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】