説明

塩化カルシウム抽出を使用した大豆タンパク質製品(「S702/S7300/S7200/S7301」)の製造

カルシウム塩水溶液、好ましくは塩化カルシウム溶液により大豆タンパク質原料を抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成し、残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離し、選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら透明な大豆タンパク質水溶液を濃縮し、場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過し、濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を乾燥することにより、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは少なくとも約90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を大豆タンパク質原料から調製する。あるいは、濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を水に希釈して沈殿物の形成を引き起こし、希釈水(上澄み液)から沈殿物を分離し、分離した大豆タンパク質溶液を乾燥して、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは少なくとも約90wt%のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物(N×6.25)d.b.を形成する。上澄み液を処理して、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは少なくとも90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を形成することができる。あるいは、希釈ステップからの沈殿物および希釈水を酸性化して、沈殿物を再可溶化し、透明な大豆タンパク質溶液を形成する。選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら透明な大豆タンパク質溶液を濃縮し、その後、任意選択の透析濾過および乾燥を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2009年2月11日出願の米国仮特許出願第61/202,262号、および2009年6月30日出願の同第61/213,663号から米国特許法(35USC)第119条(e)に基づいて優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、大豆タンパク質製品の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
その開示が参照により本明細書に組み込まれる2008年10月21日出願の米国仮特許出願第61/107,112号、2008年12月2日出願の同第61/193,457号、2009年1月26日出願の同第61/202,070号、2009年3月12日出願の同第61/202,553号、2009年7月7日出願の同第61/213,717号、2009年9月3日出願の同第61/272,241号、および2009年10月21日出願の米国特許出願第12/603,087号において、完全に可溶性であり、低pH値で透明で熱安定性の溶液をもたらすことができる大豆タンパク質製品、好ましくは大豆タンパク質単離物の調製が記載されている。この大豆タンパク質製品は、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の酸性水系のタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる。大豆タンパク質製品は、大豆タンパク質源を自然のpHの塩化カルシウム水溶液で抽出し、場合により、得られた大豆タンパク質水溶液を希釈し、大豆タンパク質水溶液のpHを約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0のpHに調整して、乾燥の前に場合により濃縮および/または透析濾過(diafiltered)してもよい酸性化した透明な大豆タンパク質溶液を生成することにより製造される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
大豆タンパク質源の塩化カルシウム抽出物を代替手順により処理して、酸性媒体に可溶であり、低pH値で透明な熱安定性溶液を生成し、したがって、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の水系のタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する実質的に同等の大豆タンパク質製品を得ることができることが今や分かった。大豆タンパク質製品は、少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する単離物であることが好ましい。
【0005】
本発明の一態様において、大豆タンパク質原料を自然のpHの塩化カルシウム水溶液で抽出し、得られた大豆タンパク質水溶液に限外濾過および任意選択の透析濾過(diafiltration)を施して、乾燥してもよい、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を生成して、大豆タンパク質製品を提供する。大豆タンパク質製品の抗栄養トリプシン阻害剤(anti−nutritional trypsin inhibitors)のレベルは、所望の量の阻害剤を透過液(permeate)流に放出するように膜処理条件を選択することにより調節することができる。
【0006】
本発明の別の態様において、大豆タンパク質原料を自然のpHの塩化カルシウム水溶液で抽出し、得られた大豆タンパク質水溶液に限外濾過および任意選択の透析濾過(diafiltration)を施して、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を生成する。この大豆タンパク質を水への希釈により分画して、グロブリンタンパク質が豊富な沈殿物およびアルブミンタンパク質が豊富な上澄み液を得ることができる。以下に詳細に記載しているように上澄み液を処理して、少なくとも約60wt%の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは少なくとも約90wt%のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を形成することができる。タンパク質であるトリプシン阻害剤は、主に希釈後の上澄み液画分中に存在する。沈殿物画分をさらに処理するかまたはそのまま乾燥して、大豆タンパク質製品を提供することができるが、そのトリプシン阻害剤のレベルは低減している。
【0007】
本明細書において提供する大豆タンパク質単離物は、透明で熱安定性のその水溶液をもたらすように酸性pH値で可溶性である。大豆タンパク質単離物は、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンクのタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる。
【0008】
本発明の別の態様において、上記のように調製した、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を水で希釈するが、全てのタンパク質を約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0へのpHの調整により再可溶化する。次いで、希釈および酸性化した溶液は、場合により濃縮および/または透析濾過する(diafiltered)ことができる。トリプシン阻害剤レベルの低減は、膜処理パラメーターの賢明な選択または場合により酸性化溶液に対して熱処理ステップを利用することにより実現することができる。
【0009】
本発明の一態様において、乾燥重量基準で少なくとも60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源を塩化カルシウム水溶液で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過する(diafiltering)ステップと、
(e)濃縮大豆タンパク質溶液を乾燥するステップと
を含む方法を提供する。
【0010】
大豆タンパク質製品は、少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する単離物であることが好ましい。
【0011】
この手順の変法を採用して、アルブミンタンパク質およびトリプシン阻害剤の含量が低下した製品を製造することができる。そのような変法において、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を水で希釈して、アルブミンタンパク質およびトリプシン阻害剤の含量が低下した沈殿物を得る。沈殿物を採取し、乾燥して該製品を得てもよく、または沈殿物を低pHの水に可溶化し、次いで、乾燥してもよい。あるいは、沈殿物を低pHの水に再可溶化することにより形成した溶液を、乾燥の前に場合により熱処理および/または濃縮および/または透析濾過(diafiltered)してもよい。
【0012】
本発明の別の態様において、乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過する(diafiltering)ステップと、
(e)濃縮大豆タンパク質溶液を水に希釈して、沈殿物の形成を引き起こすステップと、
(f)希釈水、いわゆる上澄み液から沈殿物を分離するステップと、
(g)分離した大豆タンパク質沈殿物を乾燥するステップと
を含む方法について記載する。
【0013】
この手順の別の変法を採用して該製品を製造することができる。そのような変法において、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を水で希釈し、pHを低下させる。得られた透明な酸性化溶液を、乾燥の前に場合により濃縮および/または透析濾過(diafiltered)および/または熱処理して、該製品を得る。
【0014】
本発明のさらなる態様において、乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過する(diafiltering)ステップと、
(e)濃縮大豆タンパク質溶液を水に希釈して、沈殿物の形成を引き起こすステップと、
(f)沈殿物と希釈水の混合物を酸性化して、タンパク質を再可溶化し、透明な大豆タンパク質溶液を形成するステップと、
(g)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら透明な酸性化大豆タンパク質溶液を濃縮するステップと、
(h)場合により、濃縮した透明な酸性化大豆タンパク質溶液を透析濾過する(diafiltering)ステップと、
(i)濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)透明な酸性化大豆タンパク質溶液を乾燥するステップと
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明の手順を利用することにより、自然のpHの状態で大豆タンパク質製品を製造するという選択肢が可能となる。酸性化ステップなしでの大豆タンパク質製品の生成により、酸およびそれらの取り扱いが必要ではないため、より簡単、安全で経済的な処理が可能となる。さらに、この手順により、飲料の配合者(formulator)が、タンパク質および飲料を、様々な酸の異なる濃度(strengths)および風味のプロフィールから判断して(given)自由に選択した酸性化剤で酸性化することが可能となる。
【0016】
本発明は主に大豆タンパク質単離物の製造に言及するが、大豆タンパク質単離物と同様の特性を有する純度の低い大豆タンパク質製品を提供し得ると考えられる(It is contemplated)。そのような低純度製品は、少なくとも約60重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質濃度を有することができる。
【0017】
本発明の新規な大豆タンパク質製品は、粉末状飲料を水に溶解することにより水性ソフトドリンクまたはスポーツドリンクを形成するために、粉末状飲料とブレンドすることができる。そのようなブレンドは、粉末状飲料とすることができる。
【0018】
本明細書において提供する大豆タンパク質製品は、酸性pH値で高い透明度を有し、これらのpH値で熱安定性であるそれらの水溶液として提供することができる。
【0019】
本発明の別の態様において、低pHで熱安定性である、本明細書において提供する大豆製品の水溶液を提供する。該水溶液は飲料とすることができ、その飲料は、その中で大豆タンパク質製品が完全に可溶および透明である透明な飲料、またはその中で大豆タンパク質製品が不透明度を増大させない不透明な飲料とすることができる。
【0020】
本明細書の方法に従って製造する大豆タンパク質製品は、大豆タンパク質単離物の特徴的な豆臭(beany flavour)を有しておらず、酸性媒体のタンパク質強化(protein fortification)に適しているだけでなく、加工食品および飲料のタンパク質強化(protein fortification)、油の乳化を含むがこれらに限定されないタンパク質単離物の広範な従来の用途において、焼いた食品の組織形成剤(body former)およびガスを閉じ込める製品の発泡剤として使用することができる。さらに、大豆タンパク質製品は、肉類似食品に有用なタンパク質繊維に形成することができ、つなぎとして卵白が使用される食品において卵白代替物または増量剤として使用することができる。大豆タンパク質製品は栄養補助食品(nutritional supplement)として使用することができる。大豆タンパク質製品の他の用途は、ペットフード、動物用飼料ならびに産業および化粧品用途ならびにパーソナルケア製品におけるものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の概略説明
大豆タンパク質製品を提供するプロセスの最初のステップは、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を伴う。大豆タンパク質源は、大豆あるいは大豆ミール(soy meal)、大豆フレーク、大豆粗粒および大豆粉を含むがこれらに限定されない大豆の加工に由来する任意の大豆製品または副産物とすることができる。大豆タンパク質源は、脂肪を除いていない形態、部分的に脱脂した形態または完全に脱脂した形態で使用することができる。大豆タンパク質源がかなりの脂肪を含有する場合、一般的に該プロセスの間に油除去ステップが必要となる。大豆タンパク質源から回収された大豆タンパク質は大豆中に自然に存在するタンパク質でもよく、またはタンパク質性物質(proteinaceous material)は遺伝子操作により改変されているが天然タンパク質の特徴的な疎水性および極性特性を有するタンパク質であってもよい。
【0022】
大豆タンパク質原料からのタンパク質の可溶化は、他のカルシウム塩の溶液も使用することができるが、食品グレードの塩化カルシウム溶液を使用して実施することが最も好都合である。大豆タンパク質製品が非食品用途用である場合、非食品グレードの化学物質を使用することができる。さらに、マグネシウム塩などの他のアルカリ土類金属塩も使用することができる。さらに、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、カルシウム塩溶液を塩化ナトリウムなどの別の塩溶液と組み合わせて使用して実施することもできる。さらに、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出を水または塩化ナトリウム溶液などの他の塩溶液を使用して実施し、その後、塩化カルシウムなどのカルシウム塩を、抽出ステップにおいて生成した大豆タンパク質水溶液に添加することができる。次いで、カルシウム塩の添加時に形成した沈殿物は、その後の処理の前に除去する。
【0023】
大豆タンパク質源からのタンパク質の可溶化の程度は、カルシウム塩溶液の濃度が増大するにつれて、最初は最大値に達するまで増大する。その後、塩濃度をどれほど増大しても、可溶化するタンパク質の合計は増大しない。最大のタンパク質可溶化を引き起こすカルシウム塩溶液の濃度は、当該塩に応じて変動する。通常、約1.0M未満の濃度値、より好ましくは約0.10〜約0.15Mの値を利用することが好ましい。
【0024】
バッチプロセスにおいて、タンパク質の塩可溶化は、約1℃〜約100℃、好ましくは約15℃〜約35℃の温度で、通常約1〜約60分間の可溶化時間を減少させるための撹拌を伴って実施することが好ましい。実質的に実現可能な量のタンパク質を大豆タンパク質源から抽出するように可溶化を実施して、全体的に高い製品収率を実現することが好ましい。
【0025】
連続プロセスにおいて、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の連続抽出の実施と調和する任意の様式で実施する。一実施形態において、大豆タンパク質源をカルシウム塩溶液と連続的に混合し、本明細書に記載のパラメーターに従って所望の抽出を実施するのに十分な滞留時間、ある長さを有するパイプまたは導管を通して、ある流量で混合物を移動させる。そのような連続的な手順において、塩可溶化ステップは、実質的に実現可能な量のタンパク質を大豆タンパク質源から抽出するように可溶化を実施するために、最大で約10分間で急速に実施することが好ましい。連続的な手順での可溶化は、約1℃と約100℃の間、好ましくは約15℃と約35℃の間の温度で実施する。
【0026】
抽出は、一般に、約5〜約11、好ましくは約5〜約7のpHで実施する。抽出系(大豆タンパク質源およびカルシウム塩溶液)のpHは、抽出ステップで使用するために、必要に応じて、任意の好都合な酸、通常は塩酸、またはアルカリ、通常は水酸化ナトリウムの使用により、必要であれば、約5〜約11の範囲内の任意の所望の値に調整することができる。
【0027】
可溶化ステップの間のカルシウム塩溶液中の大豆タンパク質源の濃度は、幅広く変えることができる。一般的な濃度値は、約5〜約15%w/vである。
【0028】
抽出ステップから得られるタンパク質溶液は、一般に約5〜約50g/L、好ましくは約10〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する。
【0029】
塩水溶液を用いたタンパク質抽出ステップは、大豆タンパク質源中に存在し得る脂肪を可溶化するという追加の効果を有し、その結果、水性相中に脂肪が存在することとなる。
【0030】
カルシウム塩水溶液は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの任意の好都合な酸化防止剤とすることができる。利用する酸化防止剤の量は、該溶液の約0.01〜約1wt%、好ましくは約0.05wt%まで変えることができる。酸化防止剤は、タンパク質溶液中のフェノール類の酸化を抑制する働きをする。
【0031】
次いで、抽出ステップから得られる水性相は、例えば、デカンタ型遠心分離機の利用の後にディスク型遠心分離および/または濾過により残留する大豆タンパク質原料を除去するなどの任意の好都合な様式で、残留する大豆タンパク質源から分離し得る。分離した残留大豆タンパク質原料は、廃棄するために乾燥することができる。あるいは、分離した残留大豆タンパク質源を、例えば、従来の等電沈殿手順(isoelectric precipitation procedure)またはそのような残留タンパク質を回収するための任意の他の好都合な手順などにより処理して、一部の残留タンパク質を回収してもよい。
【0032】
次いで、本発明の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,844,086号および同第6,005,076号に記載のように大豆タンパク質源がかなりの量の脂肪を含有する場合、分離したタンパク質水溶液に対して上記特許に記載の脱脂ステップを実施することができる。あるいは、分離したタンパク質水溶液の脱脂は、任意の他の好都合な手順により実現してもよい。
【0033】
大豆タンパク質水溶液を粉末状活性炭または粒状活性炭などの吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去することができる。そのような吸着剤処理は、任意の好都合な条件下、一般に分離したタンパク質水溶液の周囲温度で実施することができる。粉末状活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を利用する。吸着剤は、任意の好都合な手段により、例えば濾過により大豆溶液から除去することができる。
【0034】
適当な純度であれば、得られた大豆タンパク質水溶液を直接乾燥して、大豆タンパク質製品を得ることができる。不純物含量を低下させるために、大豆タンパク質水溶液を乾燥の前に処理することができる。
【0035】
大豆タンパク質水溶液を濃縮して、そのイオン強度を実質的に一定に維持しながら、そのタンパク質濃度を増大させることができる。そのような濃縮は、一般に、約50〜約400g/L、好ましくは約100〜約250g/Lのタンパク質濃度を有する濃縮大豆タンパク質溶液を生成するために実施する。
【0036】
濃縮ステップは、例えば、異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜約1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンなどの好適な分画分子量(molecular weight cut−off)を有し、連続操作については、タンパク質水溶液が膜を通過するときに所望の濃縮度が可能になるように寸法を決める、中空繊維膜または螺旋状膜(spiral−wound membrane)などの膜を使用する、限外濾過または透析濾過(diafiltration)などの任意の好都合な選択的膜技法を使用することなどにより、バッチまたは連続操作と調和する任意の好都合な様式で実施することができる。
【0037】
よく知られているように、限外濾過および同様の選択的膜技法は、低分子量種が膜を通過することを可能にすると同時に、高分子量種が膜を通過することを阻止する。低分子量種としては、食品グレードの塩のイオン種だけではなく、原料から抽出される低分子量物質、例えば、炭水化物、色素、低分子量タンパク質、およびそれ自体が低分子量タンパク質であるトリプシン阻害剤などの抗栄養因子(anti−nutritional factors)なども挙げられる。膜の分画分子量(molecular weight cut−off)は、通常、異なる膜材料および構造を考慮して、かなりの割合のタンパク質を溶液中に確実に保持すると同時に、汚染物質を通過させるように選択する。
【0038】
次いで、完全な濃縮の前または後に、抽出溶液と同じpHおよび同じカルシウム塩濃度の塩化カルシウムの溶液などのカルシウム塩溶液を使用して、濃縮大豆タンパク質溶液に透析濾過(diafiltration)ステップを施すことができる。保持液(retentate)の塩分の低減が望ましいならば、利用する透析濾過(diafiltration)溶液は、pHは抽出溶液と同じだが塩濃度は抽出溶液より低いカルシウム塩水溶液とすることができる。しかし、透析濾過(diafiltration)溶液の塩濃度は、保持液(retentate)中の塩レベルが所望のタンパク質の溶解度を維持するのに十分に高いままであるように選択しなければならない。上述したように、透析濾過(diafiltration)溶液は、透析濾過される(diafiltered)されるタンパク質溶液と等しいpHであることが好ましい。透析濾過(diafiltration)溶液のpHは、塩酸もしくはリン酸などの任意の好都合な酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリで調整することができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、約2〜約40倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液、好ましくは約5〜約25倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液を使用して実施することができる。透析濾過(diafiltration)操作において、透過液(permeate)の膜通過により、さらなる量の汚染物質を大豆タンパク質水溶液から除去する。透析濾過(diafiltration)操作は、さらなるかなりの量の汚染物質または可視色が透過液(permeate)中に存在しなくなるまで、または乾燥すると、所望のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは乾燥重量基準で少なくとも約90wt%のタンパク質含量を有する単離物を生成するように保持液が十分に精製されるまで、実施することができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、濃縮ステップと同じ膜を使用して実施することができる。しかし、所望であれば、透析濾過(diafiltration)ステップは、異なる分画分子量(molecular weight cut−off)を有する別の膜、例えば、異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜約1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンの範囲の分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜などを使用して実施することができる。
【0039】
本明細書において、濃縮ステップおよび透析濾過(diafiltration)ステップは、濃縮および透析濾過した保持液(diafiltered retentate)を乾燥することにより、その後回収される大豆タンパク質製品が約90wt%未満のタンパク質(N×6.25)d.b.、例えば、少なくとも約60wt%タンパク質(N×6.25)d.b.などを含有するような様式で実施することができる。大豆タンパク質水溶液を部分的に濃縮および/または部分的に透析濾過する(diafiltering)ことにより、汚染物質を部分的にのみ除去することが可能である。次いで、このタンパク質溶液を乾燥して、より低レベルの純度を有する大豆タンパク質製品を得ることができる。大豆タンパク質製品は、依然として、酸性条件下で透明なタンパク質溶液を生成することができる。
【0040】
酸化防止剤は、透析濾過(diafiltration)ステップの少なくとも一部の間に透析濾過(diafiltration)媒体中に存在することができる。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの任意の好都合な酸化防止剤とすることができる。透析濾過(diafiltration)媒体において利用する酸化防止剤の量は、利用する物質次第であり、約0.01〜約1wt%、好ましくは約0.05wt%まで変えることができる。酸化防止剤は、濃縮大豆タンパク質溶液中に存在する任意のフェノール類の酸化を抑制する働きをする。
【0041】
濃縮ステップおよび透析濾過(diafiltration)ステップは、任意の好都合な温度、一般に約2°〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃で、所望の程度の濃縮および透析濾過(diafiltration)を実現するための時間にわたって実施することができる。使用する温度および他の条件は、ある程度、膜処理を実施するために使用する膜装置、溶液の所望のタンパク質濃度および汚染物質を除去して透過液(permeate)とする効率の影響を受ける。
【0042】
大豆中には、2種の主要なトリプシン阻害剤、すなわち、約21000ダルトンの分子量を有する熱不安定性の分子であるKunitz阻害剤、および約8000ダルトンの分子量を有するより熱安定性の分子、Bowman−Birk阻害剤が存在する。最終的な大豆タンパク質製品のトリプシン阻害活性のレベルは、様々なプロセス変数の操作により調節することができる。
【0043】
例えば、濃縮および/または透析濾過(diafiltration)ステップは、透過液(permeate)中のトリプシン阻害剤を他の汚染物質と共に除去するのに好都合な様式で操作することができる。トリプシン阻害剤の除去は、約30000〜約1000000ダルトンなどの大きい孔径の膜を使用すること、膜を約30℃〜約60℃などの高温で操作すること、および約20〜約40倍量(volumes)などの多量の(greater volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用することにより促進される。
【0044】
さらに、トリプシン阻害活性の低減は、阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置する還元剤に大豆材料を曝すことにより実現することができる。好適な還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、システインおよびN−アセチルシステインが挙げられる。
【0045】
そのような還元剤の添加は、プロセス全体の様々な段階で実施することができる。還元剤は、抽出ステップにおいて大豆タンパク質原料と共に添加してもよく、残留する大豆タンパク質原料の除去後の清澄な大豆タンパク質水溶液に添加してもよく、透析濾過(diafiltration)の前または後の濃縮タンパク質溶液に添加してもよく、または乾燥した大豆タンパク質製品とドライブレンドしてもよい。還元剤の添加は、上記の膜処理ステップと組み合わせてもよい。
【0046】
濃縮タンパク質溶液中に活性トリプシン阻害剤を保持することが望ましいならば、このことは、小さい孔径を有する濃縮および透析濾過(diafiltration)膜を利用すること、膜を低温で操作すること、少量の(fewer volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用すること、ならびに還元剤を利用しないことにより実現することができる。
【0047】
必要であれば、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液に、米国特許第5,844,086号および同第6,005,076号に記載のさらなる脱脂操作を実施することができる。あるいは、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液の脱脂は、任意の他の好都合な手順により実現してもよい。
【0048】
濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)タンパク質水溶液を粉末状活性炭または粒状活性炭などの吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去することができる。そのような吸着剤処理は、任意の好都合な条件下、一般に濃縮タンパク質水溶液の周囲温度で実施することができる。粉末状活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を利用する。吸着剤は、大豆タンパク質溶液から任意の好都合な手段により、例えば、濾過により除去することができる。
【0049】
任意選択の脱脂ステップおよび任意選択の吸着剤処理ステップから得られる、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液に低温殺菌ステップを施して、微生物負荷(microbial load)を低減することができる。そのような低温殺菌は、任意の所望の低温殺菌条件下で実施することができる。一般に、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液は、約55°〜約70℃、好ましくは約60°〜約65℃の温度まで、約30秒間〜約60分間、好ましくは約10〜約15分間加熱する。次いで、低温殺菌した濃縮大豆タンパク質溶液は、乾燥またはさらなる処理のために、約15°〜約35℃の温度まで冷却することが好ましい。
【0050】
本発明の一態様において、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)透明な大豆タンパク質水溶液を、噴霧乾燥または凍結乾燥などの任意の好都合な技法により乾燥して、大豆タンパク質製品を得る。あるいは、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液は、pHを約2.0〜約4.0に調整してもよい。pHの調整は、任意の好都合な様式で、例えば、塩酸またはリン酸の添加により実施することができる。次いで、得られた酸性化大豆タンパク質溶液を乾燥する。さらなる代替手順として、pHを調整した大豆タンパク質溶液に熱処理を施して、上述のトリプシン阻害剤などの熱不安定性の抗栄養因子(anti−nutritional factors)を不活性化してもよい。そのような加熱ステップは、微生物負荷(microbial load)を低減するという追加の利益も、もたらす。一般に、タンパク質溶液は、約70°〜約120℃、好ましくは約85°〜約95℃の温度まで、約10秒間〜約60分間、好ましくは約30秒間〜約5分間加熱する。次いで、熱処理した酸性化大豆タンパク質溶液は、約2℃〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃の温度まで冷却することができる。次いで、得られた酸性化および熱処理した大豆タンパク質溶液を乾燥する。
【0051】
本発明の別の態様において、濃縮タンパク質溶液を、所望の希釈の程度を実現するのに必要な体積を有する水と混合することにより、濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過(diafiltration)ステップ、任意選択の脱脂ステップ、任意選択の吸着剤処理ステップおよび任意選択の低温殺菌ステップから得られる濃縮タンパク質溶液を希釈して、沈殿物形成を実施する。本発明のこの態様の場合のように、沈殿したタンパク質を残留する水性相、いわゆる上澄み液から分離する場合、希釈の程度は、一般に約5倍(fold)〜約25倍(fold)、好ましくは約10倍(fold)〜約20倍(fold)である。濃縮タンパク質溶液と混合する水は、好ましくは約1°〜約60℃、好ましくは約15°〜約35℃の温度を有する。
【0052】
バッチ操作において、濃縮タンパク質溶液のバッチを、上で論じた所望の体積を有する静止した水体(body of water)に添加する。濃縮タンパク質溶液の希釈および結果としてのイオン強度の低下により、タンパク質沈殿物の形成が引き起こされる。バッチ手順において、タンパク質沈殿物を水体(body of water)中で沈殿させる。沈殿は、例えば、遠心分離により促進することができる。そのように誘導した沈殿により、沈殿したタンパク質の含水率および閉塞された(occluded)塩分が低下する。
【0053】
あるいは、希釈操作は、濃縮タンパク質溶液をT型パイプの一方の入口に連続的に通すと同時に、希釈水をT型パイプの他方の入口に送り、該パイプ中で混合させることにより連続的に実施してもよい。希釈水は、濃縮タンパク質溶液の所望の希釈の程度を実現するのに十分な速度でT型パイプに送る。
【0054】
該パイプ中での濃縮タンパク質溶液と希釈水の混合により、タンパク質沈殿物の形成を開始し、混合物はT型パイプの出口から沈殿容器中に連続的に送られ、沈殿容器が満杯になると、上澄み液は溢れる。混合物は、沈殿容器中の液体(body of liquid)中に、液体(body of liquid)内の乱れを最小化する様式で送ることが好ましい。
【0055】
連続手順において、タンパク質沈殿物を沈殿容器中に沈殿させて、沈殿容器の底に所望の量の沈殿物が蓄積するまで該手順を継続し、その後(whereupon)、蓄積した沈殿物を沈殿容器から除去する。沈降(sedimentation)による沈殿(settling)の代わりに、沈殿物は、遠心分離により連続的に分離してもよい。
【0056】
大豆タンパク質沈殿物の回収のために連続プロセスを利用すると、バッチプロセスと比較して、最初のタンパク質抽出ステップの、同じレベルのタンパク質抽出のための時間を著しく低減することができる。さらに、連続操作においては、バッチ手順より汚染の可能性が低く、より高い製品品質がもたらされ、該プロセスをより小型の装置で実施することができる。
【0057】
沈殿した沈殿物は、残留する水性相または上澄み液から、例えば、沈殿した塊からの残留する水性相のデカンテーションにより、または遠心分離により分離する。沈殿物を、例えば、約1〜約10、好ましくは約2〜約3倍量(volumes)の水で洗浄して、残留する上澄み液を除去し、次いで、上記のように沈殿物を再び回収することができる。場合により洗浄した沈殿物は湿った形態で使用してもよく、または噴霧乾燥もしくは凍結乾燥などの任意の好都合な技法により、乾燥形態まで乾燥してもよい。乾燥沈殿物は、約60wt%タンパク質を超える、好ましくは少なくとも約90wt%タンパク質(N×6.25)、より好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)の高タンパク質含量を有する。乾燥沈殿物はフィチン酸含量が低く、一般に約1.5重量%未満である。
【0058】
希釈ステップから生じる上澄み液を廃棄するか、または、十分な純度であれば、乾燥して大豆タンパク質製品を得ることができる。不純物含量を低下させるために、上澄み液を、約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0などのpHへ酸性化するか、または酸性化することなく処理し、任意の好都合な手段により乾燥して、1種または複数の大豆タンパク質製品を得ることができる。上澄み液流は、希釈時に生じる分画によりトリプシン阻害剤が豊富である。上澄み液を処理して、トリプシン阻害活性が高い乾燥タンパク質製品を得てもよく、または該プロセスステップを、この流れに由来するタンパク質のトリプシン阻害活性を低減するように調整しても(gear)よい。酸性化することなく処理する場合、濃縮の前または後の上澄み液の熱処理を利用して、熱感受性タンパク質の画分を沈殿させると同時に、大部分のトリプシン阻害剤を溶液中に残すことができる。あるいは、上澄み液を低pHで濃縮し、次いで、水酸化ナトリウムなどの任意の好都合なアルカリを使用して、熱処理の適用の前に試料のpHを約6〜約7に調整して、熱感受性タンパク質を沈殿させることができる。そのような熱処理は、約70℃〜約120℃、好ましくは約75℃〜約105℃の温度で約1分〜約30分間、好ましくは約5分間〜約15分間実施することができる。加熱により沈殿したタンパク質は、遠心分離または濾過またはその組合せなどの任意の好都合な様式で除去することができる。次いで、沈殿物を約1〜約10、好ましくは約2倍量(volumes)の水で洗浄して、閉じ込められた上澄み液(entrapped supernatant)を除去し、次いで、上記のように回収し、任意の好都合な手段により乾燥して、トリプシン阻害剤含量が低下した大豆タンパク質製品を得ることができる。
【0059】
酸性化上澄み液の熱処理を使用して、熱不安定性トリプシン阻害剤を不活性化することができる。また、部分濃縮または完全濃縮した酸性化大豆タンパク質溶液を熱処理して、熱不安定性トリプシン阻害剤を不活性化することができる。一般に、タンパク質溶液は、約70°〜約120℃、好ましくは約85°〜約95℃の温度まで約10秒間〜約60分間、好ましくは約30秒間〜約5分間加熱する。次いで、熱処理した酸性化大豆タンパク質溶液は、さらなる処理のために約2℃〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃の温度まで冷却することができる。
【0060】
上澄み液、または酸性化し、場合により熱処理した上澄み液、または上澄み液の熱処理により析出したタンパク質の除去から得られる分離液(centrate)(沈殿したタンパク質の除去後に約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0などのpHへ場合により酸性化してもよい)を濃縮して、そのタンパク質濃度を増大させることができる。そのような濃縮は、かなりの割合の大豆タンパク質を溶液中に保持すると同時に、塩、炭水化物、顔料、トリプシン阻害剤およびタンパク質原料から抽出される他の低分子量物質を含めた低分子量種が膜を通過することを可能にする好適な分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜を使用する、限外濾過または透析濾過(diafiltration)などの任意の好都合な選択的膜技法を使用して実施する。異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンの分画分子量(molecular weight cut−off)を有する限外濾過膜を使用することができる。タンパク質溶液の濃縮は、このように、タンパク質を回収するために乾燥すべき液体の体積も低減する。タンパク質溶液は、乾燥の前に、一般に約50g/L〜約400g/L、好ましくは約100〜約250g/Lのタンパク質濃度まで濃縮する。そのような濃縮操作は、上記のバッチモードまたは連続操作で実施することができる。
【0061】
大豆タンパク質溶液に、完全な濃縮の前または後に、水または希釈塩溶液を使用して透析濾過(diafiltration)ステップを施すことができる。水または希釈塩溶液は、その自然のpHまたは透析濾過される(being diafiltered)タンパク質溶液と等しいpHまたはその間の任意のpH値とすることができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、約2〜約40倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液、好ましくは約5〜約25倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液を使用して実施することができる。透析濾過(diafiltration)操作において、透過液(permeate)の膜通過により、さらなる量の汚染物質を透明な大豆タンパク質水溶液から除去する。透析濾過(diafiltration)操作は、さらなる相当量の汚染物質または可視色が透過液(permeate)中に存在しなくなるまで、または乾燥すると、所望のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは少なくとも90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する単離物を生成するようにタンパク質溶液が十分に精製されるまで、実施することができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、濃縮ステップと同じ膜を使用して実施することができる。しかし、所望であれば、透析濾過(diafiltration)ステップは、異なる分画分子量(molecular weight cut−off)を有する別の膜、例えば、異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜約1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンの範囲の分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜などを使用して実施することができる。
【0062】
本明細書において、濃縮ステップおよび透析濾過(diafiltration)ステップは、濃縮および透析濾過した(diafiltered)保持液(retentate)を乾燥することにより、その後回収される大豆タンパク質製品が約90wt%未満のタンパク質(N×6.25)d.b.、例えば、少なくとも約60wt%タンパク質(N×6.25)d.b.などを含有するような様式で実施することができる。大豆タンパク質水溶液を部分的に濃縮および/または部分的に透析濾過する(diafiltering)ことにより、汚染物質を部分的にのみ除去することが可能である。次いで、このタンパク質溶液を乾燥して、より低レベルの純度を有する大豆タンパク質製品を得ることができる。
【0063】
酸化防止剤は、透析濾過(diafiltration)ステップの少なくとも一部の間に透析濾過(diafiltration)媒体中に存在することができる。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの任意の好都合な酸化防止剤とすることができる。透析濾過(diafiltration)媒体において利用する酸化防止剤の量は、利用する物質次第であり、約0.01〜約1wt%、好ましくは約0.05wt%まで変えることができる。酸化防止剤は、濃縮大豆タンパク質溶液中に存在する任意のフェノール類の酸化を抑制する働きをする。
【0064】
濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過(diafiltration)ステップは、任意の好都合な温度、一般に約2℃〜約60℃、好ましくは約20℃〜約35℃で、所望の程度の濃縮および透析濾過(diafiltration)を実施するための時間にわたって、実施することができる。使用する温度および他の条件は、ある程度、膜処理を実施するために使用する膜装置、溶液の所望のタンパク質濃度および汚染物質を除去して透過液(permeate)とする効率の影響を受ける。
【0065】
濃縮および/または透析濾過(diafiltration)ステップは、透過液(permeate)中のトリプシン阻害剤を他の汚染物質と共に除去するのに好都合な様式で操作することができる。トリプシン阻害剤の除去は、30000〜1000000ダルトンなどの大きい孔径の膜を使用すること、膜を30〜60℃などの高温で操作すること、および20〜40倍量(volumes)などの多量の(greater volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用することにより促進される。
【0066】
タンパク質溶液を低いpH(1.5〜3)で酸性化および膜処理することによっても、該溶液を高いpH(3〜4.4)で、または酸性化することなく処理する場合と比較して、トリプシン阻害活性を低減することができる。タンパク質溶液をpH範囲の下端で濃縮および透析濾過する(diafiltered)場合、乾燥の前に保持液(retentate)のpHを上昇させることが望ましい可能性がある。濃縮および透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液のpHは、水酸化ナトリウムなどの任意の好都合な食品グレードのアルカリの添加により、所望の値、例えばpH3まで上昇させることができる。
【0067】
さらに、トリプシン阻害活性の低減は、阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置する還元剤に大豆材料を曝すことにより実現することができる。好適な還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、システインおよびN−アセチルシステインが挙げられる。
【0068】
そのような還元剤の添加は、プロセス全体の様々な段階で実施することができる。還元剤は、上澄み液または加熱沈殿(heat precipitation)ステップから生じる分離液(centrate)に添加してもよく、透析濾過(diafiltration)の前または後の濃縮溶液に添加してもよく、または乾燥した大豆タンパク質製品とドライブレンドしてもよい。還元剤の添加は、上記の熱処理ステップおよび膜処理ステップと組み合わせてもよい。
【0069】
濃縮タンパク質溶液中に活性トリプシン阻害剤を保持することが望ましいならば、このことは、熱処理ステップの強度を削減または低減すること、還元剤を利用しないこと、濃縮および透析濾過(diafiltration)ステップを高いpH値で操作すること、小さい孔径を有する濃縮および透析濾過(diafiltration)膜を利用すること、膜を低温で操作することおよび少量の(fewer volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用することにより実現することができる。
【0070】
濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)タンパク質水溶液を粉末状活性炭または粒状活性炭などの吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去することができる。そのような吸着剤処理は、任意の好都合な条件下、一般にタンパク質溶液の周囲温度で実施することができる。粉末状活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を利用する。吸着剤は、大豆タンパク質溶液から任意の好都合な手段により、例えば、濾過により除去することができる。
【0071】
次いで、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液は、噴霧乾燥または凍結乾燥などの任意の好都合な技法により乾燥することができる。乾燥大豆タンパク質製品は、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.、好ましくは約90wt%(N×6.25)d.b.を超える、より好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する。大豆タンパク質製品はフィチン酸含量が低く、一般に約1.5重量%未満である。
【0072】
上述したように、希釈ステップにおいて形成した沈殿したタンパク質沈殿物を直接乾燥して、タンパク質製品を得ることができる。あるいは、湿ったタンパク質沈殿物は、約2〜約3倍量(volumes)などの水に再懸濁し、塩酸またはリン酸などの任意の好都合な酸を使用して試料のpHを約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0に調整することにより再可溶化することができる。次いで、透明なタンパク質溶液は、噴霧乾燥または凍結乾燥などの任意の好都合な技法により乾燥形態まで乾燥することができる。乾燥タンパク質製品は、約60wt%タンパク質を超える、好ましくは少なくとも約90wt%タンパク質、より好ましくは少なくとも約100wt%タンパク質(N×6.25)のタンパク質含量を有する。
【0073】
さらなる代替手順として、透明な、酸性化し、再可溶化した大豆タンパク質溶液に熱処理を施して、任意の残留する熱不安定性抗栄養因子(heat labile anti−nutritional factors)を不活性化することができる。そのような加熱ステップは、微生物負荷(microbial load)を低減するという追加の利益も、もたらす。一般に、タンパク質溶液は、約70°〜約120℃、好ましくは約85°〜約95℃の温度まで約10秒間〜約60分間、好ましくは約30秒間〜約5分間加熱する。次いで、熱処理した酸性化大豆タンパク質溶液は、以下に記載のさらなる処理のために、約2°〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃の温度まで冷却することができる。
【0074】
酸性化し、場合により熱処理した透明な溶液を濃縮して、そのタンパク質濃度を増大させることができる。そのような濃縮は、かなりの割合の大豆タンパク質を溶液中に保持すると同時に、塩、炭水化物、顔料、トリプシン阻害剤およびタンパク質原料から抽出される他の低分子量物質を含めた低分子量種が膜を通過することを可能にする好適な分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜を使用する、限外濾過または透析濾過(diafiltration)などの任意の好都合な選択的膜技法を使用して実施する。異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンの分画分子量(molecular weight cut−off)を有する限外濾過膜を使用することができる。タンパク質溶液の濃縮は、このように、タンパク質を回収するために乾燥すべき液体の体積も低減する。タンパク質溶液は、乾燥の前に、一般に約50g/L〜約300g/L、好ましくは約100〜約200g/Lのタンパク質濃度まで濃縮する。そのような濃縮操作は、上記のバッチモードまたは連続操作で実施することができる。
【0075】
大豆タンパク質溶液に、完全な濃縮の前または後に、水を使用して透析濾過(diafiltration)ステップを施すことができる。水は、その自然のpH、透析濾過される(diafiltered)タンパク質溶液と等しいpHまたはその間の任意のpH値とすることができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、約2〜約40倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液、好ましくは約5〜約25倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液を使用して実施することができる。透析濾過(diafiltration)溶液操作において、透過液(permeate)の膜通過により、さらなる量の汚染物質を、透明な大豆タンパク質水溶液から除去する。透析濾過(diafiltration)操作は、さらなるかなりの量の汚染物質または可視色が透過液(permeate)中に存在しなくなるまで、または乾燥すると、所望のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品、好ましくは少なくとも約90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する単離物を生成するように保持液(retentate)が十分に精製されるまで実施することができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、濃縮ステップと同じ膜を使用して実施することができる。しかし、所望であれば、透析濾過(diafiltration)ステップは、異なる膜材料および構造を考慮して、異なる分画分子量(molecular weight cut−off)を有する別の膜、例えば、約3000〜約1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンの範囲の分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜などを使用して実施することができる。
【0076】
本明細書において、濃縮ステップおよび透析濾過(diafiltration)ステップは、濃縮および透析濾過した(diafiltered)保持液(retentate)を乾燥することにより、その後回収される大豆タンパク質製品が約90wt%未満のタンパク質(N×6.25)d.b.、例えば、少なくとも約60wt%タンパク質(N×6.25)d.b.などを含有するような様式で実施することができる。大豆タンパク質水溶液を部分的に濃縮および/または部分的に透析濾過する(diafiltering)ことにより、汚染物質を部分的にのみ除去することが可能である。次いで、このタンパク質溶液を乾燥して、より低レベルの純度を有する大豆タンパク質製品を得ることができる。大豆タンパク質製品は、依然として、酸性条件下で透明なタンパク質溶液を生成することができる。
【0077】
酸化防止剤は、透析濾過(diafiltration)ステップの少なくとも一部の間に透析濾過(diafiltration)媒体中に存在することができる。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの任意の好都合な酸化防止剤とすることができる。透析濾過(diafiltration)媒体において利用する酸化防止剤の量は、利用する物質次第であり、約0.01〜約1wt%、好ましくは約0.05wt%まで変えることができる。酸化防止剤は、濃縮大豆タンパク質溶液中に存在する任意のフェノール類の酸化を抑制する働きをする。
【0078】
任意選択の濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過(diafiltration)ステップは、任意の好都合な温度、一般に約2°〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃で、所望の程度の濃縮および透析濾過(diafiltration)を実施するための時間にわたって、実施することができる。使用する温度および他の条件は、ある程度、膜処理を実施するために使用する膜装置、溶液の所望のタンパク質濃度および汚染物質を除去して透過液(permeate)とする効率の影響を受ける。
【0079】
上述したように、最終的な大豆タンパク質製品のトリプシン阻害活性のレベルは、様々なプロセス変数の操作により調節することができる。
【0080】
上述したように、酸性化大豆タンパク質水溶液の熱処理を使用して、熱不安定性トリプシン阻害剤を不活性化することができる。部分濃縮または完全濃縮した酸性化大豆タンパク質溶液を熱処理して、熱不安定性のトリプシン阻害剤を不活性化することもできる。
【0081】
さらに、濃縮および/または透析濾過(diafiltration)ステップは、透過液(permeate)中のトリプシン阻害剤を他の汚染物質と共に除去するのに好都合な様式で操作することができる。トリプシン阻害剤の除去は、30000〜1000000ダルトンなどの大きい孔径の膜を使用すること、膜を30°〜60℃などの高温で操作すること、および20〜40倍量(volumes)などの多量の(greater volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用することにより促進される。
【0082】
タンパク質溶液を低pH(1.5〜3)で酸性化および膜処理することにより、該溶液を高いpH(3〜4.4)で処理する場合と比較して、トリプシン阻害活性を低減することができる。タンパク質溶液をpH範囲の下端で濃縮および透析濾過する(diafiltered)する場合、乾燥の前に保持液(retentate)のpHを上昇させることが望ましい可能性がある。濃縮および透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液のpHは、水酸化ナトリウムなどの任意の好都合な食品グレードのアルカリの添加により、所望の値、例えばpH3まで上昇させることができる。
【0083】
さらに、トリプシン阻害活性の低減は、阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置する還元剤に大豆材料を曝すことにより実現することができる。好適な還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、システインおよびN−アセチルシステインが挙げられる。
【0084】
そのような還元剤の添加は、プロセス全体の様々な段階で実施することができる。還元剤は、希釈ステップから得られる湿ったタンパク質沈殿物に添加してもよく、沈殿物の酸性化および再可溶化により形成したタンパク質溶液に添加してもよく、透析濾過(diafiltration)の前または後の濃縮溶液に添加してもよく、または乾燥した大豆タンパク質製品とドライブレンドしてもよい。還元剤の添加は、上記の熱処理ステップおよび膜処理ステップと組み合わせてもよい。
【0085】
濃縮タンパク質溶液中に活性トリプシン阻害剤を保持することが望ましいならば、このことは、熱処理ステップの強度を削減または低減すること、還元剤を利用しないこと、濃縮および透析濾過(diafiltration)ステップをpH範囲の上端(3〜4.4)で操作すること、小さい孔径を有する濃縮および透析濾過(diafiltration)膜を利用すること、膜を低温で操作することおよび少量の(fewer volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用することにより実現することができる。
【0086】
酸性化し、場合により濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)透明なタンパク質水溶液を粉末状活性炭または粒状活性炭などの吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去することができる。そのような吸着剤処理は、任意の好都合な条件下、一般にタンパク質溶液の周囲温度で実施することができる。粉末状活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を利用する。吸着剤は、大豆タンパク質溶液から任意の好都合な手段により、例えば、濾過により除去することができる。
【0087】
次いで、酸性化し、場合により濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)透明な大豆タンパク質水溶液は、噴霧乾燥または凍結乾燥などの任意の好都合な技法により乾燥することができる。乾燥大豆タンパク質製品は、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.、好ましくは約90wt%(N×6.25)d.b.を超える、より好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する。大豆タンパク質製品はフィチン酸含量が低く、一般に約1.5重量%未満である。
【0088】
本発明の別の態様において、水への希釈時に沈殿したタンパク質は、上澄み液と一緒に処理することができる。そのような場合、希釈の程度は、一般に約1〜25倍(fold)、好ましくは約3〜約12倍(fold)である。濃縮タンパク質溶液と混合する水は、約1°〜約60℃、好ましくは約15℃〜約35℃の温度を有する。
【0089】
析出したタンパク質沈殿物を含有する希釈水は、塩酸またはリン酸などの任意の好都合な酸を使用して、約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0のpHに調整する。pHの低下により、希釈により析出したタンパク質の再可溶化が引き起こされ、透明な酸性化タンパク質溶液が得られる。タンパク質溶液は、湿った形態で使用してもよく、または噴霧乾燥もしくは凍結乾燥などの任意の好都合な技法により、乾燥形態まで乾燥してもよい。
【0090】
さらなる代替手順として、タンパク質沈殿物と上澄み液の混合物を酸性化することにより形成したタンパク質溶液は、酸性化により再可溶化する単離した沈殿物について上記したのと同じステップを利用して処理することができる。
【0091】
次いで、場合により濃縮し、場合により透析濾過し(diafiltered)、場合により熱処理し、場合により吸着剤処理した透明な大豆タンパク質水溶液は、噴霧乾燥または凍結乾燥などの任意の好都合な技法により乾燥することができる。乾燥大豆タンパク質製品は、約60wt%タンパク質を超える、好ましくは少なくとも約90wt%、より好ましくは約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する。
【0092】
本明細書において製造する大豆タンパク質製品は酸性の水性環境に可溶であり、それにより、該製品は、炭酸を含む飲料および炭酸を含まない飲料のいずれへも、そこにタンパク質強化(protein fortification)をもたらすために組み込むのに適している。そのような飲料は、約2.5〜約5の範囲の幅広い酸性pH値を有する。本明細書において提供する大豆タンパク質製品は、そのような飲料にタンパク質強化(protein fortification)をもたらすために、任意の好都合な量、例えば、一杯当たり少なくとも約5gの大豆タンパク質をそのような飲料に添加し得る。添加した大豆タンパク質製品は、飲料中で溶解し、加熱処理後でさえ飲料の透明度を損なわない。
【0093】
大豆タンパク質製品は、水への溶解による飲料の液戻し(reconstitution)の前に、乾燥飲料とブレンドし得る。いくつかの場合において、飲料中に存在する成分が、飲料中に溶解したままとなる本発明の組成物の能力に悪影響を及ぼす恐れがある場合、該組成物を許容するために、飲料の通常の配合を変更する必要性が生じる可能性がある。
【実施例】
【0094】

例1:
この例は、酸性溶液において可溶性、透明および熱安定性であり、自然のpHで膜処理する大豆タンパク質単離物の製造を例示する。この単離物の製造は、希釈ステップを伴わない。
【0095】
20kgの脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉を、周囲温度で200Lの0.15MのCaCl溶液に添加し、30分間撹拌して、タンパク質水溶液を得た。残留する大豆粉を除去し、得られたタンパク質溶液を遠心分離および濾過により清澄化して、1.68重量%のタンパク質含量を有する濾過タンパク質溶液169Lを生成した。
【0096】
濾過したタンパク質抽出物溶液の体積を、5000ダルトンの分画分子量(molecular weight cutoff)を有するPVDF膜での濃縮により31Lまで減少させた。濃縮タンパク質溶液を62Lの0.075MのCaClで透析濾過した(diafiltered)。得られた透析濾過した(diafiltered)濃縮タンパク質溶液は、13.28重量%のタンパク質含量を有しており、最初の濾過タンパク質溶液の95.2wt%の収率を示した。次いで、透析濾過した(diafiltered)濃縮タンパク質溶液を乾燥して、91.45%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有することが判明した生成物を得た。この生成物は、S005−L11−08A S702と名付けた。
【0097】
S702の3.2%w/vタンパク質溶液を水中で調製し、pHを希HClで3まで低下させた。次いで、HunterLab ColorQuest XE測定器を使用し、透過モードで操作して色および透明度を評価した。
【0098】
色および透明度の値は、以下の表1に示している。
【0099】
【表1】

【0100】
表1から分かるように、pH3のS702溶液の色は非常に明るく、ヘイズレベルは非常に低かった。
【0101】
乾燥粉末の色もHunterLab ColorQuest XE測定器を反射モードで用いて評価した。色の値は、以下の表2に示している。
【0102】
【表2】

【0103】
表2から分かるように、S702粉末の乾燥状態の色は非常に明るかった。
【0104】
Kakadeら.Cereal Chem.、51:376-381(1974)の方法を使用して単離物のトリプシン阻害活性を求めた。S005−L11−08A S702は、87トリプシン阻害剤単位(trypsin inhibitor unit)(TIU)/mgタンパク質(N×6.25)のトリプシン阻害活性を有することが分かった。
【0105】
例2:
この例は、例1の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S702)の水中での熱安定性の評価を含む。
【0106】
S005−L11−08A S702の2%w/vタンパク質水溶液を生成し、pHを3に調整した。この溶液の透明度を、HunterLab ColorQuest XE測定器を用いたヘイズ測定により評価した。次いで、該溶液を95℃まで加熱し、この温度で30秒間保持し、次いで、氷浴中で直ちに室温まで冷却した。次いで、熱処理した溶液の透明度を再び測定した。
【0107】
加熱の前および後のタンパク質溶液の透明度は、以下の表3に示している。
【0108】
【表3】

【0109】
表3のデータから分かるように、試料は熱安定性であった。タンパク質溶液は、最初は非常に透明であり、熱処理により実際にヘイズのレベルが低減した。
【0110】
例3:
この例は、例1の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S702)の水中の溶解度の評価を含む。タンパク質溶解度(いわゆるタンパク質法、Morrら、J. Food Sci. 50:1715-1718の手順の改良版)および生成物全体の溶解度(いわゆるペレット法)に基づいて溶解度を試験した。
【0111】
0.5gのタンパク質を供給するのに十分なタンパク質粉末を秤量してビーカーに入れ、次いで、少量の逆浸透(RO)精製水を添加し、滑らかなペーストを形成するまで混合物を撹拌した。次いで、追加の水を添加して、体積を約45mlとした。次いで、電磁撹拌機を使用してビーカーの中身をゆっくりと60分間撹拌した。タンパク質の分散の直後にpHを求め、希NaOHまたはHClで適切なレベル(2、3、4、5、6または7)に調整した。自然のpHの試料も調製した。pHを調整した試料については、pHを測定し、60分間の撹拌の間に2回補正した。60分間の撹拌後、RO水で試料の体積を合計で最大50mlとし、1%w/vタンパク質分散液を得た。Leco FP528窒素測定器(Nitrogen Determinator)を使用して分散液のタンパク質含量を測定した。次いで、分散液のアリコート(20ml)を、100℃のオーブンにおいて終夜乾燥した、予め秤量した遠心分離管に移し、次いで、乾燥器において冷却し、該管に蓋をした。試料を7800gで10分間遠心分離し、それにより不溶性物質が沈降し、透明な上澄み液が生じた。Leco分析により上澄み液のタンパク質含量を測定し、次いで、上澄み液および該管の蓋を廃棄し、100℃に設定したオーブンにおいてペレット材料を終夜乾燥した。翌朝、該管を乾燥器に移し、冷却させた。乾燥ペレット材料の重量を記録した。使用した粉末の重量に((100−該粉末の含水率(%))/100)の倍率(factor)を乗算することにより、最初のタンパク質粉末の乾燥重量を算出した。次いで、この生成物の溶解度を2種の異なる方法で算出した。
【0112】
1)溶解度(タンパク質法)(%)=(上澄み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
2)溶解度(ペレット法)(%)=(1−(重量乾燥不溶性ペレット材料/((20mlの分散液の重量/50mlの分散液の重量)×最初の重量乾燥タンパク質粉末)))×100
例1において製造したタンパク質単離物の水中(1%タンパク質)の自然のpH値は、表4に示している。
【0113】
【表4】

【0114】
得られた溶解度の結果は、以下の表5および6に示している。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
表5および6の結果から分かるように、S702製品は2〜4のpH範囲で非常に可溶性であった。
【0118】
例4
この例は、例1の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S702)の水中の透明度の評価を含む。
【0119】
例3に記載のように調製した1%w/vタンパク質溶液の透明度を、600nmでの吸光度を測定することにより評価し、吸光度スコアが低いほど透明度が高いことを示していた。HunterLab ColorQuest XE測定器の透過モードでの試料の分析により、透明度の別の尺度であるパーセンテージヘイズ値(haze reading)も得られた。
【0120】
透明度の結果は、以下の表7および8に示している。
【0121】
【表7】

【0122】
【表8】

【0123】
表8および9の結果から分かるように、S702の溶液はpH2および3で非常に透明であったが、pH4ではわずかに濁っていた。
【0124】
例5:
この例は、例1の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S702)の、ソフトドリンク(Sprite)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)への溶解度の評価を含む。pHを補正していない各飲料にタンパク質を添加して溶解度を求め、タンパク質強化(protein fortification)飲料のpHを元々の飲料のレベルに調整して再び溶解度を求めた。
【0125】
pHを補正せずに溶解度を評価する場合、1gのタンパク質を供給するのに十分な量のタンパク質粉末を秤量してビーカーに入れ、少量の飲料を添加し、滑らかなペーストを形成するまで撹拌した。追加の飲料を添加して体積を50mlとし、次いで、溶液を電磁撹拌機で60分間ゆっくりと撹拌して、2%タンパク質w/v分散を得た。LECO FP528窒素測定器を使用して試料のタンパク質含量を分析し、次いで、タンパク質を含有する各飲料のアリコートを7800gで10分間遠心分離し、各試料中の上澄み液のタンパク質含量を測定した。
【0126】
溶解度(%)=(上澄み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
pHを補正して溶解度を評価する場合、タンパク質を含まないソフトドリンク(Sprite)(3.39)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)(3.19)のpHを測定した。1gのタンパク質を供給するのに十分な量のタンパク質粉末を秤量してビーカーに入れ、少量の飲料を添加し、滑らかなペーストを形成するまで撹拌した。追加の飲料を添加して体積を約45mlとし、次いで、溶液を電磁撹拌機で60分間ゆっくりと撹拌した。タンパク質を含有する飲料のpHを測定し、次いで、必要に応じて、HClまたはNaOHを用いて元々のタンパク質を含まないpHに調整した。次いで、追加の飲料を用いて各溶液の体積を合計で50mlとし、2%タンパク質w/v分散液を得た。LECO FP528窒素測定器を使用して試料のタンパク質含量を分析し、次いで、タンパク質を含有する飲料のアリコートを7800gで10分間遠心分離し、上澄み液のタンパク質含量を測定した。
【0127】
溶解度(%)=(上澄み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
得られた結果は、以下の表9に示している。
【0128】
【表9】

【0129】
表9の結果から分かるように、S702タンパク質は、SpriteおよびOrange Gatoradeの両方に極度に可溶であった。S702は中性pHの製品であるが、補正していない飲料の試料のpHがわずかに高いことが溶解度に悪影響を及ぼしたとは考えられないように見えることに留意されたい。
【0130】
例6:
この例は、例1の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S702)の、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク中での透明度の評価を含む。
【0131】
例5においてソフトドリンク(Sprite)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)中で調製した2%w/vタンパク質分散液の透明度を、例4に記載の方法を使用して評価した。600nmでの吸光度測定については、測定を実施する前に、適切な飲料を用いて分光光度計のブランク測定を行った(was blanked)。
【0132】
得られた結果は、以下の表10および11に示している。
【0133】
【表10】

【0134】
【表11】

【0135】
表10および11の結果から分かるように、溶解度が優れているにも関わらず、S702を含有するSpriteおよびOrange Gatorade試料は幾分濁っていた。pHを補正することにより、ヘイズレベルはわずかに低減しただけであった。
【0136】
例7:
この例は、大豆タンパク質源を様々なpH値の塩化カルシウム溶液で抽出するために実施した。
【0137】
脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉の3つの試料(各10g)を、室温で30分間、電磁撹拌機/撹拌子を用いて、0.15MのCaCl(100ml)で抽出した。1つの試料を自然のpHで抽出し、もう1つの試料を希HClでpH2.98に調整し、第3の試料を希NaOHでpH8.55に調整した。該粉の湿潤の直後に抽出系のpHを調整した。抽出後、試料を10200gで10分間遠心分離して、使用済みミール(spent meal)から抽出物を分離した。次いで、孔径0.45μmのシリンジフィルターを通した濾過により上澄み液をさらに清澄化した。pH、伝導率、透明度(A600)およびタンパク質含量(Leco)について濾液を分析した。また、濾液の試料を等しい体積のRO水で1:1に希釈し、A600を再び測定した。希釈および未希釈の濾液試料を希HClでpH3に酸性化し、A600を再び測定した。
【0138】
得られた濾液の特性は、以下の表12に示している。
【0139】
【表12】

【0140】
表12から分かるように、低pH条件で最高量のタンパク質が抽出された。しかし、抽出性は、評価した全てのpH条件でかなり良好であった。
【0141】
酸性化したそのままの濃度の(full strength)抽出物の透明度は、以下の表13に示している。
【0142】
【表13】

【0143】
表13から分かるように、酸性化すると、全ての抽出物がかなり透明であったが、自然のpHで抽出した試料が最も透明であった。
【0144】
酸性化し希釈した抽出物の透明度は、以下の表14に示している。
【0145】
【表14】

【0146】
表14から分かるように、試料を水で1:1に希釈し、次いで、酸性化すると、全ての試料は再びかなり透明であった。しかし、自然および酸性のpHで抽出した試料の透明度は、高いpHで抽出した試料より良好であった。
【0147】
例8:
この例は、酸性溶液において可溶性、透明および熱安定性であり、自然のpHで膜処理し、次いで、希釈ステップにより分画する大豆タンパク質単離物の製造を例示する。
【0148】
「a」kgの大豆「b」を、周囲温度で「c」Lの0.15MのCaCl溶液に添加し、30分間撹拌して、タンパク質水溶液を得た。残留する大豆タンパク質源を除去し、得られたタンパク質溶液を遠心分離および濾過により清澄化して、「e」重量%のタンパク質含量を有する濾過タンパク質溶液「d」Lを生成した。
【0149】
「f」Lのタンパク質抽出物溶液を、「i」ダルトンの分画分子量(molecular weight cutoff)を有する「h」膜で「g」まで減少させ、「j」重量%のタンパク質含量を有する濃縮タンパク質溶液を生成した。次いで、濃縮タンパク質溶液を、最初の濃縮ステップに使用したのと同じ膜で、「k」Lの0.15MのCaCl溶液で透析濾過した(diafiltered)。次いで、透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液を、最初の濃縮および透析濾過(diafiltration)ステップに使用したのと同じ膜でさらに「l」kgまで濃縮し、「m」wt%のタンパク質含量を有する濃縮タンパク質溶液を生成した。
【0150】
次いで、「o」℃の濃縮タンパク質溶液、または濃縮し、透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液「n」kgを、「q」℃の温度を有する逆浸透(RO)精製水で「p」倍に希釈した。白色の濁りが直ちに形成し、これを沈降させた。上澄み液を遠心分離により除去し、濾過タンパク質溶液の「r」wt%の収率で沈殿したタンパク質を回収した。次いで、回収した「s」kgのタンパク質沈殿物を約「t」倍量(volumes)の水で洗浄し、水をデカントした。次いで、洗浄した沈殿物「u」を約「v」倍量(volumes)の水に再可溶化し、十分な希塩酸を添加して試料のpHを「w」に調整した。追加の「x」kgのpH3のRO水を添加して、噴霧乾燥を促進するために再可溶化した沈殿物を薄めた。次いで、「y」kgの再可溶化した沈殿物を噴霧乾燥した。乾燥したタンパク質は、「z」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有することが判明した。この生成物には、「aa」S7300という名称を与えた。別の「ab」kgの再可溶化した沈殿物画分を90℃まで1分間加熱し、次いで、約「ac」LのRO水で希釈して噴霧乾燥を促進した。乾燥したタンパク質は、「ad」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有することが判明した。この生成物には、「aa」S7300Hという名称を与えた。洗浄した沈殿物の他の「ae」を約「af」倍量(volumes)の水中で再可溶化し、十分な希リン酸を添加して試料のpHを「ag」に調整した。次いで、「ah」kgの再可溶化した沈殿物画分を噴霧乾燥した。乾燥したタンパク質は、「ai」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有することが判明した。この生成物には、「aa」S7300−02という名称を与えた。パラメーター「a」〜「ai」は、以下の表15に示している。
【0151】
【表15】

【0152】
S7300、S7300HおよびS7300−02製品の3.2%タンパク質溶液を水中で調製し、HunterLab ColorQuest XEを使用し透過モードで操作して色および透明度を評価した。pHメーターを用いて該溶液のpHを求めた。
【0153】
pH、色および透明度の値は、以下の表16に示している。
【0154】
【表16】

【0155】
表16の結果から分かるように、S005−C19−09A製品のpHは、最終的には標的pHの3より低くなった。このことは、沈殿物を再可溶化するときに添加する酸を単純に少なくすることにより改善することができる。一般に、これらの製品は、透明度が高い、軽く色づいた溶液を生じた。S013−J06−09A S7300Hの溶液およびS013−J27−09A製品の溶液に関して得られたヘイズ値は、驚くほど高かった。これらの試料中に存在するヘイズは、噴霧乾燥プロセスにおけるいくつかの困難から生じた可能性があると考えられる。噴霧乾燥器に入るこれらの試料の供給流は、A600測定により評価したところかなり透明であった(データを示さず)。S7300製品の同じ3.2%w/vタンパク質溶液を調製の1時間後にHunterLabで再び評価すると、該溶液は、以下の表17に示しているように顕著により透明であった。
【0156】
【表17】

【0157】
乾燥粉末の色もHunterLabを反射モードで用いて評価した。色の値は、以下の表18に示している。
【0158】
【表18】

【0159】
表18から分かるように、乾燥製品は色が非常に明るかった。
【0160】
Kakadeら.Cereal Chem.、51:376-381(1974)の方法を使用して、S7300製品のトリプシン阻害活性を求めた。得られた結果は、以下の表19に示している。
【0161】
【表19】

【0162】
表19から分かるように、濃縮タンパク質溶液の希釈時に形成した沈殿物から調製した製品は、同様に調製したが希釈ステップなしで調製した製品(S702)に関して例1において見られるトリプシン活性より低いトリプシン活性を有していた。再可溶化および乾燥の前の水による沈殿物の洗浄の有用性は、結果がばらついていたため不明である。再可溶化した沈殿タンパク質を熱処理することにより非常に低いTIAが得られた。表19の結果と、同じ希釈ステップからの上澄み液に関するトリプシン阻害活性値との比較により、希釈により沈殿したタンパク質がトリプシン阻害剤から分画されることが示される。上澄み液のトリプシン阻害活性は、表20に示している。
【0163】
【表20】

【0164】
表20から分かるように、上澄み液のTIAは沈殿物由来の製品より顕著に高かった。
【0165】
例9:
この例は、追加の大豆タンパク質製品を形成するための、例8の手順から生じる上澄み液流の処理方法を例示する。
【0166】
希釈ステップからの上澄み液のpHを、希HClの添加により「a」から「b」に調整した。次いで、「c」Lの上澄み液を、「f」ダルトンの分画分子量(molecular weight cutoff)を有する「e」膜で、「d」kgまで減少させた。濃縮タンパク質溶液は、「g」wt%のタンパク質濃度を有していた。上澄み液から回収した追加のタンパク質と合わせると、濾過タンパク質溶液の全体的な回収率は「h」%であった。「i」kgの濃縮上澄み液を噴霧乾燥して、「j」(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する生成物を形成した。この生成物には、「k」S7200という名称を与えた。「l」kgの濃縮上澄み液を、希水酸化ナトリウム溶液でpH「m」に調整した。次いで、「n」kgの濃縮上澄み液を85℃で10分間熱処理し、それにより、濃縮上澄み液と共に約「o」%のタンパク質が沈殿した。「p」kgの沈殿したタンパク質を遠心分離により回収し、約「q」倍量(volumes)のRO水で洗浄し、次いで、再び遠心分離により回収した。「r」kgの洗浄した沈殿物を凍結乾燥して、「s」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する生成物を形成した。この生成物は、「k」S7200Pと名付けた。熱処理により沈殿しなかったタンパク質を含有する分離液(centrate)を濾過し、次いで、噴霧乾燥して、「t」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する生成物を形成した。この生成物は、「k」S7200Hと名付けた。パラメーター「a」〜「f」は、以下の表21に示している。
【0167】
【表21】

【0168】
S7200およびS7200H製品の3.2%タンパク質溶液を水中で調製し、HunterLab ColorQuest XEを使用し透過モードで操作して色および透明度を評価した。pHメーターを用いて該溶液のpHを求めた。S7200Pは難溶性であり、そのため、この試料の色および透明度は試験しなかった。
【0169】
pH、色および透明度の値は、以下の表22に示している。
【0170】
【表22】

【0171】
表22から分かるように、全ての上澄み液由来製品が軽く色づいた溶液を生じた。しかし、S013−J06−09AおよびS013−J27−09A製品はS005−C19−09A製品より濁っていた。この差異は、多くの異なる要素、例えば、pH、処理および大豆タンパク質源の差異に起因し得る。しかし、例8において述べた噴霧乾燥の問題が影響を及ぼした可能性がある(may have played a role)。加熱析出したタンパク質を濃縮上澄み液から除去することにより生じる分離液(centrates)を濾過すると、乾燥ステップの前にA600測定により評価したところかなり透明であった。
【0172】
乾燥粉末の色もHunterLabを反射モードで用いて評価した。色の値は、以下の表23に示している。
【0173】
【表23】

【0174】
表23から分かるように、乾燥製品は色が非常に明るかった。
【0175】
Kakadeら.Cereal Chem.、51:376-381(1974)の方法を使用して上澄み液由来製品のトリプシン阻害活性を求めた。得られた結果は、以下の表24に示している。
【0176】
【表24】

【0177】
表24から分かるように、S7200P製品は、S7200H製品より顕著に低いトリプシン阻害活性を有していた。このことは、加熱誘導沈殿(heat induced precipitation)により濃縮上澄み液を分画すると、トリプシン阻害剤が可溶性のままであることを示唆している。タンパク質沈殿物を乾燥の前に水で洗浄すると、S7200Pに関する低い方のTIA値が得られた。S013−J27−09A S7200Pに関して得られた特に低い値は、試験において利用したpH処置(pH regimen)と関連している可能性もある。
【0178】
例10:
この例は、自然のpHでの膜処理および希釈ステップを利用するが、希釈後にタンパク質画分を分離しない、酸性溶液において可溶性、透明および熱安定性である大豆タンパク質単離物の製造を例示する。
【0179】
例8に記載のように約「b」℃で調製した、プロセス試験S013/S015−K30−09Aからの透析濾過(diafiltered)および濃縮した保持液(retentate)「a」mlを、約「d」℃のRO水「c」mLで希釈した。白色の濁りが形成したが、試料のpHを希HClで「e」まで低下させると、タンパク質は再可溶化した。希釈および酸性化した溶液のタンパク質含量は「f」wt%であった。希釈および酸性化したタンパク質溶液を、「j」ダルトンの分画分子量(molecular weight cutoff)を有する「i」膜で、「g」mlの体積から約「h」gまで減少させ、「k」wt%のタンパク質含量を有する濃縮タンパク質溶液を生成した。分析のための濃縮タンパク質溶液の小量の試料を取り出した後、「l」gの濃縮タンパク質溶液を凍結乾燥して、「n」S7301−01と名付けた、「o」wt%w.b.のタンパク質含量を有する生成物「m」gを得た。残留する「p」mlの濃縮タンパク質溶液を、濃縮ステップに使用したのと同じ膜で「q」mlのRO水で透析濾過した(diafiltered)。合計で「r」gの透析濾過(diafiltered)および濃縮したタンパク質溶液が得られ、該溶液は「s」wt%のタンパク質含量を有していた。「t」gのこの溶液を凍結乾燥して、「v」%w.b.のタンパク質含量を有する、「n」S7301−02と名付けた生成物「u」gを得た。パラメーター「a」〜「v」は、以下の表25に示している。
【0180】
【表25】

【0181】
S7301製品の3.2%タンパク質溶液を水中で調製し、HunterLab ColorQuest XEを使用し透過モードで操作して色および透明度を評価した。
【0182】
色および透明度の値は、以下の表26に示している。
【0183】
【表26】

【0184】
表26から分かるように、全てのS7301溶液が明るい色およびかなり低いヘイズ値(haze values)を有していた。透析濾過した(diafiltered)S7301−02試料は、透析濾過(not diafiltered)S7301−01試料より明るく、緑色が薄く、黄色が薄く、透明であった。この透析濾過(diafiltration)の効果は、最初の希釈量が少なく、より多くの透析濾過量(diafiltration volumes)を利用した試験1においてより明白であった。しかし、希釈量(dilution volume)が多く、わずか1倍量の透析濾過(one volume of diafiltration)を行った試験2の試料は、全体的により明るく、黄色が薄く、タンパク質含量が高かった。
【0185】
例11:
この例は、例8(S7300)および例10(S7301)の方法により製造した大豆タンパク質単離物の水中での熱安定性の評価を含む。
【0186】
S013/15−K30−09A S7300および試験1 S7301−02の2%w/vタンパク質水溶液を生成し、pHをHClで3に調整した。該溶液の透明度を、HunterLab ColorQuest XE測定器を用いたヘイズ測定により評価した。次いで、該溶液を95℃まで加熱し、この温度で30秒間保持し、次いで、氷浴中で直ちに室温まで冷却した。次いで、熱処理した溶液の透明度を再び測定した。
【0187】
加熱の前および後のタンパク質溶液の透明度は、以下の表27に示している。
【0188】
【表27】

【0189】
表27のデータから分かるように、試料は熱安定性であった。タンパク質溶液は、最初はかなり透明であり、熱処理により実際にヘイズのレベルが低減した。
【0190】
本開示の概要
本開示を要約すると、本発明は、酸性媒体に可溶であり、その中で熱安定性で透明な溶液を形成する大豆タンパク質製品を得るための、塩化カルシウム水溶液を使用する、原料からの大豆タンパク質の抽出に基づいた代替法を提供する。本発明の範囲内で変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過するステップと、
(e)濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を乾燥するステップと
を含む方法。
【請求項2】
乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過するステップと、
(e)濃縮大豆タンパク質溶液を水に希釈して、沈殿物の形成を引き起こすステップと、
(f)希釈水、いわゆる上澄み液から沈殿物を分離するステップと、
(g)分離した大豆タンパク質沈殿物を乾燥するステップと
を含む方法。
【請求項3】
上澄み液を処理して、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源をカルシウム塩水溶液で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過するステップと、
(e)濃縮大豆タンパク質溶液を水に希釈して、沈殿物の形成を引き起こすステップと、
(f)沈殿物と希釈水の混合物を酸性化して、タンパク質を再可溶化し、透明な大豆タンパク質溶液を形成するステップと、
(g)選択的膜技法を使用することにより、イオン強度を実質的に一定に維持しながら透明な酸性化大豆タンパク質溶液を濃縮するステップと、
(h)場合により、濃縮した透明な酸性化大豆タンパク質溶液を透析濾過するステップと、
(i)濃縮し、場合により透析濾過した透明な酸性化大豆タンパク質溶液を乾燥するステップと
を含む方法。
【請求項5】
前記カルシウム塩が塩化カルシウムである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩化カルシウム溶液が約1.0M未満の濃度を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記塩化カルシウム溶液が約0.10〜約0.15Mの濃度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出ステップが約15℃〜約35℃の温度で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出ステップが約5〜約11のpHで実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記pHが約5〜約7である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記大豆タンパク質水溶液が約5〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記大豆タンパク質水溶液が約10〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルシウム塩水溶液が酸化防止剤を含有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
還元剤が抽出ステップの間に存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記大豆タンパク質水溶液を吸着剤で処理して、大豆タンパク質水溶液から色および/または臭気化合物を除去する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記大豆タンパク質水溶液および/または前記上澄み液および/または前記透明な酸性化大豆タンパク質溶液が約50〜約400g/Lのタンパク質濃度まで濃縮される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記大豆タンパク質水溶液が約100〜約250g/Lのタンパク質濃度まで濃縮される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記濃縮ステップが約3000〜約1000000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用する限外濾過により実施される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記濃縮ステップが約5000〜約100000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用する限外濾過により実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記大豆タンパク質水溶液に対する前記任意選択の透析濾過ステップが、大豆タンパク質溶液に対して、抽出塩溶液とほぼ同じpHおよび抽出塩溶液とほぼ等しいまたはそれより低いモル濃度のカルシウム塩水溶液を使用して、その完全な濃縮の前または後に実施される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
透析濾過ステップが、上澄み液に対して、水、酸性化した水、希釈塩溶液または酸性化した希釈塩溶液を使用して、その完全な濃縮の前または後に実施される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記透析濾過ステップが約2〜約40倍量の透析濾過溶液を使用して実施される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記透析濾過ステップが約5〜約25倍量の透析濾過溶液を使用して実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記透析濾過が約3000〜約1000000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用して実施される、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記膜が約5000〜約100000ダルトンの分画分子量を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらなるかなりの量の汚染物質または可視色が透過液中に存在しなくなるまで、前記透析濾過が実施される、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
乾燥すると、少なくとも約90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を生成するように保持液が十分に精製されるまで、前記透析濾過が実施される、請求項20から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
酸化防止剤が透析濾過ステップの少なくとも一部の間に存在する、請求項20から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過ステップが約2°〜約60℃の温度で実施される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記温度が約20°〜約35℃である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
濃縮および任意選択の透析濾過ステップがトリプシン阻害剤の除去に好都合な様式で操作される、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
還元剤が濃縮および/または任意選択の透析濾過ステップの間に存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
還元剤を、濃縮し場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液、および/または濃縮し場合により透析濾過した上澄み液、および/または乾燥前の前記濃縮し場合により透析濾過した透明な酸性化大豆タンパク質溶液、および/または乾燥した大豆タンパク質製品に添加して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
濃縮し場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液、および/または濃縮し場合により透析濾過した上澄み液、および/または前記濃縮し場合により透析濾過した酸性化大豆タンパク質溶液を吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去する、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
濃縮し場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液、および/または濃縮し場合により透析濾過した上澄み液、および/または前記濃縮し場合により透析濾過した酸性化大豆タンパク質溶液に低温殺菌ステップを施す、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記低温殺菌ステップが約55°〜約70℃の温度で約30秒間〜約60分間、実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記低温殺菌ステップが約60°〜約65℃の温度で約10〜約15分間、実施される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記低温殺菌し、濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液が乾燥またはさらなる処理のために約15℃〜約35℃の温度まで冷却される、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液および/または前記濃縮し、場合により透析濾過した上澄み液を水に希釈して、前記濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液と比較してトリプシン阻害剤の含量が低下した沈殿物を得る、上澄み液の濃縮および任意選択の透析濾過後の請求項2または3、請求項4および5から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液が水で約5〜約25倍に希釈される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液が水で約10〜約20倍に希釈される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
希釈を実施するのに使用される水が約1°〜約60℃の温度を有する、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
希釈を実施するのに使用される水が約15°〜約35℃の温度を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記沈殿物が約1〜約10倍量の水で洗浄され、次いで、沈殿物が回収される、請求項2または3および5から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記沈殿物が約2〜約3倍量の水で洗浄され、次いで、沈殿物が回収される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記沈殿物を低pHの水に可溶化して、透明なタンパク質溶液を形成する、請求項2または3および5から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記沈殿物が約2〜約3倍量の低pHの水に可溶化される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記沈殿物を約1.5〜約4.4のpHの水に可溶化して、透明な大豆タンパク質溶液を形成する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記沈殿物を約2.0〜約4.0のpHの水に可溶化して、透明な大豆タンパク質溶液を形成する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
pHを低下させることにより前記沈殿物を再可溶化して、透明な大豆タンパク質溶液を形成する、請求項4から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
pHを約1.5〜約4.4まで低下させることにより前記沈殿物を再可溶化して、透明な大豆タンパク質溶液を形成する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
pHを約2.0〜約4.0まで低下させることにより前記沈殿物を再可溶化して、透明な大豆タンパク質溶液を形成する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液および/または濃縮上澄み液、部分濃縮もしくは完全濃縮上澄み液が、乾燥またはさらなる処理の前に約2.5〜約4.4のpHに酸性化される、請求項1、3および5から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
pHが2.0〜4.0である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
酸性化大豆タンパク質溶液および/または透明な大豆タンパク質溶液および/または酸性化上澄み液、部分濃縮もしくは完全濃縮上澄み液に熱処理ステップを施して、熱不安定性の抗栄養因子を不活性化する、請求項33から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
抗栄養因子が熱不安定性トリプシン阻害剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
熱処理ステップにより透明なタンパク質溶液も低温殺菌する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記熱処理が約70°〜約120℃の温度で約10秒間〜約60分間、実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記熱処理が約85°〜約95℃の温度で約30秒間〜約5分間、実施される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
熱処理した透明な大豆タンパク質溶液が乾燥またはさらなる処理のために約2°〜約60℃の温度まで冷却される、請求項49から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
熱処理した透明な大豆タンパク質溶液が乾燥またはさらなる処理のために約20°〜約35℃の温度まで冷却される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
酸性化し、場合により熱処理した透明な大豆タンパク質溶液を請求項16〜34のいずれか一項に記載の手順に従って濃縮してそのタンパク質濃度を増大させ、場合により透析濾過する、請求項48から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
還元剤が濃縮および/または任意選択の透析濾過ステップの間に存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
乾燥前の湿ったタンパク質沈殿物、乾燥前の濃縮し場合により透析濾過した透明な大豆タンパク質溶液、および/または乾燥した大豆タンパク質製品に、還元剤を添加して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項2から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
酸性化上澄み液、部分濃縮した酸性化上澄み液または完全濃縮した酸性化上澄み液のpHが約6.0〜約7.0に調整される、請求項53に記載の方法。
【請求項66】
上澄み液、部分濃縮上澄み液または完全濃縮上澄み液が熱処理されて熱感受性タンパク質の沈殿物が生じ、沈殿物が上澄み液、部分濃縮上澄み液または完全濃縮上澄み液から分離される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
酸性化し次いで中和した上澄み液、酸性化し次いで中和した部分濃縮上澄み液または酸性化し次いで中和した完全濃縮上澄み液が熱処理されて熱感受性タンパク質の沈殿物が生じ、沈殿物が、酸性化し次いで中和した上澄み液、酸性化し次いで中和した部分濃縮上澄み液または酸性化し次いで中和した完全濃縮上澄み液から分離される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
上澄み液、部分濃縮上澄み液または完全濃縮上澄み液が約70〜約120℃の温度で約1分〜約30分間、熱処理される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記熱処理が約75°〜約105℃で約5分間〜約15分間、実施される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
酸性化し次いで中和した上澄み液、酸性化し次いで中和した部分濃縮上澄み液または酸性化し次いで中和した完全濃縮上澄み液が約70〜約120℃の温度で約1分〜約30分間、熱処理される、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記熱処理が約75〜約105℃の温度で約5分間〜約15分間、実施される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
回収された沈殿物が約1〜約10倍量の水で洗浄され、次いで、前記沈殿物が乾燥前に回収される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
回収された沈殿物が約2倍量の水で洗浄され、次いで、前記沈殿物が乾燥前に回収される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記大豆タンパク質製品が約60〜約90wt%(N×6.25).d.b.のタンパク質含量を有する、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記大豆タンパク質製品が少なくとも約90wt%(N×6.25).d.b.のタンパク質含量を有する、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記大豆タンパク質製品が少なくとも約100wt%(N×6.25).d.b.のタンパク質含量を有する、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
請求項1から76のいずれか一項に記載の方法により製造される大豆タンパク質製品。
【請求項78】
その中に請求項77に記載の大豆タンパク質製品が溶解した酸性溶液。
【請求項79】
飲料である請求項78に記載の水溶液。
【請求項80】
ブレンドの水溶液の製造のために水溶性の粉末状物質とブレンドされる請求項77に記載の大豆タンパク質製品。
【請求項81】
粉末状飲料である請求項80に記載のブレンド。

【公表番号】特表2012−517227(P2012−517227A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549408(P2011−549408)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000189
【国際公開番号】WO2010/091509
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(503403869)バーコン ニュートラサイエンス (エムビー) コーポレイション (25)
【氏名又は名称原語表記】BURCON NUTRASCIENCE (MB) CORP.