説明

塩基性反応酸化物を含む制御された活性物質流動を有する経皮治療システム

本発明は、活性物質不浸透性の閉塞性裏打ち層、単層又は多層のマトリックス、及び剥離可能な保護フィルムを含んでなり、ここでマトリックス又はマトリックス層の少なくとも1つが、薬学的に使用できる塩の形態の薬学的活性物質又は複数の薬学的活性物質、及び薬学的に使用できるアルカリ反応性酸化物を含んでなる経皮治療システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的活性成分を経皮投与するための製剤、より詳しくは経皮治療システム(TTS)に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮治療システムは、階層構造を有し、そして少なくとも1つの活性成分を含むポリマー層及び1つの活性成分不透過性の裏打ち層(backing layer)を含む投与形態である。経皮治療システムは、活性成分パッチ(patches)とも称する。それらは、その中に含まれる薬学的活性成分を皮膚へ又は治療患者の皮膚を通して長期持続投与することができる。
【0003】
活性成分を治療上必要な用量で皮膚を通して経皮投与するには、投与する活性成分は、十分な皮膚透過性を有しなければならない。従って、経皮治療システムを開発するには、その遊離塩基形態の活性成分(活性成分塩基)を用いることが好ましい。活性成分塩基は、通常、対応する活性成分の塩のものよりも経皮投与にとってかなり優れた良好な透過性を有する。さらに、活性成分塩基は、経皮製剤用の活性成分を含む塊(mass)を製造する際に容易に加工することができる。また、その遊離塩基形態の活性成分は、経皮治療システムにおいてすぐに利用できるため、対応する活性成分の塩よりも優先的に用いられる。
【0004】
得られた経皮製剤には、さらなる利点があり:マトリックスの質量をより少なく及び/又はマトリックス中の活性成分濃度をより低くすることができ、透過促進剤の濃度を減らすことができるか又は透過促進剤を完全に省くことができ、そして他の接着性を有する経皮治療システムを製造することが可能である。
【0005】
しかし、その遊離塩基形態の活性成分を有する経皮治療システムの製造、及びその遊離塩基形態の活性成分を有する経皮治療システムは欠点を有することもありうる。例えば、活性成分塩基は、低い温度、すなわち、4℃又はそれより低い温度で保存して活性成分の望ましくない分解を回避しなければならない。また、低い温度での保存は、活性成分塩基が高度に揮発性であるときに、活性成分塩基を保存している容器中の圧力が高くなり過ぎるのを防ぐためにも望ましい。
【0006】
また、活性成分を含む塊を製造するとき、又は支持体材料を、前記活性成分を含む塊で被覆(coating)するときに問題が生じることがある。高い蒸気圧を有する活性成分塩基(例えば、低い蒸発ナンバー(evaporation number)によって同定可能)を用いる場合、これにより、製剤の被覆及びその後の乾燥の際に活性成分がかなり消失することがある。
【0007】
さらに、活性成分塩基と経皮治療システムの他の成分、例えば感圧接着剤、透過促進剤、賦形剤、裏打ち層又は保護シートとの間の相互作用を防止する又は少なくとも低減するために、しばしば抗酸化剤を用いて活性成分塩基を安定化する必要がある。
【0008】
また、活性成分塩基と周囲空気との間の望ましくない相互作用も起こりうる。例えば、空気中の水分により活性成分塩基の加水分解が生じることがある。しかし、活性成分塩基と空気中の水分との間の望ましくない反応は、複雑な製造工程によってしか回避することができず、その際、経皮治療システムは、中間的に保存されることなく、そして周囲空気の代わりに不活性ガス、例えば窒素又はヘリウムが入った包装材の袋中に密封される。
【0009】
また、活性成分塩基の使用に関連する上記の化学安定性の問題の他に、物理的安定性の問題が生じることがある。対応する活性成分塩の代わりに活性成分塩基を用いる処方物のマトリックスは、多くの場合、被覆直後にすでに非常に軟質である。被覆後にさらにいっそう接着性が上昇するとすれば、その適用期間の終わりに経皮治療システムを皮膚から完全に除去することができるように、活性成分を含む塊の製造中の初期に、しばしばさらなるマトリックス形成剤(matrix formers)を加える必要がある。
【0010】
さらに、活性成分塩基を有する経皮治療システムでは、顕著な「コールドフロー(cold
flow)」の発生が見られることがあり、それによりシステムがその包装内部に付着するか又はシステムの適用及び装着が困難になる。
【0011】
経皮治療システムの開発及び製造に伴う上記の問題は、遊離活性成分塩基の代わりに活性成分塩を用いる場合、少なくとも部分的に回避することができる。経皮治療システムにその薬学的に許容しうる塩の1つの形態で活性成分を使用することは、経皮治療システムが外部の影響に対してより鈍感に反応し、活性成分塩とシステムの他の成分又は構成要素との相互作用がより少ないため化学安定性がより良好であり、そして「コールドフロー」が低減されるという点で有益である。
【0012】
しかし、塩形態の薬学的活性成分の皮膚透過性は、前記活性成分の遊離塩基の皮膚透過性よりも実質的に劣っており、そして経皮治療システムを用いて非常に多くの活性成分塩を治療上必要な用量で皮膚を通して投与するには適していない。
【0013】
しかし、経皮治療システムの透過速度(flux rate)を一定レベルに調節するため、すなわち、それを制限するため、一般に、良好な皮膚透過性を有する活性成分は、皮膚と活性成分リザーバーとの間に配置された制御膜(control membrane)を必要とする。しかし、このような経皮治療システムは、複雑な開発及び製造工程が必要であり、そのためシステムの製造コストが高くなる。さらに、制御膜を加えた結果、柔軟性及び接着性といったようなシステムの物理的性質が変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、活性成分塩基の望ましい透過性を用いるが、安定性の問題が回避され、その際、経皮治療システム中に制御膜を設ける必要なしにその透過速度を所定のレベルに調節することができる経皮治療システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
目的は、マトリックス、又は多層のマトリックスの場合、マトリックス層の少なくとも1つがその薬学的に許容しうる塩の1つの形態における少なくとも1つの薬学的活性成分及び水と接触すると反応して塩基を形成する少なくとも1つの酸化物を含み、そして皮膚から生じる水のために、皮膚にTTSを適用すると活性成分塩と酸化物から生じる水酸化物との間で酸塩基反応が起こり、その反応の際、その遊離塩基形態の活性成分を反応生成物としてTTSから放出することができ、そして同時に酸化物に対応する水酸化物の水溶性に乏しい層が形成され、活性成分の流れが制御される、経皮治療システムによって達成される。
【0016】
本発明によるTTSを皮膚に適用したときにのみ、システム中への水分取り込みが起こり、そしてその結果、酸塩基反応が生じる。反応速度論については、システムが取り込む/取り込んだ水の量が重要である。原則として、酸塩基反応の平衡において、使用された水は、反応後にも再び利用可能であるため、反応は、水によってのみ活性化されなければならない。反応にさらなる水を加えると、反応の進行速度を上げることができる。
【0017】
本発明は、活性成分塩基の良好な透過性に基づく。本発明によれば、経皮治療システムからの活性成分の透過速度を制御し、そしてそれを一般に追加の制御膜の必要がないように調節することができる。
【0018】
透過速度は、例えば、酸塩基反応を強める又は弱めることによって制御することができる。本発明による製剤中の活性成分塩の濃度を変える場合、これにより酸塩基反応の動力学、そしてさらに透過速度が変わる。活性成分塩の濃度がより高いと、透過速度も速くなる。活性成分塩の濃度がより低いと、流動も遅くすることができる。
【0019】
しかし、酸化物濃度の場合、さらなる効果を考慮する必要があるため、システムは異なる挙動を示す。酸化物濃度が高くなると、例えば、活性成分塩の濃度に対し等モル量を超えると、活性成分塩との反応に利用可能な多量の水酸化物が形成されることがある。結果的に、活性成分塩は、その対応する遊離塩基に変換され、そして皮膚を通して投与することができる。しかし、水溶性に乏しい過剰の水酸化物がマトリックス又はマトリックス層中に残り、そして一種の遮断層(blocking layer)を形成し、それを通して水が透過してさらなる酸化物に到達せず、さらなる酸塩基反応を促進することができない。これにより活性成分の放出を妨げることができる。濃度が活性成分塩の等モル量より低くなるほど低下した場合、同様に酸塩基反応が遅くなり、そして活性成分塩から塩基への転換が妨げられる。
【0020】
また、多層のマトリックスを用いた実施態様において、透過速度は、活性成分塩及び/又は酸化物を異なるマトリックス層に分けることによる酸塩基反応の調整(coordination)によって制御することができる。活性成分塩と、酸化物とは、異なるマトリックス層に組み込まれる場合、酸塩基反応の時間経過を制御することができる。ここでは、また、酸化物含有マトリックス層及び活性成分含有マトリックス層の順序が相互になることが重要である。例えば、皮膚の水分がシステムを透過する方向に基づいて、酸化物含有マトリックス層が活性成分含有マトリックス層の前に位置する場合、酸化物含有マトリックス層が単に活性成分含有マトリックス層の後にくる場合よりも、酸塩基反応がより急速に開始される。
【0021】
多層のマトリックスを用いた実施態様において、透過速度は、活性成分塩及び/又は酸化物の濃度を互い違いに配列することによって制御することもできる。このようにして、例えば、透過速度における線形性を達成することができる。例えば、最初のマトリックス層が低濃度の活性成分塩及び酸化物を有し、そしてその後の層が上昇した濃度の活性成分塩及び酸化物を有する場合、活性成分レベルにおけるゆるやかな上昇及び安定した放出を確保することができる。
【0022】
本発明による経皮製剤中には、1つ又は複数の薬学的活性成分が、1つ又はそれ以上のその/それらの薬学的に許容しうる塩形態において存在する。薬学的活性成分の薬学的に許容しうる塩は、当業者に知られている。有用な活性成分塩は、特に水酸化物とのその反応が皮膚への製剤適用後、0〜24時間の期間内に開始され、かつその遊離塩基が良好な皮膚透過を示すものである。以下からの活性成分の薬学的に許容しうる塩は、特に有用である。
【0023】
・抗認知症薬の群、例えば塩酸メマンチン、塩酸ドネペジル、酒石酸リバスチグミン、
・抗うつ薬の群、例えば塩酸ブプロピオン、塩酸クロミプラミン、塩酸パロキセチン、塩酸セルトラリン、塩酸ベンラファキシン、塩酸ドロキセチン、
・パーキンソン病及び/又は不穏下肢症候群を治療するための活性成分の群、例えば塩酸アマンタジン、塩酸プラミペキソール、塩酸ロピニロール、塩酸セレギリン、
・麻酔薬の群、例えば塩酸エスケタミン、塩酸ケタミン、
・ADHSを治療するための活性成分の群、例えば塩酸メチルフェニデート、
・鎮痛薬の群、例えば塩酸ドロフェニン、塩酸オキシコドン、塩酸モルヒネ、
・インスリン増感剤の群、例えば塩酸ピオグリタゾン、
・抗ヒスタミン薬の群、例えば塩酸セチリジン、
・高血圧を治療するための活性成分の群、例えばモキソニジン、
・低血圧を治療するための活性成分の群、例えば塩酸テオドレナリン、
・尿失禁及び切迫性尿失禁を治療するための活性成分の群、例えば塩酸オキシブチニン、
・化学療法、放射線療法及び/又は外科手術中の悪心及び嘔吐を予防するための活性成分の群、例えば塩酸パロノセトロン、塩酸オンダンセトロン、塩酸ラモセトロン。
【0024】
また、塩酸塩の他に、有用な塩としては、活性成分の硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩及び類似の塩が含まれる。
【0025】
本発明による製剤において活性成分の組み合わせを用いるとき、相互の活性成分塩の比率は、広範囲内で自由に選択可能である。活性成分塩の適切な比率は、所望の治療効果及び必要な又は所望の用量に関してそれぞれの活性成分の知られている用量反応関係に応じて当業者によって選ばれる。知られている活性成分のそれぞれの適切な日用量は、当業者に知られているか又は専門家の文献に見出すことができる。
【0026】
マトリックス中又は多層のマトリックスの場合、活性成分を含むマトリックス層中の活性成分塩の含量は、マトリックスの乾燥質量又は活性成分を含むマトリックス層の乾燥質量に基づいて0.1〜40質量%の間でなければならない。
【0027】
本発明による製剤のマトリックス又はマトリックス層の少なくとも1つは、皮膚上の使用に適した少なくとも1つの塩基性酸化物を含む。有用な酸化物としては、水と反応して塩基又はアルカリ性溶液を形成する金属の酸化物が含まれる。これらには、例えば、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属酸化物が含まれる。
【0028】
酸化物含量は、マトリックスの乾燥質量又は活性成分を含むマトリックス層の乾燥質量に基づいて好ましくは0.1〜40質量%である。
【0029】
その最も単純な実施態様において、本発明による製剤は、その薬学的に許容しうる塩の1つの形態における少なくとも1つの薬学的活性成分及び酸化物の両方を含む単層マトリックスを含む。
【0030】
好ましい実施態様において、本発明による製剤は、多層のマトリックスを含む。
【0031】
特に好ましいのは、活性成分と、酸化物とは、異なるマトリックス層に含まれる多層のマトリックスを有する実施態様である。
【0032】
これに関して、本発明によるシステムは、それぞれの層中で異なる濃度の活性成分及び/又は酸化物を用いることによって活性成分流動を具体的に設定することができるように構成することができる。水と接触すると対応する水酸化物を形成する酸化物は、活性成分塩を遊離活性成分塩基に転換することによってだけでなく、対応する水酸化物の可溶性に乏しい層を形成し、それにより活性成分流動を同様に調節することによっても制御要素として作用する。
【0033】
システムの使用中に皮膚に面しているマトリックス又は少なくともマトリックス層は、感圧接着性ポリマー又は感圧接着性ポリマーの組み合わせを含む。本明細書の目的に関する「感圧接着性ポリマー」は、感圧接着性処方物中に含まれ、そして皮膚上の使用に適したそれらのポリマーを意味するものとして理解される。
【0034】
好ましくは、感圧接着性ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、ポリテルペン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ゴム及び合成ゴムからなるポリマーの群から選ばれる。
【0035】
1つ又は複数の感圧接着性ポリマーの比率は、好ましくはマトリックス又は感圧接着性マトリックス層に基づいて5〜90質量%である。
【0036】
好ましい実施態様において、マトリックスの1つ又は複数の感圧接着性ポリマーは、架橋された状態で存在する。感圧接着性ポリマーは、当業者に知られた方法によって、例えば化学架橋剤、例えばポリアクリレートの場合、アルミニウムアセチルアセトネート若しくはチタンアセチルアセトネートを用いることによって又は照射によって架橋することができる。
【0037】
活性成分塩及び酸化物の組成のため、本発明による製剤は、乾燥し過ぎてそれ自体の力で皮膚に付着することができないことがありうる。このような実施態様の場合、システムは、例えば、また活性成分リザーバーを取り囲む環状接着片の形態でさらなる感圧接着層を有してもよい。また、感圧接着性被覆パッチを取り付けることもできる。
【0038】
本発明によるTTSは、活性成分不透過性の閉塞性裏打ち層を有する。裏打ち層に適した材料は、特に一定の強度を有するポリエステルである。さらにまた、裏打ち層を製造するために、他のあらゆる望ましいプラスチック、例えばポリ塩化ビニル、エチレン/酢酸ビニル、酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体又は上記ポリマーの組み合わせを使用することもできる。必要に応じて、裏打ち層は、例えば金属又は別の拡散防止剤(diffusion-blocking additive)、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は同様のものを用いた蒸着によってさらなる層を設けることができる。
【0039】
取り外し可能な保護層(removable protective layer)については、取り外し可能であれば、裏打ち層に用いたものと同じ材料を用いることができる。必要に応じて、シートの取り外し可能性は、シートの適切な表面処理、例えばシリコン処理によって達成することができる。しかし、他の取り外し可能な保護層、例えばポリテトラエチレン加工紙、セロハン、ポリ塩化ビニル又は同様のものを用いることもできる。
【0040】
また、本発明は、少なくとも1つの薬学的活性成分塩及び少なくとも1つの薬学的に許容しうる塩基性酸化物が、好ましくは感圧接着性マトリックス又は少なくとも1つのマトリックス層に組み込まれることを特徴とする本発明によるTTSの製造方法に関する。活性成分塩及び酸化物は、マトリックス用の同じポリマー含有塊(polymer-containing mass)又は別々のポリマー含有塊中に撹拌することができる。生じる塊を処理してシートを形成し、それを必要に応じて互いに積層させる。生じるマトリックス又は生じる積層体に裏打ち層及び取り外し可能な保護層を備える。
【0041】
本発明によるTTSは、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも72時間、特に好ましくは少なくとも168時間の期間にわたって活性成分を放出することができる。
【0042】
本発明によるTTSを用いた治療の開始時には、本発明による最初のTTSを治療する患者の皮膚に適用し、そして治療を続けるため、適用されたTTSを、24、72又は168時間の間隔で、各場合、本発明による新しいTTSを適用することによって置き換える。
【0043】
典型的な実施態様を、以下に記載する:
【0044】
実施例1:
【表1】

【0045】
調製:
適切な量の塩酸メマンチンを最初に入れ、そして活性成分量の約1/3の有機溶媒(例えば、酢酸エチル)を用いて懸濁した。続いて対応する量の適切なアクリレート(例えば、Durotak 9301),National Starch,New Jerseyを添加した後、ポリマー中に活性成分が確実に均一に分布するように撹拌を行った。
撹拌しながら酸化カルシウムを塊に加え、そして均一な懸濁液が得られるまでさらに撹拌した。懸濁液を、激しく撹拌しながら最大2分間、さらにホモジナイズした(例えば、Ultra-Turrax)。
蒸発による損失を重量法により検出し、そして酢酸エチルで補償した。
適切な保護シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、PET)上に被覆した後、積層体を乾燥し、そして適切な閉塞性の裏打ち層(例えば、PETシート)で積層した。TTSを打抜いた後、それらを適切な材料、好ましくはPET中に包装した。
【0046】
実施例2:
以下の実施例は、複数層を含んでなるマトリックスシステムを示す。複数層を適用することによって、正確な活性成分プロファイルを設定することができる。
a)第1の層
【表2】

b)第2の層
【表3】

【0047】
調製:
最初に第1層の適切な量の塩酸アマンタジンを入れ、そして活性成分量の約1/3の有機溶媒(例えば、酢酸エチル)を用いて懸濁した。
続いて、対応する量の適切なアクリレート(例えば、GMS 3083, Cytec Industries Inc., New Jersey)を添加した後、ポリマー中に活性成分が確実に均一に分散するように撹拌を行った。
撹拌しながら酸化カルシウムを塊に加え、そして均一な懸濁液が得られるまでさらに撹拌した。懸濁液を、激しく撹拌しながら最大2分間、さらにホモジナイズした(例えば、Ultra-Turrax)。
蒸発による損失を重量法により検出し、そして酢酸エチルで補償した。
適切な保護シート(例えば、PETシート)上に第1層を被覆した後、積層体を乾燥し、そして第2層を積層した。この二層積層体を同様に乾燥し、続いて適切な閉塞性裏打ち層(例えば、PETシート)で積層した。TTSを打抜いた後、それらを適切な材料、好ましくはPETに包装した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分不透過性の閉塞性裏打ち層、単層又は多層のマトリックス、及び取り外し可能な保護シートを含んでなる経皮治療システムであって、マトリックス又は少なくとも1つのマトリックス層が、薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つの形態の薬学的活性成分又は複数の薬学的活性成分、及び薬学的に許容しうる塩基性酸化物を含んでなることを特徴とする前記経皮治療システム。
【請求項2】
1つ又は複数の薬学的活性成分と、1つ又は複数の酸化物とは、異なるマトリックス層に含まれることを特徴とする請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
マトリックス中又は活性成分を含むマトリックス層中の活性成分塩含量が、マトリックスの乾燥質量又は活性成分を含むマトリックス層の乾燥質量に基づいて0.1〜40質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
活性成分塩が、活性成分の薬学的に許容しうる塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、酒石酸塩及びシュウ酸塩から選ばれる群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
マトリックス中又は活性成分を含むマトリックス層中の酸化物含量が、マトリックスの乾燥質量又は活性成分を含むマトリックス層の乾燥質量に基づいて0.1〜40質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
酸化物が、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムを含む群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
マトリックス又はマトリックス層の少なくとも1つが、感圧接着性ポリマー又は感圧接着性ポリマーの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
1つ又は複数の感圧接着性ポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、ポリテルペン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ゴム及び合成ゴムからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
1つ又は複数の感圧接着性ポリマーが架橋されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
感圧接着性ポリマーの比率が、マトリックス又は感圧接着性マトリックス層に基づいて5〜90質量%であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
感圧接着層をさらに有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
酸化物含有マトリックス層及び活性成分含有マトリックス層が互いに交互になることを特徴とする、請求項2に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
システムを用いるとき、皮膚に面しているマトリックス層が酸化物を含むことを特徴と
する、請求項2又は12に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
システムを用いるとき、皮膚に面しているマトリックス層が活性成分を含むことを特徴とする、請求項2又は12に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
薬学的に許容しうる塩の少なくとも1つの形態の少なくとも1つの薬学的活性成分、及び薬学的に許容しうる塩基性酸化物を、マトリックス用の同じポリマー含有塊又は別々のポリマー含有塊中に撹拌し、生じる塊を処理してシートを形成し、これを必要に応じて互いに積層し、そして生じるマトリックス又は生じる積層体に裏打ち層及び取り外し可能な保護層を備えることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の経皮治療システムの製造方法。
【請求項16】
少なくとも24時間、好ましくは少なくとも72時間、特に好ましくは少なくとも168時間の期間にわたって活性成分を経皮的に放出するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の経皮治療システムの使用。

【公表番号】特表2012−530686(P2012−530686A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512240(P2012−512240)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003078
【国際公開番号】WO2010/136149
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】