説明

塩基性添加剤による処理でトリ有機ホスファイトを精製する方法

本発明は、酸性加水分解生成物を含有する粗ホスファイト混合物から1種以上のトリ有機ホスファイト成分を分離する方法を提供するものであり、この方法は、前記粗ホスファイト混合物を塩基性添加剤と接触させることで、(RO)(RO)POH、(RO)(HO)PO(H)およびHPO[ここで、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびヒドロキシアリールおよびCからC18シクロアルキルおよびヒドロキシアルキル基から成る群より選択され、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基Rを通して連結していてもよい]から成る群より独立して選択される1種以上の成分と前記塩基性添加剤を含有して成る1番目の相と(RO)(RO)P(OR)および((RO)(RO)PO)A[ここで、R、R、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびCからC18シクロアルキル基から成る群より選択され、かつR、RおよびRは各々場合により他の二者の中の一方または両方に化学結合で直接にか或は中間の二価基R10を通して連結していてもよく、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基R11を通して連結していてもよく、Aは、場合により置換されていてもよいか或は置換されていない脂肪,芳香もしくは複素芳香基であり、nは1より大きい整数であり、そしてR、R10およびR11は、独立して、-O−、−S−および-CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される]から成る群より独立して選択される1種以上のトリ有機ホスファイト成分を含有して成る2番目の相を含有して成る2番目の混合物を生じさせることを含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2006年3月17日付けで出願した仮出願番号60/783,462による優先権の利点を請求するものである。仮出願番号60/783,462は引用することによって全体が本出願に組み入れられる。
【0002】
本発明はトリ有機ホスファイト化合物の製造および使用分野に関する。より具体的には、本発明は、トリ有機ホスファイト生成物流れを塩基性添加剤で処理することでそれに入っている燐の酸をある程度除去することに関する。そのような燐の酸はトリ有機ホスファイト加水分解の触媒として作用し得ることから、そのトリ有機ホスファイト生成物流れにそのような処理を受けさせておくことでそれが水にさらされた時にさらなる加水分解を起こさないようにそれを安定化させることができる。
【背景技術】
【0003】
一般構造(RO)(RO)P(OR)および((RO)(RO)PO)A[ここで、“A”は、場合により置換されていてもよいか或は置換されていない脂肪,芳香または複素芳香基であり、そしてnは1より大きい整数である]で表されるトリ有機ホスファイトは数多くの重要な商業的用途で用いられ、そのような用途には、それらが抗酸化剤、安定剤、抗摩耗添加剤およびいろいろな触媒工程で配位子として用いられることが含まれる。トリ有機ホスファイトの製造は一般にPX(X=Cl、BrまたはI)および相当するアルコール(ROH)を用いて行われる。この反応は段階的にXをORに置き換えることによって行われる。XがClの場合、その工程によってホスホロジクロリダイト(RO)PClおよびホスホロクロリダイト(RO)(RO)PCl中間体,トリ有機ホスファイト(RO)(RO)P(OR)および酸HXが生じ得る。
【0004】
容易に入手可能なPClおよび相当するアルコールを用いて有機ホスファイトを製造する方法がいくつか知られており、例えば非特許文献1に記述されている方法などが知られている。前記酸HXの除去は物理的分離または有機もしくは無機塩基を用いた酸−塩基反応を利用することで実施可能である。加うるに、HClを除去する目的でトリ有機アミンを用いた後にトリ有機ホスファイト混合物から相当する塩酸アンモニウム塩を除去する目的で低温の水洗浄を用いることも特許文献1および2に記述されている。
【0005】
トリ有機ホスファイトは水の存在下、特に酸性化合物の存在下で容易に加水分解を起こして化合物であるジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)および亜燐酸HPOの中の1種以上が生じることが非特許文献2に教示されている。そのような加水分解反応はジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(OH)PO(H)およびHPOが酸性特性を有することが理由で自己触媒反応であることが非特許文献3および4に教示されている。塩基性条件下の加水分解の方が酸存在下の加水分解よりも遅いことが確認された(非特許文献5)。そのような酸性加水分解生成物を除去しておかないと、加水分解が起こる結果として、トリ有機ホスファイト生成物が下流の処理および貯蔵中に有意な劣化を起こして失われる可能性がある。そのような影響を少なくともある程度取り扱う目的で、窒素含有化合物である添加剤、例えばアミンおよび酸化マグネシウムなどが加水分解を遅らせることでトリ有機ホスファイトをある程度安定化させ得ることが特許文献3に教示されている。しかしながら、そのような添加剤は望ましくない影響を引き起こす可能性があるか或はトリ有機ホスファイトの使用に適合しない、例えばヒドロシアン化およびヒドロホルミル化などの如き反応用の遷移金属−トリ有機ホスファイト触媒もしくは触媒前駆体を調製する時の使用などに適合しない可能性がある。従って、好ましくない副作用をもたらす可能性のある添加剤を用いることなくトリ有機ホスファイトを安定化させる方法が得られたならば、これは価値有ることである。
【0006】
トリ有機ホスファイト反応混合物に有機溶媒中で0.1NのHCl水溶液、0.1NのNaOH水溶液に続いて蒸留水を用いた逐次的処理を受けさせることが特許文献4の実施例1に開示されている。
【0007】
粗配位子混合物、例えば特許文献4の方法などで生じさせた混合物を二価のニッケル化合物および還元剤と一緒にすることでニッケルと二座燐化合物の錯体である触媒を生じさせる方法が特許文献5に開示されている。この特許文献5には、そのような粗配位子混合物はニッケル含有触媒の生成速度に影響を与える得る副生成物を含有している可能性があることが開示されている。粗配位子混合物を例えば弱塩基性有機樹脂および液−液抽出用の2相溶媒系などの中の1種以上と接触させることを包含する処理方法が前記特許文献5に開示されている。この特許文献5には、粗配位子にいろいろな処理を受けさせることでその粗配位子に存在する副生成物である不純物が示す有害な速度抑制効果を克服することができることが開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,069,267号
【特許文献2】米国特許第6,031,120号
【特許文献3】米国特許第3,553,298号
【特許文献4】米国特許第6,069,267号
【特許文献5】米国特許第6,844,289号
【非特許文献1】Houben−Weyl、Bd.XXII/2、12−17頁、G.Thieme Verlag、Stuttgart 1964および付録E1、413−421頁、Stuttgart、New York 1982
【非特許文献2】Houben−Weyl、Bd.XXII/2、I章および30−32頁、G.Thieme Verlag、Stuttgart 1964
【非特許文献3】Gerard、Hudson、Organic Phosphorous Coumpounds,5巻、41−42頁、G.M.Kosolapoff & L.Maier編集、Wiley & Sons.、New York、1973
【非特許文献4】Healy他、J.Inorg.Nucl.Chem.、1974、36、2579
【非特許文献5】Westheimer他、J.Amer.Chem.Soc.1988、110、183
【0008】
発明の要約
この上に記述したように、トリ有機ホスファイトは塩基性ばかりでなく酸性条件下でも加水分解を起こす可能性があり、塩基触媒作用による加水分解の方が酸触媒作用による加水分解より遅い。これに関して、トリ有機ホスファイトが全体として起こす劣化の度合が低下し得るようにそれに強塩基を用いた処理を受けさせることで加水分解生成物を除去することができることを見いだした。
【0009】
本発明は、酸性加水分解生成物を含有する粗ホスファイト混合物を塩基性添加剤と接触させて1番目の相と2番目の相を含有して成る2番目の混合物を生じさせることを通して前記粗ホスファイト混合物から1種以上のトリ有機ホスファイト成分を分離する方法を包含する。前記1番目の相は、(RO)(RO)POH、(RO)(HO)PO(H)およびHPO[ここで、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびヒドロキシアリールおよびCからC18シクロアルキルおよびヒドロキシアルキル基から成る群より選択され、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基Rを通して連結していてもよい]から成る群より独立して選択される1種以上の成分と前記塩基性添加剤を含有して成る。Rは-O−、−S−および-CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される。
【0010】
前記2番目の相は、(RO)(RO)P(OR)および((RO)(RO)PO)A[ここで、R、R、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびCからC18シクロアルキル基から成る群より選択され、かつR、RおよびRは各々場合により他の二者の中の一方または両方に化学結合で直接にか或は中間の二価基R10を通して連結していてもよく、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基R11を通して連結していてもよい]から成る群より独立して選択される1種以上のトリ有機ホスファイト成分を含有して成る。前記中間の二価基R10およびR11は、独立して、-O−、−S−および-CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される。置換基“A”は、場合により置換されていてもよいか或は置換されていない脂肪,芳香もしくは複素芳香基であり、そしてnは1より大きい整数である。Aの例には、CからC18脂肪、CからC28芳香またはCからC28複素芳香基が含まれる。
【0011】
前記塩基性添加剤はNaOH、KOH、NaCO、KCO、Ca(OH)、NHOH、CaCO、強塩基性アニオン交換樹脂およびこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含有して成っていてもよい。1つの態様における前記塩基性添加剤は、強塩基性アニオン交換樹脂、例えば重合体と結合している水酸化テトラ有機−アンモニウム基を含有する強塩基性アニオン交換樹脂などを含有して成る。
【0012】
本発明の1つの態様では、前記塩基性添加剤と前記粗ホスファイト混合物を約−25℃以上の温度、例えば約−10℃から約30℃の温度で接触させる。
【0013】
本発明の更に別の態様では、前記1番目の相のpHを接触工程全体に渡って約13.5以上に維持する。
【0014】
本発明は、また、酸性加水分解生成物を含有する粗ホスファイト混合物からトリ有機ホスファイト成分を分離する方法に更に前記粗ホスファイト混合物を前記塩基性添加剤と接触させる前に前記粗ホスファイト混合物を水と接触させておく段階も含めた方法にも関する。
【0015】
本発明は、また、酸性加水分解生成物を含有する粗ホスファイト混合物からトリ有機ホスファイト成分を分離する方法に更に前記1番目の相を前記2番目の相から分離しそして前記2番目の相を前記塩基性添加剤と接触させる段階も含めた方法にも関する。別の態様において、本発明は、前記2番目の相を前記塩基性添加剤と接触させた後に食塩水溶液と接触させることを包含する。
【0016】
本発明の別の態様は、更に、前記2番目の相を遷移金属または遷移金属化合物と接触させることで遷移金属−トリ有機ホスファイト触媒もしくは触媒前駆体を生じさせることも含んで成る。使用可能な遷移金属もしくは遷移金属化合物の例には、Ni(COD)(CODは1,5−シクロオクタジエンである),Ni[P(O−o−CCHおよびNi[P(O−o−CCH(C)が含まれ、これらは全部本技術分野で公知である。その結果として得た遷移金属−トリ有機ホスファイト触媒もしくは触媒前駆体は例えばヒドロシアン化またはヒドロホルミル化などの如き反応で用いるに有用であり得る。
【0017】
本発明は、また、トリ有機ホスファイトの製造方法にも関し、この方法は、アルコールとPClをトリ有機アミンの存在下で接触させることで1種以上の有機ホスファイトおよび塩酸トリ有機アミンを含有して成る1番目の反応生成物を生じさせ、前記塩酸トリ有機アミンを前記1番目の反応生成物から除去することで、場合により1種以上のトリ有機ホスファイト、ジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPO[ここで、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびヒドロキシアリールおよびCからC18シクロアルキルおよびヒドロキシアルキル基から成る群より選択され、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基Rを通して連結していてもよく、かつRは−O−、−S−および−CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される]を含有していてもよい2番目の反応生成物を生じさせ、そして前記2番目の反応生成物を塩基性添加剤と接触させることで化合物であるジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPOの中の1種以上の少なくとも一部を除去することを含んで成る。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、トリ有機ホスファイトを含有する相から酸性不純物を除去することでトリ有機ホスファイトに精製および安定化を受けさせる方法を包含する。例えば、酸性不純物、例えばジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPOなどが粗トリ有機ホスファイト、例えば(RO)(RO)P(OR)および((RO)(RO)PO)Aなどを水で処理する結果としておよびトリ有機ホスファイト製造用成分として用いた変化しなかったホスホロジクロリダイト(RO)PClおよびホスホロクロリダイト(RO)(RO)PCl中間体から生じ得る。その上、トリ有機ホスファイト材料を貯蔵している間にそれが水分にさらされた時に自己触媒加水分解を起こすことで少量の上述した酸性不純物の濃度が高くなる可能性もあり、それによって、トリ有機ホスファイトを触媒の如き用途で用いる時に収量の損失および好ましくない影響が生じる可能性がある。塩基性添加剤を用いた抽出で酸性不純物を除去しておくことによってそのような欠点の中の少なくとも1つを克服することができる。
【0019】
本発明の範囲内に入る少なくとも1つの態様では、(RO)(RO)P(OR)および((RO)(RO)PO)Aから成る群より選択される少なくとも1種のトリ有機ホスファイトおよび化合物であるジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPOの中の1種以上を含有して成る粗ホスファイト混合物を塩基性添加剤と接触させることで2番目の混合物を生じさせる。前記2番目の混合物は2相、即ち1番目の相と2番目の相を含有して成る。前記1番目の相は、ジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPOから成る成分の中の1種以上の少なくとも一部と前記塩基性添加剤を含有して成る。前記2番目の相は前記有機ホスファイトの少なくとも一部を含有して成る。前記2番目の混合物の前記1番目の相を場合により前記2番目の相から本分野の技術者に公知の一般的分離方法で分離してもよい。例えば、前記塩基性相が液状、例えばNaOH水溶液などである場合には、通常の混合装置−沈降装置を用いて前記粗ホスファイト混合物とNaOH水溶液を接触させた後にトリ有機ホスファイトを含有して成る前記2番目の相を酸性不純物を含有して成る前記1番目の相から分離してもよい。代わりに塩基性イオン交換樹脂を用いる場合には、デカンターまたはフィルターを用いてもよい。
【0020】
、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびヒドロキシアリールおよびCからC18シクロアルキルおよびヒドロキシアルキル基から成る群より選択され;RおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基Rを通して連結していてもよい。Rは−O−、−S−および−CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールまたはCからC18アルキルから成る群より選択される。
【0021】
、R、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびCからC18シクロアルキル基から成る群より選択される。R、RおよびRは各々場合により他の二者の一方または両方と化学結合で直接にか或は中間の二価基R10を通して連結していてもよい。RおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基R11を通して連結していてもよい。R10およびR11は、独立して、−O−、−S−および−CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される。置換基“A”は、場合により置換されていてもよいか或は置換されていない脂肪、芳香もしくは複素芳香基であり、nは1より大きい整数である。
【0022】
本発明で用いる前記塩基性添加剤は、少なくとも1種の塩基性化合物および/または材料を含有して成る1種以上の組成物を含んで成っていてもよい。そのような塩基性添加剤は、例えばNaOH、KOH、NaCO、KCO、Ca(OH)、NHOH、CaCO、強塩基性アニオン交換樹脂およびこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含んで成っていてもよい。適切な強塩基性イオン交換樹脂の例は、重合体と結合している水酸化テトラ有機−アンモニウム基を含有する樹脂である。
【0023】
加水分解の速度は温度に依存することから、抽出時の温度を理想的にはできるだけ低くすべきであり、これが制限されるのは物理的限界によってのみである。液体−液体抽出の場合に適切な操作温度の範囲に影響を与える物理的限界は、例えば当該液相の凝固点などである。商業的実施下で達成可能な温度範囲は利用可能な装置の制限を受けることから、一般に約−25℃以上の温度が好適である。そのような方法に適した非限定温度範囲の例は約-10℃から約30℃である。
【0024】
理想的には、前記塩基性相のpHを抽出工程全体に渡って約13.5以上に維持すべきである。これは水中1規定の強塩基溶液または相当する強度の強塩基性アニオン交換樹脂を用いることで達成可能である。トリ有機ホスファイト生産中に弱酸を構成する塩、例えば塩酸トリ有機アミンなどが生じる場合には、酸性のジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPO不純物に前記塩基性添加剤を用いた抽出工程が有効に進行するように最初にそのような弱酸を除去しておくべきである。塩酸トリ有機アミン塩の除去は、例えば米国特許第6,069,267号および6,031,120号に記述されているように、前記塩基性添加剤と接触させる前に濾過および/または水抽出を行うことで達成可能である。
【0025】
使用すべき塩基のモル当量の総量は、少なくともある程度ではあるが、前記塩基性添加剤で処理する前に存在する酸性のジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPO不純物のモル当量の総量の関数である。例えば、前記塩基を10から1000倍の過剰量で用いるのが適切であり得るが、但し溶液抽出の場合には塩基性溶液のpHを抽出過程全体に渡って最低約13.5に維持することを条件とし、或は樹脂による処理の場合には相当する塩基性を維持することを条件とする。
【0026】
前記塩基性相の体積は実際上の制限、例えば反応槽の大きさおよび分離能力など、pHの限界および塩基と酸性不純物のモル当量比などによって決まり得る。例えば、NaOH水溶液を用いた抽出の場合には、1番目の塩基性相の体積を例えば生成物である2番目の相の体積の1/10から1/3の範囲などにしてもよい。NaOHまたは重合体と結合している水酸化テトラ有機−アンモニウムの量は、例えばトリ有機ホスファイト溶液相中の燐の総量の約0.05から約1当量の範囲などであってもよい。
【0027】
接触時間は、少なくともある程度ではあるが、規模、混合装置および特定の有機ホスファイトが塩基性抽出条件下で示す加水分解速度の関数であり、例えば約15分から約5時間であってもよい。
【0028】
塩基性添加剤を用いた数多くの工程に関して、塩基を酸に対して10倍の過剰度で用いることでpHを13以上にして約15から約30分間の抽出を1または2回行うことで充分であろう。重合体と結合している水酸化テトラ有機−アンモニウム基を含有する強塩基性アニオン交換樹脂を用いた処理を行う場合には、燐化合物を含有する相を前以て決めておいた量の前記樹脂と混合してもよいか、或は前記相を前記樹脂を入れておいたカラムに通してもよい。前記樹脂の使用量は、少なくともある程度ではあるが、除去すべき酸性不純物の量の関数である。例えば強塩基性アニオン交換樹脂を用いる場合、酸に対する塩基の過剰度が6−10倍であることに相当する量の樹脂を用いた処理を1回行うことで充分であり得る。前記樹脂の再生は本分野の技術者に公知の如きNaOHの塩基性水溶液を用いて実施可能である。
【0029】
そのような抽出工程は典型的に圧力に比較的敏感ではなく、これに関して制限を受けるのは一般に実際上の考慮によってのみである。実際上の理由で、好適な反応圧力の範囲は例えば約10psia(69kPa)から約50psia(345kPa)などであり得る。
【0030】
液体−液体抽出の場合には、分離工程を補助する目的で、前記塩基性溶液に可溶塩、例えばNaClなどを入れてもよい。
【0031】
トリ有機ホスファイトのさらなる加水分解を回避する目的で、前記塩基性添加剤との接触を理想的には粗ホスファイト混合物製造後直ちに行うべきであり、好適にはその粗ホスファイト生成物混合物のさらなる濃縮を行いそしてまたはそれを熱にさらす前に行うべきである。
【0032】
除去すべき酸性化合物には、これらに限定するものでないが、ジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)、HPO、芳香族アルコールおよび塩酸アンモニウムおよび臭化水素酸アンモニウムが含まれ得る。
[実施例]
【0033】
以下の非限定実施例で本発明の態様を更に例示する。
【0034】
本発明の実施例の調製を下記の化学構造を有する1種以上の成分を含有する粗ホスファイト混合物を用いて実施した:ジ有機水素ホスファイト、有機ジ水素ホスファイト、単座トリ有機ホスファイトおよび、ホスホロクロリダイト、ホスホロジクロリダイト、ビフェノールおよび二座トリ有機ホスファイト
【0035】
【化1】

【0036】
以下の実施例では、単座および二座トリ有機ホスファイトおよびが入っている溶液に強塩基水溶液を用いた抽出を受けさせることで、酸性のジ有機水素ホスファイト、有機ジ水素ホスファイトおよびHPO(これらはトリ有機ホスファイトの加水分解主生成物に相当する)、ホスホロクロリダイトおよびホスホロジクロリダイトを有意に減少させることができるか或は定量的に除去することができることを示す。結果を表1に要約しそして図1にグラフで報告する。定量NMR分析では、0.250mLの有機相とC中0.01モル濃度のトリフェニルホスフィンオキサイド(TPPO)(0.600mL)を一緒にした後、31P NMR(T1=5秒)で分析した。特に明記しない限り、用語「食塩水」は飽和NaCl水溶液(NaClが約26重量%)を指す。
【0037】
実施例A
ホスホロクロリダイト1含有粗反応混合物の合成:
塔頂撹拌機を取り付けておいた温度制御付きの2000mLの邪魔板付きフラスコにトルエン中1.0モル濃度のPClを400mLおよびトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミンを4.0mL仕込んだ。激しい撹拌下でトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミン溶液(411mL)およびトルエン中2.0モル濃度の2,4−キシレノール溶液(411mL)を個別に蠕動ポンプで2.3mL/分の量で同時に添加した。この添加期間中の反応温度を5℃に維持した。31P NMR分析は、相当するホスホロクロリダイト31P NMRの化学シフト162ppm)に90%の選択率で変化したことを示していた。他の燐含有成分はトリ有機ホスファイト(9%)およびホスホロジクロリダイト(1%)であり、これが水抽出(対照実施例)ばかりでなく実施例A1およびA2で用いる粗ホスホロクロリダイト溶液に相当する。
【0038】
水抽出(対照実験):
窒素下で25mLの前記粗ホスホロクロリダイト溶液(トルエン中0.56モル濃度)を14ミリモルのトリエチルアミン(EtN)および10mLの水(HO)と一緒にした。その混合物を5分間激しく撹拌した後、2相に分離させた。その有機相を31P NMR分析した結果、ホスホロクロリダイト(162ppm)が完全に加水分解を起こして相当するジ有機水素ホスファイトと有機ジ水素ホスファイトと痕跡量のHPOの混合物(31P NMRの化学シフト−2から+2ppm)が生じたことが分かった。次に、その有機相を逐次的に10mLずつの13重量%食塩水と2回そして10mLの26重量%食塩水と1回接触(各々5分間激しく混合)させた後、2相に分離させた。その有機相の定量31P NMR分析を食塩水を用いた各処理後に実施したが、どの時点においても、その有機相中の加水分解生成物が有意に減少することは観察されなかった。
【0039】
実施例A1(KOH水溶液による処理):
窒素下でトルエン中0.56モル濃度のホスホロクロリダイト溶液(25mL)を14ミリモルのEtNおよび10mLのHOと一緒にした。その混合物を5分間激しく撹拌した後、2相に分離させた。その有機相を31P NMR分析した結果、ホスホロクロリダイト31P NMRの化学シフト162ppm)が完全に加水分解を起こして相当するジ有機水素ホスファイトと有機ジ水素ホスファイトと痕跡量のHPOの混合物(31P NMRの化学シフト−2から+2ppm)が生じたことが分かった。次に、その有機相を逐次的に10mLずつの1モル濃度のKOH水溶液と2回そして10mLの26重量%食塩水と1回接触(各々5分間激しく混合)させた後、2相に分離させた。その有機相の定量31P NMR分析をKOH水溶液を用いた各処理後に実施した結果、KOH水溶液による処理で加水分解生成物が有意に減少したことが分かった。
【0040】
実施例A2(NaOH水溶液による処理):
窒素下でトルエン中0.56モル濃度のホスホロクロリダイト溶液(25mL)を14ミリモルのEtNおよび10mLのHOと一緒にした。その混合物を5分間激しく撹拌した後、2相に分離させた。その有機相を31P NMR分析した結果、ホスホロクロリダイトが完全に加水分解を起こして相当するジ有機水素ホスファイトと有機ジ水素ホスファイトと痕跡量のHPOの混合物(31P NMRの化学シフト−2から+2ppm)が生じたことが分かった。次に、その有機相を逐次的に10mLずつの1モル濃度のNaOH水溶液と2回そして10mLの26重量%食塩水と1回接触(各々5分間激しく混合)させた後、2相に分離させた。その有機相の定量31P NMR分析を各処理後に実施した結果、NaOH水溶液による処理で加水分解生成物が定量的に除去されたことが分かった。
【0041】
【表1】

【0042】
図1に、表1の結果をグラフ形態で示す。
【0043】
以下の実施例および表2に、強塩基性アニオン交換樹脂による処理が粗二座トリ有機ホスファイトが水に長期間、例えば特定の貯蔵条件下で水にさらされた時の純度および安定性にとって有益であることを示す。
【0044】
AmberlystTM A26−OH(Rohm and Haas Company)は、水酸化第四級アンモニウム基を含有する架橋したスチレンジビニルベンゼン共重合体が基になった強塩基性のタイプ1のアニオン性巨網状重合体樹脂(d=675g/L、活性部位の濃度=0.80当量/L)である。
【0045】
実施例B
粗二座トリ有機ホスファイト反応混合物の合成:
塔頂撹拌機を取り付けておいた温度制御付きの500mLの邪魔板付きフラスコにトルエン中1.0モル濃度のPClを200mL仕込んだ。激しい撹拌下でトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミン溶液(203.6mL)およびトルエン中2.0モル濃度の2,4−キシレノール溶液(203.6mL)を個別に蠕動ポンプで2.9mL/分の量で同時に添加した。この添加期間中の反応温度を5℃に維持した。31P NMR分析は、相当するホスホロクロリダイト31P NMRの化学シフト162ppm)に90%の選択率で変化したことを示していた。激しい撹拌下20℃で252.8ミリモルのEtNに続いて1.0モル濃度のビフェノール溶液(84.6mL)を蠕動ポンプを用いて2mL/分の量で加えた。その反応混合物を150mLのHOと激しく接触させた。その有機相を定量31P NMR分析した結果、燐の分布は81モル%が二座トリ有機ホスファイトで4モル%が単座トリ有機ホスファイトで12モル%が単座トリ有機ホスファイトでありそして加水分解生成物およびHPOは総燐含有量の3モル%に相当することが分かった。この溶液が食塩水による処理(対照実験)および実施例B1で用いる粗二座トリ有機ホスファイト反応混合物に相当する。
【0046】
食塩水による処理(対照実験):
約200mLの前記粗二座トリ有機ホスファイト反応混合物(燐が67ミリモルであることに相当する)を50mLの26重量%食塩水と接触させた。溶媒の約20%を真空下40℃で30分かけて除去した。残存する溶媒を真空下55℃で1時間かけて除去した。その有機相の定量31P NMR分析を食塩水と接触させた後およびサンプルを濃縮した後に実施したが、どの時点においても、その有機相中の加水分解生成物が有意に減少することは観察されなかった。
【0047】
その粗混合物をトルエンで希釈して約80mLにすることで33重量%の混合物を生じさせた。40mLの前記混合物(燐が約34ミリモルであることに相当する)に0.4mLの水を加えた後、その混合物を6日間激しく撹拌しながら燐化合物の含有量を31P NMRで監視した。有機層の定量31P NMR分析を2時間後、1日後、2日後、3日後および6日後に実施した。結果を表2に要約し、そしてその結果はあらゆるトリ有機ホスファイトが比較的速い速度で加水分解を起こしたことを示している。
【0048】
実施例B1(樹脂による処理):
約200mLの前記粗二座トリ有機ホスファイト反応混合物(燐が67ミリモルであることに相当する)を11.5g(ヒドロキシアニオンが13.6ミリモルであることに相当)のAmberlystTM A26−OH樹脂と一緒にして2日間撹拌した。前記樹脂を除去した後、溶媒の約20%を真空下40℃で30分かけて蒸発させた。残存する溶媒を真空下55℃で1時間かけて除去した。有機層の定量31P NMR分析を2時間の樹脂による処理後および2日間の樹脂による処理後に実施した。その結果を表2に要約し、この結果は、2時間の処理後にあらゆる加水分解生成物が定量的に除去されかつ樹脂を用いた処理を2日間に渡って長期間実施した後でもトリ有機ホスファイトの加水分解は観察されなかったことを示している。
【0049】
その粗混合物をトルエンで希釈して約80mLにすることで33重量%の混合物を生じさせた。40mLの前記混合物(燐が約34ミリモルであることに相当する)に0.4mLの水を加えた後、その混合物を13日間激しく撹拌した。有機層の定量31P NMR分析を2時間後、1日後、2日後、3日後、6日後および13日後に実施した。AmberlystTM A26−OH樹脂による処理を行わなかった対照実験とは対照的に、どの時点においても、加水分解生成物の有意な増加は全く観察されなかった。
【0050】
【表2】

【0051】
追加的実施例
以下の実施例では、粗二座トリ有機ホスファイトを処理する時にNaOH水溶液を用いた処理を行うと酸性加水分解生成物であるジ有機水素ホスファイト、有機ジ水素ホスファイトおよびHPOのそれぞれが全燐の3モル%および全燐の6モル%の量で除去されることを示す。
【実施例1】
【0052】
粗二座トリ有機ホスファイト反応混合物の合成:
塔頂撹拌機を取り付けておいた温度制御付きの2000mLの邪魔板付きフラスコにトルエン中1.0モル濃度のPClを400mLおよびトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミンを4.0mL仕込んだ。激しい撹拌下でトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミン溶液(411mL)およびトルエン中2.0モル濃度の2,4−キシレノール溶液(411mL)を個別に蠕動ポンプで2.3mL/分の量で同時に添加した。この添加期間中の反応温度を5℃に維持した。31P NMR分析は、相当するホスホロクロリダイト31P NMRの化学シフト162ppm)に90%の選択率で変化したことを示していた。激しい撹拌下20℃で600ミリモルのEtNに続いて1.0モル濃度のビフェノール溶液(87.9mL)を蠕動ポンプを用いて1.2mL/分の速度で加えた。
【0053】
処理:
前記反応が終了した後の反応混合物を激しい撹拌下で300mLの13重量%食塩水と接触させることで塩酸トリエチルアミン塩を除去した。有機相の定量31P NMR(表3)は、加水分解生成物(31P NMRの化学シフト−2から+2ppm)の量が総燐含有量の3モル%に相当することを示していた。その有機相を分離した後、NaOHを8ミリモル入れておいた20重量%の食塩水(pH12)(300mL)に続いて300mLの26重量%食塩水と接触させた。有機相を定量31P NMR分析した結果、加水分解生成物(31P NMRの化学シフト−2から+2ppm)の量が燐総量の3モル%に相当することが分かり、このことは、使用した塩基の量は酸性不純物を除去するに充分ではないことを示している。その後、前記有機相を逐次的に300mLの1モル濃度NaOH(pH14)そして300mLの26重量%食塩水と接触させた。有機相を定量31P NMR分析した結果、加水分解生成物が定量的に除去されたことが分かった。有機相中の燐のモル濃度分布は82%が二座トリ有機ホスファイトで18%が単座トリ有機ホスファイトおよび(それぞれの31P NMR化学シフトは133、132および136ppmである)であった。
【0054】
【表3】

【実施例2】
【0055】
粗二座トリ有機ホスファイト反応混合物の合成:
塔頂撹拌機を取り付けておいた温度制御付きの500mLの邪魔板付きフラスコにトルエン中1.0モル濃度のPClを100mLおよびトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミンを1.0mL仕込んだ。激しい撹拌下でトルエン中2.0モル濃度のトリエチルアミン溶液(100mL)およびトルエン中2.0モル濃度の2,4−キシレノール溶液(100mL)を個別に蠕動ポンプで2.9mL/分の量で同時に添加した。この添加期間中の反応温度を45℃に維持した。31P NMR分析は、相当するホスホロクロリダイト31P NMRの化学シフト162ppm)に89%の選択率で変化したことを示していた。激しい撹拌下20℃で130ミリモルのEtNに続いて1.0モル濃度のビフェノール溶液(37.5mL)を蠕動ポンプを用いて2mL/分の量で加えた。
処理:
前記反応混合物を75mLのHOと激しく接触させた。有機相の定量31P NMR分析は、加水分解生成物の量が総燐含有量の6モル%に相当することを示していた(表4)。水相を分離した後、有機相を逐次的に75mLずつの1モル濃度NaOH水溶液と2回に続いて75mLの26重量%食塩水と接触させた。有機相の定量31P NMR分析は、加水分解生成物が定量的に除去されたことを示していた。有機相中の燐のモル濃度分布は76%が二座トリ有機ホスファイトで23%が単座トリ有機ホスファイトおよび(それぞれの31P NMR化学シフトは133、132および136ppmである)であった。
【0056】
【表4】

【0057】
本発明が関係する分野の技術者は、この上で行った説明および関連図に示した教示の利点を有する本明細書に示した本発明の数多くの修飾形および他の態様を思い浮かべるであろう。従って、本発明をその開示した具体的な態様に限定するものでなくかつそのような修飾形および他の態様を添付請求項の範囲内に包含させることを意図すると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、対照(食塩水)と接触させた後の有機相に残存する加水分解生成物の分率を塩基性添加剤と接触させた場合のそれと比較して示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性加水分解生成物を含有する粗ホスファイト混合物から1種以上のトリ有機ホスファイト成分を分離する方法であって、
前記粗ホスファイト混合物を塩基性添加剤と接触させることで、
(RO)(RO)POH、(RO)(HO)PO(H)およびHPO[ここで、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびヒドロキシアリールおよびCからC18シクロアルキルおよびヒドロキシアルキル基から成る群より選択され、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基Rを通して連結していてもよい]から成る群より独立して選択される1種以上の成分と前記塩基性添加剤を含有して成る1番目の相と、
(RO)(RO)P(OR)および((RO)(RO)PO)A[ここで、R、R、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびCからC18シクロアルキル基から成る群より選択され、かつR、RおよびRは各々場合により他の二者の中の一方または両方に化学結合で直接にか或は中間の二価基R10を通して連結していてもよく、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基R11を通して連結していてもよく、Aは、場合により置換されていてもよいか或は置換されていない脂肪,芳香もしくは複素芳香基であり、nは1より大きい整数であり、そしてR、R10およびR11は、独立して、-O−、−S−および-CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される]から成る群より独立して選択される1種以上のトリ有機ホスファイト成分を含有して成る2番目の相、
を含有して成る2番目の混合物を生じさせることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記塩基性添加剤がNaOH、KOH、NaCO、KCO、Ca(OH)、NHOH、CaCO、強塩基性アニオン交換樹脂およびこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性添加剤が強塩基性アニオン交換樹脂を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記強塩基性アニオン交換樹脂が重合体と結合している水酸化テトラ有機−アンモニウム基を含有して成る請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記塩基性添加剤と前記粗ホスファイト混合物を約−10℃から約30℃の温度で接触させる請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1番目の相のpHを約13.5以上に維持する請求項1記載の方法。
【請求項7】
更に前記粗ホスファイト混合物を前記塩基性添加剤と接触させる前に前記粗ホスファイト混合物を水と接触させておく段階も含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項8】
更に
b)前記1番目の相を前記2番目の相から分離し;そして
c)前記2番目の相を前記塩基性添加剤と接触させる、
段階も含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項9】
更に
d)前記2番目の相を食塩水溶液と接触させる、
段階も含んで成る請求項8記載の方法。
【請求項10】
更に前記2番目の相を遷移金属または遷移金属化合物と接触させることで遷移金属−トリ有機ホスファイト触媒もしくは触媒前駆体を生じさせることも含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項11】
トリ有機ホスファイトの製造方法であって、
a)アルコールとPClをトリ有機アミンの存在下で接触させることで1種以上の有機ホスファイトおよび塩酸トリ有機アミンを含有して成る1番目の反応生成物を生じさせ;
b)前記塩酸トリ有機アミンを前記1番目の反応生成物から除去することで、場合により1種以上のトリ有機ホスファイト、ジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPO[ここで、R、RおよびRは、独立して、CからC18アルキル、CからC18アリールおよびヒドロキシアリールおよびCからC18シクロアルキルおよびヒドロキシアルキル基から成る群より選択され、かつRおよびRは場合により互いに化学結合で直接にか或は中間の二価基Rを通して連結していてもよく、かつRは−O−、−S−および−CH(R12)−から成る群より選択され、かつR12はH、CからC18アリールおよびCからC18アルキルから成る群より選択される]を含有していてもよい2番目の反応生成物を生じさせ;そして
c)前記2番目の反応生成物を塩基性添加剤と接触させることで前記化合物であるジ有機水素ホスファイト(RO)(RO)POH、有機ジ水素ホスファイト(RO)(HO)PO(H)およびHPOの中の1種以上の少なくとも一部を除去する、
ことを含んで成る方法。
【請求項12】
前記塩基性添加剤がNaOH、KOH、NaCO、KCO、Ca(OH)、NHOH、CaCO、塩基性イオン交換樹脂およびこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含んで成る請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階c)を繰り返す請求項11記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−530278(P2009−530278A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500416(P2009−500416)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/006242
【国際公開番号】WO2007/109005
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(599088656)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (11)
【Fターム(参考)】