塩素含有ダストの処理方法
【課題】最適な温度での焼成が可能であり、塩素、鉛及び銅の含有率が小さくセメント原料として好適な焼成物が得られる塩素含有ダストの処理方法を提供する。
【解決手段】(A)一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、RはNa2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、ClはClの化学当量を表す。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、(B)処理対象となる塩素含有ダストについて、CaO/SiO2の質量比、R/Cl及び塩素含有率を得る工程と、(C)これら3つの値を考慮して、この塩素含有ダストに成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程と、(D)この焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程を含む。
【解決手段】(A)一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、RはNa2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、ClはClの化学当量を表す。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、(B)処理対象となる塩素含有ダストについて、CaO/SiO2の質量比、R/Cl及び塩素含有率を得る工程と、(C)これら3つの値を考慮して、この塩素含有ダストに成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程と、(D)この焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ゴミ焼却灰等の塩素含有ダストを処理して、セメント原料等に用いうる塩素、鉛及び銅の含有率の小さな焼成物を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ゴミ焼却灰等の塩素含有ダストを処理して、セメント等の原料として用いうる焼成物を得る技術が、種々提案されている。
例えば、無機物質を主成分とし塩素を含有する原料(例えば、都市ゴミ焼却灰)に、アルカリ金属化合物(例えば、ソーダ灰)を添加し、焼成することを特徴とする塩素含有量が低減した焼成物の製造法が、提案されている(特許文献1)。
この文献には、原料中の塩素含有量が0.1〜12重量%であり、焼成物中の塩素含有量が0.1重量%未満(1,000ppm未満)であることが記載されている。
また、この文献には、アルカリ金属化合物の添加後の原料中のアルカリ金属のモル数Rと塩素のモル数Cとの比R/Cが0.95〜2.0となるように、アルカリ金属化合物の添加量を定めることが記載されている。
さらに、この文献には、焼成温度が1,100℃以上、特に1,250℃以上であることが好ましいと記載されている。
【0003】
また、鉛化合物を含有する被処理物(例えば、ゴミ焼却灰)を、塩素(例えば、ゴミ焼却灰中の塩素、及び添加される塩化カルシウム等の塩化物中の塩素)の存在下で、塩化鉛の沸点以上に焼成し、鉛化合物を塩化鉛に転じて揮発分離する方法において、鉛化合物含有量とアルカリ金属化合物含有量の合計量に見合う量の塩素存在下で焼成することを特徴とする鉛の分離方法が、提案されている(特許文献2)。
この文献には、塩素当量比(塩素の化学当量からアルカリ金属の化学当量を差し引いた量の鉛の化学当量に対する比)が−10〜−5の範囲において、1,400〜1,500℃の温度で焼成し、塩素当量比−5以上の範囲内において950℃以上の温度で焼成することにより、鉛残留率を20重量%以下に低減することが記載されている。
【特許文献1】特開平10−53442号公報
【特許文献2】特開2000−282155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴミ焼却設備等で発生する塩素含有ダストの種類としては、焼却主灰、焼却飛灰、溶融飛灰等がある。これらの塩素含有ダストは、種類によって塩素や鉛、銅等の重金属の含有率が大きく異なる。そのため、上述の文献に記載された好ましい焼成温度等の範囲内であっても、塩素含有ダストの種類によっては、塩素含有ダストが溶融して、ロータリーキルンの内壁面に付着し、運転に支障が生じたり、焼成物中の塩素や鉛、銅等の重金属の含有率にばらつきが生じ、焼成物の品質の均一性が損なわれるなどの問題が起こり得る。
一方、焼成温度は、十分な焼成が行なわれ、かつ焼成物中の塩素や鉛、銅等の重金属の含有率を所定の値以下に抑え得る限りにおいて、熱エネルギーの削減(処理コストの削減)の観点から低いことが好ましい。
そこで、本発明は、焼成が不十分とならずかつ塩素含有ダストの溶融を生じさせない最適な焼成温度で焼成を行なうことができ、しかも、焼成後に、塩素や鉛、銅等の重金属の含有率が小さく、セメント原料等として好適に用いうる焼成物を得ることができる塩素含有ダストの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩素含有ダストにおけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成物中の塩素、鉛及び銅の含有率を所定の値以下にするための焼成温度等の最適の条件が存在することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] (A)塩素含有ダスト(例えば、焼却主灰、焼却飛灰等を含む混合灰)を含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、(B)処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の3つの値を得る工程と、(C)工程(B)の上記3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤(例えば、他の塩素含有ダストや、石炭灰等の塩素を含まないダストや、ソーダ灰等のアルカリ金属源等)を加えて、焼成用原料を調製する工程と、(D)工程(C)で得られた上記焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程と、を含むことを特徴とする塩素含有ダストの処理方法。
【0006】
[2] 工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上である上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
[3] 工程(A)において、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃である上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
[4] 工程(A)において、(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
【0007】
[5] 工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、区分(a)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上であり、区分(b)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃であり、区分(c)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である、上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
[6] 工程(D)で得られる上記焼成物中の塩素含有率が1,000ppm以下である上記[1]〜[5]のいずれかの塩素含有ダストの処理方法。
[7] 工程(D)で得られる上記焼成物中の鉛含有率が100ppm以下である上記[1]〜[6]のいずれかの塩素含有ダストの処理方法。
[8] 工程(D)で得られる上記焼成物中の銅含有率が600ppm以下である上記[1]〜[7]のいずれかの塩素含有ダストの処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塩素含有ダストの処理方法によれば、処理対象となる塩素含有ダストのCaO/SiO2の質量比、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)、及び塩素含有率の3つの値を考慮したうえで、成分調整剤を加えて、これら3つの値を調整しているので、焼成が不十分とならずかつ塩素含有ダストの溶融を生じさせない最適な焼成温度で焼成を行なうことができ、しかも、焼成後に、塩素や重金属(例えば、鉛、銅等)の含有率が小さい焼成物を得ることができる。
焼成物は、例えば、塩素含有率が1,000ppm以下で、かつ鉛含有率が100ppm以下のものであり、セメント原料、コンクリート用混和材、骨材等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の塩素含有ダストの処理方法は、(A)塩素含有ダストを含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)(以下、括弧書きを省略して、単に「R/Cl」と表記する。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、(B)処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl及び塩素含有率の上記3つの値を得る工程と、(C)工程(B)の3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程と、(D)工程(C)で得られた焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程を含むものである。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
[工程(A)]
塩素含有ダストを含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程である。
塩素含有ダストとしては、例えば、焼却主灰、焼却飛灰、溶融飛灰等が挙げられる。塩素含有ダスト(焼却主灰、焼却飛灰)の成分組成の例を表1に示す。
【表1】
【0011】
CaO/SiO2の質量比の大きさに応じてR/Cl等の数値範囲を定める方法として、例えば、CaO/SiO2の質量比の大きさについて複数の数値範囲の区分を設け、これら複数の数値範囲の区分の各々について、R/Cl等の数値範囲を定める方法が挙げられる。
複数の数値範囲の区分の例としては、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、の3つの区分が挙げられる。
この場合、区分(a)〜(c)の各々について、焼成用原料が満たすべきR/Cl及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲の条件は、次のとおりである。
【0012】
(1)区分(a)(CaO/SiO2の質量比が2.2を超える場合)
R/Clは、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、特に好ましくは1.0以上である。R/Clが0.8未満では、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率を1,000ppm以下にすることが困難なことがある。
R/Clの上限値は、焼成物中の鉛含有率を小さく抑える等の観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、特に好ましくは1.8以下である。
塩素含有率は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。塩素含有率が12質量%を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率を1,000ppm以下にすることが困難なことがある。
焼成温度は、好ましくは1,250℃以上、より好ましくは1,300℃以上である。焼成温度が1,250℃未満では、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超える傾向がある。
焼成温度の上限値は、特に限定されないが、塩素バイパスダストの溶融の防止、及び熱エネルギーの節減の観点から、好ましくは1,500℃以下、より好ましくは1,450℃以下、特に好ましくは1,400℃以下である。
【0013】
(2)区分(b)(CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である場合)
R/Clは、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.5以下である。R/Clが1.9を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の鉛含有率が100ppmを大きく超えることがある。R/Clを1.5以下にすれば、工程(D)で規定される焼成温度の範囲内において、焼成物中の鉛含有率を概ね100ppm以下に抑えることができる。また、R/Clを1.2以下にすれば、工程(D)で規定される焼成温度の範囲内において、焼成物中の銅含有率を概ね100ppm以下に抑えることができる。
本発明において、焼成物中の銅含有率を100ppm以下にするためには、焼成用原料が区分(b)に属することが好ましい。
R/Clの下限値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上である。該下限値を0.7以上にすれば、工程(D)における焼成温度が比較的低い場合(例えば、1,200℃程度)であっても、焼成物中の塩素含有率を概ね1,000ppm以下に抑えることができる。該下限値を0.7以上にすれば、工程(D)における焼成温度が比較的低い場合(例えば、1,200℃程度)であっても、焼成物中の塩素含有率を概ね1,000ppm以下に抑えることができる。
塩素含有率は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは6質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。塩素含有率が7質量%を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超えることがある。
焼成温度は、好ましくは1,180〜1,400℃、より好ましくは1,200〜1,400℃、特に好ましくは1,250〜1,350℃である。焼成温度が1,180℃未満では、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超えることがある。焼成温度が1,400℃を超えると、焼成用原料が溶融することがある。
【0014】
(3)区分(c)(CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である場合)
R/Clは、1.9以下、好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.5以下である。R/Clが1.9を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の鉛含有率を100ppm以下にすることが困難なことがあり、また、塩素含有率も上昇する傾向がある。
R/Clの下限値は、特に限定されないが、焼成物中の塩素及び鉛含有率を安定して小さく抑える観点から、好ましくは0.5以上である。
塩素含有率は、5質量%以下である。塩素含有率が5質量%を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを超えることがある。
焼成温度は、好ましくは1,130〜1,250℃、より好ましくは1,150〜1,230℃、特に好ましくは1,150〜1,210℃である。焼成温度が1,130℃未満では、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超えることがある。焼成温度が1,250℃を超えると、焼成用原料が溶融することがある。
【0015】
[工程(B)]
処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl及び塩素含有率の3つの値を得る工程である。
【0016】
[工程(C)]
工程(B)の3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程である。
ここで、成分調整剤としては、CaO/SiO2の質量比を増減するための成分調整剤、R/Clを増減するための成分調整剤、及び、塩素含有率を増減するための成分調整剤の中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
CaO/SiO2の質量比を増大させるための成分調整剤としては、例えば、CaO/SiO2の質量比が大きい塩素含有ダスト(例えば、焼却飛灰、溶融飛灰等)や、石灰石粉末等のCaO源等が挙げられる。
CaO/SiO2の質量比を減少させるための成分調整剤としては、例えば、CaO/SiO2の質量比が小さい塩素含有ダスト(例えば、焼却主灰等)や、石炭灰や、建設混合廃棄物等が挙げられる。
R/Clの値を増大させるための成分調整剤としては、例えば、アルカリ金属源、建設混合廃棄物、焼却主灰等が挙げられる。アルカリ金属源の例としては、ソーダ灰、ガラスカレット、アルカリ長石、アルカリ廃液、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
R/Clの値を減少させるための成分調整剤としては、例えば、アルカリ金属(Na2O及びK2O)の含有率が小さくかつ塩素含有率が大きい他の塩素含有ダストが挙げられる。
塩素含有率を増大させるための成分調整剤としては、例えば、塩素含有率が大きい他の塩素含有ダスト(例えば、焼却飛灰、溶融飛灰等)等が挙げられる。
塩素含有率を減少させるための成分調整剤としては、例えば、塩素含有率が小さい他の塩素含有ダスト(例えば、焼却主灰)や、塩素を含まないダスト(例えば、石炭灰)等が挙げられる。
なお、成分調整剤は、粉末状であることが望ましい。
【0017】
工程(C)の実施形態としては、例えば、以下に成分調整例1、成分調整例2として示すように、CaO/SiO2の質量比についての上述の区分(a)〜(c)を人為的に変えて、焼成物の塩素含有率の低減や、焼成温度の低減等を図る形態が含まれる。
[成分調整例1]
処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比が1.0(区分(c))、R/Clが1.5、塩素含有率が7質量%の結果を得た場合、塩素含有率が5質量%を超えているので、このまま処理したのでは、焼成物の塩素含有率を1,000ppm以下に調整することができない。
この場合、石灰石粉末等の成分調整剤を添加して、CaO/SiO2の質量比を増大させ、1.4を超え、2.2以下である区分(b)、または2.2を超える区分(a)に属するようにすれば、焼成物の塩素含有率を1,000ppm以下に調整することができる。
[成分調整例2]
処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比が2.3(区分(a))、R/Clが1.2、塩素含有率が4質量%の結果を得た場合、CaO/SiO2の質量比が区分(a)に属するため、このまま処理したのでは、焼成物中の塩素及び鉛の含有率を小さくするために、焼成温度を1,250℃以上に設定しなければならない。
この場合、焼却主灰、建設混合廃棄物、石炭灰等の成分調整剤を添加して、CaO/SiO2の質量比を減少させ、1.4を超え、2.2以下である区分(b)、または1.4以下の区分(c)に属するようにすれば、焼成温度を1,200℃程度に下げることができ、熱エネルギーの削減(処理コストの削減)を図ることができる。
【0018】
[工程(D)]
工程(C)で得られた上記焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程である。
焼成用原料を焼成するための手段としては、例えば、ロータリーキルン等が挙げられる。
工程(D)で得られた焼成物は、ボールミル等の粉砕手段によって粉砕して、セメント原料、コンクリート用混和剤等の用途に用いてもよいし、あるいは、分級して、所定の粒度を有する粒体を得て、骨材等の用途に用いてもよい。本発明の方法で得られた焼成物は、塩素及び鉛の含有率が小さいので、高品質の廃棄物再生品として好適に用いることができる。
焼成物の塩素含有率は、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
焼成物の鉛含有率は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは80ppm以下である。
焼成物の銅含有率は、好ましくは600ppm以下、より好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
【実施例】
【0019】
以下、実験例によって本発明を説明する。
[1.焼成用原料]
焼成用原料としては、焼却主灰、焼却飛灰等の塩素含有ダストを複数種混合してなる原料A〜C、及び、焼却主灰、焼却飛灰等の塩素含有ダストの混合物に塩化カルシウムを加えて、塩素含有率を増大させた原料D〜Gを用いた。原料A〜Gの成分組成を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
[2.焼成温度の条件の実験]
原料A〜Cの各々に炭酸ナトリウムを添加して、R/Clが1.02である焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表3に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表3に示す。
また、表3に示す結果のうち、「焼成温度と塩素含有率の関係」、「焼成温度と鉛含有率の関係」及び「焼成温度と銅含有率の関係」を各々、図1、図2、図3として示す。図1及び図2から、R/Clが1.02である場合、塩素含有率を0.1質量%(1,000ppm)以下にするためには、原料Aでは1,290℃以上、原料Bでは1,200℃以上、原料Cでは1,160℃以上にすればよいことがわかる。
【0022】
【表3】
【0023】
[3.塩素含有率の条件の実験]
原料D〜Gの各々に炭酸ナトリウムを添加して、表4に示すR/Clの値を有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表3に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表4に示す。
表4中、区分(a)に属しかつ塩素含有率が6.3質量%(表2)である原料Dの場合には、焼成温度1,350℃で、0.042質量%(420ppm)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
区分(b)に属しかつ塩素含有率が7.9質量%(表2)である原料Eの場合には、R/Cl及び焼成温度を調整することによって、0.1質量%以下(1,000ppm以下)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
区分(b)に属しかつ塩素含有率が5.4質量%(表2)である原料Fの場合には、R/Clが1.05でかつ焼成温度が1,300℃の条件下で、0.024質量%(240ppm)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
区分(a)に属しかつ塩素含有率が12.0質量%(表2)である原料Gの場合には、R/Clが1.02でかつ焼成温度が1,350℃の条件下で、0.061質量%(610ppm)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
【0024】
【表4】
【0025】
[4.R/Clの条件の実験]
(1)原料A(区分(a)に属する焼成用原料)
原料Aに炭酸ナトリウムを添加して、表5に示すR/Clを有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表5に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表5に示す。
また、表5に示す結果を図4〜図6として示す。
【0026】
【表5】
【0027】
(2)原料B(区分(b)に属する焼成用原料)
原料Bに炭酸ナトリウムを添加して、表6に示すR/Clを有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表6に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表6に示す。
【0028】
【表6】
【0029】
(3)原料C(区分(c)に属する焼成用原料)
原料Cに炭酸ナトリウムを添加して、表7に示すR/Clを有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表7に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表7に示す。
また、表6及び表7に示す結果を図7〜図12として示す。
【0030】
【表7】
【0031】
以上の実験結果から、塩素含有ダストを含む焼成用原料をCaO/SiO2の質量比の大きさによって、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分の3つの区分に分けた場合、これら3つの区分の各々に対して、焼成物中の塩素、鉛及び銅の含有率を小さくするためのR/Cl、塩素含有率、及び焼成温度の最適な条件が存在することがわかる。
したがって、処理対象となる塩素含有ダストについて、CaO/SiO2の質量比、R/Cl、塩素含有率の3つの値を測定した後、これら3つの値を考慮して、必要に応じて他の塩素含有ダスト等を加えて、成分を調整すれば、最適な焼成温度下での焼成による熱エネルギーの削減(処理コストの削減)、及び、焼成物中の塩素、鉛及び銅の含有率の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】焼成温度と焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図2】焼成温度と焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図3】焼成温度と焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【図4】区分(a)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図5】区分(a)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図6】区分(a)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【図7】区分(b)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図8】区分(b)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図9】区分(b)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【図10】区分(c)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図11】区分(c)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図12】区分(c)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ゴミ焼却灰等の塩素含有ダストを処理して、セメント原料等に用いうる塩素、鉛及び銅の含有率の小さな焼成物を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ゴミ焼却灰等の塩素含有ダストを処理して、セメント等の原料として用いうる焼成物を得る技術が、種々提案されている。
例えば、無機物質を主成分とし塩素を含有する原料(例えば、都市ゴミ焼却灰)に、アルカリ金属化合物(例えば、ソーダ灰)を添加し、焼成することを特徴とする塩素含有量が低減した焼成物の製造法が、提案されている(特許文献1)。
この文献には、原料中の塩素含有量が0.1〜12重量%であり、焼成物中の塩素含有量が0.1重量%未満(1,000ppm未満)であることが記載されている。
また、この文献には、アルカリ金属化合物の添加後の原料中のアルカリ金属のモル数Rと塩素のモル数Cとの比R/Cが0.95〜2.0となるように、アルカリ金属化合物の添加量を定めることが記載されている。
さらに、この文献には、焼成温度が1,100℃以上、特に1,250℃以上であることが好ましいと記載されている。
【0003】
また、鉛化合物を含有する被処理物(例えば、ゴミ焼却灰)を、塩素(例えば、ゴミ焼却灰中の塩素、及び添加される塩化カルシウム等の塩化物中の塩素)の存在下で、塩化鉛の沸点以上に焼成し、鉛化合物を塩化鉛に転じて揮発分離する方法において、鉛化合物含有量とアルカリ金属化合物含有量の合計量に見合う量の塩素存在下で焼成することを特徴とする鉛の分離方法が、提案されている(特許文献2)。
この文献には、塩素当量比(塩素の化学当量からアルカリ金属の化学当量を差し引いた量の鉛の化学当量に対する比)が−10〜−5の範囲において、1,400〜1,500℃の温度で焼成し、塩素当量比−5以上の範囲内において950℃以上の温度で焼成することにより、鉛残留率を20重量%以下に低減することが記載されている。
【特許文献1】特開平10−53442号公報
【特許文献2】特開2000−282155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴミ焼却設備等で発生する塩素含有ダストの種類としては、焼却主灰、焼却飛灰、溶融飛灰等がある。これらの塩素含有ダストは、種類によって塩素や鉛、銅等の重金属の含有率が大きく異なる。そのため、上述の文献に記載された好ましい焼成温度等の範囲内であっても、塩素含有ダストの種類によっては、塩素含有ダストが溶融して、ロータリーキルンの内壁面に付着し、運転に支障が生じたり、焼成物中の塩素や鉛、銅等の重金属の含有率にばらつきが生じ、焼成物の品質の均一性が損なわれるなどの問題が起こり得る。
一方、焼成温度は、十分な焼成が行なわれ、かつ焼成物中の塩素や鉛、銅等の重金属の含有率を所定の値以下に抑え得る限りにおいて、熱エネルギーの削減(処理コストの削減)の観点から低いことが好ましい。
そこで、本発明は、焼成が不十分とならずかつ塩素含有ダストの溶融を生じさせない最適な焼成温度で焼成を行なうことができ、しかも、焼成後に、塩素や鉛、銅等の重金属の含有率が小さく、セメント原料等として好適に用いうる焼成物を得ることができる塩素含有ダストの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩素含有ダストにおけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成物中の塩素、鉛及び銅の含有率を所定の値以下にするための焼成温度等の最適の条件が存在することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] (A)塩素含有ダスト(例えば、焼却主灰、焼却飛灰等を含む混合灰)を含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、(B)処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の3つの値を得る工程と、(C)工程(B)の上記3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤(例えば、他の塩素含有ダストや、石炭灰等の塩素を含まないダストや、ソーダ灰等のアルカリ金属源等)を加えて、焼成用原料を調製する工程と、(D)工程(C)で得られた上記焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程と、を含むことを特徴とする塩素含有ダストの処理方法。
【0006】
[2] 工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上である上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
[3] 工程(A)において、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃である上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
[4] 工程(A)において、(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
【0007】
[5] 工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、区分(a)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上であり、区分(b)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃であり、区分(c)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である、上記[1]の塩素含有ダストの処理方法。
[6] 工程(D)で得られる上記焼成物中の塩素含有率が1,000ppm以下である上記[1]〜[5]のいずれかの塩素含有ダストの処理方法。
[7] 工程(D)で得られる上記焼成物中の鉛含有率が100ppm以下である上記[1]〜[6]のいずれかの塩素含有ダストの処理方法。
[8] 工程(D)で得られる上記焼成物中の銅含有率が600ppm以下である上記[1]〜[7]のいずれかの塩素含有ダストの処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塩素含有ダストの処理方法によれば、処理対象となる塩素含有ダストのCaO/SiO2の質量比、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)、及び塩素含有率の3つの値を考慮したうえで、成分調整剤を加えて、これら3つの値を調整しているので、焼成が不十分とならずかつ塩素含有ダストの溶融を生じさせない最適な焼成温度で焼成を行なうことができ、しかも、焼成後に、塩素や重金属(例えば、鉛、銅等)の含有率が小さい焼成物を得ることができる。
焼成物は、例えば、塩素含有率が1,000ppm以下で、かつ鉛含有率が100ppm以下のものであり、セメント原料、コンクリート用混和材、骨材等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の塩素含有ダストの処理方法は、(A)塩素含有ダストを含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)(以下、括弧書きを省略して、単に「R/Cl」と表記する。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、(B)処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl及び塩素含有率の上記3つの値を得る工程と、(C)工程(B)の3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程と、(D)工程(C)で得られた焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程を含むものである。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
[工程(A)]
塩素含有ダストを含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程である。
塩素含有ダストとしては、例えば、焼却主灰、焼却飛灰、溶融飛灰等が挙げられる。塩素含有ダスト(焼却主灰、焼却飛灰)の成分組成の例を表1に示す。
【表1】
【0011】
CaO/SiO2の質量比の大きさに応じてR/Cl等の数値範囲を定める方法として、例えば、CaO/SiO2の質量比の大きさについて複数の数値範囲の区分を設け、これら複数の数値範囲の区分の各々について、R/Cl等の数値範囲を定める方法が挙げられる。
複数の数値範囲の区分の例としては、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、の3つの区分が挙げられる。
この場合、区分(a)〜(c)の各々について、焼成用原料が満たすべきR/Cl及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲の条件は、次のとおりである。
【0012】
(1)区分(a)(CaO/SiO2の質量比が2.2を超える場合)
R/Clは、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、特に好ましくは1.0以上である。R/Clが0.8未満では、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率を1,000ppm以下にすることが困難なことがある。
R/Clの上限値は、焼成物中の鉛含有率を小さく抑える等の観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、特に好ましくは1.8以下である。
塩素含有率は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。塩素含有率が12質量%を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率を1,000ppm以下にすることが困難なことがある。
焼成温度は、好ましくは1,250℃以上、より好ましくは1,300℃以上である。焼成温度が1,250℃未満では、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超える傾向がある。
焼成温度の上限値は、特に限定されないが、塩素バイパスダストの溶融の防止、及び熱エネルギーの節減の観点から、好ましくは1,500℃以下、より好ましくは1,450℃以下、特に好ましくは1,400℃以下である。
【0013】
(2)区分(b)(CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である場合)
R/Clは、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.5以下である。R/Clが1.9を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の鉛含有率が100ppmを大きく超えることがある。R/Clを1.5以下にすれば、工程(D)で規定される焼成温度の範囲内において、焼成物中の鉛含有率を概ね100ppm以下に抑えることができる。また、R/Clを1.2以下にすれば、工程(D)で規定される焼成温度の範囲内において、焼成物中の銅含有率を概ね100ppm以下に抑えることができる。
本発明において、焼成物中の銅含有率を100ppm以下にするためには、焼成用原料が区分(b)に属することが好ましい。
R/Clの下限値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上である。該下限値を0.7以上にすれば、工程(D)における焼成温度が比較的低い場合(例えば、1,200℃程度)であっても、焼成物中の塩素含有率を概ね1,000ppm以下に抑えることができる。該下限値を0.7以上にすれば、工程(D)における焼成温度が比較的低い場合(例えば、1,200℃程度)であっても、焼成物中の塩素含有率を概ね1,000ppm以下に抑えることができる。
塩素含有率は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは6質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。塩素含有率が7質量%を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超えることがある。
焼成温度は、好ましくは1,180〜1,400℃、より好ましくは1,200〜1,400℃、特に好ましくは1,250〜1,350℃である。焼成温度が1,180℃未満では、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超えることがある。焼成温度が1,400℃を超えると、焼成用原料が溶融することがある。
【0014】
(3)区分(c)(CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である場合)
R/Clは、1.9以下、好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.5以下である。R/Clが1.9を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の鉛含有率を100ppm以下にすることが困難なことがあり、また、塩素含有率も上昇する傾向がある。
R/Clの下限値は、特に限定されないが、焼成物中の塩素及び鉛含有率を安定して小さく抑える観点から、好ましくは0.5以上である。
塩素含有率は、5質量%以下である。塩素含有率が5質量%を超えると、工程(D)で焼成温度を調整しても、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを超えることがある。
焼成温度は、好ましくは1,130〜1,250℃、より好ましくは1,150〜1,230℃、特に好ましくは1,150〜1,210℃である。焼成温度が1,130℃未満では、焼成物中の塩素含有率が1,000ppmを大きく超えることがある。焼成温度が1,250℃を超えると、焼成用原料が溶融することがある。
【0015】
[工程(B)]
処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl及び塩素含有率の3つの値を得る工程である。
【0016】
[工程(C)]
工程(B)の3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程である。
ここで、成分調整剤としては、CaO/SiO2の質量比を増減するための成分調整剤、R/Clを増減するための成分調整剤、及び、塩素含有率を増減するための成分調整剤の中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
CaO/SiO2の質量比を増大させるための成分調整剤としては、例えば、CaO/SiO2の質量比が大きい塩素含有ダスト(例えば、焼却飛灰、溶融飛灰等)や、石灰石粉末等のCaO源等が挙げられる。
CaO/SiO2の質量比を減少させるための成分調整剤としては、例えば、CaO/SiO2の質量比が小さい塩素含有ダスト(例えば、焼却主灰等)や、石炭灰や、建設混合廃棄物等が挙げられる。
R/Clの値を増大させるための成分調整剤としては、例えば、アルカリ金属源、建設混合廃棄物、焼却主灰等が挙げられる。アルカリ金属源の例としては、ソーダ灰、ガラスカレット、アルカリ長石、アルカリ廃液、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
R/Clの値を減少させるための成分調整剤としては、例えば、アルカリ金属(Na2O及びK2O)の含有率が小さくかつ塩素含有率が大きい他の塩素含有ダストが挙げられる。
塩素含有率を増大させるための成分調整剤としては、例えば、塩素含有率が大きい他の塩素含有ダスト(例えば、焼却飛灰、溶融飛灰等)等が挙げられる。
塩素含有率を減少させるための成分調整剤としては、例えば、塩素含有率が小さい他の塩素含有ダスト(例えば、焼却主灰)や、塩素を含まないダスト(例えば、石炭灰)等が挙げられる。
なお、成分調整剤は、粉末状であることが望ましい。
【0017】
工程(C)の実施形態としては、例えば、以下に成分調整例1、成分調整例2として示すように、CaO/SiO2の質量比についての上述の区分(a)〜(c)を人為的に変えて、焼成物の塩素含有率の低減や、焼成温度の低減等を図る形態が含まれる。
[成分調整例1]
処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比が1.0(区分(c))、R/Clが1.5、塩素含有率が7質量%の結果を得た場合、塩素含有率が5質量%を超えているので、このまま処理したのでは、焼成物の塩素含有率を1,000ppm以下に調整することができない。
この場合、石灰石粉末等の成分調整剤を添加して、CaO/SiO2の質量比を増大させ、1.4を超え、2.2以下である区分(b)、または2.2を超える区分(a)に属するようにすれば、焼成物の塩素含有率を1,000ppm以下に調整することができる。
[成分調整例2]
処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比が2.3(区分(a))、R/Clが1.2、塩素含有率が4質量%の結果を得た場合、CaO/SiO2の質量比が区分(a)に属するため、このまま処理したのでは、焼成物中の塩素及び鉛の含有率を小さくするために、焼成温度を1,250℃以上に設定しなければならない。
この場合、焼却主灰、建設混合廃棄物、石炭灰等の成分調整剤を添加して、CaO/SiO2の質量比を減少させ、1.4を超え、2.2以下である区分(b)、または1.4以下の区分(c)に属するようにすれば、焼成温度を1,200℃程度に下げることができ、熱エネルギーの削減(処理コストの削減)を図ることができる。
【0018】
[工程(D)]
工程(C)で得られた上記焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程である。
焼成用原料を焼成するための手段としては、例えば、ロータリーキルン等が挙げられる。
工程(D)で得られた焼成物は、ボールミル等の粉砕手段によって粉砕して、セメント原料、コンクリート用混和剤等の用途に用いてもよいし、あるいは、分級して、所定の粒度を有する粒体を得て、骨材等の用途に用いてもよい。本発明の方法で得られた焼成物は、塩素及び鉛の含有率が小さいので、高品質の廃棄物再生品として好適に用いることができる。
焼成物の塩素含有率は、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
焼成物の鉛含有率は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは80ppm以下である。
焼成物の銅含有率は、好ましくは600ppm以下、より好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
【実施例】
【0019】
以下、実験例によって本発明を説明する。
[1.焼成用原料]
焼成用原料としては、焼却主灰、焼却飛灰等の塩素含有ダストを複数種混合してなる原料A〜C、及び、焼却主灰、焼却飛灰等の塩素含有ダストの混合物に塩化カルシウムを加えて、塩素含有率を増大させた原料D〜Gを用いた。原料A〜Gの成分組成を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
[2.焼成温度の条件の実験]
原料A〜Cの各々に炭酸ナトリウムを添加して、R/Clが1.02である焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表3に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表3に示す。
また、表3に示す結果のうち、「焼成温度と塩素含有率の関係」、「焼成温度と鉛含有率の関係」及び「焼成温度と銅含有率の関係」を各々、図1、図2、図3として示す。図1及び図2から、R/Clが1.02である場合、塩素含有率を0.1質量%(1,000ppm)以下にするためには、原料Aでは1,290℃以上、原料Bでは1,200℃以上、原料Cでは1,160℃以上にすればよいことがわかる。
【0022】
【表3】
【0023】
[3.塩素含有率の条件の実験]
原料D〜Gの各々に炭酸ナトリウムを添加して、表4に示すR/Clの値を有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表3に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表4に示す。
表4中、区分(a)に属しかつ塩素含有率が6.3質量%(表2)である原料Dの場合には、焼成温度1,350℃で、0.042質量%(420ppm)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
区分(b)に属しかつ塩素含有率が7.9質量%(表2)である原料Eの場合には、R/Cl及び焼成温度を調整することによって、0.1質量%以下(1,000ppm以下)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
区分(b)に属しかつ塩素含有率が5.4質量%(表2)である原料Fの場合には、R/Clが1.05でかつ焼成温度が1,300℃の条件下で、0.024質量%(240ppm)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
区分(a)に属しかつ塩素含有率が12.0質量%(表2)である原料Gの場合には、R/Clが1.02でかつ焼成温度が1,350℃の条件下で、0.061質量%(610ppm)の塩素含有率を有する焼成物が得られている。
【0024】
【表4】
【0025】
[4.R/Clの条件の実験]
(1)原料A(区分(a)に属する焼成用原料)
原料Aに炭酸ナトリウムを添加して、表5に示すR/Clを有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表5に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表5に示す。
また、表5に示す結果を図4〜図6として示す。
【0026】
【表5】
【0027】
(2)原料B(区分(b)に属する焼成用原料)
原料Bに炭酸ナトリウムを添加して、表6に示すR/Clを有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表6に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表6に示す。
【0028】
【表6】
【0029】
(3)原料C(区分(c)に属する焼成用原料)
原料Cに炭酸ナトリウムを添加して、表7に示すR/Clを有する焼成用原料を調製した。調製した焼成用原料をロータリーキルンに投入して、表7に示す焼成温度下で焼成物を得た。焼成温度(℃)及び焼成物の成分組成(質量%)を、表7に示す。
また、表6及び表7に示す結果を図7〜図12として示す。
【0030】
【表7】
【0031】
以上の実験結果から、塩素含有ダストを含む焼成用原料をCaO/SiO2の質量比の大きさによって、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分の3つの区分に分けた場合、これら3つの区分の各々に対して、焼成物中の塩素、鉛及び銅の含有率を小さくするためのR/Cl、塩素含有率、及び焼成温度の最適な条件が存在することがわかる。
したがって、処理対象となる塩素含有ダストについて、CaO/SiO2の質量比、R/Cl、塩素含有率の3つの値を測定した後、これら3つの値を考慮して、必要に応じて他の塩素含有ダスト等を加えて、成分を調整すれば、最適な焼成温度下での焼成による熱エネルギーの削減(処理コストの削減)、及び、焼成物中の塩素、鉛及び銅の含有率の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】焼成温度と焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図2】焼成温度と焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図3】焼成温度と焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【図4】区分(a)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図5】区分(a)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図6】区分(a)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【図7】区分(b)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図8】区分(b)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図9】区分(b)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【図10】区分(c)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の塩素含有率の関係を示すグラフである。
【図11】区分(c)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の鉛含有率の関係を示すグラフである。
【図12】区分(c)に属する焼成用原料について、R/Clと焼成物の銅含有率の関係を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩素含有ダストを含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、
(B)処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の3つの値を得る工程と、
(C)工程(B)の上記3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程と、
(D)工程(C)で得られた上記焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程と、
を含むことを特徴とする塩素含有ダストの処理方法。
【請求項2】
工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上である請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項3】
工程(A)において、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃である請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項4】
工程(A)において、(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項5】
工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、
区分(a)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上であり、
区分(b)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃であり、
区分(c)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である、請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項6】
工程(D)で得られる上記焼成物中の塩素含有率が1,000ppm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項7】
工程(D)で得られる上記焼成物中の鉛含有率が100ppm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項8】
工程(D)で得られる上記焼成物中の銅含有率が600ppm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項1】
(A)塩素含有ダストを含む焼成用原料を焼成して焼成物を得るための一般的な条件として、焼成用原料におけるCaO/SiO2の質量比の大きさに応じて、焼成用原料が満たすべきR/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の数値範囲、及び、焼成温度の範囲を定める工程と、
(B)処理対象となる塩素含有ダストの成分を測定して、CaO/SiO2の質量比、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)及び塩素含有率の3つの値を得る工程と、
(C)工程(B)の上記3つの値を考慮して、工程(B)の塩素含有ダストに対して、必要に応じて成分調整剤を加えて、焼成用原料を調製する工程と、
(D)工程(C)で得られた上記焼成用原料を、工程(A)で定めた焼成温度の範囲内で焼成し、焼成物を得る工程と、
を含むことを特徴とする塩素含有ダストの処理方法。
【請求項2】
工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上である請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項3】
工程(A)において、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃である請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項4】
工程(A)において、(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、該区分において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項5】
工程(A)において、(a)CaO/SiO2の質量比が2.2を超える区分、(b)CaO/SiO2の質量比が1.4を超え、2.2以下である区分、及び(c)CaO/SiO2の質量比が0.9以上、1.4以下である区分、を含み、
区分(a)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が0.8以上、塩素含有率が12質量%以下、及び焼成温度が1,250℃以上であり、
区分(b)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が7質量%以下、及び焼成温度が1,180〜1,400℃であり、
区分(c)において定めた条件は、R/Cl(式中、Rは、Na2Oの化学当量とK2Oの化学当量の和を表し、Clは、Clの化学当量を表す。)が1.9以下、塩素含有率が5質量%以下、及び焼成温度が1,130〜1,250℃である、請求項1に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項6】
工程(D)で得られる上記焼成物中の塩素含有率が1,000ppm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項7】
工程(D)で得られる上記焼成物中の鉛含有率が100ppm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【請求項8】
工程(D)で得られる上記焼成物中の銅含有率が600ppm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の塩素含有ダストの処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−314987(P2006−314987A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7627(P2006−7627)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年11月10日 無機マテリアル学会発行の「無機マテリアル学会 第111回 学術講演会 講演要旨集」に発表
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年11月10日 無機マテリアル学会発行の「無機マテリアル学会 第111回 学術講演会 講演要旨集」に発表
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】
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