説明

塵芥除去用フィルタ

【課題】パンチングやエッチングにより製造された金属メッシュから製造される塵芥除去用フィルタにおいて、塵埃が引っ掛かり難く、またフィルタから塵埃をきれいに取り除くための清掃作業を短時間で容易に実現するフィルタを提供する。
【解決手段】平板状の金属板に規則的に貫設された多数の微細小孔4から構成され、該金属板の表裏両面及び微細小孔4の開口エッジ部3a及びその内周側面5に、アニオンタイプ電着塗装による平滑な滑性薄膜6が形成され、前記微細小孔4の開口エッジ部3aの側断面が角丸形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商工業など各種業界や家庭用の電気掃除機に使用される塵芥除去用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種業界や家庭用の電気掃除機には、その内部の空気吸引モータ部と吸引される空気取り入れ口との間の吸引空気流路に、多孔質シートやメッシュシートなど通気シート状の塵芥除去用フィルタが装填されて使用されている。
【0003】
清掃により使用された掃除機の塵芥除去用フィルタには、清掃により吸引された雑物が塵芥として付着して、フィルタの小孔部やメッシュ部に目詰まりを生じるため、時々、そのフィルタを掃除機から取り外して、フィルタ面をブラシや刷毛などを用いて擦ったり、水洗いをして、付着している塵芥を取り除いた後、再使用している。
【0004】
このような従来の掃除機用の塵芥除去用フィルタとしては、例えば特許文献1に記載されている。従来の掃除機用の塵芥除去浄化用フィルタの構造としては、金属板にパンチングやエッチング法等により多数の微細な小孔をメッシュ状に貫設したものであるため、貫設した微細な小孔の各々開口エッジ部や、小孔の開口エッジ部を多数備えたフィルタ表面には、尖鋭状の微小な突起部が発生している場合がある。
【0005】
掃除機によりエア吸引された塵芥が、このようなフィルタの小孔を通過する際には、小孔の開口エッジ部やフィルタ表面の微小な尖鋭状の突起部に引っ掛かり易く、フィルタ表面や小孔の開口エッジ部に引っ掛かった塵埃を、ブラシや刷毛、水洗いなどの通常のフィルタ清掃操作によって、エア吸引力などの清掃作用に支障なく、きれいに取り除くためには、かなりの時間と労力を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2004−121722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、パンチングやエッチングにより製造された掃除機用の塵芥除去用フィルタにおいて、塵芥が小孔に引っ掛かり難く、また塵芥をきれいに取り除くための清掃作業を短時間で容易に実現するためのフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、平板状の金属板に規則的に貫設された多数の微細小孔から構成され、該金属板の表裏両面及び微細小孔の開口エッジ部及びその内周側面に、電着塗装による平滑な滑性薄膜が形成されていることを特徴とする塵芥除去用フィルタである。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る塵芥除去用フィルタにおいて、前記電着塗装による平滑な滑性薄膜が、アニオンタイプの電着塗装であることを特徴とする塵芥除去用フィルタである。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る塵芥除去用フィルタにおい
て、前記微細小孔の開口エッジ部の側断面が角丸形状であることを特徴とする塵芥除去用フィルタである。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項に係る塵芥除去用フィルタにおいて、前記滑性薄膜の膜厚が5±15μmであることを特徴とする塵芥除去用フィルタである。
【0012】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれか1項に係る塵芥除去用フィルタにおいて、前記金属板の板厚が0.05mm〜0.25mmであることを特徴とする塵芥除去用フィルタである。
【0013】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項1乃至5のいずれか1項に係る塵芥除去用フィルタにおいて、前記滑性薄膜の形成前の微細小孔の直径が、2.5±0.5mmであることを特徴とする塵芥除去用フィルタである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塵芥除去用フィルタは、金属板の表面及び裏面だけでなく、その金属板に規則的に貫設された多数の微細小孔の開口エッジ部、及びその微細小孔の内周側面には、アニオンタイプの電着塗装による平滑な滑性薄膜が施されて形成されていて、フィルタの表裏両面及び貫設された多数の小孔の内周側面部は、電着塗装により平滑な滑性薄膜が塗装され被覆されている。
【0015】
そのためフィルタの表裏両面及び微細小孔の開口エッジ部及びその微細小孔の内周側面は滑性があり、フィルタの表裏両面だけでなく、パンチングやエッチングにより貫設されたフィルタの微細な小孔には、洗浄液や処理液に含まれる塵芥が引っ掛かり難く、フィルタには塵芥が付着し難く、たとえフィルタ面や小孔に塵芥が付着したとしても、フィルタ面や小孔は塵芥に対して滑性があるため滑り易く、塵芥をフィルタからきれいに取り除くことができると共に、清掃作業を短時間で容易に実現できる効果を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の塵芥除去用フィルタの平面図、(b)はその側断面図。
【図2】(a)は小孔を貫設した金属板を説明する側断面図、(b)は本発明の塵芥除去用フィルタであり、金属板の表裏両面と貫設した小孔の開口エッジ部と内周側面部とに滑性薄膜を電着塗装した状態を説明する側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の塵芥除去用フィルタを実施の形態に基づいて以下に詳細に説明すれば、図1(a)は本発明の塵芥除去用フィルタ1の平面図、(b)はその側断面図である。
【0018】
本発明のフィルタ1は、図1(a)、(b)に示すように、ステンレス板あるいはアルミ板のような金属板2の素材部3に、例えば、直径φが2.5±0.5mm程度の規則的に多数の微細な小孔4が貫設されているものである。なお、小孔4の図面水平方向の貫設ピッチpは、例えば3〜5mm程度であり、貫設される小孔4の平面形状は、円形状、丸形状(楕円形状など)、四角形状(長方形、正方形)、角丸四角形状など適宜な形状を採用可能である。
【0019】
図2(a)は、金属板2の素材部3に、パンチングあるいはエッチング法により小孔4を貫設した状態の金属板2によるメッシュ板を説明する拡大側断面図であり、その金属板
2は、その素材部3の平坦な表裏両面と、貫設した各々小孔4の開口エッジ部3a(小孔4の平面形状が角形状の場合はその角(コーナー)部)と、小孔4の内周側面部5とから構成されている。
【0020】
本発明のフィルタ1は、図2(b)に示すように、金属板2の素材部3の平坦な表裏両面と、貫設した各々小孔4の開口エッジ部3a(小孔4の平面形状が角形状の場合はその角(コーナー)部)と、各々小孔4の内周側面部5とから構成される部位に、平滑な滑性薄膜6が電着塗装されているものである。
【0021】
そして、本発明のフィルタ1における各々小孔4の開口エッジ部3aの尖鋭角状に尖った部分(小孔4の平面形状が角形状の場合はその角(コーナー)部)の表面を被覆するように塗装された滑性薄膜6の表面は、図2(b)に示すように尖鋭角状から丸型形状や湾曲形状(適宜曲率)に、その表面の形状や平滑性が電着塗装により修正されている。
【0022】
本発明のフィルタ1に電着塗装により施される滑性薄膜6は、アニオンタイプ(被電着金属材側が+極)又はカチオンタイプ(被電着金属材側が−極)のいずれかの電着塗装による電着薄膜であるが、アニオンタイプの電着塗装による電着薄膜が望ましい。なぜならば、アニオンタイプの電着塗装は、カチオンタイプの電着塗装による電着薄膜の膜厚に比較して、その膜厚の厚みを薄くできるため、金属板2の平面部の表面も、各々小孔4の開口エッジ部3aの尖鋭角状に尖った部分[小孔4の平面形状が角形状の場合はその角(コーナー)部]の表面も、複雑な形状であっても均一に塗膜が形成されるものである。アニオン電着塗装の場合、5〜15μm程度の塗膜の厚みにおいて、±1〜2μmの範囲に、塗膜精度を押さえることが可能である。
【0023】
本発明の塵芥除去用フィルタの製造方法について以下に説明する。
まず、金属板2として、0.1mm〜0.15mm厚のステンレス板をアルカリ脱脂剤を用いて脱脂を行い、水洗、乾燥した後、その金属板2の表裏両面の全面に、フィルム状のフォトレジスト(ドライフィルムレジストAQ1558(旭化成(株)製)を温度80℃でラミネートした。
【0024】
次に、ステンレス板2の表裏両面のフォトレジスト面に、規則的に多数の微細小孔4に相当するパターン画像を備えたフォトマスクを用いて、紫外線露光手段にて同一パターンのパターン露光をした後、炭酸ソーダ(1重量%含む)水溶液を用いて現像、水洗、乾燥処理して、規則的多数の微細小孔4を形成するためのエッチング用のレジストパターンを形成した。
【0025】
なお、ステンレス板2の表裏両面のフォトレジスト面に対してパターン露光する際に、各々フォトマスクのパターン画像の位置を、そのステンレス板2の表裏両面において互いに整合一致させてオーバーラップして露光したことにより、後にエッチングによりステンレス板2に貫設された小孔4の内周面5は、その断面が、図2(a)に示すようにステンレス板2の表裏面に対して垂直方向に直線的になった。
【0026】
また、ステンレス板2の表裏両面のフォトレジスト面に対してパターン露光する際に各々フォトマスクのパターン画像の位置を、そのステンレス板2の表裏両面において互いに部分的にオーバーラップするように、整合一致させずズラした状態で露光したことにより、後にエッチングによりステンレス板2に貫設される小孔4は、その断面がステンレス板2の表裏面に対して垂直方向にクランク形状(屈曲線的)に貫設された。
【0027】
次に、レジストパターンの形成されたステンレス板2を、その表裏面から塩化第二鉄溶液を用いて、スプレーエッチング法にて、小孔4に相当する非レジストパターン部をエッ
チングして貫設し、貫設小孔4の直径φが、0.2mmになるまでエッチングして、規則的多数の微細小孔4を貫設し、水洗した。
【0028】
次に、微細小孔4の貫設されたステンレス板2を水酸化ナトリウム5%水溶液に浸漬して、ステンレス板2にラミネートされているフォトレジストを剥離除去し、水洗、乾燥処理し、ステンレス板2によるメッシュ板を作成した。
【0029】
このようにしてフォトレジストを除去した微細小孔4の貫設されたステンレス板2を、アニオンタイプ(ステンレス板側が+極)の電着塗装処理槽[エレコートAM−2(シミズ社製)]内に注入した電着塗装液(水性塗料、水性バインダーによる樹脂塗料、黒色などの着色塗料又は無着色塗料))内に浸漬して、ステンレス板2の素材部3の平坦な表裏両面と、エッチングにより貫設された各々小孔4の開口エッジ部3aと、各々小孔4の内周側面部5とに、全面均一な膜厚に電着塗装して、膜厚10μm±2μmの平滑な滑性薄膜6を製膜し、本発明の塵芥除去用フィルタ1を作成した。
【0030】
なお、フォトレジストとしては、フィルム状のドライフィルムレジスト以外に、カゼイン、PVA(ポリビニルアルコール)等の液状のフォトレジストを使用することが可能である。
【0031】
例えば、吹き付け塗装や静電塗装の場合は、コーナー部や尖鋭部(鋭角部)には塗膜が塗着し難いが、本発明フィルタのように電着塗装の場合は、コーナー部や尖鋭部(鋭角部)にも、平坦面と同様の膜厚の塗装が可能となる。よって、エッチング形成されたメッシュ板の小孔4のコーナー部や開口エッジ部3aの形成面は、電着塗装による滑性薄膜6により非常に平滑になるとともに、塗膜による適度な曲率が形成されて摩擦抵抗が小さい滑らかな塗膜面になる。そのため塵芥がフィルタに引っ掛かり難く、たとえ付着しても除去し易くなるものである。本発明においては、電着塗装に使用する電着塗装液を着色剤にて着色して、コーティングすることにより、デザイン性のあるフィルタ1を作製することが可能になる。
【0032】
また、本発明のフィルタ1は所定の小孔4を貫設した平板状の金属板2を、お碗状、円筒状など立体形状にプレス加工(金型などを用いて)した後に、電着塗装を行って滑性薄膜6を形成して作成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…フィルタ
2…金属板
3…金属素材部
3a…開口エッジ部
4…小孔
5…小孔内周側面部
6…滑性薄膜
7…開口エッジ部の滑性薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の金属板に規則的に貫設された多数の微細小孔から構成され、該金属板の表裏両面及び微細小孔の開口エッジ部及びその内周側面に、電着塗装による平滑な滑性薄膜が形成されていることを特徴とする塵芥除去用フィルタ。
【請求項2】
前記電着塗装による平滑な滑性薄膜が、アニオンタイプの電着塗装であることを特徴とする請求項1記載の塵芥除去用フィルタ。
【請求項3】
前記微細小孔の開口エッジ部の側断面が角丸形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の塵芥除去用フィルタ。
【請求項4】
前記滑性薄膜の膜厚が5±15μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の塵芥除去用フィルタ。
【請求項5】
前記金属板の板厚が0.05mm〜0.25mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の塵芥除去用フィルタ。
【請求項6】
前記滑性薄膜の形成前の微細小孔の直径が、2.5±0.5mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の塵芥除去用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−88065(P2011−88065A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243318(P2009−243318)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】