説明

増加した活性を有する第VIIA因子アナログの新規用途

本発明は、重度の出血のある被験者を治療するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重度の出血のある被験者における、出血症状のある後期合併症の防止、又は重症度の最小化を含む、被験者の重度の出血症状を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
止血とは、最終的に出血停止に至る複雑な生理的プロセスである。これは、3つの主要な要素:血管(特に内皮膜)、凝固因子、及び血小板に固有の機能に依存する。止血血栓が形成されてすぐ、線維素溶解系が適時に活性化されることは、さらなる不必要な止血活性の防止には等しく重要である。(止血成分の数の減少、又は分子の機能不全、又は線維素溶解成分の活性増加のために)この系に何らかの機能不全があると、臨床的出血、例えば様々な重症度の出血性素因に至るおそれがある。
ほとんどの生理学的状況では、止血は、損傷部位にTFが暴露された後に、循環している活性化された第VII凝固因子(FVIIa)が組織因子(TF)と相互作用することにより誘発される。内因性FVIIaは、TFと複合体を形成した後にのみ、タンパク質分解的に活性になる。通常、TFは血管壁の深層で発現され、損傷後に暴露される。これにより、凝固の高度の局在化が担保され、散在性凝固が防止される。またTFは、不活性形態、いわゆる暗号化TFで存在するようである。暗号化対活性TFの調節は、今だ知られていない。
【0003】
活性化組換え野生型ヒト第VII因子(rFVIIa)は、第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターと共に、血友病A又はB患者における出血症状の治療に対する効能が示されている。高(薬理学的)用量で投与された場合、rFVIIaは、TFとは関係なく、活性化血小板に結合し、最初の止血血栓の形成にとって重要な局所トロンビン生成を開始させうる。
【0004】
止血不能の出血は、重度な出血状態、例えば外傷における死亡の主要な原因であり、当該分野において、これら重度の出血の治療のため、並びに重度の出血又は輸血に起因する後期合併症の予防及び減弱化のための改善された方法及び組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、重度の出血のある被験者における出血症状を治療する医薬の製造における、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの使用を提供する。
一態様では、本発明は、重度の出血のある被験者における出血症状を治療する方法において、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VIIポリペプチドを、該治療に有効な量(有効量)、該治療を必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
また本発明は、野生型第VIIa因子と比較して、増加した活性を有する第VIIポリペプチドを、予防又は減弱化に有効な量、被験者に投与することにより実施される、重度の出血のある被験者における出血症状の兆候を予防又は減弱させるための方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施態様では、有効な量には、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドが含まれる。いくつかの実施態様では、有効量には、少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドが含まれる。いくつかの実施態様では、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの第1の量が、治療開始時に投与され、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの第2の量が、治療開始の一又は複数時間後に、被験者に投与される。いくつかの実施態様では、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの第3の量が、その後、例えば第2の治療の開始後、少なくとも約1時間後に投与される。投与されるFVIIポリペプチドの正確な量は、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの活性の特定の増加度合い、及び治療される重度の出血に特異的な兆候に応じて変わりうることが理解されなければならない。
【0007】
いくつかの実施態様では、本方法は、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドによる治療度合いを増強する量で第2の凝固剤を被験者に投与することをさらに含む。好ましくは、第2の凝固剤は凝固因子(限定されるものではないが、第V因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子、フィブリノーゲン、トロンビン、TAFI;抗線溶剤、例えばPAI-1、アプロチニン、イプシロン-アミノカプロン酸、又はトラネキサム酸、種々の抗栓血治療、並びに血小板、RBC、FFP、酸素キャリアの輸血、種々のバイパス剤、及び輸液療法(コロイド/クリスタロイド)、又は任意のそれらの組合せである。
【0008】
また本発明は:
(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する医薬;及び
(ii)a.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80、例えば少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第1の用量を、治療開始時に投与し;
b.場合によっては、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第2の用量を、治療の開始1ないし24時間後に投与すべき;
と記載された使用説明書;
を含む、重度の出血のある被験者における出血症状を治療するための、キットを提供する。
【0009】
また本発明は、重度の出血のある多くの被験者における出血症状を治療するための方法を提供するものであって、該方法は(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、前記治療に有効な量、重度の出血のある被験者群に投与し;(ii)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容していない同様の被験者群で予期される臨床的指標のレベルと比較して、該被験者群における重度の出血症状の一又は複数の臨床的指標の改善度合いを観察することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
外傷性障害又は複雑な外科手術後の大量出血は、多くの場合、外科的及び凝固障害性出血の組合せである。手術による出血は、手術又は外傷の部位での認識源由来であるが、凝固障害性出血はトロンビン生成が損なわれることに起因する。凝固障害は損傷後、早くに発生し、損傷の重度と相関している。外傷等の重度の出血における凝固障害の背後にあるメカニズムは複雑であり、希釈性凝固障害、低体温、アシドーシス、線溶亢進、及び消費性凝固障害を含む多因子性である。
【0011】
本発明の特許実施例の一つは、低pH(アシドーシスのインビトロモデル)及び低温(低体温のインビトロモデル)、並びにV158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、及び野生型組換えFVIIa(rwtFVIIa)の影響に対するクリスタロイド及びコロイド血液希釈のインパクトを実証している。
【0012】
前臨床及びインビトロ研究において、血液希釈は、赤血球及び凝固因子の希釈に誘発される蘇生及び出血の臨床的状態を模倣したモデルである。希釈度はヘモグロビンレベル及び投与された流体量で表される。
ヘモグロビンの基準間隔は研究室によって少し違うが、一般的には、女性で12−16g/dl、男性で14−18g/dlの範囲である。重度の出血がある患者、例えば外傷のある患者は、非常に異種の集団であり、彼らのヘモグロビンレベルは、一般的に出血の程度及び流体及び血液製剤補充療法に応じて変化する。
【0013】
抗凝固剤は、血栓塞栓症の予防及び治療に有効であることが示されている。主な出血性合併症はまれであり、多くの場合、薬剤の一時的中断により管理可能であるが、急性の重度の出血のいくつかの場合では、効果的で速効性のある止血性介入が必要とされる場合がある。よって、一態様では、本発明は、抗凝固剤で前治療された被験者における出血症状を治療するための医薬を製造するための、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、例えばV158D/E296V/M298Q-FVIIaの使用に関する。さらなる態様では、本発明は、抗凝固剤で前治療された被験者における出血症状を治療するための、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、例えばV158D/E296V/M298Q-FVIIaの使用に関する。一実施態様では、抗凝固剤は、ビタミン−Kアンタゴニスト、例えばワルファリン、フェンプロクモン、及びアセノクマロール;ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、ダナパロイド、フォンダパリヌクス、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、メガラトラン、キシメラガトラン、アスピリン、クロピドグレル、アブシキシマブ、チロフィバン、及びエプチフィバチドからなる列挙から選択される。組換え野生型FVIIaは、ウサギの耳の出血モデルにおけるLMWヘパリン治療に対する解毒剤として効果を有さないことが以前から知られている(Chan Sら, Thromb Haem 2003;1:760-765)。しかしながら、本発明の発明者は、抗凝固状態を模倣した血液中におけるV158D/E296V/M298Q-FVIIa等の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド及び組換えwtFVIIaの効果を研究し、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、例えばV158D/E296V/M298Q-FVIIaが、等モル濃度の組換えwtFVIIaに対して、エキソビボで極めて優れていることを見出した。
【0014】
ここで使用される「アシドーシス」なる用語は、通常の酸性度と比較した場合、被験者における血漿中の酸性度(すなわち、水素イオン濃度)が高められていることを意味する。一般的に、アシドーシスは、動脈pHが7.35以下に低下した場合に生じると言われている。よって、一実施態様では、重度の出血のある被験者のpHは7.35以下である。
ここで使用される「低体温」とは、中核体温が被験者の通常体温以下になった身体的状態を意味する。一般的に、低体温は、中核体温が摂氏35℃以下に低下した場合に生じると言われている。
【0015】
「重度の出血」なる用語は、被験者に:
1)1時間当たり少なくとも1Lの割合での補液療法の継続;及び/又は
2)赤血球補充療法の必要性;及び/又は
3)該被験者に:
a)測定可能なアシドーシス;
b)100mmHg以下の収縮期血圧を有する低血圧;
c)該被験者の正常レベルより4g/dl低いヘモグロビンレベル;
からなる列挙から選択される一又は複数の身体的状況をもたらす;
ことを必要とする出血がある状態を意味する。
【0016】
一実施態様では、重度の出血のある被験者は、7.40以下、例えば7.35以下、例えば7.25以下、例えば7.15以下、例えば7.05以下、例えば6.95以下、例えば6.85以下のpHを有するアシドーシスに罹患している。
一実施態様では、被験者には、外傷による重度の出血がある。
一実施態様では、被験者には、鈍的外傷による重度の出血がある。
ここで使用される場合、「鈍的外傷」なる用語は、非穿痛力、例えば自動車事故、落下、又は鈍器を用いた暴行に起因する損傷を意味する。
一実施態様では、被験者には、穿痛性外傷による重度の出血がある。
ここで使用される場合、「穿痛性外傷」なる用語は、体表面を破壊し、穿刺又は銃撃による創傷等、根底にある組織又は体腔に広がっている損傷を意味する。
【0017】
一実施態様では、被験者には、熱傷による重度の出血がある。
熱傷を被った典型的な患者は、組織の切除、例えば全体表面(TBSA)の5%又はそれ以上、TBSAの10又はそれ以上の組織を切除する必要がある。また、典型的な患者は微小血管出血も被っている。
火傷の切除は、多くの場合、同種血輸血を必要とする、多量の血液損失に関連している。よって、いくつかの実施態様では、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを投与すると、切除及び皮膚移植を受けた火傷患者に必要な輸血が低減する。
【0018】
いくつかの実施態様では、最初の投与工程は、外傷性火傷の発生から5時間以内に実施される。いくつかの実施態様では、最初の投与工程は、切除手術の開始直前に実施される。いくつかの実施態様では、投与工程は切除手術後、例えば60分後に繰り返し実施される。
【0019】
一実施態様では、重度の出血のある被験者は、赤血球補充療法が必要である。
一実施態様では、重度の出血のある被験者は、100mmHg以下、例えば95mmHg以下、例えば90mmHg以下の収縮期血圧を有する低血圧に罹患している。
一実施態様では、重度の出血のある被験者は、摂氏37℃以下、例えば摂氏36℃以下、例えば摂氏35℃以下、例えば摂氏34℃以下、例えば摂氏33℃以下、例えば摂氏32℃以下、例えば摂氏31℃以下、例えば摂氏30℃以下の温度を有する低体温になっている。
【0020】
一実施態様では、重度の出血のある被験者は、被験者の正常レベルよりも4g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも5g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも6g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも7g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも8g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも9g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも10g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも11g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも12g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも13g/dl低い前治療ヘモグロビンレベルになっている。
【0021】
一実施態様では、重度の出血のある被験者は、14g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば12g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば10g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば8g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば6g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば4g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば3g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば2g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベルになっている。
【0022】
一実施態様では、重度の出血のある被験者には、1000mlのクリスタロイド及び/又はコロイドの補液療法、例えば1500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば2000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば2500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば3000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば3500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば4000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば4500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば5000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば6000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法が必要である。
【0023】
コロイド及びクリスタロイド溶液は、重度の出血患者の補液療法に幅広く使用されている。当業者によく知られているコロイド及びクリスタロイドがいくつか選択される。具体例には、濃縮アルブミン、血漿生成物、デキストラン、ヘタスターチ、合成的に誘導されたコロイド類が含まれる。
等張性クリスタロイドの具体例には、乳酸リンゲル液(以下を参照)、Plasmalyte-ATM、及びNormosol-RTMが含まれる。高張性クリスタロイドの具体例には、平衡電解質溶液又は維持溶液に加えて、3.0%、7.0%及び7.5%の生理食塩水、及び5%のグルコースを含む。
【0024】
他の実施態様では、重度の出血のある被験者には、血液製剤療法が必要である。血液製剤には、全血、血漿、濃厚血小板及び寒冷沈降物が含まれる。
【0025】
第1の態様では、本発明は、重度の出血のある被験者における出血症状を治療するための医薬の製造のための、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの使用に関する。
【0026】
第2の態様では、本発明は:
(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する医薬;及び
(ii)a.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80、例えば少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第1の用量を、治療開始時に投与し;
b.場合によっては、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第2の用量を、治療の開始1ないし24時間後に投与すべき;
と記載された使用説明書;
を含む、重度の出血のある被験者における出血症状を治療するためのキットに関する。
【0027】
第3の態様では、本発明は、血小板減少症を患っている被験者における、出血症状を治療するための方法に関し、該方法は、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、該治療に有効な量、該治療を必要とする被験者に投与することを含む。
【0028】
本発明のさらなる態様では、本発明は、血小板減少症を患っている被験者における、出血症状を治療するための方法に関し、該方法は、重度の出血のある被験者における出血症状を治療するために、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、該治療に有効な量、該治療を必要とする被験者に意図的に投与することを含む。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、重度の出血のある多くの被験者における出血症状を治療するための方法に関し、該方法は(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、前記治療に有効な量、重度の出血のある被験者群に投与し;(ii)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容していない同様の被験者群で予期される臨床的指標のレベルと比較して、該被験者群における出血症状の一又は複数の臨床的指標の改善度合いを観察することを含む。
【0030】
本発明の一態様は、手術を受けた重度の出血のある被験者における、手術前の輸血必要性を低減又は回避するための、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの使用に関する。一連の実施態様では、本発明の被験者の治療により、10%、例えば20%、例えば40%、例えば60%、例えば80%、例えば100%、手術前の輸血必要性が低減する結果となる。
【0031】
「出血症状(出血エピソード)」なる用語は、制御されない過度の出血を含むことを意味する。出血症状は、例えば心臓、肝臓、整形、又は前立腺手術に限定されないが、手術及び組織損傷の他の形態の双方に関連した主たる問題でもあり得るし、又は自然発生的なものでもあり得る。制御されない過度の出血は、凝固又は出血疾患を患っている被験者で生じ得る。ここで使用される場合、「出血疾患」なる用語は、出血に表れる、細胞又は分子由来の任意の欠損、先天的、獲得又は誘発されるものを表す。具体例は凝固因子欠損症(例えば、血友病A及びB、又は第XI又はVII凝固因子の欠損)、凝固因子インヒビター、血小板機能欠損、又はフォンウィルブランド病である。
【0032】
また過度の出血は、正常に機能している血液凝固カスケード(凝固因子欠損がないか又は凝固因子のいずれかに対しても凝固インヒビターがない)の被験者でも生じ、血小板機能欠損、血小板減少症、又はフォンウィルブランド病に起因する場合もある。血友病では、止血システムを欠いているか、又は主な出血の原因である異常な必須凝固「化合物」(例えば、フォンウィルブランド因子タンパク質)を有しているために、このようなケースにおける出血は、血友病に起因する出血に例えられる。
【0033】
手術に関連した広範囲の組織損傷又は大きな外傷を経験した被験者において、正常な止血メカニズムは速効型止血の要求に圧倒されており、正常な止血メカニズムにもかかわらず、出血が生じる可能性がある。また、満足のいく止血が達成されても、外科的止血の可能性が制限される脳、内耳領域及び目等の器官に出血が生じた場合は問題である。同様の問題は種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からバイオプシーを取り出すプロセスにおいて、並びに腹腔鏡下手術において生じるおそれがある。これら全ての状況に共通しているのは、出血が拡散しているケース(出血性胃炎、及び大量の子宮出血)では、外科的手法(縫合、クリップ等)による止血が困難であるということである。また、急性の大量出血は、不完全止血が付与された治療により誘発され、抗凝固療法中の被験者においても生じ得る。このような被験者には、抗凝固効果が急速に反作用しているケースにおいて、外科的治療は必要であり得る。根治的な恥骨後式前立腺摘除術は、局所的前立癌を患っている患者にとって一般的に実施されている手順である。手術は、時折は大量の失血により、しばしばかなり複雑になる。前立腺切除術中のかなりの失血は、主として、外科的止血を容易に使用できない種々の高密度に血管新生化された部位を伴う、複雑な解剖学的状況に関連しており、広い領域からの拡散性出血に帰するおそれがある。不十分な止血のケースにおいて問題を引き起こすおそれのある他の状況は、正常な止血メカニズムを有する被験者に、血栓塞栓病を防止するための抗凝固療法が付与された場合である。このような療法には、ヘパリン、他の形態のプロテオグリカン、ワルファリン、又は他の形態のビタミンK-アンタゴニスト、並びにアスピリン、及び他の血小板凝集抑制剤が含まれる。
【0034】
特に、血小板数が1ml当たり1000万以下に低下すると、自発的に出血する危険性が高まる。よって、本発明の一実施態様では、重度の出血のある被験者は血小板減少症を患っている。
【0035】
一実施態様では、出血は頭蓋内にある。一実施態様では、出血は脳内出血である(ICH)。
脳内出血(ICH)は、自発的に生じる神経学的状態であり、実質内脳組織に血液が集まる結果となる。ICHの結果、有意な罹患率及び死亡率に帰することが示されている。近年、ICHは、最初の発作に続いて数時間で容量が増加することが示されている。増加の理由は明らかではないが、最初の血腫の連続的滲出、又は再出血の複雑なプロセスのいずれかを介していると考えられる。
【0036】
最初の発作から数日後、浮腫の領域は、血腫中の血液周囲のCTスキャンにおいて同定することができる。浮腫生成のメカニズムはあまり理解されていないが、血餅周囲の組織において炎症反応が組み合わさった、並びに周辺脳組織において血餅が働きかける圧力の直接的腫瘤効果のためである可能性がある。単離された浮腫の影響はかなりであるが、大量出血では評価されず、血腫の実際の容量の3倍までであると推定されたICH後、易感染性脳組織の容量に影響を及ぼす可能性がある。全体的に生じた組織容量の重要性は、ICHの予後の最も強い前兆の一つであると思われる。よって、任意の出血拡大の減少、及び全病変容量(血液及び結果としての浮腫)の低減及び/又は最小化に、臨床的関心がある。いくつかの実施態様においては、最初の投与工程はICHの発生4時間以内に実施される。一連の実施態様では、過度の出血は自発的なICHにより引き起こされ;他では、外傷性ICHにより引き起こされる。
【0037】
一実施態様では、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを有効量用いた治療は、改善された予後に至るICH患者における、出血拡大及び/又は浮腫生成を防止又は減弱するためのものである。一実施態様では、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを有効量用いた治療は、ICHが生じる前に、抗血小板療法を受けた患者における、ICH後の出血拡大及び/又は浮腫生成を防止又は減弱するためのものである。
【0038】
一実施態様では、出血は血小板凝集を阻害する治療等、抗血小板療法によるものである。
一実施態様では、出血は、胃腸、例えば出血性胃炎による胃腸管上部からの出血である。
一実施態様では、出血は食道静脈瘤からのものである。一実施態様では、出血は急性腹部大動脈瘤(AAA)からのものである。
一実施態様では、出血は泌尿生殖器にある。
一実施態様では、出血は網膜にある。
【0039】
本発明の一実施態様では、重度の出血のある被験者は、血友病を患っている。他の実施態様では、重度の出血のある被験者は、後天性インヒビターを有する血友病を患っている。他の実施態様では、重度の出血のある被験者は、フォンウィルブランド病を患っている。他の実施態様では、重度の出血のある被験者は、重度の組織損傷を負っている。他の実施態様では、重度の出血を有する被験者は、重度の外傷を患っている。他の実施態様では、重度の出血は、外科手術に関連している。他の実施態様では、重度の出血は、腹腔鏡下手術に関連している。他の実施態様では、重度の出血は、出血性胃炎又は食道静脈瘤に関連している。他の実施態様では、重度の出血は、大量の子宮出血に関連している。他の実施態様では、重度の出血は、機械的止血の可能性が制限された器官において生じている。他の実施態様では、重度の出血は、脳、内耳領域又は眼において生じている。他の実施態様では、重度の出血は、バイオプシーを取り出すプロセスに関連している。他の実施態様では、重度の出血は、抗凝固療法に関連している。
【0040】
特定の一セットの実施態様では、重度の出血は、正常な凝固システムを有する患者、例えば、凝固因子欠損症(例えば、血友病A及びB、又は第XI又はVII因子の欠損)、凝固因子インヒビター、血小板機能欠損、又はフォンウィルブランド病を患っていない患者に存在する。
【0041】
本記載において、「治療」なる用語は、重度の出血を抑制又は最小化する目的で、外科手術等の予期される重度の出血の予防、及び外傷等の既に生じている重度の出血の調整の双方を含むことを意味している。よって、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの予防的投与も、「治療」なる用語に含まれる。
ここで使用される場合、「被験者」なる用語は、任意の動物、特にヒト等の哺乳動物を意味することを意図しており、適切な場合は、「患者」なる用語と交換可能に使用されてよい。
【0042】
本発明は、重度の出血のある被験者における出血症状を治療するのに、有利に使用可能な方法及び組成物を提供する。
本方法は、治療に有効な方式で、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、重度の出血のある被験者に投与することによって実施される。治療に有効な方式は、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを予定量投与する、及び/又は特定の投与計画、処方、投与方式、他の治療との併用等を利用することを含む。重度の出血のある患者の出血症状の治療における本発明の方法の有効性は、損傷の即時結果及び/又は後期合併症の従来から使用されている一又は複数のパラメータを使用して評価されてよい。即時結果には、例えば失血及びショックの兆候が含まれ;後期合併症には、限定されるものではないが、肺塞栓症(PE)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固(DIC)、急性心筋梗塞(AMI)、脳血栓(CT)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染、敗血症、多臓器不全(MOF)、及び急性肺損傷(ALI)、一又は複数のこれらの症候群により引き起こされる死が含まれる。
【0043】
よって、いくつかの態様では、本発明は、損傷の即時結果及び/又は後期合併症の危険性を低減する方法に関し、該方法は、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、前記治療に有効な量、該治療を必要とする被験者に投与することを含む。一実施態様では、本発明は、肺塞栓症(PE)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固(DIC)、急性心筋梗塞(AMI)、脳血栓(CT)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染、敗血症、多臓器不全(MOF)、及び急性肺損傷(ALI)、一又は複数のこれらの症候群により引き起こされる死からなる列挙から選択される、損傷の即時結果及び/又は後期合併症の危険性を低減する方法に関し、該方法は、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、前記治療に有効な量、該治療を必要とする被験者に投与することを含む。一実施態様では、後期合併症は多臓器不全(MOF)である。一実施態様では、後期合併症は急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。一実施態様では、後期合併症は急性肺損傷(ALI)である。一実施態様では、後期合併症は敗血症である。
【0044】
重度の出血、例えば外傷における凝固障害は、凝固及び線維素溶解の全身活性化により引き起こされる、凝固異常に似たDIC;外傷のある被験者等、いくらかの重度の出血の初日に明白なる可能性のある過度の線維素溶解;及び過度の流体投与により引き起こされる希釈性凝固障害を含む多因子性である。いくつかの流体、例えばヒドロキシエチルスターチ(HES)調製物は、凝固を直接損なわせる可能性がある。大量の輸血症候群は凝固因子の枯渇及び血小板機能障害に帰する。低体温は、凝固カスケードの酵素活性の遅延化、及び血小板の機能障害を引き起こす。代謝異常、例えばアシドーシスは、特に低体温に関連する場合に、凝固を損なわせる。
【0045】
本発明の治療が必要な被験者の非限定的例には、次の:
・凝固及び線維素溶解の全身活性化により引き起こされる、凝固異常に似たDIC
・過度の線維素溶解
・限定されるものではないが、正常な保管血液の血小板数及び血小板活性と比較して、血小板数が制限された、及び/又は血小板機能が損なわれることを含む、過度の流体治療により引き起こされる希釈性凝固障害
・ヒドロキシエチルスターチ(HES)調製物の受容
・約37℃以下、例えば約36℃以下、例えば約35℃以下、又は約34℃以下の体温を有することを含む低体温
・限定されるものではないが、約7.4以下、約7.3以下、約7.2以下、又は約7.1以下の血液pHを有するアシドーシスを含む、代謝異常を少なくとも一の兆候
の一又は複数を示す被験者が含まれる。
【0046】
一連の実施態様では、本発明で治療される被験者は、全血(WB)、濃縮赤血球(pRBC)、又は新鮮凍結血漿(FFP)を、例えば出血時間と野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、例えばV158D/E296V/M298Q-FVIIaの投与時間の間に、約2ユニット以上、5ユニット、又は約8ユニット以上で輸血が必要な被験者である。1ユニットのWBは、典型的には約450mlの血液と、63mlの従来からの抗凝固剤/防腐剤(36-44%のヘマトクリットを有する)を含有する。1ユニットのpRBCは、典型的には200-250mlの赤血球、血漿、及び従来からの抗凝固剤/防腐剤(70-80%のヘマトクリットを有する)を含有する。
【0047】
一実施態様では、出血は分娩後出血によるものである。
分娩後出血(PPH)は、子宮の収縮無能(アトニー)、胎盤の不完全分娩(前置胎盤又は癒着胎盤)、子宮破裂、産道損傷又は羊水塞栓による、過度の出血である。推定で分娩の24時間以内に500ml超の血液が失われるが、臨床的に適用可能な限界値は1000mlにシフトする。重度の分娩後出血(SPPH)には、通常、1500ml超の血液損失があり、≧4g/dlのヘモグロビン濃度まで低下し、≧4ユニットの血液が必要であると定義される。
分娩後出血は、危険な産科合併症であり、世界中の妊産婦の罹患及び死亡の最も一般的な理由の一つである。生命を危うくする出血は、1000の分娩当たり1つ生じると推定され、世界中で毎年、125000人の婦人がPPHで死亡していると推定される。
【0048】
SPPHに関連した最も重要な合併症には、血液量減少性ショック、播種性血管内凝固(DIC)、腎不全、肝不全、及び成人呼吸促迫症候群(ARDS)が含まれる。罹患の他の重要な原因は、子宮摘出術に伴う受精の喪失である。結果に影響を与える要因は:血液損失の過小評価、子宮破裂の診断の遅れ、診断未確定の潜在性剥離、後腹膜又は腹腔内出血の診断の遅れ、凝固発症の急速な変化、DICの重症度の的確な診断の無効、及び理想の病院施設の不足である。
【0049】
大量の、生命を危うくするPPHを発症した多くの婦人は、「凝固障害」拡散性出血及び「手術による」出血の合併症を患っている。より大きな血管からの出血は、外科医により制御可能であるが、拡散性出血を制御する能力は、制限されているか、又は多くの場合は実行可能でない。
【0050】
PPH管理の頼みの綱には、通常、有効な輸血療法、子宮収縮剤療法(オキシトシン、エルゴタミン、プロスタグランジン類)、及び浸潤型/外科的方法が含まれる。過度の出血を伴う状態、例えば子宮破裂、癒着胎盤、剥離、又は子宮弛緩は、血液成分及び凝固因子と共に、強力な蘇生治療が必要であり得る。このような状況における輸血は生命を救うことになるかもしれないが、患者を、さらなる危険性にさらす危険性もある。長期にわたって確立されている外科的治療には、腸骨動脈、及び子宮亜全摘又は全摘出、生殖機能を保存し得る新しく、あまり根治的でない治療、例えば血管造影塞栓形成、子宮の圧迫縫合、及び子宮タンポナーデに係る方法が含まれる。しかしながら、2〜3のセンターのみしか、血管造影塞栓形成手順を実施するのに必要な設備又は資産を利用することができず、この介入治療は緊急時には実行できないおそれがある。
【0051】
出血を制御するための最終的な治療としての、緊急の子宮摘出術の必要性の防止、及び止血におけるこれらの手順の全体的な有効性は、50%であると推定される。従来からの医学療法及び外科手技に無応答性の難治性出血のケースでは、出血を制御するための最終的な治療として、子宮摘出術が通常必要とされている。しかしながら、周産期の子宮摘出は大手術であり、現在、ほとんどの場合は、多量の失血及びかなりの母体罹患といったハイリスクを伴う緊急治療である。実際、ほとんどの母体罹患は、子宮摘出中又は摘出後に生じている。
【0052】
全体的に、従来からの療法に無応答性の重度の産科の出血のがある患者の管理は、出血の制御、罹患率、及び死亡阻止の観点から、満足のいくものではなかった。よって、安全に凝固障害成分を制御し、ひいては血液製剤の輸血の必要性を低減させ、子宮摘出の割合を含む、出血結果を低減させることができる、新規の止血剤を導入することで、SPPHにおける死亡率及び罹患率を低下させることができる。
【0053】
本特許出願の発明者は、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドが、血液凝固促進可能性を高め、安定した血餅を形成するために、従来からの治療に対して、重度の難治性PPHの管理において、進化した役割を有している可能性があることを見出した。増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドは伝統的な野生型ヒト第VIIa因子(NovoSeven)よりも強力であり、血液製剤への暴露性の低減を助けるばかりか、初期治療で付与されるならば、PPH-関連子宮摘出をも防ぐ。
【0054】
V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有するいくつかの第VII因子ポリペプチドは、野生型ヒト第VIIa因子(又は内在性FVIIa)と同様の、組織因子(TF)への結合性を保持している。TFに結合した場合、これらの第VI因子ポリペプチドのいくつかは、野生型ヒト第VIIaと同様の活性を有している。しかしながら、活性化血小板の表面にTFが不在であると、これら特定の第VII因子ポリペプチドは、野生型ヒト第VIIa因子と比較して、増加した酵素活性を示すようになる。この増加した酵素活性により、トロンビン生成速度が速まり、凝固が早まり、より安定した止血血栓が形成される。トロンビン活性の速度及びピークレベルは、臨床的状態において、止血が、生成されるトロンビンの全量よりも有効であるかどうかを決定するのに重要である。rFVIIa(NovoSeven(登録商標))と比較して、上述した特定のFVIIaポリペプチドを用いて得られた、より速くて多量のトロンビンバーストにより、重度のPPH等、急性の重大な出血の治療に特に適したものとなる。
【0055】
PPHを治療するための、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドに関連した、主たる安全性における潜在的懸念には、患者における血栓塞栓性副作用の危険性が含まれる。しかしながら、理論的血栓形成性における懸念は、損傷部位で局在化した止血(トロンビン形成)を示し、よって全身効果の危険性を最小化する特定の特徴(局在化したトロンビン生成、活性化血小板における活性の増加、インヒビター(ATIII及びTFPI)を用いた反応性の増加、速いクリアランス)よって制限されるべきである。
【0056】
効果の速い発現の理解と共に、難治性PPHを患っている患者に見られる複雑な凝固障害及び合併症の発生率の高さ、作用の局所的メカニズム、及び血栓塞栓性合併症の低リスク、続く、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、特にV158D/E296V/M298Q-FVIIaの動物モデルへの投与、臨床的用途おけるrFVIIaにより、これらのFVIIポリペプチドが、重度のPPHを制御するための有望な補助的療法となる可能性があることが示唆された。
【0057】
特定の一実施態様では、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、特にV158D/E296V/M298Q-FVIIaは、標準的な産科管理、分娩誘発剤、及び主要な浸潤性療法の前の標準的な血液成分療法に対し、無応答性の患者における、重度の分娩後出血の治療に効能がある。
【0058】
野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、特にV158D/E296V/M298Q-FVIIaの投与は、重度の出血のある若い患者における子宮摘出の前、又は出血が続いているならば、内腸骨動脈ライゲーションの後が有益である。子宮摘出術中又は後の双方に付与される野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、特にV158D/E296V/M298Q-FVIIaは、失血を保護する可能性を有し、母体罹患率又、さらには母体死亡率を低減させるかもしれない。いくつかの実施態様では、極度に枯渇した凝固障害の女性において、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを投与する前に、血液成分、例えば血小板、及び凝固因子、例えばFX、プロトロンビン、及びフィブリノーゲンを置き換える必要があり得る。患者の病状及び凝固システムが悪化する前に、これらのFVIIポリペプチドを用いて初期治療を行うことは合理的であると思われ、出血に関連した死亡及び罹患、並びに多町の輸血に伴う合併症を低減させることができる。
【0059】
輸血療法及び子宮収縮剤に対して不応性の拡散性出血のケースにおいて、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを使用することは、適切であると思われる。多くの産科医院では、現場にインターベンショナルラジオグラフィーを有しておらず、V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを使用すると、このような設備が存在する医院に患者を移すためのさらなる時間が付与される可能性が出てくる。
【0060】
V158D/E296V/M298Q-FVIIa等、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドが、効果の開始がより速く、改善された安全プロフィールを有する場合は、重度のPPHの超急速セッティングへの、これらのFVIIポリペプチドの使用には潜在的利点がある。
【0061】
異なるセットの実施態様では、出血は、軽度から中程度の血友病Aにより、患者は内在性血漿レベルのFVIIIを有する。いくつかの実施態様では、出血は軽視の血友病Aによる。いくつかの実施態様では、出血は、中程度の血友病Aによる。
ここで使用される場合、中程度の血友病Aは、第VIII因子血漿レベル0.01-0.05IUmL−1により特徴付けられる。軽度の血友病Aは、第VIII因子血漿レベル>0.05<0.40IUmL−1により特徴付けられる。
【0062】
野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド:
本発明の実施においては、重度の出血のある被験者の出血症状を治療するのに有効な、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する任意の第VII因子ポリペプチドが使用され得る。
「第VII因子」なる用語は、それらの未切断(チモーゲン)形態にある第VII因子ポリペプチド、並びに第VIIa因子と命名される、タンパク質分解的にプロセシングされて、それぞれの生物活性形態を生じるものを含むことを意図している。典型的には、第VII因子は残基152と153の間が切断されて、第VIIa因子を生じる。
ここで使用される場合、「野生型ヒトFVIIa」とは、米国特許第4,784,950号に開示されているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0063】
野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドには、限定されるものではないが、ヒト第VIIa因子に対して化学的に修飾された、及び/又はヒト第VIIa因子に対して配列変更したアミノ酸を一又は複数含有する、第VIIa因子ポリペプチドが含まれる。また、このような第VII因子ポリペプチドは、活性とは別に、安定性、リン脂質結合性等を含む、ヒト第VIIa因子に対して、他の異なる特性を示す。これには、FVII変異体、第VII因子-関連ポリペプチド、第VII因子誘導体、及び第VII因子コンジュゲートで、野生型ヒト第VIIa因子と比較して増加した活性を示すものが含まれる。
【0064】
ここで使用される場合、「第VII因子誘導体」なる用語は、野生型第VIIa因子に対して増加した活性を示すFVIIポリペプチドを命名することを意図しており、親ペプチドの一又は複数のアミノ酸は、例えばアルキル化、グリコシル化、PEGイル化、アシル化、エステル形成又はアミド形成等、遺伝的及び/又は化学的及び/又は酵素的に修飾される。限定されるものではないが、これにはPEGイル化されたヒト第VIIa因子、システイン-PEGイル化ヒト第VIIa因子、及びそれらの変異体が含まれる。
【0065】
「増加した活性」なる用語は、i)組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して増加したタンパク質分解活性を有するFVIIポリペプチド、又はii)組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して増加したTF結合活性を有するFVIIポリペプチド、又はiii)組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して増加した血漿中半減期を有するFVIIポリペプチドを意味する。「PEGイル化ヒト第VIIa因子」なる用語は、ヒト第VIIa因子ポリペプチドにコンジュゲートしたPEG分子を有するヒト第VIIa因子を意味する。PEG分子は、第VIIa因子ポリペプチドの任意のアミノ酸残基又は炭水化物部分を含む、第VIIa因子ポリペプチドの任意の部分に結合していてよい。「システイン-PEGイル化ヒト第VIIa因子」とは、ヒト第VIIa因子に導入されたシステインのスルフヒドリル基にコンジュゲートしたPEG分子を有する第VIIa因子を意味する。
【0066】
本発明の目的のために、米国特許第5,997,864号に記載されているように、第VII因子-欠損血漿とトロンボプタスチンを使用し、血液凝固を促進させる調製物の能力を測定することにより、第VIIa因子のタンパク質分解活性を定量してもよい。このアッセイにおいて、タンパク質分解活性は、対照サンプルに対する、凝固時間の低減度合いとして表され、1ユニット/mlの第VII因子活性を含有する、プールされたヒト血清標準体と比較することにより、「第VII因子ユニット」に換算される。また、第VIIa因子のタンパク質分解活性は、(i)X因子及び脂質膜に包埋されたTFを含有するシステムにおいて、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの、第Xa因子を生成する能力を測定し(Perssonら, J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii)水系における第X因子の加水分解度合いを測定し(「In Vitro Proteolysis Assay」、以下実施例3を参照);(iii)表面プラスモン反応をベースにした機器を使用し、TFに対する、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの物理的結合性を測定し(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997);(iv)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドによる、合成基質の加水分解度合いを測定する(「In Vitro Hydrolysis Assay」、以下実施例2を参照)ことによって定量されてもよい。
【0067】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくとも約1.25のポリペプチドである。一実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、少なくとも約2.0である。さらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、少なくとも約4.0である。
【0068】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が、第VIIa因子活性アッセイでテストした場合に少なくとも1.25のポリペプチドである。一実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、第VIIa因子活性アッセイでテストした場合に少なくとも約2.0である。さらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、第VIIa因子活性アッセイでテストした場合に少なくとも約4.0である。第VIIa因子の活性は、実施例2又は3に記載したアッセイにより測定されてよい。
【0069】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が、「インビトロ加水分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約1.25のポリペプチドである。一実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロ加水分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約2.0である。さらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロ加水分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約4.0である。
【0070】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が、「インビトロタンパク質分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約1.25のポリペプチドである。一実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロタンパク質分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約2.0である。さらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロタンパク質分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約4.0である。さらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロタンパク質分解アッセイ」でテストした場合に少なくとも約8.0である。
【0071】
野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの具体例は、限定されるものではないが、野生型ヒト第VIIa因子、L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、及びS336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/K337A-FVII、F374Y/V158D-FVII、F374Y/E296V-FVII、F374Y/M298Q-FVII、F374Y/V158T-FVII、F374Y/S314E-FVII、F374Y/L305V-FVII、F374Y/L305V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D-FVII、F374Y/L305V/E296V-FVII、F374Y/L305V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T-FVII、F374Y/L305V/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E-FVII、F374Y/K337A/V158T-FVII、F374Y/K337A/M298Q-FVII、F374Y/K337A/E296V-FVII、F374Y/K337A/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q-FVII、F374Y/V158D/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q-FVII、F374Y/V158T/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E-FVII、F374Y/S314E/M298Q-FVII、F374Y/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII、F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII、F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII、F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII、F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII、F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII、F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII、F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII、F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A -FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q
/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、S52A-VII因子、S60A-VII因子;R152E-VII因子、S344A-VII因子、Glaドメインを欠く第VIIa因子;及びP11Q/K33E-FVII、T106N-FVII、K143N/N145T-FVII、V253N-FVII、R290N/A292T-FVII、G291N-FVII、R315N/V317T-FVII、K143N/N145T/R315N/V317T-FVII;及び233Thrから240Asnのアミノ酸配列に、置換、付加又は欠失を有するFVII、304Argから329Cysのアミノ酸配列に、置換、付加又は欠失を有するFVIIである。
【0072】
第VII因子等価物の他の例には、限定されるものではないが、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa(Linoら, Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998)を含む、野生型第VII因子と実質的に同様の生物活性を有する第VII因子等価物;米国特許第5,580,560号に開示されたような、増加したタンパク質分解安定性を示すFVIIa等価物;残基290と291の間、又は残基315と316の間が、タンパク質分解的に切断された第VIIa因子(Mollerupら, Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);第VIIa因子の酸化形態(Kornfeltら, Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);国際公開第02/29025号に開示されているFVII等価物;及び国際公開第02/38162号に開示されたような、増加したタンパク質分解安定性を示すFVII等価物(Scripps Research Institute);国際公開第99/20767号、国際公開第00/66753号、国際公開第02/02764号、及び米国特許出願第20030211094号(ミネソタ大学)に開示されたような、高められた膜結合性を示し、修飾されたGla-ドメインを有するFVII等価物;及び国際公開第01/04287号、国際公開第01/58935号、国際公開第03/93465号、及び米国特許出願第20030165996号(Maxygen ApS)に開示されたようなFVII等価物が含まれる。
【0073】
第VII因子等価物の他の例には。国際公開第03/31464号、及び米国特許出願第20040043446号、米国特許第20040063911号、米国特許第20040142856号、米国特許第20040137557号、及び米国特許第20040132640号(Neose Technologies, Inc.)に開示されたような、グリコペグ化FVII誘導体が含まれる。
【0074】
野生型FVIIaと比較して増加した生物活性を有するFVII変異体の非限定的例には、国際公開第01/83725号、国際公開第02/22776号、国際公開第02/077218号、国際公開第03/027147号、国際公開第04/029090号、国際公開第05/075635号、出願番号05108713.8を有する欧州特許出願(Novo Nordisk A/S)、国際公開第02/38162号(Scripps Research Institute);及び日本国特許第2001061479号(Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示されているような高められた活性を有するFVIIa変異体が含まれる。
【0075】
本発明の一実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはE296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはM298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T-FVIIである。
【0076】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはS314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/K337A-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V-FVIIである。
【0077】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/V158T-FVIIである。
【0078】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/V158D-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/M298Q-FVIIである。
【0079】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはE296V/S314E-FVIIである。
【0080】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはS314E/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはE296V/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/K337A/V158D-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/K337A/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/K337A/M298Q-FVIIである。
【0081】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/K337A/V158T-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/S314E-FVIIである。
【0082】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/V158T-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/M298Q/V158T-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/M298Q/S314E-FVIIである。
【0083】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/S314E/V158T-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/S314E/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/S314E/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/S314E/V158D-FVIIである。
【0084】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/V158T/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/V158T/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/M298Q/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/M298Q/V158D-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはK337A/E296V/V158D-FVIIである。
【0085】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/S314E/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/S314E/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/M298Q/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/S314E/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/S314E/M298Q-FVIIである。
【0086】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/M298Q/E296V-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはE296V/S314E/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはE296V/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
【0087】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/M298Q/K337A -FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/M298Q/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/E296V/M298Q/K337A-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/E296V/M298Q/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/K337A/S314E-FVIIである。
【0088】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/E296V/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/M298Q/K337A-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/K337A-FVIIである。
【0089】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/M298Q/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/E296V/M298Q/K337A-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/E296V/M298Q/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/K337A/S314E-FVIIである。
【0090】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158T/E296V/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/E296V/M298Q-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/M298Q/K337A-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/E296V/K337A-FVIIである。
【0091】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/M298Q/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158T/E296V/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはE296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはV158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVIIである。
【0092】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVIIである。
【0093】
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVIIである。
本発明のさらなる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはL305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVIIである。
【0094】
調製物及び製剤:
本発明は、第VIIa因子調製物を含有する製剤を使用することにより達成される、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの治療的投与を含む。ここで使用される場合、「第VII因子調製物」なる用語は、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド合成するようプログラムされた組換え細胞又は起始細胞であろうとなかろうと、それらが合成された細胞から分離された変異体及び化学的に修飾された形態を含む、複数の第VIIa因子ポリペプチドを意味する。
【0095】
起始細胞からのポリペプチドの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養からの所望する生成物を含有する細胞培養培地の除去;非接着細胞を取り除くための遠心分離又は濾過等を含む、当該技術で公知の任意の方法により達成され得る。
【0096】
場合によっては、第VII因子ポリペプチドは、さらに精製されてよい。精製は、限定されるものではないが、例えば、抗-第VII因子抗体カラムにおけるアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashiら, J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; 及びThimら, Biochem. 27:7785, 1988を参照);疎水性相互作用クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;電気泳動手順(例えば調製用の電点電気泳動(IEF)、微分溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈降)、又抽出等を含む、当該技術で公知の任意の方法を使用して達成され得る。一般的には、Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, 1982; 及びProtein Purification, J.-C. Janson及びLars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照。精製後、調製物は、好ましくは約10重量%未満、さらに好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満の、宿主細胞から誘導された非-第VII因子タンパク質を含有する。
【0097】
第VII因子及び第VII因子-関連ポリペプチドは、第XIIa因子、又はトリプシン様特異性を有する他のプロテアーゼ、例えば第IXa因子、カリクレイン、第Xa因子、及びトロンビンを使用し、タンパク質分解的切断により活性化させてもよい。例えば、Osterudら, Biochem. 11:2853 (1972); Thomas, 米国特許第4,456,591号;及びHednerら, J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)を参照。また、第VII因子は、イオン交換カラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia)等に通すことによって、活性化されてもよい。ついで、得られた活性化第VII因子は処方されて、以下に記載するようにして投与されてよい。
【0098】
本発明で使用される製薬用調製物又は処方物は、好ましくは製薬的に許容可能な担体、特に水性担体又は希釈液に溶解され、組み合わされて、第VIIa因子調製物を含有する。多様な水性担体、例えば水、緩衝水、0.4%の生理食塩水、0.3%のグリシン等を使用してもよい。また、本発明の調製物は、損傷部位に送達する又は標的とするリポソーム調製物に処方することができる。リポソーム調製物は、一般的に、例えば米国特許第4,837,028号、同4,501,728号、及び同4,975,282号に記載されている。組成物は、従来から、よく知られている滅菌技術により滅菌されてもよい。得られた水溶液は、無菌条件下で濾過されるか、又は使用のために包装され、凍結乾燥されてよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に滅菌水溶液と組合せられる。
【0099】
組成物は、製薬的に許容可能な補助物質又はアジュバントを含有していてもよく、限定されるものではないが、pH調節及び緩衝剤及び/又は浸透圧調節剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等が含まれる。
【0100】
治療計画:
本発明の実施において、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドは、重度の出血のある被験者における出血症状を治療するのに単一用量で有効な量含有する単一用量、又は重度の出血のある被験者における出血症状を治療するのに有効な量含有する一連の段階的用量で、被験者に投与され得る。野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの有効量(以下参照)は、単一用量又は複数用量の凝集体で投与される、又は任意の他の種類の定められた治療計画の一環としてなされる場合、重度の出血に関連した少なくとも一の臨床的指標に、測定可能な程度の改善が見られる程度の、第VIIa因子ポリペプチドの量を意味する。異なる活性を有する第VIIa因子ポリペプチドが投与された場合、有効量は、公知の第VIIa因子ポリペプチドのものと、新規の第VIIa因子ポリペプチドの凝固活性を比較することにより決定され、公知の第VIIa因子ポリペプチドの予め定められた有効量と比例させて投与されるように、該量は調節される。
【0101】
本発明の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの投与は、重度の出血のある被験者における出血症状の発生後、通常は約6時間以内、例えば約4時間、約2時間、又は約1時間以内に開始される。また、投与は、外科手術の必要な被験者において、外科手術前の任意の時間、例えば外科手術前の約6時間以内、例えば約4時間以内、約2時間以内、又は約1時間以内、例えば外科手術の直前に開始されてもよい。
【0102】
単一用量で投与とは、約5分未満の期間で、ボーラスとして、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、全用量投与することを含む。いくつかの実施態様においては、約2.5分未満の期間、いくつかでは約1分未満の期間で投与が行われる。典型的には、単一用量の有効量には、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有するヒト第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約50μg/kg、75μg/kg、又は90μg/kg、又は少なくとも約150μg/kgの第VIIa因子が含まれる。
【0103】
いくつかの実施態様では、本発明の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを単一用量で投与した後、被験者は、少なくとも約30分の間隔、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドをさらに受容しない。いくつかの実施態様では、投与後間隔は、少なくとも約45分、例えば少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、又は少なくとも約2時間である。
【0104】
他の実施態様では、被験者は、次の計画に従い、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容する:(i)被験者は、少なくとも約1μg/kg、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kgの第VII因子ポリペプチドを含有する、第1の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容し;(ii)少なくとも約30分の期間後、少なくとも約1μg/kg、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kgの第VII因子ポリペプチドを含有する量で、第2の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを投与し;(iii)第2の用量の投与から少なくとも30分の期間後、少なくとも約1μg/kg、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kgの第VII因子ポリペプチドを含有する量で、第3の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを投与する。第3の量の投与から少なくとも30分の期間後、被験者は、少なくとも約1μg/kg、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kgの第VII因子ポリペプチドを含有する、さらなる(第4の)量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容してもよい。
【0105】
他の実施態様では、第1の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドは、少なくとも約1μg/kg、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kg、例えば少なくとも約100μg/kg、又は少なくとも約150μg/kgの第VII因子ポリペプチドを含有し;他の実施態様においては、第2の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドは、少なくとも約75μg/kg、例えば少なくとも約90μg/kg含有し;他の実施態様では、第3(及び場合によっては第4)の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドは、少なくとも約75μg/kg、例えば少なくとも約90μg/kg含有する。
【0106】
一実施態様では、第1の用量は約200μg/kg、第2の用量は約100μg/kg、及び第3(及び場合によっては第4)の用量は約100μg/kg含有する。
【0107】
他の実施態様では、被験者は、第1の投与から少なくとも約45分、例えば少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、又は少なくとも約3時間の期間後、第2の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容する。
【0108】
他の実施態様では、被験者は、先の投与から少なくとも約45分、例えば少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、又は少なくとも約3時間の期間後、第3(及び場合によっては第4)の量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容する。
【0109】
一実施態様では、被験者は、約200μg/kgを含有する第1の用量を受容し;約1時間の期間後、被験者は、約100μg/kgを含有する第2の用量を受容し;第1の投与から約3時間の期間後、被験者は、約100μg/kgを含有する第3の用量を受容する。
【0110】
次の表に、種々の本発明の非限定的実施態様を例証する:

【0111】
野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチド、並びに全体的な投与計画の有効量は、被験者の止血状態に応じて変えてよく、例えば循環凝固因子の相対レベル;失血量;出血速度;ヘマトクリット等を含む、一又は複数の臨床的指標を反映するものであってよいと理解されるであろう。有効量は、マトリックス値及びマトリックスにおける種々のテストポイントを構築することにより、常套的な実験方法で、当業者により決定されてよいことも、さらに理解されるであろう。
【0112】
例えば、一連の実施態様では、本発明は、(i)第1の用量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを投与し、(ii)予定時間後、被験者の凝固状態を評価し;及び(iii)評価に基づき、必要であるならば、さらなる用量の野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを投与することを含む。工程(ii)及び(iii)は、満足のいく止血が達成されるまで繰り返してよい。
【0113】
本発明において、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドは、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮下、粘膜、及び肺への投与経路を含む、任意の有効な経路により投与されてよい。一実施態様では、投与は静脈内経路になされる。一実施態様では、投与は皮下経路になされる。
【0114】
併用治療:
本発明は、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドと組合せた、付加的な薬剤の併用投与を含む。いくつかの実施態様では、付加的な薬剤には、限定されるものではないが、血液凝固剤、特に凝固因子、例えば第V因子(例えばPCT/DK02/00736を参照)、第VIII因子、第IX因子(例えば、国際公開第02/062376号を参照)、第X因子、第XI因子、第XIII因子(例えば、国際公開第01/85198号を参照)、フィブリノーゲン、トロンビン、TAFI(例えば、PCT/DK02/00734を参照)、抗線溶剤、例えばPAI-1、アプロチニン、イプシロン-アミノカプロン酸、又はトラネキサム酸(例えば、PCT/DK02/00735; PCT/DK02/00742; PCT/DK02/00751; PCT/DK02/00752を参照);種々の抗栓血治療、並びに血小板、RBCの輸血、FFP、酸素キャリア、種々のバイパス剤、及び輸液療法(コロイド/クリスタロイド)、又は任意のそれらの組合せ;組織因子経路インヒビター(TFPIインヒビター)(例えば、国際公開第01/85199号を参照);プロテインCインヒビター(例えば、PCT/DK02/00737を参照);トロンボモジュリン(例えば、PCT/DK02/00738を参照);プロテインSインヒビター(例えば、PCT/DK02/00739を参照);組織プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(例えば、PCT/DK02/00740を参照);α2-抗プラスミン剤(例えば、PCT/DK02/00741を参照)が含まれる。
【0115】
他の薬剤と第VIIa因子との組合せ投与を含む実施態様では、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの用量は、それ自体が、有効量を含有するものであってよいし、付加的な薬剤(類)は、被験者への治療的利点をさらに増大させるものであってもよい。また、第VIIa因子又は等価物と第2の薬剤との組合せを、重度の出血のある被験者における出血症状の治療に有効な量、共に含有していてもよい。また、有効量は、投与のタイミング及び数、投与方式、処方物等を含む、特定の治療計画において定められるとも理解されるであろう。
【0116】
本発明は、以下の実施例によりさらに例証されるが、本発明の範囲を制限すると解釈されるものではない。上述の記載及び以下の実施例に開示された特徴は、双方が別々又はその任意の組合せにおいて、その様々な形態で本発明を実現するための要素である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1A】図1A−Bは、天然(野生型)ヒト第VII凝固因子の全長アミノ酸配列(配列番号:1)を示す。
【図1B】図1A−Bは、天然(野生型)ヒト第VII凝固因子の全長アミノ酸配列(配列番号:1)を示す。
【図2】図2は、抗凝固状態を模倣した血液における、rFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果を示し、ここで全血は生理学的濃度のInnohepでスパイクし;AはInnohep+25nMのV158D/E296V/M298Q-FVIIaを表し;BはHWB+バッファーを表し;CはInnohep+バッファーを表し;Dは2.5nMのV158D/E296V/M298Q-FVIIaを表し;Eは25nMのrFVIIaを表す。
【図3】図3は、軽度から中程度の血友病Aモデルにおける、野生型ヒトヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果を示す。V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、図では、「第VIIa類似因子」又は「アナログ」と表され、野生型ヒトFVIIaは「VIIa」と表される。
【実施例】
【0118】
実施例1
次の実施例で使用されるアミノ酸置換についての用語法は以下の通りである。第1の文字は配列番号:1の位置に天然に存在するアミノ酸を表す。次の数は配列番号:1の位置を表す。第2の文字は天然アミノ酸に対して置換された(置き換えられた)異なるアミノ酸を表す。具体例はM298Qであり、配列番号:1の298位にあるメチオニンがグルタミンに置き換わったものである。他の例V158T/M298Qにおいては、同じ第VII因子ポリペプチドにおいて、配列番号:1の158位にあるバリンがスレオニンに置き換わっており、配列番号:1の298位にあるメチオニンがグルタミンに置き換わっている。
【0119】
本発明で使用される、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有するFVIIaポリペプチドは、公開されている国際特許出願、例えば国際公開第01/83725号、国際公開第02/22776号、国際公開第02/077218号、国際公開第03/027147号、国際公開第04/029090号、国際公開第05/075635号、出願番号05108713.8を有する欧州特許出願(Novo Nordisk A/S)、国際公開第02/38162号、及び日本国特許第2001061479号に従い調製されてよい。
【0120】
実施例2
インビトロ加水分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子及び第VIIa因子変異体(以後、双方とも「第VIIa因子」と称する)を平行してアッセイし、それぞれの特異的な活性を直接比較する。アッセイはマイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において実施する。色素生産性基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)、最終濃度1mMを、0.1MのNaCl、5mMのCaCl2、及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有する、50mMのHepes、pH7.4において、第VIIa因子(最終濃度100nM)に添加する。405nmでの吸光度を、SpectraMaxTM340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)にて、連続的に測定する。20分のインキュベート中に発生し、酵素を含有しないブランクウェルの吸光度を引いた後の吸光度を使用し、変異体と野生型第VIIa因子の活性の比率を算出する。
比率=(405nmでの第VIIa因子変異体)/(405nmでの野生型第VIIa因子)
【0121】
実施例3
インビトロタンパク質分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子及び第VIIa因子変異体(以後、双方とも「第VIIa因子」と称する)を平行してアッセイし、それぞれの特異的な活性を直接比較する。アッセイはマイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において実施する。0.1MのNaCl、5mMのCaCl2、及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有する、50mMのHepes、pH7.4、100マイクロLに、第VIIa因子(10nM)及び第X因子(0.8マイクロM)が入ったものを、15分インキュベートする。ついで、0.1MのNaCl、20mMのEDTA、及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有する、50mMのHepes、pH7.4、50マイクロLを添加することにより、第X因子切断を停止させる。生成した第Xa因子の量を、色素生産性基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765, Chromogenix, Swe-den)、最終濃度0.5mMを添加することにより測定する。405nmでの吸光度を、SpectraMaxTM340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)にて、連続的に測定する。FVIIaを含有しないブランクウェルの吸光度を引いた後、10分間で発生した吸光度を使用し、変異体と野生型第VIIa因子のタンパク質分解活性の比率を算出する。
比率=(405nmでの第VIIa因子変異体)/(405nmでの野生型第VIIa因子)
【0122】
実施例4
本実施例は、健康なボランティアからのクエン酸で安定化させた全血(WB)(正常値n=12、血液希釈値n=6)、及び少量の組織因子(Innovin、最終希釈値1:42500)を使用するTEGにより測定されるように、血餅形成時における、野生型組換えFVIIa(rwtFVIIa)(25nM≒90μg/kg)及びV158D/E296V/M298Q-FVIIA(25nM≒90μg/kg)の影響での、低pH及び温度の影響、並びにクリスタロイド及びコロイドの血液希釈値を示す。
また、V158D/E296V/M298Q-FVIIAの効能を、外傷のある動物モデルでテストする(ウサギ及びブタモデル)。
実験上の血液希釈、アシドーシス、及び低体温を、5%のアルブミン、HES130/0.4(Voluven(登録商標))、HES200/0.5(Haes-Steril(登録商標))、6%のヘタスターチ又はヘキセテンド(Hextend)の場合、クリスタロイド(Ringers lactate)又はコロイド溶液のいずれかで40%に希釈することで生じさせる。加えて、血液希釈は、pH7.0(1MのHEPESバッファーで調節)及び32℃の温度と組合せられる(極端な条件)。
所定のインビトロ条件下、外傷の条件を模倣した、pH7及び低温(32℃)と組合せて、血液を希釈した場合、野生型組換えFVIIa(rwtFVIIa)は有意な効果を示さなかったが、V158D/E296V/M298Q-FVIIaは有意な効果を示した。
【0123】

【0124】
低pH及び低温を伴う又は伴わない希釈により、低凝固状態が誘発される(しかしながら、極端な血液希釈条件下でが、角度のみが損なわれた)。
この条件下では、rwtFVIIaは角度(血餅形成速度)を改善することはできず、角度はかなり減少したが、V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、角度をかなり改善した。
よって、V158D/E296V/M298Q-FVIIAは、インビトロでの外傷状態を模倣したrwtFVIIaにより得られる効果と比較して、有意、かつ優れた効果を示した。V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、外傷を模倣したインビトロ条件下での止血誘発において、rwtFVIIaより優れている。
【0125】
実施例5
我々は、抗凝固状態を模倣した血液における、rFVIIa(25nM)及びV158D/E296V/M298Q-FVIIa(2.5nM及び25nM)の、インビトロ効果を研究し、ここで全血は、生理学的濃度のメラガトラン、アリクストラ、アブシキシマブ(Reopro)、インテグリリン、ヘパリン、又はInnohepでスパイクした。全ての血栓弾性率測定(TEG 5000分析器、Haemoscope corporation)実験において、クエン酸で安定化させた全血(WB)を使用し、組織因子(Innovin、最終希釈度1:42500)を用いて凝固を開始させた。抗凝固のために、0.01-0.25ug/mlのメラガトラン、0.05-1.5ug/mlのアリクストラ、2.5-50ug/mlのアブシキシマブ(Reopro)、2.5-50ug/mlのインテグリリン、0.05-0.5ie/mlのヘパリン、又は0.05-0.5ie/mlのInnohepからの範囲のTEGを使用し、最初異なる全血濃度を研究した。滴定研究の後、生理学的用量のメラガトラン(0.2ug/ml)、アリクストラ(0.5ug/ml)、アブシキシマブ(Reopro)(10ug/ml)、インテグリリン(10ug/ml)、ヘパリン(0.5ie/ml)、又はInnohep(0.5ie/ml)でエキソビボスパイクされ、組合せられた一つの濃度のrFVIIa及び2つの異なる濃度のV158D/E296V/M298Q-FVIIaがエキソビボ添加された8人の健康なドナーからの全血を使用し、実験を実施した。2元式分散分析モデルにより、統計的分析を実施した。P<0.05は統計的に有意であるとみなされる。TEGトレースが、25nMのV158D/E296V/M298Q-FVIIaを添加したエキソビボにより観察されるため、統計的データにはヘパリン及びInnohepは含まれない。
【0126】
ヒト全血におけるrFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果は、かなり低減したR-時間、増加したMA及びMTGを示すが、rFVIIaはあまり角度(血餅形成時間)を増加させず、V158D/E296V/M298Q-FVIIAは増加させた。V158D/E296V/M298Q-FVIIaの用量反応性は、ヘパリンを用いたヒト全血の全ての抗凝固治療で観察され、又はInnohep、0.5ie/mlでは血餅は形成されず、25nMのrFVIIa又は2.5nMのV158D/E296V/M298Q-FVIIaを用いた治療では、血餅形成における効果はなかったが、25nMのV158D/E296V/M298Q-FVIIaでは血餅の形成が可能であった。V158D/E296V/M298Q-FVIIAは、ヘパリン等、抗凝固治療を模倣した全血において、rFVIIaにより得られた効果よりも、有意、かつ優れた効果を示した。
【0127】

【0128】
実施例6
軽度から中程度の血友病Aモデルに対する野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果。
トロンビン生成実験:血漿を使用するTGアッセイのために、トロンビノスコープBVシステムを使用した。市販のPPP試薬によれば、アッセイの感度は悪かった。よって、我々はエラグ酸(fc 2uM)を添加した。合成リン脂質、PC/PS/PE(fc 16.5uM)、TF(fc 6.7pM)を使用した。この修正したTGアッセイによれば、非常に低レベルのFVIII(FVIII欠損血漿において0.1-1.0%のFVIII活性)で、用量依存性パターンが観察できた。
【0129】
トロンビン生成アッセイの結果:

【0130】
FVIII活性の測定:第VIII(a)因子の活性を、第VIII因子-欠損血漿を使用する、単一工程の凝固アッセイにおいて測定した(図4)。全ての反応を37℃で実施した。全ての第VIII因子生成物を、バッファー(20mMのHEPES、pH7.2、0.1MのNaCl、5mMのCaCl2、100mg/mlのBSA、及び0.01%のTween20)+表示濃度のPL及びTFにおいてインキュベートした。表示時間に、サンプルを混合物から取り除き、即時、−4℃で数百倍に希釈した。野生型ヒト第VIIa因子又はV158D/E296V/M298Q-FVIIa希釈サンプルの存在では、凝固アッセイにおいて影響がないことが示された。
【0131】
実施例7
ラットのクロピドグレル-誘発性出血に対する野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果
クロピドグレル(Plavix; Sanofi Aventis)は不可逆的なADPレセプターアンタゴニストであり、血小板凝固を効果的に阻害する。クロピドグレルは心筋梗塞等、血栓塞栓発症を防止するために、幅広く使用されている。クロピドグレル治療後の可能性のある有害事象の一つは、例えば緊急の外科的治療が必要な場合、出血を制御できないことである。現在、クロピドグレル用の有効な解毒剤は存在しない。
【0132】
本研究の仮説は、インヒビター−複合性血友病における出血に対して使用されると登録されている野生型ヒトFVIIaが、クロピドグレルに起因する出血を治療するのに使用できるということである。よって、野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIa、新規の強力なrFVIIa-アナログの効果を、クロピドグレルを用いて前治療されたラットにおける尾部-出血モデルにおいてテストした。
【0133】
ラットに、10mg/kgのクロピドグレルを経口的に投与した。4時間後、尾部切断を実施した。出血開始の5分後、野生型ヒトFVIIa(5、10、20mg/kg)、V158D/E296V/M298Q-FVIIa(2、5、10mg/kg)又はビヒクルでラットを治療し、その後、失血度合いを次の30分で測定した。
【0134】

データは平均±SEMである。データは、スチューデントt-検定(A-B)又はボンフェローニポスト-テストを用いた一元性分散分析(B-F)を使用し、平方根変換後のものである。星印は統計的有意を示す:**:p<0.01、及び***:p<0.001。nd:測定なし。£:n=8;$:n=9。
【0135】
クロピドグレルは、正常なラットと比較して、失血度合いをかなり増加させた(p<0.001)。失血におけるこの増加度合いは有意であり、野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaにより、用量依存式に低減した。用量反応曲線はS字型曲線に適合し、野生型ヒトFVIIaと比較してV158D/E296V/M298Q-FVIIaがより強力であることが示された。野生型ヒトFVIIaと比較した、V158D/E296V/M298Q-FVIIaの観察された高い最大効果は、V158D/E296V/M298Q-FVIIaのより高い効果を示しうる。
【0136】
実施例8
血小板減少性ラットの尾部出血における野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果
血小板減少症は、根底にある多くの病気に原因があり、制御できない出血の原因でもありうる。現在、血小板減少性出血に対する標準的な治療は血小板輸血である。本研究の目的は、抗体-誘発性血小板減少症を患ったラットにおける、強度の増した効力を有するrFVIIa-アナログ、V158D/E296V/M298Q-FVIIa、及び野生型ヒトFVIIaの効果を調査することである。
ラットは、ポリクローナルウサギ抗-ラット血小板抗体の皮下注射を受容した。
(Accurate Chemicals, Westbury, NY)。24時間後、尾部切断を実施した時、血小板数は最初の値(589±185〜46±21x10/l;n=58;平均±SD)の90%以上が低減していた。出血の5分後、野生型ヒトFVIIa(5又は10mg/kg)、V158D/E296V/M298Q-FVIIa(10mg/kg)又はビヒクルを用いてラットを治療し、その後出血を1800秒観察した。
【0137】

データは平均±SEMである。出血時間のデータは、マンホイットニーのU字検定(A-B)又はダンポストテストを用いたKruskall-Wallisテスト(B-E)を使用して分析したものである。失血データは、スチューデントt-検定(A-B)又はボンフェローニポスト-テストを用いた一元性分散分析(B-E)を使用し、log(x+1)変換後に分析したのものである。星印は統計的有意を示す:**:p<0.01、及び***:p<0.001、検出限界以下。
【0138】
野生型ヒトFVIIa(10mg/kg)は出血時間をかなり低減させるが、失血における数的低減度合いは統計的有意には達しなかった(表5)。V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、出血時間及び失血度合いとも、かなり低減させた。実際、ヘモグロビン濃度として検出される失血、V158D/E296V/M298Q-FVIIaで治療された動物では検出されず、観察した出血時間、赤血球よりも、血小板成分が漏出したためであることが示された。
【0139】
結論として、野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの双方は、正常な血小板数の10%未満である血小板減少症のラットにおける尾部出血に効果を有する。この研究により、V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、血小板レベルがかなり低減することにより引き起こされる出血症状の治療において、有益な効果を有することが示された。
【0140】
実施例9
ラットの低分子量ヘパリン-誘発性出血における野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの効果
本実験の目的は、2つの異なる用量のチンザパリンを用いて抗凝固されたラットにおける、強度の増した効力を有するrFVIIa-アナログ、V158D/E296V/M298Q-FVIIa、及び野生型ヒトFVIIaの効果を比較することである。よって、ラットは静脈内に、500又は1800IU/kgのチンザパリンを受容する。10分後、尾部切断を実施し、さらに5分後、20mg/kgの野生型ヒトFVIIa、10mg/kgのV158D/E296V/M298Q-FVIIa又はビヒクルを用いてラットを治療し、その後出血を1800秒観察した。
【0141】

データは平均±SEMである。データは、マンホイットニーのU字検定(A-B)又はダンポストテストを用いたKruskall-Wallisテスト(B-D)を使用して分析したものである。星印は統計的有意を示す::p<0.05及び***:p<0.001。観察期間1800秒。
【0142】

データは平均±SEMである。データは、スチューデントt-検定(A-B)又はボンフェローニポスト-テストを用いた一元性分散分析(B-E)を使用し、log(x+1)変換後に分析したのものである。星印は統計的有意を示す::p<0.05及び***:p<0.001。:検出限界以下。NS:有意ではない。
【0143】
野生型ヒトFVIIa(20mg/kg)は、500IU/kgのチンザパリンにより誘発される出血中の出血時間及び失血量をかなり低減させ(表6及び7、左欄)、一方、V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、出血時間及び失血量の双方を正常化させることができた。
1800IU/kgのチンザパリンを用いた重度の抗凝固後も、ビヒクルの対照グループと比較して、10mg/kgのV158D/E296V/M298Q-FVIIa(10mg/kg)のかなりの効果は、出血時間及び失血量において保持されている(表6及び7、右欄)。これに対し、2倍の高用量の野生型ヒトFVIIa(20mg/kg)は、出血時間又は失血量にあまり影響を与えないが、数的低減度合いは双方の変数に観察された。V158D/E296V/M298Q-FVIIa及び野生型ヒトFVIIaの間の効果におけるこの差は、出血時間並びに失血量においては、統計的有意に達した。
結論として、野生型ヒトFVIIa及びV158D/E296V/M298Q-FVIIaの双方は、ラットにおけるチンザパリン-誘発性出血には効果があるが、重度の抗凝固動物においては、V158D/E296V/M298Q-FVIIaは、野生型ヒトFVIIaよりも効果的であると思われる。
【0144】
[発明の実施態様]
1.重度の出血のある被験者における出血症状を治療する医薬の製造のための、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの使用。
2.前記第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくとも約1.25である、実施態様1の使用。
3.前記比率が少なくとも約2.0、例えば少なくとも約4.0、例えば少なくとも約6、例えば少なくとも約10である、実施態様2の第VII因子ポリペプチド。
【0145】
4.医薬が、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kg、例えば少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有している、実施態様1ないし3のいずれか一つの使用。
5.医薬が、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第1の用量として投与され、続いて治療の開始1ないし24時間後に、約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第2の用量で投与されるものである、実施態様1ないし4のいずれか一つの使用。
6.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第3の用量が、第2の治療の開始後、少なくとも約1時間で投与される、実施態様5の使用。
【0146】
7.重度の出血のある被験者が、7.45以下、例えば7.35以下、例えば7.25以下、例えば7.15以下、例えば7.05以下、例えば6.95以下、例えば6.85以下のpHを有するアシドーシスに罹患している、実施態様1ないし6のいずれか一つの使用。
8.重度の出血のある被験者が、摂氏37℃以下、例えば摂氏36℃以下、例えば摂氏35℃以下、例えば摂氏34℃以下、例えば摂氏33℃以下、例えば摂氏32℃以下、例えば摂氏31℃以下、例えば摂氏30℃以下の温度を有する低体温になっている、実施態様1ないし6のいずれか一つの使用。
【0147】
9.重度の出血のある被験者が、被験者の正常レベルよりも4g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも5g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも6g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも7g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも8g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも9g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも10g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも11g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも12g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも13g/dl低い前治療ヘモグロビンレベルになっている、実施態様1ないし8のいずれか一つの使用。
【0148】
10.重度の出血のある被験者が、14g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば12g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば10g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば8g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば6g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば4g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば3g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば2g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベルになっている、実施態様1ないし9のいずれか一つの使用。
【0149】
11.重度の出血のある被験者には、1000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば1500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば2000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば2500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば3000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば3500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば4000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば4500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば5000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば6000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法が必要である、実施態様1ないし10のいずれか一つの使用。
【0150】
12.医薬が、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドによる予防又は減弱を増大させる量の第2の凝固剤をさらに含有する、実施態様1ないし11のいずれか一つの使用。
13.前記第2の凝固剤が、凝固因子及び抗線溶剤からなる群から選択される、実施態様12の使用。
14.前記凝固因子が、第V因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子、フィブリノーゲン、トロンビン、TAFI、PAI-1、アプロチニン、イプシロン-アミノカプロン酸、又はトラネキサム酸、種々の抗栓血治療、並びに血小板、RBC、FFP、酸素キャリアの輸血、種々のバイパス剤、及び輸液療法(コロイド/クリスタロイド)からなる群から選択される、実施態様13の使用。
15.前記野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドがV158D/E296V/M298Q-FVIIaである、実施態様1ないし14のいずれか一つの使用。
【0151】
16.(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する医薬;及び
(ii)a.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80、例えば少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第1の用量を、治療開始時に投与し;
b.場合によっては、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第2の用量を、治療の開始1ないし24時間後に投与すべき;
と記載された使用説明書;
を含む、重度の出血のある患者における出血症状を治療するためのキット。
【0152】
17.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する任意の第3の用量が、第2の治療の開始後、少なくとも約1時間で被験者に投与されうる、実施態様16のキット。
【0153】
18.重度の出血のある被験者における出血症状を治療する方法であって、該方法が、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、該治療に有効な量、該治療を必要とする患者に投与することを含む方法。
19.重度の出血のある被験者が、7.45以下、例えば7.35以下、例えば7.25以下、例えば7.15以下、例えば7.05以下、例えば6.95以下、例えば6.85以下のpHを有するアシドーシスに罹患している、実施態様18の方法。
20.重度の出血のある被験者が、摂氏37℃以下、例えば摂氏36℃以下、例えば摂氏35℃以下、例えば摂氏34℃以下、例えば摂氏33℃以下、例えば摂氏32℃以下、例えば摂氏31℃以下、例えば摂氏30℃以下の温度を有する低体温になっている、実施態様18又は19のいずれか一つの方法。
【0154】
21.重度の出血のある被験者が、被験者の正常レベルよりも4g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも5g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも6g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも7g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも8g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも9g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも10g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも11g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも12g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも13g/dl低い前治療ヘモグロビンレベルになっている、実施態様18ないし20のいずれか一つの方法。
【0155】
22.重度の出血のある被験者が、14g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば12g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば10g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば8g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば6g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば4g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば3g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベル、例えば2g/dl以下の前治療ヘモグロビンレベルになっている、実施態様18ないし21のいずれか一つの方法。
【0156】
23.重度の出血のある被験者には、1000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば1500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば2000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば2500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば3000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば3500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば4000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば4500mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば5000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法、例えば6000mlのクリスタロイド又はコロイドの補液療法が必要である、実施態様18ないし22のいずれか一つの方法。
【0157】
24.有効量が、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kg、例えば少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含む、実施態様18ないし23のいずれか一つの方法。
25.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの第1の用量が治療開始時に投与され、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの第2の用量が、治療の開始1ないし24時間後に被験者に投与される、実施態様18ないし24のいずれか一つの方法。
26.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの第3の用量が、第2の治療の開始後、少なくとも約1時間で投与されることを含む、実施態様25の方法。
【0158】
27.野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドによる治療を増大させる量で、第2の凝固剤を被験者に投与することをさらに含む、実施態様18ないし26のいずれか一つの方法。
28.前記第2の凝固剤が、凝固因子及び抗線溶剤からなる群から選択される、実施態様27の方法。
29.前記凝固因子が、第V因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子、フィブリノーゲン、トロンビン、TAFI、PAI-1、アプロチニン、イプシロン-アミノカプロン酸、又はトラネキサム酸、種々の抗栓血治療、並びに血小板、RBC、FFP、酸素キャリアの輸血、種々のバイパス剤、及び輸液療法(コロイド/クリスタロイド)からなる群から選択される、実施態様28の方法。
【0159】
30.重度の出血のある多くの被験者における出血症状を治療するための方法であって、該方法が(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、前記治療に有効な量、重度の出血のある被験者群に投与し;(ii)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容していない同様の被験者群で予期される臨床的指標のレベルと比較して、該被験者群における出血症状の一又は複数の臨床的指標の改善度合いを観察することを含む方法。
31.前記野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドがV158D/E296V/M298Q-FVIIaである、実施態様18ないし30のいずれか一つの方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重度の出血のある被験者における出血症状を治療する医薬の製造のための、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドの使用。
【請求項2】
前記第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示される野生型第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくとも約1.25である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
重度の出血のある被験者が、7.45以下、例えば7.35以下、例えば7.25以下、例えば7.15以下、例えば7.05以下、例えば6.95以下、例えば6.85以下のpHを有するアシドーシスに罹患している、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
重度の出血のある被験者が、被験者の正常レベルよりも4g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも5g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも6g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも7g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも8g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも9g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも10g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも11g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも12g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも13g/dl低い前治療ヘモグロビンレベルになっている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドがV158D/E296V/M298Q-FVIIaである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する医薬;及び
(ii)a.少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80、例えば少なくとも約100μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第1の用量を、治療開始時に投与し;
b.場合によっては、少なくとも約1μg/kgの第VII因子ポリペプチド、例えば少なくとも約10μg/kg、例えば少なくとも約20μg/kg、例えば少なくとも約40μg/kg、例えば少なくとも約80μg/kgの野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを含有する第2の用量を、治療の開始1ないし24時間後に投与すべき;
と記載された使用説明書;
を含む、重度の出血のある患者における出血症状を治療するためのキット。
【請求項7】
重度の出血のある被験者における出血症状を治療する方法であって、野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、該治療に有効な量、該治療を必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項8】
重度の出血のある被験者が、7.45以下、例えば7.35以下、例えば7.25以下、例えば7.15以下、例えば7.05以下、例えば6.95以下、例えば6.85以下のpHを有するアシドーシスに罹患している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重度の出血のある被験者が、被験者の正常レベルよりも4g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも5g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも6g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも7g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも8g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも9g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも10g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも11g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも12g/dl低い、例えば被験者の正常レベルよりも13g/dl低い前治療ヘモグロビンレベルになっている、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
重度の出血のある多くの被験者における出血症状を治療するための方法であって、(i)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを、前記治療に有効な量、重度の出血のある被験者群に投与し;(ii)野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドを受容していない同様の被験者群で予期される臨床的指標のレベルと比較して、該被験者群における出血症状の一又は複数の臨床的指標の改善度合いを観察することを含む方法。
【請求項11】
前記野生型第VIIa因子と比較して増加した活性を有する第VII因子ポリペプチドがV158D/E296V/M298Q-FVIIaである、請求項7ないし10のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−543840(P2009−543840A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519949(P2009−519949)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057244
【国際公開番号】WO2008/009634
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】